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【発明の名称】 リン酸カルシウム系骨補填材
【発明者】 【氏名】伊藤 まどか
【住所又は居所】神奈川県秦野市曽屋30番地 東芝セラミックス株式会社開発研究所内

【要約】 【課題】骨形成速度と生体吸収速度とのバランスが良好であり、インプラント初期において、優れた骨形成、骨誘導促進作用を有し、骨膜に類似した機能を備えたリン酸カルシウム系骨補填材を提供する。

【解決手段】β‐リン酸三カルシウムおよび/またはα‐リン酸三カルシウムからなり、球状の気孔が全体にわたって連通した多孔質構造を有し、気孔率が55%以上75%以下、平均気孔径が100μm以上200μm以下、各気孔間の連通部の径が20μm以上100μm以下である多孔質顆粒が、伸縮可能な袋状の生体吸収性を有する担体内に充填されているリン酸カルシウム系骨補填材を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸カルシウム系化合物からなる多孔質顆粒が、袋状の生体吸収性を有する担体内に充填されていることを特徴とするリン酸カルシウム系骨補填材。
【請求項2】
前記担体が伸縮可能であることを特徴とする請求項1記載のリン酸カルシウム系骨補填材。
【請求項3】
前記担体が開口部に縫合糸を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のリン酸カルシウム系骨補填材。
【請求項4】
前記担体が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸‐ポリグリコール酸共重合体、コラーゲン、ゼラチン、キチンおよびキトサンのうちのいずれか1種または2種以上からなることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載のリン酸カルシウム系骨補填材。
【請求項5】
前記担体の表面に、骨形成因子または骨成長因子が担持されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のリン酸カルシウム系骨補填材。
【請求項6】
前記骨形成因子または骨成長因子が、BMP、TGF‐β、FGF、IGFおよびPDGFのうちの少なくともいずれか1種であることを特徴とする請求項5記載のリン酸カルシウム系骨補填材。
【請求項7】
前記多孔質顆粒が、β‐リン酸三カルシウムおよび/またはα‐リン酸三カルシウムからなり、球状の気孔が全体にわたって連通した多孔質構造を有し、気孔率が55%以上75%以下、平均気孔径が100μm以上200μm以下、各気孔間の連通部の径が20μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載のリン酸カルシウム系骨補填材。
【請求項8】
前記β‐リン酸三カルシウムのCaの一部がLi,Na,K,MgまたはZnのうちのいずれかにより置換されていることを特徴とする請求項7記載のリン酸カルシウム系骨補填材。
【請求項9】
前記多孔質顆粒は、リン酸三カルシウムのCaの一部がMgで置換され、β‐リン酸カルシウムおよびα‐リン酸カルシウムの2相からなることを特徴とする請求項7記載のリン酸カルシウム系骨補填材。
【請求項10】
前記多孔質顆粒が、骨形成因子または骨成長因子を担持し、薬剤を徐放する構成を備えていることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれかに記載のリン酸カルシウム系骨補填材。
【請求項11】
前記骨形成因子または骨成長因子が、BMP、TGF‐β、FGF、IGFおよびPDGFのうちの少なくともいずれか1種であることを特徴とする請求項10記載のリン酸カルシウム系骨補填材。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、生体親和性に優れたリン酸カルシウム系化合物を主成分とし、骨膜に類似した機能を備えた骨補填材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、骨腫瘍の摘出や外傷等による骨欠損部は、骨補填材を用いて修復されるようになってきた。
