| 【発明の名称】 |
医療用ガイドワイヤ |
| 【発明者】 |
【氏名】河崎 浩範
【氏名】奥村 亮一
【氏名】川端 隆司
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| 【要約】 |
【課題】細径化されたとしても、トルク伝達性が良く、しかも、曲げ弾性が高く(腰が強く)、屈曲されても永久歪みを生じにくく、挿入し易い医療用ガイドワイヤを提供すること。
【解決手段】遠位端側小径部と前記遠位端側小径部よりも比較的に大きい外径を有する近位端側大径部とを持つワイヤ芯線を有する医療用ガイドワイヤ2である。ワイヤ芯線4が、鉄を主成分として炭素を0.3〜1.5重量%含む炭素鋼材で構成してあり、ワイヤ芯線4の少なくとも一部に、バネ性向上用熱処理が施してある。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 遠位端側小径部と前記遠位端側小径部よりも比較的に大きい外径を有する近位端側大径部とを持つワイヤ芯線を有する医療用ガイドワイヤであって、 前記ワイヤ芯線が、鉄を主成分として炭素を0.3〜1.5重量%含む炭素鋼材で構成してあり、 前記ワイヤ芯線の少なくとも一部に、バネ性向上用熱処理が施してあることを特徴とする医療用ガイドワイヤ。 【請求項2】 前記バネ性向上用熱処理が、オーステンパー処理、オースフォーミング処理、オースロール処理、パテンティング処理のいずれかである請求項1に記載の医療用ガイドワイヤ。 【請求項3】 前記ワイヤ芯線の最大外径が0.350mm以下である請求項1または2に記載の医療用ガイドワイヤ。 【請求項4】 前記遠位端側小径部には、前記バネ性向上用熱処理が施されず、前記近位端側大径部には、前記バネ性向上用熱処理が施してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の医療用ガイドワイヤ。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、治療や検査のために用いられるカテーテルなどの医療器具を血管などの体腔内の所定位置へと案内するための医療用ガイドワイヤに係り、さらに詳しくは、細径化されたとしても、トルク伝達性が良く、しかも、曲げ弾性が高く(腰が強く)、屈曲されても永久歪みを生じにくく、挿入し易い医療用ガイドワイヤに関する。 【背景技術】 【0002】 治療や検査のために、カテーテルを血管内の所定位置まで挿入しなければならない場合がある。カテーテルは、一般に柔軟性に優れており、カテーテル単独では、血管の内部の所定位置まで押し込むことは困難である。そこで、血管内に予めガイドワイヤを挿入しておき、そのガイドワイヤに沿ってカテーテルを血管内の所定位置まで案内することが一般的に行われている。 【0003】 ガイドワイヤについての主な要求事項は、患者の血管系または身体の他の内腔を通して、これらをキンクさせることなく押すのに、十分な押し込み特性を有するということである。しかしながら、これらはまた、これらを通す血管または身体の他の内腔に損傷を加えないようにすべく、十分に可撓性を有する必要がある。 【0004】 ガイドワイヤの押し込み特性および可撓性を両立し、その使用に対して更に適したものとする努力がなされてきている(特許文献1および特許文献2参照)。しかしながら、これら二つの性質は、多くの部分で、互いに正反対であり、一方を大きくすることは、他方を小さくすることになる。 【0005】 PTCAや他の血管手術用の従来のガイドワイヤは、通常、一つ又はそれ以上のテーパー区分をその遠位端近くに有する細長いワイヤ芯線と、このワイヤ芯線の遠位部分の周りに配置された可撓性のコイルバネとを有する。このような構造とすることで、十分な押し込み特性と、遠位端部における可撓性の両立を狙っている。 【0006】 従来、ワイヤ芯線およびコイルバネはステンレス製であり、弾性伸び率が0.9%程度なので、先端部分の柔軟性が十分でなく、R=20mm以下の強い曲がりを有する血管内に挿入する場合には、永久変形をきたし、その後の血管内での操作が困難となる事が多い。 【0007】 また、超弾性特性を示すニッケル・チタンのような超弾性合金を、ガイドワイヤに使用することも提案されている。なお、負荷を加えた時、一定の応力で比較的大きな変形を受けるが、負荷を取り除いたときに変形から回復する性質を通常「超弾性」と呼ぶ。 