| 【発明の名称】 |
硫酸転移酵素阻害剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】山瀬 利博
【氏名】山下 克子
【氏名】瀬古 玲
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| 【要約】 |
【課題】糖脂質及び糖蛋白質の糖鎖に硫酸基を導入する硫酸転移酵素の触媒活性を阻害するヘテロポリ酸イオンを提供する。
【解決手段】ケギン構造を有するヘテロポリタングステン酸イオン又はヘテロポリバナジウム酸であって、下記一般式(1)〜(9)で表される硫酸転移酵素阻害剤。 (XYyW12−yO40−o(O2)o)P− (1)(但し、Xは、周期律表IIIB族,IVB族、VB族、VI族原子から選ばれた原子であり、Yは、周期律表IVA族、VA族、VIA族、VIIA族、VIIIA族、IB族、IIB族から選ばれた原子であり、Wは5価又は6価のタングステン原子であり、yは0〜6の整数、oは0〜4の整数、pは0〜14のイオン値である。)同様に、 (Yy(XW9Oo)2)P− (2) ((XYyW12−yO40−o−3(O2)o)nO3) (3) (XYyW18−yO62−o(O2)o)p− (4) (VmVnO36X)p− (5)等である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ケギン構造を有するヘテロポリタングステン酸イオンであって、下記の一般式(1)で表され、糖脂質及び糖蛋白質糖鎖に硫酸基を導入する硫酸転移酵素の活性を阻害する機能を有する硫酸転移酵素阻害剤。 [XYyW12−yO40−O(O2)O]P− ・・・(1) 但し、Xは、周期律表IIIB族、IVB族、VB族,VIB族原子のうちから選ばれる原子である。 Yは、周期律表、IVA族,VA族,VIA族,VIIA族,VIIIA族,IB族,IIB族原子のうちから選ばれる原子である。 Wは、タングステン原子であり、W6+又はW5+である。 yは、0〜6の任意の整数である。 Oは、y値とは無関係に選ばれる0〜4の整数である。 Pは、酸素原子を−2、(O2)を−2のマイナス電荷、X,Y,Wをそれぞれの陽イオンとしてのプラス電荷を陰イオンを構成する原子全てについて積算して得られる陰イオン値で0〜14までの値である。 【請求項2】 Xは、Al3+,B3+,Ga3+,Ga5+,C4+,Si4+,Ge4+,N5+,P3+,P5+,As5+,Sb3+,Sb5+,Bi3+,Bi5+,S6+,Se6+,Te6+,Sn4+,Pb4+,In3+,Tl3+から選択される原子であり、Yは、Ti4+,V5+,V4+,Nb5+,Fe3+,Fe2+,Ni2+,Cu2+,Co2+,Co3+から選択される原子であることを特徴とする請求項1記載の硫酸転移酵素阻害剤。 【請求項3】 ケギン型構造の一部の基本ユニットが欠損した欠損型ケギン構造により金属原子を包括するヘテロポリタングステン酸イオンであって、下記の一般式(2)で表され、糖脂質及び糖蛋白質糖鎖に硫酸基を導入する硫酸転移酵素の活性を阻害する機能を有する硫酸転移酵素阻害剤。 [Yy(XW9OO)2]P− ・・・(2) 但し、Xは、周期律表IIIB族、IVB族、VB族,VIB族原子のうちから選ばれる原子である。 Yは、周期律表IVA族,VA族,VIA族,VIIA族,VIIIA族,IB族,IIB族原子のうちから選ばれる原子である。 Wは、タングステン原子であり、W6+又はW5+である。 yは、0〜6の任意の整数である。 Oは、33又は34の整数である。 Pは、酸素原子を−2のマイナス電荷、X,Y,Wをそれぞれの陽イオンとしてのプラス電荷を陰イオンを構成する原子全てについて積算して得られる陰イオン値で0〜30までの値である。 【請求項4】 Xは、Al3+,B3+,Ga3+,Ga5+,C4+,Si4+,Ge4+,N5+,P3+,P5+,As5+,Sb3+,Sb5+,Bi3+,Bi5+,S6+,Se6+,Te6+,Sn4+,Pb4+,In3+,Tl3+から選択される原子であり、Yは、Ti4+,V5+,V4+,Nb5+,Fe3+,Fe2+,Ni2+,Cu2+,Co2+,Co3+から選択される原子であることを特徴とする請求項3記載の硫酸転移酵素阻害剤。 【請求項5】 ケギン構造を有するヘテロポリタングステン酸イオンであって、下記の一般式(3)で表され、糖脂質及び糖蛋白質糖鎖に硫酸基を導入する硫酸転移酵素の活性を阻害する機能を有する硫酸転移酵素阻害剤。 [{XYyW12−yO40−O−3(O2)O}nO3]P− ・・・(3) 但し、Xは、周期律表IIIB族、IVB族、VB族,VIB族原子のうちから選ばれる原子である。 Yは、周期律表IVA族,VA族,VIA族,VIIA族,VIIIA族,IB族,IIB族原子のうちから選ばれる原子である。 Wは、タングステン原子であり、W6+又はW5+である。(O2)は、ペルオキソ基であって、Y原子又はW原子に結合している。 yは、0〜6の整数である。 Oは、y値とは無関係に選ばれる0〜4の整数である。 Pは、酸素原子を−2、(O2)を−2のマイナス電荷、X,Y,Wをそれぞれの陽イオンとしてのプラス電荷を陰イオンを構成する原子全てについて積算して得られる陰イオン値で0〜14までの値である。 