| 【発明の名称】 |
目的物質の脳毛細血管内皮細胞への取り込みを亢進させるための組成物 |
| 【発明者】 |
【氏名】井上 香織
【氏名】須原 哲也
【氏名】秋田 英万
【氏名】原島 秀吉
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| 【要約】 |
【課題】目的物質の脳毛細血管内皮細胞への取り込みを亢進させるための組成物を提供する。
【解決手段】目的物質の脳毛細血管内皮細胞への取り込みを亢進させるための組成物であって、マレイミド基が導入された親水性ポリマーを表面に有し、前記目的物質が内部に封入されたリポソームを含有する前記組成物を提供する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 目的物質の脳毛細血管内皮細胞への取り込みを亢進させるための組成物であって、マレイミド基が導入された親水性ポリマーを表面に有し、前記目的物質が内部に封入されたリポソームを含有する前記組成物。 【請求項2】 前記親水性ポリマーがエチレングリコールである請求項1記載の組成物。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、目的物質の脳毛細血管内皮細胞への取り込みを亢進させるための組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、薬物、核酸等の目的物質を標的部位に確実に送達するためのベクターの開発が盛んに行われている。例えば、遺伝子治療においては、目的の遺伝子を標的細胞へ導入するためのベクターとして、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス等のウイルスベクターが開発されている。しかしながら、ウイルスベクターは、大量生産の困難性、抗原性、毒性等の問題があるため、このような問題点が少ないリポソームベクターが注目を集めている。リポソームベクターは、その表面に抗体、タンパク質、糖鎖等の機能性分子を導入することにより、標的部位に対する指向性を向上させることができるという利点も有している。 【0003】 例えば、リポソーム膜表面が親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール)で修飾されたリポソームが開発されている(特許文献1〜4)。このリポソームによれば、リポソームの血中滞留性を向上させることにより、腫瘍細胞に対するリポソームの指向性を向上させることができる。 【0004】 また、リポソーム膜表面がマレイミド基で修飾されたリポソームが開発されている(特許文献3〜6)。このリポソームによれば、マレイミド基とチオール基との反応を利用して、種々の物質(例えば、抗体、トラスフェリン、ポリアルキレングリコール等)をリポソーム膜の表面に導入することができる。 【0005】 さらに、血中から脳内へ移行可能な非ウイルスベクターとして、リポソーム膜表面に導入されたポリエチレングリコールをラットトランスフェリンレセプター抗体OX−26で修飾したリポソーム(非特許文献1)、リポソーム膜表面に導入されたポリエチレングリコールをヒトインシュリンレセプター抗体で修飾したリポソーム(非特許文献2)が開発されている。 【特許文献1】特開平1−249717号公報 【特許文献2】特開平2−149512号公報 【特許文献3】特開平4−346918号公報 【特許文献4】特開2004−10481号公報 【特許文献5】特開平11−106391号公報 【特許文献6】特開2005−29683号公報 【非特許文献1】Huwyler, J.等, 「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」, 1996年, 第93巻, p.14264-14169 【非特許文献2】Zhang, Y.等, 「Human Gene Therapy」, 2003年, 第14巻, p.1-12 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 脳には、脳毛細血管内皮細胞同士が密着結合し、さらにその周囲を周皮細胞及び星状膠細胞が覆うことにより構成された血液脳関門が存在するため、目的物質の脳内への送達は容易ではない。 しかしながら、目的物質の脳毛細血管内皮細胞への取り込みを亢進させることができれば、目的物質の脳内送達効率を向上させることができると考えられる。 そこで、本発明は、目的物質の脳毛細血管内皮細胞への取り込みを亢進させるための組成物を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 上記課題を解決するために、本発明は、目的物質の脳毛細血管内皮細胞への取り込みを亢進させるための組成物であって、マレイミド基が導入された親水性ポリマーを表面に有し、前記目的物質が内部に封入されたリポソームを含有する前記組成物を提供する。 