| 【発明の名称】 |
粘膜炎の処置および予防のための方法および組成物 |
| 【発明者】 |
【氏名】スティーブン ティー. ソニス
【氏名】エドワード ジー. フェイ
|
| 【要約】 |
【課題】粘膜炎を処置および予防するために効果的な方法の開発。
【解決手段】ヒト患者において粘膜炎を処置、阻害、または予防する方法であって、該方法が該患者にMMPインヒビターおよびNOインヒビターとしての活性を有する治療的組成物を投与する工程を包含する、方法であり、1つの実施形態において、COX−1またはCOX−2インヒビターであるNSAIDを投与する工程をさらに包含し、別の実施形態において、前記COX−1インヒビターがインドメタシンまたはフルルビプロフェンであり、さらに、別の実施形態において、IL−6インヒビター、TNF−αインヒビター、IL−1インヒビター、およびインターフェロンγインヒビターからなる群から選択される炎症性サイトカインインヒビターを投与する工程をさらに包含する、方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 放射線治療または化学療法を受けたヒト患者における粘膜炎を処置、阻害、または予防するためのキットであって、該キットは、NSAIDおよびMMPインヒビターからなる治療組成物を有する、キット。 【請求項2】 前記NSAIDが、フルルビプロフェン、イブプロフェン、硫化スリンダクまたはジクロフェナクである、請求項1に記載のキット。 【請求項3】 前記MMPインヒビターが,テトラサイクリンである、請求項1に記載のキット。 【請求項4】 前記NSAIDが、フルルビプロフェン、イブプロフェン、硫化スリンダクまたはジクロフェナクであり、かつ、前記MMPインヒビターが,テトラサイクリンである、請求項1に記載のキット。 【請求項5】 前記NSAIDが、フルルビプロフェンであり、かつ、前記MMPインヒビターが、テトラサイクリンである、請求項1に記載のキット。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 (発明の背景) 本発明は、粘膜炎を処置および予防するための方法および組成物に関する。 【0002】 粘膜炎は、口腔に紅斑、潰瘍化および重篤な疼痛を生じる口腔粘膜上皮の破壊 である。粘膜炎は、しばしば抗腫瘍治療(例えば、ガン化学治療および/または 放射線治療)の合併症として生じる。疼痛のある粘膜炎の潰瘍性病変は、患者の 経口摂取を限定し得;結果として、体重を減少し、そして脱水に付随する熱に苦 しむ。重篤な粘膜炎は、口腔粘膜のさらなる損傷を予防するために、計画された 化学/放射線治療用量レジュメの減少を必要とし得る。 【0003】 粘膜炎のさらにより重篤な結果は、病変が2次感染の部位として、および常在 する口腔の微生物の進入の門脈として作用し得るということである。従って、粘 膜炎は、生命を脅かす全身性感染(敗血症)の顕著な危険因子であり;全身性感 染の危険性は、化学療法に付随する別の合併症である、随伴性好中球減少によっ て再燃する。粘膜炎および好中球減少を有する患者は、粘膜炎を有さない個体の 敗血症の危険性の少なくとも4倍の相対的な危険性を有する。 【0004】 粘膜炎の全体としての頻度は変化する;患者の診断、年齢、および口腔の健康 レベル、ならびに、薬物または放射線投与の型、用量および頻度に影響を受ける 。ガン化学治療を受ける全患者の約40%が、ある程度粘膜炎を罹患し、そして 頭部腫瘍および頸部腫瘍のために放射線治療で処置される患者のほとんど100 %が粘膜炎を発症する。高度な危険度のプロトコールを受ける患者における重篤 な粘膜炎の頻度は、60%を超える。個体の約50%は、そのガン処置および/ または非経口の痛覚脱失の変更を必要とするのに十分なまでに重篤な病変を発症 する。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 粘膜炎を処置および予防するために効果的な方法の開発は、この状態の病理生 理学の理解を欠くこと、および現在使用されている投薬法に対する患者の応答の 不一致によって妨げられてきた。