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【発明の名称】 水溶性チオクト酸含有組成物およびその製造方法
【発明者】 【氏名】井上 良計
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区海岸通4番地 株式会社サナルス内

【要約】 【課題】本発明により、優れた安定性を有する水溶液を得ることができる水溶化したチオクト酸含有組成物およびその製造方法を提供する。

【解決手段】本発明は、(a)チオクト酸のエタノール溶液を、シクロデキストリンの水−エタノール混合溶液に滴下して、チオクト酸‐シクロデキストリン含有溶液を形成する工程、および(b)該溶液から水およびエタノールを除去して、チオクト酸とシクロデキストリン混合物を得る工程を含むことを特徴とする水溶性チオクト酸含有組成物およびその製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)チオクト酸のエタノール溶液を、シクロデキストリンの水−エタノール混合溶液に滴下して、チオクト酸‐シクロデキストリン含有溶液を形成する工程、および
(b)該溶液から水およびエタノールを除去して、チオクト酸とシクロデキストリン混合物を得る工程
を含むことを特徴とする水溶性チオクト酸含有組成物およびその製造方法。
【請求項2】
前記シクロデキストリンが、β‐シクロデキストリンである請求項1記載の組成物および方法。
【請求項3】
前記チオクト酸が、チオクト酸およびシクロデキストリンの合計重量に対して、2〜15重量%含まれる請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた安定性を有する水溶液を得ることができる水溶化したチオクト酸含有組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チオクト酸(α‐リポ酸)は、1951年リード(Dr.Lester Reed)等によって単離され、その翌年に分子構造が解明され、20年以上前から欧州では糖尿病合併症予防の有効な治療薬として使用実績があり、1970年にはアメリカで肝臓病患者の治療に成功し、また、現在ではドイツや中国で医薬品として広く使用されている。日本においても、肝機能改善剤、肝解毒剤などの医薬品として広く用いられていたが、2004年に食品への使用が可能となった。
【0003】
チオクト酸は、強力な抗酸化作用を有しており、前述のような糖尿病またはその合併症の予防や肝臓病の予防など生活習慣病を予防、改善する効果に加えて、老化防止や美肌、美白等の美容効果に関しても注目されている。また、抗酸化作用・糖代謝の促進などの多彩な機能を持つチオクト酸は、生命維持のためにヒトの体内でも生合成され、また腸内細菌によっても合成されるため、通常欠乏することはないが極微量で、しかも加齢とともにその生成量は減少すると言われている。野菜や肉類からも摂取することができるが、その含有量はやはり極微量であり、上記効果を期待できる十分な量を接種するのは困難である。そこで、食品、健康食品(例えば健康飲料やサプリメントなど)、化粧品への配合による摂取、吸収が注目されている。
【0004】
チオクト酸は、エタノール、アセトン、エーテル、クロロホルム、ベンゼン等に易溶、NaOHまたはKOH水溶液等の希アルカリ水に可溶であるが、水には溶けにくい性質を有する。また、チオクト酸のナトリウムまたはカリウム塩の中性水溶液は酸化されやすく、光に対しても不安定であり、分解してチオクト酸のオリゴマーおよびポリマーが生じ、ゲル状物が形成されるなど安定性に問題があった。上記のような食品等の用途では、製品または摂取、吸収等の面から、チオクト酸を水溶化し、優れた安定性を有する水溶液を得ることが必要となる。
【0005】
通常、チオクト酸等の脂溶性成分を水溶液または水分散液とするためには、乳化剤等を用いてマイクロエマルジョンとして分散性を向上する方法がある。しかしながら、このような方法を用いると、水相においてチオクト酸が凝固し、それを回避するため加熱すると、前述のように重合が進行してゲル状物が形成される。
【0006】
そのような問題を解決するため、チオクト酸を分子レベルでシクロデキストリンに包接させる方法が提案されている(特許文献1および非特許文献1)。しかしながら、そのような方法では、チオクト酸を水系で包接するか、または単純に配合剤として使用(特許文献2)しているものであったため、溶解度を向上するために加熱すると前述のように重合が進行してゲル状物が形成されて、包接化が十分に行われないという問題点があった。
【特許文献1】特開平7‐188304号公報
【特許文献2】特開平3‐169813号公報
