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【発明の名称】 喫煙によって引き起こされる臓器障害の予防乃至治療剤
【発明者】 【氏名】淀井 淳司

【氏名】三嶋 理晃

【氏名】星野 勇馬

【氏名】中村 肇

【氏名】原 富次郎

【氏名】成田 牧子

【要約】 【課題】本発明は、繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分による障害の予防乃至治療剤を提供する。

【解決手段】チオレドキシンファミリーのポリペプチド及びチオレドキシン誘導剤の1種または2種以上を有効成分とし、繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分によって引き起こされる障害の予防乃至治療に有効且つ安全な予防乃至治療剤を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオレドキシンファミリーのポリペプチド及びその誘導剤の1種または2種以上を有効成分とする、繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分による障害の予防乃至治療剤。
【請求項2】
チオレドキシンファミリーのポリペプチドがヒトチオレドキシンである請求項1に記載の予防乃至治療剤。
【請求項3】
植物の繊維成分の煙が、タバコ、木材及び紙からなる群より選択されるいずれか1種を燃焼させた際に生じる煙である請求項1又は2に記載の予防乃至治療剤。
【請求項4】
繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分によって引き起こされる障害が、呼吸器及び/又は消化器における炎症である請求項1〜3のいずれかに記載される予防乃至治療剤。
【請求項5】
呼吸器が、鼻腔、副鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支及び肺胞からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項4に記載の予防乃至治療剤。
【請求項6】
消化器が、食道、胃、十二指腸、小腸及び大腸からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項4に記載の予防乃至治療剤。
【請求項7】
繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分によって引き起こされる障害が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)又は気管支喘息である請求項1〜6のいずれかに記載の予防乃至治療剤。
【請求項8】
チオレドキシンファミリーのポリペプチド及びその誘導剤の1種または2種以上を有効成分とし、繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分による障害の予防乃至治療のための製剤。
【請求項9】
チオレドキシン誘導剤が、スルフォラファンである請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
飲食品の形態である請求項8又は9に記載の製剤。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、チオレドキシンファミリーのポリペプチド及びその誘導剤の1種又は2種以上を有効成分とする、繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分によって引き起こされる障害の予防乃至治療剤に関する。また、本発明は、チオレドキシンファミリーのポリペプチド及びその誘導剤の1種又は2種以上を有効成分とする該障害の予防乃至治療のための製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
タバコをはじめとする繊維質を燃焼させた時に発生する煙には、一酸化炭素、一酸化窒素、ニコチン、タール等の有害物質が数多く含まれ、これらの有害物質によって、呼吸器機能、免疫機能の低下が引き起こされることが知られている。また、長期にわたって有害成分の吸入又は吸収を続けることで、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞等)、肺機能の低下、発癌等のリスクを高めることが報告されている。さらに妊婦が有害成分を含む煙を吸入することによって、妊婦自身だけでなく胎児にも悪影響を与えることも知られている。
【0003】
特にタバコの煙の場合には、タバコの副流煙を吸入すること(受動喫煙)による悪影響も指摘され、長期喫煙者の家族(非喫煙者)にみられる慢性気管支炎、呼吸機能低下、気管支喘息、動脈硬化、狭心症等は、受動喫煙との関連性が高いとされている。また、火災現場等に取り残された人や消防士は、多量に煙を吸い込むことで呼吸器の障害を受けやすい。受動喫煙や火災現場での煙の吸入等の場合は防止することが難しく、問題となっている。
