| 【発明の名称】 |
生体適合性ナノ粒子及びその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】辻本 広行 【住所又は居所】大阪府枚方市招提田近1丁目9番地 株式会社ホソカワ粉体技術研究所内
【氏名】原 香織 【住所又は居所】大阪府枚方市招提田近1丁目9番地 株式会社ホソカワ粉体技術研究所内
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| 【要約】 |
【課題】封入される薬物が親水性であるか疎水性であるかに係わらず、ナノ粒子内部への封入率を高めた生体適合性ナノ粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】生体適合性ナノ粒子1は、親水性ポリマーブロック3が粒子表面に張り出してシェル部5を形成し、疎水性ポリマーブロック2はコア部6に位置するコアシェル構造を形成する。親水性成分7は、親水性ポリマーブロック3と相互作用することにより貧溶媒中への漏出が抑制され、ナノ粒子1のシェル部5での封入が可能になる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 生体適合性の疎水性ポリマーブロック及び生体適合性の親水性ポリマーブロックが結合したブロック共重合体から成り、前記疎水性ポリマーブロックがコア側に位置し、前記親水性ポリマーブロックがシェル側に位置するコアシェル構造を形成している生体適合性ナノ粒子であって、 親水性の生物活性成分を前記親水性ポリマーブロックに封入したことを特徴とする生体適合性ナノ粒子。 【請求項2】 生体適合性の疎水性ポリマーブロック及び生体適合性の親水性ポリマーブロックが結合したブロック共重合体から成り、前記疎水性ポリマーブロックがシェル側に位置し、前記親水性ポリマーブロックがコア側に位置するコアシェル構造を形成している生体適合性ナノ粒子であって、 親水性の生物活性成分を前記親水性ポリマーブロックに封入したことを特徴とする生体適合性ナノ粒子。 【請求項3】 前記親水性の生物活性成分が両親媒性であり、該両親媒性の生物活性成分を前記疎水性ポリマーブロックと前記親水性ポリマーブロックの両方に封入したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の生体適合性ナノ粒子。 【請求項4】 前記生物活性成分として、さらに疎水性の生物活性成分を前記疎水性ポリマーブロックに封入したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の生体適合性ナノ粒子。 【請求項5】 前記疎水性ポリマーブロックが乳酸・グリコール酸共重合体で構成され、前記親水性ポリマーブロックがポリエチレングリコールで構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の生体適合性ナノ粒子。 【請求項6】 前記ポリエチレングリコールの分子量が5,000以上10,000以下であることを特徴とする請求項5に記載の生体適合性ナノ粒子。 【請求項7】 非注射用途に使用されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の生体適合性ナノ粒子。 【請求項8】 請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の生体適合性ナノ粒子が複合化されることを特徴とする生体適合性ナノ粒子。 【請求項9】 前記生体適合性ナノ粒子と共に糖アルコールが複合化されることを特徴とする請求項8に記載の生体適合性ナノ粒子。 【請求項10】 前記生体適合性ナノ粒子と共にビタミンまたはビタミン誘導体が複合化されることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の生体適合性ナノ粒子 【請求項11】 生体適合性の疎水性ポリマーブロック及び生体適合性の親水性ポリマーブロックが結合したブロック共重合体と、親水性の生物活性成分とを有機溶媒及び必要により加えた水に溶解する溶解工程と、 前記溶解工程によって得られた溶液を水相に加えて、前記生物活性成分が少なくともシェル側に位置する親水性ポリマーブロックに封入された生体適合性ナノ粒子を形成してナノ粒子含有溶液とするナノ粒子形成工程と、 前記ナノ粒子含有溶液から前記有機溶媒を留去する溶媒留去工程と、 を有することを特徴とする生体適合性ナノ粒子の製造方法。 【請求項12】 生体適合性の疎水性ポリマーブロック及び生体適合性の親水性ポリマーブロックが結合したブロック共重合体と、親水性の生物活性成分とを有機溶媒及び必要により加えた水に溶解する溶解工程と、 前記溶解工程によって得られた溶液を油相に加えて、前記生物活性成分が少なくともコア側に位置する親水性ポリマーブロックに封入された生体適合性ナノ粒子を形成してナノ粒子含有溶液とするナノ粒子形成工程と、 前記ナノ粒子含有溶液から前記有機溶媒を留去する溶媒留去工程と、 を有することを特徴とする生体適合性ナノ粒子の製造方法。 【請求項13】 前記水相がポリビニルアルコール水溶液であることを特徴とする請求項11に記載の生体適合性ナノ粒子の製造方法。 【請求項14】 前記油相がグリセリントリエステルであることを特徴とする請求項12に記載の生体適合性ナノ粒子の製造方法。 【請求項15】 前記ポリビニルアルコール水溶液中のポリビニルアルコール濃度が0.5重量%未満であることを特徴とする請求項13に記載の生体適合性ナノ粒子の製造方法。 【請求項16】 前記溶媒留去工程の後に、さらに前記ナノ粒子含有溶液からポリビニルアルコールを除去する除去工程を有することを特徴とする請求項13に記載の生体適合性ナノ粒子の製造方法。 【請求項17】 前記ポリビニルアルコール水溶液中のポリビニルアルコール濃度が0.1重量%以上10重量%以下であることを特徴とする請求項16に記載の生体適合性ナノ粒子の製造方法。 【請求項18】 前記溶解工程において、さらに疎水性の生物活性成分を有機溶媒に溶解することにより、前記親水性の生物活性成分が少なくとも親水性ポリマーブロックに封入され、前記疎水性の生物活性成分が少なくとも疎水性ポリマーブロックに封入された生体適合性ナノ粒子を形成することを特徴とする請求項11乃至請求項17のいずれか1項に記載の生体適合性ナノ粒子の製造方法。 【請求項19】 前記有機溶媒がアセトンとエタノールの混合液であることを特徴とする請求項11乃至請求項18のいずれか1項に記載の生体適合性ナノ粒子の製造方法。 【請求項20】 前記溶媒留去工程又は前記除去工程の後に、さらに前記ナノ粒子を複合化する複合化工程を有することを特徴とする請求項11乃至請求項19のいずれか1項に記載の生体適合性ナノ粒子の製造方法。 【請求項21】 前記複合化工程において、前記ナノ粒子と共に、糖アルコール、ビタミンおよびビタミン誘導体のうちの1種以上を複合化させることを特徴とする請求項20に記載の生体適合性ナノ粒子の製造方法。 【請求項22】 前記複合化工程が凍結乾燥により行われることを特徴とする請求項20又は請求項21に記載の生体適合性ナノ粒子の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、生体適合性の高分子に生物活性成分を封入した生体適合性ナノ粒子に関するものである。 【背景技術】 【0002】 薬剤療法を行う場合、通常、薬物は体内で吸収・分解されたり、全身、即ち患部(臓器や組織、細胞、病原体など)以外の部位にも広範囲に拡散したりするため、患部に到達する薬物は投与された内の極微量であると言われている。つまり、患部に薬物が到達できるか否かは、人為的にコントロールできるものではなかった。一方、患部に到達すべき薬物量から逆算して薬剤投与量を決定すると、その投与量は非常に多いものとなり、副作用発現の可能性が高くなってしまう。 【0003】 一般的に、薬物は、必要な量を必要な時間に必要な部位で作用させるのが理想とされている。 そこで、薬物が患部に到達するまで吸収・分解されないようにして、過剰な薬物投与を抑える技術、いわゆるDrug Delivery System(以下、DDSという)が考案され、近年、盛んに研究されている。DDSは、薬物を膜(キャリアー)で包むことにより、途中で吸収・分解されることなく、目標とする患部に薬物を効果的かつ集中的に送り込み、患部で薬物を放出させる技術であり、薬物の治療効果を高めるだけでなく、副作用の軽減も期待できるというメリットがある。 【0004】 DDSにおいて中心となる技術は、微量の薬物を生体適合性の高分子で包み込み、毛細血管の微小な穴を通り抜けることができる数十ナノメートル程度のナノ粒子とする技術である。