| 【発明の名称】 |
Th1/Th2生体反応インバランスを調節するための組成物 |
| 【発明者】 |
【氏名】桑原 正人
【氏名】榎本 国彦
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| 【要約】 |
【課題】Th1/Th2インバランスあるいはアンバランスの調節、およびTh病の予防および治療に有効な組成物を提供する。
【解決手段】シママンネンタケを含む、Th1/Th2反応調節用組成物、当該組成物を含むTh病の治療・予防薬、および当該組成物を含むTh2反応の恒常性の維持とこのような解析から得られる疾患の予防・予知を明らかにする診断薬の作用を有する経口摂取物。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シママンネンタケを含む、Th1/Th2生体反応バランスを調節するための組成物。 【請求項2】 Th1/Th2生体反応インバランスを調整し正常とせしめるための、請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 医薬用または経口摂取物用である、請求項1または2に記載の組成物。 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の組成物を含む、Th1あるいはTh2病の治療または予防のための医薬。 【請求項5】 Th2病が、アレルギー性疾患、炎症性腸疾患、自己免疫疾患、リンパ球性プラズマ細胞性疾患、易感染性、後天性免疫不全症候群からなる群から選択される、請求項4に記載の医薬。 【請求項6】 Th2病が、リンパ球性プラズマ細胞性疾患である、請求項5に記載の医薬。 【請求項7】 請求項1〜3のいずれかに記載の組成物を含む、Th2病の改善または予防のための経口摂取物。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、Th1/Th2生体反応インバランスを調節するための組成物、および同組成物を含むTh2病などの治療または予防のための医薬に関する。 【背景技術】 【0002】 生体の免疫機構は種々の免疫担当細胞を中心に構成されているが、このうち、免疫バランスの制御に重要な役割を担う細胞群として、ヘルパーT細胞(Th細胞)がある。Th細胞は、産生するサイトカインのパターンによりいくつかの種類に分類されているが(例えば、非特許文献1および2参照)、なかでもTh1およびTh2細胞は、生体内の免疫学的環境を方向付ける細胞として重要である。すなわち、Th1細胞は、主たるはIFN−γと共同して、生体に反応するのに対し、Th2細胞は主たるはIL−4と共同して生体に反応する。正常な状態においては、両者はバランスをとって生体を制御しているが、このバランスが崩れると様々な疾患の発症の原因となる。 【0003】 特に近年では、アトピー性皮膚炎や花粉症などの、Th2型免疫反応の亢進に伴うTh2病の有病率が増加傾向にあり、大きな問題となっている。Th2病の治療には、従来ステロイド剤などの免疫を抑制する薬剤が用いられることが多かったが、かかる薬剤はTh2反応を抑制するばかりでなくTh1/Th2比を低下させてしまう上に、長期投与により種々の副作用が生じることがあるため、このような欠点のないアプローチが求められていた。 【0004】 こうした要請に応えるべく、これまでにTh2病を治療するための数多くの試みがなされてきた。例えば、特許文献1には、トートマイシンまたはトートマイシンアナログを有効成分として含む、Th2細胞選択的免疫抑制剤が、特許文献2には、ビオチンを含有するTh2細胞分化抑制剤が、特許文献3には、カテキン類などを含むTh2型サイトカインを抑制する化粧料および食品が、そして、特許文献4には、乳酸菌の菌体成分を主成分とするTh1誘導剤がそれぞれ記載されている。しかしながら、上記のいずれの試みにおいても依然として満足できる効果は得られておらず、また、表現型あるいは細胞内左型Th1/Th2比から評価はされておらず、さらなる研究開発が求められていた。 【0005】 【特許文献1】特開平8−188533号公報 【特許文献2】特開2001−187734号公報 【特許文献3】特開2004−75619号公報 【特許文献4】特開2003−137795号公報 【非特許文献1】J. Immunol.,1986, 136(7), 2348-57 【非特許文献2】Science, 1994, 265(5176), 1237-40 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、Th2優位な状態を抑制すると同時にTh1反応を増加させるのに有効な組成物、およびTh2病の効果的な治療または予防のための医薬の提供を目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者は、上記目的のために鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことにシママンネンタケを含む組成物が、顕著なTh2生体反応を抑制するとともに、Th1反応を改善し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0008】 すなわち、本発明は、シママンネンタケを含む、Th2を抑制しながら同時にTh1を優位にするための組成物に関する。 