【0004】
この様な繊維質を燃焼させた時に発生する煙に含まれる有害成分によって引き起こされる、様々な障害の予防乃至治療剤が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、チオレドキシンファミリーのポリペプチドを及びその誘導剤の1種又は2種以上を有効成分とし、繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分による障害の予防乃至治療剤の提供を主な目的とする。また、本発明は、繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分による障害の予防乃至治療に有用な、チオレドキシンの発現を体内で誘導することが可能なチオレドキシン誘導剤を有効成分とする製剤を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分による障害の改善にチオレドキシン(TRXと略すことがある)が有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、以下の予防乃至治療剤ならびに製剤を提供する。
項1.チオレドキシンファミリーのポリペプチド及びその誘導剤の1種または2種以上を有効成分とする、繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分による障害の予防乃至治療剤。
項2.チオレドキシンファミリーのポリペプチドがヒトチオレドキシンである項1に記載の予防乃至治療剤。
項3.植物の繊維成分の煙が、タバコ、木材及び紙からなる群より選択されるいずれか1種を燃焼させた際に生じる煙である項1又は2に記載の予防乃至治療剤。
項4.繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分によって引き起こされる障害が、呼吸器及び/又は消化器における炎症である項1〜3のいずれかに記載される予防乃至治療剤。
項5.呼吸器が、鼻腔、副鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支及び肺胞からなる群より選択される少なくとも1種である、項4に記載の予防乃至治療剤。
項6.消化器が、食道、胃、十二指腸、小腸及び大腸からなる群より選択される少なくとも1種である、項4に記載の予防乃至治療剤。
項7.繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分によって引き起こされる障害が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)又は気管支喘息である項1〜6のいずれかに記載の予防乃至治療剤。
項8.チオレドキシンファミリーのポリペプチド及びその誘導剤の1種または2種以上を有効成分とし、繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分による障害の予防乃至治療のための製剤。
項9.チオレドキシン誘導剤が、スルフォラファンである項8に記載の製剤。
項10.飲食品の形態である項8又は9に記載の製剤。
【0008】
[TRX]
本発明において、チオレドキシンファミリー(TRXファミリーと略すことがある)に属するポリペプチドとしては、その活性中心に−Cys−Gly−Pro−Cys−、−Cys−Pro−Tyr−Cys−、−Cys−Pro−His−Cys−、−Cys−Pro−Pro−Cys−を有するポリペプチド類が例示される。これらの中でも、活性中心に配列−Cys−Gly−Pro−Cys−を有するチオレドキシン又はチオレドキシン2(ミトコンドリア特異的チオレドキシン)が好ましい。
【0009】
上記の活性中心を有するものであれば、TRXの由来は特に限定されず、ヒトを含む動物のチオレドキシン(ヒトを含む動物のADF)、大腸菌などの細菌のチオレドキシン、酵母のチオレドキシン;ヒトADF活性を有するポリペプチド(ヒトADFP);ヒト,大腸菌等のグルタレドキシン等が含まれる。特にヒトチオレドキシン及び酵母チオレドキシンが好ましい。酵母チオレドキシンは、酵母から単離したものでもよいが、チオレドキシンを多く含む酵母の形態で使用することもできる。
【0010】
本発明において、ヒトチオレドキシン(hTRX)とは、配列番号1に示される105個のアミノ酸からなるポリペプチドを指す。hTRXの塩基配列は、配列番号2に示される。
【0011】
また、繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分による障害を抑制するものであれば、配列番号1のヒトチオレドキシンをもとにして公知の遺伝子工学的手法により作製されたTRX改変体であってもよい。該改変体としては、配列番号1の32位と35位以外、好ましくは32位〜35位以外のアミノ酸の1又は複数個、好ましくは1又は数個が置換、欠失、付加、挿入されているものがあげられる。
【0012】