【0008】 しかしながら、ガイドワイヤの全体を超弾性合金で構成すると、超弾性合金の弾性係数が比較的低いため、ガイドワイヤの近位端部(基端部)まで曲がり易くなり、ガイドワイヤを押し込む際の押し込み特性に問題がある。 【0009】 また、ガイドワイヤの基端部をステンレスで構成し、先端部を超弾性合金で構成するガイドワイヤも提案されているが、ステンレス金属と超弾性合金との接合は困難であり、接合が不十分になり易く、接合部の強度が問題となる。更に、接合部の前後で、剛性が急激に変わるため、ワイヤ操作を困難にすることもしばしばある。 【0010】 近年では、脳血管等の細い血管等へのアプローチを狙った細いカテーテル類が普及し始めており、それに伴い、ガイドワイヤも、より細いものが求められている。しかしながら、従来ガイドワイヤに使用されているステンレス金属や超弾性金属をそのまま細径化すると、手元側の曲げ剛性が低下し、その結果、押し込み特性が低下してしまうという問題がある。 【特許文献1】特開昭60−168466号公報 【特許文献2】特開昭60−7862号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0011】 本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、細径化されたとしても、トルク伝達性が良く、しかも、曲げ弾性が高く(腰が強く)、屈曲されても永久歪みを生じにくく、挿入し易い医療用ガイドワイヤを提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0012】 上記目的を達成するために、本発明に係る医療用ガイドワイヤは、 遠位端側小径部と前記遠位端側小径部よりも比較的に大きい外径を有する近位端側大径部とを持つワイヤ芯線を有する医療用ガイドワイヤであって、 前記ワイヤ芯線が、鉄を主成分として炭素を0.3〜1.5重量%含む炭素鋼材で構成してあり、 前記ワイヤ芯線の少なくとも一部に、バネ性向上用熱処理が施してあることを特徴とする。 【0013】 前記バネ性向上用熱処理としては、特に限定されないが、オーステンパー処理、オースフォーミング処理、オースロール処理、パテンティング処理のいずれかであり、好ましくはオーステンパー処理である。 【0014】 バネ性向上用熱処理のための条件としては、特に限定されないが、たとえば、処理する前の部分の縦弾性率が200GPaより小さいのに対して、処理された部分の縦弾性率が200GPa以上となるような条件である。あるいは、処理する前の部分の縦弾性率を100として、処理後の縦弾性率を200〜300とするような条件である。 【0015】 前記ワイヤ芯線の最大外径は、特に限定されないが、好ましくは0.350mm以下であり、さらに好ましくは0.260mm以下である。 【0016】 本発明において、好ましくは前記遠位端側小径部には、前記バネ性向上用熱処理が施されず、前記近位端側大径部には、前記バネ性向上用熱処理が施してある。 【発明の効果】 【0017】 本発明者等は、ワイヤ芯線を炭素鋼材で構成し、しかも、特定の熱処理を施すことで、細径化されたとしても、トルク伝達性(近位端側での回転トルクが遠位端側にまで良好に伝達)が良く、しかも、曲げ弾性が高く(腰が強く)、屈曲されても永久歪みを生じにくく、挿入し易い医療用ガイドワイヤを提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。 【0018】 本発明のガイドワイヤは、熱処理によりバネ性が高くなっているために、細径化されたとしても、トルク伝達性が良く、しかも、曲げ弾性が高い。そのため、血管等の身体の内腔へと挿入される時に、ワイヤを軸心回りに回転させながら、ワイヤの先端を血管などの所望の分岐方向に向かわせ、座屈することなく、ワイヤを前進させることができる。また、本発明のガイドワイヤは、屈曲されても永久変形を生じにくいことから、ガイドワイヤが冠状動脈系のような非常に曲がりくねった通路を通る時も、永久変形をきたすおそれがない。 【0019】 さらに、本発明では、異種金属同士を接続させる構造ではないために、接続部の強度が問題となることはない。