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明によって以下が提供される: (項目1) ヒト患者において粘膜炎を処置、阻害、または予防する方法 であって、該方法が該患者にMMPインヒビターおよびNOインヒビターとして の活性を有する治療的組成物を投与する工程を包含する、方法。 (項目2) COX−1またはCOX−2インヒビターであるNSAID を投与する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。 (項目3) 前記COX−1インヒビターがインドメタシンまたはフルル ビプロフェンである、項目2に記載の方法。 (項目4) IL−6インヒビター、TNF−αインヒビター、IL−1 インヒビター、およびインターフェロンγインヒビターからなる群から選択され る炎症性サイトカインインヒビターを投与する工程をさらに包含する、項目1 に記載の方法。 (項目5) 前記サイトカインがTNF−αインヒビターである、項目 4に記載の方法。 (項目6) 前記組成物が活性薬剤としてテトラサイクリンを含有する、 項目1に記載の方法。 (項目7) 前記テトラサイクリンがミノサイクリンである、項目6に 記載の方法。 (項目8) NSAIDを投与する工程をさらに包含する、項目6に記 載の方法。 (項目9) 前記NOインヒビターがアミノグアニジンまたはグアニジン である、項目1に記載の方法。 (項目10) 前記TNF−αインヒビターがサリドマイドである、請求 項4に記載の方法。 (項目11) 抗ヒスタミン薬、セリンプロテアーゼインヒビター、およ び脱顆粒インヒビターからなる群から選択されるマスト細胞インヒビターを投与 する工程を包含する、項目1に記載の方法。 (項目12) 前記MMPインヒビターおよび前記NOインヒビターが、 組成物中にともに混合されて提供される、項目1に記載の方法。 (項目13) 前記組成物が口腔うがい薬としての使用に適合される液体 である、項目12に記載の方法。 (項目14) 前記組成物が経口摂取に適合する固体である、項目12 に記載の方法。 (項目15) ヒト患者において粘膜炎を処置、阻害、または予防する方 法であって、該方法が該患者にMMPインヒビター、炎症性サイトカインインヒ ビターおよびマスト細胞インヒビターの活性を有する治療的組成物の有効量を投 与する工程を包含する、方法。 (項目16) 前記マスト細胞インヒビターが脱顆粒インヒビターである 、項目15に記載の方法。 (項目17) 前記マスト細胞インヒビターが抗ヒスタミン薬である、請 求項15に記載の方法。 (項目18) 前記マスト細胞インヒビターがセリンプロテアーゼインヒ ビターである、項目15に記載の方法。 (項目19) 前記組成物が活性薬剤としてテトラサイクリンを含有する 、項目15に記載の方法。 (項目20) 前記テトラサイクリンがミノサイクリンである、項目1 9に記載の方法。 (項目21) 前記方法が感染を阻害するのに十分な量の抗菌化合物を前 記患者に投与する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。 (項目22) 前記粘膜炎が抗腫瘍治療によって誘導される、項目1に 記載の方法。 (項目23) 前記粘膜炎が化学的療法によって誘導される、項目22 に記載の方法。 (項目24) 前記粘膜炎が放射線治療によって誘導される、項目22 に記載の方法。 (項目25) 前記患者が化学療法または放射線治療を受けるために準備 をしているガン患者である、項目22に記載の方法。 (項目26) 前記患者が、その時点で、化学療法または放射線治療を受 けているガン患者である、項目22に記載の方法。 (項目27) 前記粘膜炎が口腔粘膜炎である、項目1に記載の方法。 (項目28) 口腔粘膜炎を処置するための薬学的組成物であって、以下 、 (a)NSAID、炎症性サイトカインインヒビター、またはマスト細胞インヒ ビターを含有する第1の治療剤; (b)MMPインヒビターおよびNOインヒビターの活性を有する、炎症性サイ トカインインヒビター、マスト細胞インヒビターを含有する、第2の異なる治療 剤;ならびに (c)薬学的に許容可能なキャリア、 を粘膜炎に罹患するか、または粘膜炎の危険性を有する患者において、粘膜炎を 阻害するのに十分な量において含有する、薬学的組成物。 (項目29) 前記組成物が、ロゼンジ、錠剤、口腔うがい薬、口腔ペー スト、または口腔ゲル中に処方される、項目28に記載の薬学的組成物。 (項目30) マスト細胞インヒビターをさらに含有する、項目28に 記載の薬学的組成物。 (項目31) 前記組成物が抗炎症剤をさらに含有する、項目28に記 載の薬学的組成物。 (項目32) 胃粘膜損傷を阻害するのに十分な量の抗潰瘍剤をさらに含 有する、項目31に記載の薬学的組成物。 (項目33) 前記抗炎症剤がシクロオキシゲナーゼ−2インヒビターで ある、項目28に記載の薬学的組成物。 (項目34) 前記組成物が、感染を阻害するのに十分な量の抗菌剤をさ らに含有する、項目28に記載の薬学的組成物。 (発明の要旨) 本発明は、粘膜炎を処置および予防するための方法を特徴とする。本発明は、 粘膜炎が上皮結合組織および内皮、プロ炎症性サイトカイン、粘膜および局所的 口腔環境内の細胞性エレメントとともに放射線および/または化学治療の累積的 効果および相互作用的効果より生じる複雑な生物学的プロセスであるという認識 に、部分的に基づく。 【0007】 本発明者らは、粘膜炎が局所的組織(結合組織、内皮、上皮)毒性、骨髄抑制 のレベルおよび口腔環境の複雑な相互作用に起因する臨床的結果を示すと仮定し た。局所的組織成分としては、疎性血管結合組織基底および濃厚性(richl y)血管結合組織基底に重層する、迅速に再生している重層扁平上皮の口腔粘膜 を含み、そして患者の骨髄状態の変化、特に顆粒球減少症の程度の原因となるよ うである。経口微生物叢、唾液および機能的な外傷は、化学療法に付随する口腔 毒性の頻度、重篤度および経過に影響を与える固有の環境を提供する。 【0008】 化学治療および放射線に対する初期の口腔組織応答は、内皮組織および結合組 織レベルで生じるようである。本発明者らは、フリーラジカルの形成がフィブロ ネクチンの破壊、それに続く転写因子の活性化、プロ炎症性サイトカイン産生の 刺激および組織損傷をもたらすと考える。血清中の腫瘍壊死因子α(TNF−α )およびIL−1の存在の間の関係は、非血液学的毒性の存在と相関する。内皮 細胞の損傷はまた、同時に生じるようである。同時に、基底上皮細胞の損傷は、 その複製を妨げる。これらの細胞の多くがアポトーシスまたは壊死を受けるのか 否かは、明らかでない。プロ炎症性サイトカインを発現する炎症性細胞の流入は 、粘膜の分解の間に生じ、粘膜炎の極期の直前に最高に達する。損傷を受けた上 皮細胞の細菌の集落形成が生じ、そして患者の骨髄抑制状態によって加速される 。代表的に最下点は、粘膜炎が最高になった日かその後くらいに、続く。次に、 グラム陽性生物およびグラム陰性生物の両方由来の細菌細胞壁産物は、損傷した 粘膜を貫通し、さらに損傷するサイトカインの放出を刺激するようである。最後 に、粘膜は回復するが、このプロセスは、2次感染のない場合に、約3週間かか る。 【0009】 本発明に従って、粘膜炎は、炎症性サイトカインインヒビター、MMPインヒ ビター、および/またはマスト細胞インヒビターの投与によって、処置され得る か、または予防さえされ得る。これらインヒビターの、抗炎症性薬剤および/ま たは抗菌剤との組み合わせは、粘膜炎を予防および処置するためのさらにより効 果的なレジュメを提供する。 【0010】 本発明は、粘膜炎に罹患した患者または粘膜炎の危険がある患者において、粘 膜炎を減少または阻害する方法を特徴とし;この方法は、粘膜炎を阻害するのに 十分な量の第1の治療剤を患者に投与する工程を包含し、ここでこの第1の治療 剤は、炎症性サイトカインインヒビター、マスト細胞インヒビター、MMPイン ヒビター、またはこれらのインヒビターの組合せである。好ましいマスト細胞イ ンヒビターとしては、脱顆粒インヒビター、抗ヒスタミン薬、およびセリンプロ テアーゼインヒビターが挙げられる。好ましいMMPインヒビターは、ミノサイ クリンのようなテトラサイクリンであり、それ自体を低用量で使用されるテトラ サイクリンは、主に抗生物質としては作用しない有効な粘膜炎剤である。テトラ サイクリンファミリーの他のメンバー(例えば、クロルテトラサイクリンおよび オキシテトラサイクリン)もまた使用され得る。