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【発明の名称】 BPIタンパク質産物のヒト治療における使用
【発明者】 【氏名】ナダブ フリードマン

【氏名】パトリック ジェイ. スキャノン

【氏名】サンダー ジェイ. エイチ. ヴァン デベンター

【氏名】マライケ エー. エム. フォン デア モーレン

【氏名】ナンシー ウェデル

【要約】 【課題】循環系中で細菌性内毒素に曝されたヒトを治療するための新規方法を提供すること。

【解決手段】本発明は、内毒素によって媒介される、循環系の腫瘍壊死因子及びインターロイキン6の増加を軽減するのに有効な量で、BPIタンパク質産物を投与する工程を含む方法を提供する。本発明は、別の実施形態において、循環系中で細菌性内毒素に曝されたヒトを治療するための方法であって、内毒素によって媒介される、循環系のインターロイキン8の増加及び、循環系のラクトフェリン及び/またはエラスターゼ/α1アンチトリプシン複合体が増加せしめられることにより特徴付けられる好中球脱顆粒反応の増加を軽減するのに有効な量で、BPIタンパク質産物を投与する工程を含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌用抗生物質の投与に伴うヒトの治療方法で、内毒素によって媒介される、循環系の腫瘍壊死因子及びインターロイキン6の増加を軽減するのに有効な量で、BPIタンパク質産物を投与する工程を含む方法。
【請求項2】
細菌用抗生物質の投与に伴うヒトの治療方法で、内毒素によって媒介される、循環系のインターロイキン8の増加及び、循環系のラクトフェリン及び/またはエラスターゼ/α1アンチトリプシン複合体が増加せしめられることにより特徴付けられる好中球脱顆粒反応の増加を軽減するのに有効な量で、BPIタンパク質産物を投与する工程を含む方法。
【請求項3】
細菌用抗生物質の投与に伴うヒトの治療方法で、内毒素によって媒介される、循環系のリンパ球の数の変化を軽減するのに有効な量で、BPIタンパク質産物を投与する工程を含む方法。
【請求項4】
細菌用抗生物質の投与に伴うヒトの治療方法で、内毒素によって媒介される、循環系の組織プラスミノーゲン活性化因子及び組織プラスミノーゲン活性化因子活性の増加を軽減するのに有効な量で、BPIタンパク質産物を投与する工程を含む方法。
【請求項5】
細菌用抗生物質の投与に伴うヒトの治療方法で、内毒素によって媒介される、全身脈管抵抗指数の減少を軽減するのに有効な量で、BPIタンパク質産物を投与する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
(関連する適用の相互参照)
本出願は、1994年1月24日に出願せる米国特許出願第08/188,221号の一部継続出願である、1994年8月16日に出願せる米国特許出願第08/291,112号の一部継続出願である。
【0002】
(発明の背景)
本発明は一般に治療方法に関し、さらに詳細には、例えば、グラム陰性細菌感染、内毒素で汚染された液体の偶発的な注射、腸からの内毒素の移行、抗生物質により媒介される細菌の細胞溶解の結果生じた循環系中への内毒素の放出、などの結果として、循環血液中の細菌性内毒素に曝されたヒトの治療のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
グラム陰性細菌性内毒素は、グラム陰性敗血症及び敗血症ショックの病原において中心的な役割を果たしており、これらの病態は依然として、臨床上疾病状態にある患者における罹病及び死亡の主要な原因である。内毒素は、サイトカイン、ヒドロラーゼ、ペプチド、プロスタグランジン及び敗血症ショックの病態生理学に寄与する他の化合物などどいった、内在性メディエータを放出している炎症細胞と相互作用する。循環系への内毒素の進入の主因は、グラム陰性細菌血症及び腸からの細菌及び細菌産物の移行であるが、汚染された液体の偶発的な注射の結果として、または抗生物質療法の結果溶菌した細菌からの内毒素の放出を通して、内毒素が循環系に進入するかもしれない。近年、敗血症及び敗血症ショックの治療のために提案されている療法は、その焦点が、循環系中の内毒素に結合すること及び、内毒素の存在により媒介される前炎症物質の循環系中への直接及び間接の放出を阻害することへの試みに向けられてきていた。例えば、抗内毒素抗体が、ヒトにおける内毒素効果の阻害において有望視されている。
【0004】
ヒトにおける内毒素血症の治療のための、治療方法及び材料を開発する上で例外なく立ちはだかる難局は、in vitro及び、ヒト以外のin vivoのものさえも、試験結果をヒトの治療についての潜在性の指標として一般的に信頼しえないことである。循環系中の内毒素の効果は複雑であり、体内での多くの細胞型による直接的及び間接的な応答が関与するので、内毒素による特定の細胞型へのin vitroの効果に干渉する試みにおける試験結果は、in vivoでの効果を評価するためには不完全な根拠しか呈示しないものである。異なる動物種に対する細菌性内毒素の効果は相違し、また同じ種でも異なるモデルにおいては効果が異なるので、動物を用いた研究も複雑になることを禁じえない。ヒトは内毒素に鋭敏に感受性を示すが、他の動物の応答は、有意に多様化している。例えば、マウス及びラットは、ウサギ及びイヌよりも体重ベースでは内毒素に対して遥かに抵抗性があり、ウサギにおいて生命を脅かすような量でも、マウスでは、わずかな効果しか生じないはずである。さらには、認められる効果の型が、実に多様である。亜致死的であるがショックを惹起こす量の内毒素が投与されると、イヌは腸管出血を呈するが、他の通常使用される実験動物ではこのようなことはない。普通の室温下で飼育されたマウスは、内毒素注射後に低体温となるが、30℃で飼育された場合には、発熱する。例えば、非特許文献1、非特許文献2を参照されたい。
【0005】
本発明の背景で興味深いのは、健常なヒトのボランティアに、内毒素を投与したin vivoの効果に関する数多くの報告である。非特許文献3は、実験的内毒素血症以外は健常なヒトにおいて、この症候によってもたらされる循環系成分に対する効果を述べた文献の、現在のところの詳細な論評を提供している。ヒトにおいて内毒素により開始される応答が、組織の損傷または感染に対する宿主の応答の一部である急性炎症性応答に共通するものであることに着目し、内毒素の投与が、炎症性応答のみならず内毒素に特異的な応答を評価する傑出した手段として役立つことを、本発明者らは主張するものである。さらに本発明者らは、健常なヒトへの内毒素の投与が敗血症ショックでの宿主の応答のすべてに対する正確なモデルではないが、これによって細菌性内毒素に対する初期の宿主の炎症性応答の研究が可能になることにも着目している。
【0006】
Martichらは、内毒素の静脈内注射が、イブプロフェンによって緩和されるがホスホジエステラーゼ阻害剤であるペントキシフィリンによっては緩和されない、発熱性応答及び様々な体質的変化(筋痛症など)を一様に併発することに着目している。臨床上の敗血症で観察されるものと質的に類似した心血管の応答が、ヒトにおける実験的内毒素血症で観察される。循環系中の、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン1β(IL-1β)、インターロイキン8(IL-8)、及び顆粒球刺激因子(GCSF)などのサイトカインの特徴的な増大が観察される。TNFの阻害的可溶性受容体もまた、循環系のTNFレベルの増大に続いて特徴的な様式にて上昇することが認められた。Martichらにおいて報告された研究によって、実験的内毒素血症においてイブプロフェンが循環系のTNF及びIL-6レベルを高め、そしてペントキシフィリンは循環系のTNFを減じるが循環系のIL-6を減じることはないとの観察が提供されている。
【0007】
ヒトの実験的内毒素血症は、敗血症で観察されるものと類似した体液性免疫応答を上昇させることが認められた。繊維素溶解系が活性化されて循環系中の組織プラスミノーゲン活性化因子(tpA)が上昇し、これに伴ってα2-プラスミン阻害剤−プラスミン複合体(PAP)が増大してtPAによるプラスミノーゲンの活性化が確実になる。ヒトへの内毒素の投与は、一過性の白血球減少症を促し、続いて迅速な白血球増多症を起こすことが観察されている。エラスターゼ(エラスターゼ/α1アンチトリプシン(EAA)複合体として測定)及びラクトフェリンの循環系への放出に付随して、好中球の脱顆粒反応が起こる。
【0008】
Martichらは、ヒトへの内毒素の投与が、敗血症及び敗血症ショックの際に惹起こされる多くの炎症性の事象を再現する、急性炎症の重要なモデルとなり、そして重要な細菌性産物への宿主の応答を研究する傑出した手段を提供すると結論している。
【0009】
Martichらの論文が公表された後、同じ研究グループが、実験的内毒素症の研究を報告した。彼らは、循環系への内毒素の投与によって、気管支肺胞の洗浄(BAL)による測定で、肺のサイトカインを高レベルにまで上昇させることができるか否かを確かめるための試みを行った。非特許文献4。ヒトにおいて内毒素によってもたらされる、循環系のTNF及びIL-6のレベルを増強すべく、イブプロフェンを共に投与しても、BAL液体中のTNF、IL-6またはIL-8レベル増加は観察されず、循環系中の内毒素に対するサイトカインの応答は区画化されていて、肺組織の内皮に直接働かないことが示唆された。
【0010】
敗血症ショックでの心血管障害の研究によって、ショックは普通、心指数(CI)が高く、且つ全身血管抵抗指数(SVRI)が低いことによって特徴付けられることが実証されている。[非特許文献5;非特許文献6;及び非特許文献7]本発明の背景でさらに興味深いのは、ヒトにおける実験的内毒素血症の研究で、心筋の収縮性の低下及び心臓拡張性機能不全が立証されたものである[非特許文献8]。
【0011】
殺菌性/透過性増強タンパク質(BPI)は、侵入してくる微生物に対する防御において必須の血液細胞である、哺乳動物の多形核好中球(PMN)の顆粒から単離されたタンパク質である。イオン交換クロマトグラフィー[非特許文献9]または大腸菌アフィニティークロマトグラフィー[非特許文献10]のいずれかと、酸抽出とを併用して、PMNから単離されたヒトBPIタンパク質は、広範囲にわたるグラム陰性細菌に対して至適な殺菌活性を有する。ヒトBPIの分子量はおよそ55,000ダルトン(55kD)である。ヒトBPIタンパク質全体のアミノ酸配列、及び該タンパク質をコードするDNAは、非特許文献11の図1に明示されており、かかる文献を引用することにより、本明細書に組み入れることとする。
【0012】
BPIの殺菌効果は、感受性を有するグラム陰性細菌種に対して高い特異性を示し、他の微生物や真核細胞に対しては毒性を欠くことが、今日までに公表された科学的文献で示されている。BPIが細菌を殺傷する正確な機構は、未だ完全には解明されていないが、BPIがまず最初に感応性のグラム陰性細菌の表面に接着しなければならないことが知られている。細菌へのBPIのこの最初の結合は、塩基性BPIタンパク質と、内毒素上の陰性に荷電した部位との間の静電気的相互作用及び疎水性相互作用に関わるものである。BPIは、内毒素のうちで最も毒性を有し、最も生物学的に活性の強い成分である、リピドAに結合する。
【0013】
感応性の細菌において、BPIはリポ多糖(LPS)構造を破壊して、リン脂質及びペプチドグリカンを分解する細菌の酵素の活性化を導き、細胞の外膜の透過性を変化せしめ、そして究極的には細胞死へと導く事象を開始させると考えられている。[非特許文献12]。BPIは2段階にて作用すると考えられる。第一は、即時的生育停止、外膜の透過性亢進(permeabilization)ならびにリン脂質及びペプチドグリカンを加水分解する細菌酵素の選択的な活性化によって特徴付けられる亜致死的段階である。この段階での細菌は、血清アルブミンを補充した培地中で生育させることで救助することができる。第二段階は、血清アルブミンで回復しえない生長阻害により規定されるものであるが、細菌を長期間にわたってBPIに曝した後に起こるものであり、細胞質膜の浸透を含む、広範囲の生理学的及び構造的変化により特徴付けられる。
【0014】
アクチノマイシンDなどの疎水性プローブに対する、細菌細胞のエンベロープの透過性亢進は、迅速であって且つ内毒素へのBPIの最初の結合に依存しており、これが、正常時においてMg++及びCa++の結合を通して外膜を安定化させる、内毒素のKDO領域中の陰イオン性の基への結合におそらくは起因した組織的な変化を惹起こす。BPIの結合及びそれに続く細菌の殺傷は、少なくとも部分的に内毒素の多糖の鎖長に依存するものであり、長いO-鎖を持っている生物は、短い「ラフ」生物よりもBPIの殺菌効果に対して耐性である[非特許文献13]。このBPIの作用の第一段階は、結合部位からのBPIの解離に際しては可逆性である。このプロセスには、新たなLPSの合成及び二価陽イオンの存在が必要である[非特許文献14]。しかしながら、細菌の生育力喪失は、外膜の完全性を修復するプロセスによっては回復されず、従って殺菌作用は標的生物に誘導される付加的な障害により媒介されるのであり、それは細胞質膜に位置するかもしれないことが示唆される[非特許文献15]。この可能性を特に精査して、モルベースで、BPIは少なくともポリミキシンBと同等に細胞質膜小胞機能を阻害することが示されている[非特許文献16]ものの、正確な機構は、末だ解明されていない。
【0015】
ヒトBPIホロタンパク質のN末端部分に対応するタンパク質溶解断片は、天然に由来する55kDのヒトホロタンパク質が有するの殺菌効力の本質的にすべてを保有している。[非特許文献17]。N末端部分とは対照的に、単離されたヒトBPIタンパク質のC末端領域は、ほんのわずかに検出可能な抗細菌活性を呈するに過ぎない。[非特許文献18]。ヒトBPIホロタンパク質の最初のおよそ199のアミノ酸残基を含み、「rBPI23」と称される、BPIのN末端断片が、組換え法により23kDタンパク質として製造されている。[非特許文献19]。
【0016】
本出願にとってさらに興味深いのは、p15と称される、ウサギPMNの顆粒に由来する15kDのタンパク質によるBPI殺菌活性の強化に関する参考文献の開示である。非特許文献20は、ウサギPMNの顆粒に由来する、2つの15kDの関連タンパク質を開示しており、これらタンパク質は、BPI抗細菌活性の第一の亜致死的段階を強化するが、BPI抗細菌活性の第二の致死的段階には阻害効果を有しない。非特許文献21は、その2つのウサギのタンパク質をコードするcDNAの配列を開示しており、より強い強化作用を有する方のタンパク質は、初期の静細菌作用のために必要なBPIの量を、約20倍まで減じると報告している。
【0017】
本発明の背景として特に興味深いのは、様々なin vitro及びヒト以外のin vivoアッセイ系における、細菌の内毒素とBPIタンパク質産物との相互作用についての報告である。一例としては、Leachら(非特許文献22)は、rBPI23(非特許文献19、前出に記載)が、大腸菌011:B4LPSを用いて攻撃した、アクチノマイシンDで感応性としたCD-1マウスにおける致死的な内毒素血症を防ぐことを報告した。さらなる研究において、Kohnら(非特許文献23)は、rBPI23が、アクチノマイシンDで感応性としたマウスを、LPS攻撃による致死的な作用から用量依存的に保護するのみならず、LPSによって誘導される血清中のTNF及びIL-1の上昇も軽減することを立証した。Ammonsら、[非特許文献24]は、ラットの内毒素血症モデルで、rBPI23が、内毒素血症に伴う血行動態変化の用量依存的な阻害を行うことを立証した。Kellyら(非特許文献25)は、大腸菌の致死量を気管内に接種したマウスにおいて、抗-内毒素モノクローナル抗体(E5)よりも、rBPI23が、死に至らしめないよう、より強い保護能を有意に供与することを示した。Kungら(非特許文献26)は、生細菌の攻撃に関わる種々の動物モデル及び内毒素血症モデルにおけるrBPI23の効力を開示した。
【0018】
