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【発明の名称】 プレス加工装置及びプレス加工方法
【発明者】 【氏名】大年 和徳
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産自動車株式会社内

【氏名】守屋 岳志
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産自動車株式会社内

【要約】 【課題】縦壁部の反りを小さくすることができ、高精度な成形部品を得ることのできるプレス加工装置を提供する。

【解決手段】パンチ2と、外側ダイ3及び内側ダイ4と、金属板5の両端側部を外側ダイ3とで挟圧するブランクホルダー6とを備え、外側ダイとホルダーとで金属板の両端側部を挟圧した後に前記パンチを突き出して該金属板を深絞り加工する第1成形を行い、その後、パンチと外側ダイとの間に内側ダイを押し込んで該金属板を所定形状に成形する第2成形を行って、成形頭部と、それに連なる縦壁部と、縦壁部に連なるフランジ部とを有する金属プレス部品を絞り成形する装置構成である。そしてさらに本装置では、金属板の外側であってブランクホルダー6と外側ダイ3との対向部分に、これらホルダーと外側ダイとで金属板のフランジ部1c、1cを挟圧させる加圧力を増加させる加圧力増加機構7を設けている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチと、外側ダイ及びこの外側ダイの内側に相対的に可動自在な内側ダイと、金属板の両端側部を前記外側ダイとで挟圧するホルダーとを備え、前記外側ダイと前記ホルダーとで前記金属板の両端側部を挟圧した後に前記パンチを突き出して該金属板を深絞り加工する第1成形を行い、その後、パンチと外側ダイとの間に内側ダイを押し込んで該金属板を所定形状に成形する第2成形を行って、成形頭部と、それに連なる縦壁部と、縦壁部に連なるフランジ部とを有する金属プレス部品を絞り成形するプレス加工装置において、
前記金属板の外側であって前記ホルダーと前記外側ダイとの対向部分に、これらホルダーと外側ダイとで前記金属板のフランジ部を挟圧させる加圧力を増加させる加圧力増加機構を設けた
ことを特徴とするプレス加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプレス加工装置であって、
前記加圧力増加機構は、前記第1成形の下死点後からさらに前記外側ダイに荷重が掛けられて縮み、前記金属板のフランジ部を挟圧する部位の隙間を板厚よりも小さなものとして加圧力を増大させ、一方、前記荷重が開放されて元の状態に復帰する弾性変形可能な加圧力増加部材と、この加圧力増加部材を圧縮させる押圧部材とからなる
ことを特徴とするプレス加工装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプレス加工装置であって、
前記加圧力増加機構は、前記第1成形の前期段階では、前記金属板のフランジ部を挟圧する部位の隙間を該金属板の板厚とほぼ同じ隙間に保って加圧力を与える第1加圧力増加部材と、前記第1成形の後期段階では、前記隙間を少なくして前記加圧力を更に増加させる第2加圧力増加部材と、これら第1及び第2加圧力増加部材と接触する当接部材とからなる
ことを特徴とするプレス加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載のプレス加工装置であって、
前記第1加圧力増加部材は、高さ方向の途中で屈曲可能とされた支柱として形成され、前記第2加圧力増加部材は、第1加圧力増加部材よりも若干その高さが低い支柱として形成され、
第1成形の前期段階では、前記第1加圧力増加部材は前記第2加圧力増加部材よりもその高さが高く前記当接部材と接触して前記隙間を金属板の板厚とほぼ同じ隙間に保ち、
第1成形の後期段階では、前記第1加圧力増加部材は途中で屈曲してその高さが第2加圧力増加部材よりも低くなって前記当接部材が第2加圧力増加部材の先端に接触して前記隙間を少なくする
ことを特徴とするプレス加工装置。
【請求項5】
請求項4に記載のプレス加工装置であって、