【請求項6】 Xは、Al3+,B3+,Ga3+,Ga5+,C4+,Si4+,Ge4+,N5+,P3+,P5+,As5+,Sb3+,Sb5+,Bi3+,Bi5+,S6+,Se6+,Te6+,Sn4+,Pb4+,In3+,Tl3+から選択される原子であり、Yは、Ti4+,V5+,V4+,Nb5+,Fe3+,Fe2+,Ni2+,Cu2+,Co2+,Co3+から選択される原子であることを特徴とする請求項5記載の硫酸転移酵素阻害剤。 【請求項7】 ドーソン構造を有するヘテロポリタングステン酸イオンであって、下記の一般式(4)で表され、糖脂質及び糖蛋白質糖鎖に硫酸基を導入する硫酸転移酵素の活性を阻害する機能を有する硫酸転移酵素阻害剤。 [XYyW18−yO62−O(O2)O]P− ・・・(4) 但し、Xは、周期律表IIIB族、IVB族、VB族,VIB族原子のうちから選ばれる原子である。 Yは、周期律表、IVA族,VA族,VIA族,VIIA族,VIIIA族,IB族,IIB族原子のうちから選ばれる原子である。 Wは、タングステン原子であり、W6+又はW5+である。 yは、0〜6の任意の整数である。 Oは、y値とは無関係に選ばれる0〜4の整数である。 Pは、酸素原子を−2、(O2)を−2のマイナス電荷、X,Y,Wをそれぞれの陽イオンとしてのプラス電荷を陰イオンを構成する原子全てについて積算して得られる陰イオン値で0〜14までの値である。 【請求項8】 Xは、Al3+,B3+,Ga3+,Ga5+,C4+,Si4+,Ge4+,N5+,P3+,P5+,As5+,Sb3+,Sb5+,Bi3+,Bi5+,S6+,Se6+,Te6+,Sn4+,Pb4+,In3+,Tl3+から選択される原子であり、Yは、Ti4+,V5+,V4+,Nb5+,Fe3+,Fe2+,Ni2+,Cu2+,Co2+,Co3+から選択される原子であることを特徴とする請求項7記載の硫酸転移酵素阻害剤。 【請求項9】 下記の一般式(5)で表されるヘテロポリバナジウム酸イオンであって、糖脂質及び糖蛋白質糖鎖に硫酸基を導入する硫酸転移酵素の活性を阻害する機能を有する硫酸転移酵素阻害剤。 [VIVmVVnO36(X)]P− ・・・(5) 但し、VIVは4価、VVは5価であることを示し、m+n=15、m=1〜14である。Xは、F−,Cl−,Br−,I−,CH3CO2−,CO32−,NO3−,SO42−から選択される。 【請求項10】 下記の一般式(6)で表されるヘテロポリバナジウム酸イオンであって、糖脂質及び糖蛋白質糖鎖に硫酸基を導入する硫酸転移酵素の活性を阻害する機能を有する硫酸転移酵素阻害剤。 [VIVmVVnO44(X)]P− ・・・(6) 但し、VIVは4価、VVは5価であることを示し、m+n=18,m=1〜17である。Xは、N3−,SCN−,CH3CO2−から選択される。 【請求項11】 下記の一般式(7)で表されるヘテロポリバナジウム酸イオンであって、糖脂質及び糖蛋白質糖鎖に硫酸基を導入する硫酸転移酵素の活性を阻害する機能を有する硫酸転移酵素阻害剤。 [VIVmVVnO42(X)]P− ・・・(7) 但し、VIVは4価、VVは5価であることを示し、m+n=18、m=1〜18である。Xは、F−,Cl−,Br−,I−,H2O,PO33−,SO32−,SO42−から選択される。 【請求項12】 下記の一般式(8)で表されるヘテロポリバナジウム酸イオンであって、糖脂質及び糖蛋白質糖鎖に硫酸基を導入する硫酸転移酵素の活性を阻害する機能を有する硫酸転移酵素阻害剤。 [VIVmVVnO54(X)]P− ・・・(8) 但し、VIVは4価、VVは5価であることを示し、m+n=22、m=1〜21である。Xは、MoO42−,ClO4−,SCN−,CH3CO2−から選択される。 【請求項13】 下記の一般式(9)で表されるヘテロポリバナジウム酸イオンであって、糖脂質及び糖蛋白質糖鎖に硫酸基を導入する硫酸転移酵素の活性を阻害する機能を有する硫酸転移酵素阻害剤。 [YVIVmVVnO27(X)4]P− ・・・(9) 但し、VIVは4価、VVは5価であることを示し、m+n=12、m=1〜11である。Xは、AsO43−,VVO43−,[PO3(CH3)]2−から選択され、(X)4は、AsO43−,VVO43−,[PO3(CH3)]2−が単独で4個含まれるか、混合されて構成される。また、Yは、K+,Na+,NH4+,Li+から選択される。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、糖脂質及び糖蛋白質糖鎖に硫酸基を導入する硫酸転移酵素の活性を阻害する機能を有する硫酸転移酵素阻害剤に関する。 【背景技術】 【0002】 糖脂質及び糖蛋白質糖鎖の硫酸化は、様々な複合糖質において最も多様なグリカン鎖の修飾の一つであり、硫酸化糖脂質及び硫酸化糖蛋白質の硫酸基は、ゴルジ膜に局在する硫酸転移酵素の触媒作用によって硫酸供与体であるアデノシン3リン酸5スルホリン酸(PAPS)から付与される。このとき受容体基質に応じた硫酸転移酵素が作用することが判っている。また、逆に、PAPSの類似化合物であるアデノシン5トリリン酸、アデノシン5リン酸等一部の有機酸は、硫酸転移酵素の酵素活性を阻害する阻害剤となることが経験的に知られている。