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【発明の名称】 エストロゲン様作用剤
【発明者】 【氏名】中村 未央
【住所又は居所】神奈川県横浜市都筑区早渕2−2−1 株式会社資生堂リサーチセンター(新横浜)内

【氏名】土師 信一郎
【住所又は居所】神奈川県横浜市都筑区早渕2−2−1 株式会社資生堂リサーチセンター(新横浜)内

【氏名】合津 陽子
【住所又は居所】神奈川県横浜市都筑区早渕2−2−1 株式会社資生堂リサーチセンター(新横浜)内

【氏名】森 圭子
【住所又は居所】神奈川県横浜市都筑区早渕2−2−1 株式会社資生堂リサーチセンター(新横浜)内

【要約】 【課題】安全かつ簡便にエストロゲンの分泌不足あるいはホルモンバランスの失調に伴う症状を予防、改善または治療する。

【解決手段】タイムオイル、ゼラニウムオイル、クラリセージオイル、ニアウリオイルおよびローズオイルより成る群から選択される精油から成るエストロゲン様作用剤を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイムオイル、ゼラニウムオイル、クラリセージオイル、ニアウリオイルおよびローズオイルより成る群から選択される精油から成るエストロゲン様作用剤。
【請求項2】
タイムオイル、ゼラニウムオイル、クラリセージオイル、ニアウリオイルおよびローズオイルより成る群から選択される精油の香りを嗅がせることによって、あるいは該精油を皮膚に塗布することによって、エストロゲン様作用を増強する美容方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、エストロゲン様作用剤に関するものである。より詳細には、エストロゲン様作用を有する精油から成るエストロゲン様作用剤、それを含む皮膚外用剤、雑貨類、衣類または食品、ならびにエストロゲン様作用を有する精油を用いた美容方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エストロゲン(卵胞ホルモン)は、女性ホルモンの一種であり、発情作用を示すホルモンおよび類似の作用を有する物質の総称として用いられている。天然のエストロゲンとして、エストロン、エストラジオール、エストリオール等が知られており、特にエストラジオールが主要なものである。また、それらと同等の生物活性を有する合成エストロゲンも知られている。
【0003】
エストロゲンは主に卵巣の卵胞および黄体から分泌されるが、妊娠時の胎児胎盤系、副腎、卵巣などからも分泌される。卵巣からのエストロゲンの分泌は、脳の視床下部や下垂体前葉を介してフィードバック調節されており、性周期が成立する。エストロゲンはその受容体を介して作用し、標的組織である生殖器や乳腺のみならず、種々の組織に受容体を有しており、その作用は全身に及ぶ。従って、エストロゲンは生殖機能に作用するだけでなく、脳、心血管、骨格、皮膚、その他の組織に作用し、成人女性の健康に深く関わっている。エストロゲンの主な生理作用として、子宮内膜の増殖、子宮筋の発育、第二次性徴の発現、月経周期の成立の媒介、妊娠時の母体変化の惹起、乳腺管の増殖分泌促進などが挙げられる。また、男性においても、脳、心血管、骨格、皮膚、その他の組織にエストロゲン受容体が存在し、代謝酵素アロマターゼの働きで男性ホルモン(テストステロン)から変換されたエストロゲンが作用する。従って、男性においてもエストロゲンは健康に深くかかわっている。
【0004】
エストロゲンの分泌不足あるいはホルモンバランスの失調は、女性において特に顕著な影響を及ぼし、月経前症候群(PMS)、月経異常、更年期障害などを生じさせ、さらに内因性エストロゲンの低下が続くと、肌の弾力性低下、泌尿生殖器の萎縮による性交痛や尿失禁、高脂血症(脂質代謝の変化)、骨粗鬆症等を発症すると言われている。また、20〜40歳代の女性において、社会進出に伴う過度のストレスやダイエットのためホルモンバランスが崩れ、更年期障害に類似した症状を呈する若年性更年期障害が増えている。このように、エストロゲンの分泌不足あるいはホルモンバランスの失調は、女性の生活の質(QOL)を向上させる上で非常に大きな問題となっている。
【0005】
PMSや更年期障害等のエストロゲンの分泌不足あるいはホルモンバランスの失調に伴う症状の治療は、利尿剤、精神安定剤、鎮痛剤、ビタミン剤等の投与による対処療法や、エストロゲン作用剤等のホルモン剤を直接投与するホルモン補充療法等により行われている。
【0006】
