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【発明の名称】 アレルギー性結膜疾患治療剤
【発明者】 【氏名】椎 大介
【住所又は居所】奈良県生駒市高山町8916−16 参天製薬株式会社内

【氏名】三宅 秀樹
【住所又は居所】奈良県生駒市高山町8916−16 参天製薬株式会社内

【要約】 【課題】9−シクロペンチル−7−エチル−3−(チオフェン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−9H−ピラゾロ[3,4−c]−1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジンおよび2−(3−クロロフェノキシ)−3−[3−(3−ヒドロキシピリジン−4−イル)プロポキシ]ピリジンの新たな薬理効果(医薬用途)を見い出すこと。

【解決手段】上記置換ピリジン誘導体はいずれも、アレルギー性結膜炎モデルにおいて、優れたアレルギー性結膜炎症状抑制効果を発揮するので、アレルギー性結膜炎、春季カタル、アトピー性角結膜炎などのアレルギー性結膜疾患の治療剤として有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
9−シクロペンチル−7−エチル−3−(チオフェン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−9H−ピラゾロ[3,4−c]−1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン、2−(3−クロロフェノキシ)−3−[3−(3−ヒドロキシピリジン−4−イル)プロポキシ]ピリジンまたはそれらの塩類を有効成分として含有するアレルギー性結膜疾患の治療剤。
【請求項2】
アレルギー性結膜疾患が、アレルギー性結膜炎、春季カタルまたはアトピー性角結膜炎である請求項1記載の治療剤。
【請求項3】
アレルギー性結膜炎が、季節性アレルギー性結膜炎または通年性アレルギー性結膜炎である請求項2記載の治療剤。
【請求項4】
剤型が、点眼剤または眼軟膏である請求項1〜3のいずれかに記載の治療剤。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、9−シクロペンチル−7−エチル−3−(チオフェン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−9H−ピラゾロ[3,4−c]−1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン、2−(3−クロロフェノキシ)−3−[3−(3−ヒドロキシピリジン−4−イル)プロポキシ]ピリジンまたはそれらの塩類を有効成分として含有するアレルギー性結膜疾患の治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー性結膜疾患は、I型アレルギーが関与する結膜の炎症性疾患であり、その原因として花粉、ダニ、ハウスダスト、真菌、ペットの毛などのアレルゲンが知られている。アレルギー性結膜疾患は、アレルギー性結膜炎、春季カタル、アトピー性角結膜炎に大別される。アレルギー性結膜炎は、結膜の増殖性変化が認められないアレルギー性結膜疾患であり、症状の発現が季節性のものを季節性アレルギー性結膜炎と呼び、また、通年性のものを通年性アレルギー性結膜炎と呼んでいる。春季カタルは、眼瞼結膜の乳頭の増殖・増大、結膜肥厚、輪部結膜の腫脹や隆起などの増殖性変化がみられるアレルギー性結膜疾患である。また、アトピー性角結膜炎とは、アトピー性皮膚炎に合併して起こる慢性角結膜疾患である。これらのアレルギー性結膜疾患の主症状として、浮腫および充血が挙げられる。
【0003】
一方、9−シクロペンチル−7−エチル−3−(チオフェン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−9H−ピラゾロ[3,4−c]−1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン(Tofimilast)および2−(3−クロロフェノキシ)−3−[3−(3−ヒドロキシピリジン−4−イル)プロポキシ]ピリジン(OS-0217)は、いずれも置換ピリジン誘導体である。
【0004】
特許文献1には、Tofimilastなどの置換ピリジン類はPDE−IV阻害活性やTNF阻害活性を有し、喘息、関節炎、気管支炎、乾癬などの疾患に有効であることが記載され、また、特許文献2には、OS-0217などの置換ピリジン誘導体はPDE−IV阻害活性を有し、強い気管支拡張作用を示すことが記載されている。
【0005】
しかし、上記特許文献には、これらの化合物の眼疾患、とりわけアレルギー性結膜疾患に対する作用については全く検討されていない。
【特許文献1】特許第3107827号明細書
【特許文献2】国際公開00/20391号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、TofimilastやOS-0217は、医薬として種々の薬理効果を有するが、さらに新たな薬理効果としてアレルギー性結膜疾患に対する有効性を見い出すことは興味ある課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、9−シクロペンチル−7−エチル−3−(チオフェン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−9H−ピラゾロ[3,4−c]−1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン(Tofimilast)および2−(3−クロロフェノキシ)−3−[3−(3−ヒドロキシピリジン−4−イル)プロポキシ]ピリジン(OS-0217)の新たな医薬用途を探索すべく鋭意研究を行なったところ、アレルギー性結膜炎モデルを用いた結膜炎症状抑制試験において、これらの置換ピリジン誘導体が優れたアレルギー性結膜炎症状(浮腫・充血)抑制効果を発揮することを見い出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)9−シクロペンチル−7−エチル−3−(チオフェン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−9H−ピラゾロ[3,4−c]−1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン、2−(3−クロロフェノキシ)−3−[3−(3−ヒドロキシピリジン−4−イル)プロポキシ]ピリジンまたはそれらの塩類を有効成分として含有するアレルギー性結膜疾患の治療剤、
(2)アレルギー性結膜疾患が、アレルギー性結膜炎、春季カタルまたはアトピー性角結膜炎である前(1)記載の治療剤、
(3)アレルギー性結膜炎が、季節性アレルギー性結膜炎または通年性アレルギー性結膜炎である前(2)記載の治療剤、および
(4)剤型が、点眼剤または眼軟膏である前(1)〜(3)記載の治療剤、である。
【0009】
9−シクロペンチル−7−エチル−3−(チオフェン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−9H−ピラゾロ[3,4−c]−1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン(Tofimilast)および2−(3−クロロフェノキシ)−3−[3−(3−ヒドロキシピリジン−4−イル)プロポキシ]ピリジン(OS-0217)は、後述するアレルギー性結膜炎モデルを用いた結膜炎症状抑制試験の結果から明らかなように、アレルギー性結膜疾患に対して優れた結膜炎症状(浮腫・充血)抑制作用を有する。
