| 【発明の名称】 |
心筋障害又は心不全の治療もしくは予防組成物 |
| 【発明者】 |
【氏名】堀場 充
【氏名】児玉 逸雄
【氏名】村松 喬
【氏名】門松 健治
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| 【要約】 |
【課題】心筋障害又は心不全を治療もしくは予防するための薬剤組成物を提供することを目的とする。さらに、ドナーや組織適合性の問題がある心臓手術を行わずに心筋障害又は心不全を治療もしくは予防するための薬剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】虚血/再灌流後の野生型マウス及びミッドカイン(MK)遺伝子欠損型マウスにおける各々の心筋損傷を比較することで、MKの作用及び機能が確認された。MKの投与により、モデルマウスを用いた場合も(in vivo)、培養心筋細胞を用いた場合も(in vitro)、いずれの場合にも心筋細胞のアポトーシス死を有意に防止できることが判明した。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ミッドカインを有効成分として含有する、心筋障害を治療するための薬剤組成物。 【請求項2】 ミッドカインを有効成分として含有する、心筋障害を予防するための薬剤組成物。 【請求項3】 ミッドカインを有効成分として含有する、心不全を治療するための薬剤組成物。 【請求項4】 ミッドカインを有効成分として含有する、心不全を予防するための薬剤組成物。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、ミッドカインを有効成分として含有する、心筋障害を治療もしくは予防するための薬剤組成物、ならびにミッドカインを有効成分として含有する、心不全を治療もしくは予防するための薬剤組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 従来の多くの研究は、虚血/再灌流(I/R)に応じてアポトーシスに特徴的な心筋細胞の死が起こることを示しており、またその際の心臓欠陥の病理についても報告されている(Bialik,S. et al,1997、Gottlieb,R.A. et al,1994、Maulik,N. et al,1999、Tanaka,M. et al,1994)。アポトーシスは虚血/再灌流後24時間以内に起こるとともに、大部分の心筋細胞の損失を伴うので、心臓の機能障害の危険性は著しく増大する(Colucci,W.S.,1996)。したがって、もし心筋細胞のアポトーシス死が抑制されるなら、心筋梗塞および狭心症のような心筋障害を含む、虚血/再灌流に基づく心臓の病状及び機能障害は軽減されるであろう。最近、再灌流に続いて起こる細胞死におけるアポトーシスの重要性が示され、これに対する薬理学的な方法、成長因子が仲介する方法、あるいは遺伝子干渉などのいくつかの方法及び戦略が提案されている(Eefting,F. et al,2004)。 【0003】 ミッドカイン(MK)は13kDaのヘパリン結合性増殖因子で、塩基性アミノ酸及びシステインに富んでいる(Kadomatsu,K. et al,1988、Tomomura,M. et al,1990)。MKのアミノ酸配列はプレイオトロフィン/ヘパリン結合性増殖関連分子(PTN/HB-GAM)に50%の相同性を示すため、これらの分子は他の、例えば繊維芽細胞増殖因子(FGF)や肝細胞増殖因子(HGF)と区別できる(Li,Y.S. et al,1990、Merenmies,J. et al,1990、Muramatsu,T.,1993)。成人組織におけるMKの発現は厳しく制限されており、マウスでは腎臓と子宮だけがこのタンパク性因子を高濃度に発現している。MK及びPTN/HB-GAMはいずれも神経組織栄養活性を持ち、神経の成長及び腫瘍の成長に関連すると考えられている。培養された神経細胞(ニューロン)では、MKはmitogen-activated protein kinaseの一種であるERKの活性化を介してキャスパーゼ(caspase)依存性アポトーシスを阻害する(Owada,K. et al,1999)。また、MKはBcl-2の発現を亢進させて、傷害から細胞を保護する作用も有している(Qi,M. et al,2000)。 【0004】 虚血性心疾患、拡張型心筋症などの心筋障害は致死的な疾患であり、仮に生命が維持できたとしても心不全に陥る可能性が高く、また生活の質が著しく制限されることとなる。特に、重度の心不全に対しては、現在、ドナーや組織適合性の問題がある心臓手術が唯一の有効な方法であり、他に有効な根治的治療方法はない。 