| 【発明の名称】 |
肝移植における拒絶反応の予防又は治療薬、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療薬 |
| 【発明者】 |
【氏名】上田 幹子
【氏名】田中 紘一
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| 【要約】 |
【課題】肝移植における拒絶反応予防又は治療、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療において副作用の少ない効果的な医薬の提供。
【解決手段】ミゾリビンを有効成分とした肝移植における拒絶反応の予防又は治療薬、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療薬。さらには、カルシニューリン阻害薬及び/又はステロイド剤と併用することを特徴とする有効成分としてミゾリビンを含有する医薬であり、特に、ステロイド剤の減量または中止及び/又はカルシニューリン阻害薬の減量を目的に併用することを特徴とする有効成分としてミゾリビンを含有する医薬。又、ABO血液型不適合肝移植における拒絶反応または肝機能異常の予防又は治療に用いることを特徴とする有効成分としてミゾリビンを含有する医薬。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 有効成分としてミゾリビンまたは薬学的に許容できるその塩を含有し、該有効成分の1日あたりの投与量が0.5mg/kgから30mg/kgであることを特徴とする、肝移植に伴う拒絶反応予防又は治療薬、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療薬。 【請求項2】 有効成分としてさらにカルシニューリン阻害薬を併用する、請求項1に記載の予防又は治療薬。 【請求項3】 有効成分としてさらにステロイド剤を併用する、請求項1に記載の予防又は治療薬。 【請求項4】 有効成分としてさらにカルシニューリン阻害薬及びステロイド剤を併用する、請求項1に記載の予防又は治療薬。 【請求項5】 肝移植に伴い生じ慢性の経過をたどる急性拒絶反応又は慢性拒絶反応或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の予防又は治療に用いることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の予防又は治療薬。 【請求項6】 ABO血液型不適合肝移植における拒絶反応或いは肝機能異常の予防又は治療に用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の予防又は治療薬。 【請求項7】 肝移植に伴い生じる拒絶反応又は肝機能異常の予防又は治療薬において、有効成分としてミゾリビンまたは薬学的に許容できるその塩をステロイド剤の減量又は中止及び/又はカルシニューリン阻害薬の減量を目的に併用する、請求項2〜6のいずれか1項に記載の予防又は治療薬。 【請求項8】 有効成分としてミゾリビンまたは薬学的に許容できるその塩を、ステロイド剤の減量又は中止を目的に併用する、請求項7に記載の予防又は治療薬。 【請求項9】 有効成分としてミゾリビンまたは薬学的に許容できるその塩を、カルシニューリン阻害薬の減量を目的に併用する、請求項7に記載の予防又は治療薬。 【請求項10】 ABO血液型不適合肝移植における拒絶反応或いは肝機能異常の予防又は治療において、シクロフォスファミド治療後の後療法として併用する、請求項6に記載の予防又は治療薬。 【請求項11】 肝移植後に腎障害及び/又は神経症状を併発した患者に用いる請求項1〜10のいずれか1項に記載の予防又は治療薬。 【請求項12】 肝移植が、糖尿病を合併している患者に対する肝移植である請求項1〜10のいずれか1項に記載の予防又は治療薬。 【請求項13】 ミゾリビンとステロイド剤及び/又はカルシニューリン阻害薬を併用することを特徴とする、肝移植に伴う難治性急性拒絶反応の予防又は治療薬。 【請求項14】 ミゾリビンとステロイド剤及び/又はカルシニューリン阻害薬を併用することを特徴とする、ABO血液型不適合移植における液性拒絶反応の予防又は治療薬。 【請求項15】 ミゾリビンとステロイド剤及び/又はカルシニューリン阻害薬を併用することを特徴とする、肝移植に伴う拒絶反応予防又は治療方法、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療方法。 【請求項16】 ミゾリビンとステロイド剤及び/又はカルシニューリン阻害薬を併用することを特徴とする、肝移植に伴う難治性急性拒絶反応の予防又は治療方法、或いはABO血液型不適合移植における液性拒絶反応の予防又は治療方法。 【請求項17】 有効成分としてミゾリビンまたは薬学的に許容できるその塩を、1日あたり0.5mg/kgから30mg/kg投与することを特徴とする、肝移植に伴う拒絶反応予防方法又は治療方法、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、肝移植における拒絶反応予防又は治療、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療において副作用の少ない効果的な医薬に関する。具体的には、本発明は、ミゾリビンを有効成分とした肝移植における拒絶反応の予防又は治療薬、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療薬に関する。さらには、カルシニューリン阻害薬及び/又はステロイド剤と併用することを特徴とする有効成分としてミゾリビンを含有する医薬に関し、特に、ステロイド剤の減量または中止及び/又はカルシニューリン阻害薬の減量を目的に併用することを特徴とする有効成分としてミゾリビンを含有する医薬に関する。又、別の態様として、ABO血液型不適合肝移植における拒絶反応または肝機能異常の予防又は治療に用いることを特徴とする有効成分としてミゾリビンを含有する医薬に関する。 【背景技術】 【0002】 臓器移植は他の内科的あるいは外科的な治療法では対処できない疾患に対して行われる治療法である。