しかし、これら以外に硫酸転移酵素の触媒活性を阻害する化合物は報告されていない。 【0003】 硫酸化糖脂質の生合成は、例えば、脳内ではミエリン形成時期、精巣では精子形成時期などに活発に行われるが、硫酸化糖脂質及びこの硫酸化糖脂質の生合成プロセスに関わる硫酸転移酵素、そしてこの硫酸転移酵素の生化学的解析、機能解析、硫酸化の生物学的機能等を分子レベルで解明することが求められている。 【0004】 また、硫酸化糖蛋白質は、様々な細胞表面に存在し、細胞間認識に関与していると推測されるが、ほとんどの場合、生物学的役割が明らかにされておらず、分子レベルでの機能解析が求められている。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 ところが、従来報告されている阻害剤は、何れも酵素活性反応溶液に対してmMオーダという高濃度で阻害効果を呈示するものであり、酵素活性を完全に抑制するには、阻害剤濃度を更に高める必要があった。硫酸転移酵素の解析を行う際、硫酸転移酵素に選択的に作用する阻害剤が有用になる。しかし、これまで硫酸転移酵素の触媒機能を阻害する阻害剤は、ほとんど知られていなかった。 【0006】 そこで本発明は、硫酸転移酵素の触媒活性を阻害する阻害剤として有効に働くヘテロポリ酸イオンを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者らは、硫酸転移酵素活性を阻害する化合物を検索するため、酵素活性測定系に様々な化合物を投与して触媒活性を測定するという操作を繰り返し、硫酸転移酵素の触媒作用を阻害する物質を誠意検討した結果、ポリ酸の一部が極めて有効な硫酸転移酵素阻害剤となりうることを見出した。 【0008】 本発明に係る硫酸転移酵素阻害剤は、ケギン構造を有するヘテロポリタングステン酸イオンであって、下記の一般式(1)で表される。 [XYyW12−yO40−O(O2)O]P− ・・・(1) 但し、Xは、周期律表IIIB族、IVB族、VB族,VIB族原子のうちから選ばれる原子であり、Yは、周期律表、IVA族,VA族,VIA族,VIIA族,VIIIA族,IB族,IIB族原子のうちから選ばれる原子である。また、Wは、タングステン原子であり、W6+又はW5+である。yは、0〜6の任意の整数であり、Oは、y値とは無関係に選ばれる0〜4の整数であり、Pは、酸素原子を−2、(O2)を−2のマイナス電荷、X,Y,Wをそれぞれの陽イオンとしてのプラス電荷を陰イオンを構成する原子全てについて積算して得られる陰イオン値で0〜14までの値である。 【0009】 また、本発明に係る硫酸転移酵素阻害剤は、ケギン型構造の一部の基本ユニットが欠損した欠損型ケギン構造により金属原子を包括するヘテロポリタングステン酸イオンであって、下記の一般式(2)で表される。 [Yy(XW9OO)2]P− ・・・(2) 但し、Xは、周期律表IIIB族、IVB族、VB族,VIB族原子のうちから選ばれる原子であり、Yは、周期律表IVA族,VA族,VIA族,VIIA族,VIIIA族,IB族,IIB族原子のうちから選ばれる原子である。また、Wは、タングステン原子であり、W6+又はW5+である。yは、0〜6の任意の整数であり、Oは、33又は34の整数であり、Pは、酸素原子を−2のマイナス電荷、X,Y,Wをそれぞれの陽イオンとしてのプラス電荷を陰イオンを構成する原子全てについて積算して得られる陰イオン値で0〜30までの値である。 【0010】 また、本発明に係る硫酸転移酵素阻害剤は、ケギン構造を有するヘテロポリタングステン酸イオンであって、下記の一般式(3)で表される。 [{XYyW12−yO40−O−3(O2)O}nO3]P− ・・・(3) 但し、Xは、周期律表IIIB族、IVB族、VB族,VIB族原子のうちから選ばれる原子であり、Yは、周期律表IVA族,VA族,VIA族,VIIA族,VIIIA族,IB族,IIB族原子のうちから選ばれる原子である。また、Wは、タングステン原子であり、W6+又はW5+である。(O2)は、ペルオキソ基であってY原子又はW原子に結合している。yは、0〜6の整数であり、Oは、y値とは無関係に選ばれる0〜4の整数であり、Pは、酸素原子を−2、(O2)を−2のマイナス電荷、X,Y,Wをそれぞれの陽イオンとしてのプラス電荷を陰イオンを構成する原子全てについて積算して得られる陰イオン値で0〜14までの値である。 【0011】 また、本発明に係る硫酸転移酵素阻害剤は、ドーソン構造を有するヘテロポリタングステン酸イオンであって、下記の一般式(4)で表される。 [XYyW18−yO62−O(O2)O]P− ・・・(4) 但し、Xは、周期律表IIIB族、IVB族、VB族,VIB族原子のうちから選ばれる原子であり、Yは、周期律表、IVA族,VA族,VIA族,VIIA族,VIIIA族,IB族,IIB族原子のうちから選ばれる原子である。また、Wは、タングステン原子であり、W6+又はW5+である。yは、0〜6の任意の整数であり、Oは、y値とは無関係に選ばれる0〜4の整数であり、Pは、酸素原子を−2、(O2)を−2のマイナス電荷、X,Y,Wをそれぞれの陽イオンとしてのプラス電荷を陰イオンを構成する原子全てについて積算して得られる陰イオン値で0〜14までの値である。 