M.N.Marra及びR.W.Scott及び共同研究者らは、特許文献1、公開された特許文献2ならびに、Marraら(非特許文献27)ならびにMarraら(非特許文献28)において、BPIタンパク質産物との内毒素の相互作用を述べている。これらの文献で報告されたin vitro及び、ヒト以外のin vivo実験方法には、BPIを含有する顆粒球抽出物、高度に精製された顆粒球のBPI及び組換えBPIといったBPI産物と共に、内毒素をプレインキュベートした場合の、内毒素によるヒト付着単核細胞培養での腫瘍壊死因子α(TNF)産生の刺激を、これらBPI産物が阻害する能力についての正の評価が包含される。BPIタンパク質産物と共に内毒素をプレインキュベートすることで、内毒素による、in vivoでの補体系成分C3b及びC3biに対する受容体の好中球細胞表面発現を刺激(アップレギュレート)する能力が減じられることも示された。しかしながら、ヒト循環系中に内毒素が存在する結果として、これら補体系成分のいずれも、循環系中の存在量が増大することは立証されていない。これらの文献において報告された実験的研究には、被験マウス及びラットでのBPIタンパク質産物との内毒素の相互作用のin vivo評価が包含される。一連の実験で、BPIは、内毒素の鼻内投与によって攻撃されたマウスにおける肺細胞のTNF産生の刺激を阻害(気管支肺胞の洗浄液の、線維肉腫への細胞毒性に基づいて測定した)することが認められた。別の系列の実験で、BPIの投与によって、様々な細菌性内毒素調製物及びシュードモナス(Pseudomonas)生細胞を用いた致死的な攻撃から、マウス及びラットが保護されることが認められ、そして、内毒素へのBPIの結合はウサギにおける発熱性を減少させることが認められた。しかしながら、前記した通り、Boujoukasら(非特許文献29)によって、ヒトの循環系への内毒素の投与の結果、循環系のTNF、IL-6及びIL-8のレベルの増加が惹起こされるものの、ヒト被験者の器官支肺胞洗浄液中におけるこれら物質の増加は検出されえないことが示されている。
【0019】
1994年1月24日に、米国特許出願第08/188,221号を特許出願して以来、BPIのin vitro及びin vivoでの効果についてのさらなる研究が公開されている。Fisherら(非特許文献30)は、マウス、ラット及びウサギにおける研究を示し、そして、「殺菌性/透過性増強タンパク質が、ヒトにおいて内毒素を調節する天然の負のフィードバック機構を増強する特異的な治療剤となるかもしれないという刺激的な可能性は、精査するに値する。」旨、結論した。Marraら(非特許文献31)は、マウスでの研究を示し、「殺菌性/透過性増強タンパク質の強力な内毒素結合特性及び内毒素中和特性によって、このタンパク質がヒトにおける内毒素関連疾病の治療に有用であるかもしれないことが示唆される。」旨、結論した。
【特許文献1】米国特許第5,089,274号明細書
【特許文献2】米国特許第5,171,739号明細書
【特許文献3】国際公開第92/03535号パンフレット
【非特許文献1】Handbook of Endotoxin(R.Proctor編集)Elsevier、アムステルダム(1985)のシリーズの第3巻
【非特許文献2】L.Berry編、Cellular Biology of EndotoxinのIntroduction、第xx頁
【非特許文献3】Martichら、Immunobiol.、187巻、403〜416頁(1993)
【非特許文献4】Boujoukosら、J.Appl・Physiol.、74巻、6号、3027〜3033頁(1993)
【非特許文献5】Parkerら、Crit.Care.Med.、15巻、923〜929頁(1987)
【非特許文献6】Rackowら、Circ.Shock、22巻、11〜22頁(1987)
【非特許文献7】Parkerら、Ann.Intern.Med.、100巻、483〜490頁(1984)
【非特許文献8】Suffrediniら、N.Engl.J.Med.、321巻、280〜287頁(1989)
【非特許文献9】Elsbachら、J.Biol.Chem.、254巻、11000頁(1979)
【非特許文献10】Weissら、Blood、69巻、652頁(1987)
【非特許文献11】Glayら、J.Biol.Chem.、264巻、9505頁(1989)
【非特許文献12】Elsbach及びWeiss、Inflammation:Basic Principles and Clinical Correlates、Gallinら編集、第30章、Reven Press,Ltd.(1992)
【非特許文献13】Weissら、J.Clin.Invest.、65巻、619〜628頁(1980)
【非特許文献14】Weissら、J.Immunol.、132巻、3109〜3115頁(1984)
【非特許文献15】Mannionら、J.Clin.Invest.、86巻、631〜641頁(1990)
【非特許文献16】In'tVeldら、Infection and Immunity、56巻、1203〜1208頁(1988)
【非特許文献17】Ooiら、J.Biol.Chem.、262巻、14891〜14894頁(1987)
【非特許文献18】Ooiら、J.Exp.Med.、174巻、649頁(1991)
【非特許文献19】Gazzano-Santoroら、Infect.Immun.、60巻、4754〜4761頁(1992)
【非特許文献20】Ooiら、J.Biol.Chem.、265巻、15956頁(1990)
【非特許文献21】Levyら、J.Biol.Chem.、268巻、6058〜6063頁(1993)
【非特許文献22】Keystone Symposia"Recognition of Endotoxin in Biologic Systems"、LakeTahoe、カリフォルニア州、1992年3月1〜7日、(抄録)
【非特許文献23】Kohnら、J.Infectious Diseases、168巻、1307〜1310頁(1993)
【非特許文献24】Ammonsら、Circulatory Shock、41巻、176〜184頁(1993)
【非特許文献25】Kellyら、Surgey、114巻、140〜146頁(1993)
【非特許文献26】Kungら、International Conference on Endotoxin Amsterdam IV、1993年8月17〜20日(抄録)
【非特許文献27】Marraら、J.Immunol.、144巻、662〜665頁(1990)
【非特許文献28】Marraら、J.Immunol.、148巻、532〜537頁(1992)
【非特許文献29】Boujoukasら、J.Appl.Physiol.、74巻、6号、3027〜3033頁(1993)
【非特許文献30】Fisherら、Critical Care Med.、22巻、4号、553〜558頁(1994)
【非特許文献31】Marraら、Critical Care Med.、22巻、4号、559〜565頁(1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
かくのごとく、様々なin vitro及びヒト以外のin vivoモデル系で、BPIタンパク質産物が内毒素と潜在的に有益な相互作用を有することが確証されている一方で、例えば、グラム陰性細菌感染、抗生物質を用いた治療、内毒素で汚染された液体の偶発的な注射、腸からの内毒素の移行等の結果として、循環系において細菌性内毒素に実際に曝されているヒトでの、これら産物の効果に関しては何もわかっていない。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(発明の要約)
本発明は、循環系中で細菌性内毒素に曝されたヒトを治療するための新規方法を提供するものであって、血清学的、血液学的及び血行力学的に証明しうる、内毒素の効果の軽減を提供する、BPIタンパク質産物の投与の工程を含む方法である。しかして本発明は、循環系中の細菌性内毒素に曝されたヒトの治療のための、医薬組成物の製造におけるBPIタンパク質産物の使用に関するものである。
【0022】
本発明の1つの特徴によれば、rBPI23などのBPIタンパク質産物が、血清学的、血液学的及び血行力学的に証明しうる、内毒素により媒介される効果の軽減を提供するに充分な量で、ヒトに投与される。かかる効果には:循環系の腫瘍壊死因子(TNF)、可溶性TNF受容体p55及びp75[sTNFr(p55)及びsTNFr(p75)]、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン10(IL-10)の増加ならびに循環系のラクトフェリン及び/またはエラスターゼ/α1アンチトリプシン複合体(EAA)の増加によって特徴付けられる好中球の脱顆粒反応の増加;循環系の組織プラスミノーゲン活性化因子抗原(tPAAg)、組織プラスミノーゲン活性化因子活性(tpAact)、及びα2-プラスミン阻害剤−プラスミン(PAP)複合体、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤抗原(PAIAg)、ならびにウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)の増加;リンパ球の減少;トロンビン/抗トロンビンIII(TAT)複合体の増加;ならびに全身血管抵抗指数(SVRI)の低下及び心指数(CI)の増加が包含されるが、これらに限定されない。
【0023】
本発明の他の特徴によれば、抗生物質療法を受けているヒト患者へ、血清学的、血液学的及び血行力学的に証明しうるように、通常抗生物質により媒介される細胞溶解または細菌の崩壊に伴う循環系中への内毒素の放出による効果を改善すべく、BPIタンパク質産物が組み合わせて投与される。
【0024】
BPIタンパク質産物は、現在のところ好ましい形態で、例えば静脈内などの非経口経路によって、単回または複数回用の剤形で、もしくは持続的な注入により、約0.1から約10mg/kg体重の投与量にて、本発明に従って投与される。
【0025】
本発明によって、循環系中の細菌性内毒素に曝されたヒトの治療用の医薬の製造のための、BPIタンパク質産物の使用が提供される。本発明のこの特徴は、内毒素によって媒介される、循環系の腫瘍壊死因子及びインターロイキン6の増加を軽減するに有効な量;内毒素によって媒介される、循環系のインターロイキン8の増加、ならびに循環系のラクトフェリン及び/またはエラスターゼ/α1アンチトリプシン複合体の増加によって特徴付けられる好中球の脱顆粒反応の増大を軽減するに有効な量;内毒素によって媒介される、循環系のリンパ球数の変化を軽減するに有効な量;内毒素によって媒介される、循環系の組織プラスミノーゲン活性化因子及び組織プラスミノーゲン活性化因子活性の増加を軽減するに有効な量;ならびに内毒素によって媒介される、全身血管抵抗指数の低下を軽減するに有効な量にて、かかる医薬を製造するうえでのBPIタンパク質産物の使用を企図するものである。本発明のこの特徴は、さらに、かかる医薬の製造における、細菌用抗生物質と組み合わせたBPIタンパク質産物の使用を企図するものである。
【0026】
本発明によって、さらに以下の項目が適用される:
(項目1)循環系中で細菌性内毒素に曝されたヒトを治療するための方法であって、内毒素によって媒介される、循環系の腫瘍壊死因子及びインターロイキン6の増加を軽減するのに有効な量で、BPIタンパク質産物を投与する工程を含む方法。
(項目2)循環系中で細菌性内毒素に曝されたヒトを治療するための方法であって、内毒素によって媒介される、循環系のインターロイキン8の増加及び、循環系のラクトフェリン及び/またはエラスターゼ/α1アンチトリプシン複合体が増加せしめられることにより特徴付けられる好中球脱顆粒反応の増加を軽減するのに有効な量で、BPIタンパク質産物を投与する工程を含む方法。
(項目3)循環系中で細菌性内毒素に曝されたヒトを治療するための方法であって、内毒素によって媒介される、循環系のリンパ球の数の変化を軽減するのに有効な量で、BPIタンパク質産物を投与する工程を含む方法。
(項目4)循環系中で細菌性内毒素に曝されたヒトを治療するための方法であって、内毒素によって媒介される、循環系の組織プラスミノーゲン活性化因子及び組織プラスミノーゲン活性化因子活性の増加を軽減するのに有効な量で、BPIタンパク質産物を投与する工程を含む方法。
(項目5)循環系中で細菌性内毒素に曝されたヒトを治療するための方法であって、内毒素によって媒介される、全身脈管抵抗指数の減少を軽減するのに有効な量で、BPIタンパク質産物を投与する工程を含む方法。
(項目6)細菌用抗生物質の投与に伴うヒトの治療方法で、内毒素によって媒介される、循環系の腫瘍壊死因子及びインターロイキン6の増加を軽減するのに有効な量で、BPIタンパク質産物を投与する工程を含む方法。
(項目7)細菌用抗生物質の投与に伴うヒトの治療方法で、内毒素によって媒介される、循環系のインターロイキン8の増加及び、循環系のラクトフェリン及び/またはエラスターゼ/α1アンチトリプシン複合体が増加せしめられることにより特徴付けられる好中球脱顆粒反応の増加を軽減するのに有効な量で、BPIタンパク質産物を投与する工程を含む方法。
(項目8)細菌用抗生物質の投与に伴うヒトの治療方法で、内毒素によって媒介される、循環系のリンパ球の数の変化を軽減するのに有効な量で、BPIタンパク質産物を投与する工程を含む方法。
(項目9)細菌用抗生物質の投与に伴うヒトの治療方法で、内毒素によって媒介される、循環系の組織プラスミノーゲン活性化因子及び組織プラスミノーゲン活性化因子活性の増加を軽減するのに有効な量で、BPIタンパク質産物を投与する工程を含む方法。
(項目10)細菌用抗生物質の投与に伴うヒトの治療方法で、内毒素によって媒介される、全身脈管抵抗指数の減少を軽減するのに有効な量で、BPIタンパク質産物を投与する工程を含む方法。
(項目11)循環系中で細菌性内毒素に曝されたヒトにおいて、内毒素によって媒介される、循環系の腫瘍壊死因子及びインターロイキン6の増加を軽減するための医薬の製造における、BPIタンパク質産物の使用。
(項目12)循環系中で細菌性内毒素に曝されたヒトにおいて、内毒素によって媒介される、循環系のインターロイキン8の増加及び、循環系のラクトフェリン及び/またはエラスターゼ/α1アンチトリプシン複合体が増加せしめられることにより特徴付けられる好中球脱顆粒反応の増加を軽減するための医薬の製造における、BPIタンパク質産物の使用。
(項目13)循環系中で細菌性内毒素に曝されたヒトにおいて、内毒素によって媒介される、循環系のリンパ球の数の変化を軽減するための医薬の製造における、BPIタンパク質産物の使用。
(項目14)循環系中で細菌性内毒素に曝されたヒトにおいて、内毒素によって媒介される、循環系の組織プラスミノーゲン活性化因子及び組織プラスミノーゲン活性化因子活性の増加を軽減するための医薬の製造における、BPIタンパク質産物の使用。
(項目15)循環系中で細菌性内毒素に曝されたヒトにおいて、内毒素によって媒介される、全身脈管抵抗指数の減少を軽減するための医薬の製造における、BPIタンパク質産物の使用。
(項目16)循環系中で細菌性内毒素に曝されたヒトにおいて、内毒素によって媒介される、循環系の腫瘍壊死因子及びインターロイキン6の増加を軽減するための医薬の製造を目的とする、細菌用抗生物質と組み合わせたBPIタンパク質産物の使用。
(項目17)循環系中で細菌性内毒素に曝されたヒトにおいて、内毒素によって媒介される、循環系のインターロイキン8の増加及び、循環系のラクトフェリン及び/またはエラスターゼ/α1アンチトリプシン複合体が増加せしめられることにより特徴付けられる好中球脱顆粒反応の増加を軽減するための医薬の製造を目的とする、細菌用抗生物質と組み合わせたBPIタンパク質産物の使用。
(項目18)循環系中で細菌性内毒素に曝されたヒトにおいて、内毒素によって媒介される、循環系のリンパ球の数の変化を軽減するための医薬の製造を目的とする、細菌用抗生物質と組み合わせたBPIタンパク質産物の使用。
(項目19)循環系中で細菌性内毒素に曝されたヒトにおいて、内毒素によって媒介される、循環系の組織プラスミノーゲン活性化因子及び組織プラスミノーゲン活性化因子活性の増加を軽減するための医薬の製造を目的とする、細菌用抗生物質と組み合わせたBPIタンパク質産物の使用。
(項目20)循環系中で細菌性内毒素に曝されたヒトにおいて、内毒素によって媒介される、全身脈管抵抗指数の減少を軽減するための医薬の製造を目的とする、細菌用抗生物質と組み合わせたBPIタンパク質産物の使用。
【0027】
ヒトの治療方法に関する本発明の他の特徴及び利点は、以下の現在のところ好ましい本発明の実施態様を記載した、発明の詳細な説明を考慮すれば、当業者には明らかであろう。ここで参照されている図面において、データは、細菌性内毒素に曝されているヒト患者で、偽薬で処置した患者(白抜き円)または本発明のBPIタンパク質産物で処置した患者(黒塗り円)にて表記している。図2〜19で、偽薬で処置した患者(白抜き円)についてのデータは、目視による比較を容易にするために、BPI処置患者(黒塗り円)の対応するデータに対して、わずかに時間を示す軸に沿って右側に位置をずらしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