肝移植には生体肝移植と脳死肝移植とがある。本邦では1999年6月に脳死臓器移植法が成立し10月から施行されたが、絶対的なドナー不足から生体肝移植が多く行われている。肝移植は、急性または慢性の経過をとり肝不全に陥る場合、肝臓に先天的な障害があり生命維持に不可欠な物質の欠乏や有害な物質の増加する場合、肝腫瘍などで生活に著しい障害をきたす場合などが適応になる。 【0003】 移植を行った患者で大きな問題のひとつは拒絶反応であり、その発現を抑える目的でいくつかの免疫抑制剤が使われる。拒絶反応には大きく分けて急性拒絶反応と慢性拒絶反応の2種類がある。急性拒絶反応は、その発生頻度は40〜60%と非常に高く、好発時期は術後2、3週から2ヶ月で、ほとんどが1年以内に発生する。臨床症状としては発熱、倦怠感など非特異的なものが多く、検査所見上はトランスアミナーゼの上昇やビリルビンの上昇などの肝機能障害がみられる。一方、慢性拒絶反応は、急性拒絶反応を繰り返す症例や全く肝機能異常なく長期に経過した後に起こるものもあり、臨床上遷延ないし進行性の黄疸を呈し、末期には肝不全状態を示してくる。腎移植では透析という治療法が存在するため拒絶反応等による移植臓器の機能喪失が即患者の死亡に繋がることはないが、肝移植においては移植臓器が機能を喪失した場合再移植をする以外に患者を救命する方法がない。日本においては脳死ドナー不足と生体肝移植におけるドナー候補者の寡少のため再移植の機会が非常に少ないので、腎移植以上に拒絶反応等に対する厳密な管理が必要となる。 【0004】 免疫抑制剤は常に副作用との兼ね合いのなかで使用され、副作用が起こらないよう、また拒絶反応が起こらないよう、さらには過剰免疫抑制にならないよう、狭い治療域のなかで投薬が行わなければならない。肝移植の場合、カルシニューリン阻害剤とステロイド剤の併用が一般的に行われているが、アザチオプリンやミコフェノール酸モフェティルが併用される場合がある。 【0005】 4‐カルバモイル‐1‐β‐D‐リボフラノシル‐イミダゾリウム‐5‐オレイト(以下、ミゾリビン)は、オイペニシリウム属に属するオイペニシリウム・ブレフェルディアナムM-2166株(FERMP-1104)の培養液より発見された核酸関連物質で、水に易溶で、200℃付近で褐色発泡分解する弱酸性物質であって、その製造方法としては、上記の菌株を用いる醗酵法や化学合成法等の種々の方法が知られている(非特許文献1、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4等)。 【0006】 ミゾリビンは、すでに市販されている免疫抑制剤であって、例えば腎移植における拒絶反応の抑制に有用性が認められ、通常体重1kg当たり、初期量としてミゾリビン2〜3mg相当量、維持量として1〜2mg相当量を1日量として経口投与するブレディニン(登録商標名:旭化成株式会社製)錠として無水系結晶体が使用されている。 【特許文献1】特開昭48‐56894号公報 【特許文献2】特開昭50‐121275号公報 【特許文献3】特開昭50‐121276号公報 【特許文献4】特開昭51‐1693号公報 【非特許文献1】Laiら、Symposium to the 9th Biennlal Scientific Meeting Asian Pacific Association for the Study of the Liver(1994). 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は、肝移植における拒絶反応の予防又は治療或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療において、副作用の少ない効果的な医薬を提供することを目的とするものである。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者は、上記課題を解決するために、肝移植における免疫抑制剤は、他の臓器移植に比べて肝障害の強い薬剤、肝障害の出現頻度の高い薬剤は使いにくいことや、周術期や拒絶反応発現時には肝機能の変化が大きいために肝臓で活性化される薬剤または不活化される薬剤は慎重投与が必要であることに着目した。 肝移植に伴う拒絶反応の予防又は治療、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療においては通常、ステロイド剤単独、カルシニューリン阻害薬単独、又はステロイド剤とカルシニューリン阻害薬との併用投与が行なわれる。 ステロイド剤は副作用が多く、その主なものは白内障、糖尿病、大腿骨頭壊死、精神症状、満月様顔貌、消化性潰瘍、また小児の場合は発育障害等である。 一方、カルシニューリン阻害剤は一般的に腎毒性が認められる。さらに、タクロリムスでは腎毒性以外の副作用として、振戦、意識障害、頭痛、不眠、高血糖、血清カリウム値上昇、下痢、脱毛等が報告されており、又、シクロスポリンでは腎毒性以外の副作用として、肝毒性、膵毒性、高血圧、多毛、歯肉腫大等の副作用が報告されている。 これに対し、ミゾリビンは、臨床において副腎皮質ホルモン剤、免疫抑制剤、抗リウマチ剤等複数の薬剤と併用されているが、これまでに相互作用についての報告はなく、承認時迄の調査および市販後調査における副作用発現頻度は14.65%(719例/4909例)と少なく、その主なものは、腹痛、食欲不振等の消化器系障害4.95%(243例)、白血球減少等の血液系障害2.46%(121例)、発疹等の過敏症2.42%(119例)で、このうち貧血は0.63%(31例)である(ブレディニン錠:製品情報概要,旭化成株式会社(2001年12月作成))。また、腎移植患者において、1日当り500mg相当量以上のミゾリビン投与の報告(今日の移植,14,(6),832(2001)、Therapeutic Research,23,(5),969(2002))があるが、貧血等の副作用発現頻度は承認用量(1〜3mg/kg)の場合と殆ど変わらなかった。 【0009】 本発明者は、上記課題を解決するために、上述の通りに毒性の少ないミゾリビンについて鋭意研究を重ねた結果、ミゾリビンは特に肝毒性が少ないことを見出し、さらには該ミゾリビンとカルシニューリン阻害薬及び/又はステロイド剤を併用する予防又は治療が、その目的に適合しうることを見いだし、この知見に基づいて本発明をなすに至った。 