本発明に従って減少または阻害 され得る粘膜炎の例は、口腔粘膜炎である。 【0011】 本発明はまた、第1および第2の別々の治療剤をヒト患者に投与することによ って、その患者における粘膜炎を処置、阻害、または予防する方法を特徴とする 。ここで、第1の薬剤はNSAID(非ステロイド抗炎症性)、炎症性サイトカ インインヒビター、またはマスト細胞インヒビターであり、そして第2の薬剤は 、炎症性サイトカインインヒビター、マスト細胞インヒビター、MMPインヒビ ター、NSAID、またはNOインヒビターである。好ましくは、少なくとも1 つの薬剤は、NSAIDであり、これはCOX−1インヒビターまたはCOX− 2インヒビターであり、COX−1インヒビターの例は、インドメタシンおよび フルルビプロフェンである。他の好ましい実施態様において、第1の薬剤は、I L−6インヒビター、TNF−αインヒビター、IL−1インヒビター、および インターフェロンγインヒビターから選択される炎症性サイトカインインヒビタ ーである。好ましい組合せは、テトラサイクリン(例えば、ミノサイクリン)の ようなMMPインヒビターと組合せたTNF−αインヒビターである。例示的な NOインヒビターは、アミノグアニジンおよびグアニジンである。使用され得る 別のTNF−αインヒビターは、サリドマイドである。マスト細胞インヒビター は、抗ヒスタミン薬、セリンプロテアーゼインヒビター、または脱顆粒インヒビ ターであり得る。 【0012】 他の好ましい方法において、第3の治療剤もまた、感染を阻害するのに十分な 量で投与される。第3の薬剤は、抗菌化合物を含む。好ましくは、第1、第2、 および第3の治療剤は、同時に投与される。 【0013】 別の好ましい方法において、第1の治療剤は、粘膜炎を阻害するのに十分な量 で、そして第3の治療剤は、感染を阻害するのに十分な量で投与される。好まし くは、第1の治療剤および第3の治療剤は、同時に投与される。 【0014】 処置される粘膜炎は、抗腫瘍療法により誘導され得る;例えば、この粘膜炎は 、化学療法によって、または放射線治療によって誘導され得る。本発明の方法お よび組成物で処置される患者は、化学療法もしくは放射線治療を受ける準備中の 癌患者か、または化学療法もしくは放射線治療を受けている最中の癌患者であり 得る。 【0015】 本発明は、以下を含む口腔粘膜炎を処置するための薬学的組成物をさらに特徴 とする:(a)第1の治療剤(炎症性サイトカインインヒビター、マスト細胞イ ンヒビター、MMPインヒビターまたはこれらのインヒビターの組合せを含む) ;(b)第2の治療剤(抗炎症剤を含む)、および(c)薬学的に受容可能なキ ャリア。第1および第2の治療剤は、粘膜炎に罹患している患者または粘膜炎の 危険がある患者において、粘膜炎を阻害するのに十分な量で存在する。好ましく は、この組成物は、ロゼンジ、錠剤、口腔うがい薬、口腔ペースト、または口腔 ゲルへと処方される。好ましいマスト細胞インヒビターは抗ヒスタミン薬であり ;好ましい抗炎症剤は非ステロイド抗炎症薬物およびシクロオキシゲナーゼ−2 インヒビターを含む。好ましいMMPインヒビターは、テトラサイクリン(例え ば、ミノマイシン、塩酸テトラサイクリン、またはドキシサイクリン)が挙げら れる。好ましい組成物はまた、抗潰瘍剤を胃粘膜損傷を阻害するのに十分な量で 、そして抗菌剤を感染を阻害するのに十分な量で含み得る。 【0016】 (好ましい実施態様の記載) 本発明は、粘膜炎を減少および阻害するための方法ならびに組成物を特徴とし 、これらには、炎症性サイトカインインヒビターおよび/またはマスト細胞イン ヒビターを投与する工程を含む。 【0017】 本発明は、粘膜炎の生理学的原理についての新規な機構的理論大系の発達に一 部基づいている。この理論大系に従うと、粘膜炎の発症および消炎は、以下の4 つの相互関係のある段階を生じる:(i)炎症性/血管応答;(ii)変性結合 組織および/または上皮段階;(iii)潰瘍性/細菌性段階;ならびに(iv )治癒段階。これらの4つの段階を図1に図示する。 【0018】 段階1(炎症性または血管段階)の間に、化学療法の投与は、上皮からのサイ トカイン、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−6(IL− 6)、および腫瘍壊死因子α(TNF−)の放出をもたらす。