| 【発明の名称】 |
トラニラスト水性点眼液 |
| 【発明者】 |
【氏名】上竹 順久 【住所又は居所】愛知県名古屋市南区西桜町76番地 株式会社日本点眼薬研究所内
【氏名】末石 俊彦 【住所又は居所】愛知県名古屋市南区西桜町76番地 株式会社日本点眼薬研究所内
|
| 【要約】 |
【課題】トラニラストの溶解安定性を改善し、さらには、眼刺激の少ない点眼薬(水性点眼液)を提供すること。
【解決手段】トラニラストを有効成分として、適宜、金属イオンとともに水溶液中に含有するトラニラスト水性点眼薬液。水溶液中における総金属イオンのトラニラストに対するモル濃度比を、総金属イオン/トラニラスト≦0.4とする。特に、総金属イオン/トラニラスト=0とすることが好ましい。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 トラニラストを有効成分として、適宜、金属イオンとともに水溶液中に含有するトラニラスト水性点眼薬液において、 前記水溶液中における総金属イオンのトラニラストに対するモル濃度比が、総金属イオン/トラニラスト≦0.4であることを特徴とするトラニラスト水性点眼液。 【請求項2】 前記総金属イオン/トラニラスト=0で金属イオン非含有タイプであることを特徴とする請求項1記載のトラニラスト水性点眼液。 【請求項3】 さらに、金属イオン非含有タイプの緩衝剤とアルカノールアミンとの群から選択されるpH調節剤とを含有することを特徴とする請求項2記載のトラニラスト水性点眼液。 【請求項4】 前記緩衝剤がホウ酸及び/又はクエン酸であり、前記アルカノールアミンがトロメタモール(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)及び/又はモノエタノールアミンであることを特徴とする請求項3記載のトラニラスト水性点眼液。 【請求項5】 開栓後も無菌状態を確保し得る無菌点眼容器に充填され、角膜上皮障害性の防腐剤・界面活性剤の非含有タイプであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の容器充填トラニラスト水性点眼液。 【請求項6】 前記、無菌点眼容器が、外層の内面に該外層から剥離可能な内層を積層形成してなるデラミボトルと、該デラミボトルの口部に取り付けられた栓体とを備え、前記外層には、内層と外層との間に外気を導入する為の通気孔が設けられ、前記内層の内部の収容された点眼液を吐出するための吐出路が設けられ、該吐出路にフィルターと逆止弁が設けられている構成であることを特徴とする請求項5記載の容器充填トラニラスト水性点眼液。 【請求項7】 トラニラストを有効成分として、適宜、金属イオンとともに水溶液中に含有するトラニラスト水溶性液剤において、 前記水溶液中における総金属イオンのトラニラストに対するモル濃度比が、総金属イオン/トラニラスト≦0.4であることを特徴とするトラニラスト水溶液製剤。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、トラニラストを有効成分として、適宜、金属イオンとともに、水溶液中に含有するトラニラスト水性点眼薬液に関する。さらに詳しくは、長期間及び低温における溶解安定性に優れているとともに、眼刺激性の改善が容易なトラニラスト水性点眼液(点眼剤)に関し、さらには、防腐剤の添加も不要となる容器充填トラニラスト水性点眼薬液に係る発明である。 【背景技術】 【0002】 トラニラスト〔化学名:N−(3,4−ジメトキシシンナモイル)アントラニル酸〕はアレルギー反応によるケミカルメディエーター遊離抑制作用を有し、アレルギーに起因する各種疾患の治療剤として有用であることが知られている(非特許文献1参照) 他方、点眼剤は使用中の微生物汚染を防止するという安全性の観点から、ほとんどの点眼剤には防腐剤が添加されている。しかし、点眼剤に防腐剤を添加することにより角膜上皮障害の原因となることが知られており、患者の使用に際しては大きな問題となっていた(非特許文献2参照)。 【0003】 トラニラストを主成分とする点眼剤として0.5%製剤が臨床的に用いられているが、これらの点眼剤には、保存剤(防腐剤)として塩化ベンザルコニウムやパラベン等が添加されており、上記の問題が存在している。 【0004】 また、現在市販されているトラニラストを有効成分とする点眼剤はトラニラスト(塩)自体が難溶性(トラニラストは、通常、薬理学的に許容される塩の形態で合成されたものを使用する。)であるため、通常の方法では安定な水溶液製剤を製造することが困難であり、これまで種々の提案がなされている。 