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【発明の名称】 湿式媒体分散機
【発明者】 【氏名】井上 政憲
【住所又は居所】神奈川県伊勢原市白根58番地 株式会社井上製作所内

【要約】 【課題】ローターの外周に突起を形成し、分散媒体に運動を与えて処理材料を微粒子化し、液体中に分散する湿式媒体分散機において、突起の摩耗を減少し、かつローターの強度を高め、ピンの取付け、交換も容易にする。

【解決手段】ローター(3)は、筒状のローター本体(7)と突起プレート(8)を有する。ローター本体(7)の外周には軸方向に延びる差込溝(9)が形成されている。上記突起プレート(8)には、分散媒体に運動を与えることができるよう突起(12)が設けられている。上記突起プレート(8)は、ローター本体(7)の上記差込溝(9)に挿入され、ローター本体の側面に取り付けた端板(17)、(18)により抜け止めされている。上記ローター本体(7)は靱性に優れた材質で構成され、上記突起プレート(8)は耐摩耗性に優れた材質で構成される。突起プレート(8)としては、突起(12)の形状等を変えたものを用意することができ、ピンを設けることもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽の内壁に近接して回転するローターにより分散媒体と処理材料を攪拌し、該分散媒体間に生じる剪断、磨砕、衝撃作用で処理材料を分散する湿式媒体分散機において、上記ローターは、軸方向に延びる差込溝を外周に形成した筒状のローター本体と、該差込溝の長さに対応する長さの基板の上面に分散媒体に運動を与えるよう複数の突起を形成した突起プレートを具備し、該突起がローター本体の外周に突出するよう上記突起プレートを差込溝の一端から差し込み、上記ローター本体の側面に取り付けた端板で該突起プレートを抜け止めした湿式媒体分散機。
【請求項2】
上記突起プレートの突起は、該突起プレートの側縁に沿って延びる平行な側辺を有する断面平行四辺形状に形成され、該突起が間隔をあけて列設されている請求項1に記載の湿式媒体分散機。
【請求項3】
上記突起プレートの突起は、ローター本体の外周方向に拡がる外表面と該外表面の前後縁に形成された傾斜案内面を有する請求項1または2に記載の湿式媒体分散機。
【請求項4】
上記突起プレートの突起は、ピンを有している請求項1ないし3のいずれかに記載の湿式媒体分散機。
【請求項5】
上記突起プレートは、高弾性率のポリウレタンゴム系やナイロン、ポリアセタール、高密度ポリエチレンその他のエンジニリングプラスチック等の耐衝撃性、耐摩耗性を有する材料で形成されている請求項1に記載の湿式媒体分散機。
【請求項6】
上記ローター本体は、アルミナ、ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ等のファインセラミックで形成されている請求項1または5に記載の湿式媒体分散機。
【請求項7】
上記処理槽の内壁には軸方向に延びる差込溝が形成され、該差込溝にはピンを有するベッセルプレートが挿入されている請求項1ないし6のいずれかに記載の湿式媒体分散機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、処理槽内に分散媒体(ビーズ)を収納し、該処理槽に供給された処理材料を分散媒体と共にローターにより攪拌し、該分散媒体間に生じるずり力によって処理材料を微粒子化し、液体中に分散するようにした湿式媒体分散機に関する。
【背景技術】
【0002】
湿式媒体分散機は、上記のように処理槽内に微細な分散媒体を収納しておき、該処理槽の供給口から連続して供給した処理材料を分散媒体の作用により分散した後、排出口から取り出すよう構成されているので、処理材料や分散媒体が排出口側に片寄ったり、偏在することがある。そのような欠点を改善できるよう出願人は先に、処理槽内における分散媒体と処理材料の流動がほぼ栓流状(プラグフロー)になるようにしたアニュラー型の湿式媒体分散機(例えば、特許文献1参照)を提案し、好評を得ている。
【0003】
この湿式媒体分散機は、処理槽の内壁に近接して回転するローターの表面に案内メンバーを突出形成し、この案内メンバーは処理材料を排出口側へ前進させる前進案内面と供給口側へ後退させる後退案内面とローターの外周方向に拡がる外表面を含み、該前進案内面と後退案内面は処理材料を対向する後退案内面若しくは前進案内面方向へ運動させるよう対向状態に分散配置されている。このような構成により、従来の欠点を改善することができたが、上記案内メンバーは、ローター本体の外面に一体的に形成されているので、種々の問題があった。
【0004】