上記のTRXファミリーに属するポリペプチドを、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
本発明の限定的解釈を望むものではないが、本発明者らは、本発明におけるTRXの作用として、TRXが、繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分によって引き起こされる障害において、好中球等の増加を抑えることで障害を予防乃至治療するものと考える。
【0014】
本発明において、繊維質とは、植物の葉、幹、茎、根等の繊維質の部分を指し、繊維質の燃焼時に発生する煙とは、タバコ、木材、紙等を燃焼した際に生じる煙を指す。タバコには、紙巻きタバコ、葉巻、噛みタバコ等が含まれる。木材には、天然木の他に、合板、樹脂等との複合材等も含まれる。また、紙には、樹脂等と複合しているものも含まれる。
【0015】
繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分としては、ニコチン、タール、ベンゾ(a)ピレン、トルエン、フェノール、メチルナフタレン、ピレン、アニリン、2−ナフチルアミン、二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、アセチレン、アンモニア、アセトアルデヒド、シアン化水素、メチルフラン、アセトニトリル、ピリジン、ジメチルニトロサミン等が含まれている。
【0016】
また、繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分による障害とは、該有害成分の吸入又は吸収によって引き起こされる障害を指す。ここで、有害成分の吸入には、能動的に吸入する場合(例えば、タバコの主流煙の吸入等)及び受動的に吸入する場合(例えばタバコの副流煙の吸入等)の両方が含まれる。該有害成分の吸入又は吸収の期間は特に限定されず、1回〜数日程度の急性、1〜3週間程度の亜急性、数ヶ月以上の慢性的に吸入又は吸収することを含む。
【0017】
本発明に係る予防乃至治療剤の投与経路としては、経口および非経口のいずれでも投与することができ、臨床医によって適宜選択される。また有効成分であるチオレドキシンを単独または通常使用される担体と共に投与することができる。
【0018】
本発明の予防乃至治療剤を経口投与する場合は、薬剤の形態として、錠剤、丸剤、散剤、被覆錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の固形製剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等の液状製剤、エアゾール剤、アトマイザー、ネブライザー等の吸入剤、およびリポソーム封入剤等があげられる。
【0019】
本発明に係る予防乃至治療剤は、上記の有効成分と共に薬学的に許容される製剤担体を用いて、医薬製剤の形態として実用される。該製剤担体としては、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、吸収促進剤、保湿剤、吸着剤、滑沢剤、充填剤、増量剤、付湿剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調節する塩、緩衝剤等の希釈剤又は賦形剤を例示でき、これらは得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択使用される。
【0020】
錠剤の形態に成形するに際しては、上記製剤担体として例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、リン酸カリウム等の賦形剤、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム等の崩壊剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド等の界面活性剤、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、デンプン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用できる。
【0021】
さらに錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠とすることができる。この剤皮の層の数によって二重錠、多層錠とすることができる。
【0022】
丸剤の形態に成形するに際しては、製剤担体として例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。
【0023】
本発明の予防乃至治療剤を非経口投与する場合は、薬剤の形態として静脈注射、皮下注射、皮内注射、筋肉注射および腹腔内注射などに使用される注射剤(液剤、乳剤、懸濁剤等)、液剤(例えば、点眼剤、点鼻薬等)、懸濁剤、乳剤、点滴剤、吸入剤(エアロゾル剤、粉末吸入剤等)等があげられる。
【0024】
