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【発明の名称】 眼疾患治療剤
【発明者】 【氏名】塩田 清二

【氏名】関 保

【氏名】篠原 結子

【氏名】中谷 正義

【氏名】瀧 千智

【氏名】西村 茂

【要約】 【課題】眼疾患における網膜の神経細胞の保護・治療に好適な眼疾患治療剤を提供すること。

【解決手段】PACAP(下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド:Pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide)を投与することにより、網膜の主要なグリア細胞(神経膠細胞)であるミュラー細胞(Muller Cell)において内因性生理活性因子IL−6(インターロイキンー6)の産生を促進し、間接的に、視神経を形成する網膜神経節細胞(RGC:Retinal Ganglion Cell)の細胞死を抑制、遅延させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン−6産生促進活性を有する化合物を有効成分とする眼疾患治療剤。
【請求項2】
請求項1の眼疾患治療剤において、インターロイキン−6産生促進活性を有する化合物は下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)またはPACAP化合物であることを特徴とする眼疾患治療剤。
【請求項3】
眼疾患が網膜疾患である請求項2記載の眼疾患治療剤。
【請求項4】
請求項3の眼疾患治療剤は、経口投与剤であることを特徴とする眼疾患治療剤。
【請求項5】
請求項3の眼疾患治療剤は、点眼剤であることを特徴とする眼疾患治療剤。
【請求項6】
請求項3の眼疾患治療剤は、眼軟膏剤であることを特徴とする眼疾患剤。
【請求項7】
請求項3の眼疾患治療剤は、点鼻剤であることを特徴とする眼疾患剤。
【請求項8】
請求項3の眼疾患治療剤は、注射剤であることを特徴とする眼疾患剤。



【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、網膜細胞の細胞死を抑制あるいは、細胞死からの保護を促す眼疾患治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
網膜変性疾患には、その病因や発症様式により多様である。全身疾患に起因する網膜変性疾患では、代表的なものとして糖尿病網膜症や高血圧性網膜症がこれにあたる。これらの疾患の治療には、血糖降下剤または降圧剤の投与など、原因療法を適用することが殆どであるが、これによって網膜神経節細胞死を予防、治療できるとは限らない。ほかにも、網膜血管病変を主症状とする疾患には、網膜動脈閉塞、網膜静脈閉塞、未熟児網膜症などがあるが、いずれも決定的な治療薬は無く、手術療法に頼っているのが現状である。一方、その他の網膜変性疾患である黄斑変性症、網膜色素変性症などにおいても、神経節細胞死が発症に深く関与すると考えられている。
【0003】
一方、脳疾患の治療においては、PACAP(下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド:Pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide)と呼ばれ、中枢神経や末梢組識に広く存在し神経細胞の分化、生存維持や神経分泌系の活性化などに関わるペプチドホルモンが、脳神経細胞の細胞死を抑制することが示され、脳疾患治療の候補となっている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特表平10−505863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、PACAPが網膜の神経細胞にどのような効果を奏するかについての詳細な検討はない。よって、眼疾患における網膜の神経細胞の保護・治療に好適な眼疾患治療剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、様々な実験モデルを用いて鋭意検討したところ、PACAPを投与することで、網膜の主要なグリア細胞(神経膠細胞)であるミュラー細胞(Muller Cell)において内因性生理活性因子IL−6(インターロイキンー6)の産生を促進し、間接的に、視神経を形成する網膜神経節細胞(RGC:Retinal Ganglion Cell)の細胞死を抑制、遅延させることを見出した。
