| 【発明の名称】 |
心筋梗塞治療剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】大山 但 【住所又は居所】京都府京都市山科区四ノ宮南河原町14番地 科研製薬株式会社総合研究所内
【氏名】古田 貞由 【住所又は居所】京都府京都市山科区四ノ宮南河原町14番地 科研製薬株式会社総合研究所内
【氏名】堀 敏光 【住所又は居所】京都府京都市山科区四ノ宮南河原町14番地 科研製薬株式会社総合研究所内
【氏名】上尾 治喜 【住所又は居所】京都府京都市山科区四ノ宮南河原町14番地 科研製薬株式会社総合研究所内
【氏名】白石 紀子 【住所又は居所】京都府京都市山科区四ノ宮南河原町14番地 科研製薬株式会社総合研究所内
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| 【要約】 |
【課題】新たな作用機序に基づく心筋梗塞治療剤を提供すること。
【解決手段】D−アラニル−3−(ナフタレン−2−イル)−D−アラニル−L−アラニル−L−トリプトフィル−D−フェニルアラニル−L−リジンアミド及び/又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする、心筋梗塞治療剤。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 D−アラニル−3−(ナフタレン−2−イル)−D−アラニル−L−アラニル−L−トリプトフィル−D−フェニルアラニル−L−リジンアミド及び/又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする、心筋梗塞治療剤。 【請求項2】 該有効成分がD−アラニル−3−(ナフタレン−2−イル)−D−アラニル−L−アラニル−L−トリプトフィル−D−フェニルアラニル−L−リジンアミドの酸付加塩である、請求項1に記載の心筋梗塞治療剤。 【請求項3】 該有効成分がD−アラニル−3−(ナフタレン−2−イル)−D−アラニル−L−アラニル−L−トリプトフィル−D−フェニルアラニル−L−リジンアミドニ塩酸塩である、請求項2に記載の心筋梗塞治療剤。 【請求項4】 該心筋梗塞が急性心筋梗塞である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の心筋梗塞治療剤。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、D−アラニル−3−(ナフタレン−2−イル)−D−アラニル−L−アラニル−L−トリプトフィル−D−フェニルアラニル−L−リジンアミド(以下プラルモレリンと略記することがある)及び/又はその塩を有効成分として含有する、心筋梗塞治療剤に関する。 【背景技術】 【0002】 「心筋梗塞」とは、冠動脈の閉塞によってもたらされる心筋壊死をいい、急性心臓死および慢性心臓死を引き起こすため臨床医学における解決すべき重要課題となっている。特に、急性心筋梗塞の場合、死亡率は35〜50%と高く、その死亡例の60〜70%は発症後1〜2時間以内の死亡である。また、急性期を無事に過ぎても、初回発作の心筋壊死巣が大きい場合には、再び心筋梗塞を再発する危険性が大きい。したがって、心筋梗塞の治療においては、発作がおきたときに迅速に処置することが求められ、壊死した心筋の大きさ、すなわち梗塞サイズを可及的小にとどめることが重要とされている。その目的で血栓溶解療法や血行再建術などの再開通療法が実施されている。しかし、再開通による効果が得られなかったり、逆に再灌流障害などで心筋細胞にダメージを与えたりすることが知られており、再開通療法単独では必ずしも満足のいく治療効果を得られていない。そのため、再開通療法の補助療法として心筋保護作用を期待した薬剤の検討が行われているが、満足できる薬剤は未だ見出されていない。 【0003】 一方、成長ホルモン遊離促進物質(以下Growth hormone secretagogue、GHSと略す)は視床下部あるいは下垂体に存在するGHS受容体を介して、下垂体から成長ホルモン(以下Growth hormone、GHと略す)の遊離を促進する一連の物質があるが、GHSは心臓に対して成長ホルモンに基づく作用ではなく独自の作用があることが最近知見されている(非特許文献1、非特許文献2及び非特許文献3参照)。 