例えば、ローター本体としては、構造上、靱性を伴った強度を有する材質が要求され、案内メンバーとしては分散媒体や処理材料による摩耗を最小にするため耐摩耗性に優れた材質が要求されるが、同一材料で両機能を有する材質は得にくい。また、ローター本体や案内メンバーのいずれか一方が摩耗すると、従来のものではローター全体を交換しなければならないから、不経済であり、さらに処理材料に対応して案内メンバーの形状や角度を簡単に変更することもできなかった。なお、処理槽の内壁やローターの外面にピンの基端をねじ込んで処理空間内に突設した湿式媒体分散機も知られているが、ピンの取付けや交換が面倒だった。
【特許文献1】特公平4−70050号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決課題は、上記のような湿式媒体分散機において、ローターの外周面に突出形成する突起やピンをローター本体と別材質に形成することができ、かつ該突起やピンを簡単に着脱できるようにした湿式媒体分散機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、処理槽の内壁に近接して回転するローターにより分散媒体と処理材料を攪拌し、該分散媒体間に生じる剪断、磨砕、衝撃作用で処理材料を分散する湿式媒体分散機において、上記ローターは、軸方向に延びる差込溝を外周に形成した筒状のローター本体と、該差込溝の長さに対応する長さの基板の上面に分散媒体に運動を与えるよう複数の突起を形成した突起プレートを具備し、該突起がローター本体の外周に突出するよう上記突起プレートを差込溝の一端から差し込み、上記ローター本体の側面に取り付けた端板で該突起プレートを抜け止めした湿式媒体分散機が提供され、また、上記突起プレートにピンを突設したり、上記処理槽の内壁に形成した差込溝にピンを有するベッセルプレートを差し込んだ湿式媒体分散機が提供され、上記課題が解決される。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上記のように構成され、ローターは軸方向に延びる差込溝を外周に形成した筒状のローター本体と、該差込溝の長さに対応する長さの基板の上面に分散媒体に運動を与えるよう複数の突起を有する突起プレートを具備し、該突起プレートを上記差込溝に挿入してローターを構成するようにしたので、ローター本体と突起プレートの材質を要求に応じて適宜異ならせることができ、いずれか一方が摩滅した際には、その部品だけを交換すればよく、また分散媒体や処理材料に応じて各種の突起プレートを用意しておけば、端板を外すことにより適時に変更することができる。
【0008】
その上、上記差込溝に差し込んだ突起プレートには、ローターが回転した際、突起に分散媒体が当ることにより差込溝から抜け出す方向に力が作用するが、該突起プレートはローター本体の側面に取り付けた端板により抜け止めされているから、ローター本体に取り付けた位置にしっかりと保持され、確実に分散作用を奏することができる。さらに、上記突起プレートやベッセルプレートを交換するときは、端板をローター本体や内壁から取り外すことにより、全部の突起プレートやベッセルプレートを抜き差しでき、各突起プレートごとにねじ止めしたり、ピンを1本づつねじ込むような構造に比べて取り扱いが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の一実施例を示し、湿式媒体分散機本体は、処理槽(1)と、該処理槽(1)内に延出する回転軸(2)により回転されるローター(3)を有し、供給口(4)から供給した処理材料を該処理槽内で分散媒体(図示略)と共に攪拌し、微粒子化して液体中に分散し、ギャップセパレーター等の媒体分離手段(5)により分散処理された材料のみを排出口(6)から吐出するよう構成されている。
【0010】
上記ローター(3)は、筒状のローター本体(7)と突起プレート(8)を有する。上記ローター本体(7)の外周には、図2に示すように、軸方向に延びる差込溝(9)が形成されている。該差込溝(9)は、図2(B)に拡大して示すようにアリ溝に形成してあるが、T溝や半径方向に抜け止めできる適宜の形状に形成することができる。また、図に示す実施例では、ローター本体(7)の両端側で開口しているが、いずれか一方側のみで開口するように構成してもよい。
【0011】