本発明薬剤が液剤、乳剤、懸濁剤等の注射剤として調製される場合、これらは殺菌され且つ血液と等張であるのが好ましく、これらの形態に成形するに際しては、希釈剤として例えば水、エチルアルコール、マクロゴール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を使用できる。なお、この場合、等張性の溶液を調整するに充分な量の食塩、ブドウ糖あるいはグリセリンを本発明薬剤中に含有させてもよい。また、通常の溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤等を添加してもよい。
【0025】
本発明の予防乃至治療剤が液状製剤である場合は、凍結保存または凍結乾燥等により水分を除去して保存してもよい。凍結乾燥製剤は、使用時に注射用蒸留水等を加え、再度溶解して使用される。
【0026】
本発明の予防乃至治療剤を吸入剤として用いる場合、一般的に使用される従来公知の吸入剤用添加剤を使用して調製すればよい。この様な添加剤としては、例えば、噴射剤;白糖、乳糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の固形賦形剤:プロピレングリコール等の不活性液体のような液状賦形剤;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、白糖等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑沢剤;安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤;クエン酸、クエン酸ナトリウム等の安定化剤;メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、レシチン、トリオレイン酸ソルビタン等の懸濁化剤;界面活性剤等の分散剤;水等の溶剤;塩化ナトリウム等の等張化剤;硫酸、塩酸等のpH調整剤;エタノール等の可溶化剤等があげられる。
【0027】
さらに、本発明に係る予防乃至治療剤中には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を含有させて調製することもできる。
【0028】
TRXファミリーに属するポリペプチドの有効量は、当業者が従来の技術を参考に容易に決定することができるが、例えば、成人1人1日あたり0.001〜100mg/kg程度、好ましくは0.01〜10mg/kg程度、より好ましくは0.1〜10mg/kg程度である。これを1日あたり1回又は数回に分けて投与することができるが、各種製剤の形態、患者の性別、年齢、疾患の程度に合わせて適宜調節することが好ましい。
【0029】
[TRX誘導剤]
本発明の予防乃至治療剤として、体内でTRXを誘導する物質を用いて繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分による障害を抑制することもできる。この様な物質としては、スルフォラファンがあげられる。スルフォラファンは、例えば、キャベツ、ムラサキキャベツ、ブロッコリー、ケール、ロケット菜、カリフラワー、ダイコン、ハクサイ、カブ、コマツナ、チンゲンサイ等に含まれ、これらの植物の新芽を用いることが好ましい。なかでも、スルフォラファンは、ブロッコリーの新芽(ブロッコリースプラウト)、ダイコンの新芽(カイワレダイコン)、ムラサキキャベツの新芽等に多く含まれている。
【0030】
スルフォラファンは、従来公知の抽出方法に従って上記の植物から得ることができ、必要に応じて精製、凍結乾燥等の処理を加えてもよい。得られたスルフォラファン含有抽出物は、スルフォラファンを0.001〜200mg/g程度、好ましくは0.005〜80mg/g程度、より好ましくは0.01〜50mg/g程度含むことが望ましい。
【0031】
また、摂取されるスルフォラファンの量は、その用法、摂取する人の年齢、性別、体重、健康状態、その他の条件、症状の程度等により適宜選択されるが、成人1人当り1日当り0.001〜1000μg/kg程度、好ましくは0.005〜200μg/kg程度、より好ましくは0.01〜60μg/kg程度となるようにすることが望ましい。
【0032】
上記のスルフォラファンの他に、TRX誘導剤であるゲラニルゲラニルアセトン(GGA)を組み合わせて使用することも可能である。
【0033】
上記の抽出物をそのまま使用してもよく、TRX誘導剤を有効成分とする医薬製剤の形態で用いてもよい。医薬製剤の形態で使用する場合は、上記[TRX]で記載した製剤担体と共に調製することができる。
【0034】
また、本発明のTRX誘導剤を有効成分とする製剤を、飲食品の形態で使用することもできる。飲食品の形態で使用する場合には、上記の抽出物に、原料である植物を加えて調製してもよい。
【0035】
飲食品としては、例えば、健康食品、栄養補助食品(バランス栄養食、サプリメント等)、栄養機能食品、特定保健用食品、病者用食品等があげられる。これらの食品の製造方法は、チオレドキシン発現の誘導という所期の効果が得られるものであれば特に限定されず、各用途で当業者によって使用されている方法に従えばよい。