【0005】 なお、池松らは、先にMKを有効成分とする虚血性疾患治療剤又は予防剤を提案している(特許文献1参照)。 【0006】 【特許文献1】国際公開第99/16463号パンフレット 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明の課題は、心筋障害又は心不全を治療もしくは予防するための薬剤組成物を提供することである。さらに本発明の課題は、ドナーや組織適合性の問題がある心臓手術を行わずに心筋障害又は心不全を治療もしくは予防するための薬剤組成物を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らは、野生型マウスの心臓において、臨床的に関連性がある病理学的刺激によってMKが活性化されるかどうかを研究した。また本発明者らは、野生型マウス及びMK遺伝子欠損型マウスにおける虚血/再灌流後の心筋損傷を比較することで、MKの作用及び機能を確認した。さらに本発明者らは、モデルマウスを用いた場合(in vivo)、及び培養心筋細胞を用いた場合(in vitro)のそれぞれについて、MKの投与により心筋細胞のアポトーシス死が防止されるかどうかを研究し、MKがin vivoにおいてもin vitroにおいても心筋細胞のアポトーシス死を防止する重要な因子であることを見出した。さらに本発明者らは、MKの投与により虚血損傷に続く心筋損傷が軽減することを見出し、本発明を完成させるに至った。 【0009】 〔発明の要旨〕 すなわち、本発明はミッドカインを有効成分として含有する、心筋障害を治療するための薬剤組成物を提供する。また、本発明はミッドカインを有効成分として含有する、心筋障害を予防するための薬剤組成物を提供する。さらに、本発明はミッドカインを有効成分として含有する、心不全を治療するための薬剤組成物を提供する。また、本発明はミッドカインを有効成分として含有する、心不全を予防するための薬剤組成物を提供する。 さらに、本発明はミッドカインを投与する工程を含む、心筋障害の治療方法を提供する。また、本発明はミッドカインを投与する工程を含む、心筋障害の予防方法を提供する。また、本発明はミッドカインを投与する工程を含む、心不全の治療方法を提供する。また、本発明はミッドカインを投与する工程を含む、心不全の予防方法を提供する。 さらに、本発明は心筋障害を治療するための薬剤の製造におけるミッドカインの使用を提供する。また、本発明は心筋障害を予防するための薬剤の製造におけるミッドカインの使用を提供する。また、本発明は心不全を治療するための薬剤の製造におけるミッドカインの使用を提供する。また、本発明は心不全を予防するための薬剤の製造におけるミッドカインの使用を提供する。 【発明の効果】 【0010】 本発明によれば、薬剤組成物により心筋障害又は心不全を治療もしくは予防でき、さらにドナーや組織適合性の問題がある心臓手術を行わずに心筋障害又は心不全を治療もしくは予防できる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0011】 本発明はミッドカイン(MK)を有効成分として含有する、心筋障害又は心不全を治療もしくは予防するための薬剤組成物を提供する。 薬剤組成物に有効成分として含有されるMKは、好ましくは、配列番号:1に記載のDNAがコードするMKポリペプチドを挙げることができるが、これに限定されるものではなく、配列番号:1に記載のDNAがコードするMKポリペプチドのアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列からなり、心筋障害又は心不全に対して治療もしくは予防効果を示すポリペプチドが含まれる。 ポリペプチドが心筋障害又は心不全に対して治療もしくは予防効果を示すかどうかは、たとえば<虚血性リスク領域と梗塞部の大きさの評価>や<免疫組織化学的方法>などを行うことで、当業者には容易に確認できる。 【0012】 上記MKと機能的に同等なポリペプチドは、通常、MKとアミノ酸配列において高い相同性を有する。高い相同性とは、アミノ酸レベルにおいて、通常、少なくとも50%以上の同一性、好ましくは75%以上の同一性、さらに好ましくは85%以上の同一性、さらに好ましくは95%以上の同一性を指す。なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、BLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877, 1993)などによって決定することができる。 