【非特許文献1】ラルフ・イエーガー(Ralf Jaeger)らのFood Style 21、9(4)、53−56(2005年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような従来のチオクト酸含有組成物の有する問題点を解決し、優れた安定性を有する水溶液を得ることができる水溶化したチオクト酸含有組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、チオクト酸をエタノールに溶解した溶液をシクロデキストリンの水−エタノール混合物に滴下し得られた溶液から水およびエタノールを除去して、チオクト酸のシクロデキストリンの混合物とすることによって、優れた安定性を有する水溶液を得ることができる水溶化したチオクト酸含有組成物およびその製造方法が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、
(a)チオクト酸のエタノール溶液を、シクロデキストリンの水−エタノール混合溶液に滴下して、チオクト酸‐シクロデキストリン含有溶液を形成する工程、および
(b)該溶液から水およびエタノールを除去して、チオクト酸とシクロデキストリン混合物を得る工程
を含むことを特徴とする水溶性チオクト酸含有組成物およびその製造方法に関する。
【0010】
更に、本発明を好適に実施するため、上記シクロデキストリンが、β‐シクロデキストリンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、チオクト酸をエタノールに溶解した溶液をシクロデキストリンの水−エタノール混合物に滴下して得られた溶液から水およびエタノールを除去して、チオクト酸とシクロデキストリンとの混合物にすることによって、優れた安定性を有する水溶液を得ることができる水溶化したチオクト酸含有組成物を提供し得たものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を更に詳細に説明する。前述のように、本発明のチオクト酸含有組成物の製造方法は、
(a)チオクト酸のエタノール溶液を、シクロデキストリンの水−エタノール混合溶液に滴下して、チオクト酸‐シクロデキストリン含有溶液を形成する工程、および
(b)該溶液から水およびエタノールを除去して、チオクト酸とシクロデキストリン混合物を得る工程
を含むことを特徴とする。
【0013】
上記工程(a)では、チオクト酸をエタノールに溶解した溶液をシクロデキストリンの水−エタノール混合物に滴下して均一に混合することによってエタノール水溶液を得るが、上記混合には、通常このような用途に用いられる方法および装置を用いることができ、特に限定されない。混合時間は、そのような方法および装置に依存して変化するが、通常、1〜120分、好ましくは5〜30分である。更に混合を十分に行うため、上記シクロデキストリン溶液は、要すれば、加熱溶解(例えば30〜60℃)や超音波処理を行ってもよい。
【0014】
上記チオクト酸の配合量は、チオクト酸およびシクロデキストリンの合計重量に対して、1〜20重量%、好ましくは5〜15重量%、より好ましくは5〜10重量%であることが望ましい。上記チオクト酸の配合量が、1重量%未満であると効果が期待できる有効量である50mg〜100mgの添加をすることが困難であり、20重量%を超えると水溶性でないチオクト酸が遊離し沈殿物が生じ外観の悪化と重合物の発生が懸念される。
【0015】
シクロデキストリンは、澱粉から酵素反応によって合成されるブドウ糖を構成単位とする環状オリゴ糖であり、上記ブドウ糖分子の結合個数により、α‐シクロデキストリン(6個)、β‐シクロデキストリン(7個)、γ‐シクロデキストリン(8個)と呼ばれている。上記環状構造の外側には複数の水酸基を含有して水溶性を示し、一方、内側は疎水性を有し、種々の有機化合物(ゲスト)を取り込んで(包接して)、物理吸着に近い結合力で包接錯体を形成する。このような構造により、シクロデキストリンは包接性を有することが大きな特徴であり、シクロデキストリンを用いた様々な包接化合物が、食品、医療品、化粧品分野にとどまらず、工業、農業分野等の広い用途に使用されている。
【0016】
本発明に用いられるシクロデキストリンは、上記のようにチオクト酸をシクロデキストリンで可溶化することができれば、α‐シクロデキストリン、β‐シクロデキストリン、γ‐シクロデキストリンのいずれであってもよく特に限定されない。しかしながら、前述のように、チオクト酸はエタノールに易溶であり、水には不溶である。更に、α‐およびγ‐シクロデキストリンは水に溶け易いのに対して、β‐シクロデキストリンは水に溶け難いがエタノールまたは水−エタノール溶液には溶解する。また、本発明のチオクト酸含有組成物の製造方法において、チオクト酸をシクロデキストリンで可溶化するために、工程(a)でチオクト酸とシクロデキストリンとを均一に混合するためには、まず両者が溶解する溶媒中で混合することがより効果的であり、更にこの溶媒は安全面から食品等にも使用可能な水またはエタノールを使用することが好ましい。以上のことから、両方を満足するのは、β‐シクロデキストリンと水−エタノールとの組み合わせである。従って、本発明に用いられるシクロデキストリンとしては、β‐シクロデキストリンが好ましい。
【0017】
上記シクロデキストリンの配合量は、チオクト酸およびシクロデキストリンの合計重量に対して、80〜99重量%、好ましくは85〜95重量%、より好ましくは90〜95重量%であることが望ましい。上記シクロデキストリンの配合量が、80重量%未満であるとチオクト酸の溶解が困難になりチオクト酸の遊離が起こり外観の悪化やチオクト酸の重合物の増加が懸念され、99重量%を超えるとチオクト酸の有効量が期待されなくなる。