本発明の組成物において、前記親水性ポリマーがエチレングリコールであることが好ましい。 【発明の効果】 【0008】 マレイミド基が導入された親水性ポリマーを表面に有し、目的物質が内部に封入されたリポソームは、脳毛細血管内皮細胞の内部に効率よく移行することができるので、目的物質の脳毛細血管内皮細胞への取り込みを亢進させることができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0009】 本発明の組成物に含有されるリポソームは、脂質二重層構造を有する閉鎖小胞である限り、多重膜リポソーム(MLV)であってもよいし、SUV(small unilamellar vesicle)、LUV(large unilamellar vesicle)、GUV(giant unilamellar vesicle)等の一枚膜リポソームであってもよい。 【0010】 本発明の組成物に含有されるリポソームのサイズは特に限定されるものではないが、通常は直径50〜500nm、好ましくは直径50〜200nm、さらに好ましくは直径50〜80nmである。 【0011】 本発明の組成物に含有されるリポソームは、マレイミド基が導入された親水性ポリマー(以下「マレイミド基導入親水性ポリマー」という。)を表面に有する。リポソーム表面におけるマレイミド基導入親水性ポリマーの存在態様としては、マレイミド基導入親水性ポリマーがリポソーム膜構成成分に結合した状態でリポソーム膜から露出している態様が挙げられる。 【0012】 マレイミド基導入親水性ポリマーにおいて、マレイミド基は親水性ポリマーの主鎖の末端に導入されていてもよいし、側鎖の末端に導入されていてもよいが、主鎖の末端に導入されていることが好ましい。また、マレイミド基導入親水性ポリマーにおいて、主鎖の末端がリポソーム膜構成成分に結合していてもよいし、側鎖の末端がリポソーム膜構成成分に結合していてもよいが、主鎖の末端がリポソーム膜構成成分に結合していることが好ましい。すなわち、マレイミド基導入親水性ポリマーにおいて、マレイミド基が親水性ポリマーの主鎖の一端に導入されており、親水性ポリマーの主鎖の他端がリポソーム膜構成成分に結合していることが好ましい。 【0013】 本発明の組成物に含有されるリポソームは、マレイミド基導入親水性ポリマーに結合したリポソーム膜構成成分に加え、マレイミド基が導入されていない親水性ポリマー(以下「マレイミド基非導入親水性ポリマー」という。)に結合したリポソーム膜構成成分を含むことができる。リポソームがマレイミド基非導入親水性ポリマーに結合したリポソーム膜構成成分を含む場合、マレイミド基導入親水性ポリマーに結合したリポソーム膜構成成分と、マレイミド基非導入親水性ポリマーに結合したリポソーム膜構成成分との含有割合を調節することにより、in vivoにおけるリポソームの血中滞留性を調節することができる。 【0014】 マレイミド基導入親水性ポリマーに結合したリポソーム膜構成成分の含有量は特に限定されるものではないが、リポソーム膜構成成分の総量の通常0.1〜10%(モル比)、好ましくは0.5〜5%(モル比)、さらに好ましくは0.5〜1%(モル比)である。マレイミド基導入親水性ポリマーに結合したリポソーム膜構成成分の含有量が上記範囲にあると、リポソームは脳毛細血管内皮細胞の内部に効率よく移行することができる。 【0015】 マレイミド基非導入親水性ポリマーに結合したリポソーム膜構成成分の含有量は特に限定されるものではないが、マレイミド基導入親水性ポリマーに結合したリポソーム膜構成成分と、マレイミド基非導入親水性ポリマーに結合したリポソーム膜構成成分との合計含有量は、リポソーム膜構成成分の総量の通常2〜20%(モル比)、好ましくは3〜10%(モル比)、さらに好ましくは5〜10%(モル比)である。合計含有量が上記範囲にあると、in vivoにおけるリポソームの血中滞留性を効果的に向上させることができる。 【0016】 リポソーム膜構成成分は、脂質二重層の形成を阻害しない限り特に限定されるものではなく、例えば、脂質、膜安定化剤、抗酸化剤、荷電物質等が挙げられる。 【0017】 脂質はリポソーム膜の必須成分であり、その含有量はリポソーム膜構成成分の総量の通常70〜100%(モル比)、好ましくは80〜100%(モル比)、さらに好ましくは90〜100%(モル比)である。 【0018】 脂質としては、例えば、リン脂質、糖脂質、ステロール、飽和又は不飽和の脂肪酸等が挙げられる。 