| 【発明の名称】 |
脳血管障害を伴うアルツハイマー病治療薬 |
| 【発明者】 |
【氏名】荒井 啓行
【氏名】丸山 将浩
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| 【要約】 |
【課題】脳血管障害を伴うアルツハイマー病治療薬の提供。
【解決手段】コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物又はその薬理学的に許容できる塩又はそれらの溶媒和物と加味温胆湯又はその構成生薬の少なくとも一種とを併用する、脳血管障害を伴うアルツハイマー病治療薬。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物、その薬理学的に許容できる塩又はそれらの溶媒和物と、加味温胆湯又はその構成生薬の少なくとも一種とを含む、脳血流改善薬。 【請求項2】 脳が前頭葉である請求項1記載の改善薬。 【請求項3】 コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物、その薬理学的に許容できる塩又はそれらの溶媒和物と、加味温胆湯又はその構成生薬の少なくとも一種とを含む、脳血管障害を伴う認知機能障害の改善薬。 【請求項4】 コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物、その薬理学的に許容できる塩又はそれらの溶媒和物と、加味温胆湯又はその構成生薬の少なくとも一種とを含む、脳血管障害を伴うアルツハイマー病治療薬。 【請求項5】 コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物が、下記一般式で表される環状アミン誘導体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の改善薬又は治療薬。 【化1】
〔式中、Jは、(a)置換若しくは無置換の次に示す基;(1)フェニル基、(2)ピリジル基、(3)ピラジル基、(4)キノリル基、(5)シクロヘキシル基、(6)キノキサリル基又は(7)フリル基、 (b)フェニル基が置換されていてもよい次の群から選択された基から誘導される一価又は二価の基;(1)インダニル、(2)インダノニル、(3)インデニル、(4)インデノニル、(5)インダンジオニル、(6)テトラロニル、(7)ベンズスベロニル、(8)インダノリル、(9)式 【化2】
(c)環状アミド化合物から誘導される一価の基、 (d)低級アルキル基、又は (e)式 R1−CH=CH−(式中、R1は水素原子又は低級アルコキシカルボニル基を意味する) で示される基を意味する。 【化3】
(式中、R3は水素原子、低級アルキル基、アシル基、低級アルキルスルホニル基、置換されてもよいフェニル基又はベンジル基を意味する)で示される基、 【化4】
水素原子又はメチル基を意味する。}、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH2)c−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基、式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基、 【化5】
で示される基、式−NH−で示される基、式−O−で示される基、式−S−で示される基、ジアルキルアミノアルキルカルボニル基又は低級アルコキシカルボニル基を意味する。 Tは窒素原子又は炭素原子を意味する。 【化6】
Kは水素原子、置換若しくは無置換のフェニル基、フェニル基が置換されてもよいアリールアルキル基、フェニル基が置換されてもよいシンナミル基、低級アルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基、アダマンタンメチル基、フリルメチル基、置換されてもよいシクロアルキル基、低級アルコキシカルボニル基又はアシル基を意味する。 qは1〜3の整数を意味する。 【化7】
【請求項6】 Jが置換若しくは無置換の(1)フェニル基、(2)ピリジル基、(3)ピラジル基、(4)キノリル基、(5)シクロヘキシル基、(6)キノキサリル基及び(7)フリル基からなる群から選択された一つの基である、請求項5記載の改善薬又は治療薬。 【請求項7】 Jが環状アミド化合物から誘導される一価の基である、請求項5記載の改善薬又は治療薬。 【請求項8】 コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物が、下記一般式で表される環状アミン誘導体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の改善薬又は治療薬。 【化8】
〔式中、 J1はフェニル基が置換されていてもよい次の群から選択された基から誘導される一価又は二価の基;(1)インダニル、(2)インダノニル、(3)インデニル、(4)インデノニル、(5)インダンジオニル、(6)テトラロニル、(7)ベンズスベロニル、(8)インダノリル、(9)式 【化9】
【化10】
(式中、R3は水素原子、低級アルキル基、アシル基、低級アルキルスルホニル基、置換されてもよいフェニル基又はベンジル基を意味する)で示される基、 【化11】
水素原子又はメチル基を意味する。}、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH2)c−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基、式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基、 【化12】
で示される基、式−NH−で示される基、式−O−で示される基、式−S−で示される基、ジアルキルアミノアルキルカルボニル基又は低級アルコキシカルボニル基を意味する。 Tは窒素原子又は炭素原子を意味する。 【化13】
Kは水素原子、置換若しくは無置換のフェニル基、フェニル基が置換されてもよいアリールアルキル基、フェニル基が置換されてもよいシンナミル基、低級アルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基、アダマンタンメチル基、フリルメチル基、置換されてもよいシクロアルキル基、低級アルコキシカルボニル基又はアシル基を意味する。 qは1〜3の整数を意味する。 【化14】
【請求項9】 Bが式 【化15】
水素原子又はメチル基を意味する。〕で示される基、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH2)c−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基又は式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基である、請求項8記載の治療薬。 【請求項10】 コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物が、下記一般式で表される環状アミン誘導体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の改善薬又は治療薬。 【化16】
〔式中、 J1はフェニル基が置換されていてもよい次の群から選択された基から誘導される一価又は二価の基;(1)インダニル、(2)インダノニル、(3)インデニル、(4)インデノニル、(5)インダンジオニル、(6)テトラロニル、(7)ベンズスベロニル、(8)インダノリル、(9)式 【化17】
【化18】
水素原子又はメチル基を意味する。〕で示される基、式−CH=CH−(CH)nR2−(式中、nは0又は1〜10の整数を意味し、R2は水素原子又はメチル基を意味する)で示される基、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH2)c−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基又は式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基を意味する。 Kは水素原子、置換若しくは無置換のフェニル基、フェニル基が置換されてもよいアリールアルキル基、フェニル基が置換されてもよいシンナミル基、低級アルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基、アダマンタンメチル基、フリルメチル基、置換されてもよいシクロアルキル基、低級アルコキシカルボニル基又はアシル基を意味する。〕 【請求項11】 Kが置換若しくは無置換のアリールアルキル基又はフェニル基である、請求項10記載の改善薬又は治療薬。 【請求項12】 J1がインダノニルから誘導される一価の基及び二価の基、インデニル並びにインダンジオニルからなる群から選択される一つの基である、請求項10又は11記載の改善薬又は治療薬。 【請求項13】 J1が置換基として炭素数1〜6の低級アルキル基又は炭素数1〜6の低級アルコキシ基を有してもよいインダノニル基である、請求項10又は11記載の改善薬又は治療薬。 【請求項14】 環状アミン誘導体が、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イリデニル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5−メトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5,6−メチレンジオキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−(m−ニトロベンジル)−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−シクロヘキシルメチル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−(m−フルオロベンジル)−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−(3−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)プロピル)ピペリジン、1−ベンジル−4−((5−イソプロポキシ−6−メトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イリデニル)プロペニルピペリジン、及び1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1,3−インダンジオン)−2−イル)プロペニルピペリジンからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項5記載の改善薬又は治療薬。 【請求項15】 環状アミン誘導体が、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジンである、請求項5記載の改善薬又は治療薬。 【請求項16】 コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物が、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン・塩酸塩である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の改善薬又は治療薬。 【請求項17】 コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物が、ガランタミン、タクリン、フィゾスチグミンまたはリバスチグミンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の改善薬又は治療薬。 