【0004】 ペプチド性GHSであるヘキサレリンとグレリンは、短期処置による心臓直接的心保護作用も報告されている(非特許文献4及び非特許文献5参照)。 しかし、これらは、冠動脈の閉塞によって生じる心筋の壊死を抑えるといった心筋梗塞治療効果を報告したものではない。グレリンに関しては、虚血後再灌流中投与することによって心筋保護作用を有することが報告された(非特許文献6参照)。 しかし、これはグレリンに特異的に結合する部位を介した効果であると考えられるので、他のGHSもグレリンと同様の効果を有すると考えることは困難である。 【0005】 また、本発明者らは、以前、ペプチド性GHSであるプラルモレリンが強心効果を有し、心不全の治療効果を有することを発見した(特許文献1参照)。しかし、心不全と心筋梗塞とでは、病態及び治療目的が全く異なる。心不全は、心臓のポンプ機能の障害により体組織の代謝に見合う十分な血液を供給できない状態をいい、心不全の治療の目標は、強心作用あるいは末梢血管抵抗を低下させることで心拍出量を増し、うっ血状態を改善することである。これに対し、心筋梗塞は、心筋への栄養動脈である冠動脈が詰まってしまい(完全閉塞)、その冠動脈が養っている心筋が死につつある(壊死)状態をいい、心筋梗塞の治療目的は、心筋の壊死をできるだけ小さくして合併症(心不全や不整脈)の発症確率を減らすことにある。このように、病態及び治療目的の相違から、心不全及び心筋梗塞の治療には、各々異なる治療薬及び治療方法が適用されている。特に、急性心筋梗塞の治療剤に関しては、高度の虚血による心筋組織の壊死が生じた直後に薬物を投与した場合に即効的な効果を有するかどうかを評価することが必要なので治療効果の判定がむずかしい。 【0006】 したがって、上記のような従来技術では、プラルモレリンの心筋梗塞、特に急性心筋梗塞の治療効果については予測できず、このような報告はない。 【特許文献1】WO01/97831A1 【非特許文献1】Eur J Pharmacol 334:201-207(1997) 【非特許文献2】Endocrinology 140:4024-4031(1999) 【非特許文献3】J Cell Biol 159:1029-1037(2002) 【非特許文献4】Endocrine 14:113-119(2001) 【非特許文献5】Basic Res Cardiol 98:401-405(2003) 【非特許文献6】J. Cardiovasc Pharmacol Vol.43, No.2, 165-170(2004) 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 プラルモレリンに関して、新たな作用機序に基づく心筋梗塞治療剤を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らは、上記課題を解決するため、前回の心不全動物モデルとは異なる心筋梗塞動物モデルを作製し、心筋梗塞に関するパラメータを測定し、プラルモレリンの心筋梗塞の治療効果を調べた。すなわち、心筋梗塞動物モデルでは、冠動脈閉塞を直ちにおこして、一定時間(50分)の閉塞により心筋梗塞をおこした後にプラルモレリンを投与して、一定時間(90分)後に閉塞をやめて再灌流した。この動物モデルにおいて、壊死心筋から血中へ逸脱してくる酵素及び蛋白、並びに梗塞サイズを測定することによって、プラルモレリンが心筋壊死を抑制する効果を有することを発見し、本発明を完成した。 【0009】 本発明は、プラルモレリン及び/又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする、心筋梗塞治療剤(以下「本発明の製剤」または「本願製剤」という)を提供する。 【発明を実施するための最良の形態】 【0010】 好ましい態様としては、以下のものがあげられる。 本発明は、有効成分がプラルモレリンの酸付加塩であることを特徴とする前記製剤を提供する。 【0011】 本発明は、有効成分がプラルモレリン二塩酸塩であることを特徴とする前記製剤を提供する。 