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【発明の名称】 安定性及び生物学的利用率が高められた複合体及びその製造方法
【発明者】 【氏名】寺尾 啓二

【氏名】中田 大介

【氏名】小西 真由子

【要約】 【課題】αリポ酸を含む安定性及び生物学的利用率が高められた複合体及びその製造方法の提供。

【解決手段】αリポ酸をγCDに包接させることにより、安定性及び生物学的利用率が高められた複合体及びその製造方法を提供できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
αリポ酸をγシクロデキストリン(γCD)に包接させることを特徴とする、安定性及び生物学的利用率が高められた複合体の製造方法。
【請求項2】
γCDがマルトシル化γCDであることを特徴とする、請求項1に記載の複合体の製造方法。
【請求項3】
αリポ酸がラセミ体である請求項1又は2に記載の複合体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の複合体の製造方法において、さらにCoQ10を添加せしめる複合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により製造された複合体。
【請求項6】
請求項5に記載の複合体を含有せしめた飲食品。
【請求項7】
請求項5に記載の複合体を含有せしめた化粧品。
【請求項8】
請求項5に記載の複合体を含有せしめた医薬品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はαリポ酸をγシクロデキストリン(以下、γCDと示す)又はマルトシル化γCDに包接させることを特徴とする安定性及び生物学的利用率が高められた複合体及びその製造方法に関する。さらに、この複合体を含有せしめた飲食品、化粧品及び医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
αリポ酸は、糖尿病の治療等を目的とする医薬品の有効成分として利用されている。しかし、その分子内にジスルフィド結合を有するために、熱、光等の物理的な影響や、酸素、水、薬理活性物質との共存等の化学的な影響によって、重合体を生成し易く不安定である。さらに、経口摂取による吸収率が低いため、生物学的利用率が下がるという問題があった。
従って、現在、医薬品としては1回の投与量を遮光アンプル中に封入して、冷暗所に保存する方法が採用されており、吸収率を高めるために静脈注射等による摂取が行われている。
【0003】
αリポ酸は、最近、日本で食品素材として認められたため、ダイエット等を目的とするαリポ酸を含有する健康食品等が製造販売され始めている。しかし、タブレットやカプセル状等の経口摂取用の健康食品がほとんどであり、αリポ酸の含有量は記載されているものの、保存による安定性や、経口摂取による生物学的利用率についてはほとんど触れられておらず、これらの点について配慮されていないのが実情である。従って、αリポ酸を含有した健康食品であるにもかかわらず、望まれるような効果が十分には得られないという問題があり、これが改善された健康食品等は得られていない。
【0004】
現在開示されているαリポ酸の安定化方法として、βシクロデキストリン(以下、βCDと示す)と混合する方法(例えば、特許文献1参照)がある。ここで得られたチオクト酸(αリポ酸)の付加化合物及びチオクト酸結晶は、それぞれ65〜70℃に4時間加熱したところ、前者のチオクト酸含量が99.8%、後者のチオクト酸含量が85.4%であったことが示されている。
また、チオクト酸をαシクロデキストリン(以下、αCDと示す)と混合することで、噛み砕き、発泡錠、及び、顆粒として経口投与製剤を製造する際にチオクト酸の有する「長時間続く強く燃えるような不快な味」を緩和すると同時に、チオクト酸を安定化し、通常の製剤化に必要とされる安定剤を省くことができることが示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、これらの方法によって安定化されたαリポ酸を用い、健康食品を製造する場合、上記特許文献1の方法では、安定性薬事審査研究会が出している医薬品製造指針の加速試験条件に準じた試験が行われておらず、長期に亘る安定性は不明であった。また、上記特許文献2の方法では、光学的にピュアな(R)体と(S)体のいずれかのαリポ酸とシクロデキストリン(以下、CDと示す)あるいはCD誘導体を用いており、実際に流通しているラセミ体を用いた場合の安定化については示されていなかった。