第1成形の後期段階となったときに、前記第1加圧力増加部材を屈曲させてその高さを低くさせる屈曲手段を備える
ことを特徴とするプレス加工装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のプレス加工装置であって、
前記第1加圧力増加部材は、成形終了後に元の状態に復帰する復帰手段を備えている
ことを特徴とするプレス加工装置。
【請求項7】
金属板の両端側部を外側ダイとホルダーとで挟圧した後にパンチを突き出して該金属板を深絞り加工する第1成形を行い、その後、パンチと外側ダイとの間に内側ダイを押し込んで該金属板を、成形頭部と、それに連なる縦壁部と、縦壁部に連なるフランジ部とを有する金属プレス部品に成形する第2成形を行うプレス加工方法において、
前記第1成形の下死点後に、前記金属板の両端側部に相当するフランジ部を挟圧する加圧力を増加させる
ことを特徴とするプレス加工方法。
【請求項8】
請求項7に記載のプレス加工方法であって、
前記金属板が成形性に優れる材料であるときは、第1成形が下死点に到達後に前記内側ダイを前記パンチと前記外側ダイとの間に押し込む
ことを特徴とするプレス加工方法。
【請求項9】
請求項7に記載のプレス加工方法であって、
前記金属板が成形性に劣るときは、第1成形途中若しくは第1成形開始と同時に前記内側ダイを前記パンチと前記外側ダイとの間に押し込む
ことを特徴とするプレス加工方法。
【請求項10】
金属板の両端側部を外側ダイとホルダーとで挟圧した後にパンチを突き出して該金属板を深絞り加工する第1成形を行い、その後、パンチと外側ダイとの間に内側ダイを押し込んで該金属板を、成形頭部と、それに連なる縦壁部と、縦壁部に連なるフランジ部とを有する金属プレス部品に成形する第2成形を行うプレス加工方法において、
前記第1成形では、前記金属板の両端側部に相当するフランジ部を挟圧する加圧力を段階的に増加させる
ことを特徴とするプレス加工方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、深絞り加工を行うプレス加工装置及びプレス加工方法に関し、詳細には、金属プレス部品に生じる縦壁反りを減少させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パンチとダイとで金属板を絞って断面略U字状に成形すると共にその両端にフランジ部を形成する、いわゆるハット絞り成形を行う場合、その縦壁部に反りが発生し易い。この反りを壁反りと言うが、壁反りが発生すると、製品寸法精度が著しく悪化する。
【0003】
従来より、製品立壁部に張力を付与することで、壁反りなどの不良現象が著しく低減されることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。すなわち、成形時のしわ押さえ荷重を強くすることで(フランジ部を強く押さえて荷重を与えることで)、この効果が得られる。
【0004】
しかし、引っ張り強さが高い鋼板である高張力鋼板(ハイテン材)は成形性に劣るため、成形初期からしわ押さえ荷重を高く設定すると割れが発生し、成形不可能になる。そのため、成形性に劣る高張力鋼板などような材料に対しては、成形初期にしわ押さえ荷重を低くして成形を行い、成形後期にしわ押さえ荷重を強くして張力付加する、いわゆるしわ押さえ荷重の可変化を行うことが有効である(例えば、特許文献1参照)。
【非特許文献1】プレス成形難易ハンドブック(1997発行、P190及びP191)、薄鋼板成形技術研究会 (編集)、日刊工業新聞社(出版社)
【特許文献1】特開2000−271661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の技術では、ダイを分割して成形することによる効果として曲げ曲げ戻し変形量の低減とあわせて、立壁部への張力付加による不良現象(壁反り)の低減を挙げている。
【0006】
しかしながら、この特許文献1に記載の技術では、張力付加の制御に関する具体的機構の提案はなされていないため、より大きな張力の付加は困難である。
【0007】
