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【発明の名称】 眼精疲労の予防及び治療のための医薬
【発明者】 【氏名】梶田 昌志

【氏名】岡山 峰伸

【氏名】村松 浩一郎

【要約】 【課題】種々の原因により生じる眼精疲労に対して、発生原因によらずに直接的かつ有効な治療を可能にする医薬を提供する。

【解決手段】眼精疲労の予防及び/又は治療のための点眼剤又は眼洗浄液の形態の医薬であって、白金などの遷移金属、好ましくは貴金属微粒子の水性分散液(例えば平均粒径10 nm以下の白金コロイド水)を含む医薬。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼精疲労の予防及び/又は治療のための点眼剤又は眼洗浄液の形態の医薬であって、遷移金属微粒子の水性分散液を含む医薬。
【請求項2】
遷移金属が貴金属である請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
貴金属が白金である請求項2に記載の医薬。
【請求項4】
貴金属微粒子が平均粒径10 nm以下の白金コロイドである請求項2に記載の医薬。
【請求項5】
さらにビタミン類を1種又は2種以上含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項6】
ビタミン類がビタミンB類である請求項5に記載の医薬。
【請求項7】
点眼剤用の水性媒体であって、遷移金属微粒子の水性分散液を含む水性媒体。
【請求項8】
遷移金属が貴金属である請求項7に記載の水性媒体。
【請求項9】
貴金属微粒子が平均粒径10 nm以下の白金コロイドである請求項8に記載の水性媒体。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は眼精疲労の予防及び/又は治療のための医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
目の疲労は生理的疲労と病的疲労に大別される。生理的疲労は視作業を行った場合に生じる疲労であり、特に治療を要せずに休息により消失ないし軽減する疲労である。一方、病的疲労は、一定の休息によっても疲労が回復せず、疲労が蓄積される状態に至った状態である。この病的な疲労を一般的には「眼精疲労」と呼ぶ。眼精疲労の症状には、視力障害、まぶしさ、頭痛、鼻根部の不快感、圧迫感、頭重感、流涙、肩凝り、めまい、胃部不快感などがある。
【0003】
眼精疲労の原因としては、主として以下の3つの原因が考えられている。(1)視器に原因があるもの:屈折異常(遠視、不同視など)、調節異常(調節衰弱、調節けいれん、老視)、斜視および斜位、前眼部疾患、緑内障、ドライアイ、不適当な眼内レンズ、度数の合わない眼鏡など;(2)外環境が原因となるもの:VDT(ビジュアルデスプレーターミナル)症候群、新建材やホルマリンの刺激、紫外線や赤外線の有害光線、照明のちらつき、まぶしい光の反射など;(3)内環境あるいは心的要因があるもの:高血圧、糖尿病、消化器疾患、血液疾患、自律神経失調症などの全身疾患、体質的要素(疲労体質、神経質)、生体リズムの変調、精神的ストレス、むちうち症など。このように眼精疲労は多様な原因により生じることから、その治療に際しては原因となる疾患の治療が原則とされており、それに加えて、ビタミンB類の点眼や内服などの薬物療法が行なわれることが多い。しかしながら、ビタミンB類の点眼や内服は有効性が低く補助療法としての域を出ないところから、眼精疲労の発生原因によらずに有効な治療を可能にする薬物療法の開発が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、種々の原因により生じる眼精疲労に対して、発生原因によらずに直接的かつ有効な治療を可能にする医薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、眼精疲労を生じた患者に遷移金属、好ましくは貴金属又はその合金の微粒子を含む点眼剤を投与することにより、眼精疲労を極めて有効に治療できることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0006】
すなわち、本発明により、眼精疲労の予防及び/又は治療のための点眼剤又は眼洗浄液の形態の医薬であって、遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子の水性分散液を含む医薬が提供される。本発明の好ましい態様によれば、貴金属微粒子の水性分散液を含む医薬;貴金属貴金属がルテニウム、ロジウム、パラジウム、及び白金からなる群から選ばれる1種又は2種以上の貴金属である上記の医薬;貴金属が白金である上記の医薬;貴金属の微粒子が平均粒径10 nm以下の白金コロイドである上記の医薬が提供される。また、本発明のさらに好ましい態様によれば、さらにビタミン類を1種又は2種以上含む上記の医薬が提供される。ビタミン類としては、ビタミンB類などが好ましい。
【0007】
別の観点からは、上記の医薬の製造のための遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子の水性分散液の使用;及び、眼精疲労の予防及び/又は治療方法であって、遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子の水性分散液を患者に点眼する工程、又は遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子の水性分散液を用いて患者の眼を洗浄する工程を含む方法が本発明により提供される。
【0008】
