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【発明の名称】 粘度調整剤及びその用途
【発明者】 【氏名】西本 純

【氏名】石原 愛弓

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度調整剤であって、経口投与又は経管投与のさいに、濃厚流動食又は経腸栄養剤と混合して、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤を調製するための、イオタカラギーナンを主成分として含む粘度調整剤。
【請求項2】
粘度調整剤がイオタカラギーナンを1.0〜2.0w/w%含む水溶液である請求項1の粘度調整剤。
【請求項3】
請求項1又は2の粘度調整剤を、経口投与又は経管投与のさいに、濃厚流動食又は経腸栄養剤と混合してゲル化又は増粘させることを特徴とする、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤の調製方法。
【請求項4】
請求項3の方法により調製された、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤。
【請求項5】
請求項4により嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤を調製するための、粘度調整剤及び濃厚流動食又は経腸栄養剤を組み合わせたキット。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は濃厚流動食又は経腸栄養剤の経口投与又は経管投与における、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤及びそれらを調製するための粘度調整剤に関する。さらに、この粘度調整剤を用いた食品又は栄養剤の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍や手術による舌やのどの構造の変化やそれを動かす神経や筋肉の低下によって、食物を口腔より胃に送り込む摂食・嚥下が困難となった人達には、誤嚥を防ぐため飲食物に粘度を付けたりゲル化させたりした後に経口投与することで、摂食・嚥下しやすくする工夫が行われている。しかし、経口投与のために、栄養がバランスよく摂れる濃厚流動食又は経腸栄養剤に市販されているトロミ調整食品を用いる場合、粘度を付けるのに時間がかかるという問題があった。
【0003】
また、経腸栄養剤や濃厚流動食の投与による嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は胃食道逆流による誤嚥を防ぐために、鼻や口から入れたチューブや胃瘻によって経管投与する方法がとられているが、この場合でも、濃厚流動食又は経腸栄養剤(以下流動食という)が胃の中に一定量以上溜まったり、その状態で体位を水平にすることで嘔吐をしたり、胃食道逆流して気管から肺へ侵入することで誤嚥を起こしたり、急速な投与によって下痢をしたりする場合がある。
【0004】
経管投与による、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止するための方法として、流動食の投与速度を低下する、流動食の投与量を減らす、流動食を希釈して流れやすくする、投与後も1〜2時間上半身を起こす等、様々な工夫がなされてきた。しかしこれらの方法で胃食道逆流による誤嚥が防げるわけではなく、流動食の投与時間の延長、栄養の不足、褥瘡等の問題もあった。
また、胃瘻の人達に流動食をゲル化して摂取する方法も行われているが、ゲル化のために粉末寒天を用いた場合では、熱湯で寒天を溶解した後に、流動食と混ぜシリンジに入れ、冷やして固め、再度室温や人肌に温めるため、手間がかかる。
近年では、流動食を投与した前後に、ペクチンやカラギーナン等の増粘剤を含む溶液を投与して、胃の中でゲル化する方法も開示されているが(例えば、特許文献1参照)、2度の投与が必要となるため、時間がかかる。従って、より簡便かつ容易に利用できる食品又は栄養剤及びそれを調製するための粘度調整剤の開発が望まれていた。
【特許文献1】国際公開第00/13529号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、濃厚流動食又は経腸栄養剤の経口投与又は経管投与における、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤及びそれらを調製するための粘度調整剤の提供を課題とする。さらに、この粘度調整剤を用いた食品又は栄養剤の調製方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、イオタカラギーナンに着目した。イオタカラギーナンを主成分として含む粘度調整剤を、濃厚流動食又は経腸栄養剤と混合すると直ちにゲル化又は増粘し、時間が経過してもほぼ一定な粘度を保持する食品又は栄養剤が得られることを見出した。そこで、この粘度調整剤を用いると、経口投与又は経管投与のさいに、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤が調製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は次の(1)〜(5)のいずれかの粘度調整剤及びそれを用いて調製された食品又は栄養剤に関する。
(1)粘度調整剤であって、経口投与又は経管投与のさいに、濃厚流動食又は経腸栄養剤と混合して、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤を調製するための、イオタカラギーナンを主成分として含む粘度調整剤。
(2)粘度調整剤がイオタカラギーナンを1.0〜2.0w/w%含む水溶液である上記(1)の粘度調整剤。
(3)上記(1)又は(2)の粘度調整剤を、経口投与又は経管投与のさいに、濃厚流動食又は経腸栄養剤と混合してゲル化又は増粘させることを特徴とする、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤の調製方法。
(4)上記(3)の方法により調製された、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤。
(5)上記(4)により嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤を調製するための、粘度調整剤及び濃厚流動食又は経腸栄養剤を組み合わせたキット。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粘度調整剤は、経口投与又は経管投与のさいに、濃厚流動食又は経腸栄養剤と混合するだけで好ましい粘度にゲル化又は増粘することができ、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤を調製できる。この粘度調整剤を用いた食品又は栄養剤の調製は簡便かつ迅速でありかつそれらの投与も容易であることから、短時間での栄養補給が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の「粘度調整剤」とは、流動食を経口投与又は経管投与する場合に、患者の嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤を調製するための増粘剤を含む剤のことをいう。
本発明における「増粘剤」としてはイオタカラギーナンが用いられる。イオタカラギーナンとは紅藻類海藻から抽出、精製される天然高分子物質で、水溶液は蛋白質や2価のカチオンと反応し、ゲル化や増粘性を示すことが知られている。本発明ではイオタカラギーナンのこれらの性質により、濃厚流動食又は経腸栄養剤と混合することで、直ちに好適な粘度を有するゲル化又は増粘された食品又は栄養剤が手軽に調製できる。そして、この食品又は栄養剤の粘度は時間が経ってもほとんど変わらない。
なお、本発明のゲル化とは、調製された食品又は栄養剤が、塊りや固形状になることをいい、増粘とは粘度が付いているがゲル化していない状態になることをいう。本発明は、この食品又は栄養剤を用いることにより、経口投与又は経管投与における、摂取者の嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は嚥下を予防又は防止するものである。