この薬物含有ナノ粒子は、目標とする患部まで薬物を安定して確実に運搬するとともに、高分子の種類や投与後の経過時間で薬物の放出速度(徐放性)をコントロールすることにより、患部に到達した時点で薬物を放出することができ、注射剤や経口剤としての用途の他、従来、皮膚深部まで十分浸透させることが困難であった外用薬剤にも高い効果を発揮する。 【0005】 ナノ粒子を構成する素材としての生体適合性高分子は、生体への刺激・毒性が低く、生体適合性で、投与後分解して代謝される生体内分解性のものが望ましい。また、内包する薬物を持続して徐々に放出する粒子であることが好ましい。このような素材として、例えばポリ乳酸・グリコール酸共重合体(以下、PLGAという)が好適に用いられている。PLGAは薬物を内包可能であり、当該薬物の効力を保持したまま長期間保存できることが知られている。さらに、PLGAの加水分解・長期半減期の特徴から、数日から1ヶ月単位の徐放ができると考えられる。 【0006】 特許文献1には、生分解性高分子から成る担体に薬物を封入して薬物の放出を調整しうる多重エマルジョン法による薬物含有ナノ粒子の製造方法が開示されており、生分解性高分子としてPLGAを用いた例が記載されている。また、特許文献2には、PLGA内にピリドンカルボン酸化合物を封入することにより、封入率の改善及び安定した徐放性を実現し、血中や患部での薬物濃度の長期間の保持を可能としたマイクロカプセル製剤が開示されている。 【0007】 このようなナノ粒子は、一般に、良溶媒に溶解させた薬物溶液を、撹拌下、薬物を溶解し難い貧溶媒中に滴下することで、薬物の結晶を析出させる球形晶析法を用いて製造される。球形晶析法では、物理化学的な手法でナノ粒子を形成でき、しかも得られるナノ粒子が略球形であるため、均質なナノ粒子を、触媒や原料化合物の残留といった問題を考慮する必要なく、容易に形成することができる。しかしながら、貧溶媒として水相を用いた場合、一般に水に対する溶解度の高い親水性の薬物は、晶析時に良溶媒の拡散に伴い貧溶媒中へ拡散してしまうため、特許文献1、2の方法では、親水性の薬物を高封入率でナノ粒子内に封入することは困難であった。 【0008】 また、特許文献3には、マクロファージにより血流から浄化されにくく薬物の放出速度の調整が可能な粒子とするために、生分解性高分子として表面にポリアルキレングリコール部分を有するPLGAを用いた薬物含有ナノ粒子が開示されているが、特に親水性の薬物の封入率を高める旨の示唆はなく、封入率向上のための具体的方法についても何ら記載されていなかった。 【0009】 一方、特許文献4には、生分解性ポリマーと酸化亜鉛との有機溶媒溶液に生理活性ポリペプチドを分散させた後、有機溶媒を除去することにより、生理活性ポリペプチドの封入率を高めた徐放性薬剤の製造方法が、特許文献5には、生分解性ポリマーの水溶液に水混和性有機溶媒或いは揮発性の塩類を添加して凍結乾燥することにより、生理活性ポリペプチドの封入率を高めた徐放性薬剤の製造方法がそれぞれ開示されており、生分解性ポリマーとしてPLGAを用いることも記載されている。 【0010】 しかしながら、特許文献4、5の方法では、PLGAに対する生理活性ポリペプチドの封入率は向上できるものの、ポリペプチド以外の親水性薬物に適用可能である旨の記載はなく、親水性の薬物一般の封入率を高める方法としては十分ではなかった。 【特許文献1】特開2002−20269号公報 【特許文献2】特開2003−300882号公報 【特許文献3】特表平9−504042号公報 【特許文献4】特開平10−231252号公報 【特許文献5】特開平11−322631号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0011】 本発明は、上記問題点に鑑み、封入される薬物が親水性であるか疎水性であるかに係わらず、ナノ粒子内部への封入率を高めた生体適合性ナノ粒子を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、簡便且つ低コストで環境負荷も少ない生体適合性ナノ粒子の製造方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0012】 上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、生体適合性の疎水性ポリマーブロック及び生体適合性の親水性ポリマーブロックが結合したブロック共重合体から成り、前記疎水性ポリマーブロックがコア側に位置し、前記親水性ポリマーブロックがシェル側に位置するコアシェル構造を形成している生体適合性ナノ粒子であって、親水性の生物活性成分を前記親水性ポリマーブロックに封入した生体適合性ナノ粒子である。 【0013】 また本発明の第2の構成は、生体適合性の疎水性ポリマーブロック及び生体適合性の親水性ポリマーブロックが結合したブロック共重合体から成り、前記疎水性ポリマーブロックがシェル側に位置し、前記親水性ポリマーブロックがコア側に位置するコアシェル構造を形成している生体適合性ナノ粒子であって、親水性の生物活性成分を前記親水性ポリマーブロックに封入した生体適合性ナノ粒子である。 【0014】 また本発明の第3の構成は、上記構成の生体適合性ナノ粒子において、前記親水性の生物活性成分が両親媒性であり、該両親媒性の生物活性成分を前記疎水性ポリマーブロックと前記親水性ポリマーブロックの両方に封入したことを特徴としている。 【0015】 また本発明の第4の構成は、上記構成の生体適合性ナノ粒子において、前記生物活性成分として、さらに疎水性の生物活性成分を前記疎水性ポリマーブロックに封入したことを特徴としている。 【0016】 また本発明の第5の構成は、上記構成の生体適合性ナノ粒子において、前記疎水性ポリマーブロックが乳酸・グリコール酸共重合体で構成され、前記親水性ポリマーブロックがポリエチレングリコールで構成されることを特徴としている。 【0017】 また本発明の第6の構成は、上記構成の生体適合性ナノ粒子において、前記ポリエチレングリコールの分子量が5,000以上10,000以下であることを特徴としている。 【0018】 また本発明の第7の構成は、上記構成の生体適合性ナノ粒子が非注射用途に使用されることを特徴としている。 【0019】 また本発明の第8の構成は、上記構成の生体適合性ナノ粒子が複合化されることを特徴としている。 【0020】 また本発明の第9の構成は、上記構成の生体適合性ナノ粒子と共にビタミンまたはビタミン誘導体が複合化される。 【0021】 また本発明の第10の構成は、上記構成の生体適合性ナノ粒子と共に糖アルコールが複合化される。 【0022】 また本発明の第11の構成は、生体適合性の疎水性ポリマーブロック及び生体適合性の親水性ポリマーブロックが結合したブロック共重合体と、親水性の生物活性成分とを有機溶媒及び必要により加えた水に溶解する溶解工程と、前記溶解工程によって得られた溶液を水相に加えて、前記生物活性成分が少なくともシェル側に位置する親水性ポリマーブロックに封入された生体適合性ナノ粒子を形成してナノ粒子含有溶液とするナノ粒子形成工程と、前記ナノ粒子含有溶液から前記有機溶媒を留去する溶媒留去工程とを有することを特徴とする生体適合性ナノ粒子の製造方法である。 【0023】 また本発明の第12の構成は、生体適合性の疎水性ポリマーブロック及び生体適合性の親水性ポリマーブロックが結合したブロック共重合体と、親水性の生物活性成分とを有機溶媒及び必要により加えた水に溶解する溶解工程と、前記溶解工程によって得られた溶液を油相に加えて、前記生物活性成分が少なくともコア側に位置する親水性ポリマーブロックに封入された生体適合性ナノ粒子を形成してナノ粒子含有溶液とするナノ粒子形成工程と、前記ナノ粒子含有溶液から前記有機溶媒を留去する溶媒留去工程とを有することを特徴とする生体適合性ナノ粒子の製造方法である。 【0024】 また本発明の第13の構成は、上記構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、前記水相がポリビニルアルコール水溶液であることを特徴としている。 【0025】 また本発明の第14の構成は、上記構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、前記油相がグリセリントリエステルであることを特徴としている。 【0026】 また本発明の第15の構成は、上記構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、前記ポリビニルアルコール水溶液中のポリビニルアルコール濃度が0.5重量%未満であることを特徴としている。 【0027】 また本発明の第16の構成は、上記構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、前記溶媒留去工程の後に、さらに前記ナノ粒子含有溶液からポリビニルアルコールを除去する除去工程を有することを特徴としている。 