| 【発明の名称】 |
乾燥物及びその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】黒橋 正晴 【住所又は居所】兵庫県小野市古川町南山1093−1 日本臓器製薬株式会社小野緑園工場内
【氏名】芝山 洋二 【住所又は居所】兵庫県加東郡社町木梨川北山442−1 日本臓器製薬株式会社生物活性科学研究所内
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| 【要約】 |
【課題】本発明の目的は、ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液のカリクレイン様物質産生阻害活性を有する乾燥物及びその製造方法を提供するものである。
【解決手段】本発明は、ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液を有効成分とする固形製剤を製造するために乾燥するとき、乾固する前に糖類を加えて混合し、これを乾燥することを特徴とする本抽出液の乾燥物の製造方法に関する。本製造方法により本抽出液のカリクレイン様物質産生阻害活性を有する乾燥物を得ることができ、また、これを用いて錠剤等の経口用固形製剤を製造することが可能となる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液を乾燥するとき、該抽出液が乾固する前に糖類を加えて混合し、これを乾燥することを特徴とする該抽出液の乾燥物の製造方法。 【請求項2】 ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液を乾燥するとき、該抽出液が乾固する前に糖類を加えて混合し、これを乾燥することを特徴とする該抽出液のカリクレイン様物質産生阻害活性を有する乾燥物の製造方法。 【請求項3】 ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液に糖類を加えて混合し、これを濃縮乾燥する請求項1又は2記載の乾燥物の製造方法。 【請求項4】 ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液を濃縮し、該抽出液が乾固する前に糖類を加えて混合し、これを乾燥する請求項1又は2記載の乾燥物の製造方法。 【請求項5】 該抽出液の濃縮乾燥を10以下のpHにて行うことを特徴とする請求項3又は4記載の乾燥物の製造方法。 【請求項6】 該抽出液の濃縮乾燥をpH8.5乃至9.7にて行うことを特徴とする請求3又は4記載の乾燥物の製造方法。 【請求項7】 糖類として、ブドウ糖、マンノース、アラビノース、キシロース、ガラクトース、ソルボース、乳糖、ショ糖、麦芽糖、ラフィノース、メレチトース、プルラン、デキストリン、β−シクロデキストリン及びデキストランのいずれか1種又は2種以上を用いる請求項1乃至6のいずれか1項に記載の乾燥物の製造方法。 【請求項8】 ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液を乾燥するとき、該抽出液が乾固する前に糖類を加えて混合し、これを乾燥して得られる該抽出液の乾燥物。 【請求項9】 ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液を乾燥するとき、該抽出液が乾固する前に糖類を加えて混合し、これを乾燥して得られる該抽出液のカリクレイン様物質産生阻害活性を有する乾燥物。 【請求項10】 ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液に糖類を加えて混合し、これを濃縮乾燥して得られる請求項8又は9記載の乾燥物。 【請求項11】 ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液を濃縮し、該抽出液が乾固する前に糖類を加えて混合し、これを乾燥して得られる請求項8又は9記載の乾燥物。 【請求項12】 該抽出液の濃縮乾燥を10以下のpHにて行うことを特徴とする請求項10又は11記載の乾燥物。 【請求項13】 該抽出液の濃縮乾燥をpH8.5乃至9.7にて行うことを特徴とする請求10又は11記載の乾燥物。 