【0010】
本発明において、医薬として許容される塩類は、特に制限はなく、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸との塩、酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸等の有機酸との塩などが挙げられる。より好ましい塩は、塩酸塩、酢酸塩およびフマル酸塩である。また、第四級アンモニウム塩、水和物および溶媒和物も本発明の医薬として許容される塩類に包含される。さらに、幾何異性体、光学異性体、互変異性体、多形体なども本発明の有効成分に包含される。
【0011】
本発明のアレルギー性結膜炎、春季カタルおよびアトピー性角結膜炎の治療剤(以下、これらを「アレルギー性結膜疾患治療剤」とする)は、必要に応じて、医薬として許容される添加剤を加え、単独製剤または配合製剤として汎用されている技術を用いて製剤化することができる。
【0012】
本発明のアレルギー性結膜疾患治療剤は、経口でも、非経口でも投与することができる。好ましい投与剤型としては、点眼剤、眼軟膏、錠剤等が挙げられるが、より好ましくは点眼剤または眼軟膏である。これらは汎用されている技術を用いて製剤化することができる。例えば、点眼剤は、添加物として、等張化剤、緩衝剤、pH調節剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、保存剤等を適宜配合して、調製することができる。また、pH調節剤、増粘剤、分散剤などを添加し、薬物を懸濁化させることによって、安定な点眼剤を得ることもできる。
【0013】
等張化剤としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ソルビトール、マンニトール等を挙げることができる。
【0014】
緩衝剤としては例えば、リン酸、リン酸塩、クエン酸、酢酸、ε-アミノカプロン酸等を挙げることができる。
【0015】
pH調節剤としては、例えば塩酸、クエン酸、リン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ホウ酸、ホウ砂、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0016】
可溶化剤としては、例えばポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、マクロゴール4000等を挙げることができる。
【0017】
増粘剤、分散剤としては、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を、また、安定化剤としては、例えばエデト酸、エデト酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0018】
保存剤(防腐剤)としては、例えば汎用のソルビン酸、ソルビン酸カリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール等が挙げられ、これらの保存剤を組み合わせて使用することもできる。
【0019】
本発明のアレルギー性結膜疾患治療剤を含有する点眼剤は、pHを4.0〜8.5に設定することが望ましく、また、浸透圧比を1.0付近に設定することが望ましい。
【0020】
アレルギー性結膜疾患治療剤として用いる場合の有効成分の投与量は症状、年令、剤型等によって適宜選択できるが、点眼剤であれば好ましくは0.001〜10%(w/v)、より好ましくは0.01〜3%(w/v)の濃度のものを1回量1〜数滴を1日1〜数回(例えば、1〜8回)点眼すればよい。また、眼軟膏であれば好ましくは0.001〜10%(w/w)、より好ましくは0.01〜3%(w/w)の濃度のものを1日1〜数回(例えば、1〜4回)塗布すればよい。経口剤であれば、好ましくは1mg〜100mg、より好ましくは5mg〜30mgを1日1〜数回(例えば、1〜3回)投与すればよい。
【0021】
もちろん前記したように、投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて必要な場合もある。
【発明の効果】
【0022】
後述するように、結膜炎症状抑制試験を実施したところ、9−シクロペンチル−7−エチル−3−(チオフェン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−9H−ピラゾロ[3,4−c]−1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン(Tofimilast)および2−(3−クロロフェノキシ)−3−[3−(3−ヒドロキシピリジン−4−イル)プロポキシ]ピリジン(OS-0217)は、アレルギー性結膜炎モデルにおいてアレルギー性結膜疾患の主症状である浮腫・充血に対して優れた抑制効果を発揮するので、アレルギー性結膜炎、春季カタル、アトピー性角結膜炎などのアレルギー性結膜疾患の治療剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、薬理試験および製剤例を示すが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0024】
[薬理試験]
アレルギー性結膜炎モデルを用いた結膜炎症状抑制試験
アレルギー性結膜炎モデルを用いて、9−シクロペンチル−7−エチル−3−(チオフェン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−9H−ピラゾロ[3,4−c]−1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン(以下「化合物A」とする)および2−(3−クロロフェノキシ)−3−[3−(3−ヒドロキシピリジン−4−イル)プロポキシ]ピリジン(以下「化合物B」とする)の結膜炎症状(浮腫・充血)に対する抑制作用を検討した。
【0025】
(実験方法)
生理食塩液に水酸化アルミニウムゲル吸着オブアルブミンを懸濁(20 μg/mL)し、5週齢の雄性Hartley系モルモットの両眼球結膜下に、それぞれ100 μLずつ注射し、能動感作を行った。感作後14日目、15日目に、オブアルブミン1.0%(W/V)の生理食塩液を10 μL/眼ずつ両眼に点眼投与して、アレルギー性結膜炎を惹起した。
【0026】
感作後15日目のオブアルブミン点眼投与の60分、30分前(合計2回)に、0.1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース含有生理食塩液(W/V)に懸濁した化合物A1.0%懸濁液(W/V)または化合物B1.0%懸濁液(W/V)を、上記モルモットの両眼にそれぞれ10 μL/眼ずつ点眼投与した。なお、コントロールとして0.1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース含有生理食塩液(W/V)を、上記モルモットの両眼にそれぞれ10 μL/眼ずつ点眼投与した。
【0027】
感作後15日目のオブアルブミン点眼30分後に、化合物A、化合物Bおよびコントロールを点眼したモルモットの結膜炎症状を下記評価基準(表1)に従い、スコア化することにより評価した。
【0028】
抑制率=100−([被験化合物の結膜炎症状スコアの平均値]÷[コントロールの結膜炎症状スコアの平均値])×100
【表1】