本明細書において用いられる「BPIタンパク質産物」なる語には、天然に及び組換えにより製造されるBPIタンパク質;天然、合成、及び組換えの、BPIタンパク質の生物学的に活性を有するポリペプチド断片;ハイブリッド融合タンパク質及びダイマーを含む、BPIタンパク質の生物学的に活性を有するポリペプチド変異体またはその断片;ならびにシステインで置換された類似体を含む、BPIタンパク質の生物学的に活性を有するポリペプチド類似体またはその断片または変異体が包含される。本発明に従って投与されるBPIタンパク質産物は、当該技術分野において知られているいかなる手段によって生産及び/または単離してもよい。引用することによりその開示が本明細書に含まれるものである、米国特許第5,198,541号に、rBPI50と称される組換えBPIホロタンパク質及びBPIの組換え断片を含むBPIタンパク質をコードする組換え遺伝子、及びその発現のための方法が開示されている。共有であり係属中の米国特許出願第07/885,501号及びその一部継続出願である1993年5月19日出願の米国特許出願第08/072,063号は、すべて引用することによりその開示が本明細書に含まれるものであるが、培養において遺伝的に形質転換した哺乳動物宿主細胞において発現し及び該細胞から分泌される組換えBPIタンパク質産物の新規精製方法を開示しており、また、安定で均質な製薬調剤に配合するのに好適な、大量の組換えBPI産物をどのように製造するかを開示している。
【0029】
BPIの生物学的に活性を有する断片(BPI断片)には、その断片分子が、ホロタンパク質のアミノ末端アミノ酸、内部アミノ酸、及び/またはカルボキシ末端アミノ酸を欠くことを除いては、天然のヒトBPIホロタンパク質と同じアミノ酸配列を有する、生物学的に活性を有する分子が包含される。このような断片の例に、Ooiら、J.Exp.Med.、174巻、649頁(1991)に記載されるおよそ25kDの天然ヒトBPIのN-末端断片及びGazzano-Santoroら、Infect.Immun.60巻、4754〜4761頁(1992)に記載され、rBPI23と称されている天然ヒトBPIの第1位よりおよそ第193または199位までのN-末端アミノ酸をコードするDNAの組換え発現産物が包含されるが、これらに限定されるものではない。かかる出版物において、Grayら、前出の図1に示されるごとき、31残基のシグナル配列及び成熟ヒトBPIのN-末端の最初の199アミノ酸を有する組換え発現産物(rBPI23)をコードするDNA(第151位のバリンがGTCでなくGTGで特定され、第185位の残基がリジン(AAGで特定される)でなくグルタミン酸(GAGで特定される)であるという例外を含む)のソースとして、発現ベクターが用いられた。Grayら、前出の図1に示される配列(配列番号:1及び2)(rBPI23について注解した例外、及び第417位の残基がバリン(GTTで特定される)でなくアラニン(GCTで特定される)であるという点は異なる)を有する組換えホロタンパク質(rBPI)も製造されている。他の例には、共有であり係属中の、1994年3月11日出願の米国特許出願第08/212,132号(引用することによりその開示が本明細書に含まれるものである)に記載されるごとき、BPI断片の二量体型が包含される。
【0030】
BPIの生物学的に活性を有する変異体(BPI変異体)には、BPIホロタンパク質またはその生物学的に活性を有する断片及び他のポリペプチドの少なくとも一部を含む組換えハイブリッド融合タンパク質、ならびにBPI変異体の二量体型が包含されるが、これらに限定されない。このようなハイブリッド融合タンパク質及び二量体型の例は、共有であり係属中の米国特許出願第07/885,501号(Theofanらによる)及びその一部継続出願である1993年5月19日出願の米国特許出願第08/064,693号(引用することによりそのすべてが本明細書に含まれるものである)に記載されており、アミノ末端端部でBPIタンパク質またはその生物学的活性を有する断片、及びカルボキシ末端端部で少なくとも1つの免疫グロブリン重鎖の定常ドメインまたはその対立変異体を含む、ハイブリッド融合タンパク質が包含される。
【0031】
BPIの生物学的に活性を有する類似体(BPI類似体)には、1以上のアミノ酸残基が異なるアミノ酸に置換されているBPIタンパク質産物が包含されるが、これらに限定されない。例えば、共有であり係属中の米国特許出願第08/013,801号(1993年2月2日出願の、Theofanらによる、「安定な殺菌性/透過性増強タンパク質産物及びそれを含有する薬剤組成物」、引用することによりその開示が本明細書に含まれるものである)に、システイン残基が異なるアミノ酸で置換されたBPI及びBPI断片のポリペプチド類似体が開示されている。この出願に記載された好ましいBPIタンパク質産物は、BPIホロタンパク質のN-末端アミノ酸の第1アミノ酸からおよそ第193または199までのアミノ酸をコードするDNAの発現産物(但し、第132番目のシステイン残基がアラニンで置換されており、rBPI21ΔcysまたはrBPI21と名付けられている)である。
【0032】
本発明の方法に有用な他のBPIタンパク質産物は、1993年3月12日出願の米国特許出願第08/030,644号の一部継続出願である、1993年7月15日出願の米国特許出願第08/093,202号の一部継続出願である、1994年1月14日出願の米国特許出願第08/183,222号の一部継続出願である、1994年3月11日に出願された、共有且つ係属中の米国特許出願第08/209,762号これらは引用することによりその開示が本明細書に含まれるものである)に記載されるものなどの、組換えまたは合成手段により製造されるBPI由来のまたはBPIに基づくペプチド(BPI由来ペプチド)である。他の有用なBPIタンパク質産物には、Horwitzらにより1994年7月11日に出願された、共有であり係属中の米国特許出願第08/274,299号及びLittleらにより1994年7月11日に出願された米国特許出願第08/273,540号に記載されている、BPIに基づくまたはBPI由来のペプチドが包含される。
【0033】
現在のところ好ましいBPIタンパク質産物には、組換えによって製造されるBPIのN-末端断片、特にrBPI23またはrBPI21などの、およそ21から25kDのあいだの分子量を有するもの、ならびに、これらN-末端断片の二量体型が包含される。加うるに、好ましいBPIタンパク質産物には、rBPI50及びBPI由来ペプチドが包含される。
【0034】
BPIタンパク質産物が、BPIタンパク質産物の活性を強化する他の産物と共に投与されることも意図される。例えば、血清補体は、BPIタンパク質産物の殺グラム陰性細菌活性を強化し、BPIタンパク質産物と血清補体との組合せによって、相乗的な殺細菌/生長阻害効果が提供される。例えば、Ooiら、J.Biol.Chem.、265巻、15956頁(1990)、及びBPI抗細菌活性を強化する、天然に存在する15kDタンパク質について述べられている、Levyら、J.Biol.Chem.、268巻、6038〜6083頁(1993)を参照されたい。また、共有で係属中である1993年7月14日出願の米国特許出願第08/093,201号、及び、その一部継続出願である、1994年7月11日出願の来国特許出願第08/274,303号も参照されたい。これらの出願には、リポ多糖結合タンパク質(LBP)及びLBPタンパク質産物を投与することによってBPIタンパク質産物の殺グラム陰性細菌活性を強化する方法が記載されている。これらの出願の開示は、参照することによって本明細書に含まれるものとする。CD-14免疫促進特性を欠くLBPタンパク質誘導体及び誘導体ハイブリッドが、1993年6月17日出願の米国特許出願第08/079,510号の一部継続出願としての、1994年6月17日出願の、共有で係属中である米国特許出願第08/261,660号に記載されており、これらの出願は、すべて引用することによってその開示が本明細書に含まれるものである。1994年1月24日出願の米国特許出願第08/186,811号の一部継続出願としての、1995年1月24日出願の、共有で係属中である米国出願第号(代理人整理番号第27129/32407号)に記載されている、LBPの定量のためのイムノアッセイに関する開示も、参照されたい。これらの出願の開示も、参照することによって本明細書に含まれるものとする。
【0035】
本発明の方法の実施は、以下の実施例によって例証されるものである。実施例1は、細菌性内毒素で攻撃されたヒトのボランティアに対するBPIタンパク質産物の効果の、対照をとり、二重盲験で行った、交差試験についてのプロトコルを表し、実施例2には、サイトカイン及びサイトカイン関連物質に対する血清学的分析を示し、実施例3には、ラクトース及びグルコースの血清学的分析を示し、実施例4には、総白血球及び分別白血球分析ならびに白血球活性化分析を示し、実施例5には、様々な凝固及び繊維素溶解のパラメータの血清学的分析を示し、そして実施例6には、血行力学的パラメータ、特に左心室の機能の分析を示す。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
細菌性内毒素の静脈内注入によって内毒素血症にされたヒトにおける、BPIタンパク質産物(rBPI23と称される、組換えにより製造したアミノ末端断片を代表的なものとして採用)の効果を調べるために、対照をとり、二重盲験で行う、交差試験をデザインした。
【0037】
試験には、8名の健常な男性ボランティアに参加していただいた。各々に特筆すべき既往歴はなく、通常の身体検査を受け、慣例の実験室での試験において本質的に正常な結果が得られた。すべてのボランティアにつき、EKG、胸部X線及び超音波心臓動態図は、正常範囲に入っていた。試験前1カ月以内に何らかの感染疾患が発症した場合、試験前1週間以内に何らかの急性疾病が報告された場合、または試験前2週間以内に何らかの薬物摂取がなされた場合には、試験への参加者から除外した。すべての参加者から、書面で告知に基づく同意を得て、且つ、試験は倫理審査委員会によって認可されたものであった。試験のデザインは交差形態とし、被験者には、間に6週間の「洗い出し」期間を設けて、2度の内毒素による攻撃を行った。その2度のうちのいずれかの折に、偽薬またはrBPI23を内毒素と同時に投与し、しかして各々のボランティアが自分自身で、対照としての勤めも果たした。処置の順序(rBPI23の後に偽薬、あるいは偽薬の後にrBPI23)は、これら2つの順序の割合が1:1になるように、無作為に決定した。従って、第一サイクルの内毒素による攻撃の際に4人のボランティアがrBPI23処置を受け、第二サイクルでこの処置を受けたのが4人であった。
【0038】
試験に供される薬剤であるrBPI23は、Gazzano-Santoroら、前出の方法に従って調製し、防腐剤を含有しない、20mmol/lクエン酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウム、0.1%ポロキサマ−188、0.002%ポリソルベート80、pH5.0の緩衝液中、1mg/mlの濃度にて、10mlの単回使用のガラスバイアル瓶に、透明、無色、無菌、非発熱性の溶液として供給した。この溶液は、防腐剤を含有しない、20mmol/lクエン酸ナトリウム、0.15mol/l塩化ナトリウム、pH5.0の緩衝液中、0.2mg/mlのヒトアルブミンを含むものであった。偽薬の溶液は、10mlの単回使用のガラスバイアル瓶中に、透明、無色、無菌、非発熱性の溶液として供給した。この溶液は、防腐剤を含有しない、20mmol/lクエン酸ナトリウム、0.15mol/l塩化ナトリウム、pH5.0の緩衝液各被験者用の処置キットは、無作為化スケジュールに従ってコード化した。
【0039】
使用した内毒素調製物は、D.Hochstein博士(Bureau of Biologics、U.S.Foodand Drug Administration、Bethesda、メリーランド州)の御厚意で提供された、FDAlotEC-5(大腸菌)であった。注射の前に、内毒素調製物をFDA指針に従って、37℃に加温し、30分間激しく攪拌し、内毒素不含の生理食塩水で適切な濃度まで希釈して再構成した。rBPI23または偽薬は、前腕血管に、丁度5分間で投与した。その反対の腕の前腕血管に、前記試験薬物注入の最後の3分の間に、40EU/kgの投与量にて、内毒素を1分間で静脈内注射した。dina map device(Critikon社、Tampa、フロリダ州)を用いて、血圧及び心拍数を15分間隔でモニターした。
【0040】
静脈内留置カテーテルを通じて、以下の時点で血液を採取した:-30、3、5、7、12、20、30、35分、1、1.5、2、3、4、6、8、10及び12時間。BPI定量用には、酸クエン酸塩デキストロースを含むVacutainerチューブ(Becton Dickinson社、Rutherford、ニュージャージー州)の中に、内毒素試験用には、発熱物質不含のヘパリン(Thrombo liquine(商標名)Organon、Oss、オランダ、30U/mlの最終濃度)を含む発熱物質不含のチューブ(Falcon2063、Oxnard、カリフォルニア州)の中に、白血球計数用には、K3-EDTAを含むチューブの中に、エラスターゼ/α1-アンチトリプシン複合体、ラクトフェリン及びC3a-desargアッセイ用には、ダイズトリプシンインヒビターを添加したシリコン処理Vacutainerチューブ(Becton Dickinson社)の中に血液を採集した。凝塊した血液を2000×gにて20分間遠心することによって、他のすべての試験のための血清を調製した。
【0041】
各々の実験を評価するために、データを分析して、平均値及び中央値の両方ならびにそれに伴う標準誤差を決定した。相関する時間の関数として、結果をプロットした。各ボランティアについて、BPIタンパク質産物処置での曲線下の台形面積(AUC)における、偽薬処置でのAUCに対する変化百分率に関し、ウィルコクソン符合付き順位検定[Lehman、Non parametrics-Statistical Methods Based on Ranks、(Holdenn-Day,Inc.、San Francisco、カリフォルニア州、1975]を用い、中央値について、処置の相違の統計学的有意性を評価した。偽薬に対するrBPI23処置についてのAUCにおける変化百分率は、100×(AUCBPI-AUC偽薬)/(AUC偽薬)として規定した。負の変化百分率は、偽薬処置に対して、rBPI23処置に対するAUCが減少することを含意している。統計的有意性は、アッセイの各機能性グループにおいて別々に評価し、しかして、パラメータの各グループに対するI型エラー率はα=0.05に維持された。複数の有意性検定に対する、改良されたBonferroni法[Miller、Simultaneous Statistical Inference(Springer-Verlag、New York、ニューヨーク州、第2版、1981)]であるHochberg法[Hochberg、Biometrika、75巻、800〜802頁(1988)]を使用して、パラメータの各グループ内での統計的有意性を判定した。キャリーオーバー及び試験期間による期間効果についての検定は、Koch、Biometrics、28巻、577〜584頁(1972)によって記載された非パラメータ法に従って実施した。この方法によって期間効果が観察された場合、Koch、前出に記載のごとくに、期間効果の存在下での処置効果に対する検定を実施することによって、処置の相違をさらに調べた。
【0042】
内毒素とrBPI23とを同時に注入することで、8名のボランティアのうち6名に一過性の(平均15分)潮紅が発症したが、他の症候は認められなかった。内毒素の注入の後、口腔内の体温は、偽薬注入後またはBPI注入後で同様に上昇した。すなわち、内毒素及び偽薬の注入後は、36.0±0.2℃から37.8±0.1℃に、内毒素とrBPI23の注入後は35.6±0.2℃から37.5±0.3℃に上昇した。平均動脈血圧は、双方の試験期間で減少し、BPI注入による影響は受けなかった。いずれのボランティアにも、安全に関わるようなEKG変化は認められなかった。双方の処置群ともで、頭痛、筋痛、悪寒及び悪心などの臨床的症候に見舞われた者はなかった。すべてのボランティアは、注入開始後24時間で完全に回復し、そしてこの時点で、腎臓、肝臓及び血液学的パラメータは正常範囲内にあった。
【0043】
心収縮期の血圧(SBP)、心拡張期の血圧(DPP)、平均動脈圧(MAP)、脈拍、呼吸数及び体温を包含する生体徴候を評価した。以下の表1に、生体徴候の統計的分析の結果を示すが、偽薬投与患者に対して、rBPI23で処置した患者についての数値に統計的有意差はなかった。
【0044】
【表1】