しかしながら、ホルモン療法はその調整が非常に難しく、また他のホルモンにも悪影響を及ぼし、かえって生体の恒常性を乱す恐れがある。また、現在使用されているエストロゲン作用剤は、胃腸障害、血栓症、子宮出血、肝障害などの副作用を有することが分かっており、また長期間投与すると子宮癌や乳癌などが発現する場合もあることが知られている。
【0007】
近年、エストロゲン様作用を有する動植物の抽出物を用いて女性ホルモンバランスを調整する様々な試みがなされている(例えば特許文献1から3)が、精油(香料)によるエストロゲン様作用については全く報告されていない。
【0008】
芳香療法(アロマテラピー)において、香料等の芳香物質を吸入させることによって女性ホルモンに関係する心身の症状を和らげることが経験的に知られている。しかしながら、これまで、香料の香りが内分泌に及ぼす影響についての検討は、主にコルチゾールなどストレス関連ホルモンへの影響に関するものであり、性ホルモンに対する香料の影響についての検討はほとんどなされていない。
【特許文献1】特開2001−103931号公報
【特許文献2】特開2003−277274号公報
【特許文献3】特開2004−155779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑み、更年期障害、若年性更年期障害、月経前症候群等のエストロゲンの分泌不足あるいはホルモンバランスの失調に起因する様々な症状を予防、改善または治療するための、安全性が高く長期間にわたり使用可能であるエストロゲン作用剤を提供することを目的とするものである。
【0010】
また、本発明は、安全かつ簡便にエストロゲン様作用を増強する美容方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、特定の精油がエストロゲン様作用を有することを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0012】
本発明のエストロゲン様作用剤は、タイムオイル、ゼラニウムオイル、クラリセージオイル、ニアウリオイルおよびローズオイルより成る群から選択される精油から成ることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の美容方法は、タイムオイル、ゼラニウムオイル、クラリセージオイル、ニアウリオイルおよびローズオイルより成る群から選択される精油の香りを嗅がせることによって、あるいは該精油を皮膚に塗布することによって、エストロゲン様作用を増強することを特徴とする。
【0014】
本発明のエストロゲン様作用剤および美容方法は、更年期障害、若年性更年期障害または月経前症候群等のエストロゲンの分泌不足あるいはホルモンバランスの失調に起因する諸症状の予防、改善または治療において有効に用いることができる。また、本発明のエストロゲン様作用剤、または美容方法において用いる精油は、皮膚外用剤、雑貨類、衣類または食品等の任意の製品に配合して用いることができる。
【0015】
ここで、「エストロゲン様作用」とは、エストロゲン受容体との結合を介したエストロゲンの様々な生理作用(例えば、子宮内膜の増殖、子宮筋の発育、月経周期の成立の媒介、妊娠時の母体変化の惹起、乳腺管の増殖分泌促進、脳内における神経活動の制御、肝臓や脂肪組織における脂質代謝や骨芽細胞や破骨細胞における骨代謝など、各種細胞における代謝活性の制御等)を意味する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、エストロゲン様作用を有する精油を用いることによって、エストロゲンの欠乏やホルモン異常によって生じる、更年期障害、若年性更年期障害、月経異常、月経前症候群のような全身倦怠感や不定愁訴を伴う症状、ならびに、肌の弾力性低下、泌尿生殖器の萎縮による性交痛や尿失禁、骨粗鬆症等の諸症状を、安全かつ簡便に改善等することを可能にする。特に、本発明のエストロゲン様作用剤は揮発性の精油であるため、その親油性から細胞組織への浸透性が良く、皮膚への塗布や経口摂取、或いは精油成分を吸入した際の吸収性に優れている。また、揮発性を活かしてその香りを嗅がせることによってエストロゲンを調整することができ、様々な態様および製品形態への応用が可能である。すなわち、種々の方法で気化させた精油成分を呼吸とともに吸入させたり、或いは気化させた香料成分に身体を曝露させることで、呼吸器系粘膜や皮膚などから微量ずつ香料成分を吸収させることが可能であり、内服等に比べて穏やかな効果を期待することができ、従来のホルモン補充療法で問題となっていた過剰投与による副作用等の弊害を回避することができる。また、時間や回数など服用を意識させることなく投与することが可能であるため、服用忘れ等を防ぐことも可能で、長期間の連用が必要なホルモン補充療法に適した方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明において用いられるタイムオイル、ゼラニウムオイル、ローズオイル、クラリセージオイルおよびニアウリオイルは、天然物、合成物、半合成物等のいずれであってもよい。また、そのような精油は、任意の抽出方法や蒸留方法、合成方法等によって調製することができ、また市販されているものを用いてもよい。また、本発明において、上記の精油を単独で、または他の1または2以上の精油と組合せて用いることができる。尚、上記の精油はいずれも市販されているものであるが、以下に簡単に説明する。