【0028】 また本発明の第17の構成は、上記構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、前記ポリビニルアルコール水溶液中のポリビニルアルコール濃度が0.1重量%以上10重量%以下であることを特徴としている。 【0029】 また本発明の第18の構成は、上記構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、前記溶解工程において、さらに疎水性の生物活性成分を有機溶媒に溶解することにより、前記親水性の生物活性成分が少なくとも親水性ポリマーブロックに封入され、前記疎水性の生物活性成分が少なくとも疎水性ポリマーブロックに封入された生体適合性ナノ粒子を形成することを特徴としている。 【0030】 また本発明の第19の構成は、上記構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、前記有機溶媒がアセトンとエタノールの混合液であることを特徴としている。 【0031】 また本発明の第20の構成は、上記構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、前記溶媒留去工程又は前記除去工程の後に、さらに前記ナノ粒子を複合化する複合化工程を有することを特徴としている。 【0032】 また本発明の第21の構成は、上記構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、前記複合化工程において、前記ナノ粒子と共に、糖アルコール、ビタミンおよびビタミン誘導体のうちの1種以上を複合化させることを特徴としている。 【0033】 また本発明の第22の構成は、上記構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、前記複合化工程が凍結乾燥により行われることを特徴としている。 【発明の効果】 【0034】 本発明の第1の構成によれば、疎水性ポリマーブロック及び親水性ポリマーブロックが結合したブロック共重合体から成るコアシェル構造の生体適合性ナノ粒子において、シェル側に位置する親水性ポリマーブロックに親水性の生物活性成分を封入することにより、疎水性ポリマーを用いた場合に球形晶析法では封入が困難であった親水性の生物活性成分が高封入率で封入された生体適合性ナノ粒子が提供される。 【0035】 また、本発明の第2の構成によれば、疎水性ポリマーブロック及び親水性ポリマーブロックが結合したブロック共重合体から成るコアシェル構造の生体適合性ナノ粒子において、コア側に位置する親水性ポリマーブロックに親水性の生物活性成分を封入することにより、親水性の生物活性成分が高封入率で封入されるとともに、シェル側に位置する疎水性ポリマーブロックの分解に伴い、生物活性成分を長期間に渉って徐放可能な生体適合性ナノ粒子が提供される。 【0036】 また、本発明の第3の構成によれば、上記第1又は第2の構成の生体適合性ナノ粒子において、生物活性成分が両親媒性の場合、生物活性成分を疎水性ポリマーブロックと親水性ポリマーブロックの両方に封入することにより、生物活性成分の親水性の程度に関係なくナノ粒子内への封入率を向上させることができる。 【0037】 また、本発明の第4の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の生体適合性ナノ粒子において、生物活性成分として、さらに疎水性の生物活性成分を疎水性ポリマーブロックに封入することにより、親水性であるか疎水性であるかを問わず様々な生物活性成分を同時に封入可能な生体適合性ナノ粒子となる。 【0038】 また、本発明の第5の構成によれば、上記第1乃至第4のいずれかの構成の生体適合性ナノ粒子において、生体適合性高分子として工業的にも流通するブロック共重合体、即ち、疎水性ポリマーが乳酸・グリコール酸共重合体で構成され、親水性ポリマーがポリエチレングリコールで構成されるポリエチレングリコール−PLGA共重合体を用いることにより、親水性の生物活性成分の封入性能に優れた生体適合性ナノ粒子を低コストで提供できる。 【0039】 また、本発明の第6の構成によれば、上記第5の構成の生体適合性ナノ粒子において、ポリエチレングリコールの分子量を5,000以上10,000以下とすることにより、親水性の生物活性成分の封入率が一層向上するとともに、ポリエチレングリコール−PLGA共重合体の製造時の取り扱いも容易となる。 【0040】 また、本発明の第7の構成によれば、上記第1乃至第6のいずれかの構成の生体適合性ナノ粒子を非注射用途に使用することにより、経口投与剤や、皮膚深部まで十分浸透させることが困難であった外用薬物に用いた場合にも、身体内部に十分浸透して高い薬効を発揮する。 【0041】 また、本発明の第8の構成によれば、上記第1乃至第7のいずれかの構成の生体適合性ナノ粒子を複合化することにより、容器への充填時に取り扱いが容易で、使用時には再分散可能な凝集粒子となる。 【0042】 また、本発明の第9の構成によれば、上記第8の構成の生体適合性ナノ粒子において、ナノ粒子と共に糖アルコールを複合化することにより、複合化されたナノ粒子の分散性、耐熱性が向上するとともに、一旦封入された生物活性成分のナノ粒子表面からの再漏出を防止できる。 【0043】 また、本発明の第10の構成によれば、上記第8又は第9の構成の生体適合性ナノ粒子において、ナノ粒子と共にビタミンまたはビタミン誘導体を複合化することにより、ナノ粒子内に封入された生物活性成分の効果と、ナノ粒子に複合化されたビタミン類やビタミン誘導体の効果とが相乗的に作用して、一層顕著な薬効が発現される。 【0044】 また、本発明の第11又は第12の構成によれば、疎水性ポリマーブロック及び親水性ポリマーブロックが結合した生体適合性高分子と、親水性の生物活性成分とを有機溶媒及び必要により加えた水に溶解した後、得られた溶液を水相又は油相に加えて、生物活性成分が少なくとも親水性ポリマーブロックに封入された生体適合性ナノ粒子を形成してナノ粒子含有溶液とした後、ナノ粒子含有溶液から有機溶媒を留去して生体適合性ナノ粒子を製造することにより、親水性の生物活性成分の封入率が高く、且つ封入率や平均粒子径のばらつきの少ない生体適合性ナノ粒子を簡便且つ低コストで製造することができる。 【0045】 また、本発明の第13の構成によれば、上記第11の構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、水相としてポリビニルアルコール水溶液を用いることにより、ナノ粒子表面へポリビニルアルコールが付着して、乾燥後の水への再分散性が向上するとともに、人体に対して安全性が高く、且つ環境負荷の少ない生体適合性ナノ粒子を製造することができる。 【0046】 また、本発明の第14の構成によれば、上記第12の構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、油相としてグリセリントリエステルを用いることにより、親水性の生物活性成分はグリセリントリエステル中に拡散するより、非疎水的に親水性ポリマーブロックと相互作用して、ナノ粒子のコア部に高い封入率で封入される。 【0047】 また、本発明の第15の構成によれば、上記第13の構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、ポリビニルアルコール水溶液中のポリビニルアルコール濃度を0.5重量%未満とすることにより、高濃度のポリビニルアルコール水溶液を用いた場合のように、ナノ粒子を遠心分離などで洗浄して余剰のポリビニルアルコールを除去する除去工程が不要となるため、製造時の工程と時間が削減できる。 【0048】 また、本発明の第16の構成によれば、上記第13の構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、溶媒留去工程の後に、さらにナノ粒子含有溶液からポリビニルアルコールを除去する除去工程を設けることにより、高濃度のポリビニルアルコール水溶液を用いてナノ粒子を形成した後、余剰のポリビニルアルコールを除去することができ、ナノ粒子中に封入される生物活性成分の封入率を安定させることができる。 【0049】 また、本発明の第17の構成によれば、上記第16の構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、ポリビニルアルコール水溶液中のポリビニルアルコール濃度を0.1重量%以上10重量%以下とすることにより、水溶液の粘度を有機溶媒の拡散に対して適切な範囲に維持することができる。 