【0019】 リン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン(例えば、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン等)、ホスファチジルグリセロール(例えば、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジグリセロール等)、ホスファチジルエタノールアミン(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジエタノールアミン等)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチン、これらの水素添加物等が挙げられる。 【0020】 糖脂質としては、例えば、グリセロ糖脂質(例えば、スルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリド)、スフィンゴ糖脂質(例えば、ガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、ガングリオシド)等が挙げられる。 【0021】 ステロールとしては、例えば、動物由来のステロール(例えば、コレステロール、コレステロールコハク酸、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール、ジヒドロコレステロール)、植物由来のステロール(フィトステロール)(例えば、スチグマステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール)、微生物由来のステロール(例えば、チモステロール、エルゴステロール)等が挙げられる。 【0022】 飽和又は不飽和の脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸等の炭素数12〜20の飽和又は不飽和の脂肪酸が挙げられる。 【0023】 膜安定化剤は、リポソーム膜を物理的又は化学的に安定させたり、リポソーム膜の流動性を調節したりするために添加できるリポソーム膜の任意成分であり、その含有量はリポソーム膜構成成分の総量の通常0〜30%(モル比)、好ましくは0〜20%(モル比)、さらに好ましくは0〜10%(モル比)である。 【0024】 膜安定化剤としては、例えば、ステロール、グリセリン又はその脂肪酸エステル等が挙げられる。ステロールとしては、上記と同様の具体例が挙げられ、グリセリンの脂肪酸エステルとしては、例えば、トリオレイン、トリオクタノイン等が挙げられる。 【0025】 抗酸化剤は、リポソーム膜の酸化を防止するために添加できるリポソーム膜の任意成分であり、その含有量はリポソーム膜構成成分の総量の通常0〜30%(モル比)、好ましくは0〜20%(モル比)、さらに好ましくは0〜10%(モル比)である。 【0026】 抗酸化剤としては、例えば、トコフェロール、没食子酸プロピル、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシトルエン等が挙げられる。 【0027】 荷電物質は、リポソーム膜に正荷電又は負荷電を付与するために添加できるリポソーム膜の任意成分であり、その含有量はリポソーム膜構成成分の総量の通常0〜30%(モル比)、好ましくは0〜20%(モル比)、さらに好ましくは0〜10%(モル比)である。 【0028】 正荷電を付与する荷電物質としては、例えば、ステアリルアミン、オレイルアミン等の飽和又は不飽和脂肪族アミン;ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパン等の飽和又は不飽和カチオン性合成脂質等が挙げられ、負電荷を付与する荷電物質としては、例えば、ジセチルホスフェート、コレステリルヘミスクシネート、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸等が挙げられる。 【0029】 マレイミド基導入親水性ポリマー又はマレイミド基非導入親水性ポリマーが結合するリポソーム膜構成成分は特に限定されるものではないが、脂質又は膜安定化剤であることが好ましく、リン脂質、ステロール又は脂肪酸であることがさらに好ましい。マレイミド基導入親水性ポリマー又はマレイミド基非導入親水性ポリマーが結合するリポソーム膜構成成分が脂質又は膜安定化剤、特にリン脂質、ステロール又は脂肪酸であると、in vivoにおけるポソームの血中滞留性を効果的に向上させることができる。 