【0006】
このようなPACAPを網膜変性疾患の治療剤として用いる場合、薬理学的に許容される担体、賦型剤、希釈剤などと混合し、各種の医薬組成物として経口的に(たとえば錠剤、カプセル剤、顆粒剤など)または非経口的に(たとえば点眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、注射剤など)投与することができる。
【0007】
また、治療剤の有効成分としてPACAPを化合物の形で用いることもできる。ここでいうPACAP化合物とは、PACAP水和物等のPACAP類縁体を指す。
なお、PACAP化合物以外に治療剤の有効成分としてIL−6の産生を促進するPACAP受容体の非ペプチド性アゴニストを用いてもよい。特に、PAC1受容体に反応する非ペプチド性アゴニストが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の眼疾患治療剤は、網膜ミュラー細胞を介した網膜神経節細胞死抑制効果を有するので、緑内障等の視神経障害疾患および種々の網膜変性疾患、たとえば糖尿病網膜症、高血圧性網膜症、全身性エリテマトーデス、ならびに未熟児網膜症、網膜静脈閉塞症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈周囲炎等の網膜血管障害、網膜剥離や外傷を起因とする炎症や変性、加齢黄斑変性症などの加齢に伴う網膜変性疾患などの予防および治療に有効な薬剤として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
PACAPを硝子体内投与すると、網膜組織においてミュラー細胞のIL-6産生が遅延的に促進されることを確認した。
【0010】
本発明者は、培養ミュラー細胞におけるPACAPのIL-6産生促進効果は、低濃度(10-12M)のPACAPを添加した場合には特異的受容体であるPAC1受容体を介しており、高濃度(10-8M)とでは異なる受容体を介していることを確認した。PAC1受容体は様々な細胞内シグナリング経路を活性化するG-プロテイン結合レセプター(GPCR)の1クラスに属する。中枢神経系においてPAC1受容体の活性化は神経系の発達、機能および生存において重要な役割を果たすことが知られている。このことから、PACAPは網膜において副作用や合併症を避けることができる極めて低濃度で治療および予防薬として使用可能であることが判った。従って、本発明はPAC1受容体のみと相互反応するPACAPまたはPAC1受容体のアゴニストの有効量を投与することを特徴とする。
【0011】
PACAPを網膜変性疾患の治療剤として用いる場合、薬理学的に許容される担体、賦型剤、希釈剤などと混合し、各種の医薬組成物として経口的に(たとえば錠剤、カプセル剤、顆粒剤など)または非経口的に(たとえば点眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、注射剤など)投与することができる。
【0012】
たとえば、経口投与の場合は、所定量の活性成分を含む錠剤を用いる。錠剤は例えば、それ自体または他の補助成分(希釈剤、結合剤、滑沢剤、保存剤など)と共に圧縮または成形により製造することができる。
【0013】
非経口投与の場合は、その投与用組成物中のPACAPの量は、網膜での有効量の10,000倍が好ましい。
【0014】
例えば、PACAPを点眼剤として用いる場合は約0.01%〜1%(w/v)のPACAPを基剤溶媒に加え、水溶液または懸濁液とする。本発明の点眼剤には、緩衝剤(たとえばリン酸塩緩衝剤、ホウ酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、アミノ酸など)、等張化剤(たとえばソルビトール、グルコース、マンニトールなどの糖類、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール類、塩化ナトリウムなどの塩類など)、防腐剤(たとえば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、パラオキシ安息香酸エステル類、ベンジルアルコールなど)、pH調整剤(たとえば塩酸、リン酸、水酸化ナトリウムなど)、増粘剤(たとえばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびその塩など)、可溶化剤(たとえばエタノール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80など)などの各種添加剤を添加してもよい。