【0018】
タイムオイル
タイムオイルとしては、例えば、シソ科のタイム(Thymus vulgaris L.)の開花中の生草またはこれを乾燥したものを水蒸気蒸留して得られる精油を用いることができる。
【0019】
ゼラニウムオイル
ゼラニウムオイルとしては、例えば、フウロウソウ科のゼラニウム(Pelargonium graveolens)などPelargonium属の葉および枝を水蒸気蒸留して得られる精油を用いることができる。
【0020】
クラリセージオイル
クラリセージオイルとしては、例えば、シソ科のクラリセージ(Salvia sclarea L.)の開花期の花穂または全草を水蒸気蒸留して得られる精油を用いることができる。
【0021】
ニアウリオイル
ニアウリオイルとしては、例えば、フトモモ科のニアウリ(Melaleuca viridiflora)の葉や茎を水蒸気蒸留して得られる精油を用いることができる。
【0022】
ローズオイル
ローズオイルとしては、例えば、バラ科のRose damascenaなどローズ属の花を水蒸気蒸留して得られる精油を用いることができる。
【0023】
本発明のエストロゲン様作用を有する精油から成るエストロゲン様作用剤は、更年期障害、若年性更年期障害、月経異常、月経前症候群のような全身倦怠感や不定愁訴を伴う症状、ならびに、肌の弾力性低下、泌尿生殖器の萎縮による性交痛や尿失禁、骨粗鬆症、前立腺肥大、前立腺癌等、エストロゲンの欠乏やホルモン異常によって生じる任意の症状の予防、改善または治療に用いることができる。
【0024】
ここで「更年期障害」 とは、全身倦怠感をはじめ、いらいら、不安、抑うつ、不眠、痴呆、記憶低下などの精神神経症状、ほてり、冷え、むくみ、腰痛、耳鳴り、肩の凝り、心悸亢進、異常発汗などの不定愁訴、ならびに、自律神経失調症、高脂血症、動脈硬化、皮膚のコラーゲンの減少、しわ、乾燥、萎縮、皮膚の弾力性低下、皮膚の創傷治癒能力の低下、泌尿生殖器の萎縮による性交痛や尿失禁、骨粗鬆症など更年期の女性に起こる健康上の障害を称する。
【0025】
また「若年性更年期障害」とは、20〜40歳代の比較的若い女性に起こる更年期障害に類似した症状を惹起する心身の状態や疾患を称する。
【0026】
「月経前症候群(PMS)」とは、排卵後の黄体期に周期的に種々の症状が出現し、月経発来とともに、あるいは2〜3日以内に消失する症候群をいう。焦燥感、憂うつ感、不安感、頭痛、意欲低下、眠気などの精神的症状および易疲労感、乳房緊満感、乳房痛、肌あれ、肩こり、便秘などの身体的症状を主体とする症候群を称する。
【0027】
上記のエストロゲン様作用を有する精油は、精油単独で用いてもよいが、様々な対象物に含めることができる。その対象物の種類に応じて、上記の精油の他に、任意の構成要素をさらに含めることができる。また、他のエストロゲン様作用を有する薬剤と本発明の精油とを併用する形で実施してもよい。
【0028】
例えば、対象物が皮膚外用剤である場合には、その剤形(例えば、液剤、粉末剤、顆粒剤、エアゾール剤、固形剤、ジェル剤、パッチ剤、坐剤等)や、製品形態(例えば化粧料、医薬品、医薬部外品等)に応じて、通常そのような皮膚外用剤に含まれる任意の成分を、上記のエストロゲン様作用を有する精油と共に含んでいてよい。本明細書において、「皮膚外用剤」とは、皮膚(頭皮、頭髪、爪も含む)に対して適用する組成物全般を包括する概念であり、例えば、基礎化粧料、メーキャップ化粧料、毛髪化粧料、皮膚もしくは毛髪洗浄料等の化粧料や、軟膏剤、パッチ剤、坐剤、歯磨等の種々の医薬品ないし医薬部外品等を含む。その剤形も特に限定されず、例えば、水溶液系、可溶化系、乳化系、油液系、ゲル系、ペースト系、軟膏系、エアゾール系、水−油2層系、水−油−粉末3層など、任意の剤型を含む。好ましくは、本発明の皮膚外用剤は化粧料であり、例えば、香水、オードトワレ、オーデコロン、クリーム、乳液類、化粧水、ファンデーション類、粉白粉、口紅、石鹸、シャンプー・リンス類、ボディーシャンプー、ボディーリンス、ボディーパウダー類、浴剤類等が挙げられる。
