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【発明の名称】 曲げ加工装置および曲げ加工方法ならびにプレス成形装置およびプレス成形方法
【発明者】 【氏名】芹澤 義久
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内

【要約】 【課題】所期の形状に曲げ加工された後の板材のスプリングバックを従来よりも確実に抑制する。

【解決手段】塑性変形可能な材料からなる板材5に曲げ加工を施す装置において、曲げ加工されるべき板材に接触すると共に該板材の曲げ加工に寄与する部材1,2の壁面に複数の突起6を設けた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塑性変形可能な材料からなる板材に曲げ加工を施す装置において、曲げ加工されるべき板材に接触すると共に該板材の曲げ加工に寄与する部材の壁面に複数の突起を設けたことを特徴とする装置。
【請求項2】
ポンチとダイスとを具備するプレス成形用の装置において、曲げ加工に寄与するポンチの肩部、該ポンチの肩部を受けるダイスの受け部、曲げ加工に寄与するダイスの肩部、および、該ダイスの肩部を受けるポンチの受け部の少なくとも1つに、複数の突起を設けたことを特徴とする装置。
【請求項3】
上記突起の表面が滑らかであることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
上記突起の表面が球面の一部であることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
上記突起の高さが該突起の表面を含む球の直径の半分に略等しいことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
上記突起の表面を含む球の直径が曲げ加工される板材の厚みの略30%であって、上記突起の高さが曲げ加工される板材の厚みの5〜10%であることを特徴とする請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
塑性変形可能な材料からなる板材に曲げ加工を施す方法において、曲げ加工される板材の部分の表面に複数の凹みが形成されるように板材を曲げ加工することを特徴とする方法。
【請求項8】
ポンチとダイスとを具備するプレス成形用の装置により板材をプレス成形する方法において、曲げ加工される板材の部分の表面に複数の凹みが形成されるように板材を曲げ加工することを特徴とする方法。
【請求項9】
上記凹みの表面が滑らかであることを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
上記凹みの表面が球面の一部であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記凹みの深さが該凹みの表面を含む球の直径の半分に略等しいことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記凹みの表面を含む球の直径が曲げ加工される板材の厚みの略30%であって、上記凹みの深さが曲げ加工される板材の厚みの5〜10%であることを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ加工装置および曲げ加工方法、ならびに、プレス成形装置およびプレス成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3に記載されているように、ポンチとダイスとを用いて金属板をプレス成形する場合、所期の形状にプレス成形された金属板が、特に、曲げ加工された部分を中心として、元の形状に戻ろうとするスプリングバックという現象が生じることがある。このスプリングバックが生じると、所期の形状にプレス成形された金属板が所期の形状ではなくなってしまう。そこで、特許文献1では、所期の形状にプレス成形された後の金属板の曲げ加工された部分の凸側の面に金属板の板厚の20%以下の深さの凹部を付与し、金属板の曲げ加工された部分を中心としたスプリングバックを抑制するようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−174074号公報
【特許文献2】特開2004−181502号公報
【特許文献3】特開平1−027726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、所期の形状に曲げ加工された後の板材のスプリングバックを従来よりも確実に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、1番目の発明では、塑性変形可能な材料からなる板材に曲げ加工を施す装置において、曲げ加工されるべき板材に接触すると共に該板材の曲げ加工に寄与する部材の壁面に複数の突起を設けた。
上記課題を解決するために、2番目の発明では、ポンチとダイスとを具備するプレス成形用の装置において、曲げ加工に寄与するポンチの肩部、該ポンチの肩部を受けるダイスの受け部、曲げ加工に寄与するダイスの肩部、および、該ダイスの肩部を受けるポンチの受け部の少なくとも1つに、複数の突起を設けた。
【0006】
3番目の発明では、1または2番目の発明において、上記突起の表面が滑らかである。
4番目の発明では、3番目の発明において、上記突起の表面が球面の一部である。
5番目の発明では、4番目の発明において、上記突起の高さが該突起の表面を含む球の直径の半分に略等しい。
