| 【発明の名称】 |
リポソーム製剤の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】吉野 敬亮 【住所又は居所】神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500番地 テルモ株式会社内
【氏名】宮岡 象三 【住所又は居所】神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500番地 テルモ株式会社内
【氏名】黒崎 靖夫 【住所又は居所】神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500番地 テルモ株式会社内
【氏名】上田 努 【住所又は居所】神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500番地 テルモ株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】リポソーム製剤の工業的レベルにおける製造法において、製造装置などへの吸着、あるいはリポソーム間の凝集などを防止しつつ、リポソーム形成工程、未封入薬物除去工程び無菌化工程において、粒子径等の物理化学的安定性を確保しながら安定的に処理し、望むべき物理化学的特性を有するリポソームを得る製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のリポソームの製造方法は、リポソームがリポソーム外液に分散されてなるリポソーム分散液を得るリポソーム形成工程と、該リポソームの外表面に親水性高分子を修飾する親水性高分子修飾工程と、リポソーム外液処理工程とをこの順序で実施するものであって、該親水性高分子修飾工程は、前記リポソーム形成工程における処理温度以上の温度を維持した状態で実施されるものである。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 リポソーム分散液を得るリポソーム形成工程と、該リポソームの外表面に親水性高分子を修飾する親水性高分子修飾工程と、リポソームに対して物理的安定性を損なうような外力よりなる負荷を与え得るリポソーム分散液処理工程とを有するリポソーム製剤の製造方法であって、該親水性高分子修飾工程は、前記リポソーム形成工程完了後にリポソーム形成工程における処理温度以上の温度を維持した状態で実施されることを特徴とするリポソーム製剤の製造方法。 【請求項2】 前記分散液処理工程は、未封入薬物除去工程、無菌化工程またはリポソーム外液置換工程のいずれか1以上である請求項1に記載のリポソーム製剤の製造方法。 【請求項3】 前記リポソーム形成工程において得られたリポソーム分散液には有機溶媒が含有されるものである請求項1または2に記載のリポソーム製剤の製造方法。 【請求項4】 前記有機溶媒は、リポソーム形成工程に先立つリポソーム構成脂質を溶媒中で混合均一化する均一化工程において用いられる溶媒に由来するものである請求項3に記載のリポソーム製剤の製造方法。 【請求項5】 前記有機溶媒は、アルコールである請求項3または4に記載のリポソーム製剤の製造方法。 【請求項6】 前記親水性高分子添加工程における温度は、脂質膜相転移温度以上の温度である請求項1〜5のいずれかに記載のリポソーム製剤の製造方法。 【請求項7】 前記親水性高分子添加工程は、前記リポソーム形成工程直後から180分以内に実施されるものである請求項1〜6のいずれかに記載のリポソーム製剤の製造方法。 【請求項8】 前記親水性高分子添加工程における親水性高分子導入率は、前記リポソーム形成工程で得られたリポソーム分散液中に分散されているリポソームを構成する総脂質に対して0.01〜20mol%ある請求項1〜7のいずれかに記載のリポソーム製剤の製造方法。 【請求項9】 前記親水性高分子は、ポリエチレングリコールである請求項1〜8のいずれかに記載のリポソーム製剤の製造方法。 【請求項10】 前記親水性高分子は、分子量500〜15,000ダルトンのポリエチレングリコールである請求項9に記載のリポソーム製剤の製造方法。 【請求項11】 前記リポソームの平均粒子径は、50〜250nmである請求項1〜10のいずれかに記載のリポソーム製剤の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明はドラッグデリバリーシステムに有用なリポソーム製剤の製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System: DDS)が盛んに研究されている。その目的は、薬物の持続的な放出(徐放)、体内半減期が短い薬物の寿命の延長、種々の病巣部位での薬物の吸収促進、あるいは薬物を目的とする標的組織や細胞にのみ送達することなどが挙げられる。その方法としては、リポソーム、エマルジョン、リピッドマイクロスフェア、ナノパーティクルなどの閉鎖小胞の利用が考えられる。しかし、その実用化に際しては克服すべき様々な課題があり、中でも、生体側の異物認識機構からの回避および体内動態の制御は重要である。すなわち、閉鎖小胞を標的部位に高い選択性で送達させるためには、肝臓や脾臓などの細網内皮組織(RES)での取り込みを回避し、血液中のオプソニン蛋白質や血漿蛋白質などとの相互作用(吸着)による凝集を防止して血中安定性を高める必要がある。 この課題を解決する方法として、親水性高分子による膜修飾が知られている。親水性高分子で修飾された閉鎖小胞、特にリポソームは、高い血中滞留性が得られることにより、当該リポソームは腫瘍組織や炎症部位などの血管透過性が亢進した組織への受動的な集積が可能となり、実用化が進められている(特許文献1〜3および非特許文献1〜3参照)。中でも、親水性高分子としてポリエチレングリコール(以下、「PEG」ということがある。)を用い、PEGで修飾されたリポソームについて、既に欧米で上市されているDoxil(登録商標)がよく知られている。 【特許文献1】特表平5−505173号公報 【特許文献2】特公平7−20857号公報 【特許文献3】特許第2667051号公報 【非特許文献1】Cancer Lett., 1997, 118(2), p.153 【非特許文献2】Br.J.Cancer., 1997, 76(1), p.83 【非特許文献3】D.D. Lasic著「LIPOSOMES from Physics to Applications」,Elsevier, 1993 【0003】 一般的に、リポソーム製剤の実用化に際しては製造方法が非常に重要である。リポソームの一般的な製造法は、リポソーム膜構成成分を均一化する工程(以下、均一化工程ともいう)、膜脂質と水相を混合しリポソームを形成させ粒子径等を制御するリポソーム形成工程(以下、リポソーム形成工程ともいう)、次に薬物封入型リポソームの場合に必要となる未封入薬物の除去工程、あるいは薬物を含まないリポソームの場合は外液置換工程(本明細書において、これらを総称して単に未封入薬物除去工程ということがある)、最後に最終的な精製あるいは無菌ろ過などの工程(以下、無菌化工程という)という流れが一般的である。 これらの製造工程においてリポソームは、粒子径等の物理化学的安定性が確保されることが必須である。 【0004】 しかしながら、これまで開示されている方法では、実験室レベルの小スケール製造では可能な場合があるが、中間段階で製造装置への吸着やリポソーム間の凝集が発生するなど、実用化のための中・大規模製造への適用が難しく、さらに、工程の組み合わせによっては、凝集などが促進されるなど、望むべき物理化学的特性を持つ製剤を製造することができなかった。 例えば、リポソーム形成工程において、脂質の溶解性向上、リポソーム分散液の粘性低下、微生物の増殖抑制を目的としたアルコール存在下でのリポソーム形成方法が開示されている(非特許文献4)が、整粒後に温度を低下させるとすみやかに脂質の析出とリポソーム間の凝集が発生してしまい、それに引き続く中空糸膜や逆浸透膜を用いた未封入薬物除去工程における膜への吸着やリポソーム間の凝集の促進、さらに最終無菌化工程における無菌ろ過膜への吸着や凝集の発生などによって、それ以上の製造は不可能となり、望むべき物理化学的性質を有するリポソーム製剤を製造することはできなかった。 【非特許文献4】G.Gregoriadis編「Liposome Technology Liposome Preparation and Related Techniques」2ndedition,Vol.I-III、CRC Press 【0005】 一般的に親水性高分子修飾リポソームの製造は、リポソーム膜構成成分を均一化する工程において親水性高分子を含む脂質膜構成成分を均一化する。