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【発明の名称】 アレルギー性疾患の予防法
【発明者】 【氏名】ホルト,パトリック ジー.

【要約】 【課題】アレルギー性疾患に対して感受性の個体においてかかる疾患の防御方法を提供する。

【解決手段】予め脱感作した個体に、アレルゲン特異的T−ヘルパー−1−様記憶リンパ球の安定な母集団の確立を誘発するために有効なアレルゲンの投与量または形態を投与し、前記リンパ球が、前記アレルゲンに対して特異的なIgE抗体の産生を刺激する原因となるアレルゲン特異的T−ヘルパー−2−様リンパ球の活性または増殖を阻害する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の環境アレルゲンを、アレルゲン−特異的T−ヘルパー−1−様記憶リンパ球を選択的に刺激し得る医薬的に許容されるアジュバント及び場合により医薬的に許容される担体と共に含有し、前記リンパ球が、前記アレルゲンの少なくとも1種に対して特異的なIgE抗体の産生を刺激する原因となるアレルゲン特異的T−ヘルパー−2−様リンパ球の活性または増殖を阻害し得るものであり、アレルギー性疾患に感受性であるが前記アレルゲンに対して先行して感作されていない個体におけるアレルギー性疾患の防止に際して使用される、滅菌予防用組成物。
【請求項2】
アレルゲン特異的T−ヘルパー−1−様記憶リンパ球の安定な母集団の確立を誘発するために有効な投与量または形態でアレルゲンを使用する方法であって、アレルギー性疾患に感受性であるが前記アレルゲンに対して先行して感作されていない個体におけるアレルギー性疾患の防止に有用な医薬の製造にアレルゲンを使用する方法。
【請求項3】
少なくとも1種の環境アレルゲンを、アレルゲン−特異的T−ヘルパー−1−様記憶リンパ球を選択的に刺激し得る医薬的に許容されるアジュバント及び場合により医薬的に許容される担体と共に含有し、前記リンパ球が、前記アレルゲンの少なくとも1種に対して特異的なIgE抗体の産生を刺激する原因となるアレルゲン特異的T−ヘルパー−2−様リンパ球の活性または増殖を阻害し得るものであり、該アレルゲンがエアロゾルとして製剤化される滅菌予防用組成物。
【請求項4】
少なくとも1種の環境アレルゲンを、アレルゲン−特異的T−ヘルパー−1−様記憶リンパ球を選択的に刺激し得る医薬的に許容されるアジュバント及び場合により医薬的に許容される担体と共に含有し、前記リンパ球が、前記アレルゲンの少なくとも1種に対して特異的なIgE抗体の産生を刺激する原因となるアレルゲン特異的T−ヘルパー−2−様リンパ球の活性または増殖を阻害し得るものであり、該アジュバントが微生物由来のアジュバントである滅菌予防用組成物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、アレルギー性疾患、及び特には環境の抗原またはアレルゲンにより誘発されるアレルギー性疾患の予防のための方法及び組成物に関するものである。
本発明者は、アレルゲンの非経口及び腸内的投与に対する液性及び細胞性免疫応答の誘発に関する文献を再調査し、生命初期のアレルゲン特異的T−ヘルパー−1(TH−1)リンパ球の選択的刺激を介した、アレルギー性疾患に対する保護的免疫の誘発のための新規かつ予期されない機構をここに提案する。
【0002】
この明細書のために下記の定義が使用される:
アレルゲン:TH−2リンパ球の活性化、及び特異的IgE抗体の産生により特徴づけられるアレルギー型免疫応答を刺激する外来抗原;
環境アレルゲン:環境に見い出される任意のアレルゲンであり、そのようなアレルゲンは必ずしもそうではないが、通常は天然に生じるものである;
感作:初回感作抗原またはアレルゲンによる次の対抗量に対する特異的応答のためのT−細胞母集団の初回感作であり;この明細書の内容においてはアレルゲン特異的TH−2細胞の初回感作である;
脱感作:アレルゲン特異的T−細胞、特にはTH−2細胞、及び/またはアレルゲン特異的免疫もしくはアレルギー性応答に取り入れられた他の細胞型の活性を選択的に抑制するためのアレルゲンまたはその誘導体の治療的投与。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
今世紀のはじめに、実験動物へのそれらが以前に遭遇したことがない抗原の供給が、直接的過敏症の一時的症状を引き出し、これが継続的食物抗原への曝露と共に衰退し、抗原特異的非応答の状態に置き換わることが認識された。この現象は今日では経口耐性として知られ、またIgE−媒介過敏性応答及び遅延型過敏性応答に対して優先的に向けられることが示されている(1)。この型の耐性は、TH−1−様サイトカイン類を分泌するT−細胞により、動物から動物へと移すことができ(2、3)、またこのようなサイトカインを分泌するアレルゲン特異的T−細胞はアレルゲン供給の間に腸管膜のリンパ節にて急速に発育する(10、12)。
【0004】
呼吸器官における同等な現象を認識したのは発明者が初めてであり、1980年代の初期から根本的な機構を調査してきた(4、5)。基本的な要素は同じであり:抗原エアロゾルの反復吸入が最初にTH−2−依存性IgE産生の成分を含む混成免疫応答を引き出すが、しかしながら後半には結局は特異的IgG及びIgA産生の痕跡のみを残して、反復する抗原の対抗量をものともせずに衰退してゆく。このような様式で抗原エアロゾルに受動的に曝露される動物は、その余命において、対抗量の経路あるいは強度に関わらず同じ抗原に対する引き続くIgE応答を増すことはできない。抗原供給の場合と同様に、抗原吸入の結果生じる“耐性”は、IgE及び遅延型過敏症に対して優先的に発現され、CD8を発現する母集団を含むTH−1−様サイトカイン類を分泌するT−細胞により媒介される(6)。更に、この型の“耐性”誘発についての選択は、初期のアレルゲン曝露時またはその前後において免疫系に対して開放されているものと考えられ、安定した進行中のIgE応答を伴う予め感作された動物は、エアロゾルの曝露によっても“脱感作”されない(4、5)。
【0005】
これらの過程は、実験動物において共通する更に二つの重要な特徴を示す。第一には、耐性誘発に対する感受性が遺伝子的に決定され、高い感受性が低−IgE−応答個体−フェノタイプと共に相続される。操作上、このことは高−IgE−応答個体のラット及びマウスを成功裡に耐性付与するために、それらの対応する低−応答個体に比較して10から10倍高い強度のアレルゲン曝露の必要性として明らかにされる。しかしながら、高及び低応答個体の両者ともに、いずれの経路によっても最終的に耐性付与されること、並びに高−IgE−応答個体におけるこれらの機構の固有の不活発さが、より高い強度のアレルゲン刺激を与えることにより克服されうることは明らかである(4、5)。
【0006】