6番目の発明では、4または5番目の発明において、上記突起の表面を含む球の直径が曲げ加工される板材の厚みの略30%であって、上記突起の高さが曲げ加工される板材の厚みの5〜10%である。
【0007】
上記課題を解決するために、7番目の発明では、塑性変形可能な材料からなる板材に曲げ加工を施す方法において、曲げ加工される板材の部分の表面に複数の凹みが形成されるように板材を曲げ加工する。
上記課題を解決するために、8番目の発明では、ポンチとダイスとを具備するプレス成形用の装置により板材をプレス成形する方法において、曲げ加工される板材の部分の表面に複数の凹みが形成されるように板材を曲げ加工する。
【0008】
9番目の発明では、7または8番目の発明において、上記凹みの表面が滑らかである。
10番目の発明では、9番目の発明において、上記凹みの表面が球面の一部である。
11番目の発明では、10番目の発明において、上記凹みの深さが該凹みの表面を含む球の直径の半分に略等しい。
12番目の発明では、10または11番目の発明において、上記凹みの表面を含む球の直径が曲げ加工される板材の厚みの略30%であって、上記凹みの深さが曲げ加工される板材の厚みの5〜10%である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所期の形状に曲げ加工(プレス加工)された後の板材のスプリングバックが確実に抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。まず、本実施形態のプレス成形装置の特徴的な構成を説明する前に、その基本的な構成を説明する。図1に示されているように、本実施形態のプレス成形装置は、ポンチ1とダイス2とシワ押さえ4を有する。ポンチ1は、ダイス2に対して相対的に移動可能となっている。そして、ポンチ1は、ダイス2に設けられている凹部3の内壁面から所定間隔(具体的には、成形加工されるプレートの厚みに等しい間隔)を置きつつ該凹部3内に収容可能な凸部を有する。このようなプレス成形装置は、例えば、高張力鋼板材(いわゆる、ハイテン材)やアルミ合金板材をプレス成形加工するものである。
【0011】
本実施形態のプレス成形装置によって板材を成形加工する場合には、例えば、図2(A)に示されているように、ダイス2の頂面に板材5が配置されると共に、該板材5に関してダイス2の反対側にポンチ1が配置される。そして、ポンチ1がダイス2に向かって移動せしめられる。そして、図2(B)に示されているように、ポンチ1の凸部によって板材5をダイス2の凹部3内に入れ込むように、ポンチ1がダイス2に対して移動せしめられる。そして、最終的には、図2(C)に示されているように、板材5がポンチ1とダイス2との間に完全に挟まれるまでポンチ1がダイス2に対して移動せしめられる。こうして、板材5が所期の形状に成形加工される。
【0012】
次に、本実施形態のプレス成形装置の特徴的な構成を説明する。図3は、本実施形態のプレス成形装置のポンチ1の肩部1Aとダイス2の受け部2Aとを示している。本実施形態では、ポンチ1の肩部1Aの外壁面一帯には、比較的小さい複数の突起6が設けられおり、一方、このポンチ1の肩部1Aを受けるダイス2の受け部2Aの内壁面は、突起を備えておらず、滑らかな曲面とされている。そして、ポンチ肩部1Aの各突起6の表面は、滑らかな曲面とされ、しかも、球面の一部とされている。
【0013】
このプレス成形装置によってプレス成形加工された板材において、曲げ加工された板材部分には、比較的小さい複数の凹みが形成されることになる。このように凹みが形成された板材の部分は、その他の部分よりも強く変形加工されることから、このように凹みが形成されるようにして板材を曲げ変形することは、曲げ変形後の板材5のいわゆるスプリングバックを抑制するという観点から好ましい。
【0014】
なお、本実施形態において、突起6が設けられていない場合のポンチ肩部1Aの外壁面から突起6の最も突出した部分までの距離(図4で参照符号Hで示されている距離)を「突起の高さ」と定義した場合、ポンチ肩部1Aに設けられる各突起の高さが、突起6の表面を含む球の直径の半分に略等しいと好ましい。
【0015】
また、本実施形態において、各突起6は、その表面を含む球の直径がプレス成形加工される板材5の厚みの略30%であって、且つ、その高さがプレス成形加工される板材5の厚みの5〜10%となっているようにポンチ肩部1Aに設けられると、より好ましい。突起6をこのような形でポンチ肩部1Aに設けることによって、プレス成形加工後における板材5のいわゆるスプリングバックを効果的に抑制することができる。
【0016】
また、図5は、別の実施形態のプレス成形装置のポンチ肩部1Aとダイス受け部2Aとを示している。本実施形態では、ポンチ肩部1Aの外壁面は、突起を備えておらず、滑らかな曲面とされており、一方、このポンチ肩部1Aを受けるダイス受け部2Aの内壁面一体には、比較的小さい複数の突起6が設けられている。そして、ダイス受け部2Aの各突起6の表面は、滑らかな曲面とされ、しかも、球面の一部とされている。
【0017】
このプレス成形装置によってプレス成形加工された板材においても、曲げ加工された板材部分には、比較的小さい複数の凹みが形成されることになるので、曲げ変形後の板材5のいわゆるスプリングバックを抑制するという観点から好ましい。
【0018】
なお、本実施形態において、突起6が設けられていない場合のダイス受け部2Aの内壁面から突起6の最も突出した部分までの距離(図6で参照符号Hで示されている距離)を「突起の高さ」と定義した場合、ダイス受け部2Aに設けられる各突起6の高さが、突起6の表面を含む球の直径の半分に略等しいと好ましい。