【0005】 例えば、トラニラストに溶解補助剤としてポリビニルピロリドン及び必要に応じ塩基性物質を添加した透明な水溶液製剤(特許文献1)、モノエタノールアミン、トロメタモール等の有機アミンに非イオン性界面活性剤を配合した水溶液製剤(特許文献2)、アルカノールアミン水溶液を溶解補助剤としてなる製剤(特許文献3)、トラニラスト、塩基性物質、ポリビニルピロリドンにメチルセルロース又はプロピルセルロースを含有し、界面活性剤を有しない水溶液(特許文献4)、ポリビニルピロリドン及び非イオン性界面活性剤を含有する点眼剤(特許文献5)等が提示されている。 【0006】 しかし、これらの水溶液製剤(トラニラスト水性点眼薬液)は長期保存時、特に冷所保管した場合、溶解安定性に問題がある、すなわち、トラニラストの結晶が析出しやすいことが分かった。 【0007】 なお、本願出願人は、トラニラスト点眼剤(水性点眼液)に関するものではないが、ジクロフェナクナトリウムを有効成分とするする点眼剤において、防腐剤レスないし防腐剤フリーとするために、使用に際して開栓後も無菌状態を確保し得る無菌点眼容器に充填する技術を提案している(特許文献6)。 【非特許文献1】「医療薬日本医薬集」2003年、じほう社、p1401〜1403 【非特許文献2】「眼科New Insight 第2巻、点眼薬−常識と非常識」1994年、メジカルビュー社、p36〜43 【特許文献1】特公平7−116029号公報 【特許文献2】特開平11−302162号公報 【特許文献3】特開2001−122776号公報 【特許文献4】特開2001−354557号公報 【特許文献5】特開2002−302440号公報 【特許文献6】特開2004−51593号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明は、上記にかんがみて、トラニラストの溶解安定性を改善し、さらには、眼刺激の少ない点眼薬(水性点眼液)を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意開発に努力をする過程で、下記の新たな知見に到達した。 【0010】 製剤に配合される金属塩を含有するトラニラスト点眼剤は、長期間保存した場合や低温保存した場合に、水溶液中で金属塩から分離する金属イオンが、イオン化して溶解していたトラニラストイオンと反応して難溶性塩(結晶)となって析出する。 【0011】 溶解補助剤としての塩基性塩により、トラニラストは、見掛け上溶解するが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンと再会合し、それぞれ、トラニラストナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の塩を形成して、結晶を生成する。 【0012】 そして、総金属イオンのトラニラストに対する水溶液中のモル濃度比が約0.4以下(総金属イオン/トラニラスト≦0.4)、又は金属イオンを含有せず(モル比が0)にすれば、溶解安定性に優れる。 【0013】 そして、通常、金属イオン非含有タイプの緩衝剤とアルカノールアミンの群から選択されるpH調節剤とを含有させて、トラニラスト水性点眼液とする。ここで、緩衝剤がホウ酸及び/又はクエン酸であり、前記アルカノールアミンがトロメタモール(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)及び/又はモノエタノールアミンであることが望ましい。それらは、さらに、溶解安定性の増大に寄与するためである。すなわち、溶解補助剤である界面活性剤を配合しないでも長期間さらには低温時の保存において結晶を析出しない。 【0014】 また、開栓後も無菌状態を確保し得る無菌点眼容器に充填され、角膜上皮障害性の防腐剤・界面活性剤の非含有タイプである容器充填トラニラスト水性点眼薬液とすれば、点眼時の刺激を低減しかつ結膜の充血を軽減できる。 【手段の詳細な説明】 【0015】 以下、本発明について、さらに、詳細に説明をする。 【0016】 本発明者らは、トラニラストまたはその薬理学的に許容される塩に塩基性物質を溶解補助剤として使用することは前記刊行物(特許文献1〜4等)により公知であり追試を行ったが、長期間保存した場合や低温保存時に結晶を析出することが分かった。 【0017】 そして、前述の如く、研究開発の過程で、トラニラストは、アルカリ塩やアルカリ土類塩等の塩基性物質を溶解補助剤として加えた場合、一時的に溶解するが、トラニラストイオンと金属塩から遊離した金属イオンが再会合(反応)し、低温や長期保存時に金属塩の結晶を生じるメカニズムが判明した。 