| 【発明の名称】 |
義歯床用コーティング材 |
| 【発明者】 |
【氏名】山下 光弘 【住所又は居所】東京都台東区台東1丁目38番9号 株式会社トクヤマデンタル内
【氏名】風間 秀樹 【住所又は居所】東京都台東区台東1丁目38番9号 株式会社トクヤマデンタル内
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| 【要約】 |
【課題】
【解決手段】 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 親水性単量体に基づくポリマーブロックと疎水性単量体に基づくポリマーブロックとの双方を有し、かつ水に対して不溶である非架橋の共重合体の揮発性有機溶媒溶液からなる義歯床用コーティング材。 【請求項2】 親水性単量体が下記式(1)、 【化1】
(但し、R1、R2は各々独立に水素原子またはメチル基を示し、nは1〜10の整数)で表されるホスホリルコリン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体である請求項1記載のコーティング材。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、口腔乾燥症患者が用いている義歯床に、適度な保湿性を与えるコーティング材に関する。 【背景技術】 【0002】 ドライマウスともいわれる口腔乾燥症は口腔内や喉の渇きを主訴とする乾燥症の一種であり、眼に現れる乾燥症であるドライアイと共に患者が増大している現代病のひとつである。口腔乾燥症は、軽度の場合には口の中のネバネバ感、虫歯、歯垢や舌帯の増加、それに伴った口臭といった症状から、重症となると、強い口臭、舌表面がひび割れ、割れた舌の痛みいわゆる「舌痛症」で食事がとれない摂食障害、会話時にしゃべりづらいなどの発音障害が現れる場合もある。 【0003】 口腔乾燥症の原因はストレス、生活環境、加齢や薬剤による副作用に起因するといわれている。一方、一般的に義歯使用者は高齢であることが多く、また、成人病由来の薬剤の服用頻度も高い。従って、義歯使用者の口腔乾燥症患者は非常に増加しているのが現状である。 【0004】 義歯使用者が口腔乾燥症に罹患すると、義歯の保持が悪くなり容易にはずれてしまったり、口腔粘膜が乾燥するために義歯との摩擦が大きくなって疼痛を感じるようになったりすることから、義歯使用者の生活の質を低下させる原因の一つとなっている。 【0005】 口腔乾燥症の根本的な治療法は今なお見出されておらず、保湿力の高い洗口液、保湿ジェル、スプレーによる噴霧等による対処法しかないのが現状である。しかしながら、上記対処法では有効な時間が数時間程度と短く、一日に何度も対処が必要であるという欠点があった。特に、介護が必要な義歯使用者の場合には、該義歯使用者自身が義歯や口腔に処置を行なうのは困難であり、効果の持続する対処法が切望されていた。 【0006】 一方、医療関連材料のコーティング材に用いる親水性単量体と疎水性単量体との共重合体として、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下、MPC)とメタクリル酸ブチルをランダム共重合した共重合体が知られている(例えば、特許文献1参照)。該共重合体を樹脂基材へコーティングすることにより、生体親和性に優れ、かつたんぱく質等による汚染に強いため、例えば、抗血栓性に優れたコーティング層を有するカテーテル等の医療材料が提供できる。 【0007】 該共重合体を用いたコーティング層は、親水性単量体に基づく保湿性があり、前記のような義歯のコーティング材として有用であると考えられる。 【0008】 【特許文献1】特開平9−3132号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 ところが、該共重合体を用いたコーティング層は、義歯床用コーティング剤としては充分な耐久性を有しておらず、未だ改良の余地があった。即ち、カテーテルのような血流等の比較的穏やかな条件では、上記共重合体を用いたコーティング層はある程度の剥離に対する耐久性を示す。しかしながら、該共重合体を用いたコーティングを義歯床へ適用しようとした場合には、義歯には咀嚼のたびにコーティング層と口腔粘膜との間にせん断力がかかるために、コーティング層が容易に剥離、消失してしまい、耐久性が不足しているという問題があった。さらに義歯の場合、洗浄のために義歯洗浄剤等で洗浄されることも多く、市販の義歯洗浄剤を用いて上記コーティングを行なった義歯を洗浄すると、容易にコーティングの効果が失われるという課題があった。 【0010】 従って口腔乾燥患者用の義歯コーティング材として用いることのできる保湿性と、耐久性すなわち義歯との良好な接着性が両立できる材料の提供が求められている。 