【0029】
また、例えば、芳香剤、消臭剤、アロマキャンドル、インセンス、文房具、財布、バッグ、靴等の任意の雑貨類や、例えば下着、洋服、帽子、ストッキング、靴下等の任意の衣類、あるいは例えば散剤、顆粒、錠剤、カプセル剤等様々な形態のサプリメント(栄養補助食品)、菓子、飲料等の任意の食品等に、エストロゲン様作用を有する精油を含めることができる。それらの素材に本発明の精油を加えても、あるいはそれらの製品に本発明の精油を加えてもよい。
【0030】
さらに、本発明の効果が得られる限り、上記のエストロゲン様作用を有する精油を、吸入医薬品のような吸入製品等において用いてもよい。
【0031】
尚、本発明のエストロゲン様作用を有する精油の使用態様を例示したが、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を達成できる限り、任意の態様で用いることができる。また、本発明のエストロゲン様作用を有する精油の他に、具体的な態様に応じて、一般的な香料成分を、本発明の効果を損なわない限り配合することができる。
【0032】
尚、対象物中における本発明のエストロゲン様作用を有する精油の配合量は、用いる精油の種類や形態、対象物等によって適宜選択することができ、特に限定されないが、例えば、精油の総量として、対象物の全質量に対して、0.0001〜50質量%であり、より好適には、0.001〜20質量%であり、さらに好適には、0.01〜10質量%である。
【0033】
本発明の美容方法において、「精油の香りを嗅がせる」とは、気化した精油成分を呼吸とともに吸入したり、吸い込んだ精油成分で嗅覚を刺激することを意味し、そのやり方や手段は特に限定されず、例えば、対象の精油成分またはそれを含有する皮膚外用剤を皮膚に直接塗布したり、または直接吸入させてよく、あるいは対象の精油成分を配合した芳香剤、消臭剤、アロマキャンドル、インセンス、文房具、財布、バッグ、靴等の任意の雑貨類や、例えば下着、洋服、帽子、ストッキング、靴下等の任意の衣類、またはサプリメント、菓子、飲料等の任意の食品等を介して、その香りを嗅がせてもよい。
【0034】
尚、本発明の美容方法の具体的な適用は、エストロゲン様作用の増強に関連するものであれば特に限定されない。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。尚、実施例では、いずれもビオランド社製の精油を用いた。
【0036】
エストロゲン様作用の評価
MCF−7細胞はヒト乳癌由来の細胞株であり、その細胞増殖がエストロゲンに依存するため、in vitroで各種化合物のエストロゲン様活性を評価するための感度の高い方法として利用されている(例えば、Okubo T et al. Biol Pharm Bull 26, 1219-1224 (2003)、Diel P et al. Planta Med 65, 197-203 (1999))。このMCF−7細胞を用いて、下記の方法に基づき、各精油のエストロゲン様作用について検討した。尚、陰性対照としてエタノール(0.1%)を用い、また陽性対照として、代表的なエストロゲンであるエストラジオール(E2)(10nM)、ならびにフィトエストロゲン(植物由来のエストロゲン様活性を有する成分)であるゲニスチン(1mM)およびゲニステイン(100μM)を用いた。精油はいずれも0.01%の濃度で評価した。
【0037】
実験方法
MCF−7細胞を96穴プレートに播種し、10%FBS含有DMEM培地において24時間培養した。次に、チャーコール・デキストラン処理を行なってホルモンを完全に除去したFBSを5%含有する、フェノールレッドを含まない培地に培地交換した後、各試料を添加した。6日間培養後、細胞を回収し、アラマブルーを用いて生細胞数を計数した。各群n=4とし、生細胞数の平均値を用いた。結果は、エタノールのみを添加した場合(陰性対照)での生細胞数(平均値)に対する各試料添加での生細胞数(平均値)の割合(相対%)として表した。
【0038】
結果を図1に示す。タイムオイル、ゼラニウムオイル、クラリセージオイル、ニアウリオイルおよびローズオイルは、評価濃度において、陽性対照であるエストラジオール、ゲニスチンおよびゲニステインと同程度またはそれ以上の高いMCF−7増殖促進効果を示した。一方、ユーカリオイル、パインニードルオイル、ベルガモットオイル、シスタスオイルは、同濃度においてMCF−7細胞に対して増殖促進効果を全く示さなかった。
【0039】
拮抗阻害剤を用いたエストロゲン様作用の確認