【0050】 また、本発明の第18の構成によれば、上記第11乃至第17のいずれかの構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、親水性の生物活性成分に加えて疎水性の生物活性成分を有機溶媒に溶解し、親水性の生物活性成分が少なくとも親水性ポリマーブロックに封入され、疎水性の生物活性成分が少なくとも疎水性ポリマーブロックに封入された生体適合性ナノ粒子を製造することにより、親水性及び疎水性の生物活性成分の封入率が共に高く、且つ封入率や平均粒子径のばらつきの少ない生体適合性ナノ粒子を簡便且つ低コストで製造することができる。 【0051】 また、本発明の第19の構成によれば、上記第11乃至第18のいずれかの構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、有機溶媒として揮発性の良いアセトンとエタノールの混合液を用い、後にそれらの留去工程を入れることにより、ナノ粒子中の残留有機溶媒をなくし、人体に対する悪影響のおそれの少ないナノ粒子を製造することができ、且つ環境への負荷も低減される。 【0052】 また、本発明の第20の構成によれば、上記第11乃至第19のいずれかの構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、ナノ粒子を複合化する複合化工程を設けることにより、容器への充填時に取り扱いが容易で、使用時には再分散可能な凝集粒子に複合化することができる。 【0053】 また、本発明の第21の構成によれば、上記第20の構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、複合化工程において、ナノ粒子と共に、糖アルコール、ビタミンおよびビタミン誘導体のうちの1種以上を複合化させることにより、複合化されたナノ粒子の分散性、耐熱性や薬効を一層向上させることができる。 【0054】 また、本発明の第22の構成によれば、上記第20又は第21の構成の生体適合性ナノ粒子の製造方法において、複合化工程を凍結乾燥によって行うことにより、ナノ粒子の複合化を良好に且つ効率よく行うことができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0055】 以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明に用いられるブロック共重合体の構造を示す模式図であり、図2は、本発明の第1実施形態に係る生体適合性ナノ粒子の構造を示す模式図である。生体適合性ナノ粒子1は、疎水性ポリマーブロック2と、親水性ポリマーブロック3が結合したブロック共重合体4が多数凝集して形成されたものであり、貧溶媒として水相を用いた水中エマルジョン法で調製すると、図1に示すように、親水性ポリマーブロック3が粒子表面に張り出して外殻部(シェル部)5を形成し、疎水性ポリマーブロック2は粒子内部(コア部)6に位置するコアシェル構造を形成する。 【0056】 親水性ポリマーブロック3は、水分子を引き付けて保持する能力が高いため、親水性ポリマーブロック3が張り出したシェル部5は、貧溶媒中の水分子を引き付けて水和相を形成する。親水性の生物活性成分(以下、親水性成分という)7は、ナノ粒子晶析時に有機溶媒(良溶媒)の拡散に伴い貧溶媒中へと拡散するが、親水性ポリマーブロック3と相互作用することにより、貧溶媒中への漏出が抑制され、ナノ粒子1のシェル部5での封入が可能になると考えられる。 【0057】 従って、本発明の生体適合性ナノ粒子では、球形晶析法では封入が困難であった親水性の生物活性成分の封入率が向上するため、封入される生物活性成分のバリエーションを多様化したナノ粒子を簡便且つ低コストで製造することができる。なお、親水性成分7の親水性が弱くなると、親水性ポリマーブロック3との相互作用も弱くなってシェル部5への封入率が低下するが、反対に疎水性ポリマーブロック2との相互作用によりコア部6にも封入されるようになるため、親水性成分7が両親媒性であってもナノ粒子全体として高い封入率が確保されることとなる。 【0058】 ここで、ブロック共重合体4全体の分子量が等しいとすると、ブロック共重合体4内の親水性ポリマーブロック3の分子量が小さい場合、図3(a)に示すようにナノ粒子1中に占めるコア部6の割合が大きくなり、シェル部5の割合が小さくなって親水性成分7の封入量は減少する。一方、親水性ポリマーブロック3の分子量が大きい場合、図3(b)に示すようにナノ粒子1中に占めるコア部6の割合が小さくなり、シェル部5の割合が大きくなって親水性成分7の封入量は増加する。 【0059】 また、疎水性ポリマーブロック2の分子量が等しい場合、図4(a)、(b)に示すように、コア部6の大きさは疎水性ポリマーブロック2の分子量に依存するため、親水性ポリマーブロック3の分子量に関係なく一定となるが、親水性ポリマーブロック3の分子量が大きい図4(b)では、親水性ポリマーブロック3の分子量が小さい図4(a)に比べてシェル部5が大きくなり、親水性成分7の封入量は増加する。従って、親水性成分7の封入量は親水性ポリマーブロック3の分子量に比例して増加する。 【0060】 本発明に用いられる生体適合性のブロック共重合体4は、生体への刺激・毒性が低く、生体適合性で、投与後分解して代謝される生体内分解性のものが望ましい。また、内包する薬物を持続して徐々に放出する粒子であることが好ましい。このような素材としては、特に疎水性ポリマーブロック2がポリ乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)で構成され、親水性ポリマーブロック3がポリエチレングリコール(PEG)で構成されたPEG−PLGA共重合体を好適に用いることができる。 【0061】 PLGAの分子量は、5,000〜200,000の範囲内であることが好ましく、15,000〜25,000の範囲内であることがより好ましい。乳酸とグリコール酸との組成比は1:99〜99:1であればよいが、乳酸1に対しグリコール酸0.333であることが好ましい。また、乳酸およびグリコール酸の含有量が25重量%〜65重量%の範囲内であるPLGAは、非晶質であり、かつアセトン等の有機溶媒に可溶であるから、好適に使用される。 【0062】 PEGの分子量としては、1,000〜20,000の範囲内のものを使用可能であるが、前述したように、PEGの分子量に比例して親水性成分の封入率も高くなるため、PEGの分子量は3,000以上が好ましく、さらに5,000以上であることがより好ましい。一方、PEGの分子量が10,000を超えるとPEG−PLGA共重合体の製造時における取り扱いが困難となる。 【0063】 従って、PEGの分子量は5,000以上10,000以下の範囲内であることがより好ましい。また、後述するように、PEGの分子量の増加と共に親水性成分の放出速度も速くなるため、PEGの分子量は、封入される生物活性成分の親水性や要求される徐放性の程度に応じて適宜選択すれば良い。 【0064】 PLGA以外の疎水性ポリマーブロック2としては、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアスパラギン酸等が挙げられる。また、これらのコポリマーであるアスパラギン酸・乳酸共重合体(PAL)やアスパラギン酸・乳酸・グリコール酸共重合体(PALG)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンのようなポリアルキレン、ポリプロピレン或いはそれらのコポリマーまたは混合物等が挙げられる。 【0065】 PEG以外の親水性ポリマーブロック3としては、ポリプロピレン1,2−グリコール、ポリプロピレン1,3−グリコール等のポリアルキレングリコール、ポリピロリドン、デキストラン、ポリビニルアルコール、セルロースおよび他の多糖類、ならびにペプチド又はタンパク質或いはそれらのコポリマーまたは混合物が挙げられる。これらの疎水性ポリマーブロック2及び親水性ポリマーブロック3を従来公知の方法によりブロック共重合させることにより、本発明に用いられる生体適合性のブロック共重合体4が得られる。 【0066】 ブロック共重合体4としては、図1に示したような疎水性ポリマーブロック2と親水性ポリマーブロック3が直線状に結合したジブロック共重合体の他、疎水性ポリマーブロック2或いは親水性ポリマーブロック3の両端に他方のポリマーブロックが結合したトリブロック共重合体、ジブロック又はトリブロック共重合体が複数結合したマルチブロック共重合体等を用いることができる。 