すなわち、本発明は、 (1)有効成分としてミゾリビンまたは薬学的に許容できるその塩を含有し、該有効成分の1日あたりの投与量が0.5mg/kgから30mg/kgであることを特徴とする、肝移植に伴う拒絶反応予防又は治療薬、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療薬; (2)有効成分としてさらにカルシニューリン阻害薬を併用する、上記(1)に記載の予防又は治療薬; (3)有効成分としてさらにステロイド剤を併用する、上記(1)に記載の予防又は治療薬; (4)有効成分としてさらにカルシニューリン阻害薬及びステロイド剤を併用する、上記(1)に記載の予防又は治療薬; (5)肝移植に伴い生じ慢性の経過をたどる急性拒絶反応又は慢性拒絶反応或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の予防又は治療に用いることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の予防又は治療薬; (6)ABO血液型不適合肝移植における拒絶反応或いは肝機能異常の予防又は治療に用いることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の予防又は治療薬; (7)肝移植に伴い生じる拒絶反応又は肝機能異常の予防又は治療薬において、有効成分としてミゾリビンまたは薬学的に許容できるその塩をステロイド剤の減量又は中止及び/又はカルシニューリン阻害薬の減量を目的に併用する、上記(2)〜(6)のいずれか1つに記載の予防又は治療薬; (8)有効成分としてミゾリビンまたは薬学的に許容できるその塩を、ステロイド剤の減量又は中止を目的に併用する、上記(7)に記載の予防又は治療薬; (9)有効成分としてミゾリビンまたは薬学的に許容できるその塩を、カルシニューリン阻害薬の減量を目的に併用する、上記(7)に記載の予防又は治療薬; (10)ABO血液型不適合肝移植における拒絶反応或いは肝機能異常の予防又は治療において、シクロフォスファミド治療後の後療法として併用する、上記(6)に記載の予防又は治療薬; (11)肝移植後に腎障害及び/又は神経症状を併発した患者に用いる上記(1)〜(10)のいずれか1つに記載の予防又は治療薬; (12)肝移植が、糖尿病を合併している患者に対する肝移植である上記(1)〜(10)のいずれか1つに記載の予防又は治療薬; (13)ミゾリビンとステロイド剤及び/又はカルシニューリン阻害薬を併用することを特徴とする、肝移植に伴う難治性急性拒絶反応の予防又は治療薬; (14)ミゾリビンとステロイド剤及び/又はカルシニューリン阻害薬を併用することを特徴とする、ABO血液型不適合移植における液性拒絶反応の予防又は治療薬; (15)ミゾリビンとステロイド剤及び/又はカルシニューリン阻害薬を併用することを特徴とする、肝移植に伴う拒絶反応予防又は治療方法、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療方法; (16)ミゾリビンとステロイド剤及び/又はカルシニューリン阻害薬を併用することを特徴とする、肝移植に伴う難治性急性拒絶反応の予防又は治療方法、或いはABO血液型不適合移植における液性拒絶反応の予防又は治療方法; (17)有効成分としてミゾリビンまたは薬学的に許容できるその塩を、1日あたり0.5mg/kgから30mg/kg投与することを特徴とする、肝移植に伴う拒絶反応予防方法又は治療方法、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療方法; に関する。 【発明の効果】 【0010】 本発明のミゾリビンを有効成分として含む医薬は、肝移植に伴う拒絶反応抑制予防又は治療、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療において、副作用の少ない効果的な治療及び予防を提供することができる。特に、カルシニューリン阻害薬及び/又はステロイド剤との併用投与した場合有用である。カルシニューリン阻害薬単独投与またはカルシニューリン阻害薬とステロイド剤の併用投与に比し、副作用の軽減が可能であり、さらには、ステロイド剤の減量又は中止及び/又はカルシニューリン阻害薬の減量が可能となる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0011】 以下、本願発明について具体的に説明する。 本発明で用いることができるミゾリビンの化学名は、4‐カルバモイル‐1‐β‐D‐リボフラノシル‐イミダゾリウム‐5‐オレイトである。ミゾリビンは、オイペニシリウム属に属するオイペニシリウム・ブレフェルディアナムM−2166株(FERMP−1104)の培養液より発見された核酸関連物質で、水に易溶で、200℃付近で褐色発泡分解する弱酸性物質であって、その製造方法としては、上記の菌株を用いる醗酵法や化学合成法等の種々の方法が知られている(特開昭48‐56894号公報、特開昭50‐121275号公報、特開昭50‐121276 号公報、特開昭51‐1693号公報、又はLaiら:Symposium to the 9th Biennlal Scientific Meeting Asian Pacific Association for the Study of the Liver(1994)等を参照)。 【0012】 ミゾリビンは、すでに市販されている免疫抑制剤であって、例えば腎移植における拒否反応の抑制に有用性が認められ、通常体重1kg当たり、初期量としてミゾリビン2〜3mg相当量、維持量として1〜2mg相当量を1日量として経口投与するブレディニン(登録商標名:旭化成株式会社製)錠として無水系結晶体が使用されている。 【0013】 本明細書でいう「カルシニューリン阻害薬」としては、カルシニューリンを阻害する薬剤であれば何でもよいが、好適な例としては、有効成分としてタクロリムス(FK506)または薬学的に許容されるその塩を含有する製剤、又は有効成分としてシクロスポリンまたは薬学的に許容されるその塩を含有する製剤等が挙げられる。