あるいは、電離放 射線の投与は、上皮由来および周囲の結合組織由来の両方のこれらのサイトカイ ンの放出を引き起こす。 【0019】 IL−1は、上皮下の血管分布の増加、および結果として生じる細胞傷害性因 子の局所レベルでの増加を生じる炎症性応答を誘導する。IL−1およびTNF −は両方とも局所的組織損傷を引き起こし、それにより粘膜炎を開始および促進 する。 【0020】 段階2(変性性上皮段階)の間に、放射線および化学療法薬物は、内皮、結合 組織、および口腔基底上皮の分裂している細胞に影響を与え、減少した上皮再生 、萎縮症、および潰瘍形成を生じる。周辺組織の潰瘍形成は、機能的な外傷およ び局所的に産生されたサイトカインの流出によって悪化する。 【0021】 段階3(潰瘍性/細菌性段階)は、最も症候性であり、かつおそらく最も複雑 である。この段階は、一般的に、患者の最大の好中球減少と同時に生じる。段階 3は、病変上の細菌からのサイトカイン産生を刺激する因子の放出により特徴付 けられる。全層性びらんの局在化領域が発生し、そして時として繊維性偽膜がこ れらの領域にわたって増殖する。病変の二次的な細菌のコロニー形成(グラム陽 性生物およびグラム陰性生物の両方のコロニー形成を含む)が生じ、これは、周 辺の結合組織からのサイトカイン放出を刺激し、このことは、局所的組織破壊を さらに増幅する。 【0022】 段階4(治癒段階)の間に、上皮増殖および分化が再生され、末梢白血球数が 正常化され、そして局所的微生物叢が再び確立される。 【0023】 これらの4つの段階は、相互依存しており、これらはサイトカイン、上皮、結 合組織および内皮に対する抗腫瘍因子の直接の効果、口腔微生物叢、ならびにそ の患者の骨髄の状態により媒介される一連の作用の結果である。 【0024】 本発明はまた、マスト細胞の増殖が、粘膜炎の発症において重要な役割を果た すという知見に一部基づく。マスト細胞は、粘膜組織および結合組織に存在する 顆粒含有分泌細胞であり、そしてこの細胞は、これらの組織中を移動し得る。組 織におけるマスト細胞の分布は、一般に、隣接した環境における細胞に影響する マスト細胞誘導性メディエーターの潜在能力に関連する。口腔において、マスト 細胞は、粘膜の微小血管床中に優先的に分布する。 【0025】 マスト細胞の顆粒は、炎症を促進するメディエーターを含む。種々の刺激(例 えば、IgE、神経ペプチド、外傷、および薬物)により引き起こされ得る脱顆 粒後、マスト細胞のメディエーターは、細胞外環境に大量に沈積される。これら のメディエーターには、ヒスタミン;セリンプロテアーゼカイメースおよびトリ プターゼ;ならびにサイトカイン(TNF−を含む)が挙げられる。これらのメ ディエーターは、内皮細胞および他の細胞型に対するそれらの効果を発揮するこ とにより、炎症を促進する。例えば、これらのメディエーターは、接着分子、お よび組織の挙動に影響し得、潰瘍形成を引き起こす。 【0026】 これらのメディエーターの最も重要なもののうちの2つは、ヒスタミンおよび TNF−である。正常な口腔粘膜において、これらのメディエーターは、マスト 細胞の顆粒中にのみ存在し、他の細胞中には存在しない。 【0027】 マスト細胞から放出されたヒスタミンは、構造的変化(例えば、内皮収縮およ び細胞間のギャップ形成)をもたらすことにより、血管の透過性を増加する。こ れらの変化は、化学療法に誘導される損傷の局所的レベルを増加することになる 。さらに、ヒスタミンは、接着分子(P−セレクチン)の一過性の移動を介して 、内皮細胞への白血球の接着を促進し、これにより炎症を引き起こす。 【0028】 マスト細胞により放出される別の重要なメディエーターは、サイトカインTN F−である。TNF−は、ヒスタミンを放出すること、ならびにE−セレクチン (好中球。T細胞、単球、および他の白血球の内皮細胞への迅速な接着に決定的 に必要とされる接着分子)の内皮発現を誘導することにより、炎症性プロセスに 寄与する。 【0029】 本発明に従って、マスト細胞の機能、またはマスト細胞により放出されたメデ ィエーターの作用を阻害する薬剤が、粘膜炎の処置および予防のために使用され 得る。