上記のタイムオイル、ゼラニウムオイル、クラリセージオイル、ニアウリオイルおよびローズオイルのMCF−7細胞に対する増殖促進効果が、エストロゲン受容体を介したエストロゲン様作用に基づくものであることを確認するために、エストロゲンと受容体との反応を拮抗的に阻害するICI182780(WAKO社製)を用いた拮抗阻害反応試験を実施した。ICI182780はエストロゲン受容体に対してエストロゲンと同様の親和性を有しているが、アゴニスト(作動薬)としての活性は持っていない、エストロゲンのアンタゴニスト(拮抗阻害剤)である。従って、もし薬剤の効果がICI182780の存在により抑制される場合は、その効果がエストロゲン受容体を介したものであり、エストロゲン様作用を有していることが確認できる。逆に抑制されない場合はその薬剤の作用点はエストロゲン受容体以外にあることが推察できる。
【0040】
上述した方法と同様の方法で、MCF−7を各精油(上記と同じ濃度)と共に10nMのICI182780を添加した培地で培養して、生細胞数を計数した。結果は同様にエタノールのみ添加した場合に対する割合(相対%)として表した。
【0041】
結果を図2(拮抗阻害剤(+))に示す。タイムオイル、ゼラニウムオイル、クラリセージオイル、ニアウリオイルおよびローズオイルによるMCF-7細胞の増殖促進効果は、エストラジオール、ゲニスチンおよびゲニステインと同様、エストロゲン受容体の拮抗阻害剤であるICI182780を添加することによって阻害された。ICI182780自体はこの添加濃度ではMCF−7細胞に細胞毒性を及ぼさないため、この増殖阻害は各精油とICI182780のエストロゲン受容体に対する拮抗反応に基づくものである。従って、これら精油によるMCF−7細胞の増殖促進効果がエストロゲン受容体を介した女性ホルモン様作用によるものであることが確認された。
【0042】
以下に、本発明のエストロゲン様作用剤を含む皮膚外用剤、雑貨類、衣類または食品の典型的な製品形態の処方例を実施例として示す。いずれにおいても、本発明の精油は、タイムオイル、ゼラニウムオイル、クラリセージオイル、ニアウリオイルおよびローズオイルより成る群から選択される1種または2種以上の混合物である。尚、配合量は全て製品全量に対する質量%で表す。
【0043】
実施例1
化粧水(処方例1)
(1)グリセリン 2.0
(2)ジプロピレングリコール 2.0
(3)PEG−60 水添ひまし油 0.3
(4)トリメチルグリシン 0.1
(5)防腐剤 適量
(6)キレート剤 適量
(7)染料 適量
(8)本発明の精油 0.05
(9)精製水 残余
【0044】
実施例2
化粧水(処方例2)
(1)アルコール 30.0
(2)ブチレングリコール 4.0
(3)グリセリン 2.0
(4)PPG−13デシルテトラデス24 0.3
(5)オクチルメトキシシンナメート 0.1
(6)メントール 0.2
(7)酢酸トコフェロール 0.1
(8)キレート剤 適量
(9)染料 適量
(10)本発明の精油 0.01
(11)精製水 残余
【0045】
実施例3
乳液(処方例1)
(1)ステアリン酸 2.0
(2)セチルアルコール 1.5
(3)ワセリン 4.0
(4)スクワラン 5.0
(5)グリセロールトリー2−エチルヘキサン酸エステル 2.0
(6)ソルビタンモノオレイン酸エステル 2.0
(7)ジプロピレングリコール 5.0
(8)PEG1500 0.3
(9)トリエタノールアミン 0.1
(10)防腐剤 適量
(11)本発明の精油 0.2
(12)精製水 残余
【0046】
実施例4
乳液(処方例2)
(1)エチルアルコール 10.0
(2)シクロメチコン 0.1
(3)ブチレングリコール 5.0
(4)ジメチコン 3.0
(5)グリセン 0.1
(6)メントール 1.0
(7)トリメチルシロキシケイ酸 0.1
(8)カフェイン 1.0
(9)トリメチルグリシン 1.0
(10)キサンタンガム 0.001
(11)ヒドロキシエチルセルロース 0.1
(12)大豆発酵エキス 1.0
(13)ラウリルベタイン 0.5
(14)カルボマー 0.2
(15)キレート剤 適量
(16)パラベン 適量
(17)安息香酸 適量
(18)本発明の精油 0.1
(19)酸化鉄 適量
(20)苛性カリ 0.05
(21)グリチルリチン酸ジカルシウム 0.01
(22)塩酸ピリドキシン 0.01
(23)アスコルビン酸グルコシド 0.01
(24)アルブチン 3.0
(25)ユキノシタ抽出液 0.1
(26)水 残余
【0047】
実施例5
乳液(処方例3)
(1)ブチレングリコール 4.0
(2)プロピレングリコール 4.0
(3)カルボマー 0.2
(4)苛性カリ 0.2
