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【発明の名称】 フルオロエーテル組成物及び、ルイス酸の存在下におけるその組成物の分解抑制法
【発明者】 【氏名】クリストフアー・ビエニアルツ

【氏名】ステイーブ・エイチ・チヤン

【氏名】キース・アール・クロマツク

【氏名】シユイエン・エル・ホワン

【氏名】河合 俊和

【氏名】小林 真奈美

【氏名】デイビツド・ロツフレド

【氏名】ラジヤゴパラン・ラガバン

【氏名】イアール・アール・スパイシエール

【氏名】アナレイト・エイ・ステルマツハ

【要約】 【課題】ルイス酸の存在下においても分解することのない、安定性の高い麻酔用フルオロエーテル組成物を提供する。

【解決手段】無水フルオロエーテル化合物に、生理学的に許容可能なルイス酸抑制剤として、水、ブチル化ヒドロキシトルエン(1,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール)、メチルパラベン(4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル)、プロピルパラベン(4−ヒドロキシ安息香酸プロピルエステル)、プロポホール(2,6−ジイソプロピルフェノール)、及びチモール(5−メチル−2−(1−メチルエチル)フェノール)等を添加することにより、麻酔薬組成物の安定性を改善した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セボフルランを安定化する方法であって、空軌道を有するルイス酸の当該空軌道に電子を供与するルイス酸抑制剤の有効な安定化量をセボフルランに加えてルイス酸によるセボフルランの分解を防止する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ルイス酸の存在下においても分解しない、安定した麻酔用フルオロエーテル組成物に関する。また、本発明は、ルイス酸の存在下におけるフルオロエーテルの分解抑制法についても開示する。
【背景技術】
【0002】
フルオロエーテル化合物は麻酔薬として広く用いられている。麻酔薬として使用されているフルオロエーテル化合物の例は、セボフルラン(フルオロメチル−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチルエーテル)、エンフルラン((±−)−2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、イソフルラン(1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、メトキシフルラン(2,2−ジクロロ−1,1−ジフルオロエチルメチルエーテル)、及びデスフルラン((±−)−2−ジフルオロメチル1,2,2,2−テトラフルオロエチルエーテル)を含む。
【0003】
フルオロエーテルは優れた麻酔薬であるが、幾つかのフルオロエーテルでは安定性に問題があることが判明した。より詳細には、特定のフルオロエーテルは、1種類もしくはそれ以上のルイス酸が存在すると、フッ化水素酸等の潜在的に毒性を有する化学物質を含む幾つかの産物に分解することが明らかになった。フッ化水素酸は経口摂取及び吸入すると毒性を呈し、皮膚や粘膜を強度に腐食する。従って、医療分野では、フルオロエーテルのフッ化水素酸等の化学物質への分解に対する関心が高まっている。
【0004】
フルオロエーテルの分解はガラス製の容器中で起こることが分かった。ガラス製容器中でのフルオロエーテルの分解は容器中に存在する微量のルイス酸によって活性化されるものと考えられる。ルイス酸のソースはガラスの天然成分である酸化アルミニウムであり得る。ガラス壁が何らかの原因で変質または腐食すると酸化アルミニウムが露出し、容器の内容物と接触するようになる。すると、ルイス酸がフルオロエーテルを攻撃し、フルオロエーテルを分解する。
【0005】
例えば、フルオロエーテルであるセボフルランが無水条件下でガラス容器中の1種類もしくはそれ以上のルイス酸と接触すると、ルイス酸はセボフルランをフッ化水素酸と幾つかの分解産物に分解し始める。セボフルランの分解産物は、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール、メチレングリコールビスヘキサフルオロイソプロピルエーテル、ジメチレングリコールビスヘキサフルオロイソプロピルエーテル、及びメチレングリコールフルオロメチルヘキサフルオロイソプロピルエーテルである。セボフルランの分解により生じたフッ化水素酸が更にガラス表面への攻撃を進行させ、ガラス表面に更に多くのルイス酸を露出させる。この結果、セボフルランの分解が一層促進される。
【0006】
ルイス酸の存在下におけるセボフルランの分解メカニズムは次のように図解することができる:
【0007】
【化1】