【0013】 MKのアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が変異したアミノ酸配列からなり、該ポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドもまた本発明に含まれる。変異するアミノ酸数は、通常、30アミノ酸以内であり、好ましくは15アミノ酸以内であり、より好ましくは5アミノ酸以内(例えば、3アミノ酸以内)であり、さらに好ましくは2アミノ酸以内である。これら変異するアミノ酸残基においては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが望ましい。例えば、アミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、 Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ酸(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。 【0014】 次に、本発明における方法について具体的に説明する。 <モデル動物(マウス)の作製> 遺伝子的にMKを作れないマウス(Mdk-/-マウス)は、Nakamuraら(Genes Cells 3:811-822,1998)により育種されたものを用いた。野生型マウス(Mdk+/+マウス)もMKを作れないMdk-/-マウスも共にC57BL/6の遺伝背景を持ち、また試験には同年齢のマウスを用いた。これらマウスには、通常のげっ歯動物用食餌を与えた。マウスをペントバルビタール(100mg/kg、i.p.)で麻酔し、人工呼吸用装置(モデルSN-480-7)で維持した。開胸手術の後、左前降下冠状動脈(LAD)をPE-10チューブで結紮した。心筋の虚血は、左心室(LV)の白化によって確認した。結紮から1時間後に、結紮を取り除いて血流を回復させた。 急性期モデルについては、再灌流時に心筋内に直接MKタンパク質を注入した。注入するMKタンパク質の量は特に限定されないが、通常は0.01〜1μg、望ましくは0.05〜0.8μg、より望ましくは0.1〜0.5μgである。ここでは生理食塩水に溶かした20μlのMKタンパク質溶液(10μg/ml)を、ミクロシリンジに取り付けた30G針を用いて前の左心室壁に直接注射した。再灌流の24時間後に心臓超音波(心エコー)にて心機能を評価し、さらに傷害面積、病理組織学的変化、傷害に関連する各種タンパク質の発現などを比較検討した。 慢性期モデルについては、再灌流後2週間の経過観察を行った。このときMdk-/-マウスをさらに2群に分け、片方の群についてはMKタンパク質を持続投与した。MKタンパク質を持続投与する方法としては、虚血/再灌流時にMKタンパク質を注入した徐放カプセルを皮下に埋め込む方法や、再灌流時にMK遺伝子を搭載したアデノウイルスを冠血管に流入するように投与する方法などが考えられるが、ここでは浸透圧ポンプを用いてMKタンパク質を直接注入した。具体的には、90μlのMKタンパク質溶液(0.8mg/ml)が注入されたALZET micro-osmotic pump(Model 1002)を腹部皮下に植え込み、浸透圧によりタンパク質を持続投与した。マウスへ投与する際のMKタンパク至適量について比較検討した明確なデータはないが、過去に発明者らにより開示された方法(Horiba,M. et al: J.Clin.Invest. 105:489-495 ,2000)に準じて行った。経過観察中は心臓超音波(心エコー)にて経時的に心機能及び壁厚、内腔径などの形態変化を観察した。経過観察後は急性期モデルと同様に、傷害面積、病理組織学的変化、傷害に関連する各種タンパク質の発現などを比較検討した。 【0015】 <リスク領域と梗塞部の大きさの評価> 上で述べたようにマウスを麻酔し、開胸手術を行った。左前降下冠状動脈(LAD)の再閉塞に続いて、対比染色のための5%エバンスブルーを左心室の空隙部に0.2ml注射した。左心室を5つの薄片にスライスし、左心室の虚血性リスク領域をトリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)を用いて染色した。梗塞部(淡い色)、リスク領域(青くない部分)及び左心室全体の各々の面積を、コンピュータを用いて測定した。血清中CPKの測定は外部(SRL)へ依頼した。 【0016】 <心臓超音波(心エコー)検査方法> 心エコー検査はNemio 20(東芝)を用いて行った。マウスをエーテルで軽く麻酔し、温パッド上に仰向けにした。左心室の機能の測定は、目覚め状態で行った。12MHzの変換器を左半胸部に繋ぎ、心臓のMモード映像を記録した。