| 【発明の名称】 |
医薬組成物 |
| 【発明者】 |
【氏名】森下 真莉子
【氏名】高山 幸三
【氏名】井田 伸夫
【氏名】青木 孝夫
【氏名】柿澤 資訓
【氏名】西尾 玲士
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| 【要約】 |
【課題】生理活性タンパク質を経口または経腸投与して、活性を保持した状態で血中に移行させうる医薬組成物を提供する。これにより、生理活性タンパク質の経口経腸投与が可能となり、患者の苦痛、不便を大幅に改善する薬剤を提供することが出来る。
【解決手段】生理活性タンパク質を、十分な活性を保持した状態で腸管内から血中に移行させる医薬組成物であって、成分として生理活性タンパク質およびカチオン性ペプチドを含有し、生理活性タンパク質とカチオン性ペプチドが共有結合で連結されていない医薬組成物。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 生理活性タンパク質を、十分な活性を保持した状態で腸管内から血中に移行させる医薬組成物であって、成分として生理活性タンパク質およびカチオン性ペプチドを含有し、生理活性タンパク質とカチオン性ペプチドが共有結合で連結されていない医薬組成物。 【請求項2】 カチオン性ペプチドと生理活性タンパク質の混合比が、モル比((カチオン性ペプチドのモル数)/(生理活性タンパク質のモル数))として3000以下である請求項1記載の医薬組成物。 【請求項3】 カチオン性ペプチドが、アルギニンオリゴマーあるいはその誘導体である請求項1または2に記載の医薬組成物。 【請求項4】 カチオン性ペプチドが、D−アルギニンオリゴマーあるいはその誘導体である請求項1または2に記載の医薬組成物。 【請求項5】 カチオン性ペプチドが、5−15残基のD−アルギニンからなるオリゴマーである請求項1または2に記載の医薬組成物。 【請求項6】 カチオン性ペプチド化合物が、プロタミンあるいはその部分ペプチドあるいはその誘導体である請求項1または2に記載の医薬組成物。 【請求項7】 生理活性タンパク質の等電点が7以下である請求項1〜6のいずれかに記載の医薬組成物。 【請求項8】 生理活性タンパク質の分子量が、30000以下である請求項1〜7のいずれかに記載の医薬組成物。 【請求項9】 生理活性タンパク質が、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン、インターフェロン類、インターロイキン類、およびG−CSFから選ばれる請求項1〜8のいずれかに記載の医薬組成物。 【請求項10】 生理活性タンパク質が、インスリンである請求項1〜8のいずれかに記載の医薬組成物。 【請求項11】 粉末または固形製剤である請求項1〜10のいずれかに記載の医薬組成物。 【請求項12】 生理活性タンパク質を動物に投与する方法であって、請求項1〜11のいずれかに記載の医薬組成物を経口または経腸投与する方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、生理活性タンパク質の活性を保持した状態で腸管内から血中に移行させるための医薬組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 これまでに、ペプチドやタンパク質からなるいくつかの生理活性物質が臨床現場に登場し、医薬品として使用されて顕著な治療効果を示している。しかしながら、現在その投与方法はほとんどの場合注射剤に限られている。これは、ペプチドやタンパク質は経口投与をした際には消化管に存在するプロテアーゼによる分解を受け、また腸管からの吸収効率が低いために経口投与されたペプチドやタンパク質のごく一部しか血中に到達しないことが主な理由となっている。特に後者については、腸管は本来生体にとって有害な物質を体内に入れないための障壁としての役割を担っているために、腸管上皮細胞層は本質的にペプチド、タンパク質のようなある程度以上の分子量を有する親水性の物質を透過させにくい性質を有しており、この障壁を越えて生理活性タンパク質を血中に移行させることは非常に困難と考えられている。 【0003】 薬剤を注射投与することは、特に治療が頻回、長期にわたる場合には患者および医師にとって大きな負担であり、このため生理活性ペプチドやタンパク質を経口投与可能にするための様々な方法が検討されてきた。