しかも、ワイヤ芯線の熱処理は比較的に容易に行うことができるため、生産性が高く、低コストでガイドワイヤを製造することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0020】 以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。 図1は本発明の一実施形態に係る医療用ガイドワイヤの一部断面概略図、 図2は医療用ガイドワイヤの使用例を示す図、 図3は本発明の他の実施形態に係る医療用ガイドワイヤの概略断面図、 図4は本発明の他の実施形態に係る医療用ガイドワイヤの製造過程を示す概略図、 図5は本発明の実施例に係る医療用ガイドワイヤのトルク伝達特性を試験するための模擬冠状動脈の概略図、 図6はその医療用ガイドワイヤのトルク伝達特性を示すグラフである。 【0021】 第1実施形態 図1に示すように、本発明の1実施形態に係る医療用ガイドワイヤ2は、ワイヤ芯線4と、コイルスプリング12とを有する。ワイヤ芯線4は、近位端側大径部20と、この近位端側大径部20に対して軸方向に沿って連続して形成されて近位端側大径部20よりも外径が段階的に小さくなっている遠位端側小径部22,24,26とで構成してある。近位端側大径部20と遠位端側小径部22との接合部、遠位端側小径部22,24,26の接合部には、それぞれテーパ部21,23,25が形成してあり、ワイヤ芯線4は、軸方向に沿って遠位端側に向けて段階的に外径が小さくなっている。コイルスプリング12は、これらの遠位端側小径部22,24,26の外周に装着してある。 【0022】 近位端側大径部20と遠位端側小径部22,24,26とで構成してあるワイヤ芯線4は、横断面が略円形の線材で一体的に構成してある。ワイヤ芯線4は、鉄を主成分として炭素を0.3〜1.5重量%含む炭素鋼材で構成してある。炭素の含有量が少なすぎると、ワイヤ芯線4は、十分にベイナイト組織が生成されず、好ましくない。また、炭素の含有量が多すぎると、ワイヤ芯線4は、過度の炭化物を生成し脆化をきたす傾向にあり好ましくない。 【0023】 ワイヤ芯線4を構成する炭素鋼材には、主成分としての鉄および炭素以外に、Si(ケイ素)、Mn(マンガン)、P(リン)、S(硫黄)などの元素が含まれる。本発明において好ましくは用いられる炭素鋼材としては、具体的には、S43C、S45C、SK3、SK5などが例示される。 【0024】 本実施形態では、ワイヤ芯線4には、その全体にバネ性向上用熱処理が成されている。バネ性向上用熱処理としては、たとえばオーステンパー処理、オースフォーミング処理、オースロール処理、パテンティング処理のいずれかである。 【0025】 オーステンパー処理は、鋼材を無酸化雰囲気中で800〜900°Cの温度で加熱し、オーステナイトを安定化させた後に、300〜400°C程度の塩浴で恒温変態を生じさせ、ベイナイト組織を得る方法である。この処理を行うことにより、芯線に歪みの発生あるいは焼き割れを防止すると共に、強靱性(引っ張り強さや伸びも含む)と耐摩耗性とを付与することができる。また、この処理は、熱処理歪みが少ない。 【0026】 オースフォーミング処理は、オーステナイトの状態で鋼材に外力を加えて成形する方法である。すなわち、オーステナイトがマルテンサイト変態をする前に塑性加工を加え、その後にマルテンサイト化する方法で、通常の焼き入れ・焼き戻しでは得られないほどの高い強さと強靱性とを同時に備えた鋼が得られる。具体的には、800〜900°Cの温度で加熱した安定オーステナイトの鋼材を急冷して450〜550°Cの温度として、準安定状態のオーステナイトの状態で塑性加工(たとえば線引き加工)を行い、ベイナイト組織を得る。 【0027】 オースロール処理は、オースフォーミング処理と同様な考え方であるが、オースフォーミング処理よりもベイナイト変態が促進される。具体的には、800〜900°Cの温度で加熱した安定オーステナイトの鋼材を急冷して450〜550°Cの温度として、準安定状態のオーステナイトの状態で塑性加工(たとえば線引き加工)を行い、その温度を維持することにより、ベイナイト変態を促進する。 【0028】 パテンティング処理は、ピアノ線の製造に用いる一般的な熱処理方法で、オーステンパー処理に近い処理操作である。具体的には、400〜500°Cで恒温変態(ベイナイト組織を得る)を生じさせ、その後に冷間線引き加工し、その後、恒温変態および冷間線引き加工を繰り返す。 