データは、マウスの遺伝タイプを知らされていない観察者が分析した。 【0017】 <MKタンパク質と抗体> ヒトMKのopen reading frameを含むcDNA断片がpHIL-D4に挿入された酵母(Pichia pastoris GS115)用発現ベクターは、既に構築されている。酵母にこの発現ベクターを感染させた後に、ヒスチジンとG418による選択を行った。ヒトMKタンパク質は、陰イオン交換クロマトグラフィー及びヘパリンカラム上でアフィニティークロマトグラフィーを行って酵母より精製した。精製品は、L細胞から得られたマウスMKタンパク質と同程度の神経栄養活性を有していた。バクテリアが産生したマウスMKに対する抗体は、ラビットに精製タンパク質を注射して飼育し、プロテインAとMKとを組み合わせたアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。得られた抗体はMKに特異的で、PTN/HB-GAMとは反応しない。 【0018】 <ウェスタンブロッティング> マウスの心臓から抽出したタンパク質の10mg相当量を15%SDS-PAGEで分離した。MKタンパク質はECLキット(アマシャム社)を用いて、抗マウスMK抗体により検出した。バンドの強度は、デンシトメトリーで分析した。In vitro実験では、培養心筋細胞をSDSサンプルバッファーで溶解し、細胞溶解液を12%SDS-PAGEで分離した後、上述の方法と同様にウェスタンブロッティングとバンド分析を行った。ただし、抗Bcl-2抗体(Santa Cruz Biotechnology)又は抗ERK1/2抗体及び抗二リン酸化ERK1/2抗体(シグマ)を使用した。 【0019】 <病理組織学的方法> マウスの心臓を4%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィンで包埋し、5μmの厚みにスライスした。この5μm厚パラフィン切片にヘマトキシリン・エオジン染色を施し、病変の評価を行った。 <免疫組織化学的方法> 上記と同法にて得られた5μm厚パラフィン切片について、Biochem Biophys Res Commun,192:246-251,1993に記載の方法に従って免疫染色を行った。二次抗体としての非標識のヒツジ抗ラットIgG(Jackson Laboratory)とのインキュベーションに加えて、ビオチニル化チラミド及びストレプトアビジン−(西洋ワサビ由来)パーオキシダーゼ(NEN Life Science Products)を加え、反応を増幅させた。 【0020】 <細胞培養> マウス新生児の心室から得た心筋細胞の一次培養は、Neonatal Cardiomyocyte Isolation System(米国)のマニュアルに従って、1日齢のICRマウスから調製した。すなわち、心室の切片を、Ca++,Mg++不含で100U/mlのコラゲナーゼを含むハンクス均衡化塩溶液とともに撹拌しながら37℃で15分間インキュベートし、細胞懸濁液を集めた。分離した細胞を、10%牛胎児血清、5μMシトシンアラビノシド、50U/mlペニシリン及び50μg/mlストレプトマイシンを含有するM199培地(GIBCO BRL)を用いて、湿潤な炭酸ガスインキュベータ中にて37℃で培養した。 アポトーシス死に対する抵抗性を調べるために、5%炭酸ガス、95%窒素ガスの嫌気的雰囲気下において、心筋細胞を37℃で6時間インキュベートし、低酸素状態を作り出した。次いで、培地をMKタンパク質不含又は100ng/ml含有の0.5%牛胎児血清含有培地に交換し、再酸素供給を開始した。再酸素供給から18時間後に細胞を集めた。ERKの分析には、心筋細胞を24時間血清飢餓させ、その後100ng/mlのMKタンパク質を加え30分間処理した。 【0021】 <アポトーシスの測定> アポトーシスはTUNELによって検出した。脱パラフィンした薄片又はPBS中にて4%パラフォルムアルデヒドで固定した培養心筋細胞を、プロテナーゼとともにインキュベートし、DNA断片をフルオレセイン結合dUTPでTdT(Roche Diagnostics)を用いて標識した。核の濃度はHoechst 33342で染色した核の数をマニュアルで(40×の倍率で、5つの視野にて)測定することにより求め、Hoechst 33342染色核に対するTUNEL陽性細胞の比率を計算した。 また、アポトーシスの検出は、培養心筋細胞のDNA断片について細胞死検出ELISAキット(Roche Diagnostics)を用い、細胞質ゾルのオリゴヌクレオソーム結合DNAを定量することによっても行った。