van Deventerら、Blood、76巻、12号、2520〜2526頁(1990)に記載されるごとくに、内毒素アッセイを実施した。結果は図1にグラフで示すが、偽薬処置患者に対する平均値±平均標準誤差を白抜きの円で表し、BPI処置患者に対する値は黒塗りの円で表している。零時から20分までの期間にわたって、rBPI23処置に比較して偽薬処置後には内毒素レベルが有意に高かった(AUCにおける変化百分率の中央値=98%、p−値=.0156)。
【0045】
(実施例2)
(サイトカイン及びサイトカイン関連タンパク)
TNFの血清レベルを、イムノ放射分析アッセイによって定量した(IRMA Medgenix社、Fleurus、ベルギー)。簡単に記すと、TNFの異なる抗原認識部位を認識する、組換えTNFに対するモノクローナル抗体の組合せによって、ポリエチレンチューブを被覆した。チューブは、試験すべき試料と、125Iで標識した抗-TNF抗体の混液と共に一晩インキュベートした。傾注した後、結合した画分を、ガンマ計数器で計数し、組換えTNFに対する標準結合曲線に基づいて、TNFのレベルをpg/mlで表した。
【0046】
IL-1β、IL-8及びIL-10の血清濃度を、製造業者(Medgenix社、Fleurus、ベルギー)の説明書に従って市販のELISAキットにより測定した。IL-6の血清濃度も、製造業者の説明書に従ってELISAにより判定した。[Central Laboratory of the Netherlands Red Cross Blood Transfusion Service(CLB)Amsterdam、オランダ]。
【0047】
可溶性TNF受容体p55及びp75濃度は、VanderPollら、J.Infect.Dis.、168巻、955〜960頁(1993)に記載される、特異的酵素連結免疫学的アッセイによって測定した。簡単に説明すると、ミクロタイタープレート(Maxisorp、Nunc社、デンマーク)を、TNFR-p55またはTNFR-p75に対する、TNF結合を阻害しないモノクローナル抗体(それぞれ、クローンhtr-20またはクローンutr-4、H.Gallati博士、Hoffmann La Roche Ltd.、Basel、スイスの御厚意により提供された)を用いて室温にて一晩被覆した。引き続き、被覆したウェルを洗浄し、残存しているウェルのタンパク質結合能を、1%BSAを含む200mM Tris/HCl、pH7.5、0.02% kathon(Hoffmann La Roche Ltd.、Basel、スイス)を用いて飽和させた。保存緩衝液を廃棄後、10%ウシ胎児血清、0.1%フェノール、0.1% Tween20、0.02% kathonを含有する、0.1M Tween20、pH7.25により1:5に希釈した試料をウェルに添加した。組換えsTNFR-p55またはsTNFR-p75で、標準曲線を作成した。ペルオキシダーゼを接合した組換えヒトTNFを添加して、混液を4℃にて2日間インキュベートした。洗浄後、オルト-フェニレン-ジアミン-ジヒドロクロリド基質を添加し、15〜20分インキュベートした。1.5MH2SO4で反応を停止し、そして吸光度を490nmにて分光光度計により測定した。
【0048】
TNFならびにp55及びp75可溶性TNF受容体に対するアッセイの結果は、それぞれ、図2、3及び4にグラフによって表す。それら図面に示されるように、TNFレベルは、内毒素/偽薬注入直前の0.50±0.38pg/ml(平均±標準誤差)から、注入後1時間及び1.5時間で、261.88±60.73pg/mlのピークレベルにまで増加し、そして10時間までに3.50±0.91pg/mlに戻った。しかしながら、内毒素注入にrBPI23注入を伴った場合、TNFピークは緩化され(41.13±14.36pg/ml)、注入後3時間にまで遅延された。双方の型のTNF受容体の血清濃度は、内毒素/偽薬による攻撃の後上昇(TNFR-p55:零時で1.21±0.07ng/mLから、3#時間で3.79±0.29ng/mLまで;TNFR-p75:零時で3.28±0.24ng/mLから、3時間で12.72±1.43ng/mLまで)したが、rBPI23と共に内毒素を注入した後は、上昇の度合いは小さく(TNFR-p55:零時で1.12±0.07ng/mLから、4時間で2.45±0.16ng/mLまで;TNFR-p75;零時で3.27±0.29から、6時間で7.45±0.71ng/mLまで)、ピークレベルは時間的にシフトしていた。
【0049】
処置後のIL-1レベルは、双方の処置期間における全実験中で、アッセイの限界を下回るものであった。
【0050】
図5に示すように、内毒素/偽薬で処置したボランティアのIL-6レベルは、注入前の0.23±0.23pg/ml(平均±標準誤差)から、3時間で188.78±79.99pg/mlにまで増加し、そして10時間で正常値に戻った。rBPI23での処置後、IL-6は注入前の0.06±0.04pg/mlから、4時間で45.13±23.28pg/mlのピークレベルに達し、その後10時間で正常値に戻った。
【0051】
図6に示すように、IL-8は、注入前の検出不能なレベルから、内毒素/偽薬処置患者では、2時間で69.83±16.72pg/ml(平均±標準誤差)に増加し、そして内毒素注入後10時間で再び、4.18±2.38pg/mlにまで低下した。rBPI23注入後の場合、IL-8のピークが生じるのが遅延され(4時間で14.20±10.63pg/ml)、そして、8名のボランティアのうち3名において、10時間の評価期間全体にわたって、IL-8レベルは検出不能な状態が維持された。10時間では、rBPI23を与えたすべてのボランティアで、IL-8は検出されなかった。
【0052】
IL-10の血清レベルは、内毒素で攻撃したボランティアにおいて偽薬及びrBPI23の双方での処置後増加していた。図7に示されるように、注入後1及び1.5時間から3時間までの間に、ピークレベルが観察された。偽薬投与群では、IL-10は、注入前の10.35±4.19pg/ml(平均±標準誤差)から、38.94±10.66pg/ml(3時間後)まで上昇し、そして10.35±4.37pg/ml(10時間後)に減衰した。rBPI23処置群では、IL-1の増加の程度はこれより小さく、すなわち、8.86±3.35pg/mlの初期レベルから、3時間で、21.76±6.89pg/mlに上昇したにすぎなかった。
【0053】
以下の表2に、サイトカイン及びサイトカイン関連タンパク質について、零時から10時間までの試験結果の統計的分析の結果を示す。
【0054】
【表2】