例えば添加物として界面活性剤などを共存させて人工的に腸管の浸透性を向上させる方法が試みられているが、非特異的に腸管透過性を上げる物質を用いることは生体にとって有害な物質も体内に流入する危険性を排除できない。 【0004】 近年、特定の配列を有するカチオン性ペプチドが、親水性であるにもかかわらず細胞膜を透過する性質を有することが見いだされてきている。中でもHIV−1 Tatタンパク質の部分ペプチドや、6−9個のアルギニン残基からなるオリゴマーペプチドは、細胞膜を効率よく透過して細胞内に移行することが示されており、このような細胞透過性のペプチドに蛋白質、DNA、糖などをコンジュゲート化することで目的物質を効率よく細胞内に取り込ませることが可能であることが報告されている(特許文献1、2参照)。 【0005】 このような細胞透過性ペプチドと薬剤のコンジュゲートを用いることで経口投与した薬剤を腸壁を透過させて血中へ移行させることは、可能性として提示はされているものの、実証には到っていない。これは、腸壁を透過させて薬剤を血中に移行させることは、腸壁細胞層を構成する上皮細胞の管腔側の刷子縁膜と血管側の側底膜の2つのバリアを透過する必要があり、細胞内への侵入とは異なった機能が必要とされることに起因すると考えられる。また、細胞透過性ペプチドと薬剤を共有結合させたコンジュゲートを用いる場合の問題点としては、コンジュゲート化によって薬剤の構造が変化してしまうということがあげられる。特に薬剤が生理活性ペプチドやタンパク質の場合には、ペプチド/タンパク質の特定の部位にのみ選択的に透過性ペプチドを共有結合させることは困難であるため、結合したペプチド/タンパク質の中には高い確率で生理活性発現に重要な部位が修飾を受けて活性が低下したもの出現することが予想される。特に分子量の小さな生理活性ペプチド/タンパク質の場合には修飾の影響をより受けやすいと考えられる。 【0006】 また、生理活性タンパク質に共有結合修飾を行わずに腸管吸収性を向上させる試みとして、透過性キャリアとして分子内に疎水性部分を有する低分子量のアミノ酸誘導体を共存させる方法が報告されている(特許文献2参照)が、この方法では共存させるアミノ酸誘導体中の疎水性部分と細胞膜との非特異的かつ受動的な弱い作用で取り込みが起こると考えられ、高い効率で生理活性タンパク質を血中に移行させることは困難であり、必然的に用いるキャリアの量が非常に多くなってしまう。このことは、生体成分ではない修飾アミノ酸誘導体であるキャリアを大量に生体に投与することによる望ましくない影響への懸念につながる。また大量のキャリアを必要とすることはコストの点からも望ましくない。 【特許文献1】特開2001−199997号公報 【特許文献2】特表2003−523984号公報 【特許文献3】特表平8−509474号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明の目的は、生理活性タンパク質を経口または経腸投与して、活性を保持した状態で血中に移行させうる医薬組成物を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 上記課題を克服するために、本発明者らは、通常の条件では経口投与による血中移行性の低い生理活性タンパク質に対して、その透過性を向上させる手段を検討した結果、生理活性タンパク質とカチオン性ペプチドが共有結合されていない組成物が有効であることを見いだした。 【0009】 すなわち、本発明は以下のような構成を有する。 【0010】 生理活性タンパク質を、十分な活性を保持した状態で腸管内から血中に移行させる医薬組成物であって、成分として生理活性タンパク質およびカチオン性ペプチドを含有し、生理活性タンパク質とカチオン性ペプチドが共有結合で連結されていない医薬組成物。 【発明の効果】 【0011】 本発明により、生理活性タンパク質の経口または経腸投与が可能となり、従来の注射による投与法に比べ、簡便で患者に優しい薬物治療が可能となる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0012】 本発明は、生理活性タンパク質を、十分な活性を保持した状態で腸管内から血中に移行させる医薬組成物であって、成分として生理活性タンパク質およびカチオン性ペプチドを含有し、生理活性タンパク質とカチオン性ペプチドが共有結合で連結されていない医薬組成物である。 