【0018】 さらに研究を進めた結果、トラニラストのモル濃度と水溶液中に存在する各金属イオンのモル濃度の総和とのモル比が、すなわち、トラニラストに対する金属イオンのモル濃度比(総金属イオン/トラニラスト)が約0.4以下(金属イオン/トラニラスト≦0.4)の場合に、結晶を析出しないことが明らかとなった。このうち、金属イオンを含まない(総金属イオン/トラニラスト=0)の場合が最も好ましいことも分かった。 【0019】 ここで金属イオンの供与体としては、溶解補助剤や等張化剤等として配合された各種塩類、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩や、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩を挙げることができる。 【0020】 より具体的には、溶解補助剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、ホウ砂、リン酸3ナトリウム等を、等張化剤として、塩化ナトリウム、塩化カルシウム等をそれぞれ例示できる。 【0021】 トラニラストの溶解は、pH7以上とすればよく、pH調整剤や緩衝剤を用い所望のpHに調整することができる。pHは、点眼時の刺激性の見地から、7.5〜9.0、さらには,7.5〜8.5の範囲が望ましい。 【0022】 上記緩衝剤として、金属イオン含有タイプとする場合は、前記の如く、総金属イオンの含有量において、モル濃度比(総金属イオン/トラニラスト)が約0.4以下、望ましくは、0.1以下とする。当然、総金属イオン/トラニラスト=0の金属イオン非含有タイプの点眼剤ととすることがさらに望ましい。 【0023】 このため、緩衝剤としては、ホウ酸、クエン酸、リン酸、酒石酸が望ましい。また、pH調節剤としては、点眼剤に汎用されている有機アミン、特に、アルカノールアミンが望ましい。アルカノールアミンとしては、トロメタモール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等を例示できる。 【0024】 さらに望ましくは、前記緩衝剤がホウ酸、クエン酸(特にホウ酸)であり、前記pH調節剤がトロメタモール、モノエタノールアミン(特にモノエタノールアミン)であることが望ましい。なお、「トロメタモール」の化合物名は「2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール」である。 【0025】 それらの配合量は、例えば、トラニラスト0.5g/100mLの処方において、ホウ酸:0.5〜2.5、さらには1.0〜2.0g/100mLと、トロメタモール又はモノエタノール:0.05〜1.0g/100mL、さらには、0.1〜0.5g/100mLとすることが望ましい。 【0026】 本発明の点眼剤においては、上記添加剤以外に、等張化剤、安定化剤、酸化防止剤、などの添加剤を使用できるが、前記同様、総金属イオンの含有量において、モル濃度比(総金属イオン/トラニラスト)が約0.4以下、望ましくは、0.1以下とする。当然、総金属イオン/トラニラスト=0の金属イオン非含有タイプの点眼剤ととすることがさらに望ましい。 【0027】 上記等張化剤として、マンニトール、グリセリン、アミノエチルスルホン酸、ブドウ糖、ソルビトール、等を例示できる。 【0028】 上記安定化剤として、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、イソプロパノール、ブチレングリコール、キシリトール(以上「多価アルコール類」)、イプシロンアミノカプロン酸、グリシン、ヒアルロン酸、ステアリン酸グリセリン、ポリエチレングリコール類、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、エデト酸、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール(以上「酸類」)、等を例示できる。 【0029】 上記抗酸化剤としては、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、塩酸システイン、等を例示できる。 【0030】 上記構成により、本発明におけるトラニラストの白濁化や結晶析出を起こさず、安定で澄明な点眼剤(水性点眼液)が得られる。 【0031】 そして、本発明では十分な溶解性や安定性を示すため、従来、溶解補助剤の目的で添加されていた、塩化ベンザルコニウムや塩化ベンゼトニウム等の4級カチオン性の界面活性剤やポリソルベート等の非イオン性界面活性剤である溶解補助剤を本発明では全く必要としない。 【0032】 前述の如く、界面活性剤は角膜上皮障害の原因となるため、配合することは好ましくないことは周知の事実である。 