【0008】
【表1】


【0009】
従って、当分野においては、ルイス酸の存在下においても分解しないフルオロエーテル化合物を含有する安定した麻酔薬組成物が求められている。
【0010】
(発明の要約)
本発明は、そこに有効な安定化量のルイス酸抑制剤が付加されたアルファフルオロエーテル部分を有するフルオロエーテル化合物を含有する安定な麻酔薬組成物に関する。好適なフルオロエーテル化合物はセボフルランであり、また、好適なルイス酸抑制剤は水である。本組成物は、ルイス酸抑制剤をフルオロエーテル化合物に加えることにより、またはフルオロエーテル化合物をルイス酸抑制剤に加えることにより、あるいは容器をルイス酸抑制剤で洗浄した後、フルオロエーテル化合物を加えることにより調製することができる。
【0011】
また、本発明は、アルファフルオロエーテル部分を有するフルオロエーテル化合物の安定化法も含む。本方法は、有効な安定化量のルイス酸抑制剤をフルオロエーテル化合物に加えることにより、ルイス酸による該フルオロエーテル化合物の分解を防止することを含む。好適なフルオロエーテル化合物はセボフルランであり、また、好適なルイス酸抑制剤は水である。
【0012】
(図面の簡単な説明)
図1は、同量の酸化アルミニウム(50mg)の存在下において、水の量を増やすとセボフルランの分解度が減少することを実証するクロマトグラムを示している。図1に示されているセボフルランの同定された分解産物は、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(HFIP)、メチレングリコールビスヘキサフルオロイソプロピルエーテル(P1)、ジメチレングリコールビスヘキサフルオロイソプロピルエーテル(P2)、及びメチレングリコールフルオロメチルヘキサフルオロイソプロピルエーテル(S1)である。
【0013】
図2は、オートクレーブ中において119℃で3時間加熱した後のセボフルランの分解度を表すクロマトグラムを示している。
【0014】
図3は、水がオートクレーブ中において119℃で3時間加熱した後のセボフルランの分解を抑制する効果を表すクロマトグラムを示している。
【0015】
図4は、実施例5及び6から得られる活性化されたタイプIIIの褐色ガラス製ボトルにおけるセボフルラン分解産物P2を比較した棒グラフである。このグラフは、400ppmの水を加えることにより、セボフルランの分解が抑制されることを示している。
【0016】
図5は、実施例5及び6から得られる活性化されたタイプIIIの褐色ガラス製ボトルにおけるセボフルラン分解産物S1を比較した棒グラフである。このグラフは、400ppmの水を加えることにより、セボフルランの分解が抑制されることを示している。
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明はルイス酸の存在下においても分解しない、安定な麻酔薬組成物を提供する。また、本発明は、該麻酔薬組成物の調製法についても開示する。
【0018】
本発明の麻酔薬組成物は少なくとも1つの無水フルオロエーテル化合物を含んでいる。本明細書で用いる「無水」という用語は、そのフルオロエーテル化合物に含まれている水の量が約50ppm未満であることを意味している。本組成物に使用されるフルオロエーテル化合物は次の化学構造式Iに相当するものである。
【0019】
【化2】