第二には、保護的耐性を誘発することとは反対に、幼少の極めて早期の相においてアレルゲン曝露が引き続く病原的T−細胞反応性を引き出しうる程度に離乳前の時期において過程がほとんど機能しない(7):これは、耐性誘発過程において律速的である粘膜性免疫機能の一種以上の重要要素の遅延出生後成熟に多分よるものであろうが、アレルギー性感作についての高いリスクの初期の“ウィンド”の存在に矛盾しない(7)。
【0007】
消化管を介しての粘膜的アレルゲン曝露のどの程度のものが、IgE−陽性の高−応答動物における進行するTH−2応答を抑制しうるかは明らかではないが、経鼻的に投与されるアレルゲンペプチドを使用する最近の研究は、脱感作との関係におけるこの接近方法の更なる追求を促している。
【0008】
至る所に存在する環境アレルゲンに対するヒトの初期の曝露は、幼年期または幼児期初期に起こり、成人におけるアレルギー性疾患のトリガーの多くは幼年期に設定されるという認識は、ますます注意を引きつつある。これに関連して、拡大する小児科血清疫学文献に基づいて、生命の最初の2、3カ月の間の高水準のアレルゲン曝露は、幼年後期においてTH−2−様反応性として明らかになるアレルギー性感作の素因を作る(7)と言う統一見解が発展しつつある。このことは、実験動物の場合と同様に、粘膜表面に遭遇するアレルゲンに対するTH−1反応性の効果的“選択”において重要な免疫機能について一時的な成熟欠陥があることを示唆している。
【0009】
しかしながら、本発明者は、関連するヒトに関する文献の重要な要素が、幼児期初期に共通して起こる個々の食物及び吸入アレルゲンに対するIgE応答の特徴的な二相的性質であることを認識した。
【0010】
従って、健常な幼児及びアトピー性応答の家系にあるものの両者が、生命の最初の1年間に通常の食物アレルゲンに対する血清IgE抗体応答を典型的には発展させ、それらの強度及び持続期間はIgE−応答個体−フェノタイプに依存する。同種のパターンは、吸入アレルゲンに対するIgE応答についても明らかであり(図1);しかしながら後者は、幼児期後期に始まり、非アトピー性では切る(“耐性付与する”)までにかなりの長期間を要する。さらに、潜在的アトピーのより多くの割合が、食物アレルゲンに対するよりも吸入アレルゲンに対しての血清IgE反応性を、幼児期後期まで維持する(8)。
【0011】
吸入と食物抗原とに対する“耐性”誘発の動力学及び全体の効率についてのこれらの差異は、2種類の器官における抗原曝露の異なった水準に直接に由来するであろう:T−細胞部分集合の選択は“抗原由来”であり、低水準の呼吸器管曝露を介して与えられる低強度の刺激は、より遅く、かつ最終的により低い効率の過程を生じるものと予想される。
【0012】
実験動物における非経口的抗原投与量に対するIgE応答の強度及び持続期間は、CD4T−細胞部分集合加羅の競合する信号により制御されることが知られている。特に、インターロイキン−4及びインターロイキン−5を分泌するT−ヘルパー2(TH−2)細胞は、IgE−B−細胞スイッチングを促進し、またインターロイキン−2及びインターフェロン−γを分泌するTH−1細胞は、TH−2クローン性の展開を阻害し、而してIgE応答を制限する(9)。ヒト末梢血T−及びB−細胞を使用するインビトロ実験系を用いて得られた種々のデータの発明者による再調査は、同等な機構がヒトに存在することを示しており(10)、この観点は、アトピー性及びIgE−陰性の健常人の両者が、末梢血中に主要な吸入アレルゲンに対して反応性のT−細胞を含み;アトピー性の個体においてはこれらの細胞がTH−2型の主要部であるものと考えられ、その一方で非アトピー性個体ではそれらは主としてTH−1であると考えられることにより補強される(11)。それぞれのサイトカインパターンが二つの種において同等ではないことから、これらのヒトT−細胞部分集合の正確な分類を取り巻いてかなりの論争があり;従って、最近の意見ではヒトにおけるそれらの分類をそれぞれTH1−“様”及びTH−2−“様”とすることが好まれる。
【0013】
而して我々は、非アトピー性の成人において、環境アレルゲンに対するそれぞれの曝露が、T−細胞系に対するアレルゲン提示部位におけるTH−1−様サイトカイン放出の突発を引き出し、このことが可能性を持った病原的TH−2−様反応性の出現に対して“保護”し;各曝露事象は、宿主−保護的TH−1−様“記憶”を強化するために更に寄与するであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要約
本発明者は、ヒトにおけるT−リンパ系が、生涯を通して環境“アレルゲン”に対する活性ある監視に関わり、それが個体において(単に存在することとは異なり)アレルギー性(アトピー性)または免疫的に正常な(非−応答個体)フェノタイプのいずれを発現するかを決定するアレルゲン特異的T−細胞応答の性質であることを提案する。発明者は、適切なT−細胞母集団の選択が、感受性(脱感作)の宿主における免疫応答の初期の段階にて起こる抗原誘導過程であることを認識した。選択が、T−ヘルパー−1−様(TH−1−様)のアレルゲン特異的T−細胞の成長に有利に働くのであれば、低−グレードの比病原的IgG及びIgA応答が続いて起こり、一方でTH−2−様細胞の出現は、IgE産生及び好酸球増加症を、また最終的にアトピー性疾患を導き得る。加えて、TH−1−様サイトカインは、TH−2−様クローンの拡大を活発に抑制し、従って、アレルゲンに対する主要な安定したTH−1−様応答が、TH−2−様依存性のアレルギー性疾患の進展に対抗して活発に保護的であることが提案される。遍在する環境アレルゲンに対するT−細胞応答に関しては、最近の小児科学文献の発明者による再調査は、幼児期初期がこの選択が通常に起こる生存中の時期であることを特定し、この過程が完成まで数年を要することを示した。一旦、選択の意味が認識されれば、この自然の選択過程が、宿主保護的TH−1−様免疫の発展を優先的に刺激するために適用される形態での、アレルゲンの計画的投与により、インビボにおいてそれを制御することを計画するべく、どの様に操作するかは既に十分に知られる。
【0015】
我々のデータは、“傍観者”細胞母集団、特にCD8及び/またはTγ/δ細胞が、全体のTH−1−様選択過程を活発に補助することを示唆しており、この明細書における“TH−1−様免疫”なる用語がこれらの細胞による寄与を含むものと理解される。
【0016】
第一の側面によれば、本発明はアレルギー性疾患に対して感受性の個体においてかかる疾患の防御方法を提供し、該方法は、以前に脱感作した個体に、アレルゲン特異的T−ヘルパー−1−様記憶リンパ球の安定な母集団の確立を誘発するために有効なアレルゲンの投与量または形態を投与し、前記リンパ球が、前記アレルゲンに対して特異的なIgE抗体の産生を刺激する原因となるアレルゲン特異的T−ヘルパー−2−様リンパ球の活性または増殖を阻害することを含む。