さらに別の観点からは、本発明により、点眼剤用の水性媒体であって、遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子の水性分散液を含む水性媒体が提供される。この水性媒体を点眼剤の製造に用いることにより、防腐剤や酸化防止剤を添加することなく長期にわたって安定な点眼剤を製造することが可能になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の医薬を用いることにより、種々の原因により生じる眼精疲労に対して、その発生原因によらずに直接的かつ有効な治療が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の医薬は眼精疲労の予防及び/又は治療のための医薬であって、遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子の水性分散液を含むことを特徴としている。遷移金属とは、不完全なd又はf亜殻をもつ金属、又はそのような亜殻をもつ陽イオンを生じる金属のことであり、周期表の3A〜7A、8、及び1Bの各属の金属を含む。鉄、銅、モリブデン、白金などを例示することができる。貴金属の種類は特に限定されず、金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジム、又は白金のいずれを用いてもよいが、好ましい貴金属はルテニウム、ロジウム、パラジウム、又は白金である。遷移金属、好ましくは貴金属の微粒子は2種以上の貴金属を含んでいてもよい。また、少なくとも1種の遷移金属、好ましくは貴金属を含む合金の微粒子、あるいは1種又は2種以上の遷移金属、好ましくは貴金属の微粒子と、遷移金属、好ましくは貴金属以外の1種又は2種以上の金属の微粒子を含む混合物を用いることもできる。例えば、金及び白金からなる合金などを用いてもよい。これらのうち好ましいのは白金又は白金を含む合金であり、特に好ましいのは白金である。
【0011】
遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子としては、比表面積が大きく、表面反応性に優れたコロイド状態を形成可能な微粒子が好ましい。微粒子の粒径は特に限定されないが、50 nm以下の平均粒径を有する微粒子を用いることができ、好ましくは平均粒径が20 nm以下、さらに好ましくは平均粒径が10 nm以下、特に好ましくは平均粒径が1〜6 nm程度の微粒子を用いることができる。さらに細かな微粒子を用いることも可能である。
【0012】
遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子の製造方法は種々知られており(例えば、特公昭57-43125号公報、特公昭59-120249号公報、及び特開平9-225317号公報、特開平10-176207号公報、特開2001-79382号公報、特開2001-122723号公報など)、当業者はこれらの方法を参照することによって微粒子を容易に調製することができる。例えば、貴金属微粒子の製造方法として、沈殿法又は金属塩還元反応法と呼ばれる化学的方法、あるいは燃焼法と呼ばれる物理的方法などを利用できる。本発明の医薬の有効成分としては、いずれの方法で調製された微粒子を用いてもよいが、製造の容易性と品質面から金属塩還元反応法で調製された微粒子を用いることが好ましい。以下、本発明の好ましい態様として貴金属微粒子の製造方法について言及するが、本発明の範囲は貴金属を用いる場合に限定されることはない。
【0013】
金属塩還元反応法では、例えば、水溶性若しくは有機溶媒可溶性の貴金属塩又は貴金属錯体の水溶液又は有機溶媒溶液を調製し、この溶液に水溶性高分子を加えた後、溶液のpHを9〜11に調節し、不活性雰囲気下で加熱還流することにより還元して金属微粒子を得ることができる。貴金属の水溶性又は有機溶媒可溶性の塩の種類は特に限定されないが、例えば、酢酸塩、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、スルホン酸塩、又はリン酸塩などを用いることができ、これらの錯体を用いてもよい。
【0014】
金属塩還元反応法に用いる水溶性高分子の種類は特に限定されないが、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、シクロデキストリン、アミノペクチン、又はメチルセルロースなどを用いることができ、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。好ましくはポリビニルピロリドンを用いることができ、より好ましくはポリ(1-ビニル-2-ピロリドン)を用いることができる。また、水溶性高分子に替えて、あるいは水溶性高分子とともに各種の界面活性剤、例えばアニオン性、ノニオン性、又は脂溶性等の界面活性剤を使用することも可能である。還元をアルコールを用いて行う際には、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-アミルアルコール、又はエチレングリコールなどが用いられる。もっとも、貴金属微粒子の調製方法は上記に説明した方法に限定されることはない。
【0015】
本発明の医薬としては、上記の方法により調製されたコロイド状態の遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子を含む水性分散物をそのまま用いてもよい。遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子が会合してクラスターを形成した水性分散液を本発明の医薬として用いてもよい。上記遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子の水性分散液は、分散媒が実質的に水のみからなることが好ましいが、コロイド状態の微粒子の調製に用いられる上記の水性高分子や界面活性剤などを1種又は2種以上含んでいてもよい。また、遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子の安定分散を阻害せず、かつ点眼剤として許容可能な範囲でエタノールやグリセリンなどの水と混じりあう有機溶媒を少量含んでいてもよい。
【0016】