【0012】 特に上述した一般式(1),(2),(3),(4)に示す硫酸転移酵素阻害剤において、Xは、Al3+,B3+,Ga3+,Ga5+,C4+,Si4+,Ge4+,N5+,P3+,P5+,As5+,Sb3+,Sb5+,Bi3+,Bi5+,S6+,Se6+,Te6+,Sn4+,Pb4+,In3+,Tl3+から選択される原子であることが好ましく、また、Yは、Ti4+,V5+,V4+,Nb5+,Fe3+,Fe2+,Ni2+,Cu2+,Co2+,Co3+から選択される原子であることが好ましい。 【0013】 また、下記の一般式(5)〜(9)で表されるヘテロポリバナジウム酸イオンが糖脂質及び糖蛋白質糖鎖に硫酸基を導入する硫酸転移酵素の活性を阻害する硫酸転移酵素阻害剤になり得る。 [VIVmVVnO36(X)]P− ・・・(5) 但し、VIVは4価、VVは5価であることを示し、m+n=15、m=1〜14である。Xは、F−,Cl−,Br−,I−,CH3CO2−,CO32−,NO3−,SO42−から選択される。 【0014】 [VIVmVVnO44(X)]P− ・・・(6) 但し、VIVは4価、VVは5価であることを示し、m+n=18,m=1〜17である。Xは、N3−,SCN−,CH3CO2−から選択される。 【0015】 [VIVmVVnO42(X)]P− ・・・(7) 但し、VIVは4価、VVは5価であることを示し、m+n=18、m=1〜18である。Xは、F−,Cl−,Br−,I−,H2O,PO33−,SO32−,SO42−から選択される。 【0016】 [VIVmVVnO54(X)]P− ・・・(8) 但し、VIVは4価、VVは5価であることを示し、m+n=22、m=1〜21である。Xは、MoO42−,ClO4−,SCN−,CH3CO2−から選択される。 【0017】 [YVIVmVVnO27(X)4]P− ・・・(9) 但し、VIVは4価、VVは5価であることを示し、m+n=12、m=1〜11である。Xは、AsO43−,VVO43−,[PO3(CH3)]2−から選択されるものであり、(X)4は、AsO43−,VVO43−,[PO3(CH3)]2−が単独で4個含まれるか、混合されて構成される。また、Yは、K+,Na+,NH4+,Li+から選択される。 【0018】 上述したヘテロポリタングステン酸イオン及びヘテロポリバナジウム酸イオンは、糖脂質及び糖蛋白質糖鎖に硫酸基を導入する硫酸転移酵素に対して阻害効果を有し、数十〜数ナノM程度の濃度で硫酸転移酵素による受容体基質の硫酸化を50%阻害することができるという極めて有効な硫酸転移酵素阻害剤になり得る。 【0019】 また、上述した一般式(1)〜(9)に示したヘテロポリタングステン酸イオンとヘテロポリバナジウム酸イオンを含み、これらが複合された化合物もまた、糖脂質及び糖蛋白質糖鎖に硫酸基を導入する硫酸転移酵素に対して阻害効果を発揮する。 【発明の効果】 【0020】 本発明によれば、有益な硫酸転移酵素阻害剤を提供することができる。また、本発明に係る硫酸転移酵素阻害剤は、nM(mol/L)という極めて低濃度で硫酸転移酵素の触媒活性を有効に阻害することができるため、この硫酸転移酵素阻害剤を用いることにより、硫酸転移酵素の係わる様々な生命現象の分子レベルでの解析が著しく促進されることが期待できる。また、これら酵素が係わる様々な基礎的生命化学の分野において幅広く応用されることが期待される。 【発明を実施するための最良の形態】 【0021】 本発明は、糖脂質及び糖蛋白質糖鎖に硫酸基を導入する硫酸転移酵素の活性を阻害することのできる新規阻害剤として機能する化合物を提供するものである。 【0022】 本発明者らは、硫酸転移酵素活性を阻害する化合物を検索するため、酵素活性測定系に様々な化合物を投与して触媒活性を測定するという操作を繰り返すことによって、ポリ酸イオンの一部が極めて有効な硫酸転移酵素阻害剤となり得ることを見出した。ポリ酸イオンは、バナジウム(V5+,V4+)、ニオブ(Nb5+)、モリブデン(Mo6+)、タングステン(W5+,W6+)、タンタル(Ta5+)などの遷移金属イオンに酸化物イオン(O2−)が通常4〜6配位してできる四面体、四角錐、八面体などの多面体を基本単位として、これが綾又は頂点を介して多数縮合してできた多核錯体であり、金属原子の種類、また結合様式の相違により、例えばケギン型(Keggin-type)[PW12O40]3−、ドーソン型(Dawson-type)[P2W18O62]n−等、多種多様の構造を示す。かかるポリ酸イオンの特徴として、(1)水及び極性溶媒に対し高い溶解度を示し多くの配位水をもつ場合が多い点、(2)分子サイズ、構造、イオン電荷量、金属を分子レベルで制御することが容易である点、(3)金属の一部を非常に多くの異種金属で置換することが可能である点、(4)中性分子、イオンをゲストとするカプセル分子を形成し易い点などがあげられる。 【0023】 そして、本発明の具体例では硫酸転移酵素として、糖鎖のガラクトース残基の3位水酸基に硫酸基を転移することのできるGal3ST−1(galactose 3-O-sulfotransferase-1)及びGal3ST−2(galactose 3-O-sulfotransferase-2)を動物細胞であるCOS−7細胞にて発現させて阻害効果の検討実験に使用した。