【0017】
好ましくは、該アレルゲンは環境抗原であり、単一またはこのような2種類以上のアレルゲンの組合せのいずれにより投与されてもよい。アレルゲンは、その自然に生じうる形態であってよい。別法として、該アレルゲンは組換えDNA技術を使用して調製された蛋白質、または合成ペプチドであってよい。該アレルゲンは、精製された形態、または粗製もしくは部分精製の形態であってよい。該アレルゲンは、全アレルゲン分子を提示してもよく、またその一部、例えば1個以上のエピトープを含むものであってもよい。この発明において使用するために好適なものと解されるアレルゲンは、ハウスダストダニ、ねこ、イヌまたはトリのふけ等の動物のふけ、ゴキブリ、ライグラスまたはアルテルナリア等に由来する草本花粉、カバまたは杉等の木本花粉、羽毛及びかびに由来するものを含む。最も好適なアレルゲンは、地理的位置に依存するであろう。例えば、カバ及び杉花粉は、北ヨーロッパ及び日本においてはアレルギーの主要な原因であるが、オーストラリアにおいてはあまり重要ではない。
【0018】
発明の両側面において、アレルゲンは経口的、経鼻的、口鼻的、直腸的、皮内的、筋内的または経皮的経路により投与されてよい。アジュバントは好ましくはリポゾームまたは微生物細胞壁生成物である。
【0019】
アレルゲンは、場合によりアジュバントと共に投与されてもよい。好適なアジュバントは当業者に知られているであろう。T−ヘルパー−1−様リンパ球を選択的に刺激するアジュバントが好ましい。
【0020】
アレルゲンの投与量は、該アレルゲン、投与経路、アジュバントを使用するか否かに依存して、一般的にはナノグラムからミリグラムまでの範囲であろう。当業者は、充分確立された原則を使用して、投与の回数及び頻度を容易に決定することができるであろう。非経口投与のためには投与量範囲はマイクログラムの程度であり、経鼻的投与のためには投与量範囲はマイクログラムからミリグラム領域であり、経口または直腸内的投与のためには投与量はミリグラムからグラムの範囲であろうことが予想される。投与量が、アジュバントを使用するか否かに依存し、またアジュバントの性質に依存することは認識されるであろう。
【0021】
本発明の方法は、投与されるアレルゲンに対して既にアレルギー性、即ち過敏症となっていない個体の処置にのみ好適である。
【0022】
一般的に該方法は、3カ月から7歳までの小児の治療に最も適当であるが、7歳を越える個体についても適用できる。好ましくは、免疫は6カ月未満ではない小児、更に好ましくは9カ月未満ではない小児に投与される。
【0023】
幼児期初期においては、ほとんどの個体が環境アレルゲンによる感作に曝されていないため、この期間はアレルゲン特異的宿主保護的なTH−1−様媒介免疫についての選択のために最適な機会を提供するものと考えられる。浮遊するアレルゲン、即ち個体が吸入により曝されるアレルゲンに対する免疫が、幼児期初期において成されることが特に好ましい。
【0024】
発明の好ましい実施態様に従うと、アレルゲンが幼児期初期に経口的または経鼻的に投与される。
【0025】
最小のTH−2−様応答の刺激を持って、アレルゲンに対するTH−1−様応答の選択的誘導を与えると考えられる特に好ましい実施態様に従うと、浮遊型のアレルゲンの2種類以上の混合物が、幼児期初期にTH−1−様選択的アジュバントと共に非経口的に投与される。
【0026】
第二の側面に従うと、本発明は環境アレルゲンを、T−ヘルパー−1−様リンパ球を選択的に刺激しうるアジュバント、及び場合により医薬的に許容される担体と共に含有する滅菌組成物を提供する。
【0027】
該アレルゲンは、粗製または精製品であってよく、天然由来、組換えDNA技術により製造されたもの、または合成品であってよい。
【0028】
好ましくは、アレルゲンは、ハウスダストダニ、ねこ、イヌまたはトリのふけ等の動物のふけ、ゴキブリ、ライグラスまたはアルテルナリア等に由来する草本花粉、カバまたは杉等の木本花粉、羽毛及びかびからなる群から選択される。
【0029】
好ましくは、該組成物は、経口的、経鼻的、口鼻的または直腸内的投与に適合するものであるが、皮内的、経皮的または筋内的投与も使用しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
発明の詳細な記述
本発明はここに、下記の非制限的例及び添付する図を参照して詳細に記述されるが、図は:
図1は、健常及びアトピー性幼児における環境アレルゲンに対する出生後血清IgE応答を例示する。各曲線は、単一の幼児からの反復する血清試料の結果を表し;個々の健常またはアトピー性幼児についての曲線は示された領域内で減少した。データは参考文献8から導かれた。RASTは、IgEに対する放射アレルギー吸着試験を表し;PRUは、IgEに対するペーパ放射免疫吸着試験(単位/ml)を表す。
図2は、反復曝露によりOVAに対して“耐性”を付与されたC57BI/6JマウスからのCD8リンパ球の養子的移転によるIgE抗−オボアルブミン(OVA)応答の選択的抑制を示す。白抜きの棒、IgE;ハッチングした棒、IgG(アステリスク、<対照;P<0.01)。
図3は、γδT細胞によるIgE応答の抑制を例示する。白抜きの棒、IgE;ハッチングした棒、IgG(アステリスク、<対照;P<0.01)。
図4は、OVA−耐性マウスからの積極的に選択されたγδT細胞によるOVA−特異的耐性の養子的移転の投与量−応答分析を示す。示されるデータは、各マウスからのIgE力価であり;陰を付した領域は健常動物における極大初期IgG応答についての95%の信頼性限界を表し、実験における全ての動物でのIgG力価がこの領域へ降下した。C、非処置対照または無垢の動物由来の脾臓細胞の受容動物により得られた比較結果。アステリスク、<対照;P<0.01。
図5は、初期IgE応答の抑制における抑制におけるγδT細胞の抗原特異性を例示する。アステリスク、<対照;P<0.01。
【0031】
観察される有益な効果についてのいかなる機構にも限定されることを望むことなく、我々は、ヒトにおけるアレルギー性感作防止の“生来”の機構が同起源の免疫学的過程であることを提案し、これは以下のように機能する:
(i)幼児期初期の間、遭遇する主要な環境アレルゲンの活性な免疫学的認識があり、成熟しつつある免疫系が、交差的競合性のTH−1−様及びTH−2−様アレルゲン特異的クローンを含む低グレードの初期には異種的なT−細胞応答を始める;
(ii)通常の環境への曝露を介しての再刺激の反復するラウンドの間に、競合するT−細胞フェノタイプの一つが、ついには応答において優勢になり(典型的には非アトピー性の健常被験者におけるTH−1−様)、後の生涯を通じてアレルゲンに対する免疫応答を“監視”し、同じアレルゲンに対して反応性のTH−2−様クローンの出現を阻害するT−記憶細胞の安定なプールの確立を導く。
【0032】