【0006】
これらに加え、経口摂取による吸収率を高め、生物学的利用率が向上されたαリポ酸は得られていない。従って、医薬品製造指針の加速試験条件に準じた試験において、十分に安定性が確認され、さらに生物学的利用率が改善されたαリポ酸又はαリポ酸を含む組成物の製造が望まれていた。
【特許文献1】特公昭37−7970号公報
【特許文献2】特許3404435号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、αリポ酸をγCD又はマルトシル化γCDに包接させることを特徴とする安定性及び生物学的利用率が高められた複合体及びその製造方法の提供を課題とする。さらに、この複合体を含有せしめた飲食品、化粧品及び医薬品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、γCD又はマルトシル化γCDを用いることにより、αリポ酸の安定性が向上し、さらに生物学的利用率が高められた複合体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。この製造方法で得られた複合体は、医薬品製造指針の加速試験条件に準じた試験において、十分な安定性を示すことから、飲食品、化粧品及び医薬品等に利用できる。
【0009】
即ち、本発明は次の(1)〜(8)のいずれかの安定化された複合体、その製造方法及びその複合体を用いた飲食品、化粧品及び医薬品に関する。
(1)αリポ酸をγCDに包接させることを特徴とする、安定性及び生物学的利用率が高められた複合体の製造方法。
(2)γCDがマルトシル化γCDであることを特徴とする、上記(1)に記載の複合体の製造方法。
(3)αリポ酸がラセミ体である上記(1)又は(2)に記載の複合体の製造方法。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の複合体の製造方法において、さらにCoQ10を添加せしめる複合体の製造方法。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法により製造された複合体。
(6)上記(5)に記載の複合体を含有せしめた飲食品。
(7)上記(5)に記載の複合体を含有せしめた化粧品。
(8)上記(5)に記載の複合体を含有せしめた医薬品。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、αリポ酸の効果を維持することができ、十分な安定性が得られ、さらに生物学的利用率が高められた複合体を得ることができる。従って、これらを有効成分とする飲食品、化粧品及び医薬品等の製造、保存及び利用を容易とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の「安定性及び生物学的利用率が高められた複合体」とは、αリポ酸をγCDに包接させることにより、熱、光等の物理的な影響や、酸素、水、薬理活性物質との共存等の化学的な影響に対する安定性が向上し、さらに経口摂取における生物学的利用率が高められた物質のことをいう。
本発明の生物学的利用率とは、経口摂取におけるαリポ酸の体内への吸収率のことをいい、吸収率の向上により、摂取された複合体に含まれるαリポ酸が十分に体内で利用され得ることを示すことができる。
【0012】
本発明の「複合体」とは、αリポ酸をγCD又はマルトシル化γCDに包接させた包接体のことをいう。また、さらにCoQ10を添加せしめるαリポ酸をγCD又はマルトシル化γCDに包接させた包接体のことも含む。本発明の「複合体の製造方法」とは、αリポ酸のγCD包接体又はマルトシル化γCD包接体を製造することをいい、この包接体の製造には、噴霧乾燥、凍結乾燥法、飽和水溶液法、混錬法、混合粉砕法等の一般的な包接体の製造方法を用いることができる。
噴霧乾燥、凍結乾燥法とは、CDの10〜60%懸濁液を調製し、一定量のゲスト化合物を添加し、室温、又は加温しながら数分〜数時間ホモジナイズ(回転数;1,000−3,000rpm、30分〜5時間、室温)し、これによって得られた包接乳化液を次いで噴霧乾燥、凍結乾燥し、包接体を得る方法である。また、飽和水溶液法とは、CDの飽和水溶液を作り、一定量のゲスト化合物を混合し、CDの種類やゲスト化合物の種類に応じ30分〜数時間攪拌混合することで、包接物の沈殿を得て、続いて、水を蒸発させるか、温度を下げて沈殿物を取り出した後、乾燥することで、包接体を単離する方法である。