この発現細胞の粗膜画分に対して、最適な緩衝液、基質等を加え、さらに阻害効果の期待される候補化合物を加え、酵素反応を行った。そして、硫酸転移酵素の作用により生成される反応化合物を同定・定量することにより、添加した化合物の阻害効果を検討した。 【0024】 そして、本発明者らは、なかでも金属原子としてタングステンを包含したヘテロポリタングステン酸イオン、また、金属原子としてバナジウムを包含したヘテロポリバナジウム酸イオンが硫酸転移酵素の阻害剤として有効であることを突き止めた。 【0025】 第1に、下記の一般式(1)で表されケギン構造を有するヘテロポリタングステン酸イオンが硫酸転移酵素の阻害剤になりうることが判明した。 [XYyW12−yO40−O(O2)O]P− ・・・(1) ここで、Xは、周期律表IIIB族、IVB族、VB族,VIB族原子のうちから選ばれる原子であり、Yは、周期律表IVA族,VA族,VIA族,VIIA族,VIIIA族,IB族,IIB族原子のうちから選ばれる原子である。特にXは、Al3+,B3+,Ga3+,Ga5+,C4+,Si4+,Ge4+,N5+,P3+,P5+,As5+,Sb3+,Sb5+,Bi3+,Bi5+,S6+,Se6+,Te6+,Sn4+,Pb4+,In3+,Tl3+から選択される原子であることが好ましい。また、Yは、周期律表IVA族,VA族,VIA族,VIIA族,VIIIA族,IB族,IIB族原子のうちから選ばれる原子、すなわち周期律表4〜12族から選ばれる原子である。特に、Ti4+,V5+,V4+,Nb5+,Fe3+,Fe2+,Ni2+,Cu2+,Co2+,Co3+は好適に使用できる。 【0026】 また、Wは、タングステン原子であり、タングステンイオンは、W6+又はW5+を選択可能であり、これらの還元種であってもよい。yは、0〜6の任意の整数である。Oは、y値とは無関係に選ばれる0〜4の整数であり、0のときはペルオキソ基を含まない。すなわち、1〜4までの過酸化物であってもよい。Pは、酸素原子を−2、(O2)を−2の電荷とし、X,Y,Wをそれぞれの陽イオンとしてのプラス電荷を陰イオンを構成する原子全てについて積算して得られる陰イオン値であればよく、0〜14までの値が選択可能である。 【0027】 第2に、下記の一般式(2)表されるヘテロポリタングステン酸イオンもまた硫酸転移酵素阻害剤として有効であることが判明した。 [Yy(XW9OO)2]P− ・・・(2) ケギン型構造は、八面体ユニット(MO6)が1個又は3個欠損した構造を採ることも可能である。これらは欠損型ポリ酸と呼ばれる。一般式(2)は、ケギン型構造の一部の基本ユニットが欠損した欠損型ケギン構造により金属原子をサンドイッチするヘテロポリタングステン酸イオンである。 【0028】 ここで、Xは、周期律表IIIB族、IVB族、VB族,VIB族原子のうちから選ばれる原子であり、Yは、周期律表IVA族,VA族,VIA族,VIIA族,VIIIA族,IB族,IIB族原子のうちから選ばれる原子である。特にXは、Al3+,B3+,Ga3+,Ga5+,C4+,Si4+,Ge4+,N5+,P3+,P5+,As5+,Sb3+,Sb5+,Bi3+,Bi5+,S6+,Se6+,Te6+,Sn4+,Pb4+,In3+,Tl3+から選択される原子であることが好ましい。また、Yは、周期律表IVA族,VA族,VIA族,VIIA族,VIIIA族,IB族,IIB族原子のうちから選ばれる原子、すなわち周期律表4〜12族から選ばれる原子である。特に、Ti4+,V5+,V4+,Nb5+,Fe3+,Fe2+,Ni2+,Cu2+,Co2+,Co3+は好適に使用できる。 【0029】 また、Wは、タングステン原子である。タングステンイオンは、W6+又はW5+が選択可能であり、これらの還元種であってもよい。yは、0〜6の任意の整数である。Oは、33又は34の整数である。また、Pは、酸素原子を−2のマイナス電荷、X,Y,Wをそれぞれの陽イオンとしてのプラス電荷を陰イオンを構成する原子全てについて積算して得られる陰イオン値であればよく、0〜30までの値が選択可能である。 【0030】 第3に、下記の一般式(3)で表されケギン構造を有するヘテロポリタングステン酸イオンが硫酸転移酵素の阻害剤になり得ることが判明した。 [{XYyW12−yO40−O−3(O2)O}nO3]P− ・・・(3) ここで、Xは、周期律表IIIB族、IVB族、VB族,VIB族原子のうちから選ばれる原子であり、Yは、周期律表IVA族,VA族,VIA族,VIIA族,VIIIA族,IB族,IIB族原子のうちから選ばれる原子である。特にXは、Al3+,B3+,Ga3+,Ga5+,C4+,Si4+,Ge4+,N5+,P3+,P5+,As5+,Sb3+,Sb5+,Bi3+,Bi5+,S6+,Se6+,Te6+,Sn4+,Pb4+,In3+,Tl3+から選択される原子であることが好ましい。また、Yは、周期律表IVA族,VA族,VIA族,VIIA族,VIIIA族,IB族,IIB族原子のうちから選ばれる原子、すなわち周期律表4〜12族から選ばれる原子である。特に、Ti4+,V5+,V4+,Nb5+,Fe3+,Fe2+,Ni2+,Cu2+,Co2+,Co3+は好適に使用できる。 