本明細書において、「心筋梗塞」とは、心筋への栄養動脈である冠動脈が詰まってしまい(完全閉塞)、その冠動脈が養っている心筋が死につつある(壊死)状態をいい、急性発症から約1ヶ月間を「急性心筋梗塞」といい,それ以降を「陳旧性心筋梗塞」という。 【0012】 本願製剤は、高度の虚血による心筋組織の壊死が生じた直後に投与した場合にも即効的に優れた心筋壊死阻止作用を示すので、特に急性心筋梗塞の治療に用いることが有効である。このような即効性のため、心筋梗塞後に生じる梗塞拡大を予防することができるので、心筋梗塞後に生じうる心不全、不整脈、再発性心筋梗塞及び/又は死亡を防止することができる。 【0013】 本発明の製剤において、用いられる有効成分は、プラルモレリン及び/又はその塩である。プラルモレリンは、公知の方法により、例えば、特表平7−507039記載の方法により製造することができる。 【0014】 プラルモレリンの塩とは、酸付加塩をいう。酸付加塩が、薬効の点で、フリー体のものよりも好ましく用いられる。この酸付加塩を形成しうる酸としては、例えば塩酸、硫酸、臭化水素酸、燐酸、硝酸などの無機酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マレイン酸、フタル酸、フェニル酢酸、安息香酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、蓚酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸、アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸などの中から、医薬上許容される酸付加塩を形成しうるものが適宜選ばれる。 【0015】 好ましい酸付加塩は、塩酸塩であり、より好ましくはニ塩酸塩である。 本発明の製剤において、プラルモレリン及びその酸付加塩を2種以上組み合わせて用いてもよい。 【0016】 本発明に用いられるプラルモレリン及び/又はその塩は、公知の製剤技術により、単独でまたは薬理学的に許容しうる担体、添加剤等とともに、通常の経口型製剤及び非経口型製剤、例えば、液剤(注射剤、点鼻剤、シロップ剤、ドライシロップ剤など)、錠剤、トローチ剤、カプセル剤(硬、軟、マイクロカプセル等)、散剤、細粒剤、顆粒剤、軟膏剤、坐剤等などに製剤可能であり、また、ドラッグデリバリーシステム(例えば、徐放剤等)などの剤型にも製剤可能である。 【0017】 本願の製剤に用いることができる担体、添加剤等としては以下のような通常医薬品の調剤に使用されるものがあげられる:例えば生理食塩液、水(常水、蒸留水、精製水、注射用水など)、リンゲル液等の水性溶剤、例えば、油性溶剤(植物油など)、水溶性溶剤(プロピレングリコール、マクロゴール、エタノ−ル、グリセリンなど)等の非水性溶剤、例えばカカオ脂、ポリエチレングリコール、マイクロクリスタリンワックス、サラシミツロウ、流動パラフィン、白色ワセリン等の基剤、例えば蔗糖、デンプン、マンニット、ソルビット、乳糖、ぶどう糖、セルロース、タルク、燐酸カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビヤゴム、ポリエチレングリコール、蔗糖、デンプン等の結合剤、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、炭酸水素ナトリウム、燐酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クエン酸カルシウム等の崩壊剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑沢剤、例えばクエン酸、メントール、グリシン、ソルビトール、オレンジ末等の矯味剤、例えばパラオキシ安息香酸エステル類、ベンジルアルコール、クロロブタノール、四級アンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど)等の保存剤及び防腐剤、例えばアルブミン、ゼラチン、ソルビトール、マンニトール等の安定剤、例えばメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等の懸濁化剤、例えばグリセリン、ソルビトール等の可塑剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース等の分散剤、例えば塩酸等の溶解補助剤、例えばモノステアリン酸ナトリウム等の乳化剤、例えば塩化ナトリウム等の電解質並びに例えば糖アルコール類、糖類及びアルコール類等の非電解質の浸透圧調整剤、着香剤等。 