混練法とは、CDに水を少量加えてペースト状にして、一定量のゲスト化合物を添加してミキサー等でよく攪拌し、続いて水を蒸発させることで包接体を単離する方法である。そして混合粉砕法とは、CDとゲスト化合物を振動ミルにより粉砕して得る方法である。
【0013】
得られた複合体のうち、包接体が形成されているか否かは、溶液状態においては円二色性スペクトルやNMRスペクトルを用い、固体状態においては熱分析DSC、粉末X線等でCD、ゲスト化合物単独、物理的混合物と包接体を比較して確認することができる。
【0014】
さらにCoQ10を添加せしめるαリポ酸をγCD又はマルトシル化γCDに包接させた包接体の製造方法とは、この包接体が安定して調製される方法であればいずれの方法も用いることができる。例えば、αリポ酸をγCDに包接させた包接体とCoQ10を乾燥条件下にて乳鉢を用いて、均一になるまで混合することで調製することができる。
【0015】
本発明の複合体の製造に用いるαリポ酸には、ラセミ体、光学的にピュアな(R)体のみ、(S)体のみ、又はこれらの混合物等のいずれも含む。これらは天然から得られたもの、化学合成されたもの等のいずれも含み、例えば、立山化成社製等の、市販のラセミ体を用いることもできる。さらに本発明のαリポ酸には、チオクト酸アミド等のαリポ酸誘導体や、αリポ酸又はαリポ酸誘導体を含有する組成物も含む。
【0016】
本発明の複合体の製造に用いるγCDには、メチル化、エチル化等のアルキル化γCD、ヒドロキシヒドロキシエチル化、ヒドロキシプロピル化等のアルコキシル化γCD、アセチル化γCD、グルコシル化γCD等の様々なγCD誘導体を含み、天然から得られたもの、化学合成されたもの等のいずれも含む。例えば、参考文献1に記載の方法によって合成したマルトシル化γCDを用いることができ、好ましい。またWacker Biochem社製等の、市販のγCDを用いることもできる。
参考文献1: 澱粉化学,33,127(1986)
【0017】
本発明の複合体の製造にあたり、αリポ酸の含有率が30w/w%以下に、γCD又はマルトシル化γCDの含有率が70w/w%以上となるようにそれぞれ用いることが好ましい。さらに、複合体のαリポ酸の含有率が5〜30w/w%程度となるようにする、特に10〜25w/w%前後となるようにすることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明の複合体の製造に用いるCoQ10には、CoQ10、CoQ10W等のCoQ10複合体を含み、天然から得られたもの、化学合成されたもの等のいずれも含む。例えば、シクロケム社製等の、市販のCoQ10Wを用いることもできる。本発明において、高い安定性を有する複合体を製造する場合には、特にCoQ10Wを用いることが特に好ましい。
【0019】
本発明の複合体の安定性は、得られた複合体を、室温又は一定の温度及び湿度条件下で数日から数ヶ月保存し、保存後の複合体に含まれるαリポ酸の残存率を求めることで検討することができる。
特に、本発明の複合体を医薬品に用いる場合においては、日本の医薬品製造指針に基づく加速試験条件(薬事審査研究会)を行い、検討する必要がある。この試験は、一定の流通期間中に品質の安定性を短期間で推定する為に実施するもので、保存条件として40℃(+/-1℃)、75%RH(+/-5%)で6ヶ月以上保存して品質の劣化がない場合、室温における医薬品の品質保証期間を少なくとも3年間とできる。
また、健康食品に用いる場合においては、この加速試験条件に準じて試験を行い、一般的に1ヶ月以上保存して品率の劣化がない場合、室温における品質保証期間を少なくとも3ヶ月とでき、2ヶ月以上保存して品率の劣化がない場合は少なくとも1年間とできる。
【0020】
本発明の複合体の生物学的利用率は、複合体摂取後の血中に含まれるαリポ酸を測定し、αリポ酸の吸収率を求めることで検討することができる。この試験としては、例えば同じ男女比からなる同じ人数のいくつかの群に対し、それぞれ本発明の複合体及び対照をサンプルとして摂取させ、摂取前、摂取後一定の期間ごとに血中に含まれるαリポ酸を測定することで、αリポ酸の吸収率を求め、それぞれの群において用いたサンプルにおける生物学的利用率を検討することができる。