すなわち、心筋細胞の細胞質ゾルのフラクションをサンドイッチ式ELISA(マイクロタイタープレートに結合させた抗ヒストン抗体を一次抗体とし、パーオキシダーゼに結合させた抗DNA抗体を二次抗体としたもの)の抗原として用いた。 【0022】 <統計的分析> 全ての値は、平均値±標準偏差として表した。グループ間の統計分析には、Studentのt検定を用いた。P値が0.05未満である場合に「有意差がある」とした。 なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。 【実施例】 【0023】 以下、図面を参照しながら、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。 (実施例1)野生型マウス心臓におけるMKタンパク質の発現パターン 図1に、虚血/再灌流後の野生型マウス心臓におけるMK発現のタイムコースを示す。図1(a)はMdk+/+マウス心臓から抽出したタンパク質10mgを15%SDS-PAGEで分離し、ウェスタンブロッティングした電気泳動図であり、(b)は得られたバンドの強さをデンシトメトリーで定量したグラフである。対照においてMKの弱い発現が見られること、また虚血/再灌流後は時間が経過するにつれてMKの発現が強くなり、24時間後に最も強くなり、強発現は48時間後まで続くことがわかる。 Mdk+/+マウス心臓の対照の心臓切片と、虚血/再灌流後24時間における心臓切片について、MKの局在を免疫組織化学的に分析した(顕微鏡写真は示さず)。対照の心臓切片ではMKタンパク質は広がって薄く見られたが、虚血/再灌流後24時間における心臓切片ではMKタンパク質は梗塞部の周辺に強く見られた。また、写真を拡大したところ、MKタンパク質は梗塞部と梗塞周縁部の境界で明らかに異なって見られ、MKタンパク質は主として梗塞周縁部の心筋細胞の膜に発現していた(拡大写真は示さず)。 【0024】 (実施例2)野生型マウスとMdk-/-マウスにおける虚血/再灌流後の心筋損傷の比較 Mdk+/+マウスとMdk-/-マウスの急性期モデルを用いて、虚血/再灌流後の心筋損傷を比較した。左心室の切片においてエバンスブルーにより青く染まった組織は非リスク領域を示し、リスク領域内でTTCにより赤く染まった部分はまだ生きている組織を示す(写真は示さず)。エバンスブルーでもTTCでも染まらなかった部分は白っぽく見え、これは梗塞部である。 図2(左側)に、虚血性左心室リスク領域(AAR)に対する左心室(LV)梗塞部の百分率を示し、図2(右側)に、AAR内の梗塞部(白く壊死した部分)の大きさ(百分率)を示した。Mdk+/+マウスとMdk-/-マウスとを比較すると、リスク領域(AAR)はMdk+/+マウスとMdk-/-マウスとで類似しているにもかかわらず、Mdk-/-マウスではAAR内の梗塞部の大きさはMdk+/+マウスよりも有意に大きかった。 【0025】 さらに、Mdk+/+マウス及びMdk-/-マウスについて、形態学的変化及びLVFS(左室径短縮率)を検討した。図3は左心室作用を心エコー検査方法により評価したもので、上から順に、対照、虚血/再灌流直後のもの、及び虚血/再灌流の24時間後のものである。また、図4は各段階におけるLVFSの変化を表したグラフであり、図5は血清CPKの変動のグラフである。 Mdk+/+マウスとMdk-/-マウスの間で、対照(手術前)では有意な差は見られなかった(図3の最上段)。虚血/再灌流の直後には、左心室が拡大してLVFSは減少したが、両者に著しい差は見られなかった(図3の中段)。虚血/再灌流の24時間後の段階では、Mdk-/-マウスのLVFSはMdk+/+マウスに比べて有意に小さかった(図3の最下段、図4)。また、偽手術における血清CPK値は、Mdk+/+マウスとMdk-/-マウスの間で有意な差は見られなかったが、虚血/再灌流の24時間後には、Mdk-/-マウスのほうがMdk+/+マウスよりも高い血清CPK値を示した(図5)。 【0026】 次に、Mdk+/+マウスとMdk-/-マウスにおける梗塞周縁部のアポトーピックな細胞密度を比較した。Mdk+/+マウスとMdk-/-マウスの各々の左心室の切片をヘキスト33342(核染色用)で染色し、また併せてTUNEL染色(死滅細胞が染色される)を行った。図6はヘキスト33342染色(核の総数)に対するTUNEL染色陽性細胞の割合を示すグラフである。Mdk-/-マウスの梗塞周縁部から得られた心臓薄片はMdk+/+マウスに比べて明らかにTUNEL染色陽性細胞が多かった(図6)。 また、虚血/再灌流後24時間以内に40%のMdk-/-マウスは死亡したが、Mdk+/+マウスはこの期間に90%生存していた(データは示さず)。