マスト細胞インヒビターは、マスト細胞、あるいはマスト細胞により放出 されたメディエーターの機能を抑制もしくは阻害する、化学的薬剤または生物学 的薬剤である。例えば、マスト細胞インヒビターは、脱顆粒を阻害し得、それに より細胞外空間へのメディエーターの放出を予防する。マスト細胞脱顆粒インヒ ビターの例としては、ピセタノール、ベンズアミジン(benzamidine )、テニダプ、チアクリラスト、クロモリン二ナトリウム、ロドキサミドエチル 、およびロドキサミドトロメタミン。メディエーター放出を阻害する他の薬剤に は、スタウロスポリン(staurosporine)およびCGP41251 が挙げられる。 【0030】 マスト細胞メディエーターのインヒビターの例としては、ヒスタミンの放出ま たは分泌をブロックする薬剤(例えば、FK−506およびケルセチン(que rcetin);ジフェンヒドラミンのような抗ヒスタミン剤;およびテオフィ リンが挙げられる。 【0031】 他のマスト細胞インヒビターとしては、セリンプロテアーゼインヒビター(例 えば、−1−プロテアーゼインヒビター);メタロプロテアーゼインヒビター; リゾフィリン;TNFR−FE(Immunex、Seattle、WAから入 手可能);ベンズアミジン;アミロリド;およびビス−アミジン(例えば、ペン タアミジンおよびビス(5−アミジノ−2−ベンズイミダゾリル)メタン)が挙 げられる。 【0032】 本発明に従って、炎症性サイトカインインヒビターもまた使用して、粘膜炎を 処置および予防し得る。炎症性サイトカインインヒビターは、炎症性サイトカイ ンを抑制または阻害する化学的薬剤または生物学的薬剤である。そのようなイン ヒビターとしては、ピリジニルイミダゾール、二環式イミダゾール、オクスペン チフィリン、サリドマイドおよびメシル酸ガベキサートが挙げられる。 【0033】 抗炎症剤を、本発明に従って、炎症性サイトカインおよび/またはマスト細胞 インヒビターと組み合せて使用して、粘膜炎を処置および予防し得る。本発明に おいて使用され得る抗炎症剤の例としては、非ステロイド性の抗炎症剤であるフ ルルビプロフェン、イブプロフェン、硫化スリンダク、ジクロフェナクが挙げら れる。NSAIDが本発明に従って投与される場合、例えば、胃粘膜の損傷から 保護を補助するために、抗潰瘍剤(例えば、エブロチジン)が投与され得る。 【0034】 本発明において使用され得る他の抗炎症剤としては、ミソプロスチル;カフェ イン、リソフィリン、またはペントキシフィリンのようなメチルキサンチン誘導 体;ベンジドアミン;ナプロシン;メジプリン;およびアスピリンが挙げられる 。 【0035】 別の重要なクラスの抗炎症剤としては、シクロオキシゲナーゼ(COX)イン ヒビター、特にCOX−2インヒビターが挙げられる。COX−2(炎症または 細胞損傷の際に、増殖因子、リポポリサッカリド、およびサイトカインにより刺 激される誘導性酵素)は、炎症の間のプロスタグランジンの産生の上昇を担う。 COX−2インヒビターは、これらのインヒビターの胃腸管での寛容性のために 、本発明が化学療法または放射療法を受けるガン患者における粘膜炎を処置する ために使用される場合に特に有用である。本発明において使用され得るCOX− 2インヒビターとしては、セレコキシブ(celecoxib)、ニメスリド( nimesulide)、メロキシカム(meloxicam)、ピロキシカム (piroxicam)、フロスリド(flosulide)、エトドラク(e todolac)、ナブメトン(nabumetone)、および1−[(4− メチルスルホニル)フェニル]−3−トリフルオロメチル−5−[(4−フルオ ロ)フェニル]ピラゾールが挙げられる。 【0036】 他の有用な抗炎症剤としては、シクロオキシゲナーゼ/リポキシゲナーゼの二 重インヒビター(例えば、2−アセチルチオフェン−2−チアゾリルヒドラゾン )、およびロイコトリエン生成インヒビター(例えば、ピリプロスト(piri prost))の両方が挙げられる。 【0037】 MMPインヒビターとしては、抗細菌性テトラサイクリン(例えば、テトラサ イクリンHCl、ミノサイクリンおよびドキシサイクリン)、ならびに非抗細菌 性テトラサイクリンが挙げられる。 