【0013】 本発明において用いられるカチオン性ペプチドは、少なくとも一つの塩基性のアミノ酸(アルギニンまたはリジンまたはヒスチジン)を含有し、中性条件下で正荷電を有するペプチドをいう。ペプチドの長さは50アミノ酸残基以下が好ましく、さらに好ましくは長さが20アミノ酸残基以下、さらに好ましくは10アミノ酸残基以下のものが用いられる。ペプチドを構成する全アミノ酸の中で、塩基性のアミノ酸の占める割合は30%以上であることが好ましく、さらに好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上が塩基性のアミノ酸から構成される。 【0014】 本発明において用いられるカチオン性ペプチドは、アルギニンオリゴマーあるいはその誘導体であることが好ましい。アルギニンを含有するペプチドは特に好適であり、全アミノ酸残基中の50%以上がアルギニンであるペプチドはより好ましい。70%以上がアルギニンであるペプチドはさらに好ましい。アルギニンが5個以上連続した配列を有するペプチドは特に好ましく用いられる。 【0015】 本発明のカチオン性ペプチドを構成するアミノ酸は、天然に存在するアミノ酸の他に、天然のアミノ酸の構造を一部改変した誘導体など非天然のアミノ酸も使用されうる。例えば、立体配置がD体のアミノ酸は、腸管中に存在する蛋白分解酵素による分解を受けにくいことから有効に使用されうる。 【0016】 さらに、本発明のカチオン性ペプチドは、D−アルギニンオリゴマーあるいはその誘導体であることが好ましい。さらに、本発明のカチオン性ペプチドは、5−15残基のD−アルギニンからなるオリゴマーであることが好ましい。さらに、本発明のカチオン性ペプチドは、カチオン性ペプチド化合物が、プロタミンあるいはその部分ペプチドあるいはその誘導体であることが好ましい。 【0017】 本発明のカチオン性ペプチドは、通常のペプチド合成の方法を用いて合成することが可能である。あるいは大腸菌などの微生物、動物細胞、昆虫細胞などに目的とするカチオン性ペプチドを含む配列をコードする遺伝子を導入して発現させて作製することも可能である。あるいは、天然に存在するペプチドを単離または単離後分解して用いることも可能である。例えば、サケ、ニシンなどの魚類の精巣から単離されるプロタミンは、注射薬として安全に使用されている実績のあるカチオン性ペプチドであり、安価に単離精製することが可能であることから、本発明のカチオン性ペプチドとして好適である。カチオン性ペプチドは、単一のペプチドとしてもまたは2種以上のペプチドの混合物としても使用することができる。 【0018】 本発明で使用される生理活性タンパク質としては、ペプチドホルモン、酵素タンパク質、抗体などがある。例えば、副甲状腺ホルモン(PTH)、カルシトニン、インスリン、アンギオテンシン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、ガストリン、成長ホルモン、プロラクチン(黄体刺激ホルモン)、ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)、サイロトロピックホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、バソプレシン、オキシトシン、プロチレリン、黄体形成ホルモン(LH)、コルチコトロピン、ソマトロピン、チロトロピン(甲状腺刺激ホルモン)、ソマトスタチン(成長ホルモン刺激因子)、視床下部ホルモン(GnRH)、G−CSF、エリスロポエチン、HGF、EGF、VEGF、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン類、スーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)、ウロキナーゼ、リゾチーム、ワクチン等をあげることができる。生理活性タンパク質は、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン、インターフェロン類、インターロイキン類、およびG−CSFであることが好ましく、さらに、インスリンがより好ましい。 【0019】 これら生理活性タンパク質は、天然のタンパク質またはペプチドであっても、その配列の一部を改変した誘導体であっても構わない。また、ポリエチレングリコール(PEG)化などの化学的な修飾を行った誘導体であっても構わない。 