これと同様の方法を用い、例えば、αリポ酸の生物学的利用率を検討した場合、糖尿病患者に対してαリポ酸600mgを静脈投与した場合と1800mgを経口投与した場合の血漿中αリポ酸濃度がほぼ同じであったことから、経口投与による場合は静脈注射の吸収率の約3分の1と低いことが確認されている。また、食事中にαリポ酸を服用した場合では、αリポ酸が食物中の蛋白質と結合してしまう。そのため血中に含まれるαリポ酸濃度が空腹時に服用した場合の25%になることが確認されたことから、αリポ酸単体の服用は、食前30分前が好ましいことが示唆されている。
本発明の複合体はCDと包接されているため蛋白質と結合しにくいので例えば食事中でも吸収性に関係なく、服用可能である。CoQ10は水に溶けにくい物質なので、そのままでは生体内の分散が悪く、とくにヒトで空腹時は吸収率が良くない。しかしCoQ10Wは、安定化により変質しにくくなると同時に、水に溶けやすくなり分散性が向上し空腹時でも吸収が良くなる。
αリポ酸-γCD複合体とCoQ10あるいはCoQ10Wとを併用すると、単独で用いる場合と比較して安定性が向上する。またαリポ酸-γCD複合体とCoQ10Wとを併用すると、ヒトでの投与の際に空腹時、食事中あるいは食事後でも吸収性に関係なく摂取が可能になり効果が期待できることから、服用者にとって利便性が向上する。
【0021】
本発明の複合体は、含有するαリポ酸の効果や使用の目的によって、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、液剤、シロップ剤、懸濁剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、注射剤等の形態とすることができる。本発明の複合体は飲食品、化粧品や医薬品として、1日当たりの可能摂取量に該当する範囲であれば、そのまま又は添加物を加えた後に、摂取したり、塗布したりしてもよい。
【0022】
本発明の複合体を含有せしめた飲食品として、サプリメント、機能性食品、栄養ドリンク等を製造することができる。本発明の複合体を用い、飲食品を製造する場合には、複合体に含まれるαリポ酸の効果を有効に利用することが好ましい。
本発明の複合体を使用し、栄養ドリンク、スポーツ飲料、清涼飲料、茶飲料を製造する場合には、必要に応じて、例えば香料、着色剤、酸化防止剤及びその他の成分を加えても良い。例えばカフェインなどのキサンチン誘導体、人参、麝香、牛黄、枸杞子、地黄、ロイヤルゼリーなどの生薬、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、銅などのミネラル、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、リシン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、タウリンなどのアミノ酸、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどの油溶性ビタミン類などが例示される。
本発明の複合体を使用し、飴、グミー、ガムなどの菓子類を製造するときには、必要に応じて、例えば香料、着色剤、酸化防止剤及びその他の成分を加えても良い。
本発明の複合体を用い、サプリメントを製造する場合には、本発明の複合体をそのまま打錠成型することもできるが、さらに必要に応じて、例えば、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等の製剤に通常用いられている添加物を加えることができる。
【0023】
また、本発明の複合体を含有せしめた化粧品として、化粧水、乳液、美容クリーム、シャンプー、リンス等を製造することができる。本発明の複合体を用い、化粧品を製造する場合には、複合体に含まれるαリポ酸の効果を有効に利用することが好ましい。
さらに、本発明の複合体に加え、皮膚繊維芽細胞の増殖等の効果を有するレチノール等の美容成分や、ホホバ油、植物エキス等の保湿成分を必要に応じて配合することもできる。
【0024】
さらに、本発明の複合体を含有せしめた医薬品を製造することができる。医薬品を製造するにあたり、本発明の複合体を用い、医薬品を製造する場合には、複合体に含まれるαリポ酸の効果を有効に利用することが好ましい。本発明の複合体を用い、医薬品を製造する場合には、本発明の複合体に加え、必要な成分を配合することもできる。
【0025】
以下、本発明の詳細を実施例等で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
複合体の製造方法