【0029】 このような熱処理により、たとえば、処理する前の部分の縦弾性率が200GPaより小さいのに対して、処理された部分の縦弾性率が200GPa以上となる。あるいは、処理する前の部分の縦弾性率を100として、処理後の縦弾性率を200〜300とすることができる。特に、オーステンパー処理を採用することで、永久変形が起こりにくく挿入性が改善されるなどの理由により、医療用ガイドワイヤとして用いて好ましいワイヤ芯線を実現することができる。 【0030】 ワイヤ芯線4の全長は、使用目的などに応じて変化し、特に限定されないが、たとえば80〜350cm程度である。なお、PTCA用ガイドワイヤとして用いる場合には、ワイヤ芯線4の全長は、1500mmから2000mm程度である。 【0031】 ワイヤ芯線4における近位端側大径部20の外径は、特に限定されず、一般的には0.10〜0.90mm程度であるが、本実施形態では、0.012インチ(0.30mm)以下にすることもできる。また、遠位端側小径部22,24,26の外径は、特に限定されないが、近位端側大径部20の外径に対して、好ましくは1/5〜1/2程度の外径である。 【0032】 ワイヤ芯線4における遠位端側小径部26の先端には、球又は半球状のボール部10が接合してある。ボール部10は、ガイドワイヤ2の先端部を滑らかにして、ガイドワイヤ2を血管などの体腔内に挿入する際に、体腔内壁の損傷を極力防止するための部分であると共に、コイルスプリング12の遠位端側ストッパとなる。このボール部10は、たとえばスズ、銀、金、あるいはこれらの合金などの金属で構成してあり、遠位端側小径部26の先端に、溶接またはロー付けなどの手段で接合してある。ボール部10の外径は、ワイヤ芯線4の近位端側大径部20の外径に対して、好ましくは0.5〜2倍程度の外径である。 【0033】 コイルスプリング12の遠位端14は、ボール部10の背面に対して溶接またはロー付けなどの手段で接合してある。コイルスプリング12の近位端16は、遠位端側小径部22の近位端近傍のテーパ部21において、ワイヤ芯線4の外周に、溶接またはロー付けなどの手段で接合してもよい。 【0034】 ワイヤ芯線4におけるコイルスプリングで覆われていない部分(近位端側大径部20)の外周面は、生体適合性コーティング膜で一体的に被覆してあっても良い。生体適合性コーティング膜としては、特に限定されないが、たとえばポリエチレンなどのオレフィン類、ポリイミドやポリアミドなどの含窒素ポリマー、シロキサンポリマー、フッ素樹脂ポリマー(たとえばPTFE)など、医療用として用いられる通常のポリマーなどが用いられる。また、コーティング膜としては、ポリマーに限定されず、炭化珪素、パイロライトカーボンやダイアモンドライクカーボンなどのカーボンなど、無機物のコーティング膜であっても良い。 【0035】 コイルスプリング12の外径は、特に限定されないが、ボール部10の外径と同程度以下が好ましい。コイルスプリング12を構成する線材の外径は、特に限定されないが、好ましくは20〜150μm、さらに好ましくは50〜100μmの範囲である。 【0036】 コイルスプリング12の材質は、特に限定されず、放射線造影材でも、放射線非造影材でも良い。放射線造影材としては、白金、白金合金(たとえばPt/Ir=93/7)、金、金−銅合金、タングステン、タンタルなどのX線に対する造影性が良好な材質が例示される。また、放射線非造影材としては、特に限定されないが、ステンレス(たとえばSUS316、SUS304)などが主として例示される。コイルスプリング12には、親水潤滑化コーティング処理が施してあっても良い。 【0037】 また、コイルスプリング12の材質は、軸方向に必ずしも同じである必要はなく、たとえば遠位端側を白金コイルとし、近位端側をステンレスコイルとしても良い。 【0038】 本実施形態に係る医療用ガイドワイヤ2では、ガイドワイヤ2における近位端側大径部20の操作力が、ワイヤ2の遠位端部まで良好に伝達し、押し込み特性に優れている。また、本実施形態では、ワイヤ芯線4を特殊な熱処理をしているために、細径化されたとしても、トルク伝達性が良く、しかも、曲げ弾性が高い。そのため、血管等の身体の内腔へと挿入される時に、ワイヤを軸心回りに回転させながら、ワイヤの先端を血管などの所望の分岐方向に向かわせ、座屈することなく、ワイヤを前進させることができる。 