(5)ベヘニン酸 0.5
(6)ステアリン酸 0.5
(7)イソステアリン酸 0.5
(8)ステアリン酸グリセリル 1.0
(9)イソステアリン酸グリセリル 1.0
(10)ベヘニルアルコール 0.5
(11)スクワラン 5.0
(12)トリオクタノイン 3.0
(13)フェニルトリメチコン 2.0
(14)バチルアルコール 0.5
(15)グリチルリチン酸ジカルシウム 0.01
(16)防腐剤 適量
(17)キレート剤 適量
(18)顔料 適量
(19)本発明の精油 0.15
(20)精製水 残余
【0048】
実施例6
乳液(処方例4)
(1)グリセリン 3.0
(2)キシリトール 2.0
(3)カルボマー 0.1
(4)苛性カリ 0.1
(5)イソステアリン酸グリセリル 1.0
(6)ステアリン酸グリセリル 0.5
(7)ベヘニルアルコール 1.0
(8)バチルアルコール 1.0
(9)パーム硬化油 2.0
(10)ワセリン 1.0
(11)スクワラン 5.0
(12)オクタン酸エリスリチル 3.0
(13)シクロメチコン 1.0
(14)防腐剤 適量
(15)キレート剤 適量
(16)本発明の精油 0.2
(17)精製水 残余
(18)トラネキサム酸 1.0
(19)パントテニルエチルエーテル 0.5
(20)ニコチン酸アミド 0.1
(21)トレハロース 0.1
(22)ローズマリーエキス 0.1
(23)ビタミンA 0.1
(24)アスコルビン酸グリコシド 0.001
(25)キイチゴ抽出液 1.0
(26)オウゴン抽出液 0.001
(27)オウバク抽出液 0.01
【0049】
実施例7
乳液(処方例5)
(1)エタノール 2.0
(2)シクロメチコン 10.0
(3)グリセリン 5.0
(4)ジブチレングリコール 1.0
(5)ジメチコン 1.0
(6)コーンスターチ 4.0
(7)ミネラルオイル 2.0
(8)トリメチルシロキシケイ酸 5.0
(9)ポリエチレングリコール 3.0
(10)乳酸メンチル 0.1
(11)PEG−60水添ヒマシ油 1.0
(12)アミノプロピルジメチコン 1.0
(13)キサンタンガム 0.01
(14)酢酸トコフェロール 0.01
(15)カフェイン 0.1
(16)ヒアルソン酸ナトリウム 0.1
(17)大豆発酵エキス 0.01
(18)ハマメリスエキス 0.01
(19)ドクダミエキス 0.01
(20)カルボマー 0.3
(21)アクリル酸マタクリル酸アルキル共重合体 0.2
(22)HEDTA 適量
(23)防腐剤 適量
(24)本発明の精油 0.3
(25)顔料 適量
(26)苛性カリ 0.15
(27)アミノメチルプロパノール 0.05
(28)水 残余
【0050】
実施例8
乳液(処方例6)
(1)エタノール 15.0
(2)シクロメチコン 6.0
(3)ブチレングリコール 0.5
(4)ジメチコン 1.0
(5)グリセリン 1.0
(6)ポリエチレングリコール 1.0
(7)乳酸メンチル 1.0
(8)メントール 0.1
(9)トリメチルシロキシケイ酸 1.0
(10)カフェイン 0.5
(11)トリメチレングリシン 0.1
(12)キサンタンガム 0.1
(13)ヒドロキシエチルセルロース 0.1
(14)大豆発酵エキス 0.01
(15)酢酸トコフェロール 0.05
(16)ラウリルベタイン 0.01
(17)渇藻エキス 0.01
(18)ドクダミエキス 0.01
(19)紅藻エキス 0.01
(20)緑藻エキス 0.01
(21)セルロース沫 1.0
(22)イソステアリン酸PEG−60グリセリル 1.0
(23)イソステアリン酸 1.0
(24)カルボマー 0.1
(25)アクリル酸メタクリル酸アルキル重合体 0.1
(26)EDTA 0.1
(27)メタリン酸ナトリウム 0.1
(28)フェノキシエタノール 0.2
(29)パラベン 0.2
(30)本発明の精油 0.45
(31)酸化鉄(赤) 0.02
(32)メンチルグリセリルエーテル 0.01
(33)水 残余
【0051】
実施例9
クリーム(処方例1)
(1)グリセリン 10.0
(2)ブチレングリコール 5.0
(3)カルボマー 0.1
(4)苛性カリ 0.2
(5)ステアリン酸 2.0
(6)スタリン酸グリセリル 2.0
(7)イソステアリン酸グリセリル 2.0
(8)ワセリン 5.0
(9)防腐剤 適量
(10)酸化防止剤 適量
(11)本発明の精油 0.3
(12)精製水 残余
(13)キレート剤 適量
(14)顔料 適量
(15)ステアリルアルコール 2.0
(16)ベヘニルアルコール 2.0
(17)パーム硬化油 2.0
(18)スクワラン 10.0