その後の工程は、上記工程と同じ工程で製造が行われる(特許文献4)。しかし、この方法では、本来必要なリポソーム外部表面のみならず、内部にも親水性高分子が配向されることになり、内水相容積を狭め、薬物封入率を低下させるだけでなく、製造時に余分な親水性高分子を用いることとなり、製造コストに影響を及ぼすなど、製剤設計・製造の両面で望ましい方法ではなかった。また、親水性高分子は、リポソーム膜の透過性を増大させ、親水性高分子の含有率が高くなるほど、内封した薬物の漏れが増大するという報告がある(非特許文献5、非特許文献6)。 これらの理由から、リポソーム膜に修飾する親水性高分子は、必要最低限の量であることが望ましく、修飾方法としては、リポソーム形成後に必要な量の親水性高分子によりリポソーム表面を修飾する方法が望ましい。 また、これらの観点から、リポソーム形成後に親水性高分子を添加する方法が開示されている(特許文献5)。この方法は、均一化工程に薄膜法を用い、有機溶媒非存在下においてリポソーム形成を行っているため、有機溶媒存在下に比べてリポソームの安定性が高い。 一般的に有機溶媒存在下においては、リポソームの安定性は著しく低下することが知られているため、有機溶媒存在下でリポソームの物理化学的安定性を確保する条件はより厳しいものである。 【特許文献4】米国特許第5013556号明細書 【非特許文献5】Biochem.Biophys.Acta.. 1304 (1996) 120-128 【非特許文献6】Biochem.Biophys.Acta.1463 (2000) 167-178 【特許文献5】特公平7−20857号公報 【0006】 実用化のための中・大規模製造への適用を考えたとき、均一化工程において有機溶媒を用い、有機溶媒存在下でリポソーム形成工程を行うことが一般的である。しかし、一般的に有機溶媒が存在するとリポソームは不安定化されることが知られている。事実、有機溶媒存在下でリポソーム形成工程を行った後、粒子径等の物理化学的安定性を確保することは困難であった。有機溶媒存在下において、リポソーム形成工程以降の物理化学的安定性を確保する製造方法は、中・大規模製造における重要な課題となっている。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 上記のように、親水性高分子修飾リポソームの製造法としては、従来のいずれの方法でも、工業的スケールでは問題点があり満足なものとは言えなかった。本発明の目的は、親水性高分子を外表面に導入したリポソーム製剤の工業的レベルにおける製造法において、製造コスト、リポソームの安定性の観点から充分満足することができる簡便な製造法であり、且つ製造装置などへの吸着、あるいはリポソーム間の凝集などを防止しつつ、リポソーム形成工程、未封入薬物除去工程及び無菌化工程において、粒子径等の物理化学的安定性を確保しながら安定的に処理し、望むべき物理化学的特性を有するリポソーム製剤を得る製造方法を提供することを目的としている。 【課題を解決するための手段】 【0008】 以上の点に鑑み、上記課題を解決すべく検討した結果、リポソーム形成工程直後に親水性高分子修飾工程を設定し、その工程において、親水性高分子によりリポソーム外表面を修飾することで、その後の精製工程(未封入薬物除去工程及び無菌化工程)あるいはリポソーム外液置換工程において粒子径等の物理化学的安定性を確保しながら安定的に処理することができ、製造コスト、リポソームの安定性の観点から充分満足することができることが判明し、以下のような本発明に係わるリポソーム製剤の製造方法を完成させた。本発明において、リポソーム形成工程に有機溶媒を用いると、親水性高分子添加工程における親水性高分子導入効率が飛躍的に増大し工業的レベルの製造においてさらに適したものにできるという新しい知見を得ることができた。すなわち、リポソーム形成工程において有機溶媒を用いる本工程は、親水性高分子の導入が簡便であり、有機溶媒が存在しない場合に比べて短時間で親水性高分子の導入を行うことができる。 【0009】 本発明は薬物の封入、未封入に係わらず、リポソーム形成工程後、未封入薬物除去工程あるいはリポソームの外液置換工程、無菌化工程などのリポソームに対して物理的安定性を損なうような外力よりなる負荷を与え得る工程の前、いいかえればリポソーム形成工程直後に、親水性高分子修飾工程を設定することで、その後の精製工程(未封入薬物除去工程及び無菌化工程)において粒子径等の物理化学的安定性を確保しながら安定的にリポソームを処理することを特徴とするリポソーム製剤の製造方法である。 【0010】 具体的には、本発明は次の(1)〜(11)であらわされる。 (1)リポソーム分散液を得るリポソーム形成工程と、該リポソームの外表面に親水性高分子を修飾する親水性高分子修飾工程と、リポソームに対して物理的安定性を損なうような外力よりなる負荷を与え得るリポソーム分散液処理工程とを有するリポソーム製剤の製造方法であって、該親水性高分子修飾工程は、前記リポソーム形成工程完了後にリポソーム形成工程における処理温度以上の温度を維持した状態で実施されるリポソーム製剤の製造方法。 (2)前記分散液処理工程は、未封入薬物除去工程、無菌化工程またはリポソーム外液置換工程のいずれか1以上である上記(1)に記載のリポソーム製剤の製造方法。 (3)前記リポソーム形成工程において得られたリポソーム分散液には有機溶媒が含有されるものである上記(1)または(2)に記載のリポソーム製剤の製造方法。 (4)前記有機溶媒は、リポソーム形成工程に先立つリポソーム構成脂質を溶媒中で混合均一化する均一化工程において用いられる溶媒に由来するものである上記(3)に記載のリポソーム製剤の製造方法。 (5)記有機溶媒は、アルコールである上記(3)または(4)に記載のリポソーム製剤の製造方法。 (6)前記親水性高分子添加工程における温度は、脂質膜相転移温度以上の温度である上位機(1)〜(5)のいずれかに記載のリポソーム製剤の製造方法。 (7)前記親水性高分子添加工程は、前記リポソーム形成工程直後から180分以内に実施されるものである上記(1)〜(6)のいずれかに記載のリポソーム製剤の製造方法。 (8)前記親水性高分子添加工程における親水性高分子導入率は、前記リポソーム形成工程で得られたリポソーム分散液中に分散されているリポソームを構成する総脂質に対して0.01〜20mol%ある上記(1)〜(7)のいずれかに記載のリポソーム製剤の製造方法。 (9)前記親水性高分子は、ポリエチレングリコールである上記(1)〜(8)のいずれかに記載のリポソーム製剤の製造方法。 (10)前記親水性高分子は、分子量500〜15,000ダルトンのポリエチレングリコールである上記(9)に記載のリポソーム製剤の製造方法。 (11)前記リポソームの平均粒子径は、50〜250nmである上記(1)〜(10)のいずれかに記載のリポソーム製剤の製造方法。 【発明の効果】 【0011】 実用化のための中・大規模製造への適用を考えた本発明の製造方法は、粒子径制御を含むリポソーム形成工程後の工程において、凝集・吸着などによる変性を起こすことなく、その物理化学的安定性を確保しながら安定的にリポソームを処理することができ、製造コスト、リポソームの安定性の観点から充分満足することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0012】 以下、本発明をより詳細に説明する。リポソームは、リン脂質二重膜からなる閉鎖小胞であり、その小胞空間内に水相(内水相)を含む。リポソーム製剤は、このリポソームを担体とし、これに薬物を担持させたものである。リポソームは、脂質二重膜層の1枚膜からなるユニラメラ小胞(Small Unilamellar Vesicle,SUV、Large Unilamellar Vesicle,LUV)および複数枚からなる多重ラメラ小胞(Multilamellar Vesicle,MLV)などの膜構造が知られている。リポソームに内包された薬物の漏出を抑制するために、リポソームの膜構造をMLV膜とする提案もある(特許文献6参照)。 【特許文献6】国際公開01/000173号パンフレット 【0013】 一般的なリポソーム製剤の製造工程は、均一化工程、リポソーム形成工程、未封入薬物除去工程、無菌化工程の順である。本発明においてこれらの工程の順序は特に限定されない。