αリポ酸結晶(立山化成社製)10gを用い、γCD(Wacker Biochem社製)70gと混合し、混練法によりαリポ酸を12.5w/w%含有するαリポ酸-γCD包接体の粉末を80g得て、複合体を得た。
得られた複合体が包接体を形成していることを、αリポ酸結晶のみ、又はαリポ酸とγCDの混合物を対照として、粉末X線及び熱分析DSC法により調べた。αリポ酸とγCDの混合物では1箇所に強いピークがみられたが、αリポ酸及びγCD混練体ではピークが弱くなり、複合体の包接体形成が示された。従って、本発明の製造方法により、安定化された複合体が得られることが確認できた。
【実施例2】
【0027】
<複合体の安定性の検討>
実施例1の複合体と、対照としてγCDのかわりにαCD又はβCD(いずれもWacker Biochem社製)を用い、実施例1と同様に製造したαリポ酸-αCD複合体(12.4w/w%)及びαリポ酸-βCD複合体(10.7w/w%)と、αリポ酸結晶そのものを用いた。これらをそれぞれ遮光ガラス瓶気密容器中に入れ、湿度100%、70℃で静置させた後、0、2、4、6、8時間後のαリポ酸の残存率を算出し、本発明の複合体の安定性を調べた。
αリポ酸の残存率は、測定する保存期間ごとに回収したサンプルを10mg精密に量り取り、溶解Bufferを5ml加え、20〜25分間超音波処理を行い、シリンジフィルターでろ過した後、HPLCを用いて以下の分析条件で各サンプルに含まれるαリポ酸を定量し、開始時を100w/w%として換算し、以下の式1により残存率を求めた。
【0028】
残留率=実測値のαリポ酸濃度/理論値のαリポ酸濃度×100 (式1)
(理論値:処方から計算された値)
【0029】
<HPLC分析条件>
カラム:Waters SunFire 5.0μm C18 4.6×150mm
カラム温度:35℃
移動相:溶解Buffer(0.005Mリン酸緩衝液/アセトニトリル/メタノール=300:60:400)
流量:0.7mL/min
検出波長:UV 215nm、0.2AUFS
注入量:10μL
【0030】
結果
湿度100%、70℃の条件における、複合体のαリポ酸の残存率を図1に示した。図1に示されるように、αリポ酸-αCD複合体(12.4w/w%)、αリポ酸-βCD複合体(10.7w/w%)及びαリポ酸結晶そのもののαリポ酸の残存率は、日数の経過に伴い、低下することが確認された。
一方で、本発明の複合体のαリポ酸の残存率は時間の経過に伴って若干低下するものの、対照と比べ、湿度100%、70℃の条件において高い安定性を有することが示された。
【実施例3】
【0031】
<加速試験条件における複合体の安定性の検討>
実施例2と同様に、本発明の複合体と対照を用いた。これらをそれぞれ遮光ガラス瓶気密容器中に入れ、湿度75%、40℃という、医薬品製造指針に基づく加速試験条件で静置させた後、0日目、1、2、3、4週間後のαリポ酸の残存率を算出し、本発明の複合体の安定性を調べた。
【0032】
結果
医薬品製造指針に基づく加速試験条件における、複合体のαリポ酸の残存率を図2に示した。図2に示されるように、対照であるαリポ酸-αCD複合体(12.4w/w%)、αリポ酸-βCD複合体(10.7w/w%)及びαリポ酸結晶そのもののαリポ酸の残存率は、日数の経過に伴い、低下することが確認された。
一方で、本発明の複合体のαリポ酸の残存率は時間の経過に伴って若干低下するものの、対照と比べ、医薬品製造指針に基づく加速試験条件において高い安定性を有することが示された。
医薬品製造指針に準じて食品分野であれば、1ヶ月間以上安定であれば通常6ヶ月間の品質保証期間が認められていることから、本発明の複合体は、飲食品として十分に利用できるほどの安定性を有することが示された。
【実施例4】
【0033】
<ビタミンE存在下での複合体の安定性の検討>
上記で製造した実施例1の複合体と、対照としてαリポ酸-αCD複合体(12.4w/w%)、αリポ酸-βCD複合体(10.7w/w%)及びαリポ酸結晶そのものをそれぞれ4g用い、ビタミンE(和光純薬社製)0.3g及びグリセリン脂肪酸エステル5g(花王社製)と混合しαリポ酸含有乳化物を得た。
これらをそれぞれ遮光ガラス瓶気密容器中に入れ、室温で静置させた後、0日目、1、2、3、4週間後のαリポ酸の残存率を算出し、本発明の複合体の安定性を調べた。
【0034】
結果
ビタミンE存在下での複合体を含むαリポ酸含有乳化物のαリポ酸の残存率を図3に示した。