上記突起プレート(8)は、図3に示すように、上記差込溝(9)の長さに対応する長さの基板(10)を有し、該基板(10)の側縁(11)は上記アリ溝に係合する傾斜面に形成され(図4(B)参照)、上記差込溝(9)の一端から挿入すると両端が差込溝端とほぼ一致する位置まで挿入することができる。また、該基板(10)の上面には、分散媒体に運動を与えることができるよう複数の突起(12)が形成されている。図に示す実施例では、上記突起(12)は、突起プレート(8)の側縁に沿って延びる平行な側辺(13)を有する断面平行四辺形状に形成され、この突起が間隔をあけて長手方向に列設されている。この際、図3(A)、(B)に示すように突起の位置を変えたものを用意してローター本体の周方向に交互に配列し突起が全体として斜方向に並ぶようにしたり、該平行四辺形の傾斜角(a)を種々変化させたものを用意することができる。また、該突起(12)は、図4(B)に示すように、ローター本体(7)の外周方向に拡がり接線方向の力により分散媒体に強いずり力を与える外表面(14)と、この外表面の前後縁に形成された傾斜案内面(15)、(16)を有し、該外表面(14)の幅(b)や上記傾斜案内面(15)、(16)の傾斜角(c)、(d)等も適宜変化させたものを用意しておくことができる。
【0012】
上記突起プレート(8)は、上記突起(12)がローター本体(7)の外周に突出するように上記差込溝(9)に挿入され、図1に示すように、上記ローター本体(7)の両端側に端板(17)、(18)をボルト(19)、(20)で取り付けることにより、該端板(17)、(18)の側面で抜け止めされている。なお、上記回転軸(2)の先端には、キャップ(21)がボルト(22)により取り付けられている。
【0013】
上記ローター本体(7)の材質としては、耐摩耗性と靱性を有する合金工具鋼やステンレス材料が好適に使用でき、上記突起プレート(8)をセラミックやタングステンカーバイト等の超硬材料で構成したところ、約260時間運転しても突起プレートの摩耗は殆どみられなかった。
【0014】
上記突起プレート(8)は、上述のように上記差込溝(9)に着脱可能に挿入されるが、その際に、一部を叩いたりしても簡単に欠けたり、割れたりしないような材料で構成することもできる。そのような材料としては、弾性率の高いポリウレタンゴム系やナイロン、ポリアセタール、高密度ポリエチレンその他のエンジニアリングプラスチック等の耐衝撃性、耐摩耗性を有する材料が好適に使用される。また、金属材料のコンタミを嫌う処理材料に用いる場合は、上記ローター本体(7)をアルミナ、ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ等のファインセラミックで形成し、上記突起プレート(8)を上記の如き耐衝撃性、耐摩耗性を有するプラスチック材料等で構成すれば、コンタミレス化が容易である。
【0015】
上記ローター本体(7)にピンを突設するには、上記突起プレート(8)を利用すればよい。すなわち、図5に示すように、上記突起プレート(8)の突起(12)上に、ピン(23)を一体的に形成すると、突起プレートを着脱することにより上記ローター本体の外周に簡単にピンを形成したり、交換したりすることができる。
【0016】
図6には、処理槽(1)の内壁(24)にピンを突設する場合の実施例が示されている。該内壁(24)には、上記差込溝(10)とほぼ同じように軸方向に延びるアリ溝形状の差込溝(25)が形成され、該差込溝(25)にベッセルプレート(26)が差し込まれている。図7に示すように該ベッセルプレート(26)は、上記突起プレート(8)の基板(10)とほぼ同じように断面略台形状の基板(27)を有し、上記差込溝(25)の一端から挿入され、処理槽の端部に当接するベッセル端板(図1)により抜け止めされており、該基板(27)上にはピン(28)が一体的に形成されている。このような構成により、上記処理槽(1)の内壁(24)の差込溝(25)にベッセルプレート(26)を着脱すれば、ピン(28)を処理槽内に設けたり、簡単に交換したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図。
【図2】ローター本体の一実施例を示し、(A)は側面図、(B)は一部の拡大説明図。
【図3】突起プレートの一実施例を示し、(A)、(B)はそれぞれ正面図
【図4】突起プレートの一部を拡大して示し、(A)は正面図、(B)は断面図。
【図5】突起プレートの他の実施例を示し、(A)は一部の正面図、(B)は断面図。
【図6】本発明の他の実施例を示す処理槽の断面図。
【図7】ベッセルプレートの一実施例を示し、(A)は一部の正面図、(B)は断面図。
【符号の説明】
【0018】
3 ローター
7 ローター本体
8 突起プレート
9 差込溝
10 基板
12 突起
23、28 ピン
【出願人】 【識別番号】000139883
【氏名又は名称】株式会社井上製作所
【住所又は居所】神奈川県伊勢原市白根58番地
【出願日】 平成17年1月24日(2005.1.24)
【代理人】 【識別番号】100081547
【弁理士】
【氏名又は名称】亀川 義示

【公開番号】 特開2006−35203(P2006−35203A)
【公開日】 平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願番号】 特願2005−15192(P2005−15192)