【請求項18】 加味温胆湯の構成生薬が、少なくとも遠志を含むものである請求項1〜17のいずれか1項に記載の改善薬又は治療薬。 【請求項19】 請求項1〜17のいずれか1項記載のコリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物、その薬理学的に許容できる塩又はそれらの溶媒和物と、加味温胆湯又はその構成生薬の少なくとも一種とを患者に投与することを特徴とする、脳血管障害を伴うアルツハイマー病治療法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、脳血管障害を伴うアルツハイマー病治療薬に関する。 【背景技術】 【0002】 コリンエステラーゼとは、生体内に広く分布し、神経伝達物質であるアセチルコリンなどのコリンエステル類を加水分解する酵素の総称である。そして、当該酵素活性は、フィゾスチグミン(10-5mol/L)で阻害される。コリンエステラーゼの種類には、神経組織、赤血球、筋肉などに存在するアセチルコリンを特異的に分解する真性(true)コリンエステラーゼ、及び血清、肝臓、膵臓などに存在するコリンエステルのほか、種々のエステルも分解する偽性(pseudo)コリンエステラーゼの二種類が知られている。前者は、アセチルコリンエステラーゼ(EC3.1.1.7)と称され、アセチルコリンを他のコリンエステルより速やかに加水分解し、かつ基質阻害を受ける性質を有する。一方、後者はアセチルコリン以外の多くのコリンエステルや、コリンを含まないエステル類をも加水分解する性質を持つ。 【0003】 コリンエステラーゼ阻害剤は、コリンエステラーゼによる生体内のアセチルコリンの加水分解を抑制し、シナプス間隙のアセチルコリンを増加させ、アセチルコリン伝達を増加させる作用を有する。特に、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤である塩酸ドネペジルは、脳内におけるアセチルコリンの量を増加し、アルツハイマー型老年性痴呆の治療薬として広く用いられている(特許文献1)。 【0004】 ところで、加味温胆湯は、古くは江戸時代の日本の医学書である衆方規矩に記載された漢方である。ストレス、胃腸機能の低下、胃腸虚弱などによって、神経過敏または精神不安となり、寝つきが悪い、早く目が覚める、眠りが浅いなどの不眠症状や、悪心、憂鬱、動悸、嘔吐などのうつ症状を伴う患者の治療に用いられている。加味温胆湯の13構成生薬(半夏、陳皮、生姜、竹茹、枳実、遠志、酸棗仁、茯苓、人参、甘草、大棗、地黄、玄参)のうち,遠志(おんじ)には、コリン作動性ニューロンにおいて、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)の活性増強作用があると考えられている。 【0005】 過去の研究から、塩酸ドネペジルがアセチルコリン分解系であるアセチルコリンエステラーゼを競合的に阻害することによって、また加味温胆湯はアセチルコリン合成系であるアセチルコリン合成酵素(ChAT)の発現をmRNAレベルで高めることによって、シナプス間隙におけるアセチルコリン濃度を上昇させることが知られている。そして、増加したアセチルコリンによって、神経伝達機能が高められるために、アルツハイマー病(AD)患者の認知機能を改善する効果を示すことが知られている(非特許文献1〜3)。しかし、アセチルコリンの分解系を阻害することによるフィードバック機構が存在するため、アセチルコリン合成が低下し、効率よくアセチルコリン濃度を上昇させられないことが動物実験で証明されている(非特許文献4)。 【特許文献1】特許第2578475号公報 【非特許文献1】Yabe T, et al. Phytomedicine 2:41-46, 1995 【非特許文献2】Wang Q, et al. Phytomedicine 7:253-258, 2000 【非特許文献3】Suzuki T, et al. Alzheimer's Rep. 4: 177-182, 2001. 【非特許文献4】Somani SM, et al. Pharmacol Biochem Behav. 39(2):337-43, 1991. 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、脳血管障害を伴うアルツハイマー病の治療薬の提供を目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者は、コリンエステラーゼ(ChE)阻害剤によるアセチルコリン(ACh)の濃度上昇及び加味温胆湯によるアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)活性上昇を介したAChの濃度上昇というこれまでの知見を組み合わせて、両メカニズムを同時に作動させることにより、シナプス間隙におけるACh濃度を高めると、認知機能を一層改善するという仮説を構築し、検討を行った。本発明者は、認知機能をADAS-cog.によって測定し、また脳機能を脳血流シンチグラムによって測定し、併用療法の効果を単独療法と比較し検討した。その結果、ChE阻害剤と加味温胆湯の両者を併用または配合すると、認知機能を改善する効果や前頭葉で脳血流を改善する効果を示すことが明らかとなった。大脳基底核梗塞は白質病変によって最も血流が低下する部分であるため、ChE阻害剤と加味温胆湯の両者を併用または配合することが、脳血管障害を伴う脳機能障害、特に脳血管障害を伴うアルツハイマー病の治療に有効であることが示され、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。 【0008】 (1)コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物、その薬理学的に許容できる塩又はそれらの溶媒和物と、加味温胆湯又はその構成生薬の少なくとも一種とを含む、脳血流改善薬。 前記脳は、例えば前頭葉が挙げられる。 【0009】 (2)コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物、その薬理学的に許容できる塩又はそれらの溶媒和物と、加味温胆湯又はその構成生薬の少なくとも一種とを含む、脳血管障害を伴う認知機能障害の改善薬。 【0010】 (3)コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物又はその薬理学的に許容できる塩と、加味温胆湯又はその構成生薬の少なくとも一種とを含む、脳血管障害を伴うアルツハイマー病治療薬。 【0011】 前記改善薬又は治療薬において使用されるコリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物として、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物を挙げることができる。 前記塩は、塩酸塩であることが好ましい。前記化合物としては、下記一般式で表される環状アミン誘導体を例示することができる。 【化19】
〔式中、 Jは(a)置換若しくは無置換の次に示す基;(1)フェニル基、(2)ピリジル基、(3)ピラジル基、(4)キノリル基、(5)シクロヘキシル基、(6)キノキサリル基又は(7)フリル基、 (b)フェニル基が置換されていてもよい次の群から選択された基から誘導される一価又は二価の基;(1)インダニル、(2)インダノニル、(3)インデニル、(4)インデノニル、(5)インダンジオニル、(6)テトラロニル、(7)ベンズスベロニル、(8)インダノリル、(9)式 【化20】
(c)環状アミド化合物から誘導される一価の基、 (d)低級アルキル基、又は (e)式 R1−CH=CH−(式中、R1は水素原子又は低級アルコキシカルボニル基を意味する) で示される基を意味する。 【化21】
(式中、R3は水素原子、低級アルキル基、アシル基、低級アルキルスルホニル基、置換されてもよいフェニル基又はベンジル基を意味する)で示される基、 【化22】
水素原子又はメチル基を意味する。}、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH2)c−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基、式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基、 【化23】
で示される基、式−NH−で示される基、式−O−で示される基、式−S−で示される基、ジアルキルアミノアルキルカルボニル基又は低級アルコキシカルボニル基を意味する。 Tは窒素原子又は炭素原子を意味する。 【化24】
Kは水素原子、置換若しくは無置換のフェニル基、フェニル基が置換されてもよいアリールアルキル基、フェニル基が置換されてもよいシンナミル基、低級アルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基、アダマンタンメチル基、フリルメチル基、置換されてもよいシクロアルキル基、低級アルコキシカルボニル基又はアシル基を意味する。 qは1〜3の整数を意味する。 【化25】
特に、上記のJは、置換若しくは無置換の(1)フェニル基、(2)ピリジル基、(3)ピラジル基、(4)キノリル基、(5)シクロヘキシル基、(6)キノキサリル基及び(7)フリル基からなる群から選択された一つの基であってもよく、さらに、上記のJが環状アミド化合物から誘導される一価の基であってもよい。 【0012】 また、前記化合物としては、下記一般式で表される環状アミン誘導体であってもよい。 【化26】
〔式中、 J1はフェニル基が置換されていてもよい次の群から選択された基から誘導される一価又は二価の基;(1)インダニル、(2)インダノニル、(3)インデニル、(4)インデノニル、(5)インダンジオニル、(6)テトラロニル、(7)ベンズスベロニル、(8)インダノリル、(9)式 【化27】
【化28】
(式中、R3は水素原子、低級アルキル基、アシル基、低級アルキルスルホニル基、置換されてもよいフェニル基又はベンジル基を意味する)で示される基、 【化29】
水素原子又はメチル基を意味する。}、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH2)c−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基、式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基、 【化30】
で示される基、式−NH−で示される基、式−O−で示される基、式−S−で示される基、ジアルキルアミノアルキルカルボニル基又は低級アルコキシカルボニル基を意味する。 Tは窒素原子又は炭素原子を意味する。 【化31】
Kは水素原子、置換若しくは無置換のフェニル基、フェニル基が置換されてもよいアリールアルキル基、フェニル基が置換されてもよいシンナミル基、低級アルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基、アダマンタンメチル基、フリルメチル基、置換されてもよいシクロアルキル基、低級アルコキシカルボニル基又はアシル基を意味する。 qは1〜3の整数を意味する。 【化32】
特に、Bが式 【化33】
水素原子又はメチル基を意味する。〕で示される基、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH2)c−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基又は式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基であってもよい。 【0013】 さらにまた、前記化合物としては、下記一般式で表される環状アミン誘導体であってもよい。 【化34】