図3に示されるように、ビタミンE存在下での、αリポ酸結晶そのもの、αリポ酸-αCD複合体(12.4w/w%)及びαリポ酸-βCD複合体(10.7w/w%)のαリポ酸をそれぞれ含むαリポ酸含有乳化物におけるαリポ酸の残存率は、日数の経過とともに徐々に低下することが確認された。一方で、本発明の複合体を含むαリポ酸含有乳化物のαリポ酸の残存率はほとんど低下せず、ビタミンE存在下でも高い安定性を有することが示された。
【実施例5】
【0035】
CoQ10を含むαリポ酸複合体の製造方法
αリポ酸結晶(立山化成社製)又はαリポ酸-γCD複合体を用い、CoQ10と混合し、CoQ10を含むαリポ酸複合体を得た。各複合体の調製には、αリポ酸又はαリポ酸-γCD複合体、CoQ10、CoQ10Wを用いた。そして、これらを表1に示す組成になるよう配合し、乾燥条件下にて乳鉢を用いて、均一になるまで混合することで調製した。
なお、αリポ酸-γCD複合体は、上記と同様に、12.5w/w%のαリポ酸を含有するγCD複合体として次のように調製したものを用いた。即ち、αリポ酸(12.5g)に対し、150mLの水を加え、ホモジナイザー(IKA製 ULTRA-TURRAX T25:8,000rpm、2min)を用いて剪断力をかけて予備攪拌した。これにγCD(87.5g:乾燥重量)を加え、同様に攪拌した(8,000-12,000rpm、15-30min)。得られた乳化物を一晩放置した後、凍結乾燥することで調製した。
【0036】
【表1】


【0037】
<CoQ10を含むαリポ酸複合体の安定性>
調製された各複合体及びαリポ酸、αリポ酸-γCD複合体を試料として、70℃、飽和水蒸気状態に2時間放置して、CoQ10を含むαリポ酸複合体の安定性を調べた。
処理後の各試料にメタノールを加え超音波で処理した後、さらに水を加えて超音波で処理した。これらをフィルター(ザルトリウス/lot.16534/0.2μm)濾過した後、HPLCでそれぞれのαリポ酸濃度を測定した。結果を表2に示した。
【0038】
【表2】


【0039】
表2に示したように、試料5のαリポ酸のみを用いたものでは、αリポ酸の残存率が低かったが、試料1及び試料3に見られるように、αリポ酸とCoQ10又はCoQ10Wを併用することで、αリポ酸の残存率が上がり、粉体におけるαリポ酸の安定性が高くなることが示された。さらに、試料2、5に見られるように、αリポ酸-γCD複合体とCoQ10又はCoQ10Wを併用することで、粉体に含まれるαリポ酸の残存率が上がり、粉体におけるαリポ酸の安定性が高くなることが示された。特にαリポ酸-γCD複合体とCoQ10Wを併用した場合では、99.7%と非常に高い残存率を示し、安定性が高められることが確認された。
【実施例6】
【0040】
保湿クリームの製造
本発明の複合体を用い、保湿クリームを製造した。
複合体は、上記実施例1と同様の方法により、20.0w/w%のαリポ酸を含有するγCD複合体として調製したものを用いた。即ち、αリポ酸(20.0g)に対し、150mLの水を加え、ホモジナイザー(IKA製 ULTRA-TURRAX T25:8,000rpm、2min)を用いて剪断力をかけて予備攪拌した。これにγCD(80.0g:乾燥重量)を加え、同様に攪拌した(8,000-12,000rpm、15-30min)。得られた乳化物を一晩放置した後、凍結乾燥することでαリポ酸-γCD複合体(20w/w%)を得た。
【0041】
保湿クリームの製造にあたり、下記(A)、(B)の材料をそれぞれ秤取し、各々を80℃に加温撹拌した。下記(C)の材料を常温で撹拌して分散させた。その後、(A)をホモミキサーで攪拌しながら80℃を維持して(B)を徐々に添加した。添加終了後、パドルミキサーで攪拌して冷却し、50℃でさらに(C)を加えて、35℃まで撹拌冷却することで、保湿クリームを製造した。
【0042】
(A)
モノステアリン酸デカグリセリル 2.0
水添レシチン 1.0
セタノール 1.0
パルミチン酸セチル 1.0
ステアリン酸 2.0
スクワラン 5.0
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 6.0
メチルポリシロキサン(100mm2/S) 1.0
パラオキシ安息香酸プロピル 0.1
(B)
L−アルギニン 0.2
1,3−ブチレングリコール 8.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
精製水 66.5
(C)
αリポ酸-γCD複合体(20.0w/w%) 1.0