【0031】 また、Wは、タングステン原子である。タングステンイオンは、W6+又はW5+が選択可能であり、これらの還元種であってもよい。yは、0〜6の任意の整数である。Oは、y値とは無関係に選ばれる0〜4の整数である。Pは、酸素原子を−2、(O2)を−2のマイナス電荷、X,Y,Wをそれぞれの陽イオンとしてのプラス電荷を陰イオンを構成する原子全てについて積算して得られる陰イオン値であればよく、0〜14までの値をとることができる。 【0032】 第4に、下記の一般式(4)で表されドーソン構造を有するヘテロポリタングステン酸イオンが硫酸転移酵素の阻害剤になり得ることが判明した。 [XYyW18−yO62−O(O2)O]P− ・・・(4) ここで、Xは、周期律表IIIB族、IVB族、VB族,VIB族原子のうちから選ばれる原子であり、Yは、周期律表IVA族,VA族,VIA族,VIIA族,VIIIA族,IB族,IIB族原子のうちから選ばれる原子である。特にXは、Al3+,B3+,Ga3+,Ga5+,C4+,Si4+,Ge4+,N5+,P3+,P5+,As5+,Sb3+,Sb5+,Bi3+,Bi5+,S6+,Se6+,Te6+,Sn4+,Pb4+,In3+,Tl3+から選択される原子であることが好ましい。また、Yは、周期律表IVA族,VA族,VIA族,VIIA族,VIIIA族,IB族,IIB族原子のうちから選ばれる原子、すなわち周期律表4〜12族から選ばれる原子である。特に、Ti4+,V5+,V4+,Nb5+,Fe3+,Fe2+,Ni2+,Cu2+,Co2+,Co3+は好適に使用できる。 【0033】 また、金属原子としてバナジウムを包含した下記の一般式(5)〜(8)で表されるヘテロポリバナジウム酸イオンが糖脂質及び糖蛋白質糖鎖に硫酸基を導入する硫酸転移酵素の活性を阻害する硫酸転移酵素阻害剤になり得ることが判明した。 [VIVmVVnO36(X)]P− ・・・(5) 但し、VIVは4価、VVは5価であることを示し、m+n=15、m=1〜14である。Xは、F−,Cl−,Br−,I−,CH3CO2−,CO32−,NO3−,SO42−から選択される。 [VIVmVVnO44(X)]P− ・・・(6) 但し、VIVは4価、VVは5価であることを示し、m+n=18,m=1〜17である。Xは、N3−,SCN−,CH3CO2−から選択される。 [VIVmVVnO42(X)]P− ・・・(7) 但し、VIVは4価、VVは5価であることを示し、m+n=18、m=1〜18である。Xは、F−,Cl−,Br−,I−,H2O,PO33−,SO32−,SO42−から選択される。 [VIVmVVnO54(X)]P− ・・・(8) 但し、VIVは4価、VVは5価であることを示し、m+n=22、m=1〜21である。Xは、MoO42−,ClO4−,SCN−,CH3CO2−から選択される。 【0034】 例えば、K6H2[V15O36(CO3)]・4.5H2Oは、一般式(5)において、V15=VIV8VV7、すなわちm=8,n=7であり、X=CO3−であるときの具体例である。また、Na12H2[V18O44(N3)]・30H2Oは、一般式(6)において、V18=VIV15VV3、すなわちm=15,n=3であり、X=N3−であるときの具体例である。また、一般式(7)において、m=18(VIV18)、X=Cl−であるときの具体例としては、K9.5H3.5[V18O42(Cl)]・15H2O、K10H2[V18O42(H2O)]・16H2O等がある。また、K6H2[V22O54(MoO4)]・19H2Oは、一般式(8)において、m=8,n=14であり、X=MoO4−であるときの例である。 【0035】 また、ε−ケギンフラグメント構造とも呼ばれる下記一般式(9)に示すヘテロポリタングステン酸イオンもまた硫酸転移酵素阻害剤として働くことが判明した。 [YVIVmVVnO27(X)4]P− ・・・(9) 但し、VIVは4価、VVは5価であることを示し、m+n=12、m=1〜11である。Xは、AsO43−,VVO43−,[PO3(CH3)]2−から選択されるものであり、(X)4は、これらが単独で4個含まれていてもよいし、これらの混合系で構成されていてもよい。Yは、K+,Na+,NH4+,Li+から選択される。一般式(9)において、V12=VIV4VV8、すなわちm=4,n=8であり、X=AsO43−であるときの具体例として、K6H3[KV12O27(AsO4)4]・8H2Oがある。また、m=9,n=3であり、X=VO43−,[PO3(CH3)]2−であるときの具体例として、K5H6[KV12O27(VO4)(PO3(CH3))3]・16.5H2Oがある。 【0036】 そして、上述した一般式(1)〜(9)に示したヘテロポリタングステン酸イオンとヘテロポリバナジウム酸イオンを含み、これらが複合された化合物もまた、糖脂質及び糖蛋白質糖鎖に硫酸基を導入する硫酸転移酵素の活性を阻害する硫酸転移酵素阻害剤になり得る。 【実施例】 【0037】 以下、本発明の一実施例について説明する。以下に示す実施例では、硫酸転移酵素として、糖鎖のガラクトース残基の3位水酸基に硫酸基を転移することのできるGal3ST−1(galactose 3-O-sulfotransferase-1)及びGal3ST−2(galactose 3-O-sulfotransferase-2)を使用した。