【0020】 生理活性タンパク質の大きさは、特に限定されるものではないが、十分高い腸管透過効率を得るためには分子量が30000以下であることが望ましく、10000以下であることがさらに望ましい。 【0021】 また、本発明で用いられる生理活性タンパク質の等電点は特に限定されるものではないが、カチオン性ペプチドと良好な複合体を形成して高い効率で腸管を透過するには好ましくは等電点が7以下が好ましく、より好ましくは等電点が5.5以下の生理活性タンパク質を用いることが望ましい。例えばインスリンは頻回投与が必要な比較的分子量の小さいタンパク質であり、等電点が7以下でカチオン性ペプチドと良好な複合体を形成しうることから特に好適に使用されうる。 【0022】 本発明でいう生理活性タンパク質が活性を保持した状態で腸管内から血中に移行するとは、血中に移行した生理活性タンパク質が通常その活性を測定する条件において、例えば、酵素であれば酵素活性、細胞の受容体に作用する物質であれば受容体との結合能あるいは標的細胞の機能を変化させる能力などを保持していることをいう。血中に移行した生理活性タンパク質の活性を、免疫学的測定などにより測定しうるその存在量に対する比で表した比活性で見たときに、(血中移行後の生理活性タンパク質が保持している比活性)/(腸管透過前の生理活性タンパク質の比活性)の値が0.1以上であることが望ましく、0.5以上であることがさらに望ましい。 【0023】 本発明で用いられるカチオン性ペプチドは、その量が多すぎると腸管に対して非特異的な障害作用を示す可能性があり、またコストの面でも投与量が少ないことが望ましい。このため、本医薬組成物における生理活性タンパク質とカチオン性ペプチドの混合比は、(カチオン性ペプチドの分子数)/(生理活性タンパク質の分子数)の数値として、3000以下であることが望ましく、より好ましくは1000以下であり、より好ましくは200以下である。 【0024】 本発明の医薬組成物は、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。このような担体および添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などが挙げられる。 【0025】 本発明の医薬組成物は、溶液、固体、粉末状などの種々の形態で使用されうるが、安定性及び取扱いの容易さから、例えば、凍結乾燥等の方法で固形状あるいは粉末状にした形態が好ましく、粉末または固形製剤であることが好ましい。 【0026】 経口投与に用いられる医薬組成物としては、好ましくは腸溶性製剤として、例えば腸溶性カプセル等に充填するか、あるいは錠剤として打錠された後、腸溶性コーティングを行うなどの方法によって腸溶性の経口投与用医薬組成物として使用される。 【0027】 本発明の医薬組成物を、動物(ヒトを含む)に経口または経腸投与する方法には、特にその具体的形態に制限はない。例えば、経口剤としては、乾燥状態のものあるいは溶液状のものをそのまま服用したり、あるいはそれを賦形剤とともにカプセルに充填して服用したり、さらには乾燥状態のものを水に一旦もどして分散させてから服用したりすることができる。坐剤の形態を利用して直腸等に直接的に投与することもできる。生理活性タンパク質を動物に投与する方法は、経口または経腸投与することが好ましい。 【0028】 本発明により、これまで注射剤として用いられてきた生理活性タンパク質の経口経腸投与が可能となり、患者の苦痛、不便を大幅に改善する薬剤を提供することが出来る。これらの注射剤が患者に与える苦痛や通院の不便を改善することは医療現場における患者本位の医療を実現するだけではなく、これまでのタンパク質製剤の概念を根底から変え、画期的製剤の創製につながる。 【実施例】 【0029】 以下に実施例を示すが、本発明はこれら実施例により限定されるものでない。 【0030】 実施例1 オリゴアルギニンペプチドによるインスリンin vivo(ラット)腸管吸収促進効果。 【0031】 <方法> 1.インスリン溶液の調製 ヒトリコンビナントインスリン(和光純薬)1.923mg(=50IU=0.33μmol)を秤量し、0.1M塩酸50μlに溶解した。これにメチルセルロース(MC)添加リン酸生理緩衝液pH7.4(PBS)1.2mlおよび0.1MNaOH溶液50μlを加えて中和し、さらにMC添加PBS1.2mlを加えて総容量を2.5mlとした。