一般に、立壁部へ付加した張力を制御する機構として、成形中にしわ押さえ荷重を変化させるプレス設備などが実用化されているが、コストも高く、その設備に合わせた特殊な型構造となり、同様な設備の無い場所では生産が行えないため、幅広い採用は困難である。
【0008】
そこで、本発明は、上述した実状に鑑みて提案されたものであり、複雑な構造とすることなく、高張力鋼板等ような強度が高い材料を使用した場合でも、縦壁部の反りを小さくすることができ、高精度な成形部品を得ることのできるプレス加工装置及びプレス加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプレス加工装置では、パンチと、外側ダイ及びこの外側ダイの内側に相対的に可動自在な内側ダイと、金属板の両端側部を前記外側ダイとで挟圧するホルダーとを備え、前記外側ダイと前記ホルダーとで前記金属板の両端側部を挟圧した後に前記パンチを突き出して該金属板を深絞り加工する第1成形を行い、その後、パンチと外側ダイとの間に内側ダイを押し込んで該金属板を所定形状に成形する第2成形を行って、成形頭部と、それに連なる縦壁部と、縦壁部に連なるフランジ部とを有する金属プレス部品を絞り成形する装置である。そしてさらに本装置では、金属板の外側であって前記ホルダーと前記外側ダイとの対向部分に、これらホルダーと外側ダイとで前記金属板のフランジ部を挟圧させる加圧力を増加させる加圧力増加機構を設けている。
【0010】
一方、本発明のプレス加工方法では、金属板の両端側部を外側ダイとホルダーとで挟圧した後にパンチを突き出して該金属板を深絞り加工する第1成形を行い、その後、パンチと外側ダイとの間に内側ダイを押し込んで該金属板を、成形頭部と、それに連なる縦壁部と、縦壁部に連なるフランジ部とを有する金属プレス部品に成形する第2成形を行う。そしてさらに本方法では、前記第1成形の下死点後に、前記金属板の両端側部に相当するフランジ部を挟圧する加圧力を増加させる、または、第1成形において加圧力を段階的に増加させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプレス加工装置によれば、金属板の外側であってホルダーと外側ダイとの対向部分に、これらホルダーと外側ダイとで前記金属板のフランジ部を挟圧させる加圧力を増加させる加圧力増加機構を設けたので、汎用プレス設備でしわ押さえ荷重の制御が可能となり、縦壁部の反りを少なくした製品寸法精度の高い成形品を、場所を選ばずに成形することができる。
【0012】
また、本発明のプレス加工方法によれば、第1成形の下死点後に、金属板の両端側部に相当するフランジ部を挟圧する加圧力を増加させるので、十分強いしわ押さえ荷重が付与でき、それによって縦壁部の反りを少なくすることができる。したがって、製品寸法精度の高い金属プレス部品を得ることができる。
【0013】
また、本発明のプレス加工方法によれば、第1成形において加圧力を段階的に増加させるようにしたので、成形が困難な部位に対しても十分強いしわ押さえ荷重を付与して縦壁部の反りを少なくすることができ、製品寸法精度の高い金属プレス部品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
先ず、本発明のプレス加工装置及びプレス加工方法で成形される金属プレス部品について説明する。
【0016】
本発明に係るプレス加工装置及びプレス加工方法により成形される金属プレス部品1は、図1及び図2に示すように、成形頭部(ハット頭部)1aと、それに連なる縦壁部1b、1bと、縦壁部1b、1bに連なるフランジ部1c、1cとを有する、いわゆる断面ハット形状である。
【0017】
自動車部品には、このような断面ハット形状とされた金属プレス部品1が多く使用される。また、かかる金属プレス部品1は、その縦壁部1b、1bの長さが長いものから短いものまであり、或いは同一部品でもその部位によってはその長さが異なるものもある。
【0018】
かかる金属プレス部品1を絞り加工するには、金属板の両端側部を挟圧させた状態でパンチとダイとで成形するが、単にパンチとダイとで成形しただけでは、図2(A)に示すように、縦壁部1b、1bが互いに外側に開いてしまう壁反りが発生してしまう。そこで、フランジ部1c、1cを挟圧する加圧力を強めることで、縦壁部1b、1bに引っ張り力を付与し残留モーメントを低減させて壁反りを低減させるようにする。そうすることで、図2(B)で示すような縦壁部1b、1bに反りの無い製品寸法精度の高い金属プレス部品1を得ることができる。