前記骨補填材の材質としては、優れた生体親和性および骨伝導能を有していることから、ハイドロキシアパタイト(HAp)、β‐リン酸三カルシウム(β‐TCP)を始めとするリン酸カルシウム系セラミックスが多く用いられている。
例えば、HApは、骨補填材として生体内に埋入した場合、これを足場として速やかに骨修復が行われ、新生骨と直接結合するという優れた骨伝導能を発揮する。また、β‐TCPも、生体内で分解され、徐々に新生骨に置換するという特徴を有している。
【0003】
このため、従来から、例えば、特許文献1および2等に開示されているように、HApやβ‐TCPを多孔体または多孔質顆粒として、その個体表面を生体吸収性有機材料または生体適合性の高い材料で覆ったり、濃縮体液を付与したりすることにより、前記多孔体の気孔内部や顆粒間に新生骨を形成させる態様の骨補填材が提案されている。
これらの骨補填材は、骨欠損部に埋入されると、浸潤する骨溶解性細胞によって再吸収され、同時に、骨組織が骨芽細胞によって再生され、経時的に自家骨に置換されていくものである。
【0004】
さらに、骨の形成を促進するため技術として、生体内空間に配置した骨補填材を骨膜により覆う方法が検討されている。
骨膜は、骨補填材を生体内の所定位置に保持するとともに、リモデリングにおいて重要な細胞形成機能を有している。このため、骨膜で骨補填材を覆うことにより、骨補填材と骨細胞との接触部位のみならず、該骨補填材と骨膜との接触部位からも、骨の細胞形成が開始され、骨の形成が促進される。
【特許文献1】特開2003−10310号公報
【特許文献2】特開2003−320009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような多孔体からなる骨補填材は、その気孔率、気孔径、気孔構造、結晶化度、溶解度、粒子の大きさ等の種々のパラメータが、骨形成および骨吸収に大きく影響する。例えば、気孔径が大きすぎたり、気孔率が高すぎたりすると、再吸収が過剰となり、新生骨のための足場を提供することができなくなる。逆に、気孔径が小さすぎたり、気孔率が低すぎたりして、再吸収速度が骨形成速度よりも速い場合には、しばしば炎症反応を引き起こす。
このため、多孔質構造のみに依存した骨補填材は、その作用の適正なコントロールが難しいものであった。
【0006】
一方、骨補填材の材質の面からは、上述したように、β‐TCPは、生体吸収性に優れており、骨伝導能の性質と併せることにより、好適に用いることができる。
しかしながら、β‐TCPは、生体内での吸収速度が大きいために、骨生成が遅い部位や大きな骨欠損部においては、骨形成速度とβ‐TCPの生体吸収速度とのバランスを保持することが困難であるという課題を有していた。
【0007】
また、上述したような骨膜を利用した骨形成は、重要性が高い技術ではあるが、骨膜を患者本人から入手するためには外科的な手術が必要であり、採取量にも限界があることから、骨膜を移植することは困難である場合が多い。
【0008】
したがって、上記のような生体親和性に優れたリン酸カルシウム系化合物を主成分とした骨補填材においては、骨形成速度と生体吸収速度とのバランスが保持されていることが望ましく、さらには、骨膜により覆う手法を用いなくても、それ自体で、骨膜に類似した機能をも発揮し得る骨補填材が理想的である。
【0009】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、骨形成速度と生体吸収速度とのバランスが良好であり、インプラント初期において、優れた骨形成、骨誘導促進作用を有しており、骨膜に類似した機能を備えたリン酸カルシウム系骨補填材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るリン酸カルシウム系骨補填材は、リン酸カルシウム系化合物からなる多孔質顆粒が、袋状の生体吸収性を有する担体内に充填されていることを特徴とする。