【0067】 本発明の生体適合性ナノ粒子に内包される親水性成分7としては、プラスミドDNA等の遺伝子、ペプチド、インターフェロン(α、β、γ)等のタンパク質、カルシトニン、インスリン、ガストリン、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)等のホルモン、インターロイキン、増血因子、増殖因子等の細胞間情報伝達物質(サイトカイン)、アルニカエキス、オトギリソウエキス、加水分解コンキオリン、キナエキス、クララエキス、セージエキス、チョウジエキス、冬虫夏草エキス、ペパーミントエキス、ホップエキス、グリチルレチン酸ジカリウム、β−グリチルレチン酸、オウゴンエキス、ローズマリーエキス、ボタンピエキス、ゴボウエキス、ニンジンエキス、ローヤルゼリーエキス、カミツレエキス、センキュウエキス、センブリエキス、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、トウキエキス、ベニバナエキス、チンピエキス、セファランチン等の生薬成分、塩酸クロコナゾール、塩酸ネチコナゾール等の水溶性薬物、ビタミンC等の水溶性ビタミン類などが挙げられる。また、上記生物活性成分のうち何れか1種のみを封入しても良いが、特に効能や作用機序の異なる成分を複数種封入しておけば、各成分の相乗効果により薬効の促進が期待できる。 【0068】 図5は、本発明の第2実施形態に係る生体適合性ナノ粒子の構造を示す模式図である。図2と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態においては、親水性成分7は、親水性ポリマーブロック3との相互作用によりナノ粒子1のシェル部5に封入され、疎水性の生物活性成分(以下、疎水性成分という)8は、疎水性ポリマーブロック2との相互作用によりコア部6に封入されている。 【0069】 即ち、基剤ポリマーとして疎水性ポリマーブロック2と親水性ポリマーブロック3が結合したブロック共重合体4を用いることにより、生物活性成分が親水性であるか疎水性であるかを問わず、効能や作用機序の異なる成分を粒子内に複数種封入可能となる。疎水性成分8としては、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、酢酸トコフェロール等の脂溶性ビタミン誘導体等、従来公知の脂溶性の生物活性成分を用いることができる。 【0070】 本発明の生体適合性ナノ粒子は、1,000nm未満の平均粒子径を有するものであれば特に制限はないが、外用薬剤に適用する場合、皮膚深部への浸透効果を高めるためには平均粒子径を300nm以下とすることが好ましい。また、一般に、皮膚細胞の大きさは15,000nm、皮膚細胞間隔は皮膚の浅い所と深い所でバラツキがあるが、70nm程度であると考えられているため、ナノ粒子の粒径を100nm以下とすることで、皮膚への浸透性が非常に高いナノ粒子となるので好ましい。 【0071】 一方、ナノ粒子の粒子径が小さくなるほど封入率も低くなり、また、細胞のファゴサイトーシス(貪食:飲み込み)により、45nm程度までの異物は細胞に飲み込まれるといわれている。そのため、50nm以上で、且つできるだけ小さいナノ粒子を用いることにより、細胞のファゴサイトーシスを受けず、細胞間隔への浸透が期待できる。 【0072】 以上のようにして得られたナノ粒子は、凍結乾燥等により粉末化させる際に再分散可能な凝集粒子にできる(複合化できる)。また、流動層乾燥造粒法または乾式機械的粒子複合化法により(例えば、メカノフュージョンシステムAMS(ホソカワミクロン(株)製)により)、圧縮力および剪断力を加えることで複合化しても、再度分離可能な状態で一体化できる。これにより、使用前まではナノ粒子が集まった取り扱い易い凝集粒子となっており、使用時に水分に触れることでナノ粒子に戻って高反応性等の特性を復元する複合粒子となる。 【0073】 なお、封入される生物活性成分が水溶性の場合、一旦封入された生物活性成分がナノ粒子表面へ漏出すると、周囲に存在する水に再溶解する。この水を凍結乾燥等により除去すると、その分だけ生物活性成分が減少して封入率にばらつきが発生してしまう。そこで、有機または無機の物質を再分散可能に複合化させ、生物活性成分の溶解した水を除去せずにそのままナノ粒子と共に乾燥させることが好ましい。例えば、糖アルコールやショ糖を適用することにより、封入率のばらつきを効果的に防止するとともに、糖アルコール等が賦形剤となりナノ粒子の取り扱い性を高めることができる。糖アルコールとしては、マンニトール、トレハロース、ソルビトール、エリスリトール、マルチトース、キシリトースなどが挙げられ、この中でも特にトレハロースが好ましい。 【0074】 また、複合化の際に、複合化粒子(ナノコンポジット)の表面にさらにビタミンやプロビタミン等の薬物を付着させることにより、ナノ粒子から徐放的に放出される含有成分とは別に、複合化粒子表面から溶け出す速効性の薬物を作用させることができる。このような構成とすることで、ナノ粒子にさらにすばやい浸透性(速効性の浸透作用)を与えられる。また、ナノ粒子に含有される薬物と、複合化される薬物とを有することで、速効性と遅効性の双方の効果を合わせ持ったナノ粒子となる。なお、複合化される薬物が水溶性であれば、すばやく溶けて速効性の効果を示すのでより好ましい。 【0075】 複合化粒子の表面に付着させる薬物としては、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンK、ビタミンP、ビタミンU、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、α−リボ酸、オロット酸及びこれらの成分又は誘導体である酢酸レチノール、酢酸リボフラビン、ピリドキシンジオクタノエート、L−アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸リン酸エステル、DL−トコフェロール−L−アスコルビン酸リン酸ジエステルジカリウム、パントテニルエチルエーテル、D−パントテニルアルコール、アセチルパントテニルエチルエーテル、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−α−トコフェロール、コハク酸−α−トコフェロール等のビタミンまたはビタミン誘導体、或いは水溶性のプロビタミン類、例えばリン酸アスコルビルMg、アスコルビン酸グルコシド、パンテノール(水溶性ビタミンB5)、L−システイン等が挙げられる。 【0076】 また、本発明の生体適合性ナノ粒子を経皮薬剤として用いる場合、ナノ粒子の表面に粘膜付着性を高めるキトサンを複合化したり、リン脂質(レシチン/フォスファチジルコリン)を複合化させたりして皮膚親和性を高めてもよい。また、ポリエチレングリコール(PEG)を複合化することで、水に溶けやすくなり、皮膚への浸透性を高められる。さらに、タルクを複合化することで、粒子のすべり性が向上し、肌への使用感を高めることができる。 【0077】 このようにして製造した複合化粒子は、このまま肌に付着させることでも肌に浸透し、含有または付着した薬物を皮膚深部に運ぶ効果があるが、乳液等と混合して使用することでさらに有効な浸透性を生じる。しかしながら、PLGAは水分と混合させると加水分解されてしまい、短期間に複合粒子の運搬性能が失われてしまう。そこで、このような乳液として使用をする場合は、乳液と粉末とを隣り合う別々の容器に充填して保存しておき、使用直前に容器同士の仕切りをはずして乳液と粉末とを混合できる容器を使用することが好ましい。 【0078】 本発明の生体適合性ナノ粒子の製造方法としては、目的の物質を1,000nm未満の粒子径を有する粒子に加工することができる方法であれば特に限定されるものではないが、球形晶析法を用いることが非常に好ましい。球形晶析法は、化合物合成の最終プロセスにおける結晶の生成・成長プロセスを制御することで、球状の結晶粒子を設計し、その物性を直接制御して加工することができる方法である。球形晶析法には、晶析する結晶の生成・凝集機構の違いによって球形造粒法(SA法)と、エマルジョン溶媒拡散法(ESD法)とに分けることができる。 【0079】 SA法は、二種類の溶媒を用いて薬物結晶を析出させて、球形造粒結晶を形成する方法である。具体的には、まず、目的の薬物を溶解し難い貧溶媒と、該薬物を良好に溶解でき、かつ貧溶媒にも混和拡散できる良溶媒とを準備する。そして、良溶媒に溶解させた薬物溶液を、撹拌下、貧溶媒中に滴下する。このとき、良溶媒の貧溶媒への移行や温度効果等による溶解度の低下を利用することで、薬物の結晶が系内に析出する。 【0080】 さらに、系内に、薬物と親和性を有し貧溶媒には混和しない少量の液体(液体架橋剤)を添加すると、液体架橋剤が遊離する。そして、結晶の間に架橋が形成され、界面張力および毛細管力により、非ランダムに結晶が凝集し始める。なお、この状態をファニキュラー状態という。 【0081】 ファニキュラー状態の系に対してさらに機械的剪断力を加えると、凝集した結晶は圧密化され、略球状の造粒物となる。なお、この状態をキャピラリー状態という。キャピラリー状態の造粒物がランダムに合一することで、最終的な球形造粒結晶が形成される(ナノ粒子形成工程)。 