吸入アレルゲンに関しては、これらの初期アレルゲン特異的IgE応答が、5−7歳ほどの後期まで非アトピー性においてしばしば終了しないことから(8)、共存する拮抗的TH−1−様及びTH−2−様T−細胞母集団の間のこの競合は、幼児期の数年間継続するものと思われる(図1)。いかにしてT−細胞反応性が発展するかという最近の理解に基づいて、我々は吸入アレルゲンに対する応答は、この初期の間“可塑性”であり、外的因子によっていずれの方向にも向く様に影響を受けうるものと考える。特に、初期のアレルギー性感作についての既知の環境危険因子(7)は、最終的にTH−2−様反応性の選択を促進しなければならない。更に、実験的文献は、免疫系の平衡を宿主保護的抗アレルゲン応答の選択に向けて潜在的に押し出す強力な一連の機構、特に、両者ともにTH−2−様細胞の拡大を阻害することによりTH−1−様細胞を強く選択する、ある種の微生物的刺激に応答するマクロファージにより産生されるインターロイキン−12及びインターフェロン−α等のサイトカイン類(12)及びアレルゲン特異的CD8T−細胞により産生されるインターフェロン−γの存在を示す。
【0033】
発明者は、ここでこれらの初期アレルゲン特異的免疫応答の可塑性、及びインビボにおけるそれらの遅い動力学が、潜在的な干渉の機会を提供することを認識した。長い間、環境アレルゲンに対する“感作の窓”として称されてきた初期の幼児期は、未だ非感作である小児において正常な抗−アレルゲン免疫の発達を制御する“機会の窓”を提供するものとして同様に考慮されうる。幼児期初期に起こる進行中のアレルゲン特異的T−細胞選択過程において、活性の干渉は、アレルゲン特異的宿主保護TH−1−様免疫についての選択を至適化するであろう:吸入アレルゲンに対する生来の免疫応答の遅い全体的動力学(図1参照)は、このような道がかかるアレルゲンに対する感作の阻止に特に適用可能であることを示唆する。
【0034】
第1には、幼児期初期において、アレルゲン(または関連ペプチド)の食事または経鼻的投与のいずれかを介して生来の選択過程の促進及び制御が提案される。この方法は、アトピーにおいてさえも小児期の食物アレルゲンに対して出現するIgE応答の生来の“耐性付与”の成功が、アレルゲン性刺激の全体的水準が通常はかなり低い吸入アレルゲンについて達成されるよりも想到の高いという知見から導かれる。而して、吸入アレルゲン刺激の全体の水準を、適切な経路及び適切な時期により増強することは、TH−1−様選択の全体の効率を増大させるであろう。
【0035】
この方法は、外面的には最近多くの研究所で開発されている脱感作の戦術に類似する様に見えるであろうが、それは実際には当に逆であることが強調される;後者は予め確立されたTH−2−様記憶により、感作宿主における病原的TH−2−様細胞を“沈静化すること”に基づくものであり、一方において本発明の方法は、最初に安定な記憶母集団としてのそれらの出現を阻止することに基づく。
【0036】
より直接的な戦略は、最新のワクチン技術における最近の開発により示唆され、これは並行するTH−2−様経路を刺激する最小の危険性のもとに、適切な非経口免疫を介して計画通りの抗原に対するTH−1−様応答を選択的に誘発することができる見込みを維持する。従って、幼児期の適切な時期における適切なTH−1−様選択アジュバント中の主要な吸入アレルゲンの混合物を用いる計画的な非経口予防接種は、生来の粘膜刺激の結果として生じる適切なTH−1−様細胞の母集団を支えるための安全かつ信頼性ある方法を提供し、而してアレルゲン特異的T−記憶プールの最終的優勢を促進するであろう。吸入アレルゲンに関しては、ほとんどのアトピーにおける血清IgEの高い比率が、相対的の少数の主要環境アレルゲン特異性により説明されうるという知見(13)は、関連アレルゲン(ワクチン)混合物がかなり複雑であることを要しないという視点を推奨する。
【0037】
好ましい戦略は、アジュバントの使用に基づくもので、それは:
a)マクロファージによるインターロイキン−12及びインターフェロン−αの分泌を促進し、而して参考文献12に記述される機構によりTH−1−様細胞の成長を選択するもので;これらのアジュバントは微生物的生成物から誘導されるであろう;および/または
b)我々が最近報告した機構により(6)アレルゲン特異的TH−1−様細胞の引き続く成長について選択すべく、投与されるアレルゲンに対してクラス1MHC−制限免疫の初期突発を選択的に促進するもので;この目的に適したアジュバント及び配送システムは、リポソームの種々の形態、またはイスコム等のアレルゲン−脂質接合体であるものと考えられる。
【0038】
例1
クラス1MHC−制限免疫の予めの誘導による初期アレルゲン特異的IgE応答の選択的抑制
マウスは、CD8T−細胞を初回感作すべく設計されたプロトコールを使用し、最初のアレルゲンであるオボアルブミンに対してワクチン接種された。それ自体既知のこのプロトコールは、浸透圧ショックにより可溶性オボアルブミンが細胞質的に“付加”された脾臓細胞を用る初回感作による、CD8T−細胞の選択的活性化に基づく。我々の予備的結果は、ワクチン接種されたマウスは、オボアルブミンによる非経口感作に対する引き続く高力価の初期抗原−オボアルブミンIgE応答を増大することはできず、しかしながら、正常IgG応答が可能であることを示している。このことは、初期ワクチン接種はこれらのマウスの抗−オボアルブミン応答のTH−2−様成分を選択的に抑制し、その一方でTH−1−様依存性IgG産生が正常に進行したことを示す。この結果は、提案されるワクチン接種戦略の基礎を成す原理を明らかに支持し、また同じ最終結果を達成すべく設計される別のワクチン接種プロトコールに関する更なる実験が進行中である。
【0039】
例2 アジュバントとしてのリポソームの使用
リポソームは、抗−ウイルス免疫、特に抗原特異的CD8及びCD4 TH−1−様ウイルス性抗原特異的T−細胞母集団での混合“記憶”の生成に基づく免疫を生じさせるために、抗原配送用のベヒクルとして使用され得ることが示唆されている。この戦略は、マウスにおけるアレルゲン特異的CD8TH−1−様免疫の生成のために使用されており、これはこれらのアレルゲンに対するTH−2−様依存性IgE応答の引き続く発達に対して極めて保護的であることが期待される。リポソームの種々の剤型及びアレルゲンが試験されている。
【0040】
例3
選択されたTH−1−様アジュバントとしての微生物細胞壁生成物