このように、骨補填材を、袋状体に多孔質顆粒を詰めた構成とすることにより、骨膜に類似した機能を持たせることができ、骨欠損部への骨形成に不要な組織の侵入を防止しつつ、骨形成の促進を図ることができる。
【0011】
前記担体は、伸縮可能であることが好ましい。
骨欠損部への埋入の際に、拡張自在とすることにより、容易に該骨欠損部に適合した形状とすることができ、骨形成に不要な組織等の侵入防止を図ることができる。
【0012】
また、前記担体は、開口部に縫合糸を備えていることが好ましい。
内部に充填される前記多孔質顆粒が、袋状の担体からあふれたり、こぼれたりするのを防止するために、担体と同様の材質からなる縫合糸により封をすることが好ましい。
【0013】
前記担体は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸‐ポリグリコール酸共重合体、コラーゲン、ゼラチン、キチンおよびキトサンのうちのいずれか1種または2種以上からなることが好ましい。
担体は、生体内で拡張可能とするためには、弾力性、伸縮性があり、かつ、生体適合性、生体内での分解・吸収性に優れた材質により構成されることが好ましく、上記のような材質からなる繊維を編んで袋状としたものが好適である。
【0014】
さらに、前記担体の表面には、骨形成因子または骨成長因子が担持されていることが好ましい。
生体組織と直接接触する担体表面に、骨形成因子、成長因子を担持させることにより、インプラント初期における骨形成、骨誘導を促進することができる。
前記骨形成因子または骨成長因子は、具体的には、BMP、TGF‐β、FGF、IGFおよびPDGFのうちの少なくともいずれか1種であることが好ましい。
【0015】
また、前記多孔質顆粒は、β‐リン酸三カルシウム(β‐TCP)および/またはα‐リン酸三カルシウム(α‐TCP)からなり、球状の気孔が全体にわたって連通した多孔質構造を有し、気孔率が55%以上75%以下、平均気孔径が100μm以上200μm以下、各気孔間の連通部の径が20μm以上100μm以下であることが好ましい。
担体内に充填される多孔質顆粒は、上記材質であれば、優れた骨との同化性、癒着性、生体親和性、生体適合性有しており、また、上記のような多孔質の性状であれば、多孔体の表面積、血液や体液等の浸透性、細胞の侵入および付着容易性等に優れていることから、骨補填材としての優れた機能を発揮することがきる。
【0016】
前記β‐TCPのCaの一部がLi,Na,K,MgまたはZnのうちのいずれかにより置換されていることが好ましい。
これにより、焼成温度をHApと同程度まで高くすることができるため、β‐TCPセラミックスの機械的強度の向上および焼結性の改善を図ることができる。
【0017】
あるいはまた、前記多孔質顆粒は、TCPのCaの一部がMgで置換され、β‐TCPおよびα‐TCPの2相からなることが好ましい。
Mgでの部分置換により、β‐TCPセラミックスの機械的強度の向上および焼結性の改善が図られ、しかも、Mg源の添加量の変化により、β‐TCPおよびα‐TCPの割合および気孔率も制御可能であり、これにより、該多孔質顆粒の生体吸収速度を調整することもできる。
【0018】
さらに、前記多孔質顆粒は、骨形成因子または骨成長因子を担持し、薬剤を徐放する構成を備えていることが好ましい。
前記多孔質顆粒に、抗生物質、骨形成促進に有効な薬剤等を担持させて、インプラント初期の段階で徐放させ、また、外側の担体と同様に、骨形成因子または骨成長因子を担持させることにより、感染症の予防作用等の薬理機能および組織再生を促進する機能をバランスよく発揮させることができる。
前記骨形成因子または骨成長因子は、外側の担体と同様に、BMP、TGF‐β、FGF、IGFおよびPDGFのうちの少なくともいずれか1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