【0030】 親水性ポリマーは、in vivoにおけるリポソームの血中滞留性を向上させることができる限り特に限定されるものではなく、例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等)、デキストラン、プルラン、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、アミロース、アミロペクチン、キトサン、マンナン、シクロデキストリン、ペクチン、カラギーナン等が挙げられる。これらのうち、ポリアルキレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールがさらに好ましい。 【0031】 親水性ポリマーがポリアルキレングリコールである場合、その分子量は、通常500〜5000、好ましくは1000〜3000、さらに好ましくは2000〜3000である。ポリアルキレングリコールの分子量が上記範囲にあると、in vivoにおけるリポソームの血中滞留性を効果的に向上させることができる。 【0032】 親水性ポリマーには、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基等の置換基が導入されていてもよい。 【0033】 アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基等の炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。 【0034】 アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基が挙げられる。 【0035】 リポソーム膜構成成分と親水性ポリマーとは、リポソーム膜構成成分が有する官能基(リポソーム膜構成成分に人為的に導入された官能基を含む。)と、親水性ポリマーが有する官能基(親水性ポリマーに人為的に導入された官能基を含む。)との反応により形成された共有結合を介して結合することができる。共有結合を形成できる官能基の組み合わせとしては、例えば、アミノ基/カルボキシル基、アミノ基/ハロゲン化アシル基、アミノ基/N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基、アミノ基/ベンゾトリアゾールカーボネート基、アミノ基/アルデヒド基、チオール基/マレイミド基、チオール基/ビニルスルホン基、水酸基/カルボキシル基等が挙げられ、これらの官能基同士の反応は公知の方法に従って行うことができる。 【0036】 親水性ポリマーとマレイミド基とは、親水性ポリマーが有する官能基(親水性ポリマーに人為的に導入された官能基を含む。)と、マレイミド基含有化合物が有する官能基(マレイミド基含有化合物に人為的に導入された官能基を含む。)との反応により形成された共有結合を介して結合することができる。共有結合を形成できる官能基の組み合わせとしては、例えば、アミノ基/カルボキシル基、アミノ基/ハロゲン化アシル基、アミノ基/N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基、アミノ基/ベンゾトリアゾールカーボネート基、アミノ基/アルデヒド基、チオール基/マレイミド基、チオール基/ビニルスルホン基、水酸基/カルボキシル基等が挙げられ、これらの官能基同士の反応は公知の方法に従って行うことができる。 【0037】 親水性ポリマーがポリエチレングリコールである場合、例えば、ポリエチレングリコールとヒドロキシメチルマレイミドとを反応させることにより、ポリエチレングリコールにマレイミド基を導入することができる。この反応は例えば特開2005−29683等の公知の方法に従って行うことができる。 【0038】 マレイミド基導入親水性ポリマーは、例えば、次式:P−X−M[式中、Pは親水性ポリマーの残基を表し、Xは直接結合又は連結基を表し、Mはマレイミド基を表す。]で表すことができる。なお、Xで表される連結基としては、例えば、ヘテロ原子を有していてもよい2価の炭化水素基;−O−;−S−;−NH−;−COO−;−SS−;−NHCO−;−NHCONH−;−SO−等が挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、硫黄原子等が挙げられる。ヘテロ原子を有していてもよい2価の炭化水素基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等のアルキレン基;−SCH2CH2COO−;−OCH2CH2COO−;−NHCH2CH2COO−;−SCH2CH2COOCH2−;−SOCH2CH2COO−等が挙げられる。 【0039】 リポソームは、例えば、水和法、超音波処理法、エタノール注入法、エーテル注入法、逆相蒸発法、界面活性剤法、凍結・融解法等の公知の方法を用いて調製することができる。また、リポソームを所定のポアサイズのフィルターで通過させることにより、一定の粒度分布を持ったリポソームを得ることができる。