【請求項14】 糖類として、ブドウ糖、マンノース、アラビノース、キシロース、ガラクトース、ソルボース、乳糖、ショ糖、麦芽糖、ラフィノース、メレチトース、プルラン、デキストリン、β−シクロデキストリン及びデキストランのいずれか1種又は2種以上を用いて得られる請求項8乃至13のいずれか1項に記載の乾燥物。 【請求項15】 ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液を濃縮し、該抽出液が乾固する前に少なくとも1種の糖類を含む賦形剤を加えて練合し、これを造粒乾燥して得られる該抽出液の乾燥顆粒。 【請求項16】 ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液を濃縮し、該抽出液が乾固する前に少なくとも1種の糖類を含む賦形剤を加えて練合し、これを造粒乾燥して得られる該抽出液のカリクレイン様物質産生阻害活性を有する乾燥顆粒。 【請求項17】 ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液を濃縮し、該抽出液が乾固する前に少なくとも1種の糖類を含む賦形剤を加えて練合し、これを造粒乾燥して得られる乾燥顆粒を用いて製造した、該抽出液を有効成分として含有する経口用固形製剤。 【請求項18】 ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液を濃縮し、該抽出液が乾固する前に少なくとも1種の糖類を含む賦形剤を加えて練合し、これを造粒乾燥して得られる乾燥顆粒を用いて製造した、該抽出液を有効成分として含有するカリクレイン様物質産生阻害活性を有する経口用固形製剤。 【請求項19】 錠剤である請求項17又は18記載の経口用固形製剤。 【請求項20】 ワクシニアウイルスを接種した家兎の炎症皮膚抽出液を濃縮し、該抽出液が乾固する前に少なくとも1種の糖類を含む賦形剤を加えて練合し、これを造粒乾燥して得られる乾燥顆粒を用いて製造することによる、該抽出液を有効成分として含有する経口用固形製剤の製造方法。 【請求項21】 ワクシニアウイルスを接種した家兎の炎症皮膚抽出液を濃縮し、該抽出液が乾固する前に少なくとも1種の糖類を含む賦形剤を加えて練合し、これを造粒乾燥して得られる乾燥顆粒を用いて製造することによる、該抽出液を有効成分として含有するカリクレイン様物質産生阻害活性を有する経口用固形製剤の製造方法。 【請求項22】 ワクシニアウイルスを接種した家兎の炎症皮膚抽出液を濃縮し、該抽出液が乾固する前に少なくとも1種の糖類を含む賦形剤を加えて練合し、これを造粒乾燥して得られる乾燥物。 【請求項23】 ワクシニアウイルスを接種した家兎の炎症皮膚抽出液を濃縮し、該抽出液が乾固する前に少なくとも1種の糖類を含む賦形剤を加えて練合し、これを造粒乾燥して得られるカリクレイン様物質産生阻害活性を有する乾燥物。 【請求項24】 ワクシニアウイルスを接種した家兎の炎症皮膚抽出液を濃縮し、該抽出液が乾固する前に少なくとも1種の糖類を含む賦形剤を加えて練合し、これを造粒乾燥して得られる乾燥顆粒。 【請求項25】 ワクシニアウイルスを接種した家兎の炎症皮膚抽出液を濃縮し、該抽出液が乾固する前に少なくとも1種の糖類を含む賦形剤を加えて練合し、これを造粒乾燥して得られるカリクレイン様物質産生阻害活性を有する乾燥顆粒。 【請求項26】 ワクシニアウイルスを接種した家兎の炎症皮膚抽出液を濃縮し、該抽出液が乾固する前に少なくとも1種の糖類を含む賦形剤を加えて練合し、これを造粒乾燥して得られる乾燥顆粒を用いて製造した、該抽出液を有効成分とする経口用固形製剤。 【請求項27】 ワクシニアウイルスを接種した家兎の炎症皮膚抽出液を濃縮し、該抽出液が乾固する前に少なくとも1種の糖類を含む賦形剤を加えて練合し、これを造粒乾燥して得られる乾燥顆粒を用いて製造することによる、該抽出液を有効成分として含有するカリクレイン様物質産生阻害活性を有する経口用固形製剤。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液の乾燥物及び該乾燥物の製造方法に関するものである。 