また、イオン勾配を用いる方法などにおいては外液置換工程を含む未封入薬物除去工程が2回入るものも存在する。また、製造方法においては凍結乾燥工程が入る場合もあるが、本発明がこれらの工程の重複及び追加に影響を受けるものではない。 【0014】 均一化工程は、リポソーム膜構成成分を有機溶媒などを用いて溶解し、均一化する工程のことを示す。一般的にリポソーム構成成分としては、リン脂質とコレステロールなど、複数の脂質構成成分が存在することが多い。複数の脂質構成成分が存在する場合、リポソーム膜形成時の脂質の不均一化を避けるため、均一化工程をとることが必須である。単一の脂質を用いる場合、均一化工程は必ずしも必須というわけではないが、実用化を目指した製造を想定する場合、以下に示す均一化工程をとることが望ましい。均一化する方法としては、クロロホルムなどを用いて完全溶解させ、真空乾燥することにより均一化する薄膜法がよく知られている。実用化を目指した製造方法としては、エタノールなどの有機溶媒に完全溶解させることで均一化し、その脂質−有機溶媒溶液を次のリポソーム形成工程に用いるという方法が広く用いられる。 【0015】 リポソーム形成工程は、均一化された脂質を用いてリポソームを形成する工程を示す。リポソーム形成工程の一般的な製造方法としては水和法(Bangham法)、超音波処理法、逆相蒸発法などを用いた方法が既に報告されている。また、実用化を指向した製造方法としては、加温法(特許文献7)、脂質溶解法(特許文献8)などがある。また、内水相に保持する薬物量を多くするための方法として、DRV法(Dehydrated/Rehydrated Vesicles)や凍結融解法なども報告されている。リポソーム形成工程は、リポソーム形成後、粒子径制御の工程を含む。粒子径制御の工程は、膜乳化及び剪断力の持続を含む様々な公知の技術を用いて制御することができる。より具体的には、フィルターを複数回強制通過させる膜乳化法、高圧吐出型乳化機により高圧吐出させる高圧乳化法などがある。何れの製造法もG.Gregoriadis編「Liposome Technology Liposome Preparation and Related Techniques」2ndedition,Vol.I-III、CRC Pressにおいて公知であり、この記載を引用して本明細書の記載されているものとする。近年、新しい製造法としては、超高圧による圧縮からの速度変換を利用し、液相下でのジェット流により剪断乳化を行う方法(ジェット流乳化)(特許文献9)や、超臨界二酸化炭素を利用したリポソーム調製技術(非特許文献7)がある。また、近年においては粒子径制御工程を簡便化する改良型エタノール注入法などが登場している(非特許文献8)。これらも本発明のリポソーム形成工程に該当する。 【特許文献7】特開昭60−7933 【特許文献8】特開昭60− 12127 【特許文献9】特開2005−2055 【非特許文献7】Pharm Tech Japan Vol.19 No.5 (2003) 91(819) 【非特許文献8】J.Liposome Research 11(1), 115-125 (2001) 【0016】 本発明の製法によって得られるリポソームは、リポソーム形成工程において、粒子径制御の工程を設けることが好ましい。リポソームが球状またはそれに近い形態をとる場合には、特に限定されないが、直径が、20nm〜2000nm、好ましくは30nm〜400nmであり、より好ましくは50nm〜250nmである。 【0017】 リポソーム分散液処理工程は、未封入薬物除去工程、リポソーム外液置換工程、無菌化工程等、公知のリポソーム分散液に対するリポソーム形成工程の後に行われる各種処理工程を意味する。 未封入薬物除去工程は、薬物溶液にてリポソーム形成工程を行った場合の、未封入薬物の除去を目的とした工程のことを示す。また、リポソーム外液置換工程は、薬物を含まない溶液にてリポソーム形成工程を行った場合の、外液置換を目的とした工程のことを示す。外液置換の目的は、均一化工程を経てリポソーム形成工程に持ち込まれた有機溶媒の除去、及びリポソーム内外のイオン勾配形成などである。未封入薬物除去工程及び外液置換工程は、結合されなかった親水性高分子を除去する工程としても有用である。本工程では、親水性高分子修飾工程で添加された親水性高分子のうち、リポソームに結合されなかったものを除去することができる。その方法としては、透析法、超遠心分離法及びゲルろ過法などが知られている。何れの製造法もG.Gregoriadis編「Liposome Technology Liposome Preparation and Related Techniques」2ndedition,Vol.I-III、CRC Pressにおいて公知であり、この記載を引用して本明細書に記載されているものとする。特に、実用化を目的とした製造方法としては、ダイアライザーなどの中空糸を用いた方法や、限外ろ過膜を用いたタンジェンシャルフロー及びダイアフィルトレーションなどが挙げられる。 【0018】 無菌化工程は、リポソーム形成工程後に滅菌する工程を示す。滅菌の方法は特に限定されず、例えば、ろ過滅菌、高圧蒸気滅菌法、乾式加熱滅菌法、エチレンオキサイドガス滅菌法、放射線(例えば、電子線、X線、γ線など)滅菌法、オゾン水による滅菌法、過酸化水素水を用いる滅菌法を用いることができる。また、製造方法によってはこの無菌化工程を設定しなくてもよい。本発明における、無菌化工程としては、ろ過滅菌が最も好ましい。 ろ過滅菌法においては、リポソームは透過するが、指標菌として用いられるBrevundimonas diminuta(サイズ、約0.3×0.8μm)はろ過されないことが要求されるため、Brevundimonas diminutaに較べ十分に小さい粒子であることが必要である。リポソームの粒径が100nm付近であることは、このろ過滅菌工程をより確実にする上でも重要である。ろ過滅菌に用いるフィルターは、孔径0.45μm以下であることが好ましく、例えば孔径0.2μmのろ過滅菌フィルターを用いる。 【0019】 本発明における製造方法は、実用化を目的とした、均一化工程、リポソーム形成工程、未封入薬物除去工程、および無菌化工程の各工程を有するリポソーム製剤の製造方法における課題を解決したものであるが、上記した実用化を目的とした製造方法に限定されるものではない。 本発明の特徴は、製造工程における粒子径等の物理化学的安定性を確保するために、リポソーム形成工程直後に親水性高分子修飾工程を設定し、その工程において親水性高分子をリポソーム外表面に修飾することにある。リポソーム外表面への親水性高分子の修飾は、リポソームと親水性高分子とを接触させ、リポソーム外表面に親水性高分子を固定化することにより実施されるが、固定化にあたっては、リポソーム外表面に親水性高分子を固定化しうる部分を設けても良いし、反対に親水性高分子にリポソーム外表面を固定化しうる部分を設けても良い。本発明においては、親水性高分子そのものだけでなく、上述したようなリポソーム外表面に固定化しうる部分を有するものを含めて親水性高分子と総称する。 親水性高分子修飾工程における親水性高分子の修飾の方法は特に限定されないが、均一性及び操作性を確保するために、粉体ではなく溶液として用いることが好ましい。親水性高分子を溶解する溶媒は特に限定されないが、水と混和する必要性を考えると、水、アルコール類、DMF、THF、DMSOなどが望ましく、水であることが最も好ましい。 【0020】 親水性高分子添加工程における親水性高分子の溶液濃度は、親水性高分子の溶解度に依存するが、リポソーム形成工程への持ち込み液量となることを考慮すると、持ち込み液量が少ないことが望ましい。親水性高分子が液体の場合、そのまま添加することが最も好ましい。形成されたリポソームへの親水性高分子導入率(mol%)にもよるが、溶液濃度として0.01mg/mLから10 g/mLが一般的と考えられるが特に限定されない。 「親水性高分子導入率(mol%)」とは、親水性高分子を含むリポソーム膜構成成分に対する親水性高分子の割合を示す。 【0021】 粒子径等の物理化学的安定性を確保するために必要な親水性高分子の添加量は、均一化工程からリポソーム形成工程に持ち込まれる水以外の溶媒量に依存する。水以外の溶媒としては、具体的には有機溶媒である。また、水以外の溶媒は、水と均一に混合するものであれば良く、例えば、エタノール等のアルコール類、DMF、THF、DMSOなどの水性の非水溶剤が挙げられる。持ち込まれる水以外の溶媒量が多いほど、親水性高分子の添加量は多く必要となる。