【0038】 口腔における細菌の存在は、二次感染をもたらし、全身感染についての供給源 として作用し、そしてサイトカイン放出を刺激することによって、組織損傷を増 幅する。本発明に従って、上記の薬剤と組み合せた抗菌剤の投与は、粘膜炎を処 置および予防するためのさらにより有効な方法をもたらし得る。使用され得る抗 菌剤の例としては、グラム陽性およびグラム陰性の生物についてスペクトルを有 する薬剤が挙げられる。特定の薬物としては、テトラサイクリン、アモキシシリ ン、ゲンタマイシンおよびクロルヘキシジンが挙げられる。 【0039】 粘膜炎を処置または予防するために使用され得る他の薬剤としては、核転写因 子κ−B(NF−κB)活性化インヒビターであるカプサイシンおよび樹脂分泌 性毒素(resiniferatoxin)が挙げられる。 【0040】 (投与の経路および時期) 投与の経路は、使用される化合物の性質に支配される。例えば、その化合物は 、錠剤またはロゼンジの形態で、うがい薬として、ペーストまたはゲルとして、 あるいは非経口投与によって投与され得る。 【0041】 本発明の組成物が粘膜炎を予防するに補助し得ることから、その組成物の投与 に、好ましくは、少なくとも24時間までに抗新生物治療の初期用量が先行すべ きである。毎日の処置は、抗新生物処置の経過の間、継続すべきである。 【0042】 (投薬量) 上記の治療剤は、これらの薬剤のために現在使用されている用量範囲において 使用され得る。局所適用について、投与される薬物量は、非経口投与によって達 成される量と等価であるか、またはそれよりも高い局所組織用量範囲をもたらす 。以下は、用量範囲の例示的な例である。 【0043】 (マスト細胞機能インヒビター) マスト細胞機能インヒビターであるピセタノール(picetannol)は 、好ましくは、0.1g/ml〜5g/mlの組織レベルまたは血漿レベルにま で投与され;ベンズアミジンは、好ましくは、0.5M/l〜1.0M/lの組 織レベルまたは血漿レベルにまで投与され;テニダプ(tenidap)は、好 ましくは、1M/l〜200M/lの組織レベルまたは血漿レベルにまで投与さ れ;そして、チアクリラスト(tiacrilast)は、1%〜10%の溶液 中で投与される。 【0044】 (マスト細胞メディエーターのインヒビター) メディエーターのインヒビターに関して、リソフィリンは、好ましくは1mg /kg体重〜10mg/kg体重で投与され、そしてTNFR−Fe(Immu nex,Seattle、WA)は、1週間に2回25mg用量で投与される。 【0045】 (抗炎症剤) 抗炎症剤であるイブプロフェンは、好ましくは、1日あたり、50mg〜80 0mgで投与され、そしてフルルビプロフェンは好ましくは、1日あたり、50 mg〜300mgで投与される。COX−2インヒビターであるエトドラクは、 好ましくは、1日あたり500mg〜2000mgで投与され;ナブメトンは、 好ましくは、1日あたり500mg〜2000mgで投与され;メロキシカムは 、好ましくは、1日あたり7.5mg〜25mgで投与され;ピロキシカムは、 好ましくは、1日あたり10〜30mgで投与され;そして1−[(4−メチル スルホニル)フェニル]−3−トリフルオロメチル−5−[(4−フルオロ)フ ェニル]ピラゾールは、好ましくは、1日あたり、1〜10mg/kgで投与さ れる。 【0046】 (抗菌剤) 抗菌剤に関して、テトラサイクリンは、好ましくは、1日あたり、250mg 〜1000mgで投与され、そしてクロルヘキシジンは、好ましくは、1日に2 回、0.1%〜5%溶液中で投与される。 【0047】 さらなる詳説なくして、当業者は、本明細書における記載に基づいて、本発明 を、その最も完全な範囲にまで利用し得ると考えられる。従って、以下の特定の 実施例は、本発明の例示と考えるべきであり、そして、いかなる方法でも、本開 示の残りを限定することは意味しない。本明細書において言及した刊行物は、本 明細書において、参考として援用される。 【0048】 (MMPインヒビター) MMPインヒビターとして用いられるテトラサイクリンは、0.001mg/ mL〜10mg/mLの投薬量で、可能な範囲として0.01mg/mL〜1m g/mLで、および最適な範囲として0.05〜0.5mg/mLで局所投与さ れる。 