【0082】 ESD法も、二種類の溶媒を用いる方法であるが、SA法とは異なり、エマルジョンを形成してから、良溶媒と貧溶媒との相互拡散を利用して薬物を球状に結晶化させる方法である。具体的には、まず、良溶媒(有機溶媒及び必要により水を加えたもの)中に溶解した薬物溶液を撹拌下、貧溶媒中に滴下する。このとき、薬物と良溶媒とが親和性を持つため、良溶媒の貧溶媒への移行が遅れ、エマルジョン滴が形成される。そして、エマルジョン滴の冷却、並びに、良溶媒および貧溶媒の相互拡散により、エマルジョン滴内で薬物の溶解度が低下していき、薬物の球形結晶粒子が、エマルジョン滴の形状を保持したまま析出、成長する。 【0083】 球形晶析法によりナノ粒子含有溶液を調製した後、良溶媒である有機溶媒を減圧留去し(溶媒留去工程)、薬物含有ナノ粒子粉末を得る。そして、得られた粉末をそのまま、或いは必要に応じて凍結乾燥等により複合化し(複合化工程)、複合粒子とした後、容器内に充填して薬物含有ナノ粒子とする。 【0084】 良溶媒および貧溶媒の種類、並びに液体架橋剤の種類は、封入される生物活性成分の種類等に応じて決定されるものであり特に限定されるものではないが、生体適合性ナノ粒子は、人体へ作用させる薬物の原料として用いられるため、人体に対して安全性が高く、且つ環境負荷の少ないものを用いる必要がある。 【0085】 このような貧溶媒としては、水、或いは界面活性剤を添加した水が挙げられるが、例えば界面活性剤としてポリビニルアルコールを添加したポリビニルアルコール水溶液が好適に用いられる。なお、余剰のポリビニルアルコールが残存している場合は、溶媒留去工程の後に、遠心分離等によりポリビニルアルコールを除去する工程(除去工程)が設けられる。ポリビニルアルコール以外の界面活性剤としては、レシチン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。良溶媒としては、低沸点且つ難水溶性の有機溶媒であるハロゲン化アルカン類、アセトン、メタノール、エタノール、エチルアセテート、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等が挙げられるが、例えばアセトンとエタノールの混合液が好適に用いられる。 【0086】 ポリビニルアルコール水溶液の濃度、或いはアセトンとエタノールの混合比や、結晶析出時の条件や機械的剪断力の加え方も特に限定されるものではなく、目的となる薬物の種類や、球形造粒結晶の粒径(本発明の場合ナノオーダー)等に応じて適宜決定すればよいが、ポリビニルアルコール水溶液の濃度が高いほどナノ粒子表面へのポリビニルアルコールの付着が良好となり、乾燥後の水への再分散性が向上する反面、ポリビニルアルコール水溶液の濃度が所定以上になると、貧溶媒の粘度が上昇して良溶媒の拡散性に悪影響を与える。そのため、ポリビニルアルコールの重合度やけん化度によっても異なるが、ナノ粒子形成工程後に除去工程を設ける場合は0.1重量%以上10重量%以下が好ましく、2%程度がより好ましい。なお、除去工程を設けない場合は0.5重量%以下とすることが好ましい。 【0087】 図6は、本発明の第3実施形態に係る生体適合性ナノ粒子の構造を示す模式図である。図2及び図5と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態のナノ粒子1は、貧溶媒として油相を用いた油中エマルジョン法で調製されたものであり、図6に示すように、疎水性ポリマーブロック2が粒子表面に張り出してシェル部5を形成し、親水性ポリマーブロック3はコア部6に位置する。即ち、第1及び第2実施形態とは逆のコアシェル構造を有している。 【0088】 油中エマルジョン法によるナノ粒子の作製においては、貧溶媒として油相を使用するため、水中エマルジョン法と比較すると晶析時の良溶媒(アセトン、エタノール、水など)の拡散速度が遅延される。そのため、親水性成分7は貧溶媒中に拡散する以前に親水性ポリマーブロック3と相互作用することにより、コア部6に留まり封入される。これにより、親水性成分7がシェル部5に封入される第1、第2実施形態のナノ粒子とは薬物放出挙動が異なることが予想され、さらに長期間に渉る親水性成分7の徐放が可能になると考えられる。なお、使用するブロック共重合体4の種類やナノ粒子1に内包される親水性成分7については第1実施形態と同様である。 【0089】 また、第2実施形態と同様に、本実施形態の生体適合性ナノ粒子に親水性成分7に加えて疎水性成分を封入することもできる。その場合、疎水性成分は疎水性ポリマーブロック2がマトリクス状に凝集したシェル部5に封入される。油中エマルジョン法については、貧溶媒として油相(グリセリントリエステル等)を用いる以外は水中エマルジョン法と同様であるため説明は省略するが、必要に応じて油相に界面活性剤を添加しても良く、ナノ粒子表面に付着した油相を洗浄する洗浄工程や、ナノ粒子の再懸濁工程を設けても良い。また、第1、第2実施形態と同様にナノ粒子を複合化して取り扱い性を向上させることもできる。 【0090】 なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。 【実施例1】 【0091】 本発明の生体適合性ナノ粒子の製造方法について検討した。ポリエチレングリコール(PEG)と乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)のブロック共重合体(PEGの分子量5,000、PLGAの分子量15,000、乳酸/グリコール酸=75/25、BPI社製)4gをアセトン80mLに溶解させ、ここにカフェイン1gを精製水5mLに溶解させた溶液を添加し、均一に混合し良溶媒とした。0.2重量%のポリビニルアルコール(PVA403、クラレ社製)水溶液100mLを貧溶媒とした。 【0092】 この貧溶媒を40℃、400rpmで攪拌下、一定速度(4mL/分)で良溶媒を滴下した。滴下終了後5分間攪拌したのち、減圧下100rpmで攪拌しながら、4時間で有機溶媒を留去した。その後、約1日かけて凍結乾燥を行った。動的光散乱法により測定した結果、平均粒子径280nmの凍結乾燥粉末が得られた。HPLCにより、粒子内のカフェインの封入率(PLGA重量に対するカフェインの重量パーセント)を定量したところ9%であった。 【実施例2】 【0093】 ポリエチレングリコール(PEG)と乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)のブロック共重合体(PEGの分子量5,000、PLGAの分子量15,000、乳酸/グリコール酸=75/25、BPI社製)4gをアセトン80mLに溶解させ、ここにカフェイン1gを精製水5mLに溶解させた溶液を添加し、均一に混合し良溶媒とした。0.2重量%のポリビニルアルコール(PVA403、クラレ社製)水溶液100mLを貧溶媒とした。 【0094】 この貧溶媒を40℃、400rpmで攪拌下、一定速度(4mL/分)で良溶媒を滴下した。滴下終了後5分間攪拌したのち、減圧下100rpmで攪拌しながら、4時間で有機溶媒を留去した。その後、賦形剤としてトレハロース(林原製)8gを精製水50mLに溶解した溶液を添加し、プレ凍結後(−40℃で25分冷却)、約1日かけて凍結乾燥を行った。動的光散乱法により測定した結果、平均粒子径220nmの水への再分散性が良好な複合粒子が得られた。 【比較例1】 【0095】 実施例1の比較として、PEGとPLGAのブロック共重合体の代わりにPLGA(分子量15,000、乳酸/グリコール酸=75/25)を用い、上記調製法と同一条件にて粒子の調製を行った。調製法を以下に示す。 【0096】 乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA;分子量15,000、乳酸/グリコール酸=75/25、和光純薬製)4gとカフェイン1gをアセトン80mLに溶解させたのち、エタノール40mLを添加混合し良溶媒とした。0.4重量%のポリビニルアルコール(PVA403、クラレ社製)水溶液100mLを貧溶媒とした。貧溶媒を40℃、400rpmで攪拌下、一定速度(4mL/分)で良溶媒を滴下した。滴下終了後5分間攪拌したのち、減圧下100rpmで攪拌しながら、4時間で有機溶媒を留去した。プレ凍結後(−40℃で25分冷却)、約1日かけて凍結乾燥を行った。動的光散乱法により測定した結果、平均粒子径460nmの凍結乾燥粉末が得られた。HPLCにより、粒子内のカフェインの封入率を定量したところ、約1%であった。 【実施例3】 【0097】 基剤ポリマーとして、乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)の分子量及び組成比は同一(PLGAの分子量15,000、乳酸/グリコール酸=75/25)で、ポリエチレングリコール(PEG)の分子量が異なる(PEGの分子量6,000、8,000、10,000)3種類のPEGとPLGAのブロック共重合体(BPI社製)を用い、上記実施例1と同様の操作により粒子の調製を行った。動的光散乱法により測定した結果、平均粒子径が100〜3,000nmの凍結乾燥粉末が得られた。 【0098】 HPLCにより、粒子中のカフェインの封入率及び導入率(仕込み時のカフェイン重量に対する粒子内のカフェインの重量パーセント)を定量し、その結果を実施例1、比較例1と合わせて表1及び図7に示した。 【0099】 【表1】