【0033】 さらに本発明では、上記構成の点眼剤は、開栓後も無菌状態を確保し得る無菌点眼容器に充填した容器充填点眼剤として使用することが望ましい。当該無菌点眼容器としては、例えば、点眼液を吐出する流路に、0.22μm以下の細孔を有するフィルターを設けたり、逆流防止弁を設けたりしたものが使用できる。 【0034】 当該構成とすることにより、通常、患者の使用時に点眼容器のノズルが眼球や涙液に接触して、細菌や真菌が点眼容器内の薬液を汚染することを防止することを目的として配合されている角膜上皮障害性の防腐剤・界面活性剤、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルへキジン、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等、さらには、パラオキシ安息香酸エステル類を配合しない処方(製剤)が可能となる。 【0035】 上記無菌点眼容器としては、本願出願人が先に提案した前記特許文献6に記載の下記構造を備えたものが望ましい(図1参照)。 【0036】 本無菌点眼容器1は、外層21の内面に該外層21から剥離可能な内層22を積層形成してなるデラミボトル2と該ボトル2の口部に取り付けられた栓体3とを備え、外層21には内層22と外層21との間に外気を導入する為の通気孔4が設けられ、栓体3には内層22の内部に収容された点眼液を吐出(噴出)するための吐出路10が設けられ、該吐出路10にフィルター7と逆止弁8とが設けられており、フィルター7は逆支弁8よりも吐出下流側に配置されている。 【0037】 さらに、この容器の特徴として、点眼時、内溶液(点眼剤)を吐出すると、容器内に残存する内溶液の容積はその容積だけ小さくなり、デラミボトル(delaminate-bottle)の剥離可能な内層が外層より剥離し、溶液変化に合わせて縮小するため、内溶液に空気の吸い込みがない。このため、主剤の分解を抑制することができる。 【0038】 本発明の水溶液製剤は、有効成分のトラニラストを約0.5〜3%含有させることができ、後述の実施例で示す如く、極めて安定であり5℃の温度条件下で約6ヶ月保存後も浮遊物、沈殿物、結晶などの析出、白濁化などは全く認められなかった。 【0039】 さらに、防腐剤及び界面活性剤を配合しない水溶液製剤は、結膜の充血が低減され、また、該容器に充填された水溶液製剤は、主剤の分解が抑えられた。 【実施例】 【0040】 本発明の効果を確認するために行った実施例及び比較例について説明をする。 【0041】 本発明の技術的範囲は、以下の実施例に限定されるものではなく、各請求項の記載の範囲内で種々の態様に及ぶものである。 【0042】 なお、以下において、質量濃度(g/100mL:w/v%)のモル濃度(mmol/L)の換算に使用した各化合物の相対分子質量(分子量)及び各元素の相対原子質量(原子量)を表1に示す。 【0043】 【表1】
<冷所保管試験> 表2〜5に示す処方で、実施例1〜20及び比較例1〜18の各試料(サンプル)を調製した。調製は、常法に従って表中の各成分を攪拌し、それらを均一に溶解させ、最終的には、精製水で全量100dm3(mL)とした。これらの各試料は、最終的に塩酸(1mol/L)を適宜添加してpH7.5〜8.5の範囲となるように調節した。 【0044】 【表2】
【0045】 【表3】
【0046】 【表4】
【0047】 【表5】
上記で調製した試料を5℃にて12週間保存し、結晶析出の有無を観察した。 【0048】 そして、当該試験結果を、各配合量に対するモル濃度と5℃保管時の結晶析出の有無との関係にしてまとめたものを表6〜9(表2〜5の処方にそれぞれ対応)に、及び、「トラニラスト/総金属イオンモル濃度比」と結晶析出の有無を図2に示す。 【0049】 以上の結果から、金属イオンが存在しない場合、あるいは、トラニラストに対する総金属イオンのモル濃度の比が約0.373以下の場合、結晶が析出しないことが確認されるともん、逆に総モル濃度比が約0.43以上の場合に結晶析出が確認される。すなわち、総金属イオン/トラニラスト≒0.4のモル濃度比が臨界値であることが分かる。 【0050】 【表6】
【0051】 【表7】
【0052】 【表8】
【0053】 【表9】
<刺激試験> 表10に示す処方で、実施例21〜23及び比較例19〜23の各点眼剤試料(サンプル)を、上記冷所保管試験と同様にして調製した。なお、薬液pHは、塩酸(1mol/L)を使用して7.5〜8.5の範囲内になるように調節した。 【0054】 【表10】