【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、義歯への接着と保水性を両立させるのは、単なるランダム重合体を用いるだけでは困難であると考え、さらに検討を進めた結果、MPCの重合体のような一定鎖長を有する親水性の重合体セグメントと、義歯素材であるポリメチルメタアクリレート(以下、PMMA)に近い構造を一定鎖長有する疎水性の重合体セグメントを有する重合体であり、なおかつ、該重合体が非水溶性である条件を満たす重合体であれば、義歯へコーティングした際、充分な保湿性を有し、なおかつ義歯との接着性も改善されて耐久性を有するコーティング層が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0012】 すなわち本発明は、親水性単量体に基づくポリマーブロックと疎水性単量体に基づくポリマーブロックとの双方を有し、かつ水に対して不溶である非架橋の共重合体の揮発性有機溶媒溶液からなる義歯床用コーティング材である。 【0013】 また他の発明は、上記共重合体における親水性単量体が下記式(1)、 【0014】 【化1】
【0015】 (但し、R1、R2は各々独立に水素原子またはメチル基を示し、nは1〜10の整数)で表されるホスホリルコリン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体であるコーティング材である。 【発明の効果】 【0016】 本発明の義歯床コーティング材を口腔乾燥症患者の義歯床の粘膜面にコーティングすることにより、適度な保湿性が得られ、かつ少なくとも1週間以上は効果が持続するコーティング材を提供することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0017】 本発明に用いられるコーティング材は、親水性単量体に基づくポリマーブロックと疎水性単量体に基づくポリマーブロックとの双方を有し、かつ水に対して不溶である非架橋の共重合体(以下、単に本発明における共重合体と称す場合がある)と、揮発性有機溶媒を必須成分として含む。 【0018】 一方、重合単位として、親水性単量体に基づく部分と、疎水性単量体に基づく部分の双方を有する共重合体を用いても、これらがポリマーブロックを形成していないランダム共重合体や交互共重合体では、保湿性は得られるものの、充分な耐久性を得ることができない。さらに水に対して溶解する重合体を用いた場合にも、そのような重合体は唾液や飲料水等に溶解してしまい、やはり必要な耐久性が得られない。なおここで共重合体が水に対して不溶であるとは、該共重合体を100倍量の37℃の水に分散、続いてろ過した後の乾燥重量が初期重量に対して95%以上であることを意味する。 【0019】 また架橋重合体である場合には、溶液を調整することができず、義歯をコーティングすることができない。 【0020】 本発明において用いる上記共重合体は、親水性単量体に基づくポリマーブロック(以下、親水性セグメントとも称す)と疎水性単量体に基づくポリマーブロック(以下、疎水性セグメントとも称す)との双方を有すればよい。なおここで、ポリマーブロックとは、親水性単量体又は疎水性単量体に基づく重合単位の繰り返し数が10以上であることを意味する。 【0021】 このような共重合体では、疎水性セグメントが義歯床を形成する樹脂(多くの場合、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂である)マトリックスと絡み合うことにより充分な接着性を発現し、他方、親水性セグメントは保湿性を担う役割を果たしていると考えられる。 【0022】 このような共重合体としては、例えば、親水性セグメントと疎水性セグメントが分枝なく結合しているブロック共重合体、親水性セグメント又は疎水性セグメントのいずれかからなる幹ポリマーに、他方のセグメントが枝ポリマーとして結合しているブロック共重合体等が本発明において使用できる。また本発明においては、上記のようなブロック共重合体に、さらに親水性セグメント及び/又は疎水性セグメントがグラフトしている共重合体等でもよい。本発明における共重合体としては、上記ブロック共重合体やグラフト共重合体等を単独で用いてもよいし、異なるものを2種以上併用してもよい。 【0023】 本発明における共重合体は、親水性セグメントと疎水性セグメントとを各々一箇所有していれば良く、いずれにも属さない部分、例えば、親水性単量体と疎水性単量体との交互又はランダム共重合によって生じる重合鎖や、親水性単量体又は疎水性単量体のいずれか一方にのみに基づくがその繰り返し数が9以下の重合鎖を有していてもよい。