また、持ち込まれる水以外の溶媒の種類により最低添加量が異なるため、注意する必要がある。持ち込まれる溶媒が水だけである場合、親水性高分子の添加量は最も少なくてよい。しかし、水だけの場合でも物理化学的安定性を確保するために親水性高分子を添加することが望ましく、添加によって修飾される親水性高分子導入率(mol%)は、リポソーム形成工程で形成されたリポソームを構成する総脂質に対して0.1〜20mol%が望ましいがこれに限定されない。 【0022】 親水性高分子添加工程における親水性高分子の添加の温度条件は、主膜材の相転移温度以上で行うことが必須である。リポソームの主膜材の相転移温度は、脂質の構造に依存し、生体内温度(35〜37℃)より高いリン脂質を用いることが一般的である。具体的には、主膜材の相転移温度は、50℃以上であるのが好ましい態様の1つである。この場合、親水性高分子の添加は50℃以上であることが必須であることに注意が必要である。 【0023】 リポソーム形成工程後のリポソームは、温度、時間に依存して凝集などの不安定化が起こる。この不安定化はリポソームの脂質組成に応じて異なることから、脂質組成ごとに温度、時間が異なることが知られている。脂質組成によって異なるこの不安定化を回避するために、親水性高分子修飾工程における親水性高分子の添加の時期は、リポソーム形成工程直後から近いほど望ましい。具体的には180分以内であれば、膜成分や内封物への熱の影響が少ないので好ましく、より好ましくは120分以内であり、さらに好ましくは45分以内であり、リポソーム形成工程直後であることが最も望ましい。より具体的には、リポソーム形成工程後のリポソーム分散液を親水性高分子溶液に直接投入してもよく、また、その逆で親水性高分子溶液をリポソーム形成工程後のリポソーム分散液に加える方法でも良い。またリポソーム分散液と親水性高分子溶液を同時に別の容器に移し、混合する方法でもよい。その際、濃度均一性及び温度均一化の観点から、スターラーなどで攪拌する工程をとることが望ましい。 親水性高分子修飾工程における親水性高分子添加後は、相転移温度以上で所定の時間、加温攪拌することが望ましい。加温攪拌する時間は0〜120分、好ましくは0〜60分より好ましくは0〜45分である。 【0024】 本発明において、親水性高分子修飾工程においてアルコールが存在していることにより、親水性高分子導入時間を著しく短縮し、且つ導入温度条件を低くすることができることを見出している。親水性高分子修飾工程後のリポソームは、脂質の安定性の観点から、温度条件はできるだけ低く、且つ加温攪拌時間はできるだけ短くすることが望まれることから、親水性高分子修飾工程においてアルコールが存在していることはこれらの観点から好適である。 本発明において親水性高分子添加工程にアルコールを持ち込む方法としては、均一化工程でアルコールを用いることが最も望ましい。なぜなら、均一化工程で望まれる脂質の均一化にはアルコールで完全に可溶化することが最も簡便であるためである。 【0025】 親水性高分子添加工程後のリポソームは、脂質の安定性の観点から、速やかに冷却することが望ましい。より簡便に冷却する方法としては氷冷が好ましい。親水性高分子添加工程において結合されなかった親水性高分子は、次工程の未封入薬物除去工程において除去することができる。そのため、親水性高分子添加工程以降に未封入薬物除去工程があることが望ましい。 【0026】 均一化工程、リポソーム形成工程、親水性高分子添加工程はリポソームの変形及び脂質膜の液晶化を利用して行われる工程であるため主膜材の相転移温度以上に加温した状態であることが必須であるが、親水性高分子添加工程後のリポソームは逆に、リポソームの変形による粒子径変動が起こっては困ることから、未封入薬物除去工程及び無菌化工程は主膜材の相転移温度以下で行うことが望ましい。例えば、主膜材の相転移温度が50℃付近である場合、0〜40℃程度が好ましく、より具体的には5〜30℃程度で製造されることが好ましい。 【0027】 リン脂質は、一般的に、分子内に長鎖アルキル基より構成される疎水性基とリン酸基より構成される親水性基とを持つ両親媒性物質である。リン脂質としては、例えば、フォスファチジルコリン(=レシチン)、フォスファチジルグリセロール、フォスファチジン酸、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルセリン、フォスファチジルイノシトールのようなグリセロリン脂質;スフィンゴミエリン(Sphingomyelin,SM)のようなスフィンゴリン脂質;カルジオリピンのような天然または合成のジフォスファチジル系リン脂質およびこれらの誘導体;これらを常法に従って水素添加したもの(例えば、水素添加大豆フォスファチジルコリン(HSPC))等を挙げることができる。以下、これらのリン脂質を「リン脂質類」と称することもある。これらのうちでも、水素添加大豆フォスファチジルコリン等の水素添加されたリン脂質、スフィンゴミエリン等が好ましい。 【0028】 また、リポソームは、主膜材として相転移温度が生体内温度(35〜37℃)より高いリン脂質を用いることが好適である。なぜなら、このようなリン脂質を用いることにより、保存時に、または、血液などの生体中で、リポソーム内に封入された薬物がリポソームから外部へ容易に漏出しないようにすることが可能となるからである。これらのリポソームは、主膜材の相転移温度以上で製造することが好ましい。なぜなら、主膜材の相転移温度以下の温度では、粒子径制御が困難であるからである。例えば、主膜材の相転移温度が50℃付近である場合、50〜80℃程度が好ましく、より具体的には60〜70℃程度で製造されることが好ましい。 リポソームは、主膜材として単一種のリン脂質を、または、複数種のリン脂質を含むことができる。 主要構成成分であるリン脂質の量は、膜脂質全体中、通常、20〜100mol%であり、好ましくは40〜100mol%である。 またリン脂質以外の他の脂質類の量は、膜脂質全体中、通常、0〜80mol%であり、好ましくは0〜60mol%である。 【0029】 本発明において、上記のような脂質二重膜は、親水性高分子修飾工程において脂質二重膜の外側のみに選択的に親水性高分子が修飾される。修飾される親水性高分子としては、特に限定されないがポリエチレングリコール、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアスパルトアミド、合成ポリアミノ酸などが挙げられる。 【0030】 これらの中でも、製剤の血中滞留性を優れたものにする効果があることから、ポリエチレングリコール類、ポリグリセリン類、ポリプロピレングリコール類が好ましく、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリグリセリン(PG)、ポリプロピレングリコール(PPG)がより好ましい。なお、このような親水性高分子は、片末端がアルコキシ化(例えば、メトキシ化、エトキシ化、プロポキシ化)されているものが好ましい。なぜなら、保存安定性に優れるからである。これらの中でも、ポリエチレングリコール(PEG)は最も汎用であり、血中滞留性を向上させる効果があり、好ましい。 【0031】 なお、本発明において「血中滞留性」とは、例えば薬物担体が投与された宿主において、薬物が薬物担体に内封された状態で血液中に存在する性質を意味する。薬物は、薬物担体から放出されると速やかに血中から消失し、暴露する。血中滞留性が良いと、より少ない量で薬物を投与することが可能である。 また、本発明において、「暴露」とは、薬物担体の外部へ放出された薬物が外部環境に対し作用を及ぼすことを意味する。具体的には、放出された薬物は標的部位に近接し、接触することによりその作用(例えば、抗腫瘍効果)を発揮する。薬物が標的部位に作用することにより、標的部位のDNA合成が行われている細胞周期にある細胞に局所的に作用し、期待された効果を示す。 【0032】 親水性高分子は、リポソームを修飾するための構造を有していることが好ましい。特に、親水性高分子鎖の一端に該構造を有していることが好ましい。すなわち、修飾に使用される親水性高分子は、親水性高分子の本体部分とリポソームを修飾するための構造部分とからなっていることが好ましい。該構造が脂質等の疎水性部分である場合は、該疎水性部分がリポソーム膜に挿入されるかたちで親水性高分子の本体部分がリポソーム外表面上から突出するように固定化され、該構造がリポソーム膜構成成分と共有結合しうる反応性官能基である場合は、リポソームの外表面に露出しているリン脂質等のリポソーム膜構成成分と共有結合することにより親水性高分子の本体部分がリポソーム外表面上から突出するように固定化される。 