【0020】
上記の化学構造式Iにおいて、R;R;R;R;及びRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、1個から4個の炭素原子を有するアルキル基(C−Cアルキル)、1個から4個の炭素原子を有する置換されたアルキル(C−C置換アルキル)であり得る。化学構造式Iの好適な実施態様においては、R及びRはそれぞれ置換アルキルCFであり、R、R、及びRはそれぞれ水素である。
【0021】
本明細書で用いる用語「アルキル」は、1つの水素原子を除去することにより飽和炭化水素から誘導される直鎖または分枝鎖のアルキル基を表している。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、及びその他同種類のものを含む。また、本明細書で用いる「置換アルキル」という用語は、ハロゲン、アミノ、メトキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ジクロロメチル、クロロフルオロメチル等の1つもしくはそれ以上の基で置換されたアルキル基を表している。更に、本明細書で用いる用語「ハロゲン」は周期表VIIA族の電気的陰性元素の1つを表している。
【0022】
化学構造式Iを有するフルオロエーテル化合物は、アルファフルオロエーテル部分−C−O−C−F−を含んでいる。ルイス酸はこの部分を攻撃し、それによりフルオロエーテルの分解が起こり、様々な分解産物や毒性化学物質がもたらされる。
【0023】
本発明で使用できる化学構造式Iの無水フルオロエーテル化合物の例は、セボフルラン、エンフルラン、イソフルラン、メトキシフルラン、及びデスフルランである。本発明で使用するのに好適なフルオロエーテル化合物はセボフルランである。
【0024】
化学構造式Iを有するフルオロエーテル化合物の製造方法は当業者に広く知られており、それらの方法を用いて本発明の組成物を調製することができる。例えば、セボフルランは、ここに参照として組み入れる米国特許3,689,571号や米国特許2,992,276号に開示されている方法を用いて調製することができる。
【0025】
本発明の組成物は、合計で約98%w/wから約100%w/wの化学構造式Iを有するフルオロエーテル化合物を含んでいる。好適には、本組成物は少なくとも99.0%w/wの該フルオロエーテル化合物を含んでいる。
【0026】
また、本発明の麻酔薬組成物は生理学的に許容可能なルイス酸抑制剤も含んでいる。本明細書で用いる「ルイス酸抑制剤」という用語は、ルイス酸の空軌道と相互作用し、それによりその酸の潜在的な反応部位を遮断するあらゆる化合物を表している。生理学的に許容可能なあらゆるルイス酸抑制剤を本発明の組成物に使用することができる。本発明で使用できるルイス酸抑制剤の例は、水、ブチル化ヒドロキシトルエン(1,6−ビス(1,1−ジメチル−エチル)−4−メチルフェノール)、メチルパラベン(4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル)、プロピルパラベン(4−ヒドロキシ安息香酸プロピルエステル)、プロポホール(2,6−ジイソプロピルフェノール)、及びチモール(5−メチル−2−(1−メチルエチル)フェノール)を含む。
【0027】
本発明の組成物は有効な安定化量のルイス酸抑制剤を含んでいる。本組成物に使用できるルイス酸抑制剤の有効な安定化量は、約0.0150%w/w(水当量)からフルオロエーテル化合物中におけるルイス酸抑制剤の約飽和レベルまでであると考えられる。本明細書で用いる「飽和レベル」という用語は、フルオロエーテル化合物中におけるルイス酸抑制剤の最大溶解レベルを意味している。飽和レベルは温度依存性であり得ることが理解されよう。また、飽和レベルは、本組成物に使用する個々のフルオロエーテル化合物及び個々のルイス酸抑制剤にも依存するであろう。例えば、フルオロエーテル化合物がセボフルランで、且つルイス酸抑制剤が水の場合、本組成物を安定化するために使用される水の量は、約0.0150%w/wから0.14%w/w(飽和レベル)であると考えられる。しかし、一旦本組成物がルイス酸に晒されると、本組成物とルイス酸抑制剤の望ましくない分解反応を防止するため、ルイス酸抑制剤がルイス酸と反応するので、本組成物中のルイス酸抑制剤量は減少し得ることに留意すべきである。
【0028】
本発明の組成物で使用するのに好適なルイス酸抑制剤は水である。精製水または蒸留水、あるいはそれらの組み合わせを使用することができる。先述の如く、本組成物に付加できる水の有効量は、約0.0150%w/wから約0.14%w/wであり、好適には約0.0400%w/wから約0.0800%w/wであると考えられる。他のルイス酸抑制剤の場合は、水のモル量に基づくモル当量を使用すべきである。
【0029】
フルオロエーテル化合物がルイス酸に晒されると、本組成物中に存在する生理学的に許容可能なルイス酸抑制剤がルイス酸の空軌道に電子を供与し、該抑制剤と該酸との間に共有結合を形成する。これにより、ルイス酸はフルオロエーテルのアルファフルオロエーテル部分との反応が妨げられ、フルオロエーテルの分解が防止される。
【0030】
本発明の組成物は様々な方法で調製することができる。ある局面では、先ずガラス製ボトル等の容器をルイス酸抑制剤で洗浄またはすすぎ洗いした後、その容器にフルオロエーテル化合物が充填される。任意に、洗浄またはすすぎ洗いした後、その容器を部分的に乾燥させてもよい。フルオロエーテルを容器に付加した後、その容器を密封する。本明細書で用いる「部分的に乾燥」という用語は、乾燥された容器または容器内に化合物の残留物が残るような不完全な乾燥プロセスを表している。また、本明細書で用いる「容器」という用語は、物品を保持するために使用することができるガラス、プラスチック、スチール、または他の材料でできた入れ物を意味している。容器の例は、ボトル、アンプル、試験管、ビーカー等を含む。
【0031】
別の局面では、フルオロエーテル化合物を容器に充填する前に、乾燥した容器にルイス酸抑制剤を加える。ルイス酸抑制剤を加えた後、その容器にフルオロエーテル化合物が付加される。代替的に、既にフルオロエーテル化合物を含有している容器にルイス酸抑制剤を直接加えてもよい。
【0032】
更に別な局面では、フルオロエーテル化合物が充填されている容器にルイス酸抑制剤を湿潤条件下で加えてもよい。例えば、水分が容器内に蓄積するだけの充分な時間の間、容器を湿潤チャンバー内に置くことにより、フルオロエーテル化合物が充填された容器に水を加えることができる。
【0033】
ルイス酸抑制剤は製造プロセスのあらゆる適切なポイントで本組成物に加えることができ、例えば、500リットル入り出荷容器等の出荷容器に充填する前の最終製造ステップで加えることもできる。適当な量の本組成物をその容器から分注し、当産業分野で使用するのにより好適なサイズの容器、例えば250mL入りガラス製ボトル等の容器に入れて包装することができる。更に、適量のルイス酸抑制剤を含有する少量の本組成物を用いて容器を洗浄またはすすぎ洗いし、容器に残っている可能性のあるルイス酸を中和することができる。ルイス酸を中和したら容器を空にし、その容器に付加量のフルオロエーテル化合物を加え、容器を密封してもよい。
【0034】
何ら制限的な意味を有することなく、例示のため、本発明の実施例を以下に挙げる。
【実施例1】
【0035】
ルイス酸としての活性アルミナ
タイプIIIのガラスは主に二酸化珪素、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、及び酸化アルミニウムからなっている。酸化アルミニウムは既知のルイス酸である。ガラスマトリックスは常態ではセボフルランに不活性である。しかし、特定の条件(無水、酸性)下では、ガラス表面が攻撃され、または変質し、セボフルランを酸化アルミニウム等の活性ルイス酸部位に晒すことがある。
【0036】
以下の3つのレベルの水分を含有する20mlのセボフルランに様々な量の活性アルミナを付加することにより、セボフルランの分解における水の効果を試験した:1)20ppmの水−測定した量の水であって、それ以外に水は何も加えていない;2)100ppmの水−添加(spiked);3)260ppmの水−添加。次の表1は実験のマトリックスを示している。
【0037】
【表2】