しかしながらより良好な保湿性と耐久性を得るためには、全繰り返し単位のうちの50%以上(即ち、重合に関与した全単量体のうちの50mol%以上)が、親水性セグメント又は疎水性セグメントを形成している共重合体が好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。 【0024】 また同様の理由により、親水性セグメント又は疎水性セグメントに分類されないが、親水性単量体又は疎水性単量体のいずれか一方にのみに基づくセグメント部分(繰り返し数が2〜9)を有する場合には、そのようなセグメントと、親水性セグメントまたは疎水性セグメントとの双方を含めての平均繰り返し単位が10以上となる共重合体が好ましい。さらに、共重合体が親水性セグメント又は疎水性セグメントのいずれかからなる幹ポリマーに、他方のセグメントが枝ポリマーとして結合しているブロック共重合体である場合には、幹ポリマーにおける枝分かれ部分間の繰り返し単位の平均が10以上であることが好ましい。 【0025】 本発明で用いられる上記共重合体において、親水性セグメント及び疎水性セグメントの比は特に限定されるものではないが、良好な保湿性と耐久性の双方が得やすく、さらには非水溶性の共重合体としやすい点で、各々の繰り返し単位の合計の比が、1:5〜5:1の範囲にあることが好ましく、1:3〜3:1の範囲にあることがより好ましい。 【0026】 また本発明で用いられる上記共重合体の分子量も特に限定されるものではないが、耐久性及び溶液とした際の取り扱いやすさの点から、数平均分子量で5×103〜1×106の範囲にある共重合体が好適である。分子量が大きいほど耐久性に優れる傾向があるが、あまりに分子量が大きいと、溶液に溶解した際の粘度が高くなりすぎて、塗布操作性に劣ったり、極端な場合には溶液を調整できなかったりする。 【0027】 上記のような共重合体は、親水性単量体及び疎水性単量体を原料として用い、公知のブロック共重合体またはグラフト共重合体の製造方法に従って得られる。 【0028】 本発明において、上記親水性単量体とは、標準ポリスチレン換算での数平均分子量が2×104であり、かつ分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1〜2の範囲内である単独重合体の1gを、37℃の水100gに添加した際に、該単独重合体が完全に溶解する重合性単量体をいう。 【0029】 好適な親水性単量体を具体的に例示すると、N−ビニルピロリドン;4−ビニル−N−メチルピリジニウムクロリド、4−ビニル−N−エチルピリジニウムクロリド、4−ビニル−N−メチルピリジニウムブロミド、4−ビニル−N−エチルピリジニウムブロミド等の4級化ビニルピリジン類;(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム等の(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジイソプロピルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。 【0030】 さらに本発明においては、生体親和性が良好である点で、下記式(1)、 【0031】 【化2】
【0032】 (但し、R1、R2は各々独立に水素原子またはメチル基を示し、nは1〜10の整数)で表されるホスホリルコリン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体が特に好適に使用できる。 【0033】 上記式(1)で示されるホスホリルコリン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体を具体的に例示すると、2−(メタ)アクロイルオキシエチル−2‘−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクロイルオキシプロピル−2‘−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、 2−(メタ)アクロイルオキシエトキシエチル−2‘−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクロイルオキシジエトキシエチル−2‘−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクロイルオキシトリエトキシエチル−2‘−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート等の2−(メタ)アクロイルオキシエチルホスホリルコリン類等が挙げられる。 【0034】 なかでも上記式(1)においてR2が水素原子、nが1である化合物、即ち、2−(メタ)アクロイルオキシエチル−2‘−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPC)が特に好適である。