【0100】 表1に示すように、PEGの分子量が小さい順(PEGの分子量5,000、6,000、8,000、10,000)に、カフェインの封入率はそれぞれ9%、11%、17%、22%となり、導入率はそれぞれ36%、44%、68%、88%となった。一方、PEGとPLGAのブロック共重合体に代えてPLGAを用いた比較例1では、カフェインの封入率は1%、導入率は4%と低かった。また、図7から明らかなように、カフェインの封入率はPEGの分子量に比例して高くなり、約10%或いはそれ以上の封入率を得るためには、PEGの分子量を5,000以上とすることが好ましいと言える。 【実施例4】 【0101】 上記実施例1と同様の基剤ポリマーを用い、同様の操作により、水溶性ビタミンC誘導体であるリン酸アスコルビルMg(VCPMg)封入ナノ粒子を調製した。調製法を以下に示す。 【0102】 ポリエチレングリコール(PEG)と乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)のブロック共重合体(PEGの分子量5,000、PLGAの分子量15,000、乳酸/グリコール酸=75/25、BPI社製)4gをアセトン80mLに溶解させた後、リン酸アスコルビルMg(日光ケミカルズ社製)1gを精製水8mLに溶解させた溶液を添加し、均一に混合し良溶媒とした。0.2重量%のポリビニルアルコール(PVA403、クラレ社製)水溶液100mLを貧溶媒とした。 【0103】 この貧溶媒を40℃、400rpmで攪拌下、一定速度(4mL/分)で良溶媒を滴下した。滴下終了後5分間攪拌したのち、減圧下100rpmで攪拌しながら、4時間で有機溶媒を留去した。プレ凍結後(−40℃で25分冷却)、約1日かけて凍結乾燥を行った。動的光散乱法により測定した結果、平均粒子径170nmの凍結乾燥粉末が得られた。HPLCにより、粒子内のリン酸アスコルビルMgの封入率(PLGA重量に対するリン酸アスコルビルMgの重量パーセント)を定量したところ8%であった。 【実施例5】 【0104】 基剤ポリマーとして、乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)の分子量及び組成比は同一(PLGAの分子量15,000、乳酸/グリコール酸=75/25)で、ポリエチレングリコール(PEG)の分子量が異なる(PEGの分子量6,000、8,000、10,000)3種類のPEGとPLGAのブロック共重合体(BPI社製)を用い、上記実施例4と同様の操作により粒子の調製を行った。動的光散乱法により測定した結果、平均粒子径が50〜4,000nmの凍結乾燥粉末が得られた。 【0105】 HPLCにより、粒子中のリン酸アスコルビルMg(VCPMg)の封入率及び導入率(仕込み時のリン酸アスコルビルMg重量に対する粒子内のリン酸アスコルビルMgの重量パーセント)を定量し、その結果を実施例4と合わせて表2及び図8に示した。なお、PEGとPLGAのブロック共重合体の代わりにPLGA(分子量15,000、乳酸/グリコール酸=75/25)を用い、上記比較例1と同一条件にて調製した粒子(比較例2)についても合わせて結果を示した。 【0106】 【表2】
【0107】 表2に示すように、実施例4、5においては、PEGの分子量が小さい順(PEGの分子量5,000、6,000、8,000、10,000)に、VCPMgの封入率はそれぞれ8%、10%、16%、19%となり、VCPMgの導入率はそれぞれ32%、40%、64%、76%となった。一方、PEGとPLGAのブロック共重合体に代えてPLGAを用いた比較例2ではVCPMgの封入率は2%、導入率は8%と低かった。また、図8から明らかなように、VCPMgの封入率はPEGの分子量に比例して高くなり、約10%或いはそれ以上の封入率を得るためには、PEGの分子量を5,000以上とすることが好ましいと言える。 【実施例6】 【0108】 ポリエチレングリコール(PEG)と乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)のブロック共重合体(PEGの分子量5,000、PLGAの分子量15,000、乳酸/グリコール酸=75/25、BPI社製)4gをアセトン100mLに溶解させた。そこにリン酸アスコルビルMg(日光ケミカルズ社製)1g、脂溶性ビタミンC誘導体(VC−IP)であるテトラヘキシルデカン酸アスコルビル(日光ケミカルズ社製)0.6gをそれぞれ精製水8mLならびにエタノール40mLで溶解した液を添加し、均一に混合し良溶媒とした。0.4重量%のポリビニルアルコール(PVA403、クラレ社製)水溶液100mLを貧溶媒とした。 【0109】 この貧溶媒を40℃、400rpmで攪拌下、一定速度(4mL/分)で良溶媒を滴下した。滴下終了後5分間攪拌したのち、減圧下100rpmで攪拌しながら、4時間で有機溶媒を留去した。プレ凍結後(−40℃で25分冷却)、約1日かけて凍結乾燥を行った。動的光散乱法により測定した結果、平均粒子径180nmの凍結乾燥粉末が得られた。HPLCにより、粒子内のリン酸アスコルビルMg、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの封入率(PLGA重量に対するリン酸アスコルビルMg、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの重量パーセント)を定量したところ、それぞれ6.3%、6.0%であった。 【実施例7】 【0110】 基剤ポリマーとして、乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)の分子量及び組成比は同一(PLGAの分子量15,000、乳酸/グリコール酸=75/25)で、ポリエチレングリコール(PEG)の分子量が異なる(PEGの分子量6,000、8,000、10,000)3種類のPEGとPLGAのブロック共重合体(BPI社製)を用い、上記実施例6と同様の操作により粒子の調製を行った。動的光散乱法により測定した結果、平均粒子径が50〜3,000nmの凍結乾燥粉末が得られた。 【0111】 HPLCにより、粒子中のリン酸アスコルビルMg(VCPMg)、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル(VC−IP)の封入率及び導入率(仕込み時のVCPMg、VC−IPの重量に対する粒子内のVCPMg、VC−IPの重量パーセント)を定量し、その結果を実施例6と合わせて表3及び図9に示した。なお、PEGとPLGAのブロック共重合体の代わりにPLGA(分子量15,000、乳酸/グリコール酸=75/25)を用い、上記比較例1と同一条件にて調製した粒子(比較例3)についても合わせて結果を示した。 【0112】 【表3】
【0113】 表3に示すように、実施例6、7においては、PEGの分子量が小さい順(PEGの分子量5,000、6,000、8,000、10,000)に、水溶性薬物であるVCPMgの封入率はそれぞれ6.3%、8.1%、13.4%、18.3%となり、VCPMgの導入率はそれぞれ25.2%、32.4%、53.6%、73.2%となった。一方、脂溶性薬物であるVC−IPの封入率は約6%、導入率は40%で一定であった。なお、PEGとPLGAのブロック共重合体に代えてPLGAを用いた比較例3では、VC−IPの封入率は8.0%、導入率は53%であったが、VCPMgは封入率0.1%、導入率0.4%で、ほとんど封入されなかった。 【0114】 この結果より、親水性成分であるVCPMgと疎水性成分であるVC−IPの両方を封入したナノ粒子を製造するためには、基剤ポリマーとしてPEG−PLGA共重合体を用いる必要があることが確認された。また、図9に示すように、VCPMgはPEGの分子量に比例して封入率が高くなることから、PEGの分子量に比例して大きくなるシェル部5(図4参照)に封入され、VC−IPはPEGの分子量に関係なく封入率がほぼ一定であることから、PEGの分子量に関係なく大きさが等しいコア部6(図4参照)に封入されることが推認される。 【実施例8】 【0115】 ポリエチレングリコール(PEG)と乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)のブロック共重合体(PEGの分子量5,000、PLGAの分子量15,000、乳酸/グリコール酸=75/25、BPI社製)1gをアセトン20mLに溶解させた後、リン酸アスコルビルMg(日光ケミカルズ社製)250mgを精製水2mLに溶解させた溶液を添加し、均一に個混合して良溶媒とした。