【0049】 (実施例1:骨髄移植のための調製において、骨髄除去(myeloabla tive)化学療法および全身性照射を受ける患者のための予防および処置) 本明細書において記載された方法に従う処置のために、トローチまたはロゼン ジとしての粘膜炎医薬の局所適用を用いて、化学療法の初回投与の前の晩から開 始して、患者に投与する。このロゼンジは、治療用量のMMPインヒビター(例 えば、ミノサイクリン)および非ステロイド性抗炎症剤(例えば、フルルビプロ フェン)を含む。 【0050】 化学療法の日に開始し、そして続く14日間継続して、患者は、覚醒時に3〜 4時間おきに医薬を受ける。化学療法に誘導される悪心のためにロゼンジに耐え 得ない患者について、非粘性の液体懸濁液は、覚醒時に約2時間おきでの投与の ために利用可能である。この懸濁液を使用する患者は、口腔咽頭部への薬物の曝 露を確実にする材料とともに吸い込み、そしてうがいをする。14日間の投与期 間は、粘膜炎の発達の最初の三段階に亙っての網羅を提供する。 【0051】 (実施例2:頭部および頸部の腫瘍のための放射療法を受ける患者のための予 防および処置) 頭部および頚部のガンについて放射療法をもちいて処置される患者は、6週間 から8週間にわたって分割された用量で与えられて、約60Gyの総腫瘍放射線 量を受ける。粘膜炎の初期の徴候は、約10Gyの用量で認められ、そして粘膜 の明らかな破壊が約25Gyで見られる。 【0052】 この型の放射療法の第二週に開始して、患者は、毎日の各放射線投与の前2時 間で粘膜炎医薬を受ける。この放射療法は、代表的には、1週間あたり、5日間 与えられる。続いて粘膜炎の医薬を、毎日の照射後2時間、6時間、および12 時間で与える。骨髄抑制は、頭部および頚部のガンのために照射されている患者 については問題ではないことから、粘膜炎の調製物は、マスト細胞インヒビター 、サイトカインインヒビター、および抗炎症剤を含むが、抗菌剤は含まない。患 者は、自分が照射されない日には粘膜炎医薬を受けない。このプロトコルは、放 射線投与が完了するまで継続される。 【0053】 (実施例3:結腸直腸ガンの処置のための化学療法処置を受ける患者のための 予防および処置) 結腸直腸ガンのための処置において、患者は、代表的に、複数の、月間サイク ルの化学療法を受ける。この形式の腫瘍の処置のためには特定の抗ガン薬物が使 用されることから、この群の患者には、粘膜炎の発生について特にリスクがある 。この群の患者は、化学療法の投与前2時間で、粘膜炎医薬の投与を開始する。 この患者は、覚醒時に4時間おきに粘膜炎医薬を摂取することを、少なくともむ こう48時間継続する。このレジメンを、各投与サイクルについて繰り返す。一 般に、この処方物は、抗菌剤を含まない。しかし、顕著な好中球減少症を示す患 者については、この処方物は、抗菌剤を含み、そして処置時間は、10日間に延 長される。 【0054】 (他の使用) 本発明の方法および組成物を使用して、扁平苔癬および宿主対移植片疾患のよ うな状態を処置および予防し得る。これらの疾患は、粘膜炎の機構と類似した生 物学的機構を有する。 【0055】 他の実施態様は、以下の添付の請求の範囲の範囲内にある。 【図面の簡単な説明】 【0056】 【図1】図1は、粘膜炎の発生および消炎の4つの段階を示す模式的表示である。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】500430729 【氏名又は名称】ミュコーサル セラピューティックス エルエルシー
|
| 【出願日】 |
平成18年5月8日(2006.5.8) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100078282 【弁理士】 【氏名又は名称】山本 秀策
|
| 【公開番号】 |
特開2006−206613(P2006−206613A) |
| 【公開日】 |
平成18年8月10日(2006.8.10) |
| 【出願番号】 |
特願2006−129700(P2006−129700) |
|