【0039】 また、本実施形態のガイドワイヤ2は、屈曲されても永久変形を生じにくいことから、ガイドワイヤ2が冠状動脈系のような非常に曲がりくねった通路を通る時も、永久変形をきたすおそれがない。 【0040】 その結果、たとえば図2に示すように、ガイドワイヤ2を、腕や足の付け根部分の大動脈42から心臓40の冠状動脈の部分まで挿入する際などのように、ワイヤの先端付近で強い曲がり部分を有する血管内へも容易に追随して挿入することが可能になる。 【0041】 さらに、本実施形態のワイヤ芯線4は、異種金属同士を接続させる構造ではないために、接続部の強度が問題となることはない。しかも、ワイヤ芯線4の熱処理は比較的に容易に行うことができるため、生産性が高く、低コストでガイドワイヤを製造することができる。 【0042】 第2実施形態 図3に示すように、本実施形態の医療用ガイドワイヤ2aは、図1に示す実施形態の医療用ガイドワイヤ2に比較して、コイルスプリング12を有さず、ワイヤ芯線4の全体に、生体適合性コーティング膜30が一体的に被覆してある点が相違するのみであり、共通する部材には共通する符号を付し、その説明を一部省略する。 【0043】 生体適合性コーティング膜30としては、特に限定されないが、たとえばポリエチレンなどのオレフィン類、ポリイミドやポリアミドなどの含窒素ポリマー、シロキサンポリマー、フッ素樹脂ポリマー(たとえばPTFE)など、医療用として用いられる通常のポリマーなどが用いられる。また、コーティング膜としては、ポリマーに限定されず、炭化珪素、パイロライトカーボンやダイアモンドライクカーボンなどのカーボンなど、無機物のコーティング膜であっても良い。 【0044】 生体適合性コーティング膜30の膜厚は、ワイヤ2aにおける近位端大径部20の外周に比べて、遠位端小径部22,24,26の外周で厚くなり、ワイヤ2aの外径が、遠位端に向けて滑らかに変化するようになっている。 【0045】 本実施形態に係る医療用ガイドワイヤ2aにおいても、前記の第1実施形態に係るガイドワイヤ2と同様な作用効果を奏する。 【0046】 第3実施形態 図4に示すように、本実施形態では、ワイヤ芯線4の全体に、バネ性向上用熱処理するのではなく、遠位端側小径部22,24,26の範囲MAを断熱材などでマスクし、近位端側大径部20のみをバネ性向上用熱処理を行う点が相違するのみであり、共通する部材には共通する符号を付し、その説明を一部省略する。 【0047】 この遠位端側小径部22,24,26の範囲MAを熱処理しないことにより、この遠位端側小径部22,24,26の範囲MAにおいて、使用者の好みに応じて曲線部を付けるなどのクセ付けがし易くなると共に、近位端側の腰の強さが増加することで挿入性が改善され、医療用ガイドワイヤとして、さらに好ましい。その他の作用効果は、前記の第1実施形態に係るガイドワイヤ2と同様である。 【0048】 なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。 【実施例】 【0049】 以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。 【0050】 実施例1 図1に示す医療用ガイドワイヤ2を作製した。まず、ワイヤ芯線4を形成するために、JISG4401の炭素鋼線材(主成分が鉄で炭素が0.80重量%)を、次の方法で加工した。細長い直径約10mmのロッドを常温にて加工度97%に伸線加工し、直径0.34mmの線材とした。次に、この線材の端部に、先端に向けて徐々に外径が細くなるテーパ加工を施し、遠位端側小径部22,24,26を形成した。 【0051】 ワイヤ芯線4の全長寸法は、約1800mmで、近位端側大径部20での外径が0.34mm、遠位端側小径部22,24,26の長さが、それぞれ100mm、30mmおよび40mmであり、それぞれの外径は、0.16mm、0.10mmおよび0.06mmであった。 【0052】 次に、このワイヤ芯線4に対して、オーステンパー処理を行った。すなわち、この芯線4を、真空中で、820〜880°Cの温度に0.1〜1時間ほど加熱し、その後、この芯線4を、250〜400°Cの温度の塩浴に約1〜2時間ほど浸し、取り出して自然冷却した。 