そして、健常人20名を対象に眼刺激性試験を実施した。方法は、被験者の片眼に各実施例試料及び対照例試料の試験液を1滴づつ点眼し、そのときの刺激性と結膜の充血による発赤を4段階で評価し、スコア化し、平均値で比較した。 【0055】 −:刺激なし :0点 −;充血なし :0点 ±:弱い刺激あり:1点 ±;わずかに充血あり :1点 +:刺激あり :2点 +;明瞭な充血あり :2点 ++:強い刺激あり:3点 ++ ;強い充血あり :3点 それらの結果を表11・12に示す。各実施例試料は極めて刺激係数及び充血の度合いが低いことがわかる。これらの結果から、防腐剤を配合しないことにより、点眼時の刺激のみならず充血をも改善できることが明らかとなった。 【0056】 【表11】
【0057】 【表12】
<安定性試験1> 上記刺激試験における実施例21・22及び比較例21、22とそれぞれ同一処方の点眼剤試料を市販の点眼用ポリエチレン容器にそれそれ充填し、キャップで密閉して、実施例21´・22´及び比較例21´・22´の各充填試料とした。そして、それらを5℃で保存して、1・2・4・6ヶ月経過時における各トラニラスト残存率を計測して、安定性を比較した。なお、トラニラスト残存率は、調製直後の初期試料中のトラニラスト量及び各時間経過後の各試料中の残存トラニラスト量を、高速液体クロマトグラフを用いて定量し、 残存率(%)=(残存トラニラスト量/初期トラニラスト量) に代入して求めた。 【0058】 それらの結果を表13及び図3に示す。実施例では、定量値は試験開始時に比べ、6ヶ月経過後においても特に変化は見られなかった。一方、比較例では4ヶ月目より、顕著に沈殿物の生成と定量値の低下が認められた。この沈殿物は、トラニラスト塩であり、低温保存により徐々に結晶が析出し、この結晶が核になり急激に結晶が析出し大きく定量値が低下したものと考えられる。 【0059】 【表13】
<安定性試験2> 上記安定性試験1では、実施例の処方における低温時の安定性が確認されたので、更に本発明で示される図1に示す無菌容器を用いた場合、通常の点眼容器より安定性が改善されることを以下の実験を行い確認した。 【0060】 先の実施例21・22と同一処方を用いて調製した試料点眼剤をそれぞれ用いて、本発明の図1に示す構造の無菌容器に充填して実施例21´´、22´´の、ポリエチレン製点眼容器に充填し対照例21、22の各充填容器試料とした。そして、それらを、60℃雰囲気(恒温槽内)におき、各0.5・1・1.5・2ヶ月の各経過後における各トラニラスト残存率を測定して、安定性の比較を行った。 【0061】 その結果を表14及び図4に示す。実施例は対照例に比して安定性が改善された。これは、当該無菌容器は空気の流入がない構造であり、空気中の酸素による酸化分解が抑制されたためであると考えられる。 【0062】 以上のことから本発明の水溶液製剤は、極めて安定であり、更に、防腐剤及び界面活性剤を配合しないため、点眼時の刺激や結膜の充血が低減され、また、該発明容器に充填された水溶液製剤は、主剤の分解が抑えられた。 【0063】 【表14】
【産業上の利用可能性】 【0064】 本発明のトラニラスト水性点眼液は、眼刺激性の低下に加えて、極めて保存安定性に優れているため、本発明の技術的思想は、点眼液以外の、点鼻液や注射液などのトラニラスト水溶液製剤への適用も期待できる。 【図面の簡単な説明】 【0065】 【図1】本発明のトラニラスト水性点眼液(点眼剤)を充填するのに好適な無菌点眼容器の一例を示す概略断面図である。 【図2】冷所保管試験における「総金属イオン/トラニラスト濃度比」と「結晶析出の有無」との関係を示したグラフ図である。 【図3】安定性試験試験1(雰囲気温度:5℃)における保存期間とトラニラスト残存率との関係を示すグラフ図である。 【図4】安定性試験試験2(雰囲気温度:60℃)における保存期間とトラニラスト残存率との関係を示すグラフ図である。 【符号の説明】 【0066】 1 無菌点眼容器 2 デラミボトル 3 栓体 6 弁孔 21 外層 22 内層
|
| 【出願人】 |
【識別番号】391009523 【氏名又は名称】株式会社日本点眼薬研究所 【住所又は居所】愛知県名古屋市南区西桜町76番地
|
| 【出願日】 |
平成17年4月27日(2005.4.27) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100076473 【弁理士】 【氏名又は名称】飯田 昭夫
|
| 【公開番号】 |
特開2006−306765(P2006−306765A) |
| 【公開日】 |
平成18年11月9日(2006.11.9) |
| 【出願番号】 |
特願2005−129865(P2005−129865) |
|