それらの代表的なものとしては、前者は例えば藤沢薬品工業株式会社から入手可能なプログラフが挙げられ、後者は例えばノバルティスファーマ株式会社から入手可能なサンディミュン又はネオーラルが挙げられるが、これらと明らかに等価な有効成分を含有する薬剤等も好適な例として挙げられる。 【0014】 また、本明細書でいう「ステロイド剤」としては、ステロイド系薬剤であれば何でもよいが、好適な例としては、有効成分としてプレドニゾロン又はメチルプレドニゾロンを含有する製剤、又は薬学的に許容されるそれらの塩を含有する製剤等が挙げられる。その代表的なものは、例えば塩野義製薬株式会社から入手可能なプレドニン錠、日本アップジョン株式会社から入手可能なメドロール錠、又はこれらと明らかに等価な有効成分を含有する薬剤等が挙げられる。 【0015】 肝移植に伴う拒絶反応には大きく分けて急性拒絶反応と慢性拒絶反応の2種類がある。急性拒絶反応は、その発生頻度は40〜60%と非常に高く、好発時期は術後2、3週から2ヶ月で、ほとんどが1年以内に発生する。臨床症状としては発熱、倦怠感など非特異的なものが多い。検査所見上はトランスアミナーゼ(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)など)の上昇、ビリルビン(総ビリルビン、間接ビリルビン、直接ビリルビン)の上昇やγ−グルタミルトランスペプチダーゼ(γ−GTP)などの肝機能障害がみられる。なかでもAST、ALT、総ビリルビン、 γ−GTPの検査値が、特に重要である。急性拒絶の中で、特に治療成績が悪いものとして、難治性急性拒絶反応が挙げられる。 【0016】 一方、慢性拒絶反応は、急性拒絶反応を繰り返す症例や全く肝機能異常なく長期に経過し前触れなく起こるものもあり、臨床上遷延ないし進行性の黄疸を呈し、末期には肝不全状態を示してくる。検査所見上はトランスアミナーゼ(AST、ALTなど)の上昇、ビリルビン(総ビリルビン、間接ビリルビン、直接ビリルビン)の上昇やγ−GTPなどの肝機能障害がみられる。なかでもAST、ALT、総ビリルビン、γ−GTPの検査値が、特に重要である。慢性拒絶の中で、特に治療成績が悪いものとして、難治性慢性拒絶反応が挙げられる。 【0017】 また、肝移植に伴う拒絶反応とは断定できない肝機能異常としては、生検未実施のため拒絶反応とは特定できないが、検査所見上はトランスアミナーゼ(AST、ALTなど)の上昇、ビリルビン(総ビリルビン、間接ビリルビン、直接ビリルビン)の上昇やγ−GTPなどの肝機能障害がみられる。なかでも AST、ALT、総ビリルビン、γ−GTPの検査値が、特に重要である。 【0018】 肝移植に伴う拒絶反応、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常としては、例えば、 (1)肝移植に伴い生じ慢性の経過をたどる急性拒絶反応又は慢性拒絶反応 (2)肝移植に伴う難治性急性拒絶反応 (3)肝移植に伴う難治性慢性拒絶反応 (4)肝移植に伴い生じ慢性の経過をたどる拒絶反応とは断定できない肝機能異常 (5)ABO血液型不適合肝移植における拒絶反応 (6)ABO血液型不適合肝移植における液性拒絶反応 (7)ABO血液型不適合肝移植における細胞性拒絶反応 (8)ABO血液型不適合肝移植における拒絶反応とは断定できない肝機能異常 等が挙げられる。 【0019】 上記(5)〜(8)のABO血液型不適合肝移植における拒絶反応は、拒絶反応による短期的又は長期的に致命的な移植肝の機能不全に陥る危険性があるため、より厳密な管理が必要となる。 【0020】 こうした患者における本発明の予防又は治療薬の有効性は、例えば、AST、ALT、総ビリルビン、γ−GTPの検査値の改善具合で判断できる。一例を挙げると、これら4項目のうち1項目以上改善された症例が有効であると判断し、2項目以上改善された症例がより有効であると判断し、3項目以上改善された症例がさらに有効であると判断し、4項目全てが改善された症例が特に有効であると判断することができる。 【0021】 本発明の肝移植に伴う拒絶反応予防又は治療薬、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療薬は、肝移植に伴う拒絶反応の予防又は治療、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療に有用であるが、(1)肝移植に伴い生じ慢性の経過をたどる急性拒絶反応又は慢性拒絶反応の予防又は治療、(2)肝移植に伴う難治性急性拒絶反応予防又は治療、(4)肝移植に伴い生じ慢性の経過をたどる拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療、(5)ABO血液型不適合肝移植における拒絶反応の予防又は治療、(6)ABO血液型不適合肝移植における液性拒絶反応の予防又は治療、(8)ABO血液型不適合肝移植における拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療に有効に作用することが特徴であり、中でも、(2)肝移植に伴う難治性急性拒絶反応予防又は治療、(6)ABO血液型不適合肝移植における液性拒絶反応の予防又は治療に有効に作用することが特徴である。 【0022】 本発明を実施するためには、上記の徴候または症状を示す患者に、ミゾリビン単独、或いはミゾリビンとカルシニューリン阻害薬及び/又はステロイド剤とを、その徴候または症状をなくすかまたは軽減するに十分な量で投与する。 【0023】 本発明の肝移植に伴う拒絶反応予防又は治療薬、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療薬において、有効成分としてのミゾリビンまたは薬学的に許容できるその塩の1日あたりの投与量の下限としては、0.5mg/kg以上が好ましく、0.9mg/kg以上がより好ましく、1mg/kgがさらに好ましく、1.1mg/kg以上が特に好ましく、特に1.4mg/kg以上がより好ましく、特に1.5mg/kg以上がさらに好ましく、2mg/kg以上が大変好ましく、3mg/kg以上が最も好ましい。