【0033】 次に、親水性高分子本体と結合して親水性高分子−疎水性高分子化合物を形成せしめるために使用される疎水性化合物について以下に説明する。 当該疎水性化合物は、特に限定されない。例えば、疎水性の領域を有する化合物(疎水性化合物)を挙げることができる。疎水性化合物としては、例えば、後述する混合脂質を構成するリン脂質や、ステロール等の他の脂質類、あるいは、長鎖脂肪族アルコール、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。中でも、リン脂質が好ましい態様の一つである。また、これらの疎水性化合物は反応性官能基を有してもよい。反応性官能基によって形成される結合としては共有結合が望ましく、具体的にはアミド結合、エステル結合、エーテル結合、スルフィド結合、ジスルフィド結合、などが挙げられるが特に限定されない。 【0034】 上記リン脂質に含まれるアシル鎖は、飽和脂肪酸であることが望ましい。アシル鎖の鎖長は、C14−C20が望ましく、さらにはC16−C18であることが望ましい。アシル鎖としては、例えば、ジパルミトイル、ジステアロイル、パルミトイルステアロイルが挙げられる。 リン脂質は、特に制限されない。リン脂質としては、例えば、上記の親水性高分子と反応可能な官能基を有するものを使用することができる。このような親水性高分子と反応可能な官能基を有するリン脂質の具体例としては、アミノ基を有するフォスファチジルエタノールアミン、ヒドロキシ基を有するフォスファチジルグリセロール、カルボキシ基を有するフォスファチジルセリンが挙げられる。上記のフォスファチジルエタノールアミンを使用するのが好適な態様の1つである。 【0035】 親水性高分子の脂質誘導体は、上記の親水性高分子と上記の脂質とからなる。上記の親水性高分子と上記の脂質との組み合わせは、特に限定されない。目的に応じて適宜組み合わせたものを使用することができる。例えば、リン脂質、ステロール等の他の脂質類、長鎖脂肪族アルコール、グリセリン脂肪酸エステルの中から選ばれる少なくとも1つと、PEG、PG、PPGの中から選ばれる少なくとも1つとが結合した親水性高分子の誘導体が挙げられる。具体的には、ポリオキシプロピレンアルキルなどが挙げられ、特に、親水性高分子がポリエチレングリコール(PEG)である場合において脂質としてリン脂質、コレステロールを選択するのが好適な態様のひとつである。このような組み合わせによるPEGの脂質誘導体としては、例えば、PEGのリン脂質誘導体またはPEGのコレステロール誘導体が挙げられる。 【0036】 親水性高分子の脂質誘導体は、脂質の選択により、正電荷、負電荷、中性の選択が可能である。例えば、脂質としてDSPEを選択した場合、リン酸基の影響で負電荷を示す脂質誘導体となり、また脂質としてコレステロールを選択した場合、中性の脂質誘導体となる。脂質の選択は、その目的に応じ、選択することが可能である。 【0037】 PEGの分子量は、特に限定されない。PEGの分子量は、通常、500〜10,000ダルトンであり、好ましくは1,000〜7,000ダルトン、より好ましくは2,000〜5,000ダルトンである。 PGの分子量は、特に限定されない。PGの分子量は、通常100〜10000ダルトンであり、好ましくは200〜7000ダルトン、より好ましくは400〜5000ダルトンである。 PPGの分子量は、特に限定されない。PPGの分子量は、通常100〜10,000ダルトンであり、好ましくは200〜7,000ダルトン、より好ましくは1,000〜5,000ダルトンである。 【0038】 これらの中でも、PEGのリン脂質誘導体が好ましい態様の一つとして挙げられる。PEGのリン脂質誘導体としては、例えば、ポリエチレングリコール−ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン(PEG-DSPE)が挙げられる。PEG-DSPEは、汎用の化合物であり入手容易であることから好ましい。 上記の親水性高分子は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。 【0039】 このような親水性高分子の脂質誘導体は、従来公知の方法によって製造することができる。親水性高分子の脂質誘導体の一例であるPEGのリン脂質誘導体を合成する方法としては、例えば、PEGに対し反応可能な官能基を有するリン脂質と、PEGとを、触媒を用いて反応させる方法が挙げられる。当該触媒としては、例えば、塩化シアヌル、カルボジイミド、酸無水物、グルタルアルデヒドが挙げられる。このような反応により、前記官能基とPEGとを共有結合させてPEGのリン脂質誘導体を得ることができる。 このような親水性高分子の脂質誘導体を用いて表面修飾されたリポソームは、血漿中のオプソニンタンパク質等が当該リポソームの表面へ吸着するのを防止して当該リポソームの血中安定性を高め、RESでの捕捉を回避することが可能となり、薬物の送達目的とする組織や細胞への送達性を高めることができる。 【0040】 上記親水性高分子脂質誘導体による膜脂質(総脂質)の修飾率は、膜脂質に対する比率で、通常0.1〜20mol%、好ましくは0.1〜5mol%、より好ましくは0.5〜5mol%とすることができる。ここでの総脂質とは、親水性高分子脂質誘導体以外の膜を構成するすべての脂質の総量であり、具体的に、リン脂質類および他の脂質類、さらに他の表面修飾剤を含む場合にはこの表面修飾剤も含む。 【0041】 リポソームは、上記リン脂質、親水性高分子の脂質誘導体の他に、他の膜構成成分を含むことができる。他の膜構成成分としては、例えば、リン脂質以外の脂質およびその誘導体(以下、これらを「他の脂質類」と称することもある。)が挙げられる。リポソームは、主膜材として上記のリン脂質および親水性高分子の脂質誘導体とともに、他の脂質類を含む混合脂質による膜で形成されるのが好ましい。このように 本発明に係るリポソームは、上記脂質および親水性高分子とともに、上記膜構造を保持しうるものであって、リポソームに含むことができる他の膜成分を、本発明の目的を損なわない範囲で含むことができる。 【0042】 上記のようなリポソームには、種々の薬物を担持させることができる。たとえば治療のための薬物としては、核酸、ポリヌクレオチド、遺伝子およびその類縁体、抗ガン剤、抗生物質、酵素剤、抗酸化剤、脂質取り込み阻害剤、ホルモン剤、抗炎症剤、ステロイド剤、血管拡張剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシン受容体拮抗剤、平滑筋細胞の増殖・遊走阻害剤、血小板凝集阻害剤、抗凝固剤、ケミカルメディエーターの遊離阻害剤、血管内皮細胞の増殖促進または抑制剤、アルドース還元酵素阻害剤、メサンギウム細胞増殖阻害剤、リポキシゲナーゼ阻害剤、免疫抑制剤、免疫賦活剤、抗ウイルス剤、メイラード反応抑制剤、アミロイドーシス阻害剤、一酸化窒素合成阻害剤、AGFs(Advanced glycation endproducts)阻害剤、ラジカルスカベンジャー、タンパク質、ペプチド、グリコサミノグリカンおよびその誘導体、オリゴ糖および多糖などが挙げられる。具体的には、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾンなどの副腎皮質ステロイドやその誘導体、アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、メフェナム酸、フェニルブタゾンなどの非ステロイド抗炎症剤、ヘパリン、低分子ヘパリンなどのメザンギウム細胞増殖阻害剤、シクロスポリンなどの免疫抑制剤、カプトプリルなどのACE(angiotensin converting enzyme)阻害剤、メチルグアニジンなどのAGE(advanced glycation endoproduct)阻害剤、バイグリカン、デコリンなどのTGF-β拮抗薬、PKC(protein kinase C)阻害剤、PGE1やPGI2などプロスタグランジン製剤、パパベリン系薬、ニコチン酸系薬、トコフェロ−ル系薬、およびCa拮抗薬などの末梢血管拡張薬、 フォスホジエステラ−ゼ阻害剤、チクロピジン、アスピリンなどの抗血栓薬、ワ−ファリン、ヘパリン、抗トロンビン剤などの抗凝固剤、ウロキナ−ゼなどの血栓溶解薬、ケミカルメディエーター遊離抑制剤、抗生物質、抗酸化剤、酵素剤、脂質取込抑制剤、ホルモン剤、ビタミンC、ビタミンE、SODなどのラジカルスキャベンジャ−、メサンギウム細胞の増殖抑制作用を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド、デコイあるいは遺伝子などが挙げられる。 