(19)4−メトキシサリチル酸K 3.0
【0052】
実施例10
クリーム(処方例2)
(1)グリセリン 3.0
(2)ジプロピレングリコール 7.0
(3)ポリエチレングリコール 3.0
(4)ステアリン酸グリセリル 3.0
(5)イソステアリン酸グリセリル 2.0
(6)ステアリルアルコール 2.0
(7)ベヘニルアルコール 2.0
(8)流動パラフィン 7.0
(9)シクロメチコン 3.0
(10)ジメチコン 1.0
(11)オクチルメトキシシンナメート 0.1
(12)ヒアルロン酸Na 0.05
(13)防腐剤 適量
(14)酸化防止剤 適量
(15)本発明の精油 0.4
(16)精製水 残余
(17)キレート剤 適量
(18)顔料 適量
【0053】
実施例11
ジェル
(1)エチルアルコール 10.0
(2)グリセリン 5.0
(3)ブチレングリコール 5.0
(4)カルボマー 0.5
(5)アミノメチルプロパノール 0.3
(6)PEG−60水添ヒマシ油 0.3
(7)メントール 0.02
(8)防腐剤 適量
(9)キレート剤 適量
(10)本発明の精油 0.1
(11)精製水 残余
【0054】
実施例12
エアゾール(処方例1)
(1)グリセリン 2.0
(2)ジプロピレングリコール 2.0
(3)PEG−60水添ヒマシ油 0.3
(4)HPPCD 1.0
(5)防腐剤 適量
(6)キレート剤 適量
(7)染料 適量
(8)本発明の精油 0.2
(9)精製水 適量
(10)LPG 残余
【0055】
実施例13
エアゾール(処方例2)
(1)アルコール 15.0
(2)ブチレングリコール 2.0
(3)グリセリン 1.0
(4)PPG−13デシルテトラデス24 0.1
(5)銀担持ゼオライト 1.0
(6)キレート剤 適量
(7)染料 適量
(8)本発明の精油 0.15
(9)精製水 残余
(10)LPG 40.0
【0056】
実施例14
エアゾール(処方例3)
(1)エタノール 60.0
(2)乳酸メンチル 0.1
(3)乳酸ナトリウム 0.1
(4)酢酸トコフェロール 0.01
(5)乳酸 0.01
(6)カフェイン 0.01
(7)ウイキョウエキス 1.0
(8)ハマメリスエキス 1.0
(9)ドクダミエキス 1.0
(10)ジプロピレングリコール 1.0
(11)窒素ガス 0.9
(12)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン 1.0
デシルテトラデシルエーテル
(13)ブチレングリコール 2.0
(14)トコフェロール 0.05
(15)本発明の精油 0.1
(16)PEG−60水添ヒマシ油 0.1
(17)水 残余
【0057】
実施例15
シャンプー
(1)ラウリルポリエキシエチレン(3)
硫酸エステルナトリウム塩(30%水溶液) 30.0
(2)ラウリル硫酸エステルナトリウム塩(30%水溶液) 10.0
(3)ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.0
(4)グリセリン 1.0
(5)防腐剤 適量
(6)本発明の精油 0.5
(7)色素 適量
(8)金属イオン封鎖剤、pH調整剤 適量
(9)精製水 残余
【0058】
実施例16
リンス
(1)シリコーン油 3.0
(2)流動パラフィン 1.0
(3)セチルアルコール 1.5
(4)ステアリルアルコール 1.0
(5)塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.7
(6)グリセリン 3.0
(7)本発明の精油 0.5
(8)色素、防腐剤 適量
(9)精製水 残余
【0059】
実施例17
ボディーシャンプー
(1)ラウリン酸 2.5
(2)ミリスチン酸 5.0
(3)パルミチン酸 2.5
(4)オレイン酸 2.5
(5)ココイルジエタノールアミド 1.0
(6)グリセリン 20.0
(7)苛性カリ 3.6
(8)染料 適量
(9)本発明の精油 0.5
(10)金属イオン封鎖剤 適量
(11)精製水 残余
【0060】
実施例18
フレグランス
(1)アルコール 75.0
(2)精製水 残余
(3)ジプロピレングリコール 5.0
(4)本発明の精油 10.0
(5)酸化防止剤 8.0
(6)色素 適量
(7)紫外線吸収剤 適量

ここで、「フレグランス」とは、アルコール(例えばエチルアルコール)または水性アルコールに本発明の精油を溶解したものである。フレグランスは、本発明の精油を1%〜99%質量%含有する。水とアルコールの配合比は50:50〜0:100の範囲である。フレグランスは、溶解剤、柔軟化剤、ヒューメクタン、濃化剤、静菌剤、またはその他通常化粧品に用いられる材料を含有することができる。