また、PACAPを眼軟膏剤として用いる場合、PACAPを通常の眼軟膏基剤と約0.01% − 1%(w/w)になるように混合して製造する。眼軟膏基剤としては、精製ラノリン、白色ワセリン、マクロゴール、プラスチベース、流動パラフィンなどが用いられる。
【0015】
本発明の視神経障害および網膜変性疾患治療剤には、上記において具体的に挙げた成分の他にも、他の薬効成分、あるいは当業界で使用されている他成分(香味剤など)を含有させてもよい。
【0016】
以下に本発明の試験例を示す。これらにより、本発明の効果を明らかにするものであって、本発明の範囲が限定されるものではない。
【0017】
<試験例1>
ラット網膜由来培養ミュラー細胞を使用して、PACAP38のIL-6産生促進効果を検討した。なお、PACAPにはアミノ酸38残基と27残基のPACAP38とPACAP27の2つの分子様式があるが、ここではPACAP38を用いた。
【0018】
(ミュラー細胞の単離および培養)
14日齢のWister/ST 系ラット(20匹)をジエチルエーテル麻酔下で腹大動脈切断により失血死させた。40眼を直ちに摘出し、25mM HEPES 及び抗生物質(100 U/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン、0.25 μg/mL アンフォテリシンB)を含むDullbecco's modified minimum essential medium (DMEM)中に一晩、室温遮光下で浸漬した。次に0.1%トリプシンおよび70 U/mL コラゲナーゼを含むDMEM中に眼球を移し、37℃で60分間インキュベートした。その後、眼球から網膜を分離し、抗生物質および10%FBSを添加したDMEM(培養用培地)中に移した(8網膜/10mL DMEM)。先端を細くしたパスツールピペットでピペッティングし、小凝集塊になるまで網膜を分散・懸濁させた。この細胞懸濁液をポリスチレン製シャーレ(旭テクノガラス)上に播種し、5%CO2/95%air の環境下で37℃保持にて培養した。播種5日後に、培養液中に浮遊またはシャーレ底面に付着している凝集塊および細胞残さは、新しい培養用培地でピペッティングすることによりほぼ完全に取り除いた。その後、1週間に3日の割合で培地交換をし、ほぼコンフルエントの状態になるまで培養した。
【0019】
(試験方法)
実験にはP2の細胞を使用した。すなわち、網膜から単離・培養し、コンフルエントになったミュラー細胞を継代し(P1)、さらにP1のミュラー細胞がほぼコンフルエントになった状態で、以下の様に実験に使用した。
【0020】
トリプシンにてミュラー細胞をシャーレから剥がした後、24well培養プレートに播種し(5×104cells/500μL/well)、培養用培地にて培養した。24時間後に培地を血清を含まないDMEMに置換した。更に24時間培養した後、PACAP38(10-12M、10-9M〜10-6M)を添加し、24時間培養した。培養プレートを軽く遠心して不純物を沈殿させてから、450μLの培養上清を回収した。
回収したミュラー細胞培養上清中のIL-6濃度は、IL-6依存性マウスのハイブリドーマサブクローンであるB9細胞を用いて測定した。B9細胞は、25mM HEPES、10% FBS、1%antibiotic-antimycotic solutionを含むRPMI1640に、20 hybridoma growth units/mLのヒトリコンビナントIL-6を添加した培地にて、5%CO2/95%air、37℃の環境下で培養した。各サンプル2μLを、IL-6非添加培地を198μL/well入れた96wellプレートに添加し、順次8倍希釈した。続いて、各wellにB9細胞懸濁液(2-4×104/mL)を100μL添加して、72時間培養した。IL-6のバイオアッセイは、B9細胞の増殖をAlamar Blueによる蛍光強度として定量化した。
【0021】