【0010】
本発明の粘度調整剤はイオタカラギーナンを主成分として含み、さらにペクチン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、カッパカラギーナン、ラムダカラギーナン、グアーガム、ローストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、でん粉、及びジェランガム等から選択される1種以上の増粘剤を含んでもよい。また、増粘剤以外に適量のデキストリン等の分散材等を含んでもよい。
本発明の粘度調整剤は、濃厚流動食又は経腸栄養剤と混合したときに、急激に部分的なゲル化をすることなく、簡便かつ迅速に、かつ均一にゲル化できることが必要である。本発明の粘度調整剤は、これを満たす濃度のイオタカラギーナンを含んでいればいずれのものも用いることができる。なかでもイオタカラギーナンを主成分として含む水溶液であることが好ましく、イオタカラギーナンを1.0〜2.0w/w%含む水溶液、さらにイオタカラギーナンを1.3〜1.7w/w%含む水溶液であることが好ましい。
【0011】
本発明の粘度調整剤の調製にあたり、イオタカラギーナンを主成分として含む水溶液を、例えば、80℃までの加熱溶解によって得ることができる。このイオタカラギーナンを含む水溶液を、クエン酸等によってpHを4.5から5.0に調整して、品温90℃、20分間に相当する加熱殺菌によって、6ヶ月〜1年程の常温長期保存が可能な本発明の粘度調整剤を調製することができる。この時pH調整に用いる酸は特に問わない。
また、イオタカラギーナンを含む水溶液をレトルト可能な袋等に充填し、F値4以上の高温に高圧処理することで6ヶ月〜1年程の常温長期保存が可能な本発明の粘度調整剤を調製することもできる。
このようにして調製する粘度調整剤は、一回の使用に必要な量を測り取り、包材や容器の形態は特に問わず、例えば、透明パウチ、アルミパウチ袋等に分注して殺菌することができる。
【0012】
本発明の粘度調整剤により調製された食品又は栄養剤は、経口投与における嘔吐及び/又は誤嚥の予防又は防止に用いることができ、経管投与による胃食道逆流とこれによる嘔吐・誤嚥又は下痢の予防又は防止に用いることができる。
経口投与において食品又は栄養剤の好ましい粘度は、嘔吐及び/又は誤嚥の予防又は防止が可能であれば、いずれの粘度であってもよい。例えば、厚生労働省の特別用途食品の高齢者用そしゃく・えん下困難者用食品の許可基準では、ゾル状食品の粘度としては1500 mPa・s以上である(食品表示マニュアル、152頁、2004年追録時、中央法規出版)。
経管投与において食品又は栄養剤の好ましい粘度は、胃食道逆流とこれによる嘔吐・誤嚥又は下痢の予防又は防止が可能であり、且つシリンジで注入可能であれば、いずれの粘度であってもよく、投与に用いるチューブの太さに応じて調製することもできる。投与方法が、例えば経鼻や経口による投与であれば、胃瘻よりもチューブが細くなるため、上限の粘度が下がることになる。
【0013】
本発明の食品又は栄養剤の調製にあたり、使用する濃厚流動食又は経腸栄養剤は、本発明の粘度調整剤と混合することで、ゲル化又は増粘できる流動食であれば、市販のいずれの流動食も用いることができる。なお、本発明の食品とは、濃厚流動食をゲル化又は増粘させたもののことをいい、栄養剤とは経腸栄養剤をゲル化又は増粘させたものをいう。
濃厚流動食は、例えば、リキッドダイエットK4A(キューピー社製)、MA8(クリニコ社製)、アイソカルRTU(ノバルティスファーマ社製)、F2α 抹茶(エスエス製薬社製)、テルミールf ヨーグルト(テルモ社製)、ライフロン6(日清キョーリン製薬社製)及びL5(旭化成ファーマ社製)等を用いることができる。また、経腸栄養剤は、例えばエンシュア・リキッド(アボット社製)、ラコール(大塚製薬社製)等を用いることができる。なお、市販されているほとんどの濃厚流動食又は経腸栄養剤は粘度が50mPa・s以下である。
【0014】
嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は嚥下を予防又は防止できる食品又は栄養剤を調製するための、本発明の粘度調整剤の使用量は、混合する濃厚流動食又は経腸栄養剤を十分にゲル化又は増粘できる量であればいずれでもよい。これを満たしていれば、必要最小限の量を用いることが好ましい。必要最小限の粘度調整剤を用いることにより、混合物の投与量が必要最小限で済み、短時間で摂取させることができる。
粘度調整剤の好ましい使用量は、混合する濃厚流動食又は経腸栄養剤の種類によって異なるが、濃厚流動食又は経腸栄養剤に対して粘度調整剤を1〜18:1の比率で混合することが好ましく、特に6:1以上の比率で混合するとしっかりしたゲル状になる場合が多い。
例えば、リキッドダイエットK4Aを用い、混合物全量を100gとする場合では、その混合物に含まれる粘度調整剤の量が14.3g〜50gの間のいずれかである場合に、十分にゲル化された食品が調製できる。さらに、14.3gを用い、混合比率が6:1の場合に、経管投与においてスムーズに注入できる食品が調製できる(実施例2)。
【0015】
さらに、本発明の嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は嚥下を予防又は防止できる食品又は栄養剤の調製方法は、混合の対象とする濃厚流動食又は経腸栄養剤に応じていずれの方法も用いることができる。
調製の対象となる濃厚流動食又は経腸栄養剤が室温で使用できるものであれば、粘度調整剤を室温で混合することで、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は嚥下を予防又は防止できる食品又は栄養剤を調製することができる。また、体温まで温めて利用する必要があるものであれば、調製の対象となる濃厚流動食又は経腸栄養剤に応じて、粘度調整剤も室温あるいは同程度の温度に温めて混合することもできる。
経口摂取するために、食品又は栄養剤を調製する場合には、室温程度のものを調製し、そのまま又は冷やして摂取することが好ましい。また、経管投与するために、食品又は栄養剤を調製する場合には、室温程度のものから体温に近い温度まで温められたものを調製することが好ましい。
【0016】
本発明の粘度調整剤は、濃厚流動食又は経腸栄養剤と組み合わせてキットとすることもできる。さらに必要に応じて経管投与用のカテーテルシリンジ、チューブ、攪拌用の容器、ビーカー、薬さじ等又はこれらのいずれかと組み合わせてキットとすることもできる。
以下、本発明の詳細を実施例等で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
粘度調整剤の調製
嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤を得るための粘度調整剤を調製した。
<粘度調整剤1>
デキストリン6.4 w/w %及びイオタカラギーナン1.5 w/w%を水道水に分散させ、95℃まで加熱溶解し、30℃まで冷却後、クエン酸溶液を添加し、pH4.7±0.2になるよう調整し透明パウチに充填、湯煎にて品温90℃、20分間維持し加熱殺菌した。pH及び殺菌条件の設定により、長期保存可能な粘度調整剤を得た。20℃での粘度は2060mPa・sであった。
<粘度調整剤2>
デキストリン6.4 w/w %及びイオタカラギーナン1.5 w/w%を水道水に分散させ、95℃まで加熱溶解し、50℃まで冷却後、レトルト対応の袋に充填し、110℃〜120℃、10〜50分間、高温高圧殺菌器にて殺菌した。高温高圧処理により、長期保存可能な粘度調整剤を得た。F値4〜15であった。20℃での粘度は2500mPa・sであった。
【実施例2】
【0018】
食品aの調製
嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品aを簡便かつ迅速にゲル化して調製した。食品aの調製にあたり、市販濃厚流動食(リキッドダイエットK4A:キューピー社製)及び上記で調製した粘度調整剤1を用いた。リキッドダイエットK4Aの栄養成分は表1に示した。
【0019】
【表1】