〔式中、 J1はフェニル基が置換されていてもよい次の群から選択された基から誘導される一価又は二価の基;(1)インダニル、(2)インダノニル、(3)インデニル、(4)インデノニル、(5)インダンジオニル、(6)テトラロニル、(7)ベンズスベロニル、(8)インダノリル、(9)式 【化35】
【化36】
水素原子又はメチル基を意味する。〕で示される基、式−CH=CH−(CH)nR2−(式中、nは0又は1〜10の整数を意味し、R2は水素原子又はメチル基を意味する)で示される基、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH2)c−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基又は式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基を意味する。 Kは水素原子、置換若しくは無置換のフェニル基、フェニル基が置換されてもよいアリールアルキル基、フェニル基が置換されてもよいシンナミル基、低級アルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基、アダマンタンメチル基、フリルメチル基、置換されてもよいシクロアルキル基、低級アルコキシカルボニル基又はアシル基を意味する。〕 特に、上記Kは、置換若しくは無置換のアリールアルキル基又はフェニル基であってもよく、上記J1はインダノニルから誘導される一価の基及び二価の基、インデニル並びにインダンジオニルからなる群から選択される一つの基であってもよい。ここで、J1は、置換基として炭素数1〜6の低級アルキル基又は炭素数1〜6の低級アルコキシ基を有してもよいインダノニル基であることが好ましい。 【0014】 上記環状アミン誘導体は、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イリデニル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5−メトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5,6−メチレンジオキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−(m−ニトロベンジル)−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−シクロヘキシルメチル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−(m−フルオロベンジル)−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−(3−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)プロピル)ピペリジン、1−ベンジル−4−((5−イソプロポキシ−6−メトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イリデニル)プロペニルピペリジン、及び1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1,3−インダンジオン)−2−イル)プロペニルピペリジンからなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよく、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジンが好ましく、その塩酸塩であることがより好ましい。 上記アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物としては、例えばガランタミン、タクリン、フィゾスチグミンまたはリバスチグミンが挙げられる。 【0015】 本発明において、上記の加味温胆湯の構成生薬は、少なくとも遠志を含むものであってもよい。 【0016】 (4)本発明のコリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物、その薬理学的に許容できる塩又はそれらの溶媒和物と、加味温胆湯又はその構成生薬の少なくとも一種とを患者に投与することを特徴とする、脳血管障害を伴うアルツハイマー病治療法。 【発明の効果】 【0017】 本発明により、コリンエステラーゼ(ChE)阻害作用を有する化合物またはその薬理学的に許容できる塩と、加味温胆湯又はその構成生薬の少なくとも一種とを含むアルツハイマー病治療薬が提供される。本発明のアルツハイマー病治療薬は、ChE阻害作用を有する化合物と加味温胆湯との併用により、脳血管障害を伴うアルツハイマー病に対する新たな治療薬として有用である。 【発明を実施するための最良の形態】 【0018】 本発明は、コリンエステラーゼ(ChE)阻害剤と加味温胆湯との併用が、アセチルコリン(ACh)の分解を抑制し、シナプス間隙のAChの濃度を高めることで、アルツハイマー病患者、特に脳血管障害を伴うアルツハイマー病患者の認知機能が改善し、また脳血流量が改善することを見出すことにより完成されたものである。 【0019】 従って、本発明は、AChの分解を抑制してAChの濃度を高める作用を有する化合物、すなわちChE阻害作用を有する化合物またはその薬理学的に許容できる塩とコリンアセチルトランスフェラーゼの発現誘導作用を有する加味温胆湯とを有効成分として併合または配合した脳血管障害を伴うアルツハイマー病治療薬を提供するものである。 【0020】 1.コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物 本発明におけるChE阻害作用を有する化合物とは、ChE阻害作用、すなわちChEの活性を可逆的に又は不可逆的に阻害する物質を意味する。本発明において、ChEにはアセチルコリンエステラーゼ(AChE)(EC3.1.1.7)、ブチリルコリンエステラーゼなどが含まれる。本発明のChE阻害作用を有する化合物の好ましい特徴としては、ブチリルコリンエステラーゼに対してよりもAChEに対して高い選択性を有していること、血液脳関門を通過する能力を有していること、治療に際して必要とされる用量においては重篤の副作用を生じさせることはないことなどを挙げることができる。 【0021】 本発明においてアルツハイマー病治療薬として、加味温胆湯と併用又は配合して使用するための好ましい化合物には、ChE、特にAChEを阻害する化合物またはその薬理学的に許容できる塩が含まれる。 【0022】 本発明のChEを阻害する化合物としては、ドネペジル(donepezil)(アリセプト(ARICEPT)(登録商標))、ガランタミン(レミニール(Reminyl)(登録商標))、タクリン(Tacrine)(コグネックス(Cognex)(登録商標))、リバスチグミン(エクセロン(Exelon)(登録商標))、ジフロシロン(zifrosilone)(米国特許第5693668号明細書)、フィゾスチグミン(physostigmine)(シナプトン(Synapton))、イピダクリン(ipidacrine)(米国特許第4550113号明細書)、キロスチグミン(quilostigmine)、メトリフォネート(Metrifonate)(プロメム(Promem))(米国特許第4950658号明細書)、エプタスチグミン、ベルナクリン、トルセリン(tolserine)、シムセリン(cymserine)(米国特許第6410747号明細書)、メスチノン、イコペジル(icopezil)(米国特許第5750542号明細書)、TAK−147(J.Med. Chem., 37(15), 2292-2299, 1994、日本国特許第2650537号公報、米国特許第5273974号明細書)、フペルジンA(huperzine A)(Drugs Fut. , 24, 647-663, 1999)、スタコフィリン(stacofylline)(米国特許第4599338号明細書)、チアトルセリン(thiatolserine)、ネオスチグミン(Neostigmine)、エセロリン(eseroline)若しくはチアシムセリン(thiacymserine)、8−[3−[1−[(3−フルオロフェニル)メチル]−4−ピペリジニル]−1−オキソプロピル]−1,2,5,6−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−4−オン(日本国特許第3512786号公報)、フェンセリン、又はZT−1などが挙げられる。あるいは、前記化合物の誘導体または前記化合物のプロドラッグであってもよい。さらに、前記化合物、前記誘導体又は前記プロドラッグの薬理学的に許容できる塩又はそれらの溶媒和物などもChE阻害作用を有する化合物の好ましい態様として含まれる。さらには、ChE阻害作用を有する化合物には、国際公開第00/18391号パンフレットに記載されたChE阻害作用を有する化合物などが挙げられる。 【0023】 ガランタミンおよびその誘導体は、米国特許第4663318号明細書、国際公開第88/08708号パンフレット、国際公開第97/03987号パンフレット、米国特許第6316439号明細書、米国特許第6323195号明細書、米国特許第6323196号明細書などに記載されている。タクリンおよびその誘導体は、米国特許第4631286号明細書、米国特許第4695573号明細書、米国特許第4754050号明細書、国際公開第88/02256号パンフレット、米国特許第4835275号明細書、米国特許第4839364号明細書、米国特許第4999430号明細書、国際公開第WO97/21681号パンフレットなどに記載されている。フィゾスチグミン及びその誘導体は、米国特許第5077289号明細書、米国特許第5177101号明細書、米国特許5302721号明細書、特開平5−306286号公報、米国特許第7166824号明細書、欧州特許第298202号明細書、国際公開第98/27096号パンフレット、J. Pharm. Exp. Therap., 249 (1),194〜202, 1989などに記載されている。リバスチグミンおよびその誘導体は、欧州特許第193926号明細書、国際公開第98/26775号パンフレット、国際公開第98/27055号パンフレットなどに記載されている。 【0024】 ここで、「プロドラッグ」とは、バイオアベイラビリティ(bioavailability)の改善や副作用の軽減等を目的として、「薬剤の活性本体」(プロドラッグに対応する「薬剤」を意味する)を不活性な物質に化学修飾したものを意味し、吸収後、体内では活性本体へ代謝され、作用を発現する薬剤のことである。従って、「プロドラッグ」という用語は、対応する「薬剤」よりも固有活性(intrinsic activity)は低いが、生物学的な系に投与されると、自発的な化学反応又は酵素触媒反応又は代謝反応の結果、その「薬剤」物質を生成する任意の化合物を指す。当該プロドラッグとしては、上記例示した化合物又は下記の一般式で表される化合物のアミノ基、水酸基、カルボキシル基などがアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化、炭酸化、エステル化、アミド化又はウレタン化された化合物などの種々のプロドラッグを例示することができる。但し、例示した群は包括的なものではなく、典型的なものに過ぎず、当業者は他の既知の各種プロドラッグを公知の方法によって上記例示した化合物又は下記一般式で示される化合物から調製することができる。上記例示した化合物又は下記の一般式で表される化合物からなるプロドラッグは、本発明の範囲内に含まれる。 【0025】 本発明において、ChE阻害作用、特にAChE阻害作用を有する化合物のさらに好適な例としては、次の一般式(I)で表される環状アミン誘導体、その薬理学的に許容できる塩又はそれらの溶媒和物が挙げられる。これらの化合物の塩は、塩酸塩であることが好ましい。ChE阻害作用を有する化合物は、好ましくは1−ベンジル−4−〔(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル〕メチルピペリジン(ドネペジル)及びその薬理学的に許容できる塩ならびにそれらの溶媒和物であり、特に好ましくは1−ベンジル−4−〔(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル〕メチルピペリジン・塩酸塩(塩酸ドネペジル)、すなわちアリセプト(ARICEPT)(登録商標)である。 【0026】 <一般式(I)について> 一般式(I) 【化37】