【背景技術】 【0002】 ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液(以下、本抽出液ともいう)は、ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚組織から抽出分離した非蛋白性の活性物質を含有するものである。 【0003】 本抽出液を有効成分として含有する医薬品であるワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液製剤(製品名:ノイロトロピン)は、医療薬日本医薬品集〔2004(第27版)、日本医薬情報センター編、株式会社じほう発行〕の2499-2501頁に記載されているように、腰痛症、頸肩腕症候群、症候性神経痛、肩関節周囲炎、変形性関節症、皮膚疾患(湿疹、皮膚炎、じんま疹)に伴う掻痒、アレルギー性鼻炎、スモン後遺症状の冷感・異常知覚・痛み、帯状疱疹後神経痛等の広範な適応が認められている非常にユニークな製剤であり、皮下、筋注、静注用の注射剤並びに錠剤が医療用医薬品として製造承認を受けて市販されている。 【0004】 本抽出液は生体由来のものであって、単一の有効成分は同定されていない。従って、有効成分の定量は、その生物活性(力価)を検定することによって行われており、具体的には、疼痛閾値が正常動物より低下した慢性ストレス動物であるSARTストレス(反復寒冷負荷)マウスを用いて鎮痛係数を求める生物学的試験法が用いられている(「日薬理誌」、第72巻、第5号、573-584頁、1976年)。つまり、SARTストレスマウスを用いてランダール−セリット(Randall-Selitto)変法に準じて鎮痛試験を行って鎮痛係数を求め、標準品について鎮痛係数より求めたED50値をもってノイロトロピン単位(NU)を規定している。ノイロトロピン注射剤は1mL当りノイロトロピン単位として1.2単位を、ノイロトロピン錠剤は1錠当り4.0ノイロトロピン単位を含有する。 【0005】 本抽出液については、これを有効成分とする医薬品製剤が販売されている日本等において、上記鎮痛活性の定量に加えて、カリクレイン様物質産生阻害活性(以下、KPI活性ともいう)を規定レベル以上有することを確認する力価試験法を行うことによって、薬剤としての品質、有効性をより厳格に担保している。 【0006】 カリクレインは種々の動物の血漿中及び組織中に広範に存在する蛋白質分解酵素であり、カリクレイン・キニン系なる酵素系が知られている。血漿中においては、血液凝固第XII因子の活性化を介して不活性なプレカリクレインが活性型の血漿カリクレインに変換され、この生成した血漿カリクレインが血漿中の高分子キニノーゲンに作用して、ノナペプチドのケミカルメディエーターであるブラジキニンが遊離される。ブラジキニンは知覚神経刺激による強力な発痛、血管拡張による血圧降下、毛細管の透過性上昇による浮腫の発現など種々の作用を有し、発痛、炎症、血流調節に重要な役割を果たしていると考えられている。従って、ブラジキニン遊離抑制作用を有する薬剤は、鎮痛、抗炎症、抗浮腫等の各種薬効を発現することが示されている。 【0007】 本抽出液は、ブラジキニン遊離抑制作用を有することが明らかにされ(Eur. J. Pharmacol., vol.157, No.1, p93-99, 1988)、この薬理活性はカリクレイン様物質の産生阻害作用に基づくものであることが示された。そして、薬剤の血漿カリクレイン様物質産生阻害能をin vitroで定量的に測定可能な方法が開発された(「基礎と臨床」、第20巻、第17号、8889-8895頁、1986年)。 【0008】 本発明は、ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液を有効成分とする経口製剤の規格及び試験方法に規定されているKPI活性を有する最終製品を製造する中間段階で得られる乾燥物及び該乾燥物を製造する方法に関するものである。本抽出液の乾燥物に関しては、下記特許文献1において、減圧下に乾固する等と記載されているのみであり、本抽出液から経口製剤を製造する上で、KPI活性を有する乾燥物を製造するための具体的な方法を開示している従来技術は存しない。 【0009】 【特許文献1】特開昭53−101515号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 本抽出液を錠剤等の経口用固形製剤として製剤化するときには、該抽出液を乾燥する必要がある。