このMPCは、例えば、2−ブロモエチルホスホリルジクロリドと2−ヒドロキシエチルメタクリレートを反応させ、2−メタクリロイルオキシエチル−2‘−ブロモエチルリン酸(MBP)を得、該MBPをトリメチルアミンのメタノール溶液中で反応させて合成することができる。 【0035】 本発明における共重合体としては、上記親水性単量体として複数種の異なる重合性単量体を用いたものでもよい。即ち、親水性セグメントは必ずしも単一種の親水性単量体に基づくホモポリマーブロックである必要はなく、2種以上の親水性単量体に基づくコポリマーブロックであってもよいし、ブロック共重合体やグラフト共重合体において、2つ以上の親水性セグメントを有する場合には、それらは異なる親水性単量体に基づいていてもよい。 【0036】 本発明において疎水性単量体とは、標準ポリスチレン換算での数平均分子量が2×104であり、かつ分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1〜2の範囲内である単独重合体の1gを37℃の水100gに分散させ、続いてろ過した後の乾燥重量が初期重量に対して95%以上となる重合性単量体をいう。 【0037】 好適な疎水性単量体を具体的に例示すると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルキルエーテル(メタ)アクリレート類、アセチルオキシエチル(メタ)アクリレート、プロピオンオキシエチル(メタ)アクリレート、ブタノンオキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。 【0038】 上記疎水性単量体のなかでも、一般的なナイトガードの材質であるPMMAと相溶性が高い点で(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステルが好ましく、メチル(メタ)アクリレートが最も好適に使用できる。 【0039】 本発明における共重合体としては、上記疎水性単量体として複数種の異なる重合性単量体を用いたものでもよいことは、前記親水性単量体と同様である。 【0040】 上記のような親水性単量体及び疎水性単量体を用いてブロック共重合体を製造する方法を例示すると、例えば、ベンジル−N,N−ジエチルジチオカーバマートやキシリレンビス(N,N−ジエチルジチオカーバマート)等のイニファータを用いたリビングラジカル重合の手法を応用して、疎水性単量体および親水性単量体の逐次重合を行なう方法、2−メルカプトエタノール存在下で重合された末端に水酸基を有する疎水性単量体の重合体と、アゾイソブチロニトリルまたは4,4‘−アゾビス(4−シアノペンタン酸クロリド)を反応させた高分子開始材と親水性単量体を反応させて製造する方法、テトラフェニルポルフィリナトメチルアルミニウム錯体を用いて光照射下でリビングアニオン重合を行い、疎水性単量体および親水性単量体の逐次重合を行なうことによって製造する方法等が挙げられる。 【0041】 このような方法により得られるブロック共重合体としては、親水性セグメント−疎水性セグメントからなるジブロック共重合体、親水性セグメント−疎水性セグメント−親水性セグメントあるいは疎水性セグメント−親水性セグメント−疎水性セグメントからなるトリブロック共重合体、それ以上の繰り返し単位からなるマルチブロック共重合体等が挙げられるが、合成や入手の容易さの点で、ジブロック共重合体又はトリブロック共重合体が好ましい。 【0042】 またグラフト共重合体を製造する方法を例示すると、例えば、2,2‘−アゾビス(2−メタアクロイルオキシエチルベンゼン)、メタアクロイルオキシエチル−tert−ブチルパーオキシカーボネート等の重合基を有するラジカル重合開始剤と、親水性単量体から枝ポリマーを合成し、続いて疎水性単量体と枝ポリマーを共重合して製造する方法、チオグリコール酸存在下で親水性単量体のラジカル重合を行い、末端にカルボキシル基を有する枝ポリマーを合成し、続いてグリシジルメタアクリレートと反応させて重合基を化学結合させた後で、疎水性単量体とラジカル重合を行い製造する方法等が挙げられる。 【0043】 このような方法により、疎水性セグメントを幹ポリマーとし、親水性セグメントを枝ポリマーとする共重合体と親水性セグメントを幹ポリマーとし、疎水性セグメントを枝ポリマーとする共重合体のいずれも得ることができるが、本発明の効果をより得やすい点で疎水性セグメントを幹ポリマーとする共重合体がより好適である。 【0044】 本発明のコーティング材における第二の成分は揮発性有機溶媒である。当該有機溶媒としては、上記共重合体を溶解し、室温から100℃の温度範囲で揮発するものであれば特に制限されない。