また、上限としては、30mg/kg以下が好ましく、20mg/kg以下がより好ましく、12mg/kgがさらに好ましく、10mg/kgが特に好ましく、特に9mg/kg以下がより好ましく、特に8.5mg/kg以下がさらに好ましく、6mg/kg以下が大変好ましく、特に3.6mg/kg以下が大変好ましく、3.5mg/kgが最も好ましく、これを1日1〜3回分割投与すればよい。 【0024】 ミゾリビンの剤形としては、経口投与用製剤あるいは非経口投与用製剤が挙げられるが、好ましくは経口投与用製剤である。例えば、体重50〜60kgの患者成人に対してミゾリビン経口投与用製剤25mgまたは50mg錠を用いて1回250mg量のミゾリビンを1日2回投与する。ミゾリビンの1日あたりの投与回数は適宜調節可能であるが、好ましい投与回数は1日3回以下、より好ましくは1日2回以下、最も好ましくは1日1回である。 ミゾリビンは、経口投与製剤(登録商標名:ブレディニン錠)として使用することが簡便であり、常法により適宜カプセル剤、顆粒剤等の経口投与製剤にすることもできる。具体的には、経口投与製剤は、例えば、賦形剤として無水乳糖、結晶セルロース、デキストラン、スターチなど、結合剤としてカルボキシルメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロースなど、崩壊剤としてはカルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム、メチルセルロースなど、滑沢剤としてステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどを適宜選択組合せ、常法により錠剤、カプセル剤などの経口投与製剤とすることができる。 【0025】 非経口投与用製剤としては、坐剤、エアゾール吸入法による製剤、経皮吸収性製剤や注射剤として常法の製剤化技術にて製剤化することができる。 具体的には、ミゾリビンを水性溶媒に溶解させることによってエアゾール用液剤や注射剤を製造することができる。例えば、ミゾリビンの液剤中における濃度は水性溶媒に対して、0.1〜10w/v%、好ましくは1〜10w/v%程度になるよう調整し、特に注射剤については調製後滅菌または除菌処理して製剤とすればよい。この水性溶媒としては、例えば、注射用蒸留水、滅菌精製水等が例示される。さらに、通常液剤に適宜選択して用いられる添加剤、例えば、pH調整用の緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酒石酸緩衝液、酢酸緩衝液等)、等張化剤(例えば、ソルビトール、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール,グルコース、塩化ナトリウム等)、安定化剤(例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩等)、防腐殺菌剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸エステル類、ベンジルアルコール、パラクロルメタキシノール、クロルクレゾール、フェネチルアルコール、ソルビン酸またはその塩、チメロサール、クロロブタノール等)、キレート剤(例えば、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、縮合リン酸ナトリウム等)、粘稠剤(例えば、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム等)等を通常使用される添加量で配合添加することができる。 【0026】 本発明の、ステロイド剤を併用することを特徴とする肝移植に伴う拒絶反応予防又は治療薬、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療薬において、ステロイド剤は週1回、週3回、1日おき、または連日に投与することができ、投与量は1mg/kg/day以下の用量が好ましく、より好ましい投与用量は、0.3mg/kg/day以下である。この場合、投与用量または投与期間の減少により、ステロイド剤の副作用の減少が期待できる。投与間隔が長くなる場合、ステロイド剤の投与量は、好ましい範囲内において、適宜増加させる等の調整をすることも可能である。ステロイド剤の通常の副作用は、主には白内障、糖尿病、大腿骨頭壊死、精神症状、満月様顔貌、消化器潰瘍、また小児の場合は発育障害等である。 また、ステロイド剤の投与形態としては、経口的に投与するが、他の非経口的方法(例えば、鼻スプレー、経皮、坐薬等による)によっても投与され得る。 【0027】 ステロイド剤投与と組み合わせられる場合のミゾリビンの使用量としては、例えば、有効成分としてのミゾリビンまたは薬学的に許容できるその塩の1日あたりの投与量の下限としては、0.5mg/kg以上が好ましく、0.9mg/kg以上がより好ましく、1mg/kgがさらに好ましく、1.1mg/kg以上が特に好ましく、特に1.4mg/kg以上がより好ましく、特に1.5mg/kg以上がさらに好ましく、2mg/kg以上が大変好ましく、3mg/kg以上が最も好ましい。また、上限としては、30mg/kg以下が好ましく、20mg/kg以下がより好ましく、12mg/kgがさらに好ましく、10mg/kgが特に好ましく、特に9mg/kg以下がより好ましく、特に8.5mg/kg以下がさらに好ましく、6mg/kg以下が大変好ましく、特に3.6mg/kg以下が大変好ましく、3.5mg/kgが最も好ましく、これを1日1〜3回分割投与すればよい。 【0028】 また、本発明のカルシニューリン阻害薬を併用することを特徴とする肝移植に伴う拒絶反応予防又は治療薬、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療薬において、カルシニューリン阻害薬は基本的に連日に投与で、投与量はタクロリムスの場合、トラフとなる血中濃度が20ng/ml以下が望ましい。また、シクロスポリンの場合、トラフとなる血中濃度が350ng/ml以下が望ましい。カルシニューリン阻害薬の副作用は腎毒性のほかに、タクロリムスでは高血糖、血清カリウム上昇、胸痛、振戦等、シクロスポリンでは肝毒性、膵毒性、高血圧、多毛等が報告されている。 【0029】 また、カルシニューリン阻害薬の投与形態としては、経口的に投与するが、他の非経口的方法(例えば、注射、鼻スプレー、経皮、坐薬等による)によっても投与され得る。 