【0019】
本実施の形態では、このフランジ部1c、1cを挟圧するための機構とその挟圧方法に特徴がある。以下に、本実施の形態のプレス加工装置とプレス加工方法について説明する。
【0020】
「第1の実施の形態」
図3は第1の実施の形態のプレス加工装置の断面図、図4は第1の実施の形態のプレス加工装置に設けられた加圧力増加機構の拡大断面図、図5は第1成形時におけるプレス加工装置の断面図、図6は第1成形下死点時におけるプレス加工装置の断面図、図7は第2成形時におけるプレス加工装置の断面図である。
【0021】
第1の実施の形態のプレス加工装置は、図3に示すように、パンチ2と、外側ダイ3及びこの外側ダイ3の内側に相対的に可動自在な内側ダイ4と、金属板5の両端側部であるフランジ部1c、1cを前記外側ダイ3とで挟圧するホルダーであるブランクホルダー6と、フランジ部1c、1cを挟圧する加圧力(しわ押さえ荷重)を必要に応じて増加させる加圧力増加機構7とを備える。なお、プレス機は、この種の分野で使用されている汎用ダブルアクションプレスが使用される。
【0022】
パンチ2は、図示を省略する下型のベース上に上下動するように設けられいる。ブランクホルダー6は、成形前の状態においては、ベース上に設けられた複数のクッションピン8に支えられており、金属板5を載せる載置面(上面)をパンチ2の先端面と面一としている。また、ブランクホルダー6は、後述する第1成形時に外側ダイ3によって加圧されることでクッションピン8が圧縮されてベース側へ下降すると共に、第2成形完了後にクッションピン8が弾性復帰して元の位置(パンチ2の先端面と面一)に戻るようになっている。
【0023】
外側ダイ3は、図示を省略する上型のプレートに固定されており、第1成形時に下降して金属板5のフランジ部1c、1cを前記ブランクホルダー6とでその板厚方向から挟み込んで挟圧させる。この外側ダイ3のダイ肩部3aは、金属プレス部品1の製品形状よりも大きな半径とされている。そのため、曲げ曲げ戻し変形量が小さくなり、壁反り量が低減する。絞り成形では、材料には金型内に流れ込む際に一度曲げられ次に逆方向に曲げ戻される変形(曲げ曲げ戻し変形)が加えられ、その変形により、材料内部に応力分布が生じ、これが弾性回復することで壁反りが発生する。この壁反りは、外側ダイ3のダイ肩半径3aを製品形状よりも大きな半径とすることで低減可能となる。
【0024】
内側ダイ4は、外側ダイ3の内側に設けられており、この外側ダイ3に対して相対的に可動自在とされている。この内側ダイ4のダイ肩部4aも外側ダイ3と同様、肩反りを低減させるために、金属プレス部品1の製品形状より大きな半径とされている。
【0025】
加圧力増加機構7は、図4に示すように、後述する第1成形の下死点後からさらに外側ダイ3に荷重がかけられて縮み、金属板5のフランジ部1c、1cを挟圧する部位の隙間を板厚よりも小さなものとして加圧力を増大させ、一方、荷重が開放されて元の状態に復帰する弾性変形可能な加圧力増加部材9と、この加圧力増加部材9を圧縮させる押圧部材10とからなる。この加圧力増加機構7は、成形の邪魔にならない位置、すなわち金属板5の外側であって前記ブランクホルダー6と前記外側ダイ3との対向部分に設けられている。
【0026】
加圧力増加部材9は、金型と同様の金属材料から形成されるが、弾性変形をより促進させるためにゴム材料などを上面や下面など一部に使用してもよい。かかる加圧力増加部材9は、成形加工位置から離れたブランクホルダー6の部位に、金属板5を載せる載置面よりも一段低い位置とされた段差面6a上に固定されている。この加圧力増加部材9は、第1成形中は押圧部材10と当接した状態を保持するが、第1成形の下死点を過ぎて外側ダイ3に荷重がさらに加え続けられることで、初めてこの時点から圧縮されて縮むようになっている。
【0027】