本発明の医薬の提供対象となる眼精疲労の発生原因は特に限定されず、視器に原因がある眼精疲労、外環境が原因となる眼精疲労、又は内環境あるいは心的要因がある眼精疲労のいずれも提供対象である。また、複数の異なる原因により生じる眼精疲労も本発明の医薬の提供対象である。本明細書において、眼精疲労とは一定の休息によっても疲労が回復せず、疲労が蓄積される状態に至った病的疲労の状態を意味しているが、本発明の医薬の適用対象は上記の眼精疲労に限定されることはなく、本来的に治療を要せずに休息により消失ないし軽減する眼の生理的疲労も適用対象とすることが可能である。本発明の医薬を点眼により投与することにより、あるいは本発明の医薬を眼洗浄剤として用いて患者の眼を洗浄することにより、眼精疲労の症状である視力障害、まぶしさ、頭痛、鼻根部の不快感、圧迫感、頭重感、流涙、肩凝り、めまい、又は胃部不快感などを軽減ないし消失させることができる。
【0017】
本発明の医薬に含まれる遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子の濃度は特に限定されないが、例えば、0.1μM〜100μM程度、好ましくは0.5μM〜10μM程度、特に好ましくは1μM〜5μM程度である。本発明の医薬は、点眼剤の製造に通常使用される製剤用添加物を1種又は2種以上含んでいてもよい。例えば、pH調節剤、緩衝剤、防腐剤、局所麻酔剤、又は等張化剤などを1種又は2種以上含むことができる。また、本発明の医薬には、眼精疲労の予防及び/又は治療に有効な薬剤を1種又は2種以上添加することが可能である。例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、又はビタミンB12などから選ばれる1種又は2種以上のビタミンB類などを配合することができる。ビタミンB類の濃度は特に限定されないが、眼精疲労の予防又は治療のために用いられる点眼剤に通常用いられる濃度で添加することが好ましい。
【0018】
別の観点から本発明により提供される点眼剤用の水性媒体は、遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子を含む水性分散液からなる水性媒体である。この水性媒体は強い還元力を有していることから、この水性媒体を用いて製造された点眼剤では微生物の繁殖が抑制されるとともに、酸化により分解しやすい医薬の有効成分の安定性が高まるという特徴がある。従って、上記の水性媒体を用いることにより、防腐剤や酸化防止剤を添加することなく長期にわたって安定な点眼剤を製造することが可能になる。遷移金属、好ましくは貴金属としては上記に説明したものを用いることができ、特に好ましくは白金コロイドを含む水性媒体を用いることができる。水性媒体中の遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子の濃度は特に限定されないが、例えば、0.1μM〜100μM程度、好ましくは0.5μM〜10μM程度、特に好ましくは1μM〜5μM程度である。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1:本発明の医薬(眼洗浄剤)の製造
アリール冷却管と三方コックを接続した100ml二口ナス底フラスコにポリ(1-ビニル-2-ピロリドン)(和光純薬株式会社製, 0.1467g)を入れ、蒸留水23mlで溶解した。この溶液を10分間撹拌した後、塩化白金酸(H2PtCl6・6H2O、和光純薬株式会社製)を蒸留水に溶解した1.66×10-2 M溶液(2ml)を加えてさらに30分間撹拌した。反応系内を窒素置換し、特級エタノール25mlを加えて窒素雰囲気下を保ちながら100℃で2時間還流した。反応液のUVを測定し、白金イオンピークの消失と、金属固体特有の散乱によるピークの飽和を確認し、還元反応を終了した。有機溶媒を減圧留去して白金微粒子(平均粒径数2.4±0.7 nm)を含む白金コロイド水(PVP-Pt水)を調製した。この白金コロイド水を注射用蒸留水を用いて1μMに希釈して眼洗浄剤の形態の本発明の医薬を製造した。
【0020】
例2:本発明の医薬(点眼剤)の製造
例1と同様にして、ポリ(1-ビニル-2-ピロリドン)に替えてポリアクリル酸ナトリウム(アルドリッチ社製、Ptに対して単位ユニットとして125倍)を用いて平均粒径2.0±0.4 nmの白金コロイド水(PAA-Pt水)を調製した。この白金コロイド水を注射用蒸留水を用いて1μMに希釈して点眼剤の形態の本発明の医薬を製造した。
【0021】
例3:
VDT(ビジュアルデスプレーターミナル)作業者のボランティア50名に例1で製造した眼洗浄剤(1μM白金コロイド水)を使用させ、生理食塩水を用いた場合との比較により本発明の医薬の効果を判定した。20代から50歳代の男女50名(男性27名女性23名)に以下の表1に示す質問用紙に回答を求め、それぞれ別の日に生理食塩水と本発明の眼洗浄剤液の洗眼効果を、表2に示した症状が改善されたときの自覚症状をあらかじめ決めた点数で評点するとともに、効果の持続時間(ただし眼精疲労に対する自覚効果のない場合も洗眼の効果自体についての持続時間を記入)について比較した。結果を表3に示す。眼精疲労に対する本発明の眼洗浄剤の洗眼効果は平均2.90点、生理食塩水の平均は2.56点であり、本発明の医薬が眼精疲労に対して有効であることが確認できた。持続効果は34.6分であり、生理食塩水の15.9分と比較して長時間にわたって作用が持続することが確認できた。
【0022】
【表1】


【表2】


【表3】




【出願人】 【識別番号】503304234
【氏名又は名称】株式会社シーテック
【出願日】 平成16年11月29日(2004.11.29)
【代理人】 【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス

【公開番号】 特開2006−151862(P2006−151862A)
【公開日】 平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願番号】 特願2004−343713(P2004−343713)