【0030】 カルシニューリン阻害薬投与と組み合わせられる場合のミゾリビンの使用量としては、例えば、有効成分としてのミゾリビンまたは薬学的に許容できるその塩の1日あたりの投与量の下限としては、0.5mg/kg以上が好ましく、0.9mg/kg以上がより好ましく、1mg/kgがさらに好ましく、1.1mg/kg以上が特に好ましく、特に1.4mg/kg以上がより好ましく、特に1.5mg/kg以上がさらに好ましく、2mg/kg以上が大変好ましく、3mg/kg以上が最も好ましい。また、上限としては、30mg/kg以下が好ましく、20mg/kg以下がより好ましく、12mg/kgがさらに好ましく、10mg/kgが特に好ましく、特に9mg/kg以下がより好ましく、特に8.5mg/kg以下がさらに好ましく、6mg/kg以下が大変好ましく、特に3.6mg/kg以下が大変好ましく、3.5mg/kgが最も好ましく、これを1日1〜3回分割投与すればよい。 【0031】 ミゾリビンとステロイド剤及び/又はカルシニューリン阻害薬のそれぞれの適切な投与量や投与間隔を設定するにあたっては、制御された臨床試験により決定され得るべきであるが、例えば、ステロイド剤は週1回、週3回、1日おき、または連日に投与することができ、投与量は1mg/kg/day以下の用量が好ましく、より好ましい投与用量は、0.3mg/kg/day以下である。また、カルシニューリン阻害薬は基本的に連日に投与で、投与量はタクロリムスの場合、トラフとなる血中濃度が20ng/ml以下が望ましい。また、シクロスポリンの場合、トラフとなる血中濃度が350ng/ml以下が望ましい。 【0032】 本発明の、カルシニューリン阻害薬及びステロイド剤を併用することを特徴とする肝移植に伴う拒絶反応予防又は治療薬、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療薬において、有効成分としてのミゾリビンまたは薬学的に許容できるその塩の1日あたりの投与量の下限としては、0.5mg/kg以上が好ましく、0.9mg/kg以上がより好ましく、1mg/kgがさらに好ましく、1.1mg/kg以上が特に好ましく、特に1.4mg/kg以上がより好ましく、特に1.5mg/kg以上がさらに好ましく、2mg/kg以上が大変好ましく、3mg/kg以上が最も好ましい。また、上限としては、30mg/kg以下が好ましく、20mg/kg以下がより好ましく、12mg/kgがさらに好ましく、10mg/kgが特に好ましく、特に9mg/kg以下がより好ましく、特に8.5mg/kg以下がさらに好ましく、6mg/kg以下が大変好ましく、特に3.6mg/kg以下が大変好ましく、3.5mg/kgが最も好ましく、これを1日1〜3回分割投与すればよい。 【0033】 また、ミゾリビンとステロイド剤及び/又はカルシニューリン阻害薬との併用投与における有用性および安全性は、「ミゾリビンとステロイド剤及び/又はカルシニューリン阻害薬の併用」対「ミコフェノレート モフェチルとステロイド剤及び/又はカルシニューリン阻害薬の併用」、または「ミゾリビンとステロイド剤及び/又はカルシニューリン阻害薬の併用」対「ステロイド剤及び/又はカルシニューリン阻害薬」の制御された臨床試験により決定され得るべきであるが、参考例1、2で示したデータ、及び実施例1〜6の結果等から、肝移植に伴う拒絶反応予防又は治療薬、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療薬としてのミゾリビンの有用性および安全性は極めて優れていると考えられる。 【0034】 尚、本発明におけるミゾリビンとステロイド剤及び/又はカルシニューリン阻害薬を併用することにより、肝移植に伴う拒絶反応または拒絶反応とは断定できない肝機能異常を治療するに際しては、ミゾリビンとステロイド剤及び/又はカルシニューリン阻害薬が、別々の製剤となったものを投与する他に、配合剤として、一度に投与する方法もありうる。 【0035】 これらのことより、肝移植に伴う拒絶反応の予防又は治療、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療において、ミゾリビン投与、あるいはミゾリビンとカルシニューリン阻害薬及び/又はステロイド剤との併用投与は、カルシニューリン阻害薬とステロイド剤との併用投与でみられる高血糖、糖尿病等の副作用の軽減が期待できる。よって肝移植後に腎障害等を併発した患者或いは糖尿病を合併している肝移植者等には、本発明の肝移植に伴う拒絶反応抑制薬または拒絶反応と特定できない肝機能異常の予防または治療薬は特に有用である。 【0036】 また、本発明はカルシニューリン阻害薬とステロイド剤との併用投与により改善がみられない肝移植に伴う拒絶反応治療又は拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療にも有用である。 【実施例】 【0037】 次に、本発明の肝移植に伴う拒絶反応の予防または治療薬、または拒絶反応とは断定できない肝機能異常治療薬の実施例を示す。本発明は以下の実施例になんら限定されないが、以下の実施例により本発明の効果は十分に説明される。 [参考例1]肝薬物代謝酵素に対する阻害作用の検討 HAB協議会より入手したヒトプールドミクロソームを用い、以下に示すヒト肝CYP活性に対するミゾリビンの作用をin vitroで検討し、薬物相互作用の可能性を検討した。7-Ethoxyresorufin脱エチル活性(CYP1A1/2活性)、Bufuralol 1'-OH活性(CYP2D6活性)、Tolbutamide代謝活性(CYP2C9活性)、S-Mephenytoin代謝活性(CYP2C19活性)、Chlorzoxazone代謝活性(CYP2E1活性)、Testosterone代謝活性(CPY3A4活性)。 その結果、ミゾリビンは検討したいずれのCYP(1A1/2、2D6、2C9、2C19、2E1、3A4)に対しても阻害作用を示さなかった(Ki;>100μM)。このことから、本剤はCPYが関与する薬物代謝相互作用引き起こさないと考えられた。 