【0020】
室温を20℃として、リキッドダイエットK4A及び粘度調整剤1をそれぞれ20℃にし、表2の(1)〜(6)に記載の比率になるように、一本のカテーテルシリンジ中にそれぞれ吸引した。このカテーテルシリンジの挿入口にラップで封をした後、30秒間手で振騰することにより、カテーテルシリンジ中の混合物を均一にゲル化した。得られた食品を食品a(1)〜(6)とした。
【0021】
振騰直後の食品a(1)〜(6)を、ゲルを壊さないよう押し出さずに100mlビーカーに入れ、20℃、20分静置したものを、B型粘度計を用いて、12rpmでの食品a(1)〜(6)の粘度について測定した。
また、20℃の恒温器に20分間静置した食品a(1)〜(6)について、シリコン製胃瘻チューブ20Frを装着し、チューブを用いた場合の押し出し具合と通過の様子を確認した。チューブを用いた場合の通過の様子は次のA〜Cで評価した。
A: とてもスムーズに注入できる。
B: 通過はスムーズだが注入にやや力を要する。
C: 通過はスムーズだが注入にかなり力を要する。
【0022】
結果を表2に示した。表2に示されるように、リキッドダイエットK4Aに対して、本発明の粘度調整剤1を混合物100gあたり、14.3g又は16.7g加えた場合の通過の様子はA、20.0g加えた場合はB、さらに25.0g、33.3g、50.0g加えた場合はCであることが確認された。
しかし、どの食品においても、押し出し時にチューブとシリンジの接合部から漏れることも、シリンジが脱離することもなく、安定して通過させることができた。従って、どの粘度の食品においても胃瘻に用い得ることが示された。
【0023】
【表2】