具体的に使用可能な溶媒を例示すると、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、オキシラン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。上記揮発性有機溶媒は単独で用いてもよく複数種を混合して用いてもよい。 【0045】 本発明のコーティング材において、前記共重合体と上記揮発性有機溶媒の配合比は特に限定されるものではなく、用いる共重合体の種類や分子量、揮発性有機溶媒の種類等により適宜設定すればよい。一般的には、共重合体濃度が0.1〜50質量%の範囲の溶液とすることが好ましい。共重合体の配合量が少なすぎる場合には、充分な保湿性を得るために何度も重ね塗りしなければならない場合がある。他方、配合量が多すぎると溶液の粘度が高くなり、溶液の塗布等の操作が行ないにくくなる。さらに好適には1〜20質量%の範囲であることが好ましい。 【0046】 本発明のコーティング材には、上記した本発明における共重合体と揮発性有機溶媒が含まれていればよいが、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて他の成分が配合されていてもよい。 【0047】 例えば、接着性を向上させるために、義歯床を構成する樹脂との相溶性に優れる疎水性重合体を添加することができる。このような疎水性重合体としては、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチルメタアクリレート、ポリイソプロピルメタアクリレートの単独重合体、若しくはこれらの共重合体等が挙げられる。 【0048】 粘度調整等の目的で、本発明における共重合体以外の親水性重合体を配合することも可能である。しかしながら、このような親水性重合体は義歯を使用するに従って失われる傾向が強いため多量に配合することは好ましくない。配合する場合には、その配合量を、本発明における共重合体100質量部に対して50質量部以下、好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下とするとよい。 【0049】 また、配合する各種重合体の溶解性等を調整する目的で少量の水を配合してもよい。この場合、あまりに大量に配合すると前記本発明における共重合体が溶解しなくなる傾向が大きくなるため、揮発性有機溶媒100質量部に対して50質量部以下、好ましくは30質量部以下、特に好ましくは10質量部以下とするとよい。 【0050】 さらにまた、本発明のコーティング材には、香料、色素、顔料、清涼剤、防腐剤、抗菌剤等の成分を配合することも可能である。 【0051】 本発明のコーティング材の使用方法は、義歯床にコーティングを行うことができる方法であれば特に制限されず、筆や刷毛による塗布、ディップコート、スピンコート、スプレーによる塗布等が好適に行なわれる。特に、特別な装置の必要がなく、コーティング材溶液量が必要最低限で済む筆や刷毛による塗布が好適である。義歯床へ塗布されたコーティング材は適宜乾燥して使用される。乾燥方法は特に限定されず、室温でも加熱してもよい。また、送風して乾燥することもできる。乾燥することにより、コーティング材に配合されていた揮発性有機溶媒が除去され、本発明における共重合体(及び必要に応じて配合されている不揮発性の成分)が残存し、これがコーティング層を形成する。 【0052】 なお、本発明における義歯床のコーティングに先立って、従来公知のコーティングの前処理を行なうこともできる。例えば、義歯床の粘膜面に塩基性水溶液を塗布後に水洗を行なう方法、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等が挙げられる。上記処理は、被着体である義歯の表面一層に極性基を持たせる処理として知られ、コーティング層を形成する本発明における共重合体の親水性セグメントとの相互作用が大きくなることが期待される。 【0053】 このようにしてコートされた義歯床は、患者が使用する直前に水道水等の水で表面を濡らして使用することによって、口腔乾燥症患者の義歯においては、適度な湿順状態が保持され口腔粘膜のつっぱり等に起因する疼痛が緩和できる。また、その効果は一定期間保持され、一度義歯床を口腔から撤去した場合においても再使用が可能である。 【実施例】 【0054】 本発明を具体的に説明するため実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 【0055】 (1)重合性単量体の分類 用いる重合性単量体が、親水性単量体あるいは疎水性単量体に該当するか否かを判定するために以下の判定方法を用いて分類を行なった。 