押圧部材10は、例えば剛性のあるプレートからなり、第1成形中に加圧力増加部材9と接触して金属板5のフランジ部1c、1cを挟圧する部位の隙間をほぼ板厚程度のクリアランスに保持し、第1成形下死点後には加圧力増加部材9を圧縮して前記隙間を板厚よりも小さなものとして加圧力を増大させる役目する。この押圧部材10は、フランジ部1c、1cを挟圧させる面から一段低い位置とされた段差面3bに固定されている。
【0028】
ところで、自動車のボディなどのような成形品は、複雑な形状を持つため、部位によってはその絞り深さが異なるものがある。このような部品を成形するにあたっては、全ての部位に同じしわ押さえ荷重をかけるとすると、絞り深さが深い部位が割れないような荷重をかけて縦壁部1b、1bに張力を付与することになる。このような荷重のかけ方をすると、絞り深さが浅い部位の縦壁部1b、1bには十分な張力が付与されないことがある。そのため、絞り深さが異なる部位(つまり、成形の困難さが異なる部位)によっては、加圧力増加部材9の高さを変えて第1段階の荷重変化を与えるようにする。
【0029】
このように構成されたプレス加工装置を使用して金属板5を図1に示すようなハット断面形状とするには、先ず、図3に示すように、面一とされたパンチ2とブランクホルダー6の上面である載置面に金属板5を載せる。次に、第1成形を行う。すなわち、図5に示すように、外側ダイ3のみを金属板5が載置される側へと下降させ、当該金属板5の両端側部であるフランジ部1c、1cを前記ブランクホルダー6と前記外側ダイ3とで挟み込む。そしてさらに、外側ダイ3を下降させてクッションピン8を圧縮させることでブランクホルダー6を下方へ押し込み、前記したパンチ2を上方へと突き出させる。かかるパンチ2が上方に突き出ることで、外側ダイ3とブランクホルダー6とでフランジ部1c、1cを挟圧させた金属板5の中央部分である成形部位を成形する。
【0030】
第1成形では、外側ダイ3により成形が十分可能な低しわ押さえ荷重条件で全体的な成形を行う。つまり、ハット断面形状とされる金属プレス部品1の長手方向全ての部位で、同じ低しわ押さえ荷重となるようにフランジ部1c、1cを挟圧してパンチ2にて絞り加工を行う。
【0031】
第1成形中は、図4(B)に示すように、前記押圧部材10がこれと対応する位置に設けられた加圧力増加部材9に当接して、フランジ部1c、1cを挟圧させる部位のブランクホルダー6と外側ダイ3との間の隙間(クリアランス)を板厚程度の隙間となるように保持する。また、第1成形中は、成形荷重よりもしわ押さえ荷重が弱いため、前記加圧力増加部材9の高さにより前記隙間がほぼ板厚と同等に保たれながら成形される。なお、このとき、成形荷重は高いが、クッションピン8が押されて動いてしまうため、型にはしわ押さえ荷重以上はかからない。
【0032】
そして、外側ダイ3による成形が下死点まで達すると、図6に示すように、クッションピン8が潰れ、ブランクホルダー6がベースに接地して動かなくなる。この下死点状態からさらに、外側ダイ3に荷重を掛け続ける。すると、図4(C)に示すように、外側ダイ3が撓み、加圧力増加部材9が縮んで、フランジ部1c、1cを挟圧する加圧力(しわ押さえ荷重)が増大する。
【0033】
そして、しわ押さえ荷重が増大した後、図7に示すように、パンチ2と外側ダイ3との間に内側ダイ4を押し込んで第2成形を行う。この内側ダイ4による第2成形では、フランジ部1c、1cを挟圧するしわ押さえ荷重が増加していることにより、材料の流入が少なくなる(或いは留められる)ため、縦壁部1b、1bには強い張力が働く。
【0034】
このように、本実施の形態のプレス加工方法によれば、第1成形の下死点後にフランジ部1c、1cを挟圧する加圧力(しわ押さえ荷重)を増加して内側ダイ4による第2成形を行えば、縦壁部1b、1bに強い引っ張り力を付与することができるから、当該縦壁部1b、1bの壁反りを大幅に減らすことができる。したがって、本発明方法によって得られた金属プレス部品1は、壁反りの極めて少ない高寸法精度を有した成形品となる。
【0035】
また、本実施の形態のプレス加工装置によれば、特別な設備を備えたプレス機を使用することなく汎用プレス機にてしわ押さえ荷重の制御(荷重の増加制御)が可能になるため、特別設備が整った場所に限らずどこでも成形が可能となる。また、本実施の形態のプレス加工装置によれば、加圧力増加部材9と押圧部材10からなる加圧力増加機構7を成形の邪魔にならない個所に設けることの簡単な構造でしわ押さえ荷重制御ができるので、寸法精度の高い金属プレス部品1を安価に製造することができる。