ところが、通常行われる濃縮乾燥等によって得られる本抽出液の乾燥物においては、KPI活性が認められないため、最終製剤としてKPI活性を有する錠剤等の固形製剤を製造することはできなかった。 【課題を解決するための手段】 【0011】 出願人会社は、その製造販売していたノイロトロピン注射剤の経口製剤化に長年の研究開発を強いられたが、その際の困難のひとつがKPI活性を有する最終製剤を得ることであった。経験的に一定の方法で製造した最終製剤にKPI活性が存することが見出されノイロトロピン錠剤の開発は成し遂げられたが、出願人はこれをノウハウとして保有してきた。本発明者らは本抽出液に関してKPI活性を有する乾燥物を得るための乾燥方法につき体系的に研究を行った結果、本抽出液を乾固する前に糖類を加えて混合し、これを乾燥することによって、KPI活性を有する本抽出液の乾燥物が得られること、その場合の至適pH等を見出し、本発明を完成させた。 【発明の効果】 【0012】 本発明は、ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液のカリクレイン様物質産生阻害活性を有する乾燥物を提供するものであり、この乾燥物は最終的にKPI活性を有する錠剤、顆粒剤、散剤、細粒等の固形製剤を製造する原料として使用することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 本発明は、ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液のカリクレイン様物質産生阻害活性を有する乾燥物及び該乾燥物の製造方法に関する。具体的には、本抽出液を乾燥するとき、乾固する前に糖類を加えて混合し、これを乾燥することを特徴とする本抽出液の乾燥物の製造方法に関する。該製造方法により、KPI活性を有する本抽出液の乾燥物を得ることができ、これを用いて最終的にKPI活性を保持した錠剤等の固形製剤を製造することが可能である。 【0014】 ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液等の本抽出液は、後述する方法によって製造することができるが、本発明方法は得られた本抽出液を乾燥する際に、本抽出液が乾固する前に糖類を加えて混合し、これを乾燥するのが特徴である。糖類とは、ブドウ糖、マンノース、アラビノース、キシロース、ガラクトース、ソルボース等の単糖類、乳糖、ショ糖、麦芽糖、ラフィノース、メレチトース等のオリゴ糖類、プルラン、デキストリン、β−デキストリン、デキストラン等の多糖類などが挙げられる。添加する糖類は上記のうち1種類を用いてもよいし、或いは2種以上を組合せて使用することもできる。多糖類については水に不溶なものは本発明には不適当であり、水に可溶な多糖類が本発明において使用可能である。なお、水に不溶な多糖類とは、日本薬局方(第十四改正)の通則23における「ほとんど溶けない」に該当するものであり、例えば結晶セルロースやデンプン等が挙げられる。 【0015】 糖類の添加量は、使用する糖類の種類、抽出液の濃度等によって適宜設定可能であるが、下記実施例1の被験抽出液で乳糖を使用する場合には、好ましくは0.1重量%以上が好ましく、再現性よく高いKPI活性を有する本抽出液の乾燥物を得るためには、0.5重量%以上の乳糖を添加するのがより好ましい。 【0016】 乾燥手段としては、通常の製剤調製において使用されている濃縮乾燥が利用できる。例えば、温和な条件で濃縮する手段としては、あまり高温に加熱せずに、温浸下(35〜45℃)で減圧して水分を留去して除去する減圧乾燥を挙げることができる。また、本抽出液又はその濃縮液に上記糖類を含む賦形剤等を加え練合後、造粒乾燥して顆粒状の本発明乾燥物を得ることもできる。本抽出液の濃縮においては、溶液のpHを10以下で行うのが好ましく、高いKPI活性を有する本抽出液の乾燥物を得るためには、pHを8.5乃至9.7に調整して行うのがより好ましい。 【0017】 本発明における糖類の添加は、本抽出液に最初から添加してもよいし、ある程度濃縮してから添加してもよいが、通常の固形製剤製造の場合のように、乾固した後に添加することによっては、最終的に製造される乾燥物にKPI活性が得られない。