【0018】 また、経口製剤の場合、プラルモレリン吸収性促進のために、特開平10−456194公報記載のような結晶セルロース(「アビセル」[商品名、旭化成工業(株)製]等、水膨潤性セルロース(カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルボキシメチルセルロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等)を含むことができる。 【0019】 本製剤中に含まれるプラルモレリン及び/又はその塩の含有量は所望の効果を奏する限り特に限定されないが、製剤中、好ましくは約0.0001〜約10w/v%、さらに最も好ましくは約0.001〜約2w/v%の濃度になるように含有することができる。 【0020】 本願製剤は、通常、静脈注(点滴を含む)、経口、皮下、点鼻、経肺、動脈注投与等の手段により、ヒトを含む哺乳動物に投与される。好ましくは、静脈注により投与される。 本願製剤の投与量は、患者の年令、体重、症状、投与法などにより異なるが、プラルモレリンニ塩酸塩を急性心筋梗塞に適用した場合、発作時に投与する量は、成人に対して、非経口投与、例えば静脈内投与では、体重1kg当たり好ましくは約0.1〜約1000μgの量で、さらに好ましくは約1〜約100μgの量で点滴あるいは1回ないし数回に分けて、経口投与では体重1kg当たり好ましくは約1μg〜約10mgの量で、さらに好ましくは約10〜約1000μgの量で数回に分けて投与することができる。 【0021】 また、本発明の治療剤は、他の心筋梗塞治療剤、例えば、抗血小板薬、抗凝固薬、血栓溶解薬などと同時にまたは時間をおいて併用することができ、また、血行再建術(冠脈インターベンション、冠動脈バイパス術等)などの再開通療法と組み合わせることができる。 【0022】 本願製剤は、心筋梗塞の治療剤として有用である。また、本願製剤は、高度の虚血による心筋組織の壊死が生じた直後に投与した場合にも即効的な心筋壊死阻止作用を示すので、特に急性心筋梗塞の治療に用いることが有効である。 【実施例】 【0023】 試験例 本製剤に使用されるプラルモレリンが、心筋梗塞に対して優れた心筋壊死阻止作用を有することを、以下に示す心筋梗塞動物モデルにおいて、壊死心筋から血中へ逸脱してくる酵素(特に、血漿クレアチニンフォスフォキナーゼ、乳酸脱水素酵素)、蛋白(例えば、心筋由来蛋白のトロポニン)、並びに梗塞サイズを測定することによって実証する。
材料および実験方法 1)使用動物 実験にはHBD犬(kbs:HBD、北山ラベス)を雌雄の区別なく使用した。動物 は入荷後、室温18〜26℃、湿度30〜70%、照明時間12時間/日(7:00-19:00) の条件下で 、固形飼料(DSA)および水道水を与えて飼育し、使用前日18時 から一晩絶食した。
2)試験物質及び試薬 1)対照物質 生理食塩液(大塚製薬)を使用した。 【0024】 2)被験物質 プラルモレリンニ塩酸塩(以下KP-102という)(第一ファインケミカル) は、生理食塩液(大塚製薬)で溶解し、50μg/mL溶液を調製した。 【0025】 3)試薬 ヘパリン(ノボ・ヘパリン注、ノボ・ノルディスクA/S)、ペントバルビ タールナトリウム(ナカライテスク)、エバンスブルー(シグマ)、塩化 2,3,5-トリフェニルテトラゾリウム(以下TTCという、東京化成)、PBS(-) (126203、日水製薬)および生理食塩液(大塚製薬)を使用した。さらに局所血 流量測定用に、N,N-ジメチルホルムアミド(以下DMFという、シグマ)、ポ リオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(Tween80、ナカライテス ク)、KOH(ナカライテスク)、エタノール(ナカライテスク)および注射用蒸 留水(大塚製薬)を用いた。 【0026】 ペントバルビタールナトリウムは生理食塩液に溶解して30mg/mL液を調製 し、動物の麻酔に用いた。エバンスブルーは生理食塩液で1%溶液に調製し た。TTCはPBS(-)溶液で1%の濃度に調製して使用した。Tween80溶液は生理 食塩液で、KOHは注射用蒸留水でそれぞれ希釈して調製した。