【0019】
また、本実施形態において、各突起6は、その表面を含む球の直径がプレス成形加工される板材5の厚みの略30%であって、且つ、その高さがプレス成形加工される板材5の厚みの5〜10%となっているようにポンチ肩部1Aに設けられると、より好ましい。
【0020】
また、図7は、さらに別の実施形態のプレス成形装置のポンチ肩部1Aとダイス受け部2Aとを示している。本実施形態では、ポンチ肩部1Aの外壁面にも、このポンチ肩部1Aを受けるダイス受け部2Aの内壁面にも、比較的小さい複数の突起6が設けられている。そして、これらポンチ肩部1Aおよびダイス受け部2Aの各突起6の表面は、滑らかな曲面とされ、しかも、球面の一部とされている。
【0021】
このプレス成形装置によってプレス成形加工された板材においても、曲げ加工された板材部分には、比較的小さい複数の凹みが形成されることになるので、曲げ変形後の板材5のいわゆるスプリングバックを抑制するという観点から好ましい。
【0022】
なお、本実施形態においても、突起6が設けられていない場合のポンチ肩部1Aの外壁面から該外壁面に設けられた突起6の最も突出した部分までの距離(図4で参照符号Hで示されている距離)、および、突起6が設けられていない場合のダイス受け部2Aの内壁面から該内壁面に設けられた突起6の最も突出した部分までの距離(図6で参照符号Hで示されている距離)を、共に、「突起の高さ」と定義した場合、各突起6の高さが、突起6の表面を含む球の直径の半分に略等しいと好ましい。
【0023】
また、本実施形態においても、各突起6は、その表面を含む球の直径がプレス成形加工される板材の厚みの略30%であって、且つ、その高さがプレス成形加工される板材の厚みの5〜10%となっているようにポンチ肩部1Aに設けられると、より好ましい。
【0024】
なお、上述した実施形態において、突起6の高さが同じ場合には、突起6の表面の湾曲半径が小さいほうが曲げ加工後の板材のスプリングバックを抑制する効果は高くなる傾向にある。(もちろん、突起6の表面の湾曲半径があまりに小さすぎても、曲げ加工後の板材のスプリングバックを抑制する効果は高くならない場合はある。)
【0025】
また、上述した実施形態において、突起6の構成を決定するに際し、板材のプレス成形加工中に板材との接触によって、突起6がプレス肩部1Aまたはダイス受け部2Aから脱落しないように突起6の構成を決定することも重要である。こうした観点からは、突起6がないとした場合のプレス肩部1Aまたはダイス受け部2Aと突起6との接触面積ができるだけ大きくなるように突起6の高さを設定することが好ましい。例えば、突起6の表面が球面の一部となっている場合、すなわち、突起6が球体の一部である場合には、突起6の高さが突起6の表面を含む球体の直径の半分であることが好ましい。
【0026】
また、上述した実施形態では、プレス成形を例に本発明を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、鉄鋼やアルミ合金等の金属製の板材を成形する装置に適用可能であり、例えば、いわゆるプレス加工やロールフォーミングやハイドロフォーミングを行う装置にも適用可能である。したがって、こうした観点から、本発明は、塑性変形可能な材料からなる板材に曲げ加工を施す装置に適用可能であると言える。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明が適用されたプレス成形装置の一例を示す図である。
【図2】図1に示されているプレス成形装置によるプレス成形加工を示す図である。
【図3】第1実施形態のプレス成形装置のポンチ肩部とダイス受け部とを示す図である。
【図4】ポンチ肩部に設けられた突起の高さを説明するための図である。
【図5】第2実施形態のプレス成形装置のポンチ肩部とダイス受け部とを示す図である。
【図6】ダイス受け部に設けられた突起の高さを説明するための図である。
【図7】第3実施形態のプレス成形装置のポンチ肩部とダイス受け部とを示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ポンチ
1A ポンチ肩部
2 ダイス
2A ダイス受け部
3 凹部
4 シワ押さえ
5 板材
6 突起
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地
【出願日】 平成17年5月6日(2005.5.6)
【代理人】 【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤

【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一

【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎

【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二

【識別番号】100082898
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 雅也

【公開番号】 特開2006−312176(P2006−312176A)
【公開日】 平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願番号】 特願2005−135080(P2005−135080)