2重量%のHGCR(ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、日光ケミカルズ社)含有グリセリントリエステル(カプリル酸・カプリン酸トリグリセリド、日光ケミカルズ社)溶液250mLを貧溶媒とした。 【0116】 この貧溶媒を40℃、400rpmで攪拌下、一定速度(2mL/分)で良溶媒を滴下した。滴下終了後5分間攪拌したのち、減圧下100rpmで攪拌しながら、2時間で有機溶媒を留去した。得られた油中懸濁ナノスフェアを遠心分離(20,000rpm、−20℃、15分)した。上澄み液を除去後、粒子表面のトリエステルを洗浄するために、n−ヘキサンを加え超音波により再懸濁し、遠心操作を行った。上澄みを除去した後、ペレットを完全に乾燥させ、2重量%ポリビニルアルコール(PVA403、クラレ社製)水溶液50mLに再懸濁し、再び遠心操作を行った。上澄みを除去し、ペレットを精製水に再懸濁した。得られた懸濁液をプレ凍結後(−40℃で25分冷却)、約1日かけて凍結乾燥を行った。 【0117】 動的光散乱法により測定した結果、平均粒子径550nmの凍結乾燥粉末が得られた。HPLCにより、粒子内のリン酸アスコルビルMgの封入率(PLGA重量に対するリン酸アスコルビルMgの重量パーセント)を定量したところ12.7%であった。 【実施例9】 【0118】 実施例1及び実施例3で調製したカフェイン内包ナノ粒子を用いて水溶性薬物の放出パターンを調査した。試験方法としては、それぞれ100mgのナノ粒子を37℃リン酸緩衝液(pH=7.4)に浸漬し、所定時間経過後のカフェイン放出量(mg)をHPLCにより定量した。結果を図10に示した。 【0119】 図10から明らかなように、本発明のカフェイン内包ナノ粒子は、いずれも試験開始後5日目までカフェインの放出速度が速く、それ以降は放出速度が緩やかになっている。この結果より、初期段階においては粒子のシェル部に位置するPEGが周囲の水分を取り込んで水和層を形成し、シェル部の表面付近に封入されたカフェインが急速に放出され、その後、PLGA骨格の加水分解が起こり、PEG鎖が徐々に解離してシェル部の深部或いはコア部に封入されたカフェインが徐放されるという、PLGAの加水分解とブロック共重合体の解離とが連動した放出挙動を示すことが推認される。 【0120】 また、PEGの分子量が大きくなるほどカフェインの初期放出量も増加している。これは、PEGの分子量に比例してシェル部の占める割合も増加するため、シェル部に封入されるカフェイン量が増加して初期段階に放出されるカフェイン量が増加するためであると考えられる。 【産業上の利用可能性】 【0121】 本発明の生体適合性ナノ粒子は、疎水性ポリマーブロック及び親水性ポリマーブロックが結合したブロック共重合体から成るコアシェル構造を有し、親水性ポリマーブロックに親水性の生物活性成分を封入することにより、PLGA等の疎水性ポリマーを基剤ポリマーとして用いた場合、球形晶析法では封入が困難であった親水性の生物活性成分を高封入率で封入可能となる。また、コアシェル構造において親水性ポリマーブロックがシェル側に位置するか、コア側に位置するかを選択することにより、生物活性成分の徐放性を制御することもできる。 【0122】 また、生物活性成分が両親媒性の場合、疎水性ポリマーブロックと親水性ポリマーブロックの両方に封入されるため、ナノ粒子全体として高い封入率が確保される。さらに、疎水性の生物活性成分は疎水性ポリマーブロックに封入されるため、親水性、疎水性に係わらず様々な生物活性成分を同時に封入可能な生体適合性ナノ粒子となる。 【0123】 また、ブロック共重合体として、工業的にも流通する安価なPEG−PLGA共重合体を用いることが好適である。また、PEGの分子量に比例して親水性の生物活性成分の封入率が高くなり、放出速度も速くなるが、PEGの分子量を5,000以上10,000以下とすることにより、親水性の生物活性成分の封入率を高めるとともに、PEG−PLGA共重合体の製造時の取り扱いも容易となる。 【0124】 また、生体適合性ナノ粒子を凍結乾燥等により複合化しておけば、容器への充填時において取り扱いやすい凝集粒子となる。さらに、ナノ粒子と共に糖アルコールやビタミン類を複合化しておけば、複合化されたナノ粒子の分散性、耐熱性が向上するとともに、封入される生物活性成分が水溶性の場合でも、一旦封入された成分の粒子表面への漏出を防止できる。また、ナノ粒子に含有される薬物と、複合化される薬物とを有することで、速効性と遅効性の双方の効果を合わせ持ったナノ粒子となる。 【0125】 また、球形晶析法を用いてナノ粒子を形成する本発明の生体適合性ナノ粒子の製造方法は、貧溶媒として水相又は油相のいずれを用いることもできる。貧溶媒として水相を用いた場合は、親水性の生物活性成分はシェル側に位置する親水性ポリマーブロックに封入され、油相を用いた場合はコア側に位置する親水性ポリマーブロックに封入される。水相としてはポリビニルアルコール水溶液が好適に用いられ、油相としてはグリセリントリエステルが好適に用いられる。 【0126】 また、ポリビニルアルコール水溶液の濃度を0.5重量%以下の低濃度とすることで、遠心分離などによるナノ粒子の洗浄が不要となるため手間と時間が削減でき、製造面で有利となる。一方、高濃度のポリビニルアルコール水溶液を用いてナノ粒子を形成した後、当該水溶液を遠心分離などによって固液分離してナノ粒子表面に付着した余剰のポリビニルアルコールを除去する工程を設けた場合、ナノ粒子中に封入される生物活性成分の封入率を安定化することができる。このとき、ポリビニルアルコール水溶液の濃度を0.1重量%以上10重量%以下とすることで、貧溶媒の粘度を良溶媒の拡散に影響を与えない程度に抑えることができる。 【0127】 また、人体や環境への影響の少ないアセトン、エタノールの混合液を良溶媒として用いたので、人体へ直接作用させる薬剤の原料として安全性の高いものとなる。また、複合化工程を凍結乾燥により行うこととすれば、ナノ粒子の複合化を良好に且つ効率よく行うことができる。 【図面の簡単な説明】 【0128】 【図1】は、本発明に用いられるブロック共重合体の構造を示す模式図である。 【図2】は、本発明の第1実施形態に係る生体適合性ナノ粒子の構造を示す模式図である。 【図3】は、ブロック共重合体の分子量が等しい場合の親水性ポリマーブロックの分子量とコアシェル構造との関係を示す模式図である。 【図4】は、疎水性ポリマーブロックの分子量が等しい場合の親水性ポリマーブロックの分子量とコアシェル構造との関係を示す模式図である。 【図5】は、本発明の第2実施形態に係る生体適合性ナノ粒子の構造を示す模式図である。 【図6】は、本発明の第3実施形態に係る生体適合性ナノ粒子の構造を示す模式図である。 【図7】は、ポリエチレングリコールの分子量とカフェインの封入率との関係を示すグラフである。 【図8】は、ポリエチレングリコールの分子量とVCPMgの封入率との関係を示すグラフである。 【図9】は、ポリエチレングリコールの分子量とVCPMg及びVC−IPの封入率との関係を示すグラフである。 【図10】は、ポリエチレングリコールの分子量とナノ粒子からのカフェインの放出速度との関係を示すグラフである。 【符号の説明】 【0129】 1 生体適合性ナノ粒子 2 疎水性ポリマーブロック 3 親水性ポリマーブロック 4 ブロック共重合体 5 シェル部 6 コア部 7 親水性成分 8 疎水性成分
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| 【出願人】 |
【識別番号】502360363 【氏名又は名称】株式会社ホソカワ粉体技術研究所 【住所又は居所】大阪府枚方市招提田近1丁目9番地
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| 【出願日】 |
平成17年5月20日(2005.5.20) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100085501 【弁理士】 【氏名又は名称】佐野 静夫
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| 【公開番号】 |
特開2006−321763(P2006−321763A) |
| 【公開日】 |
平成18年11月30日(2006.11.30) |
| 【出願番号】 |
特願2005−147664(P2005−147664) |
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