我々及び他の研究者は、ある種の微生物細胞壁−誘導アジュバントを用いるマウスの非経口感作が、TH−2−様依存性IgE応答を選択的に抑制し、その一方でTH−1−様依存性IgG応答を刺激することを例示した。フロイント完全アジュバント等のほとんどの一般的に入手可能なアジュバントは、それらが注射部位において組織壊死を起こすためにヒトへの使用には適当ではない。広範囲の種の細菌株からの細胞壁抽出物が、非毒性かつTH−2−様抑制的である調製物を同定するために、抽出物とオボアルブミンとのマウスへの同時注射に基づくスクリーニングプロトコールを使用し、続いてオボアルブミン−特異的IgE及びIgG応答を測定することにより試験されている。マイコバクテリウムツベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis)由来の種々の細胞壁−誘導アジュバント、例えばムラミルジペプチドが、ヒトに使用するための可能性あるアジュバントとして集中的に評価されており、これらは本発明の目的に有用であろうと考えられる。
【0041】
例4
IgE“Tolerogen”としての修飾アレルゲンの使用
幾つかの最近の文献は、接合する脂質“テイル”の付加により人為的に修飾された蛋白質抗原が、クラスIMHC−制限免疫応答を引き出し、その一方で天然の蛋白質が排他的にクラスIIMHC−制限応答を刺激することを示している。先に議論したように、本発明の根本にある原理に従えば、そのような修飾抗原は、該抗原に対するTH−1−様免疫のために選択されねばならず、而してTH−2−様依存性IgE応答の発展を阻害する。アレルゲンとしてのオボアルブミン(OVA)に予め曝されていないマウスを、非経口的に免疫し、続いて天然オボアルブミン、または脂質ドデセン酸との接合により構造的に修飾されたオボアルブミンの何れかにより感作させた。マウスを、0日において対照としての天然オボアルブミン、または脂質接合物(Dodec−OVA)の何れかにより初回感作させ、14及び20日目に採血し、それぞれ25日目に対抗免疫し、39日目に再度採血した。抗オボアルブミンIgE抗体の血清力価を測定し、群中央値の受動皮膚アナフィラキシー単位として表される結果が、表1に示される。
【0042】
【表1】



これらの結果は、TH−1−様免疫を選択する修飾抗原を用いた初回感作が、実際に引き続くTH−2−様依存性IgE応答の発達を阻害することを示している。
【0043】
例5
γδT細胞は吸入アレルゲンに対するIgE応答を制御する
我々は、先に、アレルゲンに曝されていない動物に対するこのアレルゲンの経口または経鼻投与の何れかが、アレルゲンと遭遇する各時点でTH−1−様サイトカイン応答を生じるアレルゲン特異的免疫状態の誘発により、アレルゲン特異的IgE産生に対する活性な保護を引き出しうることを示した(6)。我々の以前の文献は、これらのサイトカインの細胞的供給源が、クラスIMHC−制限CD8T細胞及びクラスIIMHC−制限CD4T細胞の両者であることを同定した。
【0044】
我々はここで、アレルゲン特異的Tγδ細胞が、これらの応答におけるTH−1−様サイトカインの更なる供給源を提供することを示す;類似する結果は、マウスとラットとの両者で得られている。
【0045】
C57BI/6Jマウスを、リン酸緩衝食塩水中にエアロゾル化されたOVAに10日間毎日曝露し、その後、我々の以前の研究(8)に記述したのと同様に使用されるまで、週1回曝露した。これらの動物の部分群への、4.0mg水酸化アルミニウム(AH)アジュバント中の10μgのOVAを用いる腹腔内的(ip)対抗免疫は、正常な初期IgG応答を明らかにしたが、我々の以前の研究に示したように(8)、並行するIgE応答の実際的に完全な抑制を示した。脾臓細胞を、他の(非対抗免疫)“耐性”動物から調製し、3個の試料に分けた。第1の試料は分画しないままであり、第2は、サイトメトリーによりCD8を消極的に減少させ、また第3のものからはサイトメトリー(Epics Elite,Coulter Electronics )による正の選択を使用してCD8細胞を精製し;ここで使用したCD8抗体は、53−6.72クローン(14)由来であり、また使用したサイトメトリー方法は、以前に記述されている(7)。CD8母集団は、99.5%以上の純度であり、CD8母集団は、夾雑するCD8細胞を0.4%未満含んでいた。これらの細胞母集団のip注射後直ちに、動物を、4.0mgのAHアジュバント中の10μgのOVAを用いてip免疫し、14及び21日目に採血した。
【0046】
IgGサブクラスを、抗−IgGサブクラス抗体(Southern Biotechnology)を用いる酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)にて測定した。脾臓細胞は、以前に記述したように調製し、付着細胞を除去するためにナイロンウールを通し、〜85%T細胞を得た。αβT細胞の賦の選択は、H57−597.19(抗−αβTCR)を用いてフローサイトメトリーにより行った(15)。γδT細胞は、約30%の残留細胞から成っており、それ故に1x10個の脾臓細胞は3x10個のγδT細胞を含むであろう。
【0047】
耐性付与マウスからの10個の未分画脾臓細胞の養子的移転は、受容動物におけるオボアルブミンに対するIgE抗体応答を阻害したが、IgGについては阻害しなかった。これらの結果は図2に例示されている。
【0048】
示されるデータは、21日目(初期Ig応答のピーク)における平均±SD(群あたりn=5〜10)であり、標準方法(7)により決定されるlog(IgE及びIgG)抗−OVA力価の逆数で示される。14日目からのデータは、これらの実験結果の解釈を変えることはなかった。
【0049】
全体のIgG抗−OVA応答の強度は、OVAエアロゾルにより予め処置したマウスにおいて有意に変化しなかった。しかしながら、サブクラス−特異的抗−IgG抗体(Southern Biotechnology)を用いたELISAによる個々のIgG分析は、IgE応答の抑制がIgG反応性の減少及びIgG2aの補償的上昇を伴い、その一方IgG2b及びIgGの応答性が本質的に変化しないことを示した。
【0050】
例6
γδT細胞についての投与量−応答の関係
γδT細胞の枯渇は、脾臓細胞のIgG応答を抑制する能力を廃止する。10個の脾臓細胞あたり、およそ3x10個のγδT細胞が存在する。正の選択により>98.5%まで精製された個の個数のγδT細胞を、受容動物に移転させた場合に、IgE応答の抑制の程度は、10個の未分画細胞を受けた動物のものに匹敵する。このことは図3に例示されている。耐性付与動物由来の脾臓細胞を、抗体GL3を用いてγδT細胞を否定的に枯渇させた(16)。
GL3(γδ)細胞を、正の選択により調製した。養子的移転、ip抗原対抗免疫、及び初期IgE及びIgG応答の測定は上述したように行った。これらの結果を図3に示す。
【0051】