(1) 手術および循環動態測定 動物にペントバルビタール(30mg/kg)を静脈内投与して麻酔を導入した。実 験中は維持麻酔として、ペントバルビタール(5mg/kg/時)を右橈側皮静脈内に 持続注入した。気管カニューレを挿入し、カニューレの先を人工呼吸器(SN- 480-3、シナノ製作所)に接続し、人工呼吸(1回換気量約20mL/kg、呼吸回数約 15回/分、酸素約0.2mL/分)を行った。 【0027】 左総頚動脈から5Frカテーテル先端型トランスデューサー(MPC-500、 millar)を挿入して左心室内に留置し、ひずみ圧力用アンプ(AP-601G、日本光 電)を介して左室内圧(LVP)を測定した。左室内圧最大dP/dtは、LVPの波形を 微分演算用アンプ(ED-601G、日本光電)で微分して測定した。血圧は左大腿動 脈に挿入した5Frカテーテル先端型トランスデューサーから圧アンプ(AP- 641G、日本光電)を介して測定し、平均血圧(MBP)を得た。心拍数(HR)は血 圧波形から瞬時心拍計ユニット(AT-601G、日本光電)で計測した。心筋組織血 流量測定のため、ポリエチレンカテーテルを右大腿動脈(SP120、夏目製作所) と左心耳(SP50、夏目製作所)にそれぞれ留置した。 【0028】 開胸は左第4肋間から行った。心嚢膜切開後、左前下行枝を起始部から1- 2cmを丁寧に剥離して閉塞用の糸(絹製縫合糸、No.5、軟毛、村瀬縫合糸)を通 した。虚血部位の局所心筋壁運動を測定するため、虚血が予想される領域に1対 の超音波クリスタル(10MHz、直径2mm;LMT102T、クリスタルバイオテック)を 約10mmの間隔で心筋内に埋め込み、これをレングスゲージ変位計(LG-510、クリ スタルバイオテック)に接続した。送信強度と受信閾値をオシロスコープ(CS- 4025、ケンウッド)でモニターしながら調節して2点間の変位を計測した。表面 心電図を記録するため冠動脈閉塞による虚血領域にスパイラル電極を取り付け、 アンプ(ED-601G、日本光電)を介して活動電位を測定した。 【0029】 血液ガス分析用の血液は、右大腿動脈に留置したカテーテルから採取し、ポー タブル血液分析器(アイスタット200、アイスタットコーポレーション)で測定 した。血液ガス、pH:7.30-7.50、pCO2:30-50mmHg、pO2:>80mmHgの範囲に近づけ るよう人工呼吸器の条件や酸素流量を調整した。上記循環パラメータはレコー ダー(RTA-1300、日本光電)上に、表面心電図と局所心筋壁運動はレコーダー (TA-11、グールド)に記録した。実験中、動物の体温は体温制御装置(TK43、 朝日電子工業)で37.5±0.5℃に制御した。 【0030】 (2) 実験プロトコール 下記表1に示す循環パラメータ安定後、左冠動脈前下行枝(LAD)に留置して いた糸にポリエチレンチューブ(No.6、ヒビキ)を通したスネアで冠動脈を閉塞 して心筋梗塞状態を惹起した。冠動脈閉塞により虚血が生じていることは、表面 心電図のST上昇および局所心筋壁運動により確認した。冠動脈の閉塞を90分間お こない、その後に再灌流を3時間おこなった。冠動脈閉塞50分後、試験物質 1μg/kg(0.2mL/kg)を左大腿静脈内に1分かけて投与後、0.1μg/kg/分 (0.02mL/kg/分)の用量で再灌流後3時間まで持続注入した。投与にはいずれもイ ンフュージョンポンプ(FP-W-100、東洋産業)を用いた。対照群には生理食塩液 をKP-102と同様に投与した。各パラメータの測定は、閉塞前、閉塞後50および90 分、再灌流後1、2、3時間に行った。 【0031】 冠動脈閉塞による心筋の虚血の程度を知るため、虚血後30分と、再灌流後170 分にマイクロスフェア法で組織血流量を測定した。 細動を起こした場合は除細動器(TEC-7100、日本光電)を用いて20ジュールで 除細動した。連続3回除細動しても回復しなかった場合は細動死とした。また、 心拍数が180bpmを超える個体も解析から除外した。 