上記の結果、ヒトにおける実験的内毒素血症のBPIタンパク質産物を用いた処置によって、循環系中の内毒素の存在に対するサイトカイン応答に、血清学的に証明可能な且つ統計的に有意な変更が生じることが実証される。内毒素により媒介されるTNF産生の激烈さ及び時間を経た後の鎮静(setting)は、劇的に変化し、それに対応する循環系の可溶性TNF受容体のレベルの減少及び循環系の受容体値のピークの時間的なシフト発生を伴っていた。同様に、循環系中の内毒素の結果として、循環系中のIL-6の存在が有意に変更された。以前のある研究では、実験的内毒素血症のヒトにおける循環系のTNFレベルは、ペントキシフィリンでの干渉によって低減されうることが示唆されており[Zabelら、Lancet、2巻、1474〜1477頁(1989)]、そして内毒素投与後に、イブプロフェンがTNF及びIL-6レベルを増加させることが観察されているものの、このタイプの研究では、ヒトにおける内毒素に対するTNF及びIL-6応答を減じるに有効な薬剤の同定はなされていない。
【0055】
rBPI23を投与することでもたらされる、内毒素に対するTNF応答の減少は、循環系のTNF受容体の減少のみならず、抗炎症性サイトカインとして特徴付けられている物質であるIL-10の循環系での減少も伴うものである。随伴しているピーク時のIL-8のレベルの減少及びシフト発生が、後述する実施例4での議論の主題である。
【0056】
(実施例3)
(ラクテート及びグルコース分析)
標準的な実験室での手法を用いて、ラクテート及びグルコース分析を実施した。手短に要約すると、全時間にわたって、双方の処置群において同様に、血清グルコースが上昇し、一方、各群で、基線のラクテートレベルからわずかな上昇が認められた。
【0057】
(実施例4)
(総白血球及び分別白血球ならびに白血球活性化の分析)
総白血球数及び分別白血球数を、フローサイトメーター(Technicon H1 System、Technicon Instruments社、Tarrytown、ニューヨーク)を用いて定量した。白血球数は、偽薬期間においては、零時の5.7±0.7×109/Lから、1.5時間で、4.0±0.6×109/Lに減少し、そしてその後、6時間には、10.6±0.9×109/Lに上昇した。rBPI23によって、初期の白血球数減少(1.5時間での白血球数:5.9±0.6×109/L、最初の2時間におけるAUC変化の中央値=+30%、p=0.078)及びそれに続く白血球細胞数の上昇(6時間で、8.1±0.8×109/L)の双方が緩化され、従って、最初の12時間における白血球AUC減少の中央値は19%(p=0.039)であった。内毒素の注入に続いて最初の2時間のうちに、顕著な単球減少症及びリンパ球減少症が発症し、それぞれ6時間及び12時間で、単球及びリンパ球数は基線レベルにまで回復した。偽薬処置期間において、単球及びリンパ球数は、内毒素攻撃の24時間後に再び低下した(リンパ球:1.3±0.2×109/L;単球:0.4±0.1×109/L)。好酸球数は、偽薬処置で、零時の0.23±0.07×109/Lから、内毒素注入後8時間で、0.04±0.008×109/Lに減少した。好中球数は、偽薬処置で、零時の3.5±0.6×109/Lから、6時間で、9.5±0.8×109/Lのピークレベルにまで上昇し、そしてその後、24時間には、2.4±0.3×109/Lに減少した。表3に示すように、rBPI23注入よってリンパ球の減少は有意に緩化され(AUCにおける変化%の中央値:+34%;p=0.0078)、そして、単球、好酸球及び好中球に対しても緩化し、AUCにおける変化%の中央値で、単球は+42%(p=0.023)、好酸球は+37%(p=0.039)及び好中球は−26%(p=0.016)であった。しかしながら、rBPI23処置後24時間では、単球、リンパ球及び好酸球数は基線のレベルに留まった(リンパ球:1.5±0.2×109/L;単球:0.5±0.1×109I;好酸球:0.15±0.04×109/L;好中球:3.2±0.7×109/L)。
【0058】
好中球及びリンパ球定量の結果(平均±標準誤差)を、それぞれ図10及び11にもグラフの形態で示している。以下の表3は、零時から12時間までにわたる、総白血球及び分別白血球の統計的分析の結果を示すものである。
【0059】
【表3】