【0038】 [参考例2]肝薬物代謝酵素誘導作用の検討 ラットにミゾリビンを連続10日間投与し、肝薬物代謝酵素活性に対する影響をアミノピリン脱メチル化酵素およびアニリン水酸化酵素活性を指標として検討した結果、ミゾリビン2.5mg/kg投与群および5mg/kg投与群のいずれにおいても対照群に比し有意な変動は認められなかった。このことより、本剤は肝薬物代謝酵素誘導作用を示さないことが考えられた。 【0039】 [製剤例1] 市販されているミゾリビン25mg錠または50mg錠を使用した。なお、乳幼児に対しては本剤を粉砕して使用した。 【0040】 [実施例1] 急性拒絶反応26例に対して1日にミゾリビン0.9〜6.0mg/kgが平均13ヶ月投与され、ミゾリビン投与開始前と6ヵ月後のAST基準値(正常値の2倍を基準値とし、該基準値以内になった症例を有効と判断した)以内の症例数の推移は7.69%が61.54%に、総ビリルビンの基準値(正常値の2倍を基準値とし、該基準値以内になった症例を有効と判断した)以内の症例数推移は38.46%が76.92%に増加した(図1)。また、この中で、複数回のステロイドパルス療法を必要とした難治性の急性拒絶反応の症例17例においては、ミゾリビン投与開始前と6ヵ月後のAST基準値以内の症例数の推移は5.9%が64.7%に、総ビリルビンの基準値以内の症例数推移は47.1%が70.6%に増加した(図2)。拒絶反応とは断定できない肝機能異常38例に対して1日にミゾリビン1.5〜3.5mg/kgが平均15ヶ月投与され、ミゾリビン投与開始前と6ヵ月後および12ヵ月後のAST基準値以内の症例数の推移は21.1%、63.2%、57.9%で、総ビリルビンの基準値以内の症例数推移は44.7%、78.9%、84.2%であった(図3)。タクロリムスの減量目的で12例に対して1日にミゾリビン0.8〜3.0mg/kgが平均9ヶ月投与され、ミゾリビン投与開始前と6ヵ月後のタクロリムスの平均血中トラフ値は9.4ng/mlから4.5ng/mlに減少し、患者の平均の血清クレアチニン値は1.31mg/dlから1.15mg/dlと腎機能の改善傾向を示した(図4)。ステロイドの減量または中止目的で9例に対して1日にミゾリビン1.1〜3.6mg/kgが平均13ヶ月投与され、ミゾリビン投与開始前と比較して6例中5例で3ヶ月以内にステロイドの中止が出来た。また、3例では移植術後経口ステロイドを使用せずにタクロリムスとミゾリビンのみで免疫抑制療法を開始し、その内の2例ではその後もステロイドを使用せずに免疫抑制療法を続けることが出来た。ABO血液型不適合移植におけるシクロフォスファミドの後療法として8例に対して1日にミゾリビン1.4〜8.5mg/kgが平均9ヶ月投与され、ミゾリビン投与開始前と6ヵ月後のAST基準値以内の症例数の推移は25.0%が50.0%に、総ビリルビンの基準値以内の症例数推移は25.0%が62.5%に増加した(図5)。図1、2及び5中、ミゾリビン投与開始直前と開始後6ヵ月後のASTと総ビリルビンの基準値内症例割合をパーセントで表した。図3中、ミゾリビン投与開始直前と開始後6ヵ月後および12ヵ月後のASTと総ビリルビンの基準値内症例割合をパーセントで表した。図4中、右図はミゾリビン投与開始直前と開始後6ヵ月後のタクロリムスのトラフ(trough)値を示し、左図はミゾリビン投与開始直前と開始後6ヵ月後の血清クレアチニンの値を示した。 【0041】 [実施例2] 原発性硬化性胆管炎が原疾患である女性(44歳)に対して、兄をドナーとしてABO血液型一致の生体肝移植を施行した。タクロリムスとプレドニゾロンにより免疫抑制療法を行うも肝機能が安定せず、1年後よりミゾリビン150mgを併用した。併用開始時、AST 222IU/ml、ALT 486IU/ml、γ-GTP 277IU/mlといずれも高値を示し、総ビリルビンは0.8mg/dlであったが、9ヵ月後プレドニゾロンの使用量が併用開始時の1/4となり、AST 20IU/ml、ALT 17IU/ml、γ-GTP 27IU/ml、総ビリルビン 0.4mg/dlと肝機能が改善し安定した。 以上のことから、肝移植に伴い生じ慢性の経過をたどる拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療剤として、ミゾリビンが有効であることが分った。さらに言えば、カルシニューリン阻害薬及びステロイド剤の併用による免疫抑制療法を行なっても安定しない肝機能異常の治療に対して、カルシニューリン阻害薬及びステロイド剤に併用することを特徴とするミゾリビン含有治療剤が非常に有効であること、該治療剤は肝機能値をコントロールしながらステロイド剤を減量できる効果があることが分った。具体的には、タクロリムスとプレドニゾロンにより免疫抑制療法を行なっても安定しない肝機能異常の治療に対して、タクロリムスとプレドニゾロンに併用することを特徴とするミゾリビン含有治療剤が非常に有効であること、該治療剤は肝機能値をコントロールしながらプレドニゾロンを減量できる効果があることが分った。 【0042】 [実施例3] B型肝炎による劇症肝不全が原疾患である男性(51歳)に対して、兄をドナーとしてABO血液型一致の生体肝移植を施行した。タクロリムスとプレドニゾロンにより免疫抑制療法を行うも移植術施行5日後よりタクロリムスによる腎障害が生じたため、タクロリムスを減量しミゾリビン100mgを追加併用した。4ヵ月後にはステロイドを中止し、その後肝機能異常もなく推移し、血清クレアチニン値も2.7mg/dlから1.8mg/dlに改善して安定した。 以上のことから、肝移植に伴う拒絶反応予防又は治療薬として、ミゾリビンが有効であることが分った。さらに言えば、カルシニューリン阻害薬及びステロイド剤の併用による免疫抑制療法を行った際に、カルシニューリン阻害薬による副作用が認められる患者において、カルシニューリン阻害薬の減量を目的として、低用量のカルシニューリン阻害薬、及びステロイド剤に併用することを特徴とするミゾリビン含有治療剤が非常に有効であること、該治療剤は血液生化学値をコントロールしながらステロイド剤を中止できる効果があることが分った。具体的には、タクロリムスの減量を目的として、低用量のタクロリムス、及びプレドニゾロンに併用することを特徴とするミゾリビン含有治療剤が非常に有効であること、該治療剤は血液生化学値をコントロールしながらプレドニゾロンを中止できる効果があることが分った。 