【0032】 (3) 梗塞サイズの測定 再灌流3時間後、ヘパリン2000Uを静脈内投与し、放血致死後に心臓を摘出し た。左冠動脈LAD閉塞部位に留置していた糸を再び再閉塞後、その末梢側にカ テーテルを挿入し、さらに右冠動脈、左冠動脈基幹部にもそれぞれカテーテルを 挿入した。LADには生理食塩液を、右冠動脈と左冠動脈基幹部には2%エバンス ブルー(シグマ)をいずれも同圧で数分間灌流した。左冠動脈基幹部の剥離が困 難な場合、左回旋枝起始部と左前下行枝起始部にカテーテルを挿入した。次に左 心室の形状を保つため、左心室内に5%寒天(シグマ)を注入し、アセトンとド ライアイスで心臓を-40℃に冷却した。心尖部から閉塞部位までの距離を測定 後、短軸方向に心臓を7分割して心尖部から6枚のスライス切片を得た。各切片 の右心室部分を切除し、1%TTC液に浸して37℃で5分間インキュベートした。 【0033】 各切片の危険領域(エバンスブルーで染色されない虚血領域)、梗塞領域および 左心室全体をポリプロピレン製透明シート上にトレースし、各切片の重量を測定 した。 【0034】 各領域の面積は画像解析ソフト(Scion Image Beta 4.02、Scion)を用いて求 め、各スライス切片の重量に換算した。梗塞サイズ(%)は、個体ごとに異なる危 険領域の大きさを補正するため、危険領域に対する梗塞領域の比で表した。ま た、左心室に対する危険領域の比を危険領域率(%)とし、左心室に対する梗塞領 域の比を梗塞領域率(%)として算出した。 【0035】 (4) %SSの測定 超音波クリスタルで測定した虚血部心筋局所の2点間の変位から心筋局所収縮 率%segment shortening(%SS)を以下の式から求めた。 【0036】 %SS=(DL-SL)/DL x100 DL(拡張期セグメント長;diastolic segment length)は+dP/dt maxの立ち上 がり開始点における2点間距離(セグメント長)を、SL(収縮期セグメント長; systolic segment length)は-dP/dt maxのピーク点における2点間距離(セグメ ント長)とした。 【0037】 (5) マイクロスフェアによる組織血流量測定法 1)マイクロスフェアの投与 心筋局所血流量は直径15.5μmのカラードマイクロスフェア(Dye-Trak VII+、トリトンテクノロジー)によるマイクロスフェア法で虚血30分後と再灌 流後180分直前に測定した。十分に攪拌したマイクロスフェアを左心耳に留置 したカテーテルから10秒間かけて注入し、ただちに37℃に加温した生理食塩液 5mLでカテーテル内残存マイクロスフェアを洗い流した。マイクロスフェアの 投与開始10秒前から、リファレンス血液を右大腿動脈から6mL/分の速度で120 秒間回収した。マイクロスフェアの色素として、虚血30分後にはイエロー1.5 mL(450万個)を、再灌流180分直前にはパーシモン2mL(600万個)を用い た。採血およびマイクロスフェア投与による血行動態への影響はなかった。 【0038】 2)血液サンプルの処理 採取した血液は4本の試験管に分注し、各試験管に2%のTween80溶液を1mL ずつ加え、さらに、16M-KOH溶液を1.1mL、20%Tween80溶液を0.5mL ずつ加え 攪拌した。 【0039】 3)組織サンプルの処理 心尖部から3枚目と4枚目の切片おける虚血部と非虚血部をそれぞれ分取 し、これをさらに約1g程度の心外膜側と心内膜側に分け、脂肪組織や結合組織 などを除去して湿重量を測定した。組織片をプラスチック製試験管に入 れ,2%のTween80を含有する4M-KOH溶液を10mL加えた。 【0040】 4)マイクロスフェアの回収 サンプルを72℃の恒温振盪浴槽内で4時間以上加温して組織を溶解させ、ポ リエステルフィルター(直径25mm、ポアサイズ10μm、トリトンテクノロ ジー)で減圧濾過した。試験管を2%Tween80溶液で数回洗浄後、70%エタノー ルで数回洗った。マイクロスフェアがトラップされたフィルターを50℃の感熱 滅菌器に入れて完全に乾燥させた。 【0041】 5)組織血流量の計算 マイクロスフェアに適量のDMFを加えてマイクロスフェアに被覆されていた 染料を溶出させ、溶液の吸光度を分光光度計(SmartSpec3000、バイオ・ラッ ド)で測定した。