投与量−応答実験は、わずか5x10個の正の選択を受けたγδT細胞が、抗−OVA応答のIgE成分の抑制に充分であることを示した。γδT細胞は、OVA−耐性供給者から負の選択により調製された。脾臓細胞は、上述のように調製され、付着細胞を除去するためにナイロンウールを通し、約85%T細胞を得た。αβ細胞の負の選択は、H57−57.19(抗−αβTCR)を用いるフローサイトメトリーにより行われた(17)。γδT細胞は、残る細胞の約30%から成り、而して1x10個の脾臓細胞は3x10個の細胞を含む。これらのγδ細胞は、図4に示されるように、正の選択を受けた細胞により達成される場合に匹敵するIgE応答の抑制を生じた。我々は、OVA−耐性ラット由来のαβT細胞を枯渇した脾臓細胞の養子的移転が、IgEアイソタイプにおける抗原特異的耐性を媒介しうることを示した(17)。
【0052】
例7
γδT細胞−媒介抑制の抗原特異性
γδT細胞−媒介抑制的応答の抗原特異性を試験するために、未分画脾臓細胞または精製したγδT細胞をOVA−耐性マウスから同遺伝子型の受容動物に移転し、次いでこれらにOVAまたはハウスダストダニ由来のDerP1非関連抗原にて対抗免疫した。OVA−耐性ラットからの未分画または正の選択γδT細胞を、移転させ、該受容動物にOVAまたはDerP1にて対抗免疫した。結果を図5に示してある。抗原特異性は、50倍ほど高い細胞投与量においてもこの系で観察された。
【0053】
例8
OVAに対して耐性付与されたマウスにおけるサイトカイン産生
OVAに対して耐性付与されたマウス由来の脾臓細胞に、インビトロにて100μg/mlのOVAを用いて対抗免疫し、これらの細胞の上清をサイトカイン産生の評価のために24時間後に採集した。脾臓細胞は、フローサイトメトリーを使用した負の選択により>99.5%がCD4、CD8、αβまたはγδT細胞である。細胞を、1〜10%のウシ胎児血清を補充し、抗生物質を添加した10−5Mの2−メルカプトエタノールを含むRPMI培地中でマイクロプレートウエルあたり2x10にて培養し、100μg/mlのOVAにて刺激した。上清を24時間後に採集し、アッセイに先立って−20℃にて冷凍した。IL−2分泌は、標準CTLLアッセイにて測定され(6)、IFN−γ及び変換成長因子β1も同様である。TCF−β1は、ELISA(それぞれPharmingen及びGenzyme )にて測定された。細胞は、無関係の対照抗原に対しては応答せず、また非免疫対照動物由来の細胞は、OVAに対する応答において検出可能な水準のサイトカインを分泌しなかった。
【0054】
耐性動物由来の未分画脾臓細胞は、特定の抗原に対する応答において高水準のインターフェロン−γ(IFN−γ)を分泌し、またこの分泌応答は、CD8細胞の枯渇により顕著に減少したが、CD4細胞では減少しなかった。CD8細胞の枯渇は、OVA−特異的インターロイキン−2(IL−2)応答を顕著に増強した。これらの結果は表2に要約され、これは24時間培養上清の複製について平均±標準偏差(SD)を表している。
【0055】
【表2】


【0056】
TGF−β1は、経口投与抗原に対するCD8T細胞−媒介耐性において重要な役割を演じることが示唆されていることから(20)、これも測定された。しかしながら、表1に示されるように、TGF−β1は、実際には耐性の移転における部分群の勢力に関わらず、耐性動物の抗原的刺激の後に全てのT細胞部分群により同様な量をもって産生されることが見い出された。このことは、TGF−β1が中心的役割を演じていないことを示唆している。
【0057】
例9
エアロゾル−曝露マウス由来の脾臓性T細胞のOVAに対する増殖性応答
我々は、OVAエアロゾルに対するマウスの先行する曝露の後の、脾臓性T細胞のOVAに対する応答においてインビボにて増殖する能力をも試験した。αβT細胞の負の選択は、上述したように行われ、100μg/mlのOVAによる刺激後の増殖が測定された。結果は、96時間の[H]−チミジン取り込みの後に複製培養物について測定された平均±SDとして表され、表3に示されている。部分群は、0.5%を越えない夾雑細胞を含んだ。
【0058】
【表3】


【0059】
OVA−曝露動物由来の細胞は、無関係の対照抗原に対する応答において増殖せず、また正常細胞は、OVAの存在下で増殖しなかった。抗原に対する中程度の増殖性応答は、未分画脾臓細胞においてみられ;これはαβT細胞の枯渇により失われ、また、γδ部分群の枯渇により増強された。表2に示されるように、後者の処理は、IL−2産生の大幅な増大をも伴った。このことは、γδ母集団によるαβT細胞増殖の阻害を示唆し、それはインビボγδT細胞枯渇についての報告された効果(21)と矛盾しない。
【0060】
我々は、マウスにおけるこのモデルでのIgE応答の選択的抑制を媒介するエフェクター細胞が、OVAに特異的なCD4CD8γδT細胞であるものと結論づける。表1からは、これらの細胞がOVAに対する応答においてインターフェロン−γを分泌するものと考えられ、これは微生物抗原による刺激に対するγδ細胞応答の報告(22)と矛盾しない。それらは、共にインターフェロン−γの潜在的供給源であるCD4であるナチュラルキラー細胞等の他の母集団から、またはCD8αβT細胞からのインターフェロン−γ放出の引き金をも引くであろう。而して、耐性付与マウスにおける吸入OVAに対するT細胞応答は、TH−1−様のプロフィールを示し、これは、これらの動物において観察される特異的IgE及びIgG産生の選択的抑制のパターン、及び付随する増強されたIgG2a分泌に矛盾しない。我々の結果は、特定IgG抗体を産生する宿主の能力を維持するとともに潜在的に病原性のTH−2−様依存性IgE応答を選択的抑制することによる、肺及び気道における免疫学的なホメオスタシスの維持について、抗原特異的γδT細胞の重要な役割を示唆している。
【0061】
例10
トランスフェクションによるOVAに対するクラスIMHC−制限免疫の誘導
アレルゲンに対するCD8−媒介応答の選択的上昇を生じる免疫が、TH−2−様反応性の発達に対する保護を付与しうることについて、より決定的な証拠を得るために、我々は、クラスIを発現するがクラスIIMHC−応答を発現せず、かつOVAをコードする遺伝子がトランスフェクトされた細胞系を、マウスに接種することにより抗−OVA免疫について初回感作させた。これらの細胞は細胞内的にOVAを産生し、一般には外因性蛋白質を受け付けない細胞質クラスI抗原−生成経路へのOVAの導入を生じる。従って、トランスフェクトされた細胞は、“処理された”OVA複合体またはクラスIMHC抗原と連接してそれらの表面を提示する。これは、受容動物において抗−OVA免疫についてのクラスIMHC−制限CD8T細胞を初回感作する。初回感作された動物及び対照を、天然のOVAを用いて非経口的に対抗免疫し、IgE抗−OVA力価を測定するために14及び30日後に採血した。群中央値の受動皮膚アナフィラキシー単位として表される結果が、表4に示される。
【0062】
【表4】


【0063】
OVA−特異的反応性が、実際に示された。これらの結果は我々の全体に亘る仮定に一致する。
発明が、明確さ及び理解を目的としてある程度詳細に記述されたが、ここに記述された実施態様及び方法の種々の修飾及び変更が、この明細書に開示された発明の概念の範囲から離れることなく行われ得ることは、当業者には明らかであろう。