さらに、本発明は、Th1/Th2比を調整し正常とせしめるための、上記組成物に関する。 さらにまた、本発明は、医薬用または経口摂取物用である上記組成物に関する。 【0009】 本発明はまた、上記組成物を含む、Th2あるいはTh3優位病の治療または予防のための医薬に関する。 本発明はさらに、Th2病が、アレルギー性疾患、炎症性腸疾患、自己免疫疾患、Th2反応優位を呈するTh3病であるリンパ球性プラズマ細胞性疾患、易感染性、後天性免疫不全症候群からなる群から選択される上記医薬に関する。 本発明はさらにまた、リンパ球性プラズマ細胞性疾患の治療または予防のための上記医薬に関する。 また、本発明は、上記組成物を含む、Th2反応の優位性の抑制または予防のための経口摂取物に関する。 さらに、本発明は、上記組成物を含む、Th2反応の恒常性の維持とこのような解析から得られる疾患の予防・予知を明らかにする診断薬の作用を有する経口摂取物にも関する。 【0010】 シママンネンタケが抗癌活性およびIL−12産生誘導活性を有することは、特開2001−335507号公報や再表01/70251号公報などに記載されているが、同成分がTh1/Th2のインバランスを調節し、Th2病を予防または治療し得ることは全く知られていなかった。また、八木田ら(Biotherapy, 2002, 16(6), 581-586)によれば、ILXおよびPSKの投与を受けている癌患者にシママンネンタケを追加投与したところ、臨床的には有意な改善が見られたが、Th1/Th2比に投与前後で有意な差が見られなかったことが報告されている。したがって、シママンネンタケを含む本発明の組成物がTh1/Th2インバランスを調節し、Th2優位な疾病を治療し得ることは、当業者の予測し得ない、驚くべき効果であるといえる。 【発明の効果】 【0011】 本発明の組成物は、生体内のTh1/Th2インバランスを調節することができるため、現在社会的問題となっているアトピー性皮膚炎や花粉症などのTh2病やTh3病を治療または予防することや、Th1型免疫反応を増強し、ウイルスや細菌に対する感染抵抗性を高めることなどが可能となる。さらに、本発明は、長期投与しても副作用がないため、慢性的な経過をたどることの多いTh2病の治療や予防に特に有用であり、また、テーラーメイド療法(個別治療)の立案が容易となるなど、ヒト医療、獣医療、ヒトおよび動物の保健衛生などの諸分野において多大な貢献が期待できる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0012】 本発明の一態様は、シママンネンタケを含む、Th1/Th2インバランス調節のための組成物に関する。 ここで、Th1/Th2比とは、典型的には全身または局所におけるTh1細胞反応(サイトカインであるIFN−γを含む)とTh2細胞反応(サイトカインであるIL−4を含む)との比率のことをいう。Th1/Th2比は、種々の方法により測定することができる。例えば、Th1/Th2比は、CD4陽性細胞の細胞内に存在するTh1型サイトカインおよびTh2型サイトカインを染色し、フローサイトメトリー法(特開2002−3403号公報参照)や免疫組織化学的手法で解析することにより測定可能である。 【0013】 本発明において、Th1/Th2インバランスの調節とは、Th2反応の優位性を低下せしめることであり、これには、低下したTh1のインバランスを優位な状態にすることと、アナジーにあるTh1/Th2比を正常値に上昇させることとが含まれる。Th1/Th2インバランスとは、Th1/Th2比が正常値から乖離した状態をいい、例えば、Th1とTh2の反応(%)が正常値の150%以上もしくは75%以下、または200%以上もしくは50%以下などの状態を包含するものとする。Th1とTh2の正常値は、生物種間および個体間で生体反応としての特徴があると考えられるため、健康な状態における各個体のTh1とTh2の生体反応を基準とすることが望ましく、当業者であれば前記の方法などを用いてかかる値を容易に決定する(生体反応のインバランスをシフトする)ことができる。 【0014】 Th1とTh2反応の調節の程度としては、例えば、アナジーにあるTh1とTh2反応を増大させる場合、本発明の組成物を投与した後のTh1/Th2のバランスを、投与前のTh1/Th2インバランスに対して15%以上、50%以上、150%以上、さらには210%以上シフトさせることを含むものとする。 