結果を図1に示す。PACAP38無添加の場合、培養ミュラー細胞はIL-6を殆ど産生していない。一方、PACAP38を添加すると培養液中のIL-6濃度は有意に増加した(p < 0.01)。しかも、PACAP38添加量が10-12Mという低濃度でも、10-6M添加時と同程度のIL-6産生量が認められた。 この結果から、微量(pM、nMオーダー)のPACAP38は、培養ミュラー細胞においてIL-6産生促進効果を有することが明らかになった。
【0022】
<試験例2>
ミュラー細胞におけるPACAP38のIL-6産生促進効果はPACAPに特異的な効果であるか否かを検証した。本実験においては、競合的PACAP受容体拮抗物質であるPACAP6-38を用いて、PACAP38によるIL-6産生促進効果が阻害されるかを検討した。
【0023】
(試験方法)
試験例1と同様にラット網膜由来ミュラー細胞を培養した。無血清培地下にて24時間培養後、PACAP38(10-12Mまたは10-8M)とPACAP6-38(10-8Mまたは10-6M)を添加し、さらに24時間培養した。実験例1と同様に、細胞上清を回収してIL-6濃度を測定した。
【0024】
結果を図2に示す。PACAP38のIL-6効果は、PACAP6-38によって阻害されることが明らかになった。また、その阻害効果は低濃度(10-12M)PACAP38添加群においてより顕著に認められた。
【0025】
以上の結果から、実験例1において認められたミュラー細胞培養液中のIL-6濃度の増加は、PACAP38によるものであることが確認できた。さらに、PACAP38は10-12M添加した場合ではPAC1受容体を、10-8M添加した場合ではPAC1とは異なる受容体を介してIL-6産生を促進していることが判明した。
【0026】
<試験例3>
PACAP38溶液を硝子体内に投与し、網膜組織においてIL-6産生の促進に効果があるのか否かを検討した。
【0027】
(投与液の調製)
PACAP38は滅菌生理食塩水にて溶解し、3.3 nmol/mLとした。投与直前まで氷冷下保存した。
【0028】
(実験方法)
実験には8週齢の雄性Wistar/STラットを供した。ペントバルビタールナトリウムの腹腔内投与による麻酔後、角膜輪部よりおよそ1mm後方から30G針を装着したハミルトン製ガラスシリンジにて、投与液を1眼につき3μLずつ、すなわち10-11 molのPACAPが網膜に到達するよう硝子体内に注射した。PACAP投与1、2、3および7日後に、ジエチルエーテル吸入麻酔下で腹大動脈切断により放血死させ、その後、両眼を摘出し、氷冷4%パラホルムアルデヒド‐0.1M リン酸緩衝液(pH7.4)に浸漬し、固定した。固定した眼球は、スクロース置換した後に凍結包埋し、10μm厚の凍結切片を作製した。抗IL-6抗体を用いて各凍結切片に蛍光免疫染色を施し、網膜におけるIL-6の発現を観察した。
【0029】
結果を図3に示す。PACAP未投与眼および投与1日後の網膜においてはIL-6の発現は認められなかった。一方、PACAP投与2日後、3日後には網膜の内境界膜から外顆粒層にかけて染まるIL-6陽性細胞が多く認められた。7日後にはIL-6の発現は殆ど認められなかった。このIL-6陽性細胞はその局在および形態からミュラー細胞であることが確認された。以上の結果から、PACAPの硝子体内投与によりミュラー細胞において遅延的にIL-6産生が促進されることが明らかとなった。
【0030】
<試験例4>
カイニン酸惹起網膜神経節細胞死動物モデルを用いて網膜神経保護効果を調べた。本動物モデルは緑内障の成因となるグルタミン酸神経細胞死を誘発し、緑内障に類似した病態(網膜神経節細胞のアポトーシス)を呈するため、使用した。
【0031】
(実験方法)
実験には8週齢の雄性Wistar/STラットを供した。ペントバルビタールナトリウムの腹腔内投与による麻酔後、滅菌生理食塩水に溶解したPACAP38(10pmol)または投与溶媒(生理食塩水)をネガティブコントロールとして試験例3と同様に1回硝子体内に注射した。PACAP投与の2日後にカイニン酸(5 nmol)を全動物にケタミンとセラクタール混合液による麻酔下で1回硝子体内注射した。カイニン酸投与の7日後にジエチルエーテル吸入麻酔下で腹大動脈切断により放血死させ、全動物の眼球を摘出した。摘出した眼球は、1% ホルムアルデヒド‐1.25% グルタールアルデヒド混合固定液に浸漬固定した。固定した眼球はパラフィン包埋後、視神経乳頭を横断する4μm厚の網膜組織切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色を施した。PACAP38の効果は、組織標本において視神経乳頭から0.5 - 1.7 mmの領域で神経節細胞層に残存する細胞数を計測することにより判定した。