本発明に基づき錠剤等の固形製剤を製造する際には種々の添加剤を用いて製剤化できるが、例えば、日本薬局方(第十四改正)の製剤総則に記載されているように、上記糖類を添加して濃縮乾燥させた本抽出液の乾燥物をそのまま、又は賦形剤、結合剤、崩壊剤若しくはその他の適当な添加剤を加えて均等に混和したものを、適当な方法で顆粒状とした後、滑沢剤などを加え圧縮成型する方法、或いは混和したものを直接圧縮成型する方法などが挙げられる。また、本抽出液をある程度濃縮した時点で、上記糖類及びその他の賦形剤、結合剤、崩壊剤等の添加剤を加えて均等に混合して練合し、適当な方法で造粒乾燥した乾燥物を、滑沢剤などを加えて圧縮成型する方法でも本抽出液の錠剤化を実施できる。そして、必要に応じて着色剤、矯味剤などを加えることができ、適当なコーティング剤で剤皮を施すこともできる。 【0018】 本発明乾燥物の製造に用いられる本抽出液は、ワクシニアウイルスをウサギの皮膚に接種して発痘した炎症皮膚組織を破砕し、抽出溶媒を加えて組織片を除去した後、除蛋白処理を行い、これを吸着剤に吸着させ、次いで有効成分を溶出することによって得ることができる。 【0019】 ここで、ウサギはウサギ目に属するものすべてを包含している。すなわち、ウサギは、例えば、アナウサギ(カイウサギ)、ノウサギ(ニホンノウサギ)、ナキウサギ、ユキウサギ等のいずれであってもよく、日本では過去から飼育され家畜又は実験用動物として繁用されている家兎(イエウサギ)と呼ばれるものが用いやすい。 【0020】 本抽出液は、例えば、以下の工程で製造される。 (a)ワクシニアウイルスを接種し発痘させたウサギの皮膚組織を採取し、発痘組織を破砕し、水、フェノール水、生理食塩液又はフェノール加グリセリン水等の抽出溶媒を加えた後、濾過又は遠心分離することによって抽出液(濾液又は上清)を得る。 (b)前記抽出液を酸性のpHに調整して加熱し、除蛋白処理する。次いで除蛋白した溶液をアルカリ性に調整して加熱した後に濾過又は遠心分離する。 (c)得られた濾液又は上清を酸性とし活性炭、カオリン等の吸着剤に吸着させる。 (d)前記吸着剤に水等の抽出溶媒を加え、アルカリ性のpHに調整し、吸着成分を溶出することによってワクシニアウイルス接種炎症組織抽出液を得ることができる。その後、適宜中性付近のpHに調整して、製剤用原体とすることもできる。 上記各工程を更に詳しく述べると次のとおりである。 【0021】 (a)について ワクシニアウイルスを家兎等のウサギに接種して発痘させた炎症皮膚組織を採取して破砕し、その1乃至5倍量の抽出溶媒を加えて乳化懸濁液とする。抽出溶媒としては、蒸留水、生理食塩水、弱酸性乃至弱塩基性の緩衝液などを用いることができ、グリセリン等の安定化剤、フェノール等の殺菌・防腐剤、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム等の塩類などを適宜添加してもよい。この時、凍結融解、超音波、細胞膜溶解酵素又は界面活性剤等の処理により細胞組織を破壊して抽出を容易にすることもできる。 【0022】 (b)について 得られた乳状抽出液を濾過又は遠心分離等によって組織片を除去した後、除蛋白処理を行う。除蛋白操作は、通常行われている公知の方法により実施でき、加熱処理、蛋白質変性剤、例えば、酸、塩基、尿素、グアニジン、アセトン等の有機溶媒などによる処理、等電点沈澱、塩析等の方法を適用することができる。次いで、不溶物を除去する通常の方法、例えば、濾紙(セルロース、ニトロセルロース等)、グラスフィルター、セライト、ザイツ濾過板等を用いた濾過、限外濾過、遠心分離等により析出してきた不溶蛋白質を除去する。 【0023】 (c)について こうして得られた有効成分含有抽出液を、塩酸、硫酸、臭化水素酸等の酸を用いて酸性、好ましくはpH3.5乃至5.5に調整し、吸着剤への吸着操作を行う。使用可能な吸着剤としては、活性炭、カオリン等を挙げることができ、抽出液中に吸着剤を添加し撹拌するか、抽出液を吸着剤充填カラムに通過させて、該吸着剤に有効成分を吸着させることができる。抽出液中に吸着剤を添加した場合には、濾過や遠心分離等によって溶液を除去して、有効成分を吸着させた吸着剤を得ることができる。 【0024】 (d)について 吸着剤より有効成分を溶出(脱離)させるには、前記吸着剤に溶出溶媒を加え、室温又は適宜加熱して或いは撹拌して溶出し、濾過や遠心分離等の通常の方法で吸着剤を除去して達成できる。