また、公知の方法に従って、多重膜リポソームから一枚膜リポソームへの転換、一枚膜リポソームから多重膜リポソームへの転換を行うことができる。 【0040】 本発明の組成物に含有されるリポソームの内部には、目的物質が封入されている。 【0041】 目的物質は特に限定されるものではなく、例えば、薬物、核酸、ペプチド、タンパク質、糖又はこれらの複合体等が挙げられ、診断、治療等の目的に応じて適宜選択することができる。薬物としては、例えば、脳腫瘍治療薬、HIV治療薬、中枢神経作用薬(精神神経用剤、抗パーキンソン剤、解熱鎮痛消炎剤、催眠・鎮静剤、抗痙攣剤、中枢性筋弛緩剤、抗痴呆薬等)、脳循環改善薬、血液凝固阻止剤、脳保護剤、ホルモン剤、抗生物質等の脳疾患治療薬が挙げられる。「核酸」には、DNA又はRNAに加え、これらの類似体又は誘導体(例えば、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオエートDNA等)が含まれる。核酸は一本鎖又は二本鎖のいずれであってもよいし、線状又は環状のいずれであってもよい。 【0042】 目的物質が水溶性である場合には、リポソームの製造にあたり脂質膜を水和する際に使用される水性溶媒に目的物質を添加することにより、リポソーム内部の水相に目的物質を封入することができる。また、目的物質が脂溶性である場合には、リポソームの製造にあたり使用される有機溶剤に目的物質を添加することにより、リポソームの脂質二重層に目的物質を封入することができる。 【0043】 本発明の組成物は、生物体を構成する脳毛細血管内皮細胞及び生物体を構成していない脳毛細血管内皮細胞のいずれに対しても目的物質の取り込みを亢進させることができる。また、本発明の組成物は、いかなる生物種に由来する脳毛細血管内皮細胞に対しても目的物質の取り込みを亢進させることができる。脳毛細血管内皮細胞が由来する生物種としては、例えば、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、モルモット等の哺乳動物が挙げられる。 【0044】 本発明の組成物の剤形は特に限定されるものではないが、例えば、リポソームの分散液が挙げられる。分散溶媒としては、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝液,クエン緩衝液,酢酸緩衝液等の緩衝液を使用することができる。分散液には、例えば、糖類、多価アルコール、水溶性高分子、非イオン界面活性剤、抗酸化剤、pH調節剤、水和促進剤等の添加剤を添加して使用してもよい。 【0045】 本発明の組成物の別の剤形としては、リポソームの分散液の乾燥物(例えば、凍結乾燥物、噴霧乾燥物等)が挙げられる。乾燥物は、生理食塩水、リン酸緩衝液,クエン緩衝液,酢酸緩衝液等の緩衝液を加え、リポソームの分散液として使用することができる。 【0046】 本発明の組成物の投与経路としては、例えば、静脈、腹腔内、皮下、経鼻等の非経口投与が挙げられ、投与量及び投与回数は、リポソームの内部に封入された目的物質の種類、量等に応じて適宜調節することができる。 【0047】 本発明の組成物に含有されるリポソームは、脳毛細血管内皮細胞の内部に効率よく移行することができるので、リポソームの内部に目的物質を封入して対象動物に投与することにより、目的物質を脳毛細血管内皮細胞への取り込みを亢進させることができる。 【実施例】 【0048】 〔実施例1〕リポソームの体内動態(in vivo)の解析 1.リポソームの作製 (1)リポソーム1(mal-PEGリポソーム)の作製 マレイミド基導入ポリエチレングリコールに結合した1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE)(日本油脂社製)、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)(日本油脂社製)、コレステロール(Avanti社製)及びDSPE-PEG2000(Avanti社製)を0.05:7:3:0.5(モル比)でクロロホルムに溶解して混合し、ナス型フラスコ内で溶媒を蒸発乾固させ、脂質膜を作製した。 【0049】 なお、マレイミド基導入ポリエチレングリコールに結合したDSPEの構造式は以下の通りである。 【0050】 【化1】
【0051】 また、DSPE-PEG2000(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000])の構造式は以下の通りである。 【0052】 【化2】