(インスリン濃度0.769mg/ml=20IU/ml)。 【0032】 2.インスリン−アルギニン6merペプチド混合液の調製 L−アルギニン6merペプチドまたはD−アルギニン6merペプチド(シグマジェノシス社にて合成)それぞれ2.5mg(2.6μmol)または5mg(5.2μmol)を秤量し、上記1で作製したインスリン溶液0.5ml(インスリン0.385mg=0.066μmol)を添加して溶解し、オリゴアルギニンペプチド−インスリン混合溶液とした。コントロール(オリゴアルギニンペプチド無し)については、インスリン溶液そのものを投与に用いた。 【0033】 3.ラット腸管吸収実験 24時間絶食した体重約200gのSD系雄性ラットにペントバルビタールナトリウム50mg/kgを腹腔内注射することにより麻酔した後、正中線に沿って開腹し、腸管を露出した。回盲接合部から2−3cm回腸よりの部分からシリコンチューブを、およびその上部約10cmの部分からゾンデを挿入し、さらに内側6cmの部分に縫合糸を通した。 【0034】 ゾンデから、あらかじめ37℃に加温したリン酸生理緩衝液pH7.4(PBS)40mlを流速5ml/minで流し込んで内容物を排出させた後、シリコンチューブに栓をして、ゾンデからあらかじめ37℃に加温したPBS1mlを投与し、30分貯留させた。投与後は速やかにゾンデに栓をして、腸管を腹腔内に戻して切開部をクリップで閉じ安静にした。 【0035】 貯留後、ゾンデおよびシリコンチューブの栓をはずし、ループ内にあらかじめ37℃に加温したPBS20mlを流速5ml/minで流し込んで内容物を排出させた後、あらかじめ縫合糸を通した6cmの部分を結紮してループを作成した。このループ内に、2.で調製したオリゴアルギニンペプチド−インスリン混合溶液0.5mlを投与し、腸管を腹腔内に戻し、切開部をクリップで閉じ安静にした。 【0036】 実験中のラットは、温水循環ポンプにより37℃に加温したホットプレート上に背位で固定し体温調節を行った。 【0037】 投与前および投与後5、10、15、30、60、120、180、240分後に頸静脈より0.25mlを採血し、ノボアシストプラスを用いて血糖値の測定を行った。残りの血液は遠心分離により血漿に分離し、酵素免疫測定法によりインスリン濃度を定量した。 【0038】 <結果> L−アルギニン6mer、D−アルギニン6merペプチドいずれについても、コントロールのインスリンのみの投与と比べて、血中インスリン濃度の明らかな上昇、および血糖値の明らかな低下が認められた(図1、2)。 【0039】 実施例2 サケプロタミンによるインスリンin vivo(ラット)腸管吸収促進効果。 【0040】 <方法> サケプロタミン(シグマ社製)21.5mg(5μmol)を秤量した。実施例1と同様にして調製したインスリン溶液0.5mlを添加して溶解し、インスリン−サケプロタミン混合溶液とした。ラット腸管吸収の評価は、実施例1と同様の方法で行った。 【0041】 <結果> サケプロタミン−インスリン混合溶液を投与することにより、コントロールのインスリンのみの投与と比べて、血中インスリン濃度の明らかな上昇、および血糖値の明らかな低下が認められた(図3,4)。 【0042】 実施例3 オリゴアルギニンペプチドによるin vitroインスリン回腸粘膜透過促進効果。 【0043】 <方法> 1.インスリン溶液の調製 ヒトリコンビナントインスリン(和光純薬)26.1mgを秤量し、0.1M HCl溶液 300μlを加え溶かした後、Krebs-Ringer Buffer 3.9ml及び 0.1M NaOH溶液 300mlを加えて4.5mlとしインスリン溶液(1mM)とした。 【0044】 2.インスリン−アルギニン6merペプチド混合液の調製 L−アルギニン6merペプチド2.1mgを秤量し、上記で作製したインスリン溶液550μlに溶解して、インスリン−オリゴアルギニンペプチド混合溶液とした(アルギニンペプチド濃度4mM、インスリン濃度1mM。)。 【0045】 3.回腸粘膜透過実験 24時間絶食した体重約 200gのWistar系雄性ラットにペントバルビタールナトリウム 50mg/kgを腹腔内注射することにより麻酔し、腸管組織を摘出し常法に従い筋層剥離後、Ussing chamberに装着し、donor及びreceiver側にKrebs-Ringer Buffer 5mlを加えた。