| 【発明の名称】 |
抗がん剤徐放シート及びその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】中山 泰秀
【氏名】根本 泰
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| 【要約】 |
【課題】外科処理した部位の生体皮下組織に、処置部位を被覆するようにそのまま留置し、縫合するように使用される抗がん剤徐放シートを提供する。
【解決手段】エオシン化ゼラチン等の可視光架橋物質と、ハイドロゲンドナーと、抗腫瘍剤とを含む水溶液を面状に展延し、可視光を照射することにより光架橋・不溶化することを特徴とする抗がん剤徐放シートの製造方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記(A)の化合物と、 ハイドロゲンドナーと、 抗腫瘍剤と、 を含む水溶液を面状に展延し、可視光を照射することにより光架橋・不溶化することを特徴とする抗がん剤徐放シートの製造方法。 (A)キサンテン系色素で修飾した、コラーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ケラタン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、エラスチン、ヘパラン硫酸、ラミニン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、オステオネクチン、エンタクチン、ガゼイン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリシドール、ポリグリシドールの側鎖エステル化体、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレートの共重合体、ヒドロキシエチルメタクリレートとメタクリル酸の共重合体、アルギン酸、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される少なくとも1種。 【請求項2】 請求項1において、面状に展延する水溶液の厚みは10μm〜5mmであることを特徴とする抗がん剤徐放シートの製造方法。 【請求項3】 請求項1又は2において、ハイドロゲンドナーがチオール、アルコール、還元糖、ポリフェノール又は1分子内に少なくとも1個のN−アルキル及び/又はN,N−ジアルキルアミノ基を有する化合物であることを特徴とする抗がん剤徐放シートの製造方法。 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれか1項において、キサンテン系色素がエオシンであることを特徴とする抗がん剤徐放シートの製造方法。 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれか1項において、(A)がゼラチンであることを特徴とする抗がん剤徐放シートの製造方法。 【請求項6】 請求項5において、ゼラチンが1分子中に1個〜10個のキサンテン系色素分子を導入したものであることを特徴とする抗がん剤徐放シートの製造方法。 【請求項7】 請求項6において、ゼラチンが1分子中に2個〜6個のキサンテン系色素分子を導入したものであることを特徴とする抗がん剤徐放シートの製造方法。 【請求項8】 請求項1ないし7のいずれか1項の製造方法により製造された抗がん剤徐放シート。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、摘出術後の組織周辺に抗腫瘍剤を投与するための抗がん剤徐放シートの製造方法と、この方法により製造された抗がん剤徐放シートに関する。 【背景技術】 【0002】 がん治療方法自体は広く行われているのは外科療法、化学療法、放射線療法の3つで、前立腺がんのみにホルモン療法が存在する。他に一部で活性リンパ球治療、ワクチン療法、p53遺伝子を利用した遺伝子治療なども検討されているが、新しい技術であり、まだ普及はしていない。 【0003】 外科的に病巣を摘出した後、内科的に抗がん剤投与を行って再発予防する療法を術後補助化学療法と言い、現在広く行われている。 【0004】 カテーテルによって抗がん剤を患部又は摘出部位周辺へ投与する方法も行われている。 【0005】 がん治療の外科手術はリアルタイムの病理観察などで病巣を選択的に高精度で摘出できるようになり、また、MRI、CT画像診断など、診断技術の進歩によってがんの早期の発見、早期の手術が可能となり治療成績が向上してきている。 【0006】 しかしながら、再発も未だに高い頻度で確認され、術後補助化学療法も広く行われている。