【0053】 この時、得られた芯線4の特性を測定したところ、引張強さが1700MPa、硬度(Hv)が450、縦弾性係数が280であり、弾性伸びが15%であった。なお、このオーステンパー処理する前の芯線4の特性を測定したところ、引張強さが1300MPa、硬度(Hv)が300、縦弾性係数が200であり、弾性伸びが8%であった。 【0054】 次に、芯線4における遠位端小径部22,24,26の外周にコイルスプリング12を装着した。コイルスプリング12は、ステンレスコイルで構成した。コイルの線径は60μmであり、コイル部分には、親水潤滑化コーティングを施した。コイルスプリング12の長さは、約200mmであり、大径部20とほぼ同じ大きさの巻き外径を有していた。 【0055】 ワイヤ芯線4とコイルスプリング12とは、ロー付けで互いに固定した。ワイヤ芯線4におけるコイルスプリング12で覆われていない露出部分である大径部20の外周は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で被覆した。先端のボール部10は、Sn/Ag合金で、ロー付けにより接合した。 【0056】 このガイドワイヤ2について、以下の実験を行った。 【0057】 (トルク伝達特性) ガイドワイヤのトルク伝達性については、次の実験を行った。すなわち、図5に示す人の冠状動脈を模擬した治具50の内部に、ガイドワイヤを挿入し、ガイドワイヤの近位端(手元側)を、モータにより所定の手元側角度720度で捻り回転させ、そのガイドワイヤの遠位端(先端)における先端回転角度(捻れ角)を調べた。結果を図6に示す。図6に示す理論曲線に近いほど、トルク伝達性が良好であり、操作性に優れている。トルク伝達性が良いと、手元側の回転力が先端まで伝わりやすく、血管分岐選択で、目的とする血管に前進させやすくなり、挿入作業性が向上する。 【0058】 (押し込み特性) 押し込み特性(腰の強さ)を測定するために、ガイドワイヤ2における近位端側大径部20を、その長手方向に沿って20mmの距離で一対のプーリーにより支持し、プーリーの間の中央に位置する部分を、プーリーの反対側からフォースゲージにてワイヤに対して直角方向に押し込む。そして、ワイヤが2.0mm撓んだ時の押し込み荷重値により評価した。押し込み荷重値が高いほど、押し込み特性に優れている。結果を表1に示す。押し込み荷重値は、少なくとも3N以上が好ましい。 【0059】 (永久歪み測定) ガイドワイヤの永久歪みを測定するために、外径5mmのステンレス製ロッドに、ワイヤ2における近位端側大径部20を、37°Cの恒温水槽中で一回転巻き付け、5秒間保持し、塑性変形させた後に、その部分の変形角度を読み取った。変形角度が低いほど、永久歪みが起こりにくいことを示し、ガイドワイヤとして用いる場合には、変形角度は、好ましくは80度以下であることが好ましい。結果を表2に示す。 【0060】 【表1】
【0061】 【表2】
【0062】 実施例2 ワイヤ芯線4における近位端側大径部20の外径を0.26mmとし、それに合わせて遠位端小径部22,24,26の外径も細くすると共に、コイルスプリング12の巻き径も細くした以外は、実施例1と同様にして医療用ガイドワイヤを作製した。 【0063】 実施例1と同様にしてガイドワイヤのトルク伝達特性、押し込み特性、永久歪みを測定した。トルク伝達特性の結果を図6に示し、押し込み特性の結果を表1に示し、永久歪み測定の結果を表2に示す。 【0064】 参照例1−1 ワイヤ芯線4をステンレス(SUS304)で構成した以外は、実施例1と同様にして医療用ガイドワイヤを作製した。 【0065】 実施例1と同様にしてガイドワイヤのトルク伝達特性、押し込み特性、永久歪みを測定した。トルク伝達特性の結果を図6に示し、押し込み特性の結果を表1に示し、永久歪み測定の結果を表2に示す。 【0066】 参照例1−2 ワイヤ芯線4をステンレス(SUS304)で構成した以外は、実施例2と同様にして医療用ガイドワイヤを作製した。 【0067】 実施例1と同様にしてガイドワイヤのトルク伝達特性、押し込み特性、永久歪みを測定した。トルク伝達特性の結果を図6に示し、押し込み特性の結果を表1に示し、永久歪み測定の結果を表2に示す。 【0068】 参照例2−1 ワイヤ芯線4をNiTi合金で構成した以外は、実施例1と同様にして医療用ガイドワイヤを作製した。 