【0056】 ガラス製重合管に重合性単量体30g、ヘキシルメルカプタン0.95g(8.0mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.16g(1.0mmol)およびベンゼン50mlを入れ、凍結−脱気を繰り返した後で窒素雰囲気に置換した。60℃で加熱を行い、加熱開始後3時間経過した時点から内容物の一部のサンプリングを行い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:東ソー製HLC−8020)を用いて重合体の分子量を追跡した。生成した重合体の数平均分子量が2.0×104となった時点で、加熱をやめて反応を停止させた。得られた重合体は、該重合体の種類に応じた貧溶媒に沈殿させた後、恒量となるまで減圧乾燥した。 【0057】 重合性単量体としてメチルメタクリレート(MMA)を用いた場合には、溶液重合の結果得られた重合体溶液をメタノールに投入して沈殿、乾燥することにより当該単独重合体を得た。このものを再度GPCにて分析した結果、数平均分子量2.2×104,分子量分布は1.9であった。このようにして得られた粉末状のMMA単独重合体1.0gを37℃の水100gに分散して15h攪拌を行なった後、未溶解分を濾別回収、恒量となるまで減圧乾燥を行なった結果、その乾燥重量は1.0gとなり、MMAは疎水性単量体であることが確認された。 【0058】 重合性単量体としてMPCを用いた場合には、溶液重合の結果得られた重合体溶液をヘキサン−ジエチルエーテル(3:2)混合液に投入して沈殿、乾燥することにより当該単独重合体を得た。このものを再度GPCにて分析した結果、数平均分子量2.1×104、分子量分布2.0であった。このようにして得られた粉末状のMPC単独重合体1.0gを37℃の水100gに分散して攪拌した結果、該重合体は速やかに水に完全溶解した。このことより、MPCは親水性重合体であることが確認された。 【0059】 (2)製造例1 MPCとMMAとのブロック共重合体の合成 ベンジルクロリドとN,N−ジエチルジチオカーバマートNa塩から合成したベンジル−N,N−ジエチルチオカーバマート(BDC)を減圧蒸留した。得られた精製BDC0.19g(0.78mmol)、MMA69g(0.69mol)およびベンゼン100mlをガラス重合管に入れ、凍結−脱気を繰り返した後、真空下封管した。30℃で紫外線照射(光源として東芝SHL100を用いて10cmの距離から照射)を15時間行なった。開管して、内容物を大量のメタノールに沈殿させ、真空乾燥を行なった。得られたMMA重合体の末端N,N−ジチオカーバマート数はBDCのUV(シクロヘキサン中、λmax:282nm,ε10500)を標準として重合体のUVおよび粘度から算出した数平均分子量(Mn)から決定された。重合率30%、Mn=6.4×104、末端SC(S)NEt2数=0.99であった。 【0060】 上述の末端SC(S)NEt2基導入PMMA2.0g、MPC4.0g、THF20mlを封管に仕込み、MMA重合時と同じ要領で光照射を行い、重合を行なった。得られた内容物をヘキサン−ジエチルエーテル(3:2)混合液に滴下することにより、ブロック共重合体を沈殿した。得られた沈殿の乾燥重量は3.6gであった。1H−NMRの結果から、該共重合体中のMMA:MPCのモル比は、1:0.27であった。 【0061】 (3)製造例2 MPCとMMAとのグラフト共重合体の合成 ガラス製重合管にMPC30g(0.10mol)、チオグリコール酸1.8g(20mmol)、AIBN0.16g(1.0mmol)を入れ、凍結脱気を繰り返した後、真空下で溶封した。60℃で5時間加温した後、冷却、開管してヘキサン−ジエチルエーテル(3:2)混合液に投入して沈殿させた。収率50%。Mn=4.0×103(THF中、フェノールフタレイン/エタノール指示薬を用いて0.1NKOH水溶液にて末端カルボン酸を滴定)。 【0062】 上記、末端カルボン酸末端プレポリマーを1.5倍モルのメタクリル酸グリシジル、微量のヒドロキノンおよびジメチルラウリルアミンとともに、還流冷却管付フラスコに入れ、窒素下、THF中で一晩加熱還流を行なった。末端カルボン酸が滴定で残留していないことを確認した上で、ヘキサン−ジエチルエーテル(3:2)混合液に沈殿精製した。 【0063】 上記マクロモノマー1.6g、MMA2.2g、AIBN0.010gおよびTHF10mlの割合でガラス重合容器に仕込み、凍結脱気後に封管を行い、60℃で7日間加熱した。冷却後に内容物をヘキサン−ジエチルエーテル(3:2)混合液に沈殿した。収量3.7g(数平均分子量2.4×104:標準ポリスチレン換算)であった。 【0064】 (4)義歯安定剤浸漬耐久性試験 共重合体0.50gを5.0mlのTHF−塩化メチレン(1:1)混合溶媒に溶解し、コーティング液とした。