【0043】 [実施例4] 胆道閉鎖症による胆汁うっ滞が原疾患である女児(1歳)に対して、父をドナーとしてABO血液型不適合の生体肝移植を実施した。タクロリムス、プレドニゾロンおよびシクロフォスファミドにより免疫抑制療法を開始、移植実施行14日後に中等度の急性拒絶反応を生じたがメチルプレドニゾロンのステロイドパルスを施行し、回復した。術後1ヵ月半後よりシクロフォスファミドに代えてミゾリビン2mg/kgの投与を開始し、その後肝機能も安定し、タクロリムスとミゾリビンのみで特段の問題もなく推移した。 以上のことから、ABO血液型不適合肝移植における拒絶反応或いは肝機能異常の予防又は治療薬として、ミゾリビンが有効であることが分った。さらに言えば、カルシニューリン阻害薬、ステロイド剤、及びシクロフォスファミドの併用による免疫抑制療法を行った後に、カルシニューリン阻害薬及びステロイド剤に併用することを特徴とするミゾリビン含有治療剤が、ABO血液型不適合移植におけるシクロフォスファミド使用後の維持療法に非常に有効であること、さらに該治療剤は肝機能をコントロールしながらステロイド剤を中止できる効果があることが分った。具体的には、タクロリムス、プレドニゾロン、及びシクロフォスファミドの併用による免疫抑制療法を行った後に、タクロリムス及びプレドニゾロンに併用することを特徴とするミゾリビン含有治療剤が、ABO血液型不適合移植におけるシクロフォスファミド使用後の維持療法に非常に有効であること、さらに該治療剤は肝機能をコントロールしながらプレドニゾロンを中止できる効果があることが分った。 【0044】 [実施例5] C型肝炎による肝臓がんが原疾患である男性(50歳)に対して、妻をドナーとしてABO血液型一致の生体肝移植を実施した。原疾患がC型肝炎による肝臓がんのため、術後の免疫抑制療法をタクロリムスとステロイドパルスで開始し、経口ステロイドを使用せずに術後16日目よりミゾリビン100mgの併用を開始した。また、併用開始時にタクロリムスによる腎障害と神経症状を生じたが、タクロリムスを減量しまもなく両症状ともに改善、その後特段の問題も生ぜず、肝機能も安定して推移した。 以上のことから、肝移植に伴う拒絶反応予防又は治療薬として、ミゾリビンが有効であることが分った。さらに言えば、経口ステロイド治療を行なわない患者において、カルシニューリン阻害薬と併用することを特徴とするミゾリビン含有治療剤が有効であること、この際にカルシニューリン阻害薬による副作用が生じた場合はカルシニューリン阻害薬を減量することが可能なことが分った。具体的には、経口ステロイド治療を行なわない患者において、タクロリムスと併用することを特徴とするミゾリビン含有治療剤が有効であること、この際にタクロリムスによる副作用が生じた場合はタクロリムスを減量することが可能であることが分った。 【0045】 [実施例6] 自己免疫性肝疾患が原疾患である女性(34歳)に対して、父をドナーとしてABO血液型適合の生体肝移植を実施した。タクロリムスとプレドニゾロンで移植後の免疫抑制療法を開始したが、3ヵ月後に急性拒絶反応を生じてメチルプレドニゾロンのステロイドパルスにて回復した。術後9ヶ月目に、ステロイド長期使用に対してステロイド減量目的で、プレドニゾロン5mgを2.5mgに減量してミゾリビン100mgの併用を開始した。肝機能は安定して推移し、半月後にプレドニゾロンを中止、その後も問題なく推移した。 以上のことから、肝移植に伴う拒絶反応予防又は治療薬としてミゾリビンが有効であることが分った。さらに言えば、肝移植後、長期に渡ってカルシニューリン阻害薬及びステロイド剤を併用している患者において、ステロイド剤を減量、さらには中止することを目的に投与するミゾリビン治療剤が有効であることが分った。具体的には、肝移植後、長期に渡ってタクロリムス及びプレドニゾロンを併用している患者において、プレドニゾロンを減量、さらには中止することを目的に投与するミゾリビン治療剤が有効であることが分った。 【産業上の利用可能性】 【0046】 本発明は、肝移植における拒絶反応予防又は治療、或いは拒絶反応とは断定できない肝機能異常の治療において副作用が少なく、且つ、効果的であり、医薬用として好適である。 【図面の簡単な説明】 【0047】 【図1】実施例1の急性拒絶反応に対するミゾリビンの効果を示す図である。 【図2】実施例1の難治性急性拒絶反応に対するミゾリビンの効果を示す図である。 【図3】実施例1の拒絶反応とは断定できない肝機能異常に対するミゾリビンの効果を示す図である。 【図4】実施例1の腎障害のある患者におけるミゾリビン投与による腎機能の回復と、ミゾリビン投与開始前と開始後6ヶ月におけるカルシニューリン阻害剤のトラフ(trough)値の関係を示す図である。 【図5】実施例1のABO血液型不適合移植に対するミゾリビンの効果を示す図である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】505186670 【氏名又は名称】上田 幹子 【識別番号】505186681 【氏名又は名称】田中 紘一
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| 【出願日】 |
平成17年5月20日(2005.5.20) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100090941 【弁理士】 【氏名又は名称】藤野 清也
【識別番号】100076244 【弁理士】 【氏名又は名称】藤野 清規
【識別番号】100113837 【弁理士】 【氏名又は名称】吉見 京子
【識別番号】100133905 【弁理士】 【氏名又は名称】石井 良夫
【識別番号】100127421 【弁理士】 【氏名又は名称】後藤 さなえ
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| 【公開番号】 |
特開2006−321765(P2006−321765A) |
| 【公開日】 |
平成18年11月30日(2006.11.30) |
| 【出願番号】 |
特願2005−147685(P2005−147685) |
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