また、診断のための薬物としては、X線造影剤、超音波診断薬、放射性同位元素標識核医学診断薬、核磁気共鳴診断用診断薬などの体内診断薬が挙げられる。 【0043】 「リポソーム製剤」とは、リポソームそのもの、あるいは、リポソームを担体とし、これに薬物を担持させたものの総称である。ここでいう「担持」とは、担体に薬物が含有された状態を意味する。より具体的には、薬物がリポソームの内水相に存在するのでもよく、担体の構成成分である脂質層表層に静電的相互作用などで固定化された状態で存在するのでもよく、脂質層内に一部または全ての部分が含まれている状態であってもよい。また、薬物が担持される場所としては、リポソーム表面、脂質膜及び内水相が挙げられるが、中でもリポソームの内水相は体積が大きく、薬物担持量が多いため好ましい。本発明におけるリポソーム製剤は、リポソームに薬物が担持された状態であれば特に限定されず、リポソーム製剤がリポソーム外液に分散あるいは懸濁されてなる状態であってもよいし、凍結乾燥されている状態でも良い。 【0044】 本発明のリポソーム製剤は、投与経路次第で医薬的に許容される安定化剤および/または酸化防止剤および/または浸透圧調整剤および/またはpH調整剤をさらに含むものであってもよい。 【0045】 安定化剤としては、安定化剤としては、特に限定されないが、例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、またはシュクロースのような糖類が挙げられる。また、膜構成成分の他の脂質として上述したコレステロール(Cholesterol)などのステロールはこの安定化剤として作用する。 【0046】 酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、アスコルビン酸、尿酸、トコフェロール同族体(例えば、ビタミンE)が挙げられる。なお、トコフェロールには、α、β、γ、δの4個の異性体が存在するが本発明においてはいずれも使用できる。使用される安定化剤および/または酸化防止剤は、剤型に応じて上記の中から適宜選択されるが、これらに限定されるものではない。このような安定化剤および酸化防止剤は、それぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。また、酸化防止の観点からは、上記分散体は窒素充填包装とすることが望ましい。さらに、ガス透過性を有する容器に収納し、脱酸素剤とともにガスバリア性を有する包材で密封包装しても良い。 【0047】 pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、クエン酸、酢酸、トリエタノールアミン、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどが挙げられる。 本発明のリポソーム製剤は、添加物をさらに含むものであってもよい。このような添加物の例として、医薬的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、PBS、塩化ナトリウム、糖類、生体内分解性ポリマー、無血清培地、医薬添加物として許容される界面活性剤、前述した生体内で許容し得る生理的pHの緩衝液などが挙げられる。 添加物は、上記の中から適宜選択され、あるいはそれらを組合せて使用されるが、これらに限定されるものではない。 【0048】 本発明の製造法では、これら添加剤を含む態様のリポソーム製剤を、医薬組成物として供することができる。本発明の製造法で製造された中間生成物を含む医薬組成物は、通常の方法、たとえば0〜8℃での冷蔵、あるいは1〜30℃の室温で保存することができる。 【0049】 リポソーム製剤の非経口的投与の経路としては、たとえば点滴などの静脈内注射(静注)、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射を選択することができ、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。リポソーム製剤の具体的な投与方法としては、医薬組成物をシリンジや点滴によって投与することができる。また、カテーテルを患者または宿主の体内、たとえば管腔内、たとえば血管内に挿入して、その先端を標的部位付近に導き、当該カテーテルを通して、所望の標的部位またはその近傍あるいは標的部位への血流が期待される部位から投与することも可能である。 【0050】 本発明のリポソーム製剤は、病気に既に悩まされる患者に、疾患の症状を治癒するか、あるいは少なくとも部分的に阻止するために十分な量で投与される。たとえばリポソーム製剤に封入される薬物の有効投与量は、通常、一日につき体重1kgあたり0.01mgから100mgの範囲で選ばれる。しかしながら、本発明のリポソーム製剤はこれらの投与量に制限されるものではない。投与時期は、疾患が生じてから投与してもよいし、あるいは疾患の発症が予測される時に発症時の症状緩和のために予防的に投与してもよい。また、投与期間は、患者の年齢、症状により適宜選択することができる。 【0051】 次に、本発明の製造方法を例示する。 (均一化工程) 例えば、リポソーム膜成分物質と膜安定化剤を揮発性有機溶媒、好ましくは無水エタノールに加温溶解し、脂質溶液を調製する。加温温度は通常相転移温度以上であり、例えば水素添加大豆フォスファチジルコリンを用いた場合には50℃〜80℃であり、好ましくは60℃〜70℃である。 【0052】 (リポソーム形成工程) 次に浸透圧調整剤、pH調整剤、封入用薬物、等を必要に応じて注射用水に溶解し、水性溶液を調製する。予め加温した水性溶液および前記均一化工程で得られた脂質溶液を混合および攪拌することにより、リポソーム粗分散液を得る。加温温度は通常相転移温度以上であり、例えば水素添加大豆フォスファチジルコリンを用いた場合には50℃以上であり、好ましくは60℃〜70℃である。攪拌においては、必要に応じプロペラ式攪拌機のような攪拌装置で加温攪拌することもできる。次いで、リポソーム粗分散液は、ポリカーボネイト製メンブランフィルターによって平均粒子径をコントロールすることができる。例えば、粒子径100nmに整粒する場合、400nm、200nm、100nmなどのメンブレンフィルターを組み合わせ、段階的に整粒する場合が多い。 【0053】 (親水性高分子修飾工程) 次に、整粒化されたリポソーム分散液に親水性高分子の脂質誘導体が添加され加温混合される。親水性高分子の脂質誘導体添加前のリポソーム分散液は親水性高分子の脂質誘導体添加まで加温状態で保持されていることが好ましく、加温温度は通常、整粒化を実施した際の温度、相転移温度以上であり、水素添加大豆フォスファチジルコリンを用いたリポソーム製剤の場合には、50℃以上であり、好ましくは60℃〜70℃である。また、親水性高分子は必要応じ水性溶液として添加される。親水性高分子としては、好ましくはポリエチレングリコール(PEG)が使用される。親水性高分子の添加は、整粒化などリポソーム形成工程終了直後から可能であり、好ましくは前工程終了直後から180分以内に添加される。添加されるまでの時間は、工程上、許容される限り短い時間であることが好ましい。添加の方法としては、リポソーム分散液と親水性高分子溶液を同時に混合する方法でもよく、リポソーム分散液を親水性高分子溶液に加える、またはその逆に、親水性高分子溶液をリポソーム分散液に加える方法でもよい。添加の際には、攪拌させることが好ましい。攪拌においては、必要に応じプロペラ式攪拌機のような攪拌装置で加温攪拌することもできる。親水性高分子添加工程は、上記した相転移温度以上であることが必須である。本発明において、親水性高分子添加工程においてアルコールが存在している場合、親水性高分子導入時間を著しく短縮し、且つ導入温度条件を低くすることができることを見出している。親水性高分子添加工程後のリポソームは、脂質の安定性の観点から、温度条件はできるだけ低く、且つ加温攪拌時間はできるだけ短くすることが望まれることから、親水性高分子添加工程においてアルコールが存在していることはこれらの観点から好適である。本発明において親水性高分子添加工程にアルコールを持ち込む方法としては、均一化工程でアルコールを用いることが最も望ましい。