【実施例3】
【0024】
食品bの調製
嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品bを簡便かつ迅速にゲル化して調製した。食品bの調製にあたり、市販濃厚流動食(MA8:クリニコ社製)及び上記で調製した粘度調整剤1を用いた。MA8の栄養成分は表3に示した。
【0025】
【表3】


【0026】
MA8及び粘度調整剤1をそれぞれ20℃にし、混合比率が6:1になるように、100mlのビーカーにMA8を42.0g、粘度調整剤1を7.0g投入し、30秒間薬さじで撹拌することにより、混合物を均一にゲル化した。得られた食品を食品bとした。
【0027】
[比較例1]
本発明の粘度調整剤の代わりとして、市販の粉末のトロミ調整食品トロミアップA(日清サイエンス社製)又はトロミクリア(ライオン商事社製)をそれぞれ3 w/w %又は5 w/w%になるように市販濃厚流動食(MA8:クリニコ社製)に分散し30秒撹拌し、食品c又は食品dを調製した。
【0028】
上記で調製した食品b、c、dの粘度を調べた。食品b、c、dを室温(20℃)に置いて、30秒間の撹拌後0〜90分経過後の食品の粘度について、上記実施例2と同様の方法で粘度測定を行った。各時間経過後の粘度を表4に示した。表4に示されるように、食品bでは、30秒間の撹拌で簡便かつ迅速に、最終的な粘度にゲル化されていることが示された。経過時間によって、粘度が誤差の範囲で変化するものの、ゲル化時の粘度をほぼ安定して維持していることが確認された。一方、トロミ調整食品を用いた食品c、dは30秒の撹拌後、すぐに粘度が発現せず、十分な増粘には時間がかかることが示された。従って、本発明の粘度調整剤により、簡便かつ迅速に、最終的な粘度にゲル化された食品が得られることが示された。
【0029】
【表4】