【0015】 本発明の組成物に用いるシママンネンタケは特に限定されず、天然由来のものでも、培養によるものでもよいが、含有成分の均一性や生体への安全性などを考慮すると、培養によるものが好ましい。使用する部位は、有効成分がより高濃度で含まれている菌糸体画分が好ましい。本発明に用いる場合、シママンネンタケは、培養した菌糸体を乾燥し、粉末化したものが特に好ましい。かかる加工がなされたシママンネンタケ加工食品は、「克元勝」として市販されており(株式会社セイシン企業)、これを本発明に用いてもよい。シママンネンタケ菌糸体画分の培養・保存方法は特開2003−61644号公報などに記載されている。 【0016】 また、本発明の組成物は、医薬および、食品添加物、食品、飲料などの経口摂取物をはじめとする種々の用途に用いることができ、用途に応じて、シママンネンタケ以外に、公知の種々の好適な成分を配合することができる。例えば、医薬用の組成物には、賦形剤、崩壊剤、結合剤、潤沢剤、矯味剤、着色剤、香料、安定剤、殺菌剤、防腐剤などの種々の好適な添加物を配合することができる。本発明の組成物におけるシママンネンタケの配合割合は特に制限されないが、後述の用量を有効に投与することができるような割合とするのが好ましく、例えば、組成物全体に対して1〜100質量%の任意の割合でシママンネンタケを配合することができる。 【0017】 本発明の組成物には、上記の外、1種または2種以上のさらなる有効成分を含むことができる。かかる成分は特に制限されないが、抗生剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、消化管作用剤、止瀉剤、気管支拡張剤、鎮痛剤、ビタミン剤、および、シママンネンタケ以外のキノコ成分やサメ軟骨等の生物学的活性を有する種々の動植物成分などが挙げられる。これらの有効成分は、通常それぞれの成分の効果が有効なThバランスをもたらす量で配合され、かかる量は当業者によく知られている。例えば、サメ軟骨を配合する場合は、サメ軟骨は好ましくは20mg/kg/日以上、より好ましくは80mg/kg/日以上投与できるような量で配合され、シママンネンタケとの質量比は好ましくは1:1〜1:50、より好ましくは1:2〜1:20である。 【0018】 本発明の別の態様は、上記の組成物を含むTh病の治療または予防のための医薬、および、該疾患の改善または予防のための、食品、飲料、食品添加物などの経口摂取物に関する。 ここで、Th病とは、Th1〜3型免疫反応が優位な、あるいは低下した状態を伴う疾患群であって、Th1/Th2インバランスあるいはアンバランス(不均衡)の調節により治療し得るものを指し、例えば、Th2型免疫反応の亢進によるアレルギー性の胃炎、関節炎、下痢、喉頭炎、皮膚炎、鼻炎、喘息、結膜炎、気管支炎、肺炎、アトピー性皮膚炎、気道アレルギー、花粉症、枯草熱などのアレルギー性疾患、全身性エリマトーデス、ループス腎炎などの自己免疫疾患、炎症性腸疾患、ならびに、Th1型反応の減弱とTh2の低下を伴う易感染性、後天性免疫不全症候群(AIDS)などが包含される。また、Th3反応が優位なTh病としてリンパ球性プラズマ細胞性膝関節炎、リンパ球性プラズマ細胞性口内炎、リンパ球性プラズマ細胞性肢端皮膚炎などのリンパ球性プラズマ細胞性疾患があげられる。 【0019】 本発明の医薬の剤形は特に限定されないが、経口投与に適したものが好ましく、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、ドロップ剤などに製剤してもよい。また、本発明の経口摂取物は、経口的に摂取されるものであれば特に制限されず、例えば、任意の種類および形態の食品、飲料、食品添加物などを包含するものとする。 本発明の組成物を配合した医薬および経口摂取物の製造にあたっては、当業者に既知の任意の方法を用いることができる。 本発明の組成物および医薬の投与量、または経口摂取物の摂取量は、有効な効果発現を考慮すれば、シママンネンタケとして好ましくは5mg/kg/日以上、より好ましくは10mg/kg/日以上であり、経口的に投与するのが好ましい。上記用量は、1日分を1回に投与もしくは摂取してもよいし、または1日量を複数回に分けて投与もしくは摂取してもよい。 【実施例】 【0020】 以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら限定されるものではない。 対象の処置 本発明の組成物を投与する対象として、Th2あるいはTh3反応優位なリンパ球性プラズマ細胞性膝関節炎(LPGA)と診断されたイヌ(フラットコーテッド・レトリバー、雄、10ヶ月齢)を用いた。