なぜなら、均一化工程で望まれる脂質の均一化にはアルコールで完全に可溶化することが最も簡便であるためである。また、必要に応じて本工程の後にクエン酸法や硫酸アンモニウム法などのpH勾配法に代表されるリモートローディング法によって薬剤をリポソームに担持せしめることができる。 【0054】 (未封入薬物除去工程) このようにして得られた均一粒子径のリポソーム分散液は、この工程以降安定的に処理することができ、未封入薬物除去工程、無菌化工程などは通常知られている条件下で実施することができる。均一化工程、リポソーム形成工程、親水性高分子添加工程はリポソームの変形を利用して行われる工程であるため主膜材の相転移温度以上であることが必須であるが、親水性高分子添加工程後のリポソームは逆に、リポソームの変形による粒子径変動が起こっては困ることから、未封入薬物除去工程及び無菌化工程は主膜材の相転移温度以下で行うことが望ましい。例えば、主膜材の相転移温度が50℃付近である場合、0〜40℃程度が好ましく、より具体的には5〜30℃程度で製造されることが好ましい。無菌化工程を経た最終製剤は、脂質の安定性及び粒子径等の物理化学的安定性などの観点から、21℃〜30℃の室温、好ましくは0〜8℃での冷蔵で保存することができる。本発明の製造方法の概略を図1に示す。 【実施例】 【0055】 次に実施例、試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例、試験例に限定されるべきものではない。 各例で調製されたリポソーム製剤を含む本発明におけるリポソーム製剤の粒子径(平均粒子径)は、レーザー回折法粒子測定装置(ベックマンコールターLS230)で測定された平均粒子径である。また、各脂質成分及び内封された薬物の濃度(mg/mL)は高速液体クロマトグラフによって定量した。 以下に、使用した各成分の略称および分子量を示す。 水素添加大豆レシチン(HSPC、分子量790) コレステロール(分子量386.66) ポリエチレングリコール5000−フォスファチジルエタノールアミン(PEG5000-DSPE、分子量5938) 【0056】 (実施例1) 均一化工程にアルコールを用いた本発明の製造法と均一化工程にアルコールを用いない製造法についての比較を行うため、調製例1及び比較例1においてリポソームを製造した。 【0057】 (調製例1)均一化工程にアルコールを用いた本発明の製造法 (1)均一化工程 水素添加大豆レシチン(HSPC)を4.9g及びコレステロールを2.1g秤量し、無水エタノール(10mL)を添加し、加温溶解した。 (2)リポソーム形成工程 250mMに調製した硫酸アンモニウム溶液90mLを70℃付近に加温し、均一化工程を経て得られた脂質のエタノール溶液10mLに添加することで得られた分散液を撹拌し粗リポソーム分散液を得た。得られた粗リポソーム分散液を65℃付近に加温したエクストルーダーを用い、孔径200nm及び100nmのポリカーボネイトメンブランフィルターを通過させリポソーム分散液を得た。 【0058】 (比較例1)均一化工程にアルコールを用いない製造法 (1)均一化工程 水素添加大豆レシチン(HSPC)を4.9g及びコレステロールを2.1g秤量し、60℃に加温したt−ブチルアルコール(200mL)を添加し、加温溶解した。加温溶解後、氷冷により完全に凍結させた。減圧留去によりt−ブチルアルコールを完全に除去し、混合脂質を得た。 (2)リポソーム形成工程 250mMに調製した硫酸アンモニウム溶液100mLを70℃付近に加温し、均一化工程を経て得られた混合脂質に添加し、攪拌しながら加温膨潤することで粗リポソーム分散液を得た。得られた粗リポソーム分散液を65℃付近に加温したエクストルーダーを用い、孔径200nm及び100nmのポリカーボネイトメンブランフィルターを通過させリポソーム分散液を得た。 【0059】 (試験例1)PEG5000−DSPE導入効率(%)の時間依存性 調製例1及び比較例1で得られたリポソーム分散液に対してPEG5000−DSPE溶液(0.51g/20mL(注射用水))を直ちに添加し、60℃において所定の時間加温攪拌することでリポソームにPEG5000−DSPEを導入した(PEG5000−DSPEの導入率(mol%)=0.75)。導入終了後のリポソームを氷冷し、10mM ヒスチジン/10%スクロース溶液(pH6.5)溶液にて充分に置換したゲルカラムを用いて外液置換を行った。外液置換後のリポソーム分散液についてPEG5000−DSPEの導入効率(%)を以下の式に基づいて算出し、PEG5000−DSPE導入効率(%)の時間依存性について調べた結果を図2に示す。エタノール非存在下に比べてエタノール存在下の場合、短時間でPEG5000−DSPEの導入が終了していることが明らかになった。この結果、親水性高分子添加工程においてエタノールが存在することで、親水性高分子添加工程の攪拌時間を短縮することができることが明らかになった。 【0060】 式:PEG5000−DSPE導入効率(%)=(最終製剤中の総脂質量に対するPEG5000−DSPE導入率(mol%))/(仕込み量中の総脂質量に対するPEG5000−DSPE導入率(mol%)) 【0061】 (試験例2)PEG5000−DSPE導入効率(%)の温度依存性 調製例1で得られたリポソーム分散液に対して速やかにPEG5000−DSPE溶液(0.51g/20mL(注射用水))を直ちに添加し、40〜70℃において所定の時間加温攪拌することでリポソームにPEG5000−DSPEを導入した(PEG5000−DSPEの導入率(mol%)=0.75)。導入終了後のリポソームを氷冷し、10mM ヒスチジン/10%スクロース溶液(pH6.5)溶液にて充分に置換したゲルカラムを用いて外液置換を行った。外液置換後のリポソーム分散液についてPEG5000−DSPE導入率(mol%)を算出した。PEG5000−DSPE導入効率(%)の温度依存性について調べた結果を図3に示す。この結果、親水性高分子添加工程においてエタノールが存在することで、親水性高分子添加工程の攪拌温度を下げることができることが明らかになった。 【0062】 (実施例2) 本発明の製造法と従来の製造法についての比較を行うため、調製例2及び比較例2においてリポソームを製造した。 【0063】 (調製例2)本発明の製造法 (1)均一化工程 水素添加大豆レシチン(HSPC)を70.8g及びコレステロールを29.1g秤量し、無水エタノール(100mL)を添加し、加温溶解した。 (2)リポソーム形成工程 250mMに調製した硫酸アンモニウム溶液900mLを70℃付近に加温し、均一化工程を経て得られた脂質のエタノール溶液100mLに添加することで得られた分散液を撹拌し粗リポソーム分散液を得た。得られた粗リポソーム分散液を65℃付近に加温したエクストルーダーを用い、孔径100nmのポリカーボネイトメンブランフィルターを5回通過させリポソーム分散液を得た。 (3)親水性高分子添加工程 得られたリポソーム分散液を加温状態で維持したまま、PEG5000−DSPE溶液(7.69g/200mL(注射用水))を直ちに添加し、加温攪拌することでリポソームにPEG5000−DSPEを導入した(PEG5000−DSPEの導入率(mol%)=0.75)。 【0064】 (比較例2)従来法 (1)均一化工程 水素添加大豆レシチン(HSPC)を70.8g及びコレステロールを29.1g秤量し、無水エタノール(100mL)を添加し、加温溶解した。 (2)リポソーム形成工程 250mMに調製した硫酸アンモニウム溶液900mLを70℃付近に加温し、均一化工程を経て得られた脂質のエタノール溶液100mLに添加することで得られた分散液を撹拌し粗リポソーム分散液を得た。得られた粗リポソーム分散液を65℃付近に加温したエクストルーダーを用い、孔径100nmのポリカーボネイトメンブランフィルターを5回通過させリポソーム分散液を得た。 【0065】 (試験例3)リポソームの安定性(温度条件) 調製例2及び比較例2で調製したリポソーム分散液を調製直後に氷冷した。冷却後のリポソームの平均粒子径を測定した結果を表1に示す。親水性高分子添加工程を含む本発明の製造法で調製した調製例2では平均粒子径及び粒度分布パターンは全く変化しなかった(図4)。しかし、親水性高分子添加工程を含まない従来法を用いた比較例2では氷冷することでリポソームの凝集が進み、粒子径の増大及び単一ピークではなく複数のピークの粒度分布が観察された(図5)。この結果、本処方においてはリポソーム形成工程直後に冷却するのではなく、親水性高分子添加工程後に冷却することが望ましいことが明らかになった。 【0066】 【表1】