【0036】
図8は、成形性に優れる材料(金属板5)と成形性に劣る材料を成形する場合の適切な加工条件を決めるための図である。例えば、高張力鋼板(ハイテン材)などのような成形性に劣る材料を成形する場合、図8(A)に示すように、下死点から第2成形を開始すると、縦壁部1b、1bに割れが生じてしまう場合がある。しわ押さえ荷重が高く材料の流入が完全に留められた場合、縦壁部1b、1bは、図8(C)に示すように破線(A線)位置から実線の位置(成形後の立壁形状)まで伸びなければならず、この伸び量が材料自体の成形性不足やそれまでの変形量によって、伸びの限界を超えてしまうことで割れが発生する。
【0037】
この一方、成形性に優れる材料は、第1成形の下死点から内側ダイ4を下降させて第2成形を開始しても縦壁部1b、1bに十分な張力が付与されることから、当該縦壁部1b、1bには割れが発生しない。
【0038】
成形性に劣る材料を成形する場合は、図8(C)に示すように、第1成形の下死点時において、縦壁部1b、1bが一点鎖線(B線)で示す状態となるようにパンチ2及び内側ダイ4を制御し、その後に内側ダイ4を下死点まで下降させる。つまり、第1成形途中若しくは第1成形の開始と同時に、内側ダイ4を下降させてパンチ2と外側ダイ3との間に押し込んで成形を行う。このようなタイミングで成形を行えば、必要な変形量が少なくなり、割れを生じずに成形を行うことができる。
【0039】
なお、上記した実施の形態では、加圧力増加部材9には弾性変形して伸縮する部材を使用したが、この弾性変形部材に代えて、図9に示すように、くさび形状をした3つの部品からなる加圧力増加部材9A,9B,9Cのうち、真ん中の加圧力増加部材9Bをエアシリンダー11のロッド12に連結させ、このロッド12を出没自在として加圧力増加部材9全体の高さを可変させるようにしても同様の効果が得られる。
【0040】
「第2の実施の形態」
図10は第2の実施の形態のプレス加工装置に設けられた加圧力増加機構の拡大断面図、図11は成形前の状態における加圧力増加機構を示し、(A)は平面図、(B)は縦断面図、図12は第1成形前期段階における加圧力増加機構を示す縦断面図、図13は第1成形後期段階における加圧力増加機構を示す縦断面図である。
【0041】
第2の実施の形態のプレス加工装置は、加圧力増加機構の構成が第1の実施の形態とは異なる他は、パンチ2、内側ダイ4、外側ダイ3及びブランクホルダー6などは第1の実施の形態と同様の構成であるため、重複する部分に関してはその説明は省略するものとする。ここでは、加圧力増加機構20について説明する。
【0042】
加圧力増加機構20は、図10及び図11に示すように、第1成形の前期段階ではフランジ部1c、1cを挟圧する部位の隙間を金属板5の板厚とほぼ同じ隙間に保って加圧力(しわ押さえ荷重)を与える第1加圧力増加部材である第1ブロック21と、第1成形の後期段階では前記隙間を少なくして加圧力を更に増加させる第2加圧力増加部材である第2ブロック22と、これら第1ブロック21及び第2ブロック22と接触する当接部材23と、第1成形の後期段階となったときに第1ブロック21を屈曲させてその高さを低くさせる屈曲手段24とから構成される。
【0043】
第1ブロック21は、外側ダイ3の段差面3bに固定された当接部材23と接触する大径円柱部21Aと、この大径円柱部21Aの下端に設けられる二つに分割された円柱状の第1支柱21B及び第2支柱21Cとからなる。これら大径円柱部21Aと第1支柱21Bと第2支柱21Cは、何れもそれらの間が可動自在に連結されており、その連結部には成形終了後に元の状態に復帰する復帰手段であるねじりコイルバネ25がそれぞれ設けられている。ねじりコイルバネ25は、初期状態においてこれら大径円柱部21Aと第1支柱21Bと第2支柱21Cとを一直線の柱となるように支持している。
【0044】
なお、大径円柱部21Aと第1支柱21Bには、後述する屈曲手段24で支柱間を押されて屈曲したとき、お互いに干渉しない(ぶつからない)ように逃げ面26が形成されている。
