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【発明の名称】 血中中性脂肪低下作用および肝臓中性脂肪合成抑制作用および血小板凝集抑制作用を有する油脂
【発明者】 【氏名】遠藤 泰志

【氏名】長田 ゆう子

【氏名】木村 ふみ子

【氏名】藤本 健四郎

【要約】 【課題】本発明は、汎用的な油糧種子を利用した、副作用が少なく、簡便かつ日常的に使用可能な血清脂質の改善作用および/または肝臓中性脂肪低下作用および/または血小板凝集抑制作用を有する油脂を提供することを課題とする。

【解決手段】本発明は、トリグリセリドを構成する全脂肪酸に占める5,11,14−エイコサトリエン酸が8〜50質量%である極めて強い血中中性脂肪低下作用および/または肝臓中性脂肪合成抑制作用および/または血小板凝集抑制作用を有する油脂に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5,11,14−エイコサトリエン酸を有効成分とすることを特徴とする血中中性脂肪低下剤。
【請求項2】
5,11,14−エイコサトリエン酸を有効成分とすることを特徴とする肝臓中性脂肪合成抑制剤。
【請求項3】
5,11,14−エイコサトリエン酸を有効成分とすることを特徴とする血小板凝集抑制剤。
【請求項4】
5,11,14−エイコサトリエン酸グリセリドを有効量含んでなることを特徴とする血中中性脂肪低下作用を有する油脂。
【請求項5】
5,11,14−エイコサトリエン酸グリセリドを有効量含んでなることを特徴とする肝臓中性脂肪合成抑制作用を有する油脂。
【請求項6】
5,11,14−エイコサトリエン酸グリセリドを有効量含んでなることを特徴とする血小板凝集抑制作用を有する油脂。
【請求項7】
5,11,14−エイコサトリエン酸グリセリドがカヤ種子から得られるものまたはこれらを濃縮処理したものまたはこれらをエステル交換処理したものである請求項4〜6に記載の油脂。
【請求項8】
請求項4〜7いずれか1項に記載の油脂を含有する食用油脂。
【請求項9】
請求項4〜8いずれか1項に記載の油脂を含有する油脂加工品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は血中中性脂肪低下作用および/または肝臓中性脂肪合成抑制作用および/または血小板凝集抑制作用を有する油脂に関する。
【背景技術】
【0002】
血清中の脂質含量が増加した状態である高脂血症は、動脈硬化症を促進させ、冠動脈疾患や脳卒中等の要因とされている。特に中性脂肪の増加は、脂肪肝、膵炎の発症に結びつくほか、虚血性心疾患の危険因子とされている。とりわけ肝硬変や肝がんの原因となる脂肪肝は、アルコールの多飲や栄養過剰によっても引き起こされる。また、血小板凝集による血栓症も、虚血性心疾患や脳卒中を招くことが知られているが、これらは日常の食事に影響されることから、食習慣の改善が必要とされている。
【0003】
これらの問題を解決する技術として、クロフィブラートやニコチン酸コレスチラミン等の抗高脂血症剤の投与があげられる。しかし、これらの薬剤は副作用として肝機能障害などの多くの副作用を発症させ、特に脂肪肝の治療に適していない。
【0004】
このような観点から、安価で日常的に用いることができ、かつ副作用もなく安全に高脂血症や脂肪肝、血栓症を予防、治療できるような方法が求められている。
【0005】
そこで、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)等の高度不飽和脂肪酸が血清中性脂肪値やコレステロール値を低減させること、および血小板凝集を抑制することが明らかになったこと(非特許文献1)から、高脂血症や血栓症の予防と治療のために、このような脂肪酸を多く含む魚を意図的に摂取したり、魚油や魚油濃縮物を素材とする健康食品等が市販されるようになった。しかし、このような高度不飽和脂肪酸油脂は酸化されやすく、日常の調理に利用されるてんぷら油やサラダ油等の食用油脂として使用するには適さない。
【0006】
一方、ナギ種子、ニオイヒバ種子、イチイ種子、コノテガシワ種子、チョウセンマツ種子、カイガンショウ種子などには、二重結合の配置が非メチレン介在型である高度不飽和脂肪酸の5,9,12−オクタデカトリエン酸(all cis −5,9,12−octadecatrienoic acid、ピノレン酸)および/または5,11,14−エイコサトリエン酸(all cis −5,11,14−eicosatrienoic acid、シアドン酸)および/または5,11,14,17−エイコサテトラエン酸(all cis −5,11,14、17−eicosatetraenoic acid酸、ジュニペロニック酸)が存在することが知られている。これらのうち、コノテガシワ、チョウセンマツ、カイガンショウの種子油に血清脂質の改善作用や肝臓中性脂肪の低下作用を有することが報告されている(非特許文献2〜7)。有効成分としては、非メチレン介在型高度不飽和脂肪酸が考えられているが、異なった構造の非メチレン介在型高度不飽和脂肪酸を複数含むことから、有効成分は特定されていない。
【0007】
【非特許文献1】水産脂質−その特性と生理作用−、1993、恒星社厚生閣刊、pp.80−87
【非特許文献2】リピッズ(Lipids)、1992、Vol. 27、No. 7、pp.500−504
【非特許文献3】ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ニュートリッション(British Journal of Nutrition)、1994、Vol. 72、pp.775−783
【非特許文献4】ジャーナル・オブ・ニュートリッション(Journal of Nutrition)、1999、Vol. 129、pp.1972−1978
【非特許文献5】リピッズ(Lipids)、1999、Vol. 34、No. 1、pp.39−44
【非特許文献6】ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ニュートリッション(British Journal of Nutrition)、2000、Vol. 84、pp.353−360