該コーティング液を予め重量を測定した20×20×1mmのPMMA板に塗布後、室温にて乾燥させた。その後、減圧乾燥を行なった後でサンプルの重量を測定し、PMMA板のみの重量と差し引くことによってコーティング層の重量を求めた。次に、サンプルを蒸留水に10日間浸漬してサンプルの重量を測定し、コーティング層の初期吸水率(%){=100×(吸水後の重量−吸水前の重量)/コーティング層の重量)}を求めた。 【0065】 市販の義歯洗浄剤「ポリデント」(小林製薬製)の水溶液を業者指定の方法により作製し、前記吸水サンプルを10時間浸漬した。次に義歯洗浄剤処理したサンプルを蒸留水に14時間浸漬した。このような義歯洗浄剤処理−蒸留水浸漬を7回繰り返した後、サンプルを水洗後に減圧乾燥して、サンプルの重量を求め、残留コーティング層の割合を求めた。 【0066】 上記義歯安定剤浸漬耐久性試験を行なった後のサンプルを再び、蒸留水浸漬して残留したコーティング層の吸水率を求めた。 【0067】 実施例1 製造例1で合成したブロック共重合体をコーティング基材として使用した。該ブロック共重合体は、水に対して膨順はするものの、溶解はしなかった。また、該ブロック共重合体1.0gを100gの水に分散し、15h攪拌を行なった後、未溶解分を濾別回収、恒量となるまで減圧乾燥を行なった結果、その乾燥重量は0.98gとなり、本ブロック共重合体が本質的に水に不溶であることが確認された。上記ブロック共重合体0.50gに対し、5.0mlのTHF−塩化メチレン(1:1)に溶解してコーティング溶液とした。コーティングサンプルの試験結果を表1に示した。コーティング層の初期吸水率は67%であり、良好な保湿性を示した。また、義歯洗浄剤浸漬試験後の残留コーティング層の割合は92%であった。また、該サンプルを再度吸湿させた結果、吸水率は65%であり、保湿性が保持されていることがわかった。 【0068】 実施例2 製造例2で合成したグラフト共重合体をコーティング基材として用いたこと以外は実施例1と同様な評価を行った。該グラフト共重合体は、水に対して膨潤はするものの溶解はしなかった。また、該ブロック共重合体1.0gを100gの水に分散し、15h攪拌を行なった後、未溶解分を濾別回収、恒量となるまで減圧乾燥を行なった結果、その乾燥重量は0.99gとなり、本ブロック共重合体が本質的に水に不溶であることが確認された。コーティング層の初期吸水率は72%であり良好な保湿性を示した。また、義歯洗浄剤浸漬試験後の残留コーティング層の割合は98%であった。該サンプルを再度吸湿させた結果、吸水率は72%であり、保湿性が保持されていることがわかった。 【0069】 比較例1 ランダム共重合したMPCとMMAとの共重合体(共重合体中のMPC含有率40モル%)をコーティング基材として用いたこと以外は実施例1と同様な評価を行なった。該ランダム共重合体は水に溶解した。従って、コーティング層の初期吸水率はコーティングサンプルの蒸留水浸漬中にコーティング層が剥離してしまったため、測定ができなかった。また、水浸漬後のサンプルを減圧乾燥し、該サンプルを再度吸湿させても吸水率は0.1%であり、保湿性が保持されていないことがわかった。 【0070】 比較例2 ランダム共重合したMPCとMMAとの共重合体(共重合体中のMPC含有率20モル%)をコーティング基材として用いたこと以外は実施例1と同様な評価を行なった。該グラフト共重合体は、水に対して膨潤はするものの溶解はしなかった。コーティング層の初期吸水率は66%であり、良好な保湿性を示した。しかしながら、義歯洗浄剤浸漬試験後の残留コーティング層の割合は約4%であり、ほとんどコーティング層が喪失していることがわかった。該サンプルを再度吸湿させても吸水率は1%であり、保湿性が保持されていないことがわかった。 【0071】 【表1】
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003182 【氏名又は名称】株式会社トクヤマ 【住所又は居所】山口県周南市御影町1番1号 【識別番号】391003576 【氏名又は名称】株式会社トクヤマデンタル 【住所又は居所】東京都台東区台東1丁目38番9号
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| 【出願日】 |
平成16年11月26日(2004.11.26) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2006−151850(P2006−151850A) |
| 【公開日】 |
平成18年6月15日(2006.6.15) |
| 【出願番号】 |
特願2004−342784(P2004−342784) |
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