【0027】 〔式中、Jは以下のグループ(a)〜(e)に示される基を意味する。 (a)置換若しくは無置換の次に示す基; (1)フェニル基、 (2)ピリジル基、 (3)ピラジル基、 (4)キノリル基、 (5)シクロヘキシル基、 (6)キノキサリル基又は (7)フリル基、 (b)フェニル基が置換されていてもよい次の群から選択された基から誘導される一価又は二価の基; (1)インダニル、 (2)インダノニル、 (3)インデニル、 (4)インデノニル、 (5)インダンジオニル、 (6)テトラロニル、 (7)ベンズスベロニル、 (8)インダノリル、 (9)式 【0028】 【化38】
【0029】 (c)環状アミド化合物から誘導される一価の基、 (d)低級アルキル基、又は (e)式 R1−CH=CH−(式中、R1は水素原子又は低級アルコキシカルボニル基を意味する)で示される基を意味する。 【0030】 【化39】
【0031】 (式中、R3は水素原子、低級アルキル基、アシル基、低級アルキルスルホニル基、置換されてもよいフェニル基又はベンジル基を意味する)で示される基、 【0032】 【化40】
【0033】 水素原子又はメチル基を意味する。}、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH2)c−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基、式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基、 【0034】 【化41】
【0035】 で示される基、式−NH−で示される基、式−O−で示される基、式−S−で示される基、ジアルキルアミノアルキルカルボニル基又は低級アルコキシカルボニル基を意味する。 Tは窒素原子又は炭素原子を意味する。 【0036】 【化42】
【0037】 Kは水素原子、置換若しくは無置換のフェニル基、フェニル基が置換されてもよいアリールアルキル基、フェニル基が置換されてもよいシンナミル基、低級アルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基、アダマンタンメチル基、フリルメチル基、置換されてもよいシクロアルキル基、低級アルコキシカルボニル基又はアシル基を意味する。 qは1〜3の整数を意味する。 【0038】 【化43】
【0039】 本明細書において、低級アルキル基とは、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基:sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基(アミル基)、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基などを意味する。これらのうち好ましい基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などを挙げることができ、最も好ましいものはメチル基である。「低級アルキル基」は、本発明の化合物(I)における上記の定義において、例えばJ,K,R3,R4の定義中に記載されている。 本明細書において、「低級アルコキシ基」とは、メトキシ基、エトキシ基など、上記の低級アルキル基に対応する低級アルコキシ基を意味する。 本明細書において、「低級アルコキシカルボニル基」とは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、n−ブチロキシカルボニル基など、前記低級アルコキシ基に対応する低級アルコキシカルボニル基を意味する。 本明細書において、「シクロアルキル基」とは、炭素数4〜10の環状のアルキル基であり、例えば、限定するわけではないが、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。 【0040】 <Jについて> Jにおける(a)グループ「置換もしくは無置換の次に示す基;(1)フェニル基、(2)ピリジル基、(3)ピラジル基、(4)キノリル基、(5)シクロヘキシル基、(6)キノキサリル基又は(7)フリル基」という定義において、置換基としては、 メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜6の低級アルキル基; メトキシ基、エトキシ基など上記の低級アルキル基に対応する低級アルコキシ基; ニトロ基;塩素、臭素、フッ素などのハロゲン; カルボキシル基; メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、n−ブチロキシカルボニル基など、上記の低級アルコキシ基に対応する低級アルコキシカルボニル基; アミノ基; モノ低級アルキルアミノ基; ジ低級アルキルアミノ基; カルバモイル基; アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブチリルアミノ基、イソブチリルアミノ基、バレリルアミノ基、ピバロイルアミノ基など、炭素数1〜6の脂肪族飽和モノカルボン酸から誘導されるアシルアミノ基; シクロヘキシルオキシカルボニル基などのシクロアルキルオキシカルボニル基; メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基などの低級アルキルアミノカルボニル基; メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基など前記に定義した低級アルキル基に対応する低級アルキルカルボニルオキシ基; トリフルオロメチル基などに代表されるハロゲン化低級アルキル基; 水酸基; ホルミル基;エトキシメチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などの低級アルコキシ低級アルキル基、 などを挙げることができる。上記の置換基の説明において、「低級アルキル基」、「低級アルコキシ基」とは、前記の定義から派生する基をすべて含むものとする。(a)グループの(1)〜(7)の基は、同一又は異なる1〜3個で置換されていてもよい。 【0041】 さらにフェニル基の場合は、次の場合も置換されたフェニル基に含まれるものとする。すなわち、 【0042】 【化44】
【0043】 Eは炭素原子又は窒素原子を意味する。)。 Dはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜6の低級アルキル基; メトキシ基、エトキシ基など上記の低級アルキル基に対応する低級アルコキシ基; ニトロ基; 塩素、臭素、フッ素などのハロゲン; カルボキシル基; メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、n−ブチロキシカルボニル基など、上記の低級アルコキシ基に対応する低級アルコキシカルボニル基; アミノ基; モノ低級アルキルアミノ基; ジ低級アルキルアミノ基; カルバモイル基; アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブチリルアミノ基、イソブチリルアミノ基、バレリルアミノ基、ピバロイルアミノ基など、炭素数1〜6の脂肪族飽和モノカルボン酸から誘導されるアシルアミノ基; シクロヘキシルオキシカルボニル基などのシクロアルキルオキシカルボニル基; メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基などの低級アルキルアミノカルボニル基; メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基など前記に定義した低級アルキル基に対応する低級アルキルカルボニルオキシ基; トリフルオロメチル基などに代表されるハロゲン化低級アルキル基; 水酸基; ホルミル基; エトキシメチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などの低級アルコキシ低級アルキル基 などを挙げることができる。上記の置換基の説明において、「低級アルキル基」、「低級アルコキシ基」とは、前記の定義から派生する基をすべて含むものとする。
これらのうち、フェニル基に好ましい置換基としては、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン化低級アルキル基、低級アルコキシカルボニル基、ホルミル基、水酸基、低級アルコキシ低級アルキル基、ハロゲン、ベンゾイル基、ベンジルスルホニル基などを挙げることができ、置換基は同一又は相異なって2つ以上でもよい。 ピリジル基の置換基に好ましい基としては、低級アルキル基、アミノ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。 ピラジル基の置換基に好ましい基としては、低級アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アシルアミノ基、カルバモイル基、シクロアルキルオキシカルボニル基などを挙げることができる。 【0044】 また、Jとしてのピリジル基は、2−ピリジル基、3−ピリジル基又は4−ピリジル基が望ましく、ピラジル基は2−ピラジル基が望ましく、キノリル基は2−キノリル基又は3−キノリル基が望ましく、キノキサリル基は2−キノキサリル基又は3−キノキサリル基が望ましく、フリル基は2−フリル基が望ましい。 【0045】 Jの定義において、(b)グループに記載されている(1)〜(9)から誘導される一価又は二価の基について、その代表例を示せば以下のとおりである。 【0046】 【化45】
【0047】 【化46】
【0048】 上記一連の式において、tは0又は1〜4の整数を意味し、フェニル基が0又は1〜4個の同一又は相異なるSで示した基で置換されることを示す。Sは同一又は相異なる前記したJ(a)グループのの定義における置換基のうち1つ又は水素原子を意味するが、好ましくは水素原子(無置換)、低級アルキル基又は低級アルコキシ基をあげることができる。さらに、フェニル環の隣りあう炭素間でメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基などのアルキレンジオキシ基で置換されていてもよい。 これらのうち、好ましい場合は、無置換若しくはメトキシ基、イソプロポキシ基が1〜3個置換されている場合、メチレンジオキシ基が置換されている場合であり、最も好ましい場合は、無置換若しくはメトキシ基が1〜3個置換されている場合である。 なお、上記のインダノリデニルはJ(b)の定義におけるフェニル基が置換されていてもよい二価の基の例である。すなわちJ(b)の(2)のインダノニルから誘導される代表的な二価の基である。 【0049】 Jの定義において、(c)グループの環状アミド化合物から誘導される一価の基とは、例えばキナゾロン、テトラハイドロイソキノリン−オン、テトラハイドロベンゾジアゼピン−オン、ヘキサハイドロベンツアゾシン−オンなどを挙げることができるが、構造式中に環状アミドが存在すればよく、これらのみに限定されない。 【0050】 環状アミドの中には、単環もしくは縮合ヘテロ環から誘導されるものがありうるが、縮合ヘテロ環としては、フェニル環との縮合ヘテロ環が好ましい。この場合、フェニル環は炭素数1〜6の低級アルキル基、好ましくはメチル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、好ましくはメトキシ基あるいはハロゲン原子によって置換されていてもよい。 好ましい例を挙げれば次の通りである。 【0051】 【化47】