*)複数ピークの平均粒子径として算出 【0067】 (試験例4)リポソームの安定性(保持時間) 調製例2及び比較例2で調製したリポソーム分散液を調製直後から60分間、65℃で加温した状態を維持した。保持時間におけるリポソームの平均粒子径を測定した結果を表2及び図8に示す。親水性高分子添加工程を含む本発明の製造法で調製した調製例2では平均粒子径及び粒度分布パターンは全く変化しなかった(図6)。しかし、親水性高分子添加工程を含まない従来法を用いた比較例2では保持時間が長くなるとリポソームの凝集が進み、粒子径の増大及び単一ピークではなく複数のピークの粒度分布が観察された(図7)。この結果、親水性高分子添加工程を導入することで、リポソーム凝集を抑えることができることが明らかになった(図8)。また、本処方においてはリポソーム形成工程直後から、親水性高分子添加工程に移行するまでの時間は45分以内であることが望ましいが明らかになった。 【0068】 【表2】
*)複数ピークの平均粒子径として算出 【0069】 (実施例3) 本発明の製造法と従来の製造法についての比較を行うため、調製例3及び比較例3においてリポソームを製造した。 【0070】 (調製例3)本発明の製造法 (1)均一化工程 水素添加大豆レシチン(HSPC)を70.8g及びコレステロールを29.1g秤量し、無水エタノール(100mL)を添加し、加温溶解した。 (2)リポソーム形成工程 250mMに調製した硫酸アンモニウム溶液900mLを70℃付近に加温し、均一化工程を経て得られた脂質のエタノール溶液100mLに添加することで得られた分散液を撹拌し粗リポソーム分散液を得た。得られた粗リポソーム分散液を65℃付近に加温したエクストルーダーを用い、孔径100nmのポリカーボネイトメンブランフィルターを5回通過させリポソーム分散液を得た。 (3)親水性高分子添加工程 得られたリポソーム分散液を加温状態で維持したまま、PEG5000-DSPE溶液(7.69g/200mL(注射用水))を直ちに添加し、加温攪拌することでリポソームにPEG5000-DSPEを導入した(PEG5000−DSPEの導入率(mol%)=0.75)。加温終了後のリポソーム分散液は速やかに氷冷した。 (4)未封入薬物除去工程(外液置換工程) 冷却されたリポソーム分散液を分画分子量300Kのポリエーテルスルホン製の限外ろ過膜を用いてタンジェンシャルフローフィルトレーション法を行い10mM ヒスチジン/10%スクロース溶液(pH6.5)溶液にて外液置換をした。 (5)無菌化工程 外液置換後のリポソーム分散液を加圧タンクに移し、約1.5kg/cm2の圧力をかけて、0.2μmのろ過滅菌用フィルターを通過させ、ろ過滅菌を行った。 【0071】 (比較例3)従来法 (1)均一化工程 水素添加大豆レシチン(HSPC)を70.8g及びコレステロールを29.1g秤量し、無水エタノール(100mL)を添加し、加温溶解した。 (2)リポソーム形成工程 250mMに調製した硫酸アンモニウム溶液900mLを70℃付近に加温し、均一化工程を経て得られた脂質のエタノール溶液100mLに添加することで得られた分散液を撹拌し粗リポソーム分散液を得た。得られた粗リポソーム分散液を65℃付近に加温したエクストルーダーを用い、孔径100nmのポリカーボネイトメンブランフィルターを5回通過させリポソーム分散液を得た。 (3)未封入薬物除去工程(外液置換工程) 冷却されたリポソーム分散液を分画分子量300Kのポリエーテルスルホン製の限外ろ過膜を用いてタンジェンシャルフローフィルトレーション法を行い、10mM ヒスチジン/10%スクロース溶液(pH6.5)溶液にて外液置換をした。 (4)無菌化工程 リポソーム分散液に凝集物が存在するため、0.2μmのろ過滅菌フィルターが目詰まりを起こし、ろ過滅菌ができなかった。 【0072】 (試験例5)リポソームの安定性(無菌化工程) 調製例3及び比較例3における各工程でのリポソームの粒子径についての結果を表3に示す。本発明の製造法においては粒子径の増大無く、無菌化工程を経て最終製剤を製造することができたが、従来法においては未封入薬物除去工程(外液置換工程)において粒子径の増大が確認され、0.2μmのろ過滅菌フィルターが目詰まりを起こし、ろ過滅菌ができなかった。調製例3により得られた最終製剤の物性値を表4に示す。その結果、PEG5000-DSPEがほぼ仕込どおり導入されていることが明らかになった。以上の結果、本発明の製造法を用いることにより、ナノメートル域まで微粒子化しても粒度分布のシャープなリポソームを工程中における物理的安定性を損なうことなく製造することができることが明らかになった。 【0073】 【表3】
【0074】 【表4】
【0075】 (実施例4) 本発明の製造法を用いて薬物を内封したリポソームを製造した。 【0076】 (調製例4)本発明の製造法を用いた薬物内封リポソームの製造 (1)均一化工程 水素添加大豆レシチン(HSPC)を7.1g及びコレステロールを2.9g秤量し、無水エタノール(10mL)を添加し、加温溶解した。 (2)リポソーム形成工程 6.78g/100mL(PBS:生理食塩水−リン酸緩衝液(pH7.2))に調製したリン酸プレドニゾロン溶液90mLを70℃付近に加温し、均一化工程を経て得られた脂質のエタノール溶液10mLに添加することで得られた分散液を撹拌し粗リポソーム分散液を得た。得られた粗リポソーム分散液を65℃付近に加温したエクストルーダーを用い、孔径200nm及び100nmのポリカーボネイトメンブランフィルターを通過させリポソーム分散液を得た。 (3)親水性高分子添加工程 得られたリポソーム分散液を加温状態で維持したまま、PEG5000-DSPE溶液(0.77g/20mL(注射用水))を直ちに添加し、加温攪拌することでリポソームにPEG5000-DSPEを導入した。加温終了後のリポソーム分散液は速やかに氷冷した。 (4)未封入薬物除去工程(外液置換工程) 冷却されたリポソーム分散液に5倍量の外水相(PBS:生理食塩水−リン酸緩衝液(pH7.2))を加えて希釈した後、分画分子量300Kのポリエーテルスルホン製の限外ろ過膜を用いてタンジェンシャルフローフィルトレーション法を行い未封入薬物除去を行った。 (5)無菌化工程 未封入薬物除去後のリポソーム分散液を濃度調製し、加圧タンクに移した後、約1.5kg/cm2の圧力をかけて、0.2μmのろ過滅菌用フィルターを通過させ、ろ過滅菌を行った。 【0077】 (試験例5)リポソームの物性値 調製例4で得られたリポソームの各物性値を分析した。結果を表5に示す。 【0078】 【表5】
【図面の簡単な説明】 【0079】 【図1】本発明の製造方法の概略を表す概略図である。 【図2】均一化工程のエタノール存在及び非存在下のPEG5000-DSPEを導入効率(%)の時間依存性を示す図である。 【図3】均一化工程のエタノール存在時PEG5000-DSPEを導入効率(%)の温度依存性を示す図である。 【図4】PEG導入リポソームを氷冷した場合の粒度分布を示す図である。 【図5】PEG未導入リポソームを氷冷した場合の粒度分布を示す図である。 【図6】PEG導入リポソームを60分間加温保持した場合の粒度分布を示す図である。 【図7】PEG未導入リポソームを60分間加温保持した場合の粒度分布を示す図である。 【図8】保持時間と粒子径の関係について示す図である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000109543 【氏名又は名称】テルモ株式会社 【住所又は居所】東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目44番1号
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| 【出願日】 |
平成17年3月30日(2005.3.30) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2006−273812(P2006−273812A) |
| 【公開日】 |
平成18年10月12日(2006.10.12) |
| 【出願番号】 |
特願2005−99917(P2005−99917) |
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