【実施例4】
【0030】
食品b(1)〜(10)の調製
室温を20℃として、市販濃厚流動食(MA8:クリニコ社製)及び粘度調整剤2をそれぞれ20℃にし、表5の(1)〜(10)に記載の比率になるように100mlのビーカーに入れ、30秒間薬さじで撹拌することにより、混合物を均一にゲル化又は増粘した。得られた食品を食品b(1)〜(10)とした。
【0031】
食品b(1)〜(10)について、各食品を20℃の恒温器に20分間静置した後、上記実施例2と同様の方法で粘度測定を行い、室温にした市販濃厚流動食及び粘度調整剤2を用いることで、得られた各食品の粘度を調べた。
各食品の粘度を表5に示した。表5に示されるように、市販濃厚流動食及び調整剤2を用いた場合に、1〜9:1のいずれの混合比率においても、適度な粘度にゲル化した食品が得られることが示された。
【0032】
【表5】


【実施例5】
【0033】
食品e(1)〜(9)の調製
嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品eを簡便かつ迅速にゲル化又は増粘して調製した。食品eの調製にあたり、市販濃厚流動食(テルミールミニαいちご:テルモ社製)及び上記で調製した粘度調整剤2を用いた。テルミールミニαいちごの栄養成分は表6に示した。
【0034】
【表6】


【0035】
室温を20℃として、テルミールミニαいちご及び粘度調整剤2をそれぞれ20℃にし、表7の(1)〜(9)に記載の比率になるように100mlのビーカーに入れ、30秒間薬さじで撹拌することにより、混合物を均一にゲル化又は増粘した。得られた食品を食品e(1)〜(9)とした。
【0036】
食品e(1)〜(9)について、各食品を20℃の恒温器に20分間静置した後、上記実施例2と同様の方法で粘度測定を行った。
各食品の粘度を表7に示した。表7に示されるように、市販濃厚流動食及び調整剤2を用いた場合に、20:1の混合比率では経口投与に用いる場合に十分な粘度は得られないが、1〜18:1の混合比率では、いずれにおいても、適度な粘度にゲル化又は増粘した食品が得られることが示された。
【0037】
【表7】


【0038】
[比較例2]
本発明の粘度調整剤の代わりとして、市販のLMペクチン LM−SN−325(デグサ社製)を用いた。20℃の市販濃厚流動食(MA8:クリニコ社製)と、LMペクチン LM-SN-325を4 w/w%になるように水に分散し、90℃まで加熱溶解させ、20℃まで冷却したペクチン溶液を、混合し、30秒撹拌し、食品f、g、hを調製した。食品fは混合比率が6:1(171.4g:28.6g)、食品gは3:1(150g:50g)、食品hは1:1(100g:100g)になるように調製した。
【0039】
食品f、g、hをビーカーに移し室温(20℃)に置いて、30秒間の撹拌後0分又は20分経過後の食品の粘度について、上記実施例2と同様の方法で粘度測定を行った。各時間経過後の粘度を表8に示した。表8に示されるように、本発明の粘度調整剤を用いた場合と比べて、LMペクチンを主成分としたものでは6:1の比率の混合では、十分な粘度が得られないことが示された。従って、LMペクチンを用いて十分にゲル化又は増粘された食品を得るには、少なくとも3:1〜1:1の混合比率が必要であり、本発明の粘度調整剤を用いる場合と比べてLMペクチンを多く混合させる必要があることが示された。
【0040】
【表8】


【実施例6】
【0041】
食品i〜mの調製
簡便かつ迅速にゲル化でき、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品i〜mを調製した。食品i〜mの調製にあたり、表9に記載のそれぞれの市販濃厚流動食及び上記で調製した粘度調整剤1又は粘度調整剤2を用いた。それぞれの市販濃厚流動食の栄養成分は表9に示した。
【0042】
【表9】


【0043】
室温を20℃として、各市販濃厚流動食及び粘度調整剤1又は粘度調整剤2をそれぞれ20℃にし、混合比率が6:1になるように、上記市販濃厚流動食を85.7g、粘度調整剤1又は粘度調整剤2を14.3gビーカーに入れ、薬さじで撹拌することにより、ビーカー中の混合物を均一にゲル化又は増粘した。得られた食品を食品i〜mとした。
【0044】
食品i〜mについて、各食品を20℃の恒温器に20分間静置した後、上記実施例2と同様の方法で粘度測定を行った。
各食品の粘度を表10に示した。表10に示されるように、調整剤1又は調整剤2を用いた場合のいずれにおいても、適度な粘度にゲル化又は増粘した食品が得られることが示された。
【0045】
【表10】