また、検死結果では、虚血/再灌流後24時間以内に死亡したMdk-/-マウス(8匹中の3匹)には、重大なアポトーシスに起因する心筋層での形態が見られた。 【0027】 (実施例3)MKタンパク質による心臓保護の評価(in vitro実験) 培養心筋細胞は、低酸素/再酸素供給(H/R)によってアポトーピックな細胞死を受けることが知られているため、MKの細胞保護作用の評価にこの手法を用いた。図7及び図8に、培養心筋細胞をH/R処理したときの、MKタンパク質による心臓保護効果を示した。ここで、図7(a)はELISAによるDNA断片化の定量データであり、(b)は核の数に対するTUNEL陽性細胞数である。また、図8(上段)は心筋細胞におけるBcl-2発現の変化をウェスタンブロッティングで検出したもので、レーン1は対照、レーン2はH/R処理(MK無添加)、レーン3はH/R処理(100ng/mlのMKタンパク質で処理)したものである。 H/R処理後は、ELISAによるDNA断片化の量もTUNEL陽性細胞数も共に、100ng/mlのMKの存在下で有意に減少している(図7)。酸素再供給後の心筋のBcl-2発現は、対照とH/R処理(MK無添加)との間に有意差はないが、100ng/mlのMK処理で増強された(図8上段)。 ERKの活性化は心筋細胞の保護と関連しているとの報告があるため、次に培養心筋細胞におけるERK-1/2活性化を調べた。図8(下段)は培養心筋細胞におけるMKによるERK-1/2の活性化を示す電気泳動図で、抗ホスフォERK-1/2抗体を用いて検出した(上側のバンド)。血清飢餓の条件では、ERK-1/2のリン酸化は低いレベルであるが、100ng/mlのMK添加によりリン酸化されたERK-1/2が有意に増大した。なお、ERK-1/2タンパク質の総量は2つのグループで類似している(下側のバンド)。 【0028】 (実施例4)MKタンパク質による心臓保護の評価(in vivo実験:急性期モデル) 急性期モデルマウスを用いて、虚血/再灌流の損傷に対するMKの治療効果をin vivoで調べた。Mdk-/-マウスの冠状動脈を結紮し、再灌流の直後に20μlのMKタンパク質溶液(10μg/ml)を心臓左心室壁の筋肉中に直接注射した。対照は、MKを含まない媒体(生理食塩水)を同様に注射した。図9は、Mdk-/-マウスの左心室にMKタンパク質を注入したときと、注入しないときの左心室の梗塞サイズを、虚血性リスク領域(AAR)に対する梗塞部の百分率として表したグラフである。再灌流から24時間後、MKタンパク質を投与したマウスの梗塞部の大きさは、MKタンパク質を投与しなかった対照マウスの梗塞部の大きさに比べて有意に小さいことがわかる。 【0029】 (実施例5)MKタンパク質による心臓保護の評価(in vivo実験:慢性期モデル) 慢性期モデルマウスを用いて、虚血/再灌流の損傷に対するMKの治療効果をin vivoで調べた。Mdk+/+マウスもしくはMdk-/-マウスの冠状動脈を結紮し、再灌流後2週間の経過観察を行った。このときMdk-/-マウスをさらに2群に分け、片方の群については90μlのMKタンパク質溶液(0.8mg/ml)が注入されたALZET micro-osmotic pump(Model 1002)を腹部皮下に植え込み、浸透圧ポンプによりMKタンパク質を持続投与した。図10は、慢性期モデルにおける死亡率及び心臓/体重・重量比を示している。Mdk+/+マウス(上段)に比して、Mdk-/-マウス(中段)では死亡率が有意に増加したが、MKタンパク質を持続投与(下段)することにより、死亡率はMdk+/+マウスと同程度に改善された。また、心不全指標の一つである心臓/体重・重量比に関しても、Mdk-/-マウス(中段)ではMdk+/+マウス(上段)より増加する傾向が認められたが、MKタンパク質の持続投与(下段)により、心臓/体重・重量比もMdk+/+マウスと同程度に改善された。 【0030】 さらに、Mdk+/+マウス及びMdk-/-マウスについて、形態学的変化及びLVFS(左室径短縮率)、LVEF(左室駆出率)、IVSTs/d(左室壁厚)を検討した。図11は左心室作用を心エコー検査方法により評価したもので、左から順に、Mdk+/+マウス、Mdk-/-マウス、及びMdk-/-マウスにMKタンパク質を持続投与したものである。また、図12は各段階におけるLVFS及びLVEFの変化を表したグラフである。 心エコー検査の結果、Mdk+/+マウスに比してMdk-/-マウスでは心機能が有意に低下していたが、MKタンパク質を持続投与することにより、心機能に著明な改善が認められた(図11〜12)。 【0031】 次に、Mdk+/+マウス(図13)、Mdk-/-マウス(図14)、Mdk-/-マウスにMKタンパク質を持続投与したもの(図15)について、病理組織学的な検討を行った。