精製水 5.0
_____________________________________________________________________
合計(A)〜(C) 100.0w/w%
【実施例7】
【0043】
ホワイトニングローションの製造
本発明の複合体を用い、ホワイトニングローションを製造した。複合体は、20.0w/w%のαリポ酸を含有するγCD複合体として、上記実施例6と同様に調製したものを用いた。
ホワイトニングローションの製造にあたり、下記(A)の材料を40℃で加温溶解した。下記(B)の材料は常温で溶解し、下記(C)は分散させた。その後、(A)を攪拌しながら(B)、(C)の順に添加し、室温まで冷却することで、ホワイトニングローションを製造した。
【0044】
(A)
PPG−6デシルテトラデセテス‐30 1.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
キサンタンガム(2%水溶液) 5.0
フェノキシエタノール 0.5
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
精製水 64.0
(B)
リン酸アスコルビルマグネシウム 3.0
グルタミン酸ナトリウム 0.3
精製水 15.0
(C)
αリポ酸-γCD複合体(20.0w/w%) 1.0
精製水 5.0
____________________________________________________________________
合計(A)〜(C) 100.0w/w%
【実施例8】
【0045】
ボディゲルの製造
本発明の複合体を用い、ボディゲルを製造した。複合体は、20.0w/w%のαリポ酸を含有するγCD複合体として、上記実施例6と同様に調製したものを用いた。
ボディゲルの製造にあたり、下記(A)の材料を70℃で均一混合後、50℃まで冷却した。50℃を維持しながら、撹拌しながら均一に分散させた下記(B)及び(C)を徐々に添加した。均一化後に、室温に戻し、ボディゲルを製造した。
【0046】
(A)
カルボキシビニルポリマー(2%水溶液) 10.0
キサンタンガム(2%水溶液) 10.0
1,3−ブチレングリコール 7.0
フェノキシエタノール 0.5
精製水 47.05
(B)
水添レシチン 1.0
精製水 9.0
(C)
αリポ酸-γCD複合体(20.0 w/w%) 0.3
リノール酸−αCD複合体
(商品名:CAVAMAX W6-Linoleic Acid、wacker社) 5.0
L−アルギニン 0.15
精製水 10.0
____________________________________________________________________
合計(A)〜(C) 100.0w/w%
【実施例9】
【0047】
マルトシル化γCDを用いた複合体の製造
αリポ酸(立山化成社製)15gに10mLの水を加え、ホモジナイザー(IKEA製ULTRA-TURRAX:8,000rpm、2min)を用いて予備撹拌した。これに上記参考文献1に記載の方法によって合成したマルトシル化γCD10.5g(乾燥重量)を加え、撹拌した。(8,000-12,000rpm,15−30min)。得られた乳化物を一晩放置した後に凍結乾燥することで、複合体としてαリポ酸-マルトシル化γCD複合体(12.5w/w%)を得た。
【実施例10】
【0048】
シャンプーの製造
本発明の複合体を用い、シャンプーを製造した。複合体は、αリポ酸-マルトシル化γCD複合体(12.5w/w%)として、上記実施例9と同様に調製したものを用いた。
シャンプーの製造にあたり、下記(A)の材料と下記(B)の材料を80℃で加温しながら均一化した。(A)に(B)を加えて攪拌した。攪拌しながら冷却し40℃でシャンプーを製造した。
【0049】
(A)
ラウレス硫酸Na 31.0
ラウレス2−硫酸アンモニウム 15.0
コカミドプロピルベタイン 10.0
ジステアリン酸グリコール 2.0
コカミドDEA 2.0
1,3−ブチレングリコール 3.0
エデト酸塩 0.1
(B)
αリポ酸-マルトシル化γCD複合体(12.5w/w%) 0.2
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
クエン酸 適当量
精製水 残量
_____________________________________________________________________
合計(A)〜(B) 100.0 w/w%