組織血流量Qmは以下の式によって算出した。 【0042】 Qm = (Am×Qr)/Ar Qm:サンプルの血流量(mL/分/g) Qr:血液回収率(mL/分)=6 Am:サンプル1g中のマイクロスフェアの吸光度(AU) Ar:血液中の全マイクロスフェア分の吸光度(AU) 心内膜側血流量及び心外膜側血流量の平均値を局所心筋血流量(transmural regional blood flow)とした。 【0043】 (6) 血液生化学 再灌流後30、60、120、180分に採取した血液は4℃、毎分3000回転で10分間遠 心分離し、得られた血漿は測定まで-30℃で冷凍保存した。 【0044】 血漿クレアチニンフォスフォキナーゼ(CPK-P)及び乳酸脱水素酵素(LDH)は富 士写真フィルム社製臨床診断用ドライケムで測定した。 心筋トロポニンTは、ヒトトロポニンTに対する特異的抗体を利用したカーディ アック試薬トロポニンTとカーディアックリーダー(ロッシュ・ダイアグノス ティックス)で検出した。 【0045】 (7) 統計解析 結果はいずれも平均±標準偏差で表示した。dP/dtの陽性最大値を左室内圧最 大陽性dP/dt(+dP/dt max)とし、陰性最大値を左室内圧最大陰性dP/dt(-dP/dt max)とした。各パラメータの投与前値に群間差があるかどうかは一元配置分散分 析で検定した。各群における冠動脈閉塞の前後に差があるかどうかはpared t- testで検定した。 【0046】 対照群およびKP-102投与群において、投与群の循環パラメータの変化に群間差 があるかどうかは経時測定型分散分析(repeated measures ANOVA)で検定した。 有意水準は5%とした(両側検定)。 実験動物の選定 実験には35匹のイヌを使用した。そのうち2匹は技術的な問題から、1匹は高心拍の ため除外した。さらに1匹は冠動脈閉塞直後に細動死したため31匹で試験物質の影響を 検討した。再灌流後、7匹の動物に細動が発生し(対照群4匹、KP-102群3例)、その うち3匹が回復せず死亡した(対照群1匹、KP-102群2匹)。細動発生頻度に群間差は 認められなかった。 【0047】 図1に虚血時の局所血流量と梗塞サイズの関係を示した。局所血流量が0.3mL/分/gを 超えると十分な梗塞サイズができない個体が現れることから、局所血流量が0.3mL/分/g 以上の動物17匹を除外した。したがって解析対象動物数は、対照群7匹(雄5匹、雌2 匹)、KP-102群7匹(雄6匹、雌1匹)となった。体重は対照群17.46±1.43kg、KP- 102群17.74±1.58kgと群間差はなかった。 循環動態パラメータ 表1に循環パラメータの結果を示す。いずれの循環パラメータにおいても虚血前値お よび投与前値に有意な群間差を認めなかった。冠動脈閉塞により、対照群、KP-102 群ともに、平均血圧、左室内圧および-dP/dt maxが低下し(p<0.05)、LVEDPが増加 した(p<0.05)。これらの冠動脈閉塞による変化は再灌流後も持続し、回復することはな く、群間差は認められなかった。%SSは、冠動脈閉塞によって両群とも同程度に低下 し(p<0.01)、負の値を示した。これは虚血部位が収縮期に膨隆を起こしていること を意味している。この%SSの低下は再灌流後も回復せず、その変化に群間に差は認め られなかった。 【0048】 【表1】
【0049】 虚血部組織血流量と梗塞サイズ 冠動脈閉塞30分後の虚血部組織血流量は、いずれの投与群においても非虚血部血流 量と比べて有意に低値を示したが、両群間に差はなかった(表2)。対照群において、 再灌流180分後の虚血部血流量は虚血中の血流量と比べて有意に回復したが、非虚血部 と比べて低値を示し、心内膜側血流量は有意に低かった(p<0.05)。一方、KP-102群で は、再灌流後の血流量は非虚血部と虚血部間で有意な差を認めなかった。 【0050】 【表2】