【0038】
20ppmの水は水0.0022%w/wに相当することが理解されよう。サンプルを60℃に放置し、22時間後にガスクロマトグラフィーで分析した。図1は、同量の酸化アルミニウム(50mg)の存在下において、水の量が増えるほどセボフルランの分解度が減少することを示している(表1のA列)。酸化アルミニウムの量が20mg及び10mgの場合も同様な傾向が観察された(B列及びC列)。
【実施例2】
【0039】
水を加えた場合と加えない場合の、加熱によるアンプル内でのセボフルランの分解
約20mLのセボフルランをタイプIの1つ目の50mL入り透明アンプルに入れ、2つ目のアンプルには約20mLのセボフルランと1300ppmの水を入れた。両アンプルともフレームシール(flame−sealed)した後、119℃で3時間オートクレーブした。次いで、2つのアンプルの内容物をガスクロマトグラフィーで分析した。図2は、1番目のアンプルに入れたセボフルランが分解したことを示している。図3は、ルイス酸抑制剤、即ち水を加えた結果、2番目のアンプルに入れたセボフルランは分解しなかったことを示している。
【実施例3】
【0040】
水添加試験(109ppmから951ppm)によるアンプル内でのセボフルランの分
タイプIの透明ガラス製アンプルを用いて、様々なレベルの水がセボフルランの分解を抑制する効果について試験した。約20mLのセボフルランと、約109ppmから約951ppmの範囲の異なるレベルの水を各アンプルに入れた。その後、それらのアンプルをシールした。合計10本のアンプルにセボフルランと様々な量の水を充填した。そのうち5本のアンプルをセットAとし、残りの5本をセットBとした。次いで、それらのアンプルを119℃で3時間オートクレーブした。セットAのサンプルは一晩振とう機に掛け、水分をガラス表面に被覆できるようにした。セットBのサンプルはガラス表面を水で平衡化することなく調製した。幾つかの対照サンプルも調製した。オートクレーブに掛けていない2本のアンプル(対照アンプル1及び対照アンプル2)と1本のボトル(対照ボトル)に、それぞれ、20mLのセボフルランを充填した。どの対照サンプルにも水を全く加えなかった。また、対照サンプルは一晩振とうもしなかった。ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)と総分解産物(メチレングリコールビスヘキサフルオロイソプロピルエーテル、ジメチレングリコールビスヘキサフルオロイソプロピルエーテル、メチレングリコールフルオロメチルヘキサフルオロイソプロピルエーテルを含む)のレベルをガスクロマトグラフィーで測定した。その結果が以下の表2に示されている。
【0041】
【表3】