【実施例11】
【0050】
茶飲料の製造
本発明のαリポ酸-γCD複合体を用い、茶飲料を製造した。複合体は、αリポ酸-γCD複合体(20w/w%)として、上記実施例6と同様に調製したものを用いた。
イオン交換水(pH5.9)800mLを70℃に加温し市販の緑茶(仕上茶)20gを添加した後1分毎に撹拌しながら3分30秒間抽出した。抽出液にαリポ酸-γCD複合体(20w/w%)180mgを溶解した。
その後粗濾過(150メッシュ)し、室温まで冷却し、ネル(50um)により濾過した。得られた抽出液にアスコルビン酸0.4gを添加し7,000rpm、10分遠心分離後、上清を微細濾過し、濾液にアスコルビン酸0.6gを加え、イオン交換水と重曹とを用いてBriX0.3、pH6.0 に調整して「加熱殺菌前調合液」を得た。この「加熱殺菌前調合液」を97℃まで過熱した後、缶に充填し、急冷後121℃、7分間のレトルト殺菌を行い冷却して茶飲料を製造した。
【実施例12】
【0051】
清涼飲料の製造
本発明のαリポ酸-γCD複合体を用い、清涼飲料を製造した。複合体は、αリポ酸-γCD複合体(20w/w%)として、上記実施例6と同様に調製したものを用いた。
イオン交換水800mLを40℃に加温しαリポ酸-γCD複合体(20w/w%)180mgを加え溶解した。砂糖48g、クエン酸ナトリウム2.4g及びビタミンC80mgを加えて溶解した。97℃に加熱殺菌した後、缶に充填し、121℃、7分間のレトルト殺菌を行い冷却して清涼飲料を製造した。
【実施例13】
【0052】
錠剤の製造
本発明のαリポ酸-γCD複合体を用い、錠剤を製造した。複合体は、αリポ酸-γCD複合体(20w/w%)として、上記実施例6と同様に調製したものを用いた。
αリポ酸-γCD複合体(20w/w%)125mgに対し、乳糖139mg、ショ糖脂肪酸エステル24mg、微粒二酸化ケイ素6mg及び第三リン酸カルシウム6mgを加えて混合した後、打錠機にて打錠して製造した。
【実施例14】
【0053】
ハードカプセルの製造
本発明のαリポ酸-γCD複合体を用い、ハードカプセルを製造した。複合体は、αリポ酸-γCD複合体(20w/w%)として、上記実施例6と同様に調製したものを用いた。
αリポ酸-γCD複合体(20w/w%)100mgに対し、乳糖188mg、ステアリン酸カルシウム6mg及び微粒二酸化ケイ素6mgを加えて混合した後、ハードカプセルに充填した。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によって製造された複合体は、成分として含有する化合物の効果を安定して維持することができる。また、この複合体を成分として利用することで長期にわたって、効果を維持できる飲食品、化粧品及び医薬品等の提供を容易とする。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】湿度100%、70℃の条件における複合体のαリポ酸の残存率を示した図である。(実施例2)
【図2】加速試験条件における複合体のαリポ酸の残存率を示した図である。(実施例3)
【図3】ビタミンE存在下での複合体を含むαリポ酸含有乳化物のαリポ酸の残存率を示した図である。(実施例4)
【出願人】 【識別番号】503065302
【氏名又は名称】株式会社シクロケム
【出願日】 平成17年10月19日(2005.10.19)
【代理人】 【識別番号】100090941
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 清也

【識別番号】100076244
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 清規

【識別番号】100113837
【弁理士】
【氏名又は名称】吉見 京子

【識別番号】100133905
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良夫

【識別番号】100127421
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 さなえ

【公開番号】 特開2006−316039(P2006−316039A)
【公開日】 平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願番号】 特願2005−304923(P2005−304923)