【0045】
第2ブロック22は、第1ブロック21の外側に設けられ、この第1ブロック21よりも若干その高さが低い円筒状の支柱として形成されている。この第2ブロック22には、外側から内部に貫通する円形状の貫通孔27が形成されている。かかる貫通孔27は、第1ブロック21の第1支柱21Bと第2支柱21Cの連結部と対応する位置に設けられている。
【0046】
屈曲手段24は、前記貫通孔27に挿入される円柱状のピン28と、このピン28をスライド自在に保持するスライド保持部材29とかなる。スライド保持部材29は、第2ブロック22に近接した位置に設けられ、前記したブランクホルダー6に固定されている。ピン28は、スライド保持部材29に対して水平方向にスライド自在となるように保持され、第1成形の後期時にスライドせしめられ、その先端で第1支柱21Bと第2支柱21Cの連結部を押し込んで第1ブロック21を屈曲させる。
【0047】
なお、前記ピン28をスライド操作する動力源には、モータなどの大掛かりな駆動機構を使用することなく工場内のエアー源が利用される。そのため、小さな小さな力でしわ押さえ荷重の調整が可能となる。この他、屈曲手段24として工場内のエアー源を利用して動作するエアーシリンダーを利用することもできる。
【0048】
このように構成された加圧力増加機構20を備えたプレス加工装置を使用して金属板5を図1に示すようなハット断面形状とするには、前記第1の実施の形態と同様、パンチ2とブランクホルダー6の上面である載置面に金属板5を載せる。このとき、第1ブロック21は、第2ブロック22よりもその高さが高い状態に保持されている。
【0049】
そして、外側ダイ3を下降させ、この外側ダイ3とブランクホルダー6とで金属板5のフランジ部1c、1cを挟圧させて、パンチ2を上方に突き出させることで第1成形を行う。第1成形の前期段階では、図10(B)及び図12に示すように、第1ブロック21の先端に当接部材23が接触して、前記隙間が金属板5の板厚とほぼ同じ間隔に保たれる。したがって、第1成形の前期段階では、初期のしわ押さえ荷重でフランジ部1c、1cが挟圧されて成形が行われる。
【0050】
次に、第1成形の後期段階となったときに、前記した屈曲手段24を作動させてピン28を突出させ、第1ブロック21の第1支柱21Bと第2支柱21Cとの連結部を押し、当該第1ブロック21を途中で屈曲させる。すると、図10(C)及び図13に示すように、第1ブロック21は、ピン28によって中央付近が側面から押されることで支柱が屈曲してその高さが第2ブロック22の高さよりも低くなる。
【0051】
その結果、当接部材23は、第1ブロック21から第2ブロック22の先端に当接されることになる。これによって、初期に設定されている第1ブロック21と第2ブロック22の高さの差(変化量)分だけ、ブランクホルダー6と外側ダイ3との間の隙間(クリアランス)が狭くなり、しわ押さえ荷重が増加する。したがって、この時点から下死点までは、しわ押さえ荷重が増加したことにより、材料の流入が少なくなる(或いは留められる)ため、縦壁部1b、1bに張力を付与することができる。
【0052】
そして、外側ダイ3による成形が下死点まで達するまで成形したらパンチ2と外側ダイ3との間に内側ダイ4を押し込んで第2成形を行う。この内側ダイ4による第2成形では、フランジ部1c、1cを挟圧するしわ押さえ荷重が増加していることにより、材料の流入が少なくなるため、縦壁部1b、1bには強い張力が働く。それによって、縦壁部1b、1bの壁反りを大幅に減らすことができ、高寸法精度を有した成形品を得ることができる。
【0053】
このように、本実施の形態のプレス加工方法によれば、第1成形において加圧力を段階的に増加させているので、成形が困難な部位に対しても十分強いしわ押さえ荷重を付与して縦壁部1b、1bの反りを少なくすることができ、製品寸法精度の高い金属プレス部品1を得ることができる。特に、本実施の形態では、しわ押さえ荷重を、2段階の強さとして縦壁部1b、1bに付与することができる。
【0054】