エラスターゼ/α1-アンチトリプシン複合体(EAA)及びラクトフェリンの血漿濃度は、Nuijensら、J.Lab.Clin.Med.、119巻、159〜168頁(1992)に記載される方法に従ってラジオイムノアッセイにより測定し、数値は、ng/mlで判定した。Hackら、J.Immunol.Meth.、107巻、77〜84頁(1988)に記載されるごとくに、ラジオイムノアッセイを用いてC3a-desargの血漿濃度を測定することにより、補体活性を評価し、数値はnmol/mlで表した。
【0060】
ラクトフェリン及びEAA分析の結果を、以下の表4に示し、また、それぞれ図8及び9にも、平均±標準誤差の結果をグラフによって表す。偽薬処置後のエラスターゼーα1-アンチトリプシン複合体(EAA)は、零時で62.5±8.5ng/mLから、内毒素注入後4時間で141±20.9ng/mLまで増加し、基線に対して2.26倍の上昇が明らかになった。rBPI23で処置した場合においては、エラスターゼ/α1-アンチトリプシン複合体形成の増加は、ごくわずかにしか観察されなかった(零時で57.5±7.4ng/mLから、注入後6時間で96.0±8.7ng/mLまで、基線に対して1.67倍の上昇)。ラクトフェリン濃度は、内毒素注入後に、基線に対して2.59倍増加していた(零時で163±22.6ng/mLから、4時間で422±58.0ng/mLまで)。rBPI23処置後には、ラクトフェリン濃度は、基線に対してわずか1.64倍だけ増加した(零時で169±27.6ng/mLから、3時間で276.6±60.5ng/mLまで)。偽薬に対するrBPI23についてのラクトフェリンのAUCにおける47%の減少は、有意であった(p=0.0078)(表4)。EAAのAUCにおける36%の減少は、有意でなかった(p=0.15)。しかしながら、期間効果に対する検定では、このパラメータについては有意であったので、Kochら、前出により記載される方法によって、処置効果をさらに精査した。この分析によって、EAAのAUCを低下させるうえで、rBPI23による有意な処置効果が示唆された(p=0.0304)(表4)。
【0061】
【表4】


C3a-desargにおいては、2つの処置ストラテジーに対する有意差が認められなかったものの、BPI処置ボランティアでは、EAA複合体形成及びラクトフェリンアッセイの結果が、偽薬処置ボランティアでの結果よりも顕著に低かった。EAA及びラクトフェリンアッセイにおいて観察された結果は、前に認められた、BPIで処置した個体でのIL-8値の減少に符合するものである。IL-8は、好中球の脱顆粒反応に作用することが含意されており、循環系のラクトフェリン及びEAAの上昇は、好中球の脱顆粒反応に起因する。しかして、本発明における試験は、循環系のラクトフェリン及びEAAを分析することによって評価した場合に、内毒素により媒介されるIL-8の循環系レベルの減少及びそれに同調した好中球脱顆粒反応の減少という結果を生じる、ヒトにおける実験的内毒素血症での干渉の、最初の既知例をもたらすものである。
【0062】
(実施例5)
(繊維素溶解及び血液凝固パラメータ分析)
D-ダイマー、プロトロンビン断片F1+2(FragF1+2)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤抗原(PAIAg)、プラスミノーゲン活性化因子阻害活性(pA1Act)、α2-プラスミン阻害剤−プラスミン複合体(PAP)、プロテインC活性(Prot.CAct)、トロンビン−抗トロンビンIII(TAT)複合体、α2-抗プラスミン(AAP)、プラスミノーゲン、組織プラスミノーゲン活性化因子抗原(tpAAg)、組織プラスミノーゲン活性化因子活性(tpAAct)及びウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)の循環系レベルを評価するために、血清学的分析を実施した。内毒素注入開始前及び開始後1.5、2、3、4、6及び10時間に、前腕前部の血管から、別々の静脈穿刺によって、血液を採取した。血小板については12時間まで続けた。AAP、プラスミノーゲン、tPAAg、uPA、PAIAg、PAIAct、D-ダイマー、Prot.CAct、FragF1+2及びTAT複合体測定用の血液(9容量)は、3.8%のクエン酸ナトリウム(1容量)を含むvacutainerチューブ(Becton Dickinson社、Rutherford)ニュージャージー州)中に採集した。tPAAct用の血液は、PAIのt-PA阻害を阻止することによってt-PA活性を安定化する、低pHのクエン酸抗凝固剤を含むBiopool Stabilyte(商標名)チューブ(Biopool社、Umea、スウェーデン)中に採集した。PAP複合体の測定用には、in vitro複合体形成を防ぐために、EDTA(最終濃度10mM)及びダイズトリプシンインヒビター(Sigma T-9003、最終濃度0.1mg/mL)を添加した、シリコン処理されたvacutainerチューブ(Becton Dickinson社、Plymouth、英国)に採集した。血小板計数用の血液を採集するためには、K3-EDTAを含むチューブを使用した。血小板計数を除くすべての測定のために、2000×gで15℃にて30分間遠心することにより血漿を調製し、その後血漿は、バッチ処理での評価を実施するまで-70℃で凍結した。
【0063】
血小板数は、フローサイトメーター(Technicon H1 system、Technicon Instruments社、Tarrytown、米国)を用いて定量した。TAT複合体及びFragF1+2の血漿レベルは、ELISA(Behringwerke AG、Marburg、ドイツ)[Teiteiら、Blood、59巻、1086〜1096頁(1982)]を用いて測定した。プロテインC活性は、Sturkら、Clin.ChimActa、165巻、263〜270頁(1987)に記載の通りに、アミド溶解アッセイによって測定した。tPAActは、アミド溶解アッセイ[Verheijenら、Thromb.Haemostasis、48巻、266〜269頁(1982)]によって測定した。簡単に説明すると、25μlの血漿を、最終容量250μlとなるように、0.1M TrisHCl、pH7.5、0.1%(v/v)Tween-80、0.3mMS-2251(Kabi Haematology社、MoeIndal、スウェーデン)、0.13Mプラスミノーゲン及びフィブリノーゲンのCNBr断片(Kabi Haematology社、MoeIndal、スウェーデン)0.12mg/mlに混合した。結果は、IU/ml(世界保健機構の第一国際標準単位)で表した。
【0064】
pAIActは、アミド溶解アッセイ[Chmielewskaら、Thtomb.Res.、31巻、427〜436頁(1983)]を用いて、試料を過剰の組織型プラスミノーゲン活性化因子と共に室温にて10分間インキュベートして測定した。t-pAの一部は試料中に存在するPAIによって阻害され、不活性な複合体を形成した。0.13μMプラスミノーゲン(Kabi Haematology社)、臭化シアンで消化したフィブリノーゲン断片(t-pA賦活剤、Kabi Haematology社)0.12mg/ml及び0.1mMS-2251(Kabi Haematology社)と引き続きインキュベートすることによって、残存するt-PA活性を定量した。色素生産性基質の変換により定量した、インキュベーション混合物中に産生されたプラスミンの量は、試料中のPAIActと反比例していた。被験試料の結果は、一定量のt-PAが添加された、PAIActを枯渇した血漿(KabiHaematology社)の試料の結果と相関していた。結果は、国際単位(IU)で表し、但し1IUは、1IUのt-PAを阻害するPAIActの量である。
【0065】
t-PAAg及びPAIAgは、ELISA[Holvoetら、Thromb.Haemostasis、54巻、684頁(1985)](それぞれ、Asserachromt-PA、Diagnostica Stago社、Asnieres-sur-Seine、フランス、及びPAI-ELISAキット、monozyme社、Charlottenlund、デンマーク)を用いてアッセイした。結果はng/mlで表す。uPAはサンドイッチELISA[Binnemaら、Thromb.Res.、43巻、569頁(1986)]を用いて測定した。アッセイでは、分子のフォーム、すなわち、プロウロキナーゼ、活性型ウロキナーゼ及び阻害剤と複合したウロキナーゼ等に関わらず、血漿中に存在するウロキナーゼ抗原が測定されるもので、結果はng/mlで表す。プラスミノーゲン活性及びPAPは、Peetersら、Thromb.Res.、28巻、773頁(1982)に記載される方法に従って、自動化アミド溶解技術により測定した。結果は、正常値に対する百分率で表す。D-ダイマーは、ELISA(AsserachromD-Di、Diagnostica Stago社、Asnieres-sur-Seine、フランス)[Elmsら、Thromb.Haemostasis、50巻、591頁(1983)]で測定した。結果はμg/mlで表す。PAP複合体は、Leviら、J.Clin.Invest.、88巻、1155〜1160頁(1991)に記載の通り、RIAによって測定した。簡単に説明すると、不活性化して複合させたα2-抗プラスミンに対して作製した特異的なmAbをセファロースビーズにカップリングし、血漿試料とインキュベートした。リン酸緩衝化生理食塩水を用いてセファロースを洗浄した後、続いて結合した複合体を、プラスミンに対する125I標識mAbとインキュベートした。さらに洗浄工程を経た後、セファロースに結合した放射活性を測定した。標準としては、2本鎖のウロキナーゼ(Choay社、Paris、フランス)とインキュベートすることにより最高量のPAP複合体を作製した血漿の連続的な希釈液を、α2-マクログロブリンを不活性化するためにメチルアミンとその血漿をプレインキュベートした後に、使用した。結果はnmol/Lで表す。
【0066】
これらの分析の結果の統計的分析(実施例1に記載したと同様)は、表5及び6に示すものである。組織プラスミノーゲン活性化因子抗原(t-pAAg)、組織プラスミノーゲン活性化因子活性(t-pAAct)、組織プラスミノーゲン活性化因子阻害剤抗原(PAIAg)、α2-プラスミン阻害剤−プラスミン(PAP)複合体、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)及びトロンビン/抗トロンビンIII(TAT)複合体のアッセイの、平均±標準誤差の結果を、それぞれ図12、13、14、15、16及び17にグラフによって示す。
【0067】
【表5】