その結果、Mdk+/+マウスに比してMdk-/-マウスでは心筋の線維化面積が拡大していたが、MKタンパク質を持続投与することにより、改善傾向が認められた。 【図面の簡単な説明】 【0032】 【図1】虚血/再灌流後の野生型マウス心臓におけるMK発現のタイムコースを示す図である。(a)はMdk+/+マウス心臓から抽出したタンパク質について15%SDS-PAGE及びウェスタンブロッティングを行ったものであり、(b)は得られたバンドの強さをデンシトメトリーで定量したものである。n=5、*P<0.01。 【図2】虚血/再灌流後の左心室リスク領域(AAR)の定量的分析を示したグラフで、左側は左心室リスク領域(AAR)に対する左心室(LV)梗塞部の百分率を示し、右側はAAR内の梗塞部の大きさ(白く壊死した部分、百分率)を示す。n=各々8、*P<0.05。 【図3】マウスの左心室の心エコー図。上から順に、対照、虚血/再灌流直後のもの、及び虚血/再灌流の24時間後のものであり、左側がMdk+/+マウス、右側がMdk-/-マウスである。 【図4】各段階におけるLVFS変化をまとめたグラフ。n=各々10。 【図5】血清CPKの変動のグラフ。n=各々10。*P<0.01。 【図6】ヘキスト33342染色(核の総数)に対するTUNEL染色陽性細胞の割合を示すグラフ。梗塞周縁部のアポトーピックな細胞密度を比較した。 【図7】(a)培養心筋細胞を低酸素−酸素再供給(H/R)処理したときの、MKタンパク質の抗アポトーシス死効果を示すグラフで、ELISAによるDNA断片化の定量データでみたもの。(b)同MKタンパク質の抗アポトーシス死効果を示すグラフで、核の数に対するTUNEL陽性細胞数でみたもの。*P<0.05。 【図8】(上段)同MKタンパク質の抗アポトーシス死効果を示す電気泳動図で、心筋細胞におけるBcl-2発現の変化をウェスタンブロッティングで検出したもの。レーン1:対照、レーン2:H/R処理(MK無添加)、レーン3:H/R処理(100ng/mlのMKタンパク質で処理)。(下段)培養心筋細胞におけるMKによるERK-1/2の活性化を示す電気泳動図で、抗ホスフォERK-1/2抗体を用いて測定した。 【図9】Mdk-/-マウスの左心室にMKタンパク質を注入したときと、注入しないときの左心室の梗塞サイズを、虚血性リスク領域(AAR)に対する梗塞部の百分率として表したもの。n=7、*P<0.05。 【図10】慢性期モデルマウスについて、再灌流2週間後の心臓/体重・重量比及び死亡率を示す図。上から順に、Mdk+/+マウス、Mdk-/-マウス、及びMdk-/-マウスにMKタンパク質を持続投与したもの。それぞれn=11、12、8。 【図11】マウスの左心室の心エコー図。左から順に、Mdk+/+マウス、Mdk-/-マウス、及びMdk-/-マウスにMKタンパク質を持続投与したもの。 【図12】各段階におけるLVFS及びLVEFの変化をまとめたグラフ。 【図13】再灌流2週間後における野生型マウス(Mdk+/+マウス)の心臓切片の染色像。 【図14】再灌流2週間後におけるMdk-/-マウスの心臓切片の染色像。 【図15】再灌流後2週間にわたってMKタンパク質を持続投与したMdk-/-マウスの心臓切片の染色像。
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| 【出願人】 |
【識別番号】503139762 【氏名又は名称】株式会社セルシグナルズ 【識別番号】504139662 【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
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| 【出願日】 |
平成17年6月27日(2005.6.27) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100102978 【弁理士】 【氏名又は名称】清水 初志
【識別番号】100128048 【弁理士】 【氏名又は名称】新見 浩一
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| 【公開番号】 |
特開2006−188483(P2006−188483A) |
| 【公開日】 |
平成18年7月20日(2006.7.20) |
| 【出願番号】 |
特願2005−187420(P2005−187420) |
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