用いられる溶出溶媒としては、塩基性の溶媒、例えば塩基性のpHに調整した水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等又はこれらの適当な混合溶液を用いることができ、好ましくはpH9乃至12に調整した水を使用することができる。 【0025】 このようにして得られた抽出液(溶出液)は、製剤用原体や医薬品製剤として好ましい形態に適宜調製することができる。例えば、溶液のpHを中性付近或いは適当なpHに調整して製剤用原体とすることもできる。 【実施例】 【0026】 以下に、本抽出液の製造方法の実例を示す。 参考例1 健康な成熟家兎の皮膚にワクシニアウイルスを接種し、発痘した皮膚を剥出し、これを破砕してフェノール水を加えた。次いでこれを加圧濾過し、得られた濾液を塩酸でpH5に調整した後、90〜100℃で30分間加熱処理した。濾過して除蛋白した後、水酸化ナトリウムでpH9とし、さらに90〜100℃で15分間加熱処理した後濾過した。濾液を塩酸で約pH4に調整し、2%の活性炭を加えて2時間撹拌した後、遠心分離した。採取した活性炭に水を加え、水酸化ナトリウムでpH10とし、60℃で1.5時間撹拌した後、遠心分離して上清を得た。遠心分離で沈澱した活性炭に再び水を加え、水酸化ナトリウムでpH11とし、60℃で1.5時間撹拌した後、遠心分離して上清を得た。両上清を合せて、塩酸で中和し、本抽出液を得た。 【0027】 参考例2 健康な成熟家兎の皮膚にワクシニアウイルスを接種し感染させた後、発痘した皮膚を無菌的に剥出しこれを細切した後フェノール加グリセリン水を加え、ホモゲナイザーで磨砕し乳状とした。次いでこれを濾過し、得た濾液を塩酸で弱酸性(pH4.5乃至5.5)に調整した後、100℃で加熱処理し濾過した。濾液を水酸化ナトリウムで弱アルカリ性(pH8.5乃至10.0)とし、さらに100℃で加熱処理した後濾過した。濾液を塩酸で約pH4.5とし、約1.5%の活性炭を加えて1乃至5時間撹拌した後濾過した。濾取した活性炭に水を加え水酸化ナトリウムでpH9.4乃至10に調整し、3乃至5時間撹拌した後、濾過した。濾液を塩酸で中性付近に中和した。 【0028】 参考例3 健康な成熟家兎の皮膚にワクシニアウイルスを接種し、活性化させた後、活性化した皮膚を無菌的に剥出し、これを細切して水を加え、ホモゲナイザーで磨砕し乳状物とした。次いでこれを加圧濾過し、得られた濾液を塩酸でpH5.0に調整した後、流通蒸気下100℃で加熱処理した。濾過して除蛋白した後、水酸化ナトリウムでpH9.1とし、さらに100℃で加熱処理した後濾過した。濾液を塩酸でpH4.1に調整し、活性炭2%を加えて2時間撹拌した後濾過した。濾液は更に活性炭5.5%を加えて2時間攪拌した後濾過した。最初に濾取した活性炭に水を加え、水酸化ナトリウムでpH9.9とし、60℃で1.5時間撹拌した後濾過した。最初の活性炭及び次の活性炭に水を加え、水酸化ナトリウムでpH10.9とし、60℃で1.5時間撹拌した後濾過した。濾液を合わせ塩酸で中和した後、分子量100の膜を用いた電気透析法で脱塩処理を行った。 【0029】 KPI活性測定法 血漿カリクレイン様物質産生に対する被験物質の阻害活性(KPI活性)を、文献記載の方法に従って測定した(「基礎と臨床」、第20巻、第17号、8889-8895頁、1986年)。即ち、同文献8890頁に詳述されているように、被験溶液と生理食塩水で希釈したヒト正常血漿を混合し、これにカオリン懸濁液を加えて血漿カリクレインの産生反応を開始させ、一定時間後にリマ豆トリプシンインヒビター(LBTI)等の活性型血液凝固第XII因子に対する特異的阻害剤を添加してカリクレインの産生反応を停止させた後、産生したカリクレインを発色性合成基質(S-2302、chromogenix社製)を用いて定量した。合成基質S-2302はカリクレインによって発色性のp-ニトロアニリンを遊離するため、遊離してくるp-ニトロアニリン量を405nmにおける吸光度で測定することにより産生したカリクレインの量(活性量)を測定できる。被験物質のKPI活性は、被験物質を添加しない群(コントロール)と被験物質添加群の吸光度差を求めることによって判定することができる。 