【0068】
【表6】


この試験で、内毒素が凝固系の活性化を誘導し、これはVanDeventerら、前出、及びLeviら、J.Clin.Invest.、93巻、114頁(1994)に符合していた。特に、内毒素の注入によって、TAT-複合体及びプロトロンビン断片F1+2の血漿レベルに、それぞれ7.3倍及び7.4倍の増加が惹起こされた。TAT複合体の平均レベルは、5.5±1.4ng/mLから、40.0±5.3ng/mLに上昇して内毒素投与後3時間でピークとなり、その後徐々に減少している(図17)。F1+2の血漿レベルは、内毒素を注入した後4時間でピークに達した(0.78±0.10nmol/Lから、5.77±1.27nmol/L)。プロテインC活性の血漿レベルには、有意な変化は認められなかった。
【0069】
rBPI23注入の結果、内毒素で誘導されるトロンビン産生の有意な減少が惹起こされた。特に、最高のF1+2レベルは、内毒素を単独投与した後に比較して、rBPI23と組み合わせて内毒素を投与した後には、3.30±0.39nmol/Lであり、TAT複合体レベルの最高値は、内毒素及びrBPI23を組み合わせた処置の後、30.8±6.9ng/mLであった(図17)。rBPI23を用いた処置は、プロテインC活性の血漿レベルには効果を有しなかった(表6)。TAT複合体に対するAUCは、rBPI23にて有意に減少した(減少の中央値36%、p=0.0078)(表6)。F1+2に対するAUCもまた、rBPI23について減少し、この効果はHochber、前出の方法に従えば有意には至らなかった(減少の中央値31%、p=0.0391)。
【0070】
血小板数は、双方の処置群において減少し、偽薬では206.5±15.0×1012の基線レベルから、4時間で181.6±13.2×1012まで減少し、一方190.4±16.9×1012から、rBPI23処置の後6時間で174.8±10.7×1012まで減少した(この結果、AUCの減少は7%であり、p=0.19であった)。
【0071】
加えて、この試験では、内毒素によって、繊溶系は初期にその活性化が誘導され、その後阻害されることが示され、これは、Suffrediniら、N.Engl.J.Med.、320巻、1165頁(1989)に合致するものであった。プラスミノーゲン活性化活性は、内毒素単独で投与した後、0.22±0.03IU/mLから2.14±0.13IU/mLまで増加し、2時間でピークに達した。この、プラスミノーゲン活性化因子活性の増加(図13)は、t-PA抗原(図12)及びu-PA抗原(図16)の増加に比例したものであった。t-PA抗原及びu-PA抗原のピークレベルは、それぞれ、3時間で45.6±6.6ng/mL及び、2時間で6.0±0.5ng/mLであった。PAP-複合体(図15)及びD-ダイマーのレベルの増加によって表されるように、プラスミノーゲン活性の上昇に続いてプラスミン産生が起こり、前記PAP-複合体及びD-ダイマーの双方のレベルはそれぞれ、4.61±0.38nmol/Lから2時間で12.4±2.1nmol/mL、及び217±117ng/mLから10時間で707±120ng/mLに増加した。PAI活性及び抗原の血漿レベル(図14)は、内毒素投与後2時間まで不変のままであった。その後、それそれ34.5±2.6IU/mL及び225.8±1.3ng/mLまでの速やかなる増加が認められ、双方とも注入後4時間でピークに達した。PAP-複合体のレベル減少によって表されるように、PAIの増加は、t-PA活性の即時的な減少及びそれに続くプラスミン産生を伴っていた。t-PA及びu-PA抗原のためのアッセイは、阻害剤(すなわちPAI)と複合しているプラスミノーゲン活性化因子も測定するので、これらのパラメータの数値は徐々に減少するばかりである。
【0072】
rBPI23及び内毒素を同時に投与した結果、内毒素によって誘導される繊維素溶解活性の実質的な減少及び遅延が惹起こされた。プラスミノーゲン活性化因子活性及びt-PA抗原のレベルは、それぞれ、3時間(0.61±0.2IU/mL)及び4時間(16.4±6.7ng/mL)にピークに達した。rBPI23と組み合わせて内毒素を投与すると、u-PA抗原の増加は認められなかった。PAP-複合体及びD-ダイマーの血漿レベルの、内毒素により誘導される上昇もまた、rBPI23の注入によって大いに減じられた。PAP-複合体及びD-ダイマーのピークレベルは、それぞれ3時間で7.7±1.3nmol/L及び10時間で531±119.5ng/mLであった。PAI活性及び抗原の、内毒素により誘導される増加は、rBPI23を同時に投与することによって遅延され、部分的に阻害された。PAI活性及び抗原のレベルは、内毒素及びrBPI23を注入した後6時間でピークに達した。内毒素およびrBPI23とを組み合わせて投与することにより、PAI活性最高レベルが22.6±2.9IU/mL、及び、PAI抗原最高レベルが122.9±22.0ng/mLとなった。t-PA活性、t-PA抗原、uPA抗原、PAP複合体及びPAI抗原に対するAUCは、rBPI23で有意に減少した(各々について、p=0.0078、AUC減少の中央値は、50から79%までで変動した;表5)。PAI活性及びD-ダイマーに対するAUCは、rBPI23処置で減少したが、この減少は有意ではなかった(減少の中央値が51%、p=0.0304及び同じく45%、p=0.31;表5)。プラスミノーゲン及びα2抗プラスミンに対するAUCは、rBPI23処置によって変化しなかった(表5)。
【0073】
図12から17にわたって示される偽薬/内毒素による結果は、tPAレベルの上昇直後にtPA活性が急激に増加し、循環系のプラスミノーゲン活性化因子阻害剤のレベルが増加すると途端に下降するという点で、内毒素投与への血清学的応答と同等のものであることが確認される。本実施例の結果により、BPIタンパク質産物を用いた処置によって、関連した現象における、調和のとれた介入の可能性が立証される。tPAのピークレベルは減じられ且つ時間がシフトしており、そして対応するtPA活性及び循環系のプラスミノーゲン活性化因子阻害剤レベルの低下が観察される。tPAによるプラスミノーゲンの活性化は、循環系のα2-プラスミン阻害剤−プラスミン複合体(PAP)のレベルで示されるごとく、減じられていた。このように、本実施例の試験は、ヒトにおける実験的内毒素血症で、内毒素により媒介される、循環系のtPA及びその活性の増加への介入の初めての例を示すものである。
【0074】
(実施例6)
(内毒素で誘導された収縮過多循環系状態からの保護)
循環系状態の評価は、以下の通りに実施した:超音波心臓動態図は、Ultramark9超音波心臓動態機(Advanced Technology Laboratories社、Bothell、ワシントン)を用い、操縦可能なパルス調整Dopplerモードを特色とする、2.25MHzの相整列プローブ(phased array probe)で実施した。すべての被験者で、M−モード測定、傍胸骨からの2-Dイメージング、先端及び肋骨下の画像、色でコード化したDopplerイメージング及びパルス調整Doppler測定を包含する、休息時の(基線の)基礎超音波心臓動態試験を行った。至適な肋骨下及び先端のウィンドウを確定し、被験者の皮膚に印記した。すべての比出力設定、試料の容量及び深度ならびにDoppler出力設定を、各々の被験者について記録し、各測定時に注意深く再現した。最初の基礎試験は、内毒素注入の初日から数週間前に実施した。注入を行う各々の日に、注入よりも1時間前の早朝に基礎試験を実施した。第4回目の基礎試験は、最後に注入てから、6から8週間後に行った。これら4つの超音波心臓動態からの平均値が、基礎値を構成するものである。注入開始後1:30、2:30、4:00、5:00、8:00、12:00の時点の試験日に、以下の測定を実施した:M−モード;左心室端部拡張期直径(LVEDD)、左心室端部収縮期直径(LVESD)。心室内中隔の厚み(IVS)、左後壁の厚み(LVPW)、大動脈根(root)(Ao)及び左心房の寸法、僧帽弁及び大動脈弁の動きの追跡。2-D:標準傍胸骨長軸及び短軸方向の画像(view)、先端及び肋膜下の画像作成に基づく直径の評価、壁の動き及び僧帽、大動脈及び三尖弁装置の外観。大動脈弁のおよそ1cm下方の最も狭い点における、左心室拍出管の直径(Dlvot)の慎重な測定は、動脈弁が開いた後の初期心収縮期の静止フレームにおける、傍胸骨に沿った長軸方向の画像にて行った。すべての時点で、少なくとも6回の測定を行った。カラー−Doppler:僧帽弁の血流及び三尖弁の血流ならびに逆流があればそれも評価した。パルス調整Doppler測定:基礎実験で、ならびに、注入開始後0:30、1:00、1:30、2:00、2:30、3:00、3:30、4:00、4:30、5:00、6:00、8:00、10:00、12:00時間の時点での試験日に、先端のウィンドウから、左心室拍出管の中心における収縮期の血流のパルス調整Doppler測定をおこなった。10の連続したDoppler血流追跡を、ビデオテープに記録した。心拍数、体温及び血圧も同時に記録した。
【0075】
オフラインでの試験が完遂した後、速度時間積分値(VTI)またはVi・δtの合計によって得られるメートル単位でのスペクトル面積を、ビデオテープから追跡した。最高速度Vmaxもまた、VTI追跡から求めた。平均値は、10の連続した拍動より求めたものである。
【0076】
結果を分析するために用いた式は以下の通りである:(1)左心室端部拡張期容積(mL):LVEDV=(7.0/(2.4+LVEDD))xLVEDD3)/100;
(2)左心室端部収縮期容積(mL):LVESV=(7.0/(2.4+LVESD))xLVESD3)/100;
(3)短縮率(%):FS:(LVEDD-LVESD)/LVEDD)x100;
(4)駆出率(%):EF=(LVEDV-LVESV)/LVEDV)x100;
(5)横断面面積lvot(cm2):CSA=π(Dlvot2/4;
(6)拍動容量(mL):SV=CSAxVTIx100;
(7)心拍出量(CO)(L):CO=SVxHR/100式中、HRは、心拍数(1分当たりの拍動数)である;
(8)心指数(L/分/m2):CI=CO/BSA式中、BSAは、体表面積である;ならびに
(9)体表面積(m2):BSA=(身長)0.725x(体重)0.425x(0.007184)
(10)全身血管抵抗指数(平方メートル当たりダイン*秒/cm5):SVRI=80*(平均動脈血圧−6)/心指数。
【0077】
以下の表7に、一次左心室機能のパラメータであるSVRI及びCIの統計的分析(実施例1に記載の通り)の結果を示す。SVRI及びCIのデータのグラフによる表示は、図18及び19にそれぞれ供する。
【0078】
【表7】