ここに引用される文献は、以下に列挙され、また参考として組み入れられる。
【0064】
参考文献
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“食物蛋白質抗原に対する免疫応答の制御”
Immunol Today 1987 8 93-96
2.Miller A., Lider O., Roberts A.B., Sporn, M.B.
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3.Zhang Z., Michael J.G.
“経口的に誘導し得る免疫非応答性は、IFN−γ治療により廃絶される”
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4.Holt, P.G 及びSedgwick J.D.
“抗原吸入に続くIgE応答の抑制:浮遊アレルゲンに対する感作を制限する自然のホメオスタシス機構”
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“吸入可溶性蛋白質抗原に対する自然の免疫応答は、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI−制限CD8T細胞−媒介に関連するが、MHCクラスII−制限CD4T細胞−依存性免疫逸脱に関連せずIgE産生の選択的抑制を生じる”
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7.Holt, P.G.,McMenamin, C.及びNelson, D.
“幼児期における吸入アレルゲンに対する初回感作”
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“アトピー性及び非アトピー性幼児における最初の12歳までの間の摂取または吸入されるアレルゲンに対するIgE抗体の出現”
Ped. Allergy Immunol., 1993 4 182-6
9.Finkelman, F.D., Holmes, J., Katona, I.M.,
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10. Pene, J., Rousset, F., Briere, F., Chretien,
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11. Wierenga, E.A., Snoek, M., de Groot, C.,
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13. Chapman, M.D.及びPlatts-Mills, T.A.E.
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14. Fox, P.C.及びSiraganian, R.P.
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15. Stewart, G.A.及びHolts, P.G.
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16. Goodman, T. 及びLefrancois, L.
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18. McMenamin, C. et al.
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19. Dialynas, D.P. et al.
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20. Miller, A., Lider, O., Roberts, A.B. Sporn,
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Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 1992 89 421
21.Kaufmann, S.H.E., Blum, C. 及びYamamoto., S.
Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 1993 90 9620
22.Yamamoto., S. Russ, F., Teixeira, H., Conradt, P.及びKaufmann, S.H.E.
Infect. Immun., 1993 61 2154
【0065】
本発明の好ましい態様は下記の通りである。
1. アレルギー性疾患に感受性の個体におけるアレルギー性疾患の防止方法であって、予め脱感作された個体に、アレルゲン特異的T−ヘルパー−1−様記憶リンパ球の安定な母集団の確立を誘発するために有効なアレルゲンの投与量または形態を投与し、前記リンパ球が、前記アレルゲンに対して特異的なIgE抗体の産生を刺激する原因となるアレルゲン特異的T−ヘルパー−2−様リンパ球の活性または増殖を阻害することを含むアレルギー性疾患の防止方法。
2. 個体がヒトである1に記載の方法。
3. 個体が3カ月〜7歳である1または2に記載の方法。
4. 個体が6カ月〜7歳である3に記載の方法。
5. 個体が9カ月〜7歳である4に記載の方法。
6. アレルゲンが、経口的、経鼻的、口鼻的、直腸内的、皮内的、筋内的または経皮的経路にて投与される先行する何れかに記載の方法。
7. アレルゲンが経口的または経鼻的に投与される6に記載の方法。
8. アレルゲンが、免疫学的アジュバントと共に投与される先行する何れかに記載の方法。
9. 該アジュバントがT−ヘルパー−1−様リンパ球を選択的に刺激するものである8に記載の方法。
10. 該アレルゲンが環境アレルゲンである先行する何れかに記載の方法。
11. 該アレルゲンが、昆虫アレルゲン、花粉、動物のふけ、鳥のふけ、羽毛及びかびからなる群から選択される10に記載の方法。
12. 該アレルゲンが吸入アレルゲンである10または11に記載の方法。
13. 2種以上のアレルゲンが投与される先行する何れかに記載の方法。
14. 環境アレルゲンを、T−ヘルパー−1−様リンパ球を選択的に刺激し得るアジュバント、及び場合により医薬的に許容される担体と共に含有する滅菌組成物。
15. 経口的、経鼻的、口鼻的または直腸内的投与に適合する14に記載の組成物。
16. 該アレルゲンが、昆虫アレルゲン、花粉、動物のふけ、鳥のふけ、羽毛及びかびからなる群から選択される14または15に記載の組成物。