【0036】
飲食品としては、例えば、ガム、キャンディー、グミ、錠菓、クッキー、ケーキ、チョコレート、アイスクリーム、ゼリー、ムース、プリン、ビスケット、コーンフレーク、チュアブルタブレット、ウエハース、煎餅等の菓子類;炭酸飲料、清涼飲料、乳飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、果汁飲料、栄養飲料、アルコール飲料、ミネラルウォーター等の飲料類;粉末ジュース,粉末スープ等の粉末飲料;バランス栄養食;粉末、カプセル、錠剤等の形態を有するサプリメント;ドレッシング、ソース等の調味料;パン類;麺類;かまぼこ等の練り製品;ふりかけ等があげられる。
【0037】
また、チオレドキシンファミリーのポリペプチドとチオレドキシン誘導剤を、組み合わせて本発明の予防乃至治療剤又は製剤として調製してもよい。
【0038】
[疾患]
本発明の予防乃至治療剤が適用される疾患としては、繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分を吸入することによる呼吸器系、循環器系、消化器系及び脳における障害(例えば炎症等)があげられる。このような障害には、呼吸器系の器官又は臓器、食道、胃等において該有害成分の取り込みによって直接的に引き起こされる障害、及び呼吸により取り込まれた該有害成分が体内に吸収されることによって各種器官、臓器、組織等において間接的に引き起こされる障害が含まれるものとする。また、これらの障害に加え、繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分による、全身性の障害(例えば、全身性の炎症、アレルギー性疾患、胎児の奇形等)も含まれるものとする。
【0039】
本発明において呼吸器とは、鼻腔、副鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺等の肺胞におけるガス交換に関係する全ての器官を指す。呼吸器系の疾患としては、肺気腫、慢性気管支炎等の慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease);気管支喘息、気管支拡張症、慢性副鼻腔炎、呼吸機能低下、呼吸不全、肺炎(好酸球性肺炎、間質性肺炎等を含む)、肺線維症、成人呼吸促迫症候群、慢性喉頭炎、呼吸細気管支炎、アレルギー性鼻炎等があげられる。また、歯周病、口内炎等の口腔内の障害も含まれる。
【0040】
循環器としては、心臓、血管、血管内皮等の血液循環に関係する全ての器官が含まれる。循環器系の疾患としては、動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、心不全等があげられる。
【0041】
また、消化器としては、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸等の消化・吸収に関係する全ての器官が含まれる。消化器系疾患としては、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎、萎縮性胃炎、びらん性胃炎、大腸ポリープ等があげられる。
【0042】
脳の疾患としては、脳梗塞、クモ膜下出血、脳血管性痴呆等があげられる。
【0043】
加えて、肺癌、口腔癌、咽頭癌、副鼻腔癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、腎盂癌、膀胱癌、子宮頚癌等の悪性腫瘍も含まれる。
【0044】
本発明の予防乃至治療剤は、例えば、黄班変性症、網膜塞栓症、網膜静脈閉塞症、白内障、緑内障、視力低下、難聴、嗅覚鈍麻、味覚鈍麻等の感覚器における障害にも有用である。
【0045】
さらに本発明の治療剤は、繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分を、一過性に多量に吸入又は吸収することによって引き起こされる、痰等の粘液の分泌、末梢血管循環障害等にも有効である。また、本発明の予防乃至治療剤は、繊維質の燃焼時に発生する煙に直接接触することによって引き起こされる障害にも有効である。この様な症状としては、気道の熱傷等があげられる。
【0046】
TRXは、妊娠初期に血清中の濃度が高くなるearly pregnancy factorの1つであり、また、胎盤におけるTRX発現が高いこと等から妊娠維持に重要であることが知られている。さらに、TRX過剰発現マウスでは、奇形発生率が低く、胎児の正常発生にTRXが重要であることが示唆されている。
【0047】
従って、本発明の予防乃至治療剤は、妊婦が繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分を吸入することによって引き起こされる胎児の障害の予防又は治療にも有効である。胎児の障害として、例えば、低出生体重、流産、早産、周産期死亡、先天奇形、子宮内発育遅延、小児癌、乳幼児突然死症候群等があげられる。