また、本実施の形態のプレス加工装置によれば、ピン28を押し込む動作だけで瞬時にして第1ブロック21を屈曲させてしわ押さえ荷重を可変させることができる。また、金属板5の成形難易度に応じて所望の縦壁部1b、1bを簡単に付与することが可能となる。
【0055】
なお、第1成形の前期段階から後期段階の切替時期は、その金属プレス部品1の縦壁部1b、1bの深さに応じて決められるものである。
【0056】
「その他の実施の形態」
以上、本発明を適用した具体的な実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に制限されることなく種々の変更が可能である。
【0057】
例えば、第1の実施の形態と第2の実施の形態を組み合わせた実施の形態とすることもできる。例えば、成形性に極めて困難な金属板5を成形する場合、第1成形では前期段階と後期段階でしわ押さえ荷重を可変して増大させた後、第1成形の下死点後にさらにしわ押さえ荷重を増加させるようにしてもよい。
【0058】
また、部位によって絞り深さが異なるものについては、第1の実施の形態と第2の実施の形態を組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施の形態のプレス加工装置及びプレス加工方法で成形される金属プレス部品を示し、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
【図2】図2(A)は壁反りが発生した状態の金属プレス部品の斜視図、図2(B)は壁反りが低減された金属プレス部品の斜視図である。
【図3】第1の実施の形態のプレス加工装置の断面図である。
【図4】第1の実施の形態のプレス加工装置に設けられた加圧力増加機構の拡大断面図である。
【図5】第1成形時におけるプレス加工装置の断面図である。
【図6】第1成形下死点時におけるプレス加工装置の断面図である。
【図7】第2成形時におけるプレス加工装置の断面図である。
【図8】図8は成形性に優れる材料(金属板)と成形性に劣る材料を成形する場合の適切な加工条件を決めるための図である。
【図9】加圧力増加機構の他の例を示す断面図である。
【図10】第2の実施の形態のプレス加工装置に設けられた加圧力増加機構の拡大断面図である。
【図11】成形前の状態における加圧力増加機構を示し、(A)は平面図、(B)は縦断面図である。
【図12】第1成形前期段階における加圧力増加機構を示す縦断面図である。
【図13】第1成形後期段階における加圧力増加機構を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1…金属プレス部品
1a…成形頭部(ハット頭部)
1b…縦壁部
1c フランジ部
2…パンチ
3…外側ダイ
4…内側ダイ
5…金属板
6…ブランクホルダー(ホルダー)
7、20…加圧力増加機構
9…加圧力増加部材
10…押圧部材
21…第1ブロック(第1加圧力増加部材)
22…第2ブロック(第2加圧力増加部材)
23…当接部材
24…屈曲手段
28…ピン
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地
【出願日】 平成17年5月9日(2005.5.9)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和

【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦

【識別番号】100100929
【弁理士】
【氏名又は名称】川又 澄雄

【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和

【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一

【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄

【公開番号】 特開2006−312184(P2006−312184A)
【公開日】 平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願番号】 特願2005−135706(P2005−135706)