以下の表8に、他の左心室機能パラメータの副(二次)評価に対する結果の数値の中央値における変化の百分率及びp−値に関するデータを表す。
【0079】
【表8】


心拍数は、双方の試験期間において増加傾向を示したが、rBPI23処置期間における方が増加は小さかった。rBPI23処置期間については、心拍数は、零時の56±2拍動数/分から、4:30時間で最高値の77±5に上昇し、6時間で73±3に下降し、一方偽薬処置期間については、心拍数は、零時の61±5から、3:30時間で最高値の87±4にさらに急速に上昇し、6時間までに75±3に下降した(0から6時間までのAUCにおける減少は27%、p=0.0078)。偽薬とrBPI23期間のあいだの初期の心拍数の相違は、第一回の注入日(偽薬)の際に、おそらくは、不安のために、0及び0:30時間で、それぞれ87及び74の心拍数で開始した1人の被験者の心拍数の差異に、主として起因するものであり、この被験者は、第二回目の試験日の零時には、心拍数は55であった。
【0080】
rBPI23処置期間における速度時間積分値(VTI)は、おそらく、8名中6名のボランティアが経験した初期の潮紅に関連して、0:30時間及び1時間で増加した。rBPI23処置期間については、VTIは、零時で0.210±0.009mであり、0:30時間で0.223±0.008m及び0:30時間で0.222±0.006mであった。偽薬処置期間については、VTIは、零時で0.203±0.008mであり、0:30時間で0.207±0.006m及び1時間で0.201±0.007mであった。5時間経過してからは、一致して、rBPI23処置期間の方が心拍数が低く、そしてVTIは高かった。
【0081】
Vmaxは、双方の注入期間で増加傾向を示したが、rBPI23処置期間において、増加は小さかった。(AUC中央値:rBPI23については1.15、偽薬については2.29、p=0.061(ウィルコクソン順位総和(RankSum)検定による))。期間1と2との間でのキャリーオーバー効果の存在に起因して、Vmaxは、期間1においてのみ有意であることが確かめられた。rBPI23処置期間において、Vmaxは、零時での1.05±0.076m/sから、3:30時間で1.23±0.08m/Sに上昇し、そして偽薬処置期間においては、零時で1.05±0.05m/sから、3:30時間で1.29±0.05m/sに上昇した。左心室拍出管の変化における血流のプロファイルから、高い速度であるが、駆出時間が短縮されておりVTIが保存される結果となっていることが示される。
【0082】
各時点で6回、切断面積(CSA)を測定したが、心拍数に伴う平均CSAの変化は認められなかった。ここで、各被験者に対する1つの注入期間の心拍数及びCSAのすべての測定値の平均値を、式中の定数として用いた。この8名のボランティアの群での平均CSAは、4.37±0.4CM2であった。
【0083】
心指数は、双方の試験期間で増加したが、rBPI23注入により、内毒素によって誘導される心指数の上昇は有意に減じられた(表7:AUCにおける減少は13%、p=0.0156)。rBPI23処置期間において、CIは、零時で2.51±0.16(L/分/m2)であり、そして3:30時間で3.27±0.30まで徐々に上昇した。偽薬処置期間については、CIは零時で2.64±0.18であり、3:30時間で3.98±0.27に上昇した。4:30時間で、双方の期間における心指数は基線に比較して上昇しており、双方とも12時間までに徐々に基線レベルに戻った。
【0084】
収縮期(SBP)、拡張期(DBP)及び平均動脈血圧(MAP)は、双方の試験期間で減少し、rBPI23注入によって影響を受けなかった。
【0085】
全身血管抵抗指数(SVRI)は、双方の期間で減少傾向を示したが、rBPI23注入期間での減少が有意に低かった(表7:AUCにおける減少は28%、p=0.304)。SVRIは、偽薬処置期間において、基線で2714.4±204.0から、3時間で1633.8±88.5に下降し、これに対して、rBPI23処置期間では、基線で2908.2±205.2であり、3時間で2056.0±145.2であった(図18)。
【0086】
M−モード超音波心臓動態によって測定した、端部拡張期容量及び端部収縮期容量は、いずれの時点においても、処置期間の間に相違はなかった。平均端部拡張期容量は、基線での201±13mLから、偽薬処置期間において、4時間で188±13mLまで、rBPI23処置期間では、4時間で188±11mLにまで、徐々に下降した。端部収縮期容量は、基線での88±6mLから、偽薬処置期間において、4時間で74±9mLに、rBPI23処置期間では、4時間で75±7mLに変化した。
【0087】
M−モード駆出率は、基線での56±0.9%から、rBPI23処置期間において、4時間で60±2.8%、そして12時間で59±1%にわずかな増加傾向を示し、これに対して、偽薬処置期間においては、4時間で62±2.6%、そして12時間で60±2.8%に増加した。短縮率もまた、基線での33.1±0.7%から、rBPI23処置期間において、4時間で36±2.3%、そして12時間で35±0.9%に増加傾向を示し、これに対して、偽薬処置期間においては、4時間で38±2.7%、そして12時間で37±2.2%に増加した。
【0088】
前記の結果により、ヒトにおける実験的内毒素血症を、BPIタンパク質産物を用いて処置することによって、循環系中の内毒素に呼応した、左心室機能の収縮過多性変化の有意な修正が起こることが実証される。BPIタンパク質産物は、内毒素の存在に伴う、全身血管抵抗指数の減少及び同時に起こる心指数の増加を軽減した。
【0089】
前記した例示的な実施例及びそれらの現時点において好ましい実施態様を考慮すれば、当業者には本発明の数多くの特徴及び利点が明らかになるであろう。例えば、グラム陰性細菌血症、内毒素で汚染された液体の偶発的な注射または腸からの移行による内毒素の全身への遊離等に罹患しているヒト患者に、内毒素によって媒介される現象、例えば、循環系のサイトカイン及び組織プラスミノーゲン活性化因子のレベルの増大ならびにリンパ球数の変化等の現象を、血清学的に及び血液学的に証明可能に減少させるべく、BPIタンパク質産物を投与する(例えば、持続的な静脈内注入)ことから、前記患者が利益を得ることが明らかであろう。また、BPIタンパク質産物投与によって、抗生物質を用いた治療を受けており、その抗生物質によって媒介される細菌溶解の結果としての循環系中への内毒素の侵入に遭遇している患者に、有益な付加的療法が提供されることは明らかであろう。従って、本発明は、特許請求の範囲での記載のみによってしか限定を受けるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、細菌性内毒素に対する血清学的分析の結果を表すグラフである。
【図2】図2は、TNFにに対する血清学的分析の結果を表すグラフである。
【図3】図3は、可溶性TNFp55受容体に対する血清学的分析の結果を表すグラフである。
【図4】図4は、可溶性TNFp75受容体に対する血清学的分析の結果を表すグラフである。
【図5】図5は、IL-6に対する血清学的分析の結果を表すグラフである。
【図6】図6は、IL-8に対する血清学的分析の結果を表すグラフである。
【図7】図7は、IL-10に対する血清学的分析の結果を表すグラフである。
【図8】図8は、ラクトフェリンに対する血清学的分析の結果を表すグラフである。
【図9】図9は、エラスターゼ/α1アンチトリプシン複合体に対する血清学的分析の結果を表すグラフである。
【図10】図10は、好中球に対する血液学的分析の結果を表すグラフである。
【図11】図11は、リンパ球に対する血液学的分析の結果を表すグラフである。
【図12】図12は、組織プラスミノーゲン活性化因子抗原に対する血清学的分析の結果を表すグラフである。
【図13】図13は、組織プラスミノーゲン活性化因子活性に対する血清学的分析の結果を表すグラフである。
【図14】図14は、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤抗原に対する血清学的分析の結果を表すグラフである。
【図15】図15は、α2-プラスミン阻害剤−プラスミン複合体に対する血清学的分析の結果を表すグラフである。
【図16】図16は、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子に対する血清学的分析の結果を表すグラフである。
【図17】図17は、トロンビン/抗トロンビンIII(TAT)複合体に対する血清学的分析の結果を表すグラフである。
【図18】図18は、全身血管抵抗指数(SVRI)の分析の結果を表すグラフである。
【図19】図19は、心指数(CI)の分析の結果を表すグラフである。(配列表)
【化1】


【化2】


【化3】


【化4】


【化5】


【化6】


【化7】


【化8】


【化9】


【化10】


【出願人】 【識別番号】594075802
【氏名又は名称】ゾーマ・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XOMA CORPORATION
【出願日】 平成18年8月28日(2006.8.28)
【代理人】 【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策

【公開番号】 特開2006−321818(P2006−321818A)
【公開日】 平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願番号】 特願2006−231410(P2006−231410)