【0052】 【化48】
【0053】 上記の式中で、式(i),(l)におけるYは水素原子又は低級アルキル基を意味し、式(k)におけるVは水素原子又は低級アルコキシ基を意味し、式(m),(n)におけるW1,W2は、それぞれ独立して同一又は異なって水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基を、W3は水素原子又は低級アルキル基を意味する。式(j)におけるUは、水素原子、低級アルキル基、又は低級アルコキシ基を意味する。 なお、式(j),(l)において、右側の環は7員環であり、式(k)において右側の環は8員環である。 Jの定義において、(d)グループ「低級アルキル基」は、前記した通りである。 Jの上記の定義のうち好ましいものは、(a)グループに含まれる基、(b)グループに含まれる基、(c)グループに含まれる基であり、最も好ましいものは、(b)グループに含まれる、フェニル環が置換されてもよいインダノン(インダノニル)から誘導される一価の基、(c)グループの環状アミド化合物から誘導される一価の基である。 【0054】 <Bについて> 【化49】
【0055】 R2が水素原子である場合は式−(CH2)n−で表され、さらにアルキレン鎖のいずれかの炭素原子に1つ又はそれ以上のメチル基が結合していてもよいことを意味する。この場合、好ましくはnは1〜3である。 Bにおいて、「ジアルキルアミノアルキルカルボニル基」は、例えば、N,N-ジメチルアミノアルキルカルボニル基、N,N-ジエチルアミノアルキルカルボニル基、N,N-ジイソプロピルアミノアルキルカルボニル基、N-メチル-N-エチルアミノアルキルカルボニル基を挙げることができる。 また、Bの一連の基において、基内にアミド基を有する場合も好ましい基の一つである。 さらに好ましい基としては、式−CH=CH−(CH)nR2−(式中、nは0又は1〜10の整数を意味し、R2は水素原子又はメチル基を意味する)で示される基、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH2)c−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基、式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基、式−NH−で示される基、式−O−で示される基又は式−S−で示される基をあげることができる。 【0056】 <T、Q、qについて> 【化50】
【0057】 <K、結合について> Kの定義における「置換又は無置換のフェニル基」、「置換もしくは無置換の(フェニル基が置換されてもよい)アリールアルキル基」、「フェニル基が置換されてもよいシンナミル基」、「置換されてもよいシクロアルキル基」において、置換基は前記のJの定義において(a)グループの(1)〜(7)において定義されたものと同一のものである。好ましくは、無置換であるか、又は、ニトロ基、メチルなどの低級アルキル基、もしくはフッ素などのハロゲンで置換されてもよい。 アリールアルキル基とは、フェニル環が上記の置換基で置換されるか、無置換のベンジル基、フェネチル基などを意味する。 ピリジルメチル基とは具体的には、2−ピリジルメチル基、3−ピリジルメチル基、4−ピリジルメチル基などを挙げることができる。 【0058】 Kについては、フェニル基が置換されてもよいアリールアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、フェニル基が置換されてもよいシンナミル基、置換されてもよいシクロアルキル基が最も好ましい。 好ましいアリールアルキル基は、具体的には例えばベンジル基、フェネチル基などをいい、これらはフェニル基が炭素数1〜6の低級アルコキシ基、炭素数1〜6の低級アルキル基、水酸基などで置換されていてもよい。 【0059】 【化51】
【0060】 二重結合である場合の例をあげれば、上記で述べたフェニル環が置換されてもよいインダノンから誘導される二価の基の場合、すなわちインダノリデニル基である場合をあげることができる。 【0061】 なお、本発明において上記化合物は、置換基の種類によっては不斉炭素を有し、光学異性体が存在しうるが、これらは本発明の範囲に属することはいうまでもない。 【0062】 具体的な例を一つ述べれば、Jがインダノン骨格を有する場合、不斉炭素を有するので幾何異性体、光学異性体、ジアステレオマーなどが存在しうるが、何れも本発明の範囲に含まれる。 【0063】 <化合物群(A)について これらの定義を総合して特に好ましい化合物群をあげれば、次の一般式で表される化合物群(A)を挙げることができる。 【0064】 【化52】
【0065】 〔式中、J1はフェニル基が置換されていてもよい次の群から選択された基から誘導される一価又は二価の基; (1)インダニル、 (2)インダノニル、 (3)インデニル、 (4)インデノニル、 (5)インダンジオニル、 (6)テトラロニル、 (7)ベンズスベロニル、 (8)インダノリル、 次式(9) 【0066】 【化53】
【0067】 で表される環状アミン、その薬理学的に許容できる塩、又はそれらの溶媒和物。 【0068】 上記のJ1の定義中、最も好ましい基としては、フェニル基が置換されていてもよいインダノニル基、インダンジオニル基、インダノリデニル基をあげることができる。また、この場合、フェニル基は置換されていないか、同一又は相異なる水酸基、ハロゲン、低級アルコキシ基で置換されているか、フェニル環の隣り合う炭素間でアルキレンジオキシ基で置換されている場合が最も好ましい。低級アルコキシ基とは、炭素数1〜6の例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基などをいい、1〜4置換をとりうるが、2置換の場合が好ましい。最も好ましい場合はメトキシ基が2置換となっている場合である。 【0069】 <化合物群Bについて> 式(A)に含まれる化合物の中でさらに好ましい化合物群としては、次の一般式(B)で表される化合物をあげることができる。 【0070】 【化54】
【0071】 〔式中、J1は前記と同様の意味を有する。 【0072】 【化55】
【0073】 水素原子又はメチル基を意味する。)で示される基、式−CH=CH−(CH)nR2−(式中、nは0又は1〜10の整数を意味し、R2は水素原子又はメチル基を意味する)で示される基、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH2)c−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基又は式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基を意味する。B1は、好ましくは式−(CH)nR2−(式中、nは0又は1〜10の整数を意味する。R2は水素原子又はメチル基を意味する)で示される基であり、より好ましくはn=1、R2は水素原子の−CH2−、又はn=3、R2は水素原子の−CH2−CH2−CH2−である。また、B1は、好ましくは式−CH=CH−(CH)nR2−(式中、nは0又は1〜10の整数を意味し、R2は水素原子又はメチル基を意味する)で示される基であり、より好ましくはn=1、R2は水素原子の−CH=CH−CH2−である。 【化56】
【0074】 <化合物群(C)について> 式(B)に含まれる化合物の中でさらに好ましい化合物群としては、次の一般式(C)で表される化合物をあげることができる。 【0075】 【化57】
【0076】 【化58】
【0077】 <化合物群(D)について> 式(C)に含まれる化合物の中でさらに好ましい化合物群としては、次の一般式(D)で表される化合物をあげることができる。 【化59】
【0078】 (式中、J2はフェニル基が置換されてもよいインダノニルから誘導される一価又は二価の基(例えば、インダノニル、インダノリデニル基)、インデニル及びインダンジオニルから選択された基を意味する。より好ましくは、J2が置換基として炭素数1〜6の低級アルキル基又は炭素数1〜6の低級アルコキシ基を有してもよいインダノニル基を意味する。 K1は置換若しくは無置換のフェニル基、置換されてもよいアリールアルキル基、置換されてもよいシンナミル基、置換されてもよいシクロアルキル基を意味する。 【0079】 【化60】
【0080】 さらに、一般式(I)で表される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容できる塩の特に好ましい化合物群(ChE阻害作用を有する化合物群)をあげれば次のとおりである。 1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、 1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イリデニル)メチルピペリジン、 1−ベンジル−4−((5−メトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、 1−ベンジル−4−((5,6−メチレンジオキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、 1−(m−ニトロベンジル)−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、 1−シクロヘキシルメチル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、 1−(m−フルオロベンジル)−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、 1−ベンジル−4−(3−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)プロピル)ピペリジン、 1−ベンジル−4−((5−イソプロポキシ−6−メトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、 1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イリデニル)プロペニルピペリジン、及び 1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1,3−インダンジオン)−2−イル)プロペニルピペリジン であり、より好ましくは、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジンである。 <製造方法> 本発明において用いるChE阻害作用を有する化合物、その薬理学的に許容できる塩、又はそれらの溶媒和物は、公知の方法で製造することができ、前記一般式(I)で表される環状アミン誘導体(例えば、塩酸ドネペジル)は、その代表的な例として、特開平1−79151号公報、日本国特許2578475号公報、日本国特許2733203号公報、日本国特許3078244号公報又は米国特許第4895841号公報などに開示されている方法により容易に製造することができる。また、塩酸ドネペジルは、細粒剤などの製剤としても入手できる。 ガランタミン及びその誘導体は、米国特許第4663318号明細書、国際公開第88/08708号パンフレット、国際公開第97/03987号パンフレット、米国特許第6316439号明細書、米国特許第6323195号明細書、米国特許第6323196号明細書などに開示されている方法により容易に製造することができる。 タクリン及びその誘導体は、米国特許第4631286号明細書、米国特許第4695573号明細書、米国特許第4754050号明細書、国際公開第88/02256号パンフレット、米国特許第4835275号明細書、米国特許第4839364号明細書、米国特許第4999430号明細書、国際公開第WO97/21681号パンフレットなどに開示されている方法により容易に製造することができる。 フィゾスチグミン及びその誘導体は、米国特許第5077289号明細書、米国特許第5177101号明細書、米国特許5302721号明細書、特開平5−306286号公報、米国特許第7166824号明細書、欧州特許第298202号明細書、国際公開第98/27096号パンフレット、J. Pharm. Exp. Therap., 249 (1),194〜202, 1989などに開示されている方法により容易に製造することができる。 リバスチグミン及びその誘導体は、欧州特許第193926号明細書、国際公開第98/26775号パンフレット、国際公開第98/27055号パンフレットなどに開示されている方法により容易に製造することができる。 これらの化合物のうち商業上入手可能なものは、化学メーカー等から容易に入手することができる。 本発明において、薬理学的に許容できる塩とは、例えば塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、燐酸塩などの無機酸塩、蟻酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。 また、置換基の選択によっては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’− エラー 1 : 特許庁規定外文字があったので■に置き換えました。 ジベンジルエチレンジアミン塩などの有機アミン塩、アンモニウム塩などを形成する場合もある。 本発明において、改善薬又は治療薬のための有効成分であるChE阻害作用を有する化合物、又はその薬理学的に許容できる塩(例えば、塩酸ドネペジル)は、無水物であってもよく、水和物などの溶媒和物を形成していてもよい。本発明において、溶媒和物とは薬理学的に許容できる溶媒和物が好ましい。薬理学的に許容できる溶媒和物は、水和物、非水和物のいずれであってもよいが、水和物が好ましい。非水和物としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)などを使用することができる。また、例えば、上記ドネペジルには結晶多型が存在することもあるがこれに限定されず、いずれかの結晶形が単一であってもよいし、結晶形混合物であってもよい。 なお、本発明において上記化合物は、置換基の種類によっては不斉炭素を有し、光学異性体が存在しうるが、これらは本発明の範囲に属することはいうまでもない。 具体的な例を一つ述べれば、Jがインダノン骨格を有する場合、不斉炭素を有するので幾何異性体、光学異性体、ジアステレオマーなどが存在しうるが、何れも本発明の範囲に含まれる。 【0081】 2.加味温胆湯 本発明で用いる加味温胆湯は、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)の活性増加作用を有する漢方であり、半夏、陳皮、生姜、竹茹、枳実、遠志、酸棗仁、茯苓、人参、甘草、大棗、地黄、玄参の13構成生薬を含むものである。さらに、加味温胆湯は上記13構成生薬に加えて、黄連、麦門冬、当帰及び辰砂からなる群から選択される1つ以上の生薬を含んでいても良い。 【0082】 また、本発明において、加味温胆湯の構成生薬の1つである遠志は、単独エキスで著明なChAT活性増加作用やNGF誘導作用を有する(山田陽城、矢部武士、「痴呆と加味温胆湯」、漢方と最新治療、株式会社世論時報社、2001年8月15日号、第10巻、第3号、P229-234)。つまり、遠志は加味温胆湯の中枢作用の中心的な役割を有する生薬であると考えられる。 【0083】 従って、本発明においてアルツハイマー病治療薬としてChE阻害剤と併用又は配合して使用するための好ましい漢方には、加味温胆湯又はその構成生薬の1つである遠志が含まれる。また、遠志に加えて他の漢方、例えば加味温胆湯の構成生薬の少なくとも1つをChE阻害剤と組み合わせて使用することも可能である。 【0084】 3.アルツハイマー病治療薬 本発明は、脳血管障害を伴うアルツハイマー病治療薬に関するものである。 【0085】 本発明は、ChE阻害剤及び加味温胆湯又はその構成生薬の少なくとも1つを併用又は配合すると、コリン作動性神経を活性化し、認知機能の改善と脳血流量の改善という知見に基づくものである。従って、ChE阻害剤及び加味温胆湯の併用剤又は配合剤は、脳血流改善薬、脳血管障害を伴う認知機能障害の改善薬又は脳血管障害を伴うアルツハイマー病の治療薬の有効成分として有用である。上記の脳血流改善効果は主に前頭葉で観察されることから、本発明の治療薬は、前頭葉の血流改善薬の有効成分として、有効である。 【0086】 本発明において「脳血管障害」とは、Magnetic resonance imaging (MRI) における大脳基底核の無症候性脳梗塞及びMRI上の大脳白質病変を意味する。 本発明においてアルツハイマー病とは、アルツハイマー症、アルツハイマー型痴呆症、アルツハイマー症候群等と称されることもある。アルツハイマー病であるか否かの判断基準は、米国精神医学会が1994年に制定した「精神疾患の診断と統計のための手引き」(DSM-IV)の「アルツハイマー型痴ほうの診断基準」、あるいはNINCDS-ADRA基準が国際的に用いられている。本発明の治療薬は、脳血管障害を伴うアルツハイマー病患者に有効であるが、上記判断基準において、軽〜中程度の患者に用いることが好ましい。 【0087】 本発明は、本発明のChE阻害剤及び加味温胆湯の併用剤又は配合剤の有効量を患者に投与することを特徴とする脳血管障害を伴う認知機能改善方法、脳血流量の改善効果、又はアルツハイマー病の治療方法も提供する。 「治療」とは、一般的に、所望の薬理学的効果及び/又は生理学的効果を得ることを意味する。効果は、疾病及び/又は症状を完全に又は部分的に防止する点では予防的であり、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響の部分的又は完全な治癒という点では治療的である。本明細書において「治療」とは、患者哺乳動物、特にヒトの疾病の任意の治療を意味し、上記一般的治療の意味も包含する。「治療」には、例えば以下の(a)〜(c)の事項を含む: (a)疾病又は症状の素因を持ちうるが、まだ持っていると診断されていない患者において、疾病又は症状が起こることを予防すること; (b)疾病症状を阻害する、即ち、その進行を阻止又は遅延すること; (c)疾病症状を緩和すること、即ち、疾病又は症状の後退、消失、又は症状の進行の逆転を引き起こすこと。
ChE阻害作用を有する化合物もしくはその塩又はそれらの溶媒和物あるいはそのプロドラッグもしくはその塩又はそれらの溶媒和物は、ヒト又は非ヒト哺乳動物に、種々の形態、経口又は非経口(例えば静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与経路で投与することができる。ChE阻害作用を有する化合物もしくはその塩又はそれらの溶媒和物あるいはそのプロドラッグもしくはその塩又はそれらの溶媒和物は、単独で用いることも可能であるが、投与経路に応じて慣用される方法により医薬用担体を用いて適当な剤形に製剤化することが可能である。 好ましい剤形としては、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤等による経口剤、吸入剤、坐剤、注射剤(点滴剤を含む)、軟膏剤、点眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、点耳剤、貼付剤、パップ剤、ローション剤、リポソーム剤等による非経口剤が挙げられる。 これらの製剤の製剤化に用いる担体には、例えば通常用いられる溶剤、賦形剤、コーティング剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤や、必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、増量剤、湿潤化剤、表面活性化剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、懸濁化剤、粘稠剤、無痛化剤、等張化剤等を使用することができ、一般に医薬品製剤の原料として用いられる成分を配合して常法により製剤化することが可能である。使用可能な無毒性のこれらの成分としては、例えば大豆油、牛脂、合成グリセライド等の動植物油;例えば流動パラフィン、スクワラン、固形パラフィン等の炭化水素;例えばミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル油;例えばセトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;シリコン樹脂;シリコン油;例えばポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の界面活性剤;例えばヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等の水溶性高分子;例えばエタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;例えばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール(ポリオール);例えばグルコース、ショ糖等の糖;例えば無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸アルミニウム等の無機粉体;塩化ナトリウム、リン酸ナトリウムなどの無機塩;精製水等が挙げられる。 賦形剤としては、例えば乳糖、果糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロース、二酸化ケイ素等が、結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール・ポリオキシエチレン・ブロックコポリマー、メグルミン等が、崩壊剤としては、例えば澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース・カルシウム等が、滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等が、着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものが、矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、桂皮末等が、ぞれぞれ用いられる。上記の成分は、その塩又はその溶媒和物であってもよい。 