17. 該アレルゲンが、ハウスダストダニ、ねこのふけ、イヌのふけ、トリのふけ、ゴキブリ、草本花粉、木本花粉、羽毛及びかびからなる群から選択される15に記載の組成物。
18. アジュバントが微生物的生成物である14〜17の何れかに記載の組成物。
19. アジュバントがリポソーム、またはアレルゲン−脂質接合物である14〜17の何れかに記載の組成物。
【0066】
さらに本発明の好ましい態様は下記の通りである。
1. 少なくとも1種の環境アレルゲンを、アレルゲン−特異的T−ヘルパー−1−様記憶リンパ球を選択的に刺激し得る医薬的に許容されるアジュバント及び場合により医薬的に許容される担体と共に含有し、前記リンパ球が、前記アレルゲンの少なくとも1種に対して特異的なIgE抗体の産生を刺激する原因となるアレルゲン特異的T−ヘルパー−2−様リンパ球の活性または増殖を阻害し得るものであり、アレルギー性疾患に感受性であるが前記アレルゲンに対して先行して感作されていない個体におけるアレルギー性疾患の防止に際して使用される、滅菌予防用組成物。
2. 経口的、経鼻的、口鼻的または直腸内的投与に適合する1に記載の組成物。
3. 該アレルゲンが、昆虫アレルゲン、花粉、動物のふけ、鳥のふけ、羽毛及びかびからなる群から選択される1または2に記載の組成物。
4. 該アレルゲンが、ハウスダストダニ、ねこのふけ、イヌのふけ、トリのふけ、ゴキブリ、草本花粉、木本花粉、羽毛及びかびからなる群から選択される2に記載の組成物。
5. アジュバントが微生物由来のアジュバントである1〜4の何れかに記載の組成物。
6. アジュバントがリポソーム、またはアレルゲン−脂質接合物である1〜4の何れかに記載の組成物。
7. 該アレルゲンがエアロゾルとして製剤化される1〜6の何れかに記載の組成物。
8. アジュバントがムラミルジペプチドである、1〜7の何れかに記載の組成物。
9. アレルゲン特異的T−ヘルパー−1−様記憶リンパ球の安定な母集団の確立を誘発するために有効な投与量または形態でアレルゲンを使用する方法であって、アレルギー性疾患に感受性であるが前記アレルゲンに対して先行して感作されていない個体におけるアレルギー性疾患の防止に有用な医薬の製造にアレルゲンを使用する方法。
10. 該アレルゲンが環境アレルゲンである9に記載の方法。
11. 該アレルゲンが、昆虫アレルゲン、花粉、動物のふけ、鳥のふけ、羽毛及びかびからなる群から選択される10に記載の方法。
12. 2種以上のアレルゲンが投与される9〜11の何れかに記載の方法。
13. 該アレルゲンが経口的または経鼻的に投与される9〜12の何れかに記載の方法。
14. ヒト用の医薬である9に記載の方法。
15. ヒトが3カ月〜7歳である14に記載の方法。
16. ヒトが6カ月〜7歳である15に記載の方法。
17. ヒトが9カ月〜7歳である16に記載の方法。
18. 該医薬が、経口的、経鼻的、口鼻的、直腸内的、皮内的、筋内的または経皮的経路にて投与されるものである9〜17の何れかに記載の方法。
19. 該アレルゲンが吸入アレルゲンである18に記載の方法。
20. 該医薬が、免疫学的アジュバントを含む9〜19の何れかに記載の方法。
21. 該アジュバントがT−ヘルパー−1−様リンパ球を選択的に刺激するも
のである20に記載の方法。
22. 該アジュバントがムラミルジペプチドである、20または21に記載の方法。
23. 少なくとも1種の環境アレルゲンを、アレルゲン−特異的T−ヘルパー−1−様記憶リンパ球を選択的に刺激し得る医薬的に許容されるアジュバント及び場合により医薬的に許容される担体と共に含有し、前記リンパ球が、前記アレルゲンの少なくとも1種に対して特異的なIgE抗体の産生を刺激する原因となるアレルゲン特異的T−ヘルパー−2−様リンパ球の活性または増殖を阻害し得るものであり、該アレルゲンがエアロゾルとして製剤化される滅菌予防用組成物。
24. 経口的、経鼻的、口鼻的または直腸内的投与に適合する23に記載の組成物。
25. 該アレルゲンが、昆虫アレルゲン、花粉、動物のふけ、鳥のふけ、羽毛及びかびからなる群から選択される23または24に記載の組成物。
26. 該アレルゲンが、ハウスダストダニ、ねこのふけ、イヌのふけ、トリのふけ、ゴキブリ、草本花粉、木本花粉、羽毛及びかびからなる群から選択される24に記載の組成物。
27. アジュバントが微生物由来のアジュバントである23〜26の何れかに記載の組成物。
28. アジュバントがリポソーム、またはアレルゲン−脂質接合物である23〜27の何れかに記載の組成物。
29. アジュバントがムラミルジペプチドである、23〜28の何れかに記載の組成物。
30. 少なくとも1種の環境アレルゲンを、アレルゲン−特異的T−ヘルパー−1−様記憶リンパ球を選択的に刺激し得る医薬的に許容されるアジュバント及び場合により医薬的に許容される担体と共に含有し、前記リンパ球が、前記アレルゲンの少なくとも1種に対して特異的なIgE抗体の産生を刺激する原因となるアレルゲン特異的T−ヘルパー−2−様リンパ球の活性または増殖を阻害し得るものであり、該アジュバントが微生物由来のアジュバントである滅菌予防用組成物。
31. アジュバントがムラミルジペプチドである、30に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】健常及びアトピー性幼児における環境アレルゲンに対する出席後血清IgE応答を示す図である。
【図2】反復曝露によりOVAに対して耐性を付与されたIgE抗−オボアルブミン(OVA)応答の選択的抑制を示す図。
【図3】γδT細胞によるIgE応答の抑制を示す図である。
【図4】OVA−耐性マウスのγδT細胞によるOVA−特異的耐性の投与量−応答分析を示す図である。
【図5】初期IgE応答の抑制におけるγδT細胞の抗原特異性を示す図である。
【出願人】 【識別番号】506024700
【氏名又は名称】テレソン インスチチュート フォア チャイルドヘルス リサーチ
【出願日】 平成18年2月22日(2006.2.22)
【代理人】 【識別番号】100066692
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 皓

【識別番号】100072040
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 肇

【識別番号】100088926
【弁理士】
【氏名又は名称】長沼 暉夫

【識別番号】100097870
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 斎子

【公開番号】 特開2006−182787(P2006−182787A)
【公開日】 平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願番号】 特願2006−44658(P2006−44658)