術後補助化学療法で使用される抗がん剤は、その抗腫瘍効果が現れるドーズ数と副作用が現れるドーズ数が接近又は逆転しているものが多く(一般の医薬品は効果が現れるドーズ数を何倍も超えて初めて副作用が現れるものが多い)、使用によって重篤な副作用が現れるケースが多い。 【0007】 ここでいう再発とは摘出した病巣に残ったがん細胞が、術後補助化学療法からも自己の免疫システムからも逃れて増殖し同一部位でがんが増殖することを言う。転移とは他の離れた箇所でがん細胞が増殖することを言う。 【0008】 抗がん剤は、一般的には正常細胞との選択性はなく、増殖能の大きな細胞が標的となる。正常細胞において増殖能の大きな細胞の典型例としては、腸管上皮細胞、毛根細胞、リンパ球などがあり、抗がん剤による腸管上皮細胞の傷害により嘔吐、食欲減退、毛根細胞の傷害による脱毛、リンパ球傷害による免疫不全などが副作用として現れることが多い。他にも抗がん剤自体の毒性による腎不全なども副作用のひとつである。 【0009】 リンパ球減少に対してもGCSF、MCSFなど白血球増殖因子による対応や吐き気の緩和剤など、抗がん剤副作用の軽減技術も研究されているが、より大きな効果を期待して検討が継続されている。 【0010】 また、術後補助化学療法において抗がん剤を手術部位へ局所的に投与することを目的として、手術部位へカテーテルを留置し、送ポンプを使用して抗がん剤を投与するカテーテルDDS療法などもあるが、カテーテルを留置することによる感染(特に抗がん剤により免疫機能が低下しているため感染リスクは通常よりも高くなっている可能性が大きい)、在宅では管理が困難な送液ポンプを使用することによる入院期間の増長やQOL低下などが課題である。 【0011】 また、カテーテルを利用した抗がん剤投与と言っても、摘出後の周辺組織に薬剤溶液を注入できるスペースがあるわけではないので、実質的に患部に近い上流の血管内への投与に相当し、患部周辺の組織全体へ浸透させるように投与するものではない。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0012】 本発明は、摘出術を終えた組織周辺部位を被覆するようにそのまま留置し、縫合するように使用される抗がん剤徐放シートを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0013】 本発明(請求項1)の抗がん剤徐放シートの製造方法は、下記(A)の化合物と、ハイドロゲンドナーと、抗腫瘍剤と、を含む水溶液を面状に展延し、可視光を照射することにより光架橋・不溶化することを特徴とするものである。 (A)キサンテン系色素で修飾した、コラーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ケラタン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、エラスチン、ヘパラン硫酸、ラミニン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、オステオネクチン、エンタクチン、ガゼイン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリシドール、ポリグリシドールの側鎖エステル化体、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレートの共重合体、ヒドロキシエチルメタクリレートとメタクリル酸の共重合体、アルギン酸、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される少なくとも1種。 【0014】 請求項2の抗がん剤徐放シートの製造方法は、請求項1において、面状に展延する水溶液の厚みは10μm〜5mmであることを特徴とするものである。 【0015】 請求項3の抗がん剤徐放シートの製造方法は、請求項1又は2において、ハイドロゲンドナーがチオール、アルコール、還元糖、ポリフェノール又は1分子内に少なくとも1個のN−アルキル及び/又はN,N−ジアルキルアミノ基を有する化合物であることを特徴とするものである。 【0016】 請求項4の抗がん剤徐放シートの製造方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、キサンテン系色素がエオシンであることを特徴とするものである。 【0017】 請求項5の抗がん剤徐放シートの製造方法は、請求項1ないし4のいずれか1項において、(A)がゼラチンであることを特徴とするものである。 【0018】 請求項6の抗がん剤徐放シートの製造方法は、請求項5において、ゼラチンが1分子中に1個〜10個のキサンテン系色素分子を導入したものであることを特徴とするものである。 