【0053】 脂質膜を作製する際、RIトレーサーとして[3H]CHE(パーキンエルマーライフサイエンス日本社製)を加えた。 脂質膜にPBS溶液を注ぎ、バスタイプ超音波洗浄器にかけ、リポソームを作製した。次いで、Mini-Extruder(0.1μmの孔径のポリカーボネイト膜フィルター,Avanti社製)でリポソームのサイズを約100nmにそろえた。リポソームのサイズはELS-8000HO(大塚電子社製)を用いて動的光散乱法により測定した。 こうして、リポソーム1として、マレイミド基が導入された親水性ポリマーを表面に有するリポソーム(PEGリポソーム)を作製した。 【0054】 (2)リポソーム2(PEGリポソーム)の作製 マレイミド基導入ポリエチレングリコールに結合したDSPEを使用しない点を除き、(1)と同様の操作を行い、リポソーム2として、ポリエチレングリコールを表面に有するリポソーム(PEGリポソーム)を作製した。 【0055】 (3)リポソーム3(Tf-PEGリポソーム)の作製 リポソーム3は、Hatakeyama, H.等の文献(Int. J. Pharm. 281, 25-33, 2004.)に従って作製した。すなわち、トランスフェリンと3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミド(SPDP)とをリン酸緩衝生理食塩水(PBS(-))中で1:1.5(モル比)で混合し、室温で30分間反応させた後、最終濃度が50mMとなるようにDTTを添加して室温で30分間反応させ、Sephadex G-25 Fine gel(アマシャムバイオサイエンス製)を用いて反応副生物を除去することにより、次式:MPA-NH-Tf[式中、MPAは3-メルカプトプロピオニル基を表し、Tfはトランスフェリン残基を表し、-NH-はトランスフェリンのアミノ基に由来する。]で表されるトランスフェリン誘導体(I)を調製した。次いで、リポソーム1の溶液にトランスフェリン誘導体(I)を加えて4℃でO/N攪拌し、ポリエチレングリコールに導入されたマレイミド基に、-S-を介してトランスフェリン誘導体(I)を結合させた。こうして、リポソーム3として、トランスフェリン修飾ポリエチレングリコールを表面に有するリポソーム(Tf-PEGリポソーム)を作製した。 【0056】 (4)リポソーム4(Lf-PEGリポソーム)の作製 トランスフェリンの代わりにラクトフェリンを使用した点を除き、(3)と同様の操作を行い、リポソーム4として、ラクトフェリン修飾ポリエチレングリコールを表面に有するリポソーム(Lf-PEGリポソーム)を作製した。 【0057】 (5)リポソーム5(Av-PEGリポソーム)の作製 トランスフェリンの代わりにアビジンを使用した点を除き、(3)と同様の操作を行い、リポソーム5として、アビジン修飾ポリエチレングリコールを表面に有するリポソーム(Av-PEGリポソーム)を作製した。 【0058】 (6)リポソーム6(DOTAPリポソーム)の作製 1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine(DOPE)と1,2-Dioleoyl-3-trimethyl-ammonium propane(DOTAP)とをモル比1:1で混合してクロロホルムに溶解した後、クロロホルムを蒸発させ、脂質膜を調製した。この脂質膜にPBSを加え、バスタイプソニケーターで処理した。こうして、リポソーム6として、脂質膜成成分としてDOTAPを含有するリポソーム(DOTAPリポソーム)を作製した。 【0059】 (7)リポソーム7(DOTAP-R8リポソーム)の作製 脂質膜にステアリル化オクタアルギニンを20%(モル比)含有させた点を除き、(6)と同様の処理を行い、リポソーム7として、脂質膜成分としてDOTAPを含有し、オクタアルギニンを表面に有するリポソーム(DOTAP-R8リポソーム)を作製した。 【0060】 2.マウスへの投与 各リポソームをddYマウス(オス,6〜7週令,日本SLC社製)に、4nmol脂質/g体重の濃度で尾静脈投与した。投与後所定時間経過時点で3匹のマウスから血液、脳、心臓、肺、肝臓、脾臓、腎臓、骨格筋をとりだし、それぞれその重量を測定し、Soluene-350(パーキンエルマーライフサイエンス社製)を加えて、50℃で5時間加熱して溶解し、Hionic Flour(パーキンエルマーライフサイエンス社製)を加えて、液体シンチレーションカウンターで放射活性を測定した。 【0061】 リポソームの血中濃度は、全血中の投与量あたりの放射活性(%ID/mL)として算出し、これに基づいてリポソームの血中滞留性を検討した。また、リポソームの各臓器中濃度は、各臓器の投与量あたりの放射活性(ID%/g組織)として算出し、これに基づいてリポソームの各臓器への移行率を検討した。なお、各臓器の測定値から、血液成分由来の放射活性の寄与分(血中濃度×血管スペース)を差し引いたものを各臓器の放射活性とした。