膜を20分間安定させた後、donor側から2mlを採取すると同時に、インスリンおよびオリゴアルギニンペプチド混合溶液2mlを加えた。(反応時濃度:インスリン0.4mM、オリゴアルギニンペプチド1.6mM。)これを開始時(0分)とし以降、10、15、30、60、90、120、150、180分後にreceiver側より 100μlをサンプリング(同容量のKrebs-Ringer Bufferで置換)し、酵素免疫測定法にてインスリン濃度を測定した。 【0046】 <結果> インスリン−オリゴアルギニンペプチド混合溶液を用いた場合には、コントロールのインスリンのみの溶液を用いた場合と比較して、インスリンの回腸粘膜透過性の明らかな促進が認められた(図5)。 【0047】 実施例4 サケプロタミンによるin vivo(マウス)インスリン腸管吸収促進効果。 【0048】 <方法> ヒトリコンビナントインスリン(和光純薬)4mgを秤量し、0.1M塩酸200μlに溶解した。これにリン酸生理緩衝液pH7.4(PBS)1.2mlおよび0.1MNaOH溶液200μlを加えて中和し、さらにPBSを加えて総容量を10.5mlとした。(インスリン濃度0.38mg/ml)。 【0049】 サケプロタミン(シグマ社製)17.5mgに、上記で調製したインスリン溶液0.2ml(76μg)を添加して溶解し、インスリン−サケプロタミン混合溶液とした。 【0050】 24時間絶食させたBALB/c系雄マウスにペントバルビタールナトリウム溶液15mg/kgを腹腔内に注射することにより麻酔した後、正中線に沿って開腹し腸管を露出した。回盲接合部から2−3cm回腸寄りの部分からシリコンチューブを、およびその上部10cmの部分からゾンデを挿入し、シリコンチューブとゾンデの内側2cmの部分にそれぞれ縫合糸を通した。 【0051】 シリコンチューブから腸管内へあらかじめ37℃に加温したPBS溶液20mlを通過させ腸管内を洗浄した後、ゾンデ側の縫合糸を結紮してシリコンチューブより作成したインスリン−サケプロタミン混合液0.2mlを投与し、シリコンチューブ側の縫合糸を結紮してループを形成させた後、腸管を腹腔内に戻し切開部をクリップで閉じ安静にした。実験中のマウスは、37℃加温マットにより背位で固定し体温調整を行った。 【0052】 投与前、および投与後30、60、90、120、150分後に尾動脈より20μlの血液を採取し富士ドライケム(富士フィルム社)を用いて血中グルコース濃度を測定した。また血液の一部を5000rpm、10分間遠心して得た血漿を、インスリンELISAキット(矢内原研究所)を用いて血液中のインスリン濃度を定量した。 【0053】 <結果> プロタミンとインスリンの混合液をマウス腸管に投与することにより、コントロールのインスリンのみの投与と比べて、マウス血中のインスリン濃度の明らかな上昇、および血糖値の明らかな低下が認められた(図6、7)。 【0054】 実施例5 オリゴアルギニンペプチドによるインスリンの腸管上皮細胞(Caco2)単層透過促進効果。 【0055】 <方法> 1.蛍光色素(フルオレセイン)標識インスリンの調製 ヒトリコンビナントインスリン(和光純薬)10mgを秤量し、0.1M HCl溶液 250μlに溶解した後、PBS 2.5ml及び 0.1M NaOH溶液 250μlを加えて3mlとした。この溶液を、脱塩カラム(アマシャム社PD−10)を用いて脱塩し、6mlの50mM炭酸水素ナトリウム溶液とした。(インスリン濃度1.67mg/ml)。この溶液に、4.8mgのNHS−フルオレセイン(ピアス社)を0.6mlの50mM炭酸水素ナトリウム溶液に溶解した液を全量添加し、25℃で4時間反応させた。さらに1Mのトリス塩酸緩衝液(pH8)0.6mlを添加して30分間反応させた後、脱塩カラムを用いて10mlの純水に対して脱塩し、未反応のNHS−フルオレセインを除去することで、フルオレセイン標識インスリン水溶液を得た。 【0056】 2.Caco2細胞単層透過試験 10%の胎仔ウシ血清を添加したD−MEM培地中で、37℃、5%のCO2の条件下に、Caco−2細胞をトランスウェル(Transwell)(Corning社製、メンブレン直径12mm、培養面積1.0cm2、孔サイズ0.4μm)フィルター上で培養した。2日〜3日ごとに培地を交換して21日間培養することで十分に分化した細胞単層を得た。 