【0029】
表2に、化合物Aに対する結膜炎症状スコア(平均値)および抑制率(%)を示し(例数16眼)、表3に、化合物Bに対する結膜炎症状スコア(平均値)および抑制率(%)を示す(例数18眼)。
【表2】


【0030】
【表3】


【0031】
(実験結果)
表2および表3から明らかなように、化合物Aまたは化合物Bを点眼投与したモルモットの結膜炎症状はコントロールよりも顕著に抑制するので、アレルギー性結膜炎症状抑制効果を有することが確認された。
【0032】
[製剤例]
本発明に用いられる代表的な製剤例を以下に示す。
【0033】
1.点眼剤
以下の処方の点眼剤を汎用される方法を用いて調製する。
【0034】
処方例1
100ml中
化合物A 100mg
濃グリセリン 500mg
ポリソルベート80 1000mg
リン酸二水素ナトリウム二水和物 適量
1N水酸化ナトリウム 適量
塩酸 適量
滅菌精製水 適量
【0035】
処方例1と同様にして、化合物Aを100ml中に10mg、50mg、1000mg含有する点眼剤を調製することができる。
【0036】
2.眼軟膏
以下の処方の眼軟膏を汎用される方法を用いて調製する。
【0037】
処方例2
100g中
化合物B 200mg
流動パラフィン 10g
白色ワセリン 適量
処方例2と同様にして、化合物Bの添加量を適宜変えることにより、種々の濃度の眼軟膏を調製できる。
【出願人】 【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市東淀川区下新庄3丁目9番19号
【出願日】 平成18年1月17日(2006.1.17)
【代理人】 【識別番号】100083149
【弁理士】
【氏名又は名称】日比 紀彦

【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助

【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 彰

【識別番号】100069338
【弁理士】
【氏名又は名称】清末 康子

【公開番号】 特開2006−219487(P2006−219487A)
【公開日】 平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願番号】 特願2006−8099(P2006−8099)