以下に示す実施例において、ヒトGal3ST−1及びGal3ST−2のcDNAクローニング、動物細胞COS−7でGal3ST−1及びGal3ST−2を発現させる手法、並びに硫酸転移酵素活性の測定は、文献、Seko,A.,Nagata,K.,Yonezawa,S.,and Yamashita,K.Jpn.J.Cancer Res.,93,507-515,2002を参照した。 【0038】 まず、糖鎖のガラクトース残基の3位水酸基に硫酸基を転移するGal3ST−1(galactose 3-O-sulfotransferase-1)及びGal3ST−2(galactose 3-O-sulfotransferase-2)のcDNAクローニングを行い、動物細胞COS−7にてGal3ST−1及びGal3ST−2を発現させた。 【0039】 ヒトGal3ST−1及びGal3ST−2のcDNAクローニングを行った。まず、Super script ヒト精巣cDNAライブラリ(Life Technologies社製)を鋳型として、2つのオリゴヌクレオチドプライマ、5’−tttaagcttGTCTGAGATGCTGCCA−3’と、5’−tttggatccTGGGACGTCACCACCG−3’とを用いて、PCR(Polymerase Chain Reaction)法によりcDNAを得た。 【0040】 なお、小文字で表すアルファベットは、制限酵素サイトを示している。ここで得られたcDNAを、HindIII及びBamHIにて消化した後、pcDNA3ベクタ(Invitrogen社製)へ挿入した。得られた発現ベクタpcDNA3−Gal3ST−1は、核酸塩基配列解析装置(Applied Biosystems PRISM 310 genetic analyzer)にて塩基配列が正しいことを確認した。 【0041】 また、上述したGal3ST−1発現ベクタを得るのと同様の手法によって、Gal3ST−2が挿入された発現ベクタを得た。 【0042】 次に、動物細胞COS−7でGal3ST−1及びGal3ST−2を発現させた。Lipofectin試薬(Life Technologies社製)を用いて、35mmシャーレに生育させたCOS−7細胞に1μgの発現ベクタを加え、遺伝子導入を行った。48時間後、細胞をPBS(10mMのリン酸ナトリウム、0.15Mの塩化ナトリウム,pH7.0)で洗浄した後、掻き取って回収し、10mMのHEPES−NaOH(pH7.2),0.25Mのスクロース中にてホモジナイズした。懸濁液を100000Gにて1時間、超遠心して粗膜画分を回収し、20mMのHEPES−NaOH(pH7.2)中で懸濁して酵素画分とした。なお、これらの膜画分は、−80℃で保存した。 【0043】 続いて、硫酸転移酵素活性を測定した。まず、次のようにして酵素活性測定系としての反応溶液を調製した。 【0044】 0.1Mカコジル酸ナトリウム(pH6.3),10mMの塩化マンガン,0.1%(v/v)トリトン X−100,0.1Mのフッ化ナトリウム,2mMのアデノシン3リン酸ナトリウム,6.5μMの35S−ラベルアデノシン3リン酸5スルホリン酸(4.9×105dpm),1mMの硫酸受容体、適宜希釈した酵素粗膜画分、及び各種濃度のポリ酸を混合して反応溶液を調製した。 【0045】 ヘテロポリ酸として、K11H[(VO)3(SbW9O33)2]・27H2O(実施例1)、K12[(VO)3(BiW9O33)2]・29H2O(実施例2)、K9H5[(GeTi3W9O37)2O3]・6H2O(実施例3)、[PriNH3]6H[PTi2W10O38(O2)2]・H2O(実施例4)、H15[V12B32O84Na4]・13H2O(実施例5)、K6[P2W18O62]・15H2O(実施例6)、K7[PTi2W10O40]・6H2O(実施例7)、K12[(VO)3AsW9O33]・17H2O(実施例8)、[PriNH3]5[PTi2W11O40]・xH2O(実施例9)、Li7[PTi2W10O40]・xH2O(実施例10)、[PriNH3]7[PTi2W10O40]・xH2O(実施例11)、[NH4]12−xHx[(BiW9O33)3Bi6(OH)3(H2O)3V4O10]・xH2O(実施例12)、K5[BW12O40]・9H2O(実施例13)、K12[Cu3(W9O34)2]・xH2O(実施例14)、K5[SiVW11O40]・xH2O(実施例15)、K5[PVW11O40]・xH2O(実施例16)、K6[H2SiNiW11O40]・xH2O(実施例17)、K7[BVW11O40]・7H2O(実施例18)、[NH4]8[H2Co2W11O40]・20H2O(実施例19)、K5[H6KV13O31(MePO3)3]・16.5H2O(実施例20)、K10[H2V18O42(H2O)]・16H2O(実施例21)、Na12H2[V18O44(N3)]・30H2O(実施例22)、K5H2[V15O36(CO3)]・14.5H2O(実施例23)、K10H3[V18O42(Cl)]・12H2O(実施例24)、K13[V18O42(Br)]・xH2O(x〜12)(実施例25)を用意した。 