【0030】 なお、KPI活性を有するか否かの判断基準は適宜設定できるが、ノイロトロピン製剤にあっては、この吸光度差が0.1以上であることが規格とされており、本発明乾燥物においても、当該基準が用いられている。 【0031】 実施例1 上記参考例1に従って製造したワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液の乾固物重量を測定し、1mg/mL、pH9.5となるように被験抽出液を調製した。該被験抽出液100mLを量りとり、約40℃の温浸下で減圧下濃縮乾燥を行った。乾燥物に水を加えて溶かし1mg/mLの被験溶液とした。この被験溶液0.2mLと0.5M塩化ナトリウム溶液0.2mLを混和し、以下、上述したKPI活性測定法の試験操作に従って測定試験を実施した。表1は被験抽出液をそのまま濃縮乾燥した場合と乳糖を1重量%となるように添加して調製した被験抽出液を濃縮乾燥した場合の試験結果(n=2)の一例を示すものである。なお、コントロールは水である(以下、同じ)。 【0032】 【表1】
【0033】 上記試験系は、産生したカリクレインの酵素活性によって発色性合成基質から遊離するp-ニトロアニリン量を吸光度によって測定する系である。コントロールにおいては一定量のカリクレインが産生しており、表1上段のような吸光度が測定されるが、反応系中にカリクレイン産生を阻害する被験物質が存在すると、カリクレイン産生の低下に伴い、測定される吸光度は低値を示す。即ち、コントロールとの吸光度差が大きい方が、被験物質のKPI活性が高いことを示す。表1に示したように、乳糖を添加しないで濃縮乾燥した被験溶液の吸光度はコントロールと変わらず、全くKPI活性は認められなかった。これに対して、乳糖を添加して濃縮乾燥した被験溶液では、明らかなKPI活性が測定されることから、乳糖の添加によってKPI活性を有する本抽出液の乾燥物を製造できることが示された。 【0034】 実施例2 実施例1と同様に被験抽出液に乳糖を添加して濃縮乾燥した場合と被験抽出液の濃縮乾燥後に乳糖を添加した場合を比較した。また、ブランクとして乳糖溶液についても測定した。結果の一例を表2に示す。表2に示した結果のとおり、乳糖を添加しておき濃縮乾燥した被験溶液のみがKPI活性を示し、被験抽出液を濃縮乾燥後に乳糖を添加した場合及び乳糖のみの溶液の場合にはKPI活性は全く認められなかった。 【0035】 【表2】
【0036】 実施例3 乳糖以外の添加剤を実施例1と同様に被験抽出液に加え濃縮乾燥した結果を表3に示す。ブドウ糖(単糖類)やプルラン(多糖類)などの糖類を添加(いずれも1重量%)して乾燥したものはKPI活性を示したが、リン酸水素カルシウム等の糖類以外の賦形剤や水に不溶の多糖類である結晶セルロースやドウモロコシデンプンを用いた場合には、KPI活性は認められなかった。 【0037】 【表3】
【0038】 実施例4 上記実施例で記載した糖類以外の糖類を用いて実施例1と同様に行った結果を表4に示す(いずれも被験抽出液の1重量%を添加)。また、乳糖を0.5重量%、0.1重量%添加した場合の結果も同表に示した。表4は複数回の試験結果をまとめたものであり(コントロールの吸光度値:0.306〜0.363)、被験溶液の吸光度並びにそれとコントロールとの吸光度差(KPI活性)を示す。 【0039】 【表4】
【0040】 実施例5 実施例1と同様に、本抽出液の乾固物重量を測定し、1mg/mL、pH8.8乃至9.3となるように被験抽出液を調製した。該被験抽出液10Lを量りとり、約40℃の濃縮液温度で維持されるように温度調節しつつ減圧下にて濃縮を行った。200mL (50mg/mL)まで濃縮し、これに200gの乳糖及びその他の賦形剤や崩壊剤など約160gを添加し練合後、造粒乾燥した。こうして得られた乾燥顆粒は、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤を加え圧縮成型して錠剤を製造する等、経口用固形製剤にすることができる。 【0041】 本抽出液の乾固物重量50mgを含有すると計算される量の上記乾燥顆粒を分け取り、50mLのトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を加えてかき混ぜた。次いでメンブランフィルターを用いて濾過し、濾液を被験溶液として実施例1と同様にKPI活性を測定した。また、上記において乳糖等の賦形剤を添加する前の50mg/mL濃縮液を分取し、水で1mg/mLの濃度に希釈した被験溶液についても測定した。結果の一例を表5に示す。表5に示したとおり、本抽出液の濃縮液及びこの濃縮液に乳糖等の賦形剤を加えて練合後に造粒乾燥して製した乾燥顆粒のいずれもKPI活性を有していた。 【0042】 【表5】