【0051】 虚血部血流量すなわち側副血流量と梗塞サイズ(危険領域比)の関係をプロットしたと ころ、対照群、KP-102群とも血流量と梗塞サイズは有意な負の相関関係を示した(図 2)。KP-102は対照群と比べて血流―梗塞サイズの関係を下方にシフトさせた。梗塞サ イズの平均値では、対照群の55.2±10.7%に対してKP-102群は38.7±12.2%と有意 に縮小した(p<0.05)。危険領域率も同様にKP-102群は有意に低値を示した。危険領 域率は群間に差はなかった。 【0052】 血中トロポニンT 再灌流30分後および60分後の血中トロポニンTにおいて、KP-102群は対照群と比べ て有意に低値を示した。再灌流120分後では、対照群の7例中6例が測定限界の2ng/mL に達したが、KP-102群では7例中3例にとどまった。再灌流180分後では対照群の全例 が2ng/mLに達し、KP-102群の7例中3例は2ng/mL以下であった。 【0053】 血漿中CPKおよびLDH 再灌流30分後から120分後まで血漿中のCPKとLDHは徐々に増加した。KP-102群投与 によりいずれの時間においても対照群と比べてCPKおよびLDHは低下させる傾向を示し た。時間曲線下面積AUC 30-180 min.(U・min./L)において、KP-102群は対照群と比べて CPKを減少する傾向を示し、LDHを有意に低下させた。
したがって、上記試験結果は、プラルモレリンが、冠動脈閉塞後からの静脈内投与という臨床で想定される投与タイミングにおいて、冠動脈閉塞によって生じる梗塞サイズの大きさを縮小させることができることを示した。 【産業上の利用可能性】 【0054】 プラルモレリンは、心筋梗塞の治療剤として有用である。また、プラルモレリンは、高度の虚血による心筋組織の壊死が生じた直後に投与した場合にも即効的な心筋壊死阻止作用を示すので、特に急性心筋梗塞の治療に用いることが有効である。 【図面の簡単な説明】 【0055】 【図1】図1は、対照群における、虚血部局所側副血流量と梗塞サイズの関係を示す。梗塞サイズは危険領域に対する割合(%AAR)を示す。 【図2】図2は、対照群およびプラルモレリン群における虚血部局所側副血流量と梗塞サイズの関係を示す。梗塞サイズは危険領域に対する割合(%AAR)を示す。 【図3】図3は、プラルモレリンの梗塞サイズ縮小効果を示す。危険領域率には対照群とプラルモレリン群で差がない。全ての値は平均値±SDとして示す(各群7匹)。*p<0.05:対照群との比較。 【図4】図4は、冠虚血再灌流後に増加する血中トロポニンTに対するプラルモレリンの改善効果を示す。全ての値は平均値±SDとして示す。 【図5】図5は、冠虚血再灌流後に増加する血漿中CPKおよびLDHに対するプラルモレリンの改善効果を示す。値は平均±標準偏差(n=7)で示す。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000124269 【氏名又は名称】科研製薬株式会社 【住所又は居所】東京都文京区本駒込2丁目28番8号
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| 【出願日】 |
平成17年3月4日(2005.3.4) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100089705 【弁理士】 【氏名又は名称】社本 一夫
【識別番号】100076691 【弁理士】 【氏名又は名称】増井 忠弐
【識別番号】100075270 【弁理士】 【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100080137 【弁理士】 【氏名又は名称】千葉 昭男
【識別番号】100096013 【弁理士】 【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100106080 【弁理士】 【氏名又は名称】山口 晶子
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| 【公開番号】 |
特開2006−241093(P2006−241093A) |
| 【公開日】 |
平成18年9月14日(2006.9.14) |
| 【出願番号】 |
特願2005−60479(P2005−60479) |
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