【0046】 また比較例として、[PriNH3]6[Mo7O24]・3H2O(比較例1)、Na2[Mo8O26(L−Lys)2]・8H2O(比較例2)、[NMe4]4[H16Mo16O52]・H2O(比較例3)、[PriNH3]4[SiMo12O40]・xH2O(比較例4)を用意した。 【0047】 硫酸受容体としては、Gal3ST−1に対してガラクトシルセラミドを、またGal3ST−2に対してGalβ1→3GalNAcを使用した。以上のようにして調製した反応溶液の20μlを37℃で1時間静置した。 【0048】 その後、硫酸受容体としてガラクトシルセラミドを用いた場合には、反応溶液をSep−Pak C18カートリッジにかけて水で洗浄し、メタノールにて硫酸化物を溶出し、放射活性を測定した。また、硫酸受容体としてGalβ1→3GalNAcを用いた場合には、反応溶液をWhatmann 3MM No.1濾紙にスポットし、ピリジン:酢酸:水=3:1:387,pH5.4の条件下にて濾紙電気泳動を行った。その後、濾紙を風乾し、ラジオクロマトグラムスキャナにて硫酸化物を検出し、放射活性を測定した。 【0049】 上述した種々のポリ酸存在下における硫酸転移酵素の相対活性を表に示す。表1は、反応溶液中の各ポリ酸の濃度を10μMとしたときの、Gal3ST−1及びGal3ST−2の酵素活性に対するポリ酸の阻害効果を表したものである。表1に示す各数値は、ポリ酸を含まない条件での酵素活性を100としたときの相対活性である。 【0050】 【表1】
【0051】 表1の結果、実施例1〜実施例5のヘテロポリ酸は、比較例として用意したポリ酸と同一濃度において阻害効果が著しく大きいことがわかった。また、本発明に係る上述した一般式(1)〜(9)で表されるヘテロポリ酸の各実施例は、Gal3ST−1に対して、或いはGal3ST−2に対して選択的な阻害効果を有することも明らかになった。例えば、実施例1、実施例2、実施例4のヘテロポリ酸は、上記濃度においてGal3ST−2の酵素活性を完全に阻害できることがわかる。また、実施例3のK9H5[(GeTi3W9O37)2O3]・6H2Oは、Gal3ST−1とGal3ST−2の両者に対して完全な阻害効果を発揮することがわかる。実施例5に示すヘテロポリバナジウム酸は、実施例1〜4と比べると濃度10μMにおける阻害効果は劣るが、比較例1,2として示したポリ酸と比べると良好な阻害効果をもつといえる。 【0052】 また、次の表2は、Gal3ST−2の酵素活性に対して50%阻害を与えることができるポリ酸の濃度を示す表である。 【0053】 【表2】
【0054】 表2に示すように、本発明に係るヘテロポリ酸の各実施例は、反応溶液に対して(nM)ナノオーダの濃度でGal3ST−2の酵素活性に対して50%阻害を与えることができ、従来のmMオーダよりも低濃度で硫酸転移酵素の活性を阻害することができる。 【0055】 実施例5のヘテロポリタングステン酸は、50%阻害を与える濃度は、他のヘテロポリ酸と比較すると劣るが、表1の実験からは、比較例1,2として示したポリ酸と比べて良好な阻害効果をもつといえる。また、特に、実施例20〜25に示すヘテロポリバナジウム酸は、糖脂質及び糖蛋白質糖鎖に硫酸基を導入する硫酸転移酵素の活性を阻害する新規阻害剤として良好な阻害効果を有することがわかる。 【0056】 なお、上述した実施例は、本発明に係る硫酸転移酵素阻害剤の一例を示したものであり、本発明は、実施例として示したヘテロポリバナジウム酸、或いはヘテロポリタングステン酸に限定されない。
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| 【出願人】 |
【識別番号】304021417 【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学 【識別番号】502224124 【氏名又は名称】財団法人 佐々木研究所
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| 【出願日】 |
平成17年3月18日(2005.3.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100067736 【弁理士】 【氏名又は名称】小池 晃
【識別番号】100086335 【弁理士】 【氏名又は名称】田村 榮一
【識別番号】100096677 【弁理士】 【氏名又は名称】伊賀 誠司
【識別番号】100106781 【弁理士】 【氏名又は名称】藤井 稔也
【識別番号】100113424 【弁理士】 【氏名又は名称】野口 信博
【識別番号】100116126 【弁理士】 【氏名又は名称】山口 茂
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| 【公開番号】 |
特開2006−257054(P2006−257054A) |
| 【公開日】 |
平成18年9月28日(2006.9.28) |
| 【出願番号】 |
特願2005−80542(P2005−80542) |
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