例えば経口製剤は、ChE阻害作用を有する化合物もしくはその塩又はそれらの溶媒和物あるいはそのプロドラッグもしくはその塩又はそれらの溶媒和物に賦形剤、さらに必要に応じて例えば結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤等を加えた後、常法により例えば散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤等とする。 錠剤・顆粒剤の場合には、カルナウバロウ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、ヒドロキシプロピルメチルフタレート、セルロースアセテートフタレート、白糖、酸化チタン、ソルビタン脂肪酸エステル、リン酸カルシウムのようなコーティング剤を用い、周知の方法でコーティングしてもよい。 シロップ剤製造に用いられる担体の具体例としては、白糖、ブドウ糖、果糖のような甘味剤、アラビアゴム、トラガント、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、結晶セルロース、ビーガムのような懸濁化剤、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80のような分散剤が挙げられる。シロップ剤製造にあたっては、必要に応じて矯味剤、芳香剤、保存剤、溶解補助剤、安定化剤等を添加することができる。また、用時溶解又は懸濁するドライシロップの形であってもよい。 注射剤は、通常、例えば、ChE阻害作用を有する化合物の塩を注射用蒸留水に溶解して調製するが、必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、無痛化剤、保存剤、安定化剤等を添加し、常法により製剤化することができる。 注射剤の無菌化は、フィルターによる濾過滅菌、殺菌剤の配合などにより行えばよい。また、注射剤は、用時調製の形態として製造することができる。すなわち、凍結乾燥法などによって無菌の固体組成物とし、使用前に無菌の注射用蒸留水又は他の溶媒に溶解して使用することができる。 外用剤の場合は、特に製法が限定されず、常法により製造することができる。使用する基剤原料としては、医薬品、医薬部外品、化粧品等に通常使用される各種原料を用いることが可能であり、例えば動植物油、鉱物油、エステル油、ワックス類、高級アルコール類、脂肪酸類、シリコン油、界面活性剤、リン脂質類、アルコール類、多価アルコール類、水溶性高分子類、粘土鉱物類、精製水等の原料が挙げられ、必要に応じ、pH調整剤、抗酸化剤、キレート剤、防腐防黴剤、着色料、香料等を添加することができる。吸入剤は、吸入による投与のために、ChE阻害作用を有する化合物もしくはその塩又はそれらの溶媒和物あるいはそのプロドラッグもしくはその塩又はそれらの溶媒和物は、注入器、噴霧器もしくは加圧パック又はエアロゾルスプレーを送達する他の都合のよい様式から送達することができる。加圧パックは、適当な噴射剤を含むことができる。また、吸入による投与のために、ChE阻害作用を有する化合物もしくはその塩又はそれらの溶媒和物あるいはそのプロドラッグもしくはその塩又はそれらの溶媒和物は、乾燥粉末組成物の形又は液体スプレーの形態で投与することもできる。貼布剤として経皮吸収により投与する場合には、塩を形成しない、いわゆるフリー体を選択することが好ましい。表皮への局所投与のために、ChE阻害作用を有する化合物は軟膏、クリームもしくはローションとして、又は経皮パッチのための活性成分として製剤化することができる。軟膏及びクリームは、例えば、水性又は油性基剤に適当な増粘及び/又はゲル化剤を加えて製剤化することができる。ローションは水性又は油性基剤を用いて製剤化することができ、また一般には1つ又は複数の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、及び/又は着色剤を含むこともできる。ChE阻害作用を有する化合物はイオン浸透療法によって投与することもできる。 さらに、必要に応じて血流促進剤、殺菌剤、消炎剤、細胞賦活剤、ビタミン類、アミノ酸、保湿剤、角質溶解剤等の成分を配合することもできる。この時の有効成分の担体に対する割合は、1〜90重量%の間で変動され得る。 本発明に使用される改善薬又は治療薬は、通常、活性成分としてChE阻害作用を有する化合物もしくはその塩又はそれらの溶媒和物あるいはそのプロドラッグもしくはその塩又はそれらの溶媒和物を0.5重量%以上、好ましくは10〜70重量%の割合で含有することができる。 ChE阻害作用を有する化合物もしくはその塩又はそれらの溶媒和物あるいはそのプロドラッグもしくはその塩又はそれらの溶媒和物を前記治療に使用する場合は、少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上に精製されたものを使用するのが好ましい。 経口投与におけるChE阻害作用を有する化合物もしくはその塩又はそれらの溶媒和物あるいはそのプロドラッグもしくはその塩又はそれらの溶媒和物の投与量は、例えば投与経路、疾患の種類、症状の程度、患者の年齢、性別、体重、塩の種類、疾患の具体的な種類、薬物動態及び毒物学的特徴などの薬理学的知見、薬物送達系が用いられるかどうか、ならびに他の薬物の組合せの一部として投与されるかどうかを含む様々な因子に従って選択されるため変動するが、当業者であれば適宜設定することができる。例えば、成人(60 kg)1人あたり、約0.001〜1000mg/日、好ましくは約0.01〜500mg/日、より好ましくは約0.1〜300mg/日であり、1回又は数回に分けて投与することができる。小児に投与される場合は、用量は成人に投与される量よりも少ない可能性がある。実際に用いられる投与法は、大幅に変動することもあり、本明細書に記載の好ましい投与法から逸脱してもよい。例えば、塩酸ドネペジルの場合は、成人(体重60kg)あたり、好ましくは約0.1〜300mg/日であり、より好ましくは約0.1〜100mg/日であり、さらに好ましくは約1.0〜50mg/日である。塩酸ドネペジルの好ましい態様において、商品名アリセプト錠(エーザイ株式会社)として市販されている5mg錠又は10mg錠の塩酸ドネペジル、商品名アリセプト細粒(エーザイ株式会社)の塩酸ドネペジルを投与することができる。例えば、錠剤は1日に1回から約4回で投与することができる。好ましい態様において、1日に1回、商品名アリセプト錠(エーザイ株式会社)の5mg錠又は10mg錠を1錠投与する。当業者であれば、塩酸ドネペジルが小児に投与される場合は、用量は成人に投与される量よりも少ない可能性があり、好ましい態様において、小児には塩酸ドネペジルを約0.5〜10mg/日、好ましくは約1.0〜3mg/日で投与することができる。また、タクリンの場合は、成人(体重60kg)あたり、約0.1〜300mg/日であり、好ましくは約40〜120mg/日で、リバスチグミンの場合は、成人(体重60kg)あたり、約0.1〜300mg/日であり、好ましくは約3〜12mg/日で、ガランタミンの場合は、成人(体重60kg)あたり、約0.1〜300mg/日であり、好ましくは約16〜32mg/日、フィゾスチグミンの場合は、成人(体重60kg)あたり、約0.1〜300mg/日であり、好ましくは約0.6〜24 mg/日で投与することが好ましい。それぞれ、小児に投与される場合は、用量は成人に投与される量よりも少ない可能性がある。 非経口投与において、貼布剤の場合、好ましい投与量としては、成人(60 kg)1人あたり、約5〜50mg/日であり、さらに好ましくは約10〜20mg/日である。また、注射剤の場合には、生理食塩水又は市販の注射用蒸留水などの薬理学的に許容できる担体中に0.1μg/ml担体〜10mg/ml担体の濃度となるように溶解又は懸濁することにより製造することができる。このようにして製造された注射剤の投与量は、処置を必要とする患者に対し、成人(60 kg)1人あたり、約0.01〜50mg/日であり、好ましくは約0.01〜5.0mg/日であり、さらに好ましくは約0.1〜1.0mg/日であり、一日あたり1〜3回に分けて投与することができる。小児に投与される場合は、用量は成人に投与される量よりも少ない可能性がある。 【0088】 本発明の治療薬の有効成分である加味温胆湯の処方は、衆方規矩、千金方、万病回春などの漢方処方の古典に記載されており、若干の差違があるが、生薬の配合範囲は一般に次の通りである。ただし、本発明の加味温胆湯の処方はこれに限定されるわけではない。 【0089】 半夏 3.5〜6、陳皮 0〜5、生姜 0.5〜3、竹茹 2〜5、枳実 1〜5、遠志 0〜2、酸棗仁 0〜5、茯苓 3〜6、人参 0〜3、甘草 1〜2、大棗 0〜2、地黄 0〜2、玄参 0〜2、黄連 0〜2、麦門冬 0〜3、当帰 0〜2、辰砂 0〜1である。 【0090】 また、本発明は上記2.で述べたように、ChE阻害剤と併用又は配合するのに好ましい漢方として、上記の加味温胆湯の他に、加味温胆湯の構成生薬である遠志、あるいは遠志を含む漢方を含むことができる。 【0091】 本発明の治療薬として、加味温胆湯若しくは遠志と併用され、又は加味温胆湯若しくは遠志に配合されるChE阻害剤には、前記ChE阻害作用を有する化合物又は薬理学的に許容できる塩(例えば、塩酸ドネペジル)をそのまま用いることも、公知の薬学的に許容できる担体などを配合して製剤化することも可能である。 【0092】 また、本発明の治療薬として、ChE阻害剤と併用又はChE阻害剤に配合される加味温胆湯又は遠志には、上記配合の加味温胆湯又は遠志、加味温胆湯又は遠志の薬効抽出物、若しくは遠志を含む漢方をそのまま用いることも、公知の薬学的に許容できる担体などと組合せて製剤化することも可能である。加味温胆湯並びに遠志を含有する他のキザミ又はエキス製剤(例えば加味帰脾湯、人参養栄湯など)に遠志が含まれている。 【0093】 加味温胆湯又は遠志の抽出物としては、加味温胆湯又は遠志の各種水系溶剤抽出物が挙げられるが、水抽出物を用いることが好ましい。具体的な加味温胆湯又は遠志の抽出物の調製例としては、上記組成の加味温胆湯又は遠志を10〜20倍量の熱水で抽出し、得られた抽出液を濾過する方法が挙げられる。この抽出物は必要に応じて乾燥させ、乾燥粉末として用いることができる。 【0094】 例えば、古典の「衆方規矩」の記載に準じて、13種類のハーブから成る31.5gのパックに約600mlの水を加えて、半量ぐらい(300ml)まで煎じつめ、煎じかすを除き、煎液を一日に1〜3回に分けて服用することができる。また、服用のし易さ、携帯の便利さを考慮して漢方エキス製剤としたものを用いることもできる。 【0095】 乾燥製剤の具体例は以下のとおりである。 半夏、陳皮、竹茹、枳実、茯苓を各5g、遠志、酸棗仁、人参、甘草、大棗、地黄、玄参を各2g、生姜を0.5g(加味温胆湯:31.5g)の混合生薬に600mlの蒸留水を加え半量になるまで煎じ、得られた抽出液を濾過した後、凍結乾燥させ8.08gの乾燥エキスを得ることができる。 【0096】 本発明の治療薬は、ChE阻害剤と加味温胆湯とを併用することが好ましい。また、ChE阻害剤と遠志とを併用することもできる。さらに、ChE阻害剤と加味温胆湯又は遠志の薬効抽出成分とを併用することもできる。併用は、それぞれ、そのままあるいは製剤化したものを同時に有効量を服用すればよい。なお、遠志を併用するときは、他の漢方、例えば加味温胆湯を構成する遠志以外の生薬を一種以上さらに配合することもできるが、以下の説明では遠志については単独での使用形態を記載する。 【0097】 また、本発明の治療薬は、ChE阻害剤に加味温胆湯を配合した配合剤として用いることもできる。このような配合の組み合わせの例としては、その他に、ChE阻害剤に遠志を、ChE阻害剤に加味温胆湯又は遠志の薬効抽出成分を、加味温胆湯にChE阻害剤を、遠志にChE阻害剤を、あるいは加味温胆湯又は遠志の薬効抽出成分にChE阻害剤を配合する組み合わせが挙げられる。