上述したとおり、本発明に係るリン酸カルシウム系骨補填材は、外側の袋状の担体により、他の組織等が骨欠損部に侵入することを防止して、骨面からの骨形成作用が妨げられないように保持することができるとともに、前記担体および内部に充填したリン酸カルシウム系化合物からなる多孔質顆粒からの骨形成因子や成長因子等の徐放作用により、骨形成、骨誘導を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について、より詳細に説明する。
本発明に係るリン酸カルシウム系骨補填材は、リン酸カルシウム系化合物からなる多孔質顆粒が、袋状の生体吸収性を有する担体内に充填されているものである。
すなわち、生体親和性に優れたリン酸カルシウム系化合物を主成分とし、これを多孔質顆粒状とし、袋状の生体吸収性を有する担体内に充填させた構成からなるものである。
このような構成とすることにより、骨膜に類似した機能を持たせることができ、骨欠損部への骨形成に不要な組織の侵入を防止しつつ、骨形成の促進を図ることができる。
【0021】
前記骨補填材の外側に相当する袋状の担体は、伸縮可能に構成されることが好ましく、これにより、骨欠損部に埋入する際に、自在に拡張させることができ、容易に該骨欠損部に適合した形状とすることができ、骨形成に不要な組織等の侵入防止を図ることができる。
このように、担体は、生体内で拡張可能とするためには、繊維を編んで袋状に構成されたものであることが好ましい。
前記繊維の材質は、生体適合性に優れており、しかも、生体内での分解・吸収性に優れ、弾力性、伸縮性があることが好ましく、具体的には、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸‐ポリグリコール酸共重合体、コラーゲン、ゼラチン、キチンおよびキトサン等を用いることができる。
【0022】
また、骨補填材は、骨欠損部に埋め込まれた後、これを覆うようにして、筋肉および皮膚を縫合する。このとき、内部に充填される顆粒が、袋状の担体からあふれたり、こぼれたりすることを防止するために、担体の開口部も、顆粒充填後、封をされることが好ましく、そのための縫合糸が、予め、担体に備えられていることが好ましい。
この縫合糸は、担体と同様の材質からなることが好ましい。
【0023】
さらに、前記担体の表面には、骨形成因子または骨成長因子が担持されていることが好ましい。
生体組織と直接接触する担体表面に、骨形成因子、成長因子を担持させることにより、インプラント初期における骨形成、骨誘導を促進することができる。
これらの骨形成因子または骨成長因子としては、BMP(骨形成因子)、TGF‐β(トランスフォーミング増殖因子)、FGF(繊維芽細胞増殖因子)、IGF(インスリン様増殖因子)およびPDGF(血小板由来増殖因子)等が挙げられる。これらの因子は、1種類のみでも、複数種混合して用いてもよい。
【0024】
一方、前記袋状の担体内に充填される多孔質顆粒は、リン酸カルシウム系化合物からなるものであり、特に、β‐TCPおよび/またはα‐TCPからなるものであることが好ましい。
β‐TCPは、人体への適用も既に認められており、骨との同化性、癒着性、生体親和性、生体適合性に優れた好適な材料である。
α‐TCPは、溶解性が高く、機械的強度が低いことから、単独では、骨補填材として用いることは難しいが、インプラント初期段階において重要な感染症の予防、骨形成促進に有効な薬剤をα‐TCPに担持させることにより、その溶解性の速さを活かすことができる。
【0025】
前記β‐TCPは、Caの一部がLi,Na,K,MgまたはZnのうちのいずれかにより置換されていてもよい。
β‐TCPは、1120〜1180℃でα‐TCPに転移するため、β相を維持するためには、通常、焼成温度を低くしなければならない。
これに対して、β‐TCP粉末合成時にMg源を添加することにより、Caの一部をMgにより容易に一部置換することができ、このようなβ‐TCPは、焼成温度が1200℃であっても、β相を維持することができ、高温での焼成が可能となるため、高強度の焼結体(セラミックス)を得ることができる。
【0026】
特に、TCPのCaの一部がMgで置換され、β‐TCPおよびα‐TCPの2相からなることが好ましい。