【発明の効果】
【0048】
本発明のTRXファミリーのポリペプチドの1種又は2種以上を有効成分とする予防乃至治療剤又はTRX誘導剤を有効成分とする製剤によれば、繊維質の燃焼時に発生する煙に含まれる有害成分によって引き起こされる好中球の増加を抑えることで、該有害成分による障害を予防乃至治療することが可能である。
【0049】
さらに、本発明によれば、体内でも発現する内因性チオールタンパク質であるTRX又は体内においてTRXの発現を誘導する物質を有効成分とするため、副作用の心配がない、安全性の高い予防乃至治療剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【実施例1】
【0051】
実験動物には、C57BL/6マウス(コントロールとして使用:清水実験動物より購入)及びチオレドキシン−トランスジェニックマウス(TRX−Tg:京都大学ウイルス研究所作製)(それぞれ月齢2ヶ月の雄)を用いた。
【0052】
SIS−CS喫煙暴露装置(柴田科学製)を使用して、タバコ20本分の煙を3%に希釈して30分間マウスの全身に暴露させ、30分休憩させた後、再び3%に希釈したタバコ20本分の煙に30分間全身暴露させた。この条件で、喫煙暴露を連続3日間実施した。
【0053】
[肺組織障害]
上記の喫煙暴露を行ったマウスの左肺を摘出してホルマリン伸展固定を行い、切片(4μm)を作成した。この切片にヘマトキシリン・エオジン染を(HE染色)を行った。結果を図1に示す。
【0054】
炎症細胞の浸潤によりC57BL/6の気管支上皮では、粘膜上皮の反応が亢進していることがわかった。これに対して、TRX−Tgでは、喫煙暴露後も喫煙による障害を示すような所見は見られなかった。
【0055】
[BALF中の炎症性細胞の計測]
上記の喫煙暴露スケジュール終了の翌日に、マウスを屠殺し、肺の洗浄液(BALF;5ml)を回収した。サイトスピン(Shandon社製)によるDiff−Quik染色標本を用いてBALF中の細胞総数及び炎症の指標である好中球(PMN)数を計測した。計測結果を、図2に示す。
【0056】
BALF中の好中球数は、喫煙によって増加する。TRX−Tgマウスでは、喫煙後のBALF中の好中球増加が、C57BL/6マウスに比べて有意に少なかった。
【0057】
肺組織障害及びBALF中の炎症性細胞の計測の結果より、喫煙による有害成分の直接刺激によって引き起こされる肺、気管支、食道、胃等の炎症に対し、TRXが有効であることが示された。
【実施例2】
【0058】
野生型のマウスにTRXを投与することによって、喫煙によるBALF中の好中球の増加が抑制されるかどうかを確認した。C57BL/6マウス(7週齢:雄)に喫煙暴露の直前及び喫煙暴露の3時間後にそれぞれTRX20μg/0.1ml生理食塩水を腹腔投与した(TRX投与群:合計40μg/日/マウス)。同様のスケジュールで生理食塩水を投与したC57BL/6マウスマウスを、コントロール群として用いた。喫煙暴露は、実施例1と同様に行った。喫煙暴露スケジュール終了の翌日に、マウスを殺し、肺の洗浄液(BALF;5ml)を回収した。結果を図3に示す。
【0059】
図3より、喫煙暴露を行ったTRX投与群(図3中TRX喫煙暴露)において、喫煙暴露を行った生理食塩水投与群(図3中生理食塩水喫煙暴露)よりもBALF中の総細胞数が、少ない傾向にあった。また、PMN数については、喫煙暴露を行ったTRX投与群の方が、コントロール群に比べ、有意に少なかった。
【0060】
従って、TRXを投与された場合でも、喫煙による有害成分の直接刺激によって引き起こされる肺、気管支、食道、胃等の炎症に対し、TRXが有効であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】喫煙暴露後のTRX−Tgマウス及びC57BL/6マウスの肺切片の顕微鏡写真を示す。
【図2】喫煙暴露後のTRX−Tgマウス及びC57BL/6マウスのBALF中における好中球(PMN)及び総細胞数(total cell)の計測結果を示す。
【図3】TRX又は生理食塩水を投与したC57BL/6マウスのBALF中における好中球(PMN)及び総細胞数(total cell)の計測結果を示す。
【出願人】 【識別番号】502208076
【氏名又は名称】レドックス・バイオサイエンス株式会社
【出願日】 平成16年11月29日(2004.11.29)
【代理人】 【識別番号】100065215
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 英二

【識別番号】100076510
【弁理士】
【氏名又は名称】掛樋 悠路

【識別番号】100099988
【弁理士】
【氏名又は名称】斎藤 健治

【公開番号】 特開2006−151861(P2006−151861A)
【公開日】 平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願番号】 特願2004−343676(P2004−343676)