【0019】 請求項7の抗がん剤徐放シートの製造方法は、請求項6において、ゼラチンが1分子中に2個〜6個のキサンテン系色素分子を導入したものであることを特徴とするものである。 【0020】 請求項8の抗がん剤徐放シートは、請求項1ないし7のいずれか1項の製造方法により製造されたものである。 【発明の効果】 【0021】 本発明の抗がん剤徐放シート及びその製造方法にあっては、キサンテン系色素で修飾された、生分解性の水溶性高分子化合物を、ハイドロゲンドナーの存在下で可視光照射することにより、架橋不溶化することができる。この水溶液には抗腫瘍剤を含有させてあるため、この抗腫瘍剤がゲルシートに含有されるようになる。抗腫瘍剤はゲルシートから直接拡散放出される。これにより、がん摘出した組織周辺へ抗がん剤を局所的に、中長期に渡って継続的に投与することができる。なお、ゲル基材である高分子化合物は生分解して徐々に生体へ吸収される。 【0022】 本発明では、このように高分子化合物の水溶液を展延して光架橋するようにしており、作成に有機溶媒を一切使用しない。従って、ゲル中に有機溶媒は残留しない。 【0023】 作成された抗がん剤徐放シートを構成するゲルには柔軟性があり、摘出術を終えた組織周辺部位を被覆するように埋入し、縫合することができる。留置されたゲル状のシートは、柔軟であるから、生体組織を極端に圧迫することはない。 【0024】 このゲル状シートは、可視光で架橋して作成されるため、光に弱い抗腫瘍剤であっても、その活性が損なわれない。 【0025】 抗腫瘍剤のドーズ数は、ゲルの分解速度、混合量で調整することが可能である。 【発明を実施するための最良の形態】 【0026】 以下、本発明についてさらに詳細に説明する。 【0027】 本発明では、可視光の照射によりラジカルを発生してゲル化する物質として、前記(A)の物質を用いる。 【0028】 この(A)の化合物におけるキサンテン系色素としてはエオシンが好適であり、上記(A)の物質としてはエオシン化ゼラチンが好適である。このエオシン化ゼラチンについては後に記述する。 【0029】 ゼラチンをキサンテン系色素で修飾する場合、ゼラチン1分子に対するキサンテン系色素分子の導入数は10個以下が好ましく、特に2〜6個であることが好ましい。この導入数が10よりも多いと、ゼラチンが水へ難溶となり、最終的には抗がん剤徐放シートが硬くなり、ゼラチン特有の生分解性が損なわれてしまう。 【0030】 本発明では、ラジカルのカウンターであるプロトン供与体として、ハイドロゲンドナーを用いる。このハイドロゲンドナーとしては、チオール、アルコール、還元糖、ポリフェノール、1分子内に少なくとも1個のN−アルキル及び/又はN,N−ジアルキルアミノ基を有する化合物などが好適であり、特に1分子内に少なくとも1個のN−アルキル及び/又はN,N−ジアルキルアミノ基を有する化合物が好適である。 【0031】 抗腫瘍剤としては、ファルモルビシン、エンドキサン、シクロフォスファミド、シスプラチン、マイトマイシンC、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、タキソテール、タキソール、ドセタキセル、ビノレルビン、ゲムシタビン、カルボプラチン、エトポシド、ドキソルビン、イリノテカン、イフォマイド、5−フロロウラシルなどが例示される。腫瘍の抗がん剤感受性試験の結果を参照して適宜選択することも可能である。 【0032】 (A)の物質の水溶液中の濃度は0.1〜50重量%程度が好ましい。 【0033】 水溶液中における場合の上記(A)、ハイドロゲンドナー、抗腫瘍剤の割合は、(A)1重量部に対してハイドロゲンドナーが0.01〜150重量部、抗腫瘍剤が0.01〜150重量部であることが好ましい。 【0034】 この水溶液を好ましくは厚み10μm〜5mm程度、好ましくは50μm〜500μmとなるように面状に展延し、可視光を照射することにより光架橋し不溶化し、抗がん剤徐放シートとする。 【0035】 展延は、水溶液を成形型上又は成形型内に流し込んだり流し出したりするようにして行われてもよく、刷毛やヘラなどによって成形型に塗布して行ってもよい。成形型の成形面は平面であってもよく、曲面であってもよい。スリット状の開口を有したノズルから幕(カーテン)状に流し出すようにしてシート状に展延してもよい。 【0036】 このように水溶液を展延した後、乾燥させてから可視光を照射してもよい。このように展延後に乾燥させることは、曲面上に展延する場合に好適である。 【0037】 なお、曲面型上に展延させた場合は、型の形状に湾曲したシートを製造することができる。 【0038】 次に、本発明において用いるのに好適なエオシン化ゼラチンについて説明する。 【0039】 ここでゼラチンは、分子量5千〜10万、アミノ基約10〜100個/1分子程度の通常のゼラチンで良い。 【0040】 エオシン化ゼラチンは、下記反応に従ってゼラチンの側鎖にエオシンを導入することにより調製される。 【0041】 【化1】