【0043】 実施例6 実施例1と同様に被験抽出液に乳糖を添加して濃縮乾燥するとき、被験抽出液を種々のpHに調整して試験を行った結果の一例を表6に示す。被験抽出液のpHが10.5の場合にはKPI活性がほとんど認められず、pH9.5から酸性になるに従って乾燥物のKPI活性は徐々に低下した。 【0044】 【表6】
【0045】 処方例1 実施例5記載の方法と同様にして本抽出液の乾燥顆粒を製造し、これを圧縮成型して錠剤を製造した。即ち、1錠中ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液の乾燥物4mg、乳糖104mg、結晶セルロース40mg、カルボキシメチルセルロースカルシウム20mgの成分量となるように各成分を練合後、造粒乾燥した。この乾燥顆粒にステアリン酸マグネシウム(1錠中2mgの含有量)を添加して混合し、打錠機で圧縮成型して錠剤を製造した。 【0046】 処方例2 処方例1と同様に、1錠中ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液の乾燥物5mg、乳糖80mg、リン酸水素カルシウム20mg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース42mg、ヒドロキシプロピルセルロース2mg、ステアリン酸マグネシウム1mgを含有する錠剤を製造した。この素錠を、コーティング液(ヒドロキシプロピルセルロース40g、10gのマクロゴール6000、酸化チタン3g、タルク5g、レーキ色素0.5g、精製水941.5gを混合したもの)でスプレーコーティングしてフィルムコーティング錠を製造した。 【0047】 その他、本発明乾燥物は、適宜、散剤、顆粒剤、カプセル剤等の経口用固形製剤に加工することができる。 【産業上の利用可能性】 【0048】 本発明は、ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚抽出液のカリクレイン様物質産生阻害活性を有する乾燥物を提供するものであり、この乾燥物は錠剤等の固形製剤の製剤化に利用することができる。KPI活性を有する本抽出液の乾燥物の製造方法は、本抽出液を有効成分とする経口用固形製剤の製造において本質的に重要である。本発明は、本抽出液を有効成分としKPI活性を有する経口用固形製剤の提供を可能とする画期的な発明である一方、本抽出液を乾固する前に所定の条件で糖類を加えて混合し、これを乾燥するという簡便な操作で実施可能であり、特殊な添加剤等が必要としない経済的にも極めて有用な方法である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000231796 【氏名又は名称】日本臓器製薬株式会社 【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町2丁目1番2号
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| 【出願日】 |
平成17年4月28日(2005.4.28) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100125427 【弁理士】 【氏名又は名称】藤井 郁郎
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| 【公開番号】 |
特開2006−182754(P2006−182754A) |
| 【公開日】 |
平成18年7月13日(2006.7.13) |
| 【出願番号】 |
特願2005−132070(P2005−132070) |
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