【0069】 実施例1と同様にしてガイドワイヤのトルク伝達特性、押し込み特性、永久歪みを測定した。トルク伝達特性の結果を図6に示し、押し込み特性の結果を表1に示し、永久歪み測定の結果を表2に示す。 【0070】 参照例2−2 ワイヤ芯線4をNi−Ti合金で構成した以外は、実施例2と同様にして医療用ガイドワイヤを作製した。 【0071】 実施例1と同様にしてガイドワイヤのトルク伝達特性、押し込み特性、永久歪みを測定した。トルク伝達特性の結果を図6に示し、押し込み特性の結果を表1に示し、永久歪み測定の結果を表2に示す。 【0072】 参照例3−1 ワイヤ芯線4における近位端側大径部20をSUS304で構成し、遠位端側小径部22,24,26をNi−Ti合金で構成し、それらを溶接した以外は、実施例1と同様にして医療用ガイドワイヤを作製した。 【0073】 実施例1と同様にしてガイドワイヤのトルク伝達特性、押し込み特性、永久歪みを測定した。トルク伝達特性の結果を図6に示し、押し込み特性の結果を表1に示し、永久歪み測定の結果を表2に示す。 【0074】 参照例3−2 ワイヤ芯線4における近位端側大径部20をSUS304で構成し、遠位端側小径部22,24,26をNi−Ti合金で構成し、それらを溶接した以外は、実施例2と同様にして医療用ガイドワイヤを作製した。 【0075】 実施例1と同様にしてガイドワイヤのトルク伝達特性、押し込み特性、永久歪みを測定した。トルク伝達特性の結果を図6に示し、押し込み特性の結果を表1に示し、永久歪み測定の結果を表2に示す。 【0076】 評価 図6、表1および表2に示すように、実施例1および2のガイドワイヤは、参照例1−1〜3−2に比較して、トルク伝達特性が良好であると共に、押し込み特性に優れ、しかも、永久歪みが小さいことが確認できた。特に、実施例2に示すように、ワイヤ芯線の外径を細くしたとしても、トルク伝達特性が良好であると共に、押し込み特性に優れ、しかも、永久歪みが小さいことが確認できた。 【0077】 この特性により、本発明のガイドワイヤは、たとえば脳血管等の細く湾曲の強い血管に挿入する時も、途中で座屈することなく前進させることができ、ガイドワイヤ近位端部の操作力をワイヤ遠位端部まで良好に伝えることが可能となることが確認できた。 【図面の簡単な説明】 【0078】 【図1】図1は本発明の一実施形態に係る医療用ガイドワイヤの一部断面概略図である。 【図2】図2は医療用ガイドワイヤの使用例を示す図である。 【図3】図3は本発明の他の実施形態に係る医療用ガイドワイヤの概略断面図である。 【図4】図4は本発明の他の実施形態に係る医療用ガイドワイヤの製造過程を示す概略図である。 【図5】図5は本発明の実施例に係る医療用ガイドワイヤのトルク伝達特性を試験するための模擬冠状動脈の概略図である。 【図6】図6はその医療用ガイドワイヤのトルク伝達特性を示すグラフである。 【符号の説明】 【0079】 2,2a… 医療用ガイドワイヤ 4… ワイヤ芯線 10… ボール部 12… コイルスプリング 20… 近位端側大径部 21,23,25… テーパ部 22,24,26… 遠位端側小径部 30… 生体適合性コーティング膜
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| 【出願人】 |
【識別番号】594170727 【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
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| 【出願日】 |
平成16年8月18日(2004.8.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100100066 【弁理士】 【氏名又は名称】愛智 宏
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| 【公開番号】 |
特開2006−55245(P2006−55245A) |
| 【公開日】 |
平成18年3月2日(2006.3.2) |
| 【出願番号】 |
特願2004−237964(P2004−237964) |
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