CaをMgで部分置換することにより、焼成温度をHApと同程度まで高くすることができるため、β‐TCPセラミックスの機械的強度の向上および焼結性の改善を図ることができる。
上記のようなα‐TCPとβ‐TCPとの2相構造は、Mg源の添加量により、両者の割合も制御することができる。さらに、気孔率も制御することができ、患者の年齢や性別または患部の大きさ等に応じて生体吸収速度を調整することも可能である。
【0027】
このような2相構造からなる多孔質顆粒によれば、α‐TCP多孔体は、β‐TCPに比べて、生体内での分解速度が速いため、インプラント初期の段階で分解・吸収されるが、初期においては、α‐TCP多孔体に担持させた抗生物質によって感染症の予防作用を奏することができる。
また、α‐TCPおよびβ‐TCP顆粒は、密に充填されることにより、顆粒間の隙間のみならず、隣接する顆粒の気孔同士も連通した構造となるため、骨補填材内部への新生骨および生体組織等の侵入が容易となる。
したがって、薬理機能および組織再生を促進する機能をバランスよく備えた骨補填材となる。
【0028】
上記のように、前記多孔質顆粒は、感染症の予防、骨形成促進に有効な薬剤を徐放する構成を備えていることが好ましく、また、外側の担体と同様に、骨形成因子または骨成長因子を担持していることが好ましい。
【0029】
また、前記多孔質顆粒は、球状の気孔が全体にわたって連通した多孔質構造を有していることが好ましい。
気孔同士が連通していることにより、該多孔体の内部への細胞の侵入が促進されるため、骨の形成促進を図ることができる。
なお、球状の気孔とは、厳密な真球状に限定されるものではなく、真球がやや扁平したり、歪んだりした形状等の気孔も含む。
【0030】
また、前記多孔質顆粒としては、多孔体の表面積、血液や体液等の浸透性、細胞の侵入および付着容易性等の観点から、気孔率が55%以上75%以下、平均気孔径が100μm以上200μm以下であることが好ましい。
前記平均気孔径が100μm未満である場合は、該多孔体の内部に、骨細胞または骨細胞となり得る細胞が侵入しにくくなり、気孔内部での骨の形成促進を十分に図ることができない。
一方、前記平均気孔径が200μmを超える場合は、空間が大きすぎるため、気孔内に侵入した細胞が係留されにくく、十分に定着することが困難となり、この場合も、気孔内部での骨の形成促進効果は不十分となる。
【0031】
また、隣接する前記気孔間の連通部の径は、20μm以上100μm以下であることが好ましい。
上記範囲内の大きさを有する連通部であれば、細胞や生体組織が侵入可能であり、多孔体内部での骨の形成促進を図ることができる。
なお、この気孔間の連通部の径は、水銀ポロシメータを用いた細孔径分布測定から求めることができる。
【0032】
上記のような構造を有するリン酸カルシウム系セラミックスの多孔質顆粒は、リン酸カルシウム系セラミックス原料を含むスラリーを撹拌起泡させる方法によって、容易に作製することができる。
撹拌起泡により気孔が形成された多孔体は、気孔を区画する骨格自体は緻密であり、気孔がほぼ球状となり、高強度を得ることができ、また、毛管現象により、細胞や血液等が浸透しやすい性状が得られる。さらに、単位体積当たりの表面積が大きく、侵入した細胞の足場としても好適な性状となりやすい等の優れた特性を有している。
【0033】
前記多孔質顆粒の大きさは、骨欠損部の大きさや形状等に応じて、適宜調整されるが、取扱い容易性、充填性の観点から、直径0.5〜5.0mm程度であることが好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
[実施例]
まず、ポリL‐乳酸(PLLA)からなる袋状の担体を、以下のようにして作製した。
L‐ラクチドと、これに対して5質量%のリパーゼとを、窒素雰囲気下、130℃で7日間放置し、反応物をクロロホルムを用いて抽出し、乾燥させて、PLLAを得た。このPLLAを、太さ約0.1mmの繊維状に加工して編み、伸縮性のある袋状の担体とした。
【0035】