同対象は、7ヶ月齢頃から左後肢の跛行が見られ、臨床検査、X線・MR検査、病理組織学的検査などを行ったところLPGAと診断されたものである(日獣会誌, 2004, 57, 521-524参照)。 対象には、シママンネンタケとサメ軟骨とを1:4の質量比で含む、「ベターシャーク+克元勝(ペット用)」(株式会社セイシン企業)を、1袋(1.5g)/日の用量で6ヶ月間投与した。投与開始前と、投与開始後3日目に、対象の罹患関節液を、また、投与開始後1、3、5および7日目に対象の末梢血をそれぞれ採取した。また、処置期間中、対象の全身状態および跛行の状態を観察した。 【0021】 Th1/Th2インバランスの測定 Th1/Th2インバランスは、フローサイトメトリー法を用い、CD4陽性で細胞内IFN−γタンパク質を有する細胞(Th1反応呈示細胞)、および、CD4陽性で細胞内に存在あるいは蓄積して存在するIL−4タンパク質を有する細胞(Th2反応細胞)の発現を求めることにより評価した。 なお、Th1比およびTh2比は、測定細胞全体に対するTh1反応細胞およびTh2反応細胞の発現率をそれぞれ示し、Th3は、細胞内TGF−β発現細胞(Th3細胞)の測定細胞全体に対する割合を示す。 【0022】 【表1】
図1および表1から分かるとおり、処置前の関節液試料におけるTh1/Th2インバランスは0.014と、Th2優位のTh1/Th2インバランスの状態にあったが、本発明の組成物を投与した後のTh1/Th2インバランスは12.3と、Th1優位の状態に劇的に変化した。これは、本発明の組成物がTh1/Th2インバランスを調節したことを明白に示すものである。上記のとおり、シママンネンタケがTh1/Th2インバランスを有意に変化させることは知られていなかったところ、同成分の投与によりTh2が減少しTh1がこれほどまで顕著に増大したことは全く驚くべきことである。 【0023】 ナチュラルキラー(NK)細胞活性の測定 NK細胞活性は、イヌのリンパ球性白血病細胞(CL−1)に対する細胞傷害作用に基づいて評価した。上記で採取した対象の血液試料をCL−1細胞と混合培養し、試料中に含まれるNK細胞が標的細胞であるCL−1細胞を傷害した程度を、化学発光(CL)法によるCL活性(cpm/ウェル)で評価した。図2に示す結果から明らかなように、本発明の組成物の投与により、NK細胞の活性は顕著に増加した。 【0024】 処置後の臨床経過 対象の跛行は、処置開始後3日目から改善し始め、6ヶ月後には殆ど見られなくなった。 以上の結果から、リンパ球性プラズマ細胞性膝関節炎がTh2アナジーの状態を伴うこと、および、本発明の組成物がかかるリンパ球性プラズマ細胞性膝関節炎を治療し得ることが初めて明らかとなった。 【0025】 なお、リンパ球性プラズマ細胞性膝関節炎などのリンパ球性プラズマ細胞性疾患には、免疫学的機序が関与していることは示唆されていたものの、実際の病因は依然不明であり、これまで有効な治療法は見出されていなかったところ(日獣会誌, 2004, 57, 521-524参照)、本発明者らの上記発明は、かかる難病のメカニズムを解明するとともに、有効な治療・予防法の開発に直結するものであり、学術的にも、臨床的にも極めて意義深いものであるといえる。 【産業上の利用可能性】 【0026】 上記のとおり、本発明の組成物は、現在社会的問題となっている生体反応による疾患形成(Thインバランスあるいはアンバランス反応)を治療または予防することや、細菌に対する感染抵抗性を高めることが可能であることから、ヒト医療、獣医療、ヒトおよび動物の保健衛生などの諸分野において多大な貢献が期待できる。 【図面の簡単な説明】 【0027】 【図1】本発明の組成物による処置の前後における、対象の罹患関節液中のTh1/Th2生体反応を示したグラフである。 【図2】本発明の組成物による処置中のNK細胞活性の推移を示したグラフである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】591127917 【氏名又は名称】株式会社セイシン企業
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| 【出願日】 |
平成17年5月31日(2005.5.31) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100102842 【弁理士】 【氏名又は名称】葛和 清司
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| 【公開番号】 |
特開2006−335656(P2006−335656A) |
| 【公開日】 |
平成18年12月14日(2006.12.14) |
| 【出願番号】 |
特願2005−159323(P2005−159323) |
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