フィルター上の細胞単層をHBSS溶液で洗浄後、フルオレセイン標識インスリン0.77mg/mlおよびオリゴアルギニンペプチド(L−アルギニン6mer)を0、1.25または5mg/mlの濃度で含むHBSS溶液を0.5mlをapical側に添加し、30、60、120分後にbasolateral側の透過液(容量1.5ml)から0.1mlを回収して5.5倍に希釈後、蛍光プレートリーダーにて透過したフルオレセインインスリンに由来する蛍光(励起波長490nm、検出波長520nm)を測定した。既知濃度のフルオレセインインスリン溶液の蛍光測定値をもとに、透過液サンプル中のフルオレセインインスリンの濃度を算出した。 【0057】 インスリンの透過率は、以下の式 basolateral側に透過したインスリン総量(μg)/apical側に添加したインスリン総量(μg)x100(%) で算出した。 【0058】 <結果> オリゴアルギニンペプチド(L−Arg6mer)の添加により、透過するインスリン量の明らかな増大が認められた(表1)。 【0059】 【表1】
【0060】 実施例6 オリゴアルギニンペプチドによるインターフェロンin vivo(ラット)腸管吸収促進効果。 【0061】 <方法> L−アルギニン6merペプチド5mgおよびインターフェロンβ(東レ製)を含有するPBS溶液0.5mlを調製し、実施例1と同様にして全量をラット腸管内に投与した。投与するインターフェロンβ量は、ラット体重kgあたり2.25x106IUとなるように調製した。経時的に採血を行い、血漿中のインターフェロンβ濃度をELISA法(鎌倉テクノサイエンス社製キット)にて測定した。 【0062】 <結果> オリゴアルギニン−インターフェロンβ混合溶液を投与することにより、コントロールのインターフェロンβのみの投与と比べて、血中インターフェロンβ濃度の上昇が認められた(図8)。 【図面の簡単な説明】 【0063】 【図1】各量のL−アルギニンまたはD−アルギニン6merペプチドと混合したインスリンをラット腸管ループ内に投与し、経時的に採血した血漿サンプル中のインスリン濃度を測定した結果を示す。Insulin solutionは、インスリンのみを投与したコントロールラットでの結果を示す。 【図2】図1の各サンプルにおける血糖値測定結果を示す。 【図3】サケプロタミンと混合したインスリンをラット腸管ループ内に投与し、経時的に採血した血漿サンプル中のインスリン濃度を示す。Insulin solutionは、インスリンのみを投与したコントロールラットでの結果を示す。 【図4】図3の各サンプルにおける血糖値測定結果を示す。 【図5】実施例3のin vitro回腸粘膜透過実験において、L−アルギニン6merペプチド存在下および非存在下(コントロール)それぞれの条件での透過液中のインスリン濃度を経時的に測定し、累積透過量として表示した結果を示す。 【図6】サケプロタミンと混合したインスリンをマウス腸管ループ内に投与し、経時的に採血した血漿サンプル中のインスリン濃度を示す。Insulin solutionは、インスリンのみを投与したコントロールマウスでの結果を示す。 【図7】図6の各サンプルにおける血糖値測定結果を示す。 【図8】L−アルギニン6merペプチドと混合したインターフェロンβをラット腸管ループ内に投与し、経時的に採血した血漿サンプル中のインターフェロンβ濃度を測定した結果を示す。Interferon solutionは、インターフェロンβのみを投与したコントロールラットでの結果を示す。各値は、n=3実験の平均値を示す。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003159 【氏名又は名称】東レ株式会社
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| 【出願日】 |
平成18年2月10日(2006.2.10) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2006−257074(P2006−257074A) |
| 【公開日】 |
平成18年9月28日(2006.9.28) |
| 【出願番号】 |
特願2006−34041(P2006−34041) |
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