次に、α‐TCPおよびβ‐TCPのセラミックスからなる多孔質顆粒を以下のようにして作製した。
平均粒子径1μmのβ‐TCP原料粉末400.00gに、分散媒として15重量%ポリエチレンイミン水溶液327.27gを加え、ボールミルで48時間混合してスラリーを調製した。
得られたβ‐TCPスラリー100.00gに起泡剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル0.24gを添加し、機械的撹拌により泡沫状のスラリーを得た。
この泡沫状スラリーに、架橋剤としてソルビトールポリグリシジルエーテル1.96gを添加し、混合した後、型に鋳込み、脱型して多孔質ゲル化体を得た。
この多孔質ゲル化体を30℃、湿度90%の加湿乾燥機内で一昼夜乾燥させた後、1200℃で1時間焼成し、β‐TCPからなる多孔質セラミックスを得た。
これを粉砕し、直径0.5〜2mmの顆粒状とした。
α‐TCPセラミックスからなる多孔質顆粒も、α‐TCP粉末を原料として、上記と同様に作製した。
α‐TCPおよびβ‐TCPのセラミックスの多孔質顆粒はいずれも、気孔が全体にわたって連通しており、気孔率は55〜75%、平均気孔径は150μm、各気孔間の連通部の平均径は50μmであった。
【0036】
上記により得られた担体およびβ‐TCPセラミックス多孔質顆粒に、rhBMP‐2含有リン酸緩衝液(PBS)を含浸させ、前記担体表面および多孔質顆粒の気孔内に、rhBMP‐2を担持させた。
また、α‐TCPセラミックス多孔質顆粒には、抗生物質としてゲンタマイシンを担持させた。
【0037】
そして、上記により作製された担体、β‐TCPセラミックス多孔質顆粒およびα‐TCPセラミックス多孔質顆粒を用いて、以下のように、骨補填材を構成し、骨形成の評価試験を行った。
まず、体重3kg前後の日本白色成熟家兎の大腿骨に直径6mm、深さ10mmの穴を穿孔し、この部分に、上記により作製した袋状の担体を埋入した。
この担体内に、上記により作製したβ‐TCPセラミックス多孔質顆粒およびα‐TCPセラミックス多孔質顆粒を混合したものを充填し、封をした後、筋肉、皮膚の順に縫合した。
このようにして、骨補填材を埋め込み、術後4,8,12,16週経過後、再び切開して大腿骨を摘出し、骨補填材周辺の組織から非脱灰研磨標本を作製して、HE染色による組織学的な評価を行った。
【0038】
その結果、術後4週目には、多孔質顆粒の気孔の一部が分解・吸収される様子が観察された。また、担体と隣接した組織との間で、炎症反応は認められなかった。
術後8週目には、多孔質顆粒の分解・吸収が進み、新生骨の侵入が観察された。
術後12週目には、多孔質顆粒部分での活発な骨形成が観察され、一部では、新生骨髄を伴う新生骨の形成が確認された。また、外側の担体も、一部で分解・吸収が観察された。
術後16週目には、多孔質顆粒の分解がさらに進むとともに、経時的に新生骨の量が増加し、幼若な新生骨が徐々に成熟していく様子が観察された。また、外側の担体も、分解・吸収が進んでいる様子が観察され、周囲における炎症反応等も認められなかった。
【0039】
以上の結果から、本発明に係る骨補填材は、優れた骨伝導能を有しており、インプラント初期において骨形成を促進することが認められた。
また、分解・吸収速度の異なるα‐TCPとβ‐TCPとを複合化させることにより、炎症反応を引き起こすことなく、骨形成速度に応じて、生体吸収速度を調整することができることが認められた。
【出願人】 【識別番号】000221122
【氏名又は名称】東芝セラミックス株式会社
【住所又は居所】東京都品川区大崎一丁目6番3号
【出願日】 平成17年5月18日(2005.5.18)
【代理人】 【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂

【公開番号】 特開2006−320442(P2006−320442A)
【公開日】 平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願番号】 特願2005−144845(P2005−144845)