【非特許文献7】リピッズ(Lipids)、2001、Vol. 36、No. 6、pp.567−574
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、汎用的な油糧種子を利用した、副作用が少なく、簡便かつ日常的に使用可能な血清脂質の改善作用および/または肝臓中性脂肪低下作用および/または血小板凝集抑制作用を有する油脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に対し、本発明者らは種々の種子油と血清脂質及び肝臓脂質低下作用との相関を鋭意検討した結果、非メチレン介在型である高度不飽和脂肪酸のうち、5,11,14−エイコサトリエン酸のみを含むカヤ種子から抽出した油脂に、極めて強い血中中性脂肪低下作用および/または肝臓中性脂肪合成抑制作用および/または血小板凝集抑制作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、極めて強い血中中性脂肪低下作用および/または肝臓中性脂肪合成抑制作用および/または血小板凝集抑制作用のある、5,11,14−エイコサトリエン酸を含むカヤ種子などから抽出した油脂が提供される。この油脂は、単独で使用でき、あるいは公知の原材料に配合して飲食物、健康食品、動物用飼料もしくは医薬製剤となすことができ、副作用の懸念もなく、簡便に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
カヤ油もしくは、5,11,14−エイコサトリエン酸を含む他の油糧種子は、従来から食用油として幅広く用いられており、安全性については問題のないものである。また、本発明に係る油脂は一般に市販されている通常の食用油脂と同等あるいはそれ以上の風味を持ち、従来の食用油脂の代替品となりうる。通常の油脂と同様に、炒め物、揚げ物などのあらゆる調理に使用できるのはもちろんのこと油脂を含有する食品であるドレッシング、マヨネーズ、マーガリン、クリーム類、菓子類、パン、ケーキ、チョコレート、アイスクリームにも使用可能である。用途についても一般家庭用に止まることなく業務用、給食用、健康食品用、治療用及び病院給食用としても使用できる。つまり、本発明は、食用油脂としての日常摂取することで、血清中性脂肪および/または脂肪肝および/または血栓症の改善効果をえることができるものである。
【0012】
また、本発明に係る油脂は例えば他の食用動植物性油脂、ビタミンE、β−カロテン等とともにソフトカプセルやマイクロカプセル等のカプセル状にして摂取することもできる。このように本発明に係る油脂は高脂血症、脂肪肝、血栓症の予防および治療のために利用されることも期待できる。
【実施例】
【0013】
以下に本発明をより具体的に説明するために、試験例を示す。無論、本発明はそれらによって限定されるものではない。
【0014】
試験例について説明すると、4週齢のSD系雄性ラットに、カヤ油、大豆油、コーン油(各試験油の脂肪酸組成を表1に示す。)をそれぞれ10重量%配合した飼料(表2)を4週間自由摂取させた。4週間後に各試験群8匹ずつ解剖により採血し、血清脂質濃度を常法により測定した。また、各試験群のラットの肝臓組織の重量を測定すると共に、コレステロール、トリグリセリド、リン脂質量を測定した。また、血小板凝集の重要な因子である血中リン脂質の脂肪酸組成を分析した。大豆油添加群およびコーン油添加群を対照に統計処理を行い、危険率5%以下のものを有意な差とした。表3に血清脂質濃度を、表4に肝臓組織重量および肝臓脂質濃度を示す。各試験区とも飼料摂取量、体重増加量および肝臓重量に有意差は認められなかった。カヤ油を添加した試験群は、血清中性脂肪および肝臓中性脂肪濃度が、大豆油およびコーン油を添加した試験群よりも有意に低い値を示した。また、血中リン脂質の脂肪酸組成を分析した結果、表5に示すように、18:2と20:4の脂肪酸の割合が減少し、シアドン酸(20:3)が増加した。20:4および18:2は血小板凝集能の強いトロンボキサンA2の原料となるため、血中リン脂質中にこれら脂肪酸の濃度が高いと血小板凝集を起こしやすいことが知られている。また、シアドン酸は20:4と構造が似ているが、トロンボキサンA2の原料にはならないため、トロンボキサンA2の合成を拮抗的に抑制すると考えられる。従って、カヤ油の摂取によって血中リン脂質の脂肪酸組成が変化して、血小板凝集作用の強いトロンボキサンA2の産生が減少することから、カヤ油には血小板凝集抑制作用があるといえる。この実験結果から、本発明に係るトリグリセリド(カヤ油)はラットに対して副作用がなく、血清中性脂肪および肝臓中性脂肪値が顕著に低減すること、および血小板凝集抑制作用があることが明らかになった。
【0015】
【表1】


【0016】
【表2】


【0017】
【表3】


【0018】
【表4】


【0019】
【表5】


【出願人】 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
【出願日】 平成17年2月24日(2005.2.24)
【代理人】 【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男

【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄

【識別番号】100123216
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 祐一

【識別番号】100089336
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 佳直

【公開番号】 特開2006−232711(P2006−232711A)
【公開日】 平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願番号】 特願2005−48265(P2005−48265)