結果を図4に示す。生理食塩水を投与したコントロール群における残存細胞数の平均値(n=8)は24.0 cells/mmであり、無処置群の43%まで減少した。PACAPを投与した群の平均細胞数は34.8 cells/mmであり、コントロール群に比べカイニン酸に起因する細胞数減少の抑制が有意(p < 0.05)に認められた。
【0032】
<試験例5>
試験例4で確認されたPACAP38の網膜神経節細胞死抑制効果に、Muller細胞において遅発性に発現するIL-6(試験例3)が関与するか否かを明らかにするため、同動物モデルを用いて網膜組織におけるニューロフィラメント(リン酸化ニューロフィラメント-H; pNF-H)蛋白量を指標に検証した。pNF-Hは網膜神経節細胞に特異的に発現する蛋白であり、網膜組織中の本蛋白含量が神経節細胞死の程度を見積もる定量的な指標となることが知られている。
【0033】
(実験方法)
試験群として試験例4と同様に10pmolのPACAP38をカイニン酸暴露の2日前に硝子体内へ注射する群(前処理群)とカイニン酸と同時に同量のPACAPを注射する群(同時処理群)を設定した。カイニン酸暴露の7日後に網膜組織を採取し、pNF-H蛋白を抽出した。網膜組織中のpNF-H蛋白量は、サンドウィッチELISA法にて測定した。
結果を図5に示す。PACAP38前処理群では、コントロールとした生理食塩水群と比較してカイニン酸暴露により惹起される網膜組織中pNF-H蛋白量の減少を有意(P < 0.01)に抑制した。一方、PACAP38同時処理群ではpNF-H蛋白量の減少を抑制する効果は全く認められなかった。この結果は、PACAPの網膜神経保護効果にMuller細胞に遅発性に発現するIL-6が関与することを支持している。
【0034】
以上のように、極微量のPACAPが網膜の構成・機能上に重要な役割をもつグリア細胞であるミュラー細胞において、神経保護因子IL-6の産生を、PAC1受容体を介して促進し、網膜神経節細胞死の防御に寄与することがin vitroおよびin vivoの両試験例において証明された。本発明の予防および治療剤は、網膜ミュラー細胞を介した網膜神経節細胞死抑制効果を有するので、緑内障等の視神経障害疾患および種々の網膜変性疾患、たとえば糖尿病網膜症、高血圧性網膜症、全身性エリテマトーデス、ならびに未熟児網膜症、網膜静脈閉塞症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈周囲炎等の網膜血管障害、網膜剥離や外傷を起因とする炎症や変性、加齢黄斑変性症などの加齢に伴う網膜変性疾患などの予防および治療に有効な薬剤として用いることができる。なお、以上説明した試験例ではPACAP38について検討しているが、PACAP27でも同様である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】培養ミュラー細胞にPACAP38を添加した24時間後における培養液中のIL-6産生量を示すグラフである。
【図2】培養ミュラー細胞におけるPACAP38のIL-6産生促進効果に対するPACAP受容体拮抗物質の阻害効果を示すグラフである。
【図3】PACAP38を硝子体内に投与した後の網膜組織における抗IL-6免疫染色の結果を示す蛍光顕微鏡写真である。
【図4】カイニン酸誘発網膜神経節細胞死モデルにおいてPACAP38を硝子体内に投与した網膜組織の神経節細胞層に残存する細胞数を示すグラフである。
【図5】カイニン酸誘発網膜神経節細胞死モデルにおいてPACAP38を前投与またはカイニン酸と同時投与した後の網膜組織中pNF-H含量を示すグラフである。
【出願人】 【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
【出願日】 平成17年4月27日(2005.4.27)
【代理人】
【公開番号】 特開2006−306770(P2006−306770A)
【公開日】 平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願番号】 特願2005−130609(P2005−130609)