【0018】
溶媒としての上記水−エタノール(1:1)の配合量は、シクロデキストリンに対して、300〜2000重量%、好ましくは500〜1000重量%、より好ましくは500〜900重量%であることが望ましい。上記エタノールの配合量が、300重量%未満ではシクロデキストリンの溶解が困難であり、2000重量%を超えると溶液が薄くなりすぎ混合物の生産性が悪くなる。水−アルコールの混合比率は1:1に限定されるものでなく4:1〜1:4の重量比で有れば使用可能である。
【0019】
次いで、上記工程(b)では、上記溶液から水−エタノールを除去するが、上記水、エタノールの除去には通常このような用途に用いられる方法および装置を用いることができ、特に限定されない。例えば、ロータリーエバポレーターを用いて得られた固形物を粉砕する方法や、スプレードライ製法により粉末とすることが好ましい。勿論、用途によっては、固形物や粉末とせず、水−エタノール溶液の状態で使用することも可能である。
【0020】
本発明のチオクト酸含有組成物には、上記成分に加えて、食品用の乳化剤、例えば脂肪酸のシュガーエステル、ポリグリセリンエステルや大豆および卵黄レシチン等の添加剤を配合してもよい。上記添加剤の配合量としては、チオクト酸およびシクロデキストリンの合計重量に対して、10〜200重量%、好ましくは20〜100重量%である。
【0021】
本発明の製造方法によって得られるチオクト酸含有組成物は、例えば健康食品用のドリンク剤、ペットボトルや瓶入りの一般飲料、アイスクリーム等の氷菓、乳酸飲料等に使用することができる。
【実施例】
【0022】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)
β‐シクロデキストリン1.8gを40mLの水−エタノール(1:1)に溶解し、チオクト酸0.2gを無水エタノールに溶解したものと混合した。減圧下でロータリーエバポレーターを用いてエタノールを除去した後、得られた固形物Aを粉砕してチオクト酸含有粉末組成物を得た。得られた組成物は、容易に水に溶解し、目視によって濁りは観察されなかった。
【0024】
(実施例2)
α‐シクロデキストリン1.8gを40mLの水−エタノール(1:1)に溶解し、チオクト酸0.2gを無水エタノールに溶解したものと混合した。減圧下でロータリーエバポレーターを用いてエタノールを除去した後、得られた固形物Bを粉砕してチオクト酸含有粉末組成物を得た。得られた組成物は、容易に水に溶解し、目視によって濁りは観察されなかった。
【0025】
(実施例3)
γ‐シクロデキストリン1.8gを40mLの水−エタノール(1:1)に溶解し、チオクト酸0.2gを無水エタノールに溶解したものと混合した。減圧下でロータリーエバポレーターを用いてエタノールを除去した後、得られた固形物Cを粉砕してチオクト酸含有粉末組成物を得た。得られた組成物は、容易に水に溶解するが、目視によって濁りが観察された。
【0026】
(比較例1)
水−エタノールを水にかえてβ‐シクロデキストリン1.8gを40mLの水に溶解し、チオクト酸0.2gを無水エタノールに溶解したものと混合した。混合物中にチオクト酸の不溶解物が発生し減圧下でロータリーエバポレーターを用いて水、エタノールを除去した後、得られた固形物Eを粉砕してチオクト酸含有粉末組成物を得た。得られた組成物は、水に溶解し難く、チオクト酸成分中に重合物が増加した。
【0027】
(比較例2)
チオクト酸0.2gを無水エタノールに溶解したものをそのまま可溶化でんぷん1.8gを溶かした水40mLに分散させた。しかしながら、チオクト酸は可溶化せず水溶性の組成物を得ることは出来なかった。
【0028】
(比較例3)
β‐シクロデキストリン2.0gを20mLの無水エタノールと混合したが、溶解は困難であった。
【0029】
以上の結果から明らかなように、本発明のチオクト酸含有組成物の製造方法を用いて製造された実施例1〜3では、得られた組成物は水溶化されているのに対して、比較例1〜2では、水に溶解しなかった。
【出願人】 【識別番号】505173887
【氏名又は名称】株式会社サナルス
【住所又は居所】東京都世田谷区上馬1丁目32番3号
【出願日】 平成17年5月12日(2005.5.12)
【代理人】 【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆

【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄

【識別番号】100126789
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 裕子

【公開番号】 特開2006−315995(P2006−315995A)
【公開日】 平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願番号】 特願2005−140027(P2005−140027)