【実施例7】
【0046】
食品n〜rの調製
簡便かつ迅速にゲル化又は増粘でき、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品n〜rを調製した。食品n〜rの調製にあたり、表9に記載のそれぞれの市販濃厚流動食及び上記で調製した粘度調整剤1又は粘度調整剤2を用いた。
【0047】
室温20℃として、各市販濃厚流動食を37℃に温め、粘度調整剤1又は粘度調整剤2を20℃にし、混合比率が6:1になるように、市販濃厚流動食を85.7g、粘度調整剤1又は粘度調整剤2を14.3gビーカーに入れ、薬さじで撹拌することにより、ビーカー中の混合物を均一にゲル化又は増粘した。得られた食品を食品n〜rとした。
【0048】
食品n〜rについて、各食品を20℃の恒温器に20分間静置した後、上記実施例2と同様の方法で粘度測定を行い、37℃に温めた市販濃厚流動食及び粘度調整剤1又は粘度調整剤2を用いることで、得られた各食品の粘度を調べた。測定時の品温は31℃であった。
各食品の粘度を表11に示した。表11に示されるように、調整剤1又は調整剤2を用いた場合のいずれにおいても、適度な粘度にゲル化又は増粘した食品が得られることが示された。
【0049】
【表11】


【実施例8】
【0050】
本発明の粘度調整剤1を用い、種々の市販濃厚流動食について、実施例4と同様の条件でゲル化を行い、食品を調製した。種々の市販濃厚流動食の組成及び、調製により得られた食品の粘度を表12に示した。表12に示されるように、本発明の粘度調整剤は、種々の市販濃厚流動食の簡便かつ迅速なゲル化に容易であることが示された。
【0051】
【表12】


【実施例9】
【0052】
栄養剤s、tの調製
嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる栄養剤s、tを簡便かつ迅速にゲル化して調製した。栄養剤s、tの調製にあたり、表13に記載のそれぞれの市販経腸栄養剤及び上記で調製した粘度調整剤1を用いた。それぞれの市販経腸栄養剤の栄養成分は表13に示した。
【0053】
【表13】


【0054】
室温20℃として、市販経腸栄養剤及び粘度調整剤1をそれぞれ20℃にし、上記市販経腸栄養剤が85.7g及び粘度調整剤1が14.3gになるようにビーカーに入れ、薬さじで撹拌することにより、ビーカー中の混合物を均一にゲル化した。得られた栄養剤を栄養剤s、tとした。
【0055】
栄養剤s、tについて、各栄養剤を20℃の恒温器に20分間静置した後、上記実施例2と同様の方法で粘度測定を行った。
各栄養剤の粘度を表14に示した。表14に示されるように、市販経腸栄養剤に対しても、本発明の粘度調整剤により、直ちに適度な粘度にゲル化された栄養剤が得られることが確認された。
【0056】
【表14】


【実施例10】
【0057】
キットの製造
1.5 w/w%のイオタカラギーナン溶液を21gアルミパウチに入れ、F値5になるようにレトルト殺菌して得た粘度調整剤と、濃厚流動食としてテルモ社製のテルミールミニ(バナナ)125mlを組み合わせキットとした。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によって得られた粘度調整剤は、簡便かつ容易に濃厚流動食や経腸栄養剤を増粘又はゲル化することができ、経口投与での誤嚥の予防又は防止を、また経管投与での嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥の予防又は防止をできる食品又は栄養剤を調製できる。
この食品又は栄養剤を経管投与に用いる場合では短時間で栄養を補給することができ、上半身を長時間起こしておく必要がなくなるため褥瘡の予防、患者への負担軽減ができるほか、経管投与、経口投与ともに誤嚥による肺炎のリスクを大きく軽減できる。

【出願人】 【識別番号】500153574
【氏名又は名称】ヘルシーフード株式会社
【出願日】 平成17年3月30日(2005.3.30)
【代理人】 【識別番号】100090941
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 清也

【識別番号】100076244
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 清規

【識別番号】100133905
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良夫

【識別番号】100127421
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 さなえ

【公開番号】 特開2006−273804(P2006−273804A)
【公開日】 平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願番号】 特願2005−99461(P2005−99461)