また、、血管スペースは、臓器への移行がないと仮定される早い時間のPEGリポソームの量から算出した。 【0062】 リポソームの血中濃度の測定結果を図1に示す。 図1に示すように、リポソーム1(mal-PEGリポソーム)の血中濃度は、リポソーム2(PEGリポソーム)の血中濃度より低い値を示すが、他のリポソームの血中濃度よりも高く、リポソーム1(mal-PEGリポソーム)は高い血中滞留性を示した。 【0063】 リポソームの各臓器中濃度の測定結果を図2に示す。なお、図2中、左から2番目のカラムがリポソーム1(mal-PEGリポソーム)の各臓器中濃度である。 図2に示す通り、細網内皮系の主要な臓器である肝臓及び脾臓へのリポソーム1(mal-PEGリポソーム)の移行率は低く、リポソーム1(mal-PEGリポソーム)は細網内皮系による血中からの排斥に対抗することができた。 【0064】 リポソームの脳中濃度の測定結果を図3に示す。 図3に示すように、リポソーム1(mal-PEGリポソーム)の脳への移行率は0.1%を超え、リポソーム2〜7の脳への移行率よりも有意に高かった(リポソーム3及び6はP<0.05,その他のリポソームはP<0.01の信頼度)。 【0065】 〔実施例2〕リポソームの脳毛細血管内皮細胞への取り込み(in vitro) 実施例1と同様にリポソームを作製し、その際、ローダミンラベル化脂質(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-lissamine rhodamine B sulfonyl:Rho-DOPE)を1%(モル比)加えた。マウス脳毛細血管内皮細胞MBEC4のDMEM培養液中に各リポソームを約0.2pmol脂質/細胞の濃度で加え、37℃で2時間インキュベーションした。無色透明のDMEM培養液で細胞表面を洗い、無色透明DMEM培養液中のMBEC4を共焦点レーザー走査型顕微鏡LSM510(Carl Zeiss社製)で観察した。 【0066】 共焦点レーザー走査型顕微鏡による観察結果を図4に示す。 図4中、A(最上段の左図)は、いずれのリポソームも投与していない場合の結果を示し、B(最上段の中央図)は、リポソーム2(PEGリポソーム)を投与した場合の結果を示し、C(最上段の右図)は、リポソーム1(mal-PEGリポソーム)を投与した場合の結果を示す。 リポソーム1(mal-PEGリポソーム)を投与した場合(最上段の右図C)では、他の場合よりも明らかに多くのローダミンによる赤色が観察された。 【0067】 図4中、D(下段の3列の図)の左列(縦の3図)は、いずれのリポソームも投与していない場合の細胞断面図を示し、Dの中央列(縦の3図)は、リポソーム2(PEGリポソーム)を投与した場合の細胞断面図を示し、Dの右列(縦の3図)は、リポソーム1(mal-PEGリポソーム)を投与した場合の細胞断面図を示す。 リポソーム1(mal-PEGリポソーム)は細胞表面に吸着しているものではなく、細胞中に取り込まれていた。また、リポソーム1(mal-PEGリポソーム)は、核周辺に集積していた。 【図面の簡単な説明】 【0068】 【図1】血中濃度の測定結果を示す図である。 【図2】リポソームの各臓器中濃度の測定結果を示す図である。 【図3】リポソームの脳中濃度の測定結果を示す図である。 【図4】共焦点レーザー走査型顕微鏡による観察結果を示す図である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】504173471 【氏名又は名称】国立大学法人 北海道大学 【識別番号】301032942 【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
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| 【出願日】 |
平成17年3月4日(2005.3.4) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100108833 【弁理士】 【氏名又は名称】早川 裕司
【識別番号】100112830 【弁理士】 【氏名又は名称】鈴木 啓靖
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| 【公開番号】 |
特開2006−241107(P2006−241107A) |
| 【公開日】 |
平成18年9月14日(2006.9.14) |
| 【出願番号】 |
特願2005−61681(P2005−61681) |
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