配合は、基本となる薬剤と配合する薬剤のそれぞれを、ある程度製剤化してから配合して、場合により薬学的に許容できる担体などを組み合わせて製剤化してもよいし、そのまま配合して薬学的に許容できる担体などを組み合わせて製剤化してもよい。配合剤の製剤化は、当業者であれば公知技術に基づいて行うことができる。 【0098】 また、本発明のアルツハイマー病治療薬の投与形態は特に限定されず、経口又は非経口的に投与することができる。併用時または配合時には、ChE阻害剤と加味温胆湯又は遠志の投与形態、投与量が異なっていても良い。 【0099】 例えば、ChE阻害剤の経口投与形態として、塩酸ドネペジルの細粒剤は商品名アリセプト細粒(エーザイ株式会社)、錠剤は商品名アリセプト錠(エーザイ株式会社)として入手することができる。加味温胆湯又は遠志の経口投与形態として、煎液を挙げることができる。あるいは、本発明のアルツハイマー病治療薬の非経口投与の形態として、経皮吸収、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射又は腹腔内注射などが挙げられるが、好ましくは静脈内注射である。また、本発明のアルツハイマー病治療薬の注射剤は、非水性の希釈剤(例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール、オリーブ油などの植物油、エタノールなどのアルコール類など)、懸濁剤又は乳濁剤として調製することが可能である。注射剤の無菌化は、フィルターによる濾過滅菌、殺菌剤の配合などにより行えばよい。また、注射剤は、用時調製の形態として製造することができる。すなわち、ChE阻害剤又は加味温胆湯若しくは遠志の抽出物(又は抽出液)を凍結乾燥法などによって無菌の固体組成物とし、使用前に無菌の注射用蒸留水又は他の溶媒に溶解して使用することができる。貼布剤として経皮吸収により投与する場合には、コリンエステラーゼ阻害剤は、塩を形成しない、いわゆるフリー体を選択することが好ましい。 【0100】 経口投与における前記加味温胆湯の投与量は、0.1〜300g/日、好ましくは1〜300g/日、より好ましくは10〜50g/日である。構成生薬である遠志の投与量は、0.01〜20g/日、好ましくは0.1〜20g/日、より好ましくは1〜5g/日である。 また、注射剤の場合には、生理食塩水又は市販の注射用蒸留水などの薬学的に許容できる担体中に0.1μg/ml担体〜10mg/ml担体の濃度となるように加味温胆湯又は遠志の乾燥粉末等を溶解又は懸濁することにより製造することができる。このようにして製造された加味温胆湯又は遠志の注射剤の投与量は、処置を必要とする患者に対し、0.1〜100mg/日であり、さらに好ましくは0.1〜10mg/日であり、一日あたり1〜3回に分けて投与することができる。 上記併用時又は配合剤における投与量は、上記投与量の中から適宜選択することができる。 【0101】 以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本実施例により本発明は限定されるものではない。 【実施例】 【0102】 50名のNINCDS−ADRDA基準に該当する治療歴の無い軽−中等度のAD患者に対して、塩酸ドネペジル単独群(Donepezil-treated group)20名、加味温胆湯単独群(KUT-treated group)11名、塩酸ドネペジルと加味温胆湯との併用群(Donepezil plus KUT (combined) treated group)19名を本実施例にエントリーした。本実施例にエントリーした患者についての、投薬前(baseline、ベースライン)の特徴を表1に示す。 【0103】 【表1】
【0104】 表1において、「No. of patients enrolled」は本実施例にエントリーした患者の数、「No. of patients studied」は検討した患者の数、「gender(M/F)」は性(男性/女性)、「age」は年齢、「MMSE」はMini-Mental State Examination(ミニメンタルステート検査)、「ADAS-cog.」はAlzheimer's Disease Assessment Scale(アルツハイマー病評価尺度認知機能検査)、「CSF-tau」は脳脊髄液のタウタンパク質、「Silent brain infarction」は無症候性脳梗塞、「Deep white matter lesion」は深部白質病変、「Peri-ventricular white matter lesion」は脳質周囲白質病変である。ここで、ADAS-cog.は認知(cognition)の変化を見るうえで国際的なスタンダードとして用いられている。また、「Silent brain infarction」、「Deep white matter lesion」及び「Peri-ventricular white matter lesion」の3項目が、血管障害を示すMRI所見である。 【0105】 表1に示すように、ベースラインでは、各群ともに年齢(age)、性(gender)、ADAS-cog.において有意な差が認められなかった。併用群では、21.1%の患者がSilent brain infarction(無症候性脳梗塞)を有している。Deep white matter lesion(深部白質病変)、Peri-ventricular white matter lesion(脳質周囲白質病変)は数字が大きいほど虚血性病変が強いことを示す。Deep white matter lesionは併用群で最も著しいと言える。 【0106】 次に、表1に示す特徴を有するAD患者に対して、下記の群の投与を行った。 塩酸ドネペジル単独群(Donepezil-treated group)は、塩酸ドネペジル3mg/日をあらかじめ2週間投与し、副作用を認めなかったことを確認した後、5mg/日に増量した。加味温胆湯単独群(KUT-treated group)は、衆方矩の記載に準じ、13種類のハーブから成る31.5gのパックを水600mlに加えて、300mlに煮詰めて煎じ、一日2分服とした。 併用群は、上記の塩酸ドネペジル単独群と加味温胆湯単独群に投与するのと同じものを同じ分量ずつ服用した。上記の各群共に投与開始12週を経過したところで、DAS-cog.と定量SPECT撮影で評価し、ベースライン値と比較した。 【0107】 結果を表2に示す。 【表2】
【0108】 表2中、「*」は「Follow-up」の値が「Baseline」と有意に差があることを示し(p<0.05)、「†」は他の治療群の値と有意に差があることを示す(P<0.05)。medial frontal は内側前頭葉の、lateral frontal は側方前頭葉の、medial temporalは内側側頭葉の、superior parietalは上頭頂葉の、medial occipitalは内側後頭葉の局所脳血流量を示す。「lt.」は左を、「rt.」は右を示す。 【0109】 表2に示すとおり、ADAS-cog.において、単独投与群では投与により有意な改善を認めなかった。一方、併用投与群では投与によりp<0.0001(paired t-test検定)と、有意な認知機能の改善を認めた(表2)。 【0110】 次に、3検知器型ガンマカメラを用いて111 MBqの123I-IMP (N-isopropyl-123I-p-iodoamphetamine)を投与し、ARG法(Inoue K, et al., Ann Nucl Med. 16(5):311-316, 2002.)によって脳血流カウント値を補正しSPECT定量画像を作製した。データ解析はROI法及びSPM99 soft-wearを用いて統計検定を行った。 【0111】 結果を図1に示す。図1のA及びBは、加味温胆湯単独群(KUT-treated group)及び塩酸ドネペジル単独群(Donepezil-treated group)においては、投与前後で脳血流の増加がみられないことを示す。図1のC、D及びEは、加味温胆湯−塩酸ドネペジル併用群(Donepezil plus KUT (compined) treated group)において前頭葉での脳血流の増加部位を黄色で示している。BAはBroadman areaの略で、脳の各部位を示し、また、Z値は有意差検定値を示す。図1左のF、G及びHは、併用投与群での脳血流の増加をいろいろな角度(Fは側方、Gは前方、Hは水平)から見たものである。F、G及びHにおいて、実線の交叉している点を原点とし、脳の左右をx軸(右半球が+)、脳の前後をy軸(前頭が+)、脳の上下をz軸(頭頂が+)として脳の各位置を座標で表した。F、G及びHにおいて赤色で示したくさびの位置は、図1のCにおいて実線の交わった位置に相当する。同様に、緑色で示したくさびは図1のDに、オレンジ色で示したくさびは図1のEにおける交点に相当する。 【0112】 ベースラインでの3群間では、脳血流カウント値に有意差を認めなかった。次に、投与前後で有意差検定を行った。有意に脳血流が改善した領域を、図1のC〜Eでは白〜黄色で、F〜Hでは黒色〜灰色で彩色した。単独投与群では有意な改善領域を認められないが、併用群においては前頭前野を中心に、前頭葉において広範な有意な脳血流改善領域を認めた(p<0.05、corrected検定)(図1)。投与により特に脳血流量の増加した位置をくさびで示した。赤色のくさびは、座標(x,y,z)=(-16,34,36)、BA 8,32、Z=5.52、緑色のくさびは、座標(x,y,z)=(8,50,24)、BA 9,10、Z=5.58、オレンジ色のくさびは、座標(x,y,z)=(-36,32,2)、BA 45,47、Z=5.54であった。 【0113】 血管障害があると、その影響で最も血流が低下するのは前頭葉である。従って、塩酸ドネペジルと加味温胆湯との併用によって、前頭葉において有意な血流改善効果を示す本発明の意義は大きいと考えられる。また、併用療法によってドネペジル固有の副作用の増強が認められた症例はみられなかった。 【0114】 以上の結果から、塩酸ドネペジルと加味温胆湯との併用療法は、相乗的な脳機能改善効果を示すアルツハイマー病治療となりうることが考えられた。 【図面の簡単な説明】 【0115】 【図1】加味温胆湯単独群、塩酸ドネペジル単独群及び併用群におけるSPECT定量撮影象とその結果を示した図である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】504157024 【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
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| 【出願日】 |
平成17年11月28日(2005.11.28) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100092783 【弁理士】 【氏名又は名称】小林 浩
【識別番号】100095360 【弁理士】 【氏名又は名称】片山 英二
【識別番号】100120134 【弁理士】 【氏名又は名称】大森 規雄
【識別番号】100104282 【弁理士】 【氏名又は名称】鈴木 康仁
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| 【公開番号】 |
特開2006−176503(P2006−176503A) |
| 【公開日】 |
平成18年7月6日(2006.7.6) |
| 【出願番号】 |
特願2005−341813(P2005−341813) |
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