【0042】 ゼラチン分子へのエオシンの導入数は、例えば、エオシン化ゼラチンの水溶液の吸光度をエオシンの最大吸収波長522nmにおいて測定し、エオシンのモル吸光係数(ε=94755)を基に算出可能であり、ゼラチン1分子に対して1〜10個、特に2〜5個程度が好ましい。このエオシン等の感光基を有する化合物の導入数が少ないとゲル化率が低下し、また必要以上に多くてもゼラチン固有の柔軟性が損なわれる可能性があると共に、水へ難溶性となってしまう。 【0043】 このエオシン化ゼラチンは、粘稠性の液体状である。これを例えば濃度1〜10重量%の水溶液とした場合には、300〜30,000lx程度、特に300〜15,000lx程度の比較的低照度で、生体に対して影響の低い可視光を0.1〜30分程度照射してゲル状に硬化させることができる。 【実施例】 【0044】 以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。 【0045】 実施例1 [エオシン化ゼラチンの合成] ゼラチン(分子量95,000、アミノ基量約37個/分子)に、水溶性カルボジイミドであるN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)の存在下、下記反応でゼラチンの側鎖のアミノ基にエオシンを結合させることにより、ゼラチン1分子当たりエオシン約5個を導入してエオシン化ゼラチンを合成した。 【0046】 【化2】
【0047】 [キサンテン系色素で修飾した高分子、ハイドロゲンドナー及び抗腫瘍剤を含む溶液の調製] 合成したエオシン化ゼラチンを終濃度10重量%、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミンを終濃度1.2重量%、シタラビン(4-amino-1-β-D-arabinofuranosyl-2(1H)-pyrimidinone)を終濃度1.0重量%なるように溶解混合し、キサンテン系色素で修飾した高分子化合物、ハイドロゲンドナー及び抗腫瘍剤を含む溶液とした。 【0048】 [感染防止シートの作成] 放射線滅菌済みのシャーレ(90mm径)へ厚み200μmとなるように、上記溶液を流し込むことにより展延し、トクソーパワーライト(トクヤマ製、ハロゲンランプ、波長400nm〜520nm)にて照射強度200mW/cm2となるように可視光を20分間照射して不溶化させた。架橋後は赤色の弾力のある柔軟なシート(厚み約180μm)が得られた。 【0049】 このシートを50mm×50mm大へ切抜き、300mLの生食中へ浸漬し、25℃で放置した。ここから経時的にアリコットを採取し、放出されたシタラビンの濃度を測定した。測定は高速液体クロマトグラフィーで行い、測定条件は、 カラム:ODSカラム(島津製作所STR−II) カラム温度:40℃ 移動相:30%n-ブタノール水溶液 検出器:紫外可視分光光度計(波長254nm) である。 測定の結果、浸漬から1時間後には約5〜20mg/mLの量で放出され、放出は約1週間継続することが確認された。
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| 【出願人】 |
【識別番号】591108880 【氏名又は名称】国立循環器病センター総長 【識別番号】000005278 【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
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| 【出願日】 |
平成17年5月31日(2005.5.31) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100086911 【弁理士】 【氏名又は名称】重野 剛
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| 【公開番号】 |
特開2006−335657(P2006−335657A) |
| 【公開日】 |
平成18年12月14日(2006.12.14) |
| 【出願番号】 |
特願2005−159377(P2005−159377) |
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