【0061】
実施例19
ルームフレグランス
(1)アルコール 80.0
(2)精製水 残余
(3)酸化防止剤 5.0
(4)本発明の精油 3.0
(5)3−メチルー3メトキシブタノール 5.0
(6)ジベンジリデンソルビトール 5.0
【0062】
実施例20
インセンス
(1)タブ粉 75.5
(2)安息香酸ナトリウム 15.5
(3)本発明の精油 5.0
(4)ユーカリオイル 1.0
(5)フェンネルオイル 1.0
(6)精製水 残余
【0063】
実施例21
入浴剤
(1)硫酸ナトリウム 45.0
(2)炭酸水素ナトリウム 45.0
(3)ヒソップオイル 9.0
(4)本発明の精油 1.0
【0064】
実施例22
マッサージ用ジェル
(1)エリスリトール 2.0
(2)カフェイン 5.0
(3)オウバク抽出物 3.0
(4)グリセリン 50.0
(5)カルボキシビニルポリマー 0.4
(6)ポリエチレングリコール400 30.0
(7)エデト3ナトリウム 0.1
(8)ポリオキシレン(10)メチルポリシロキサン共重合体 2.0
(9)スクワラン 1.0
(10)水酸化カリウム 0.15
(11)本発明の精油 1.0
【0065】
実施例23
マッサージクリーム
(1)固形パラフィン 5.0
(2)ミツロウ 10.0
(3)ワセリン 15.0
(4)流動パラフィン 41.0
(5)1.3−ブチレングリコール 4.0
(6)モノステアリン酸グリセリン 2.0
(7)POE(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル 2.0
(8)ホウ砂 0.2
(9)カフェイン 2.0
(10)防腐剤 適量
(11)酸化防止剤 適量
(12)本発明の精油 1.0
(13)精製水 残余
【0066】
実施例24
芳香性繊維
キュプロアンモニウムセルロース溶液(セルロース濃度10重量%、アンモニウム濃度7重量%、銅濃度3.6重量%)に、本発明の精油を内包したマイクロカプセル(粒子径50μm以下、マイクロカプセルに占める精油の割合は50重量%)をセルロース重量に対して0.1〜20重量%の範囲内で添加、混和した後、通常の湿式紡糸方法に従って紡糸し、精錬工程、乾燥工程を経て、芳香性繊維を得た。
【0067】
実施例25
顆粒
(1)スクラロース 0.1
(2)本発明の精油 0.1
(3)香味料 5.0
(4)賦形剤(セオラス) 10.0
(5)マルチトール 残余
【0068】
実施例26
錠剤(チュアブルタイプ)
イノシトール 11.0
マルチトール 21.0
スクロース 0.5
鮭白子抽出物(DNA Na) 0.1
酵母抽出物 0.1
本発明の精油 0.1
香味料 5.0
賦形剤 残余
【0069】
実施例27
タブレット
潤沢剤(ショ糖脂肪酸エステル等) 1.0
アラビアガム水溶液(5%) 2.0
酸味料 1.0
着色料 適量
本発明の精油 0.1
糖質(粉糖またはソルビトール等) 残余
【0070】
実施例28
キャンディー
砂糖 50.0
水飴 47.95
有機酸 2.0
本発明の精油 0.05
【0071】
実施例29
ガム
砂糖 43.0
ガムベース 30.95
グルコース 10.0
水飴 16.0
本発明の精油 0.05
【0072】
これらの実施例の皮膚外用剤、雑貨類、衣類または食品は、それぞれの製品形態の典型的な使用態様における使用テストにより、エストロゲンの分泌不足あるいはホルモンバランスの失調に伴う全身倦怠感、ほてり、冷え、いらいら、不安感等の諸症状を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】精油のエストロゲン様作用を示すグラフ
【図2】精油の作用がエストロゲン受容体を介した作用であることを示すグラフ
【出願人】 【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社資生堂
【住所又は居所】東京都中央区銀座7丁目5番5号
【出願日】 平成17年3月2日(2005.3.2)
【代理人】 【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史

【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛

【公開番号】 特開2006−241044(P2006−241044A)
【公開日】 平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願番号】 特願2005−57313(P2005−57313)