【0042】
上記表2の結果は、セットA及びセットBのアンプルの場合、少なくとも595ppmの水があれば充分にセボフルランの分解を抑制できることを示している。また、この結果は、一晩振とうしたアンプルと一晩振とうしなかったアンプルとの間に有意な差がないことを示している。
【実施例4】
【0043】
60℃または40℃における水添加セボフルラン試験によるアンプル内でのセボフルランの分解
タイプIの透明ガラス製アンプルを用いて、様々なレベルの水及び温度がセボフルランの分解抑制に及ぼす影響について試験した。約20mLのセボフルランと、約109ppmから約951ppmの範囲の異なるレベルの水を各アンプルに入れた。その後、それらのアンプルをフレームシールした。分解プロセスを加速するため、各水分レベルのサンプルを2つの加熱条件下に置いた。サンプルは、60℃の恒温装置(stability station)に144時間置くか、あるいは40℃の恒温装置に200時間置いた。各サンプルにおいて得られたセボフルランをガスクロマトグラフィーで分析し、pHも調べた。ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(HFIP)とセボフルランの総分解産物を測定した。その結果が以下の表3に示されている。
【0044】
【表4】


【0045】
表3の結果は、40℃で200時間貯蔵した場合、206ppmより以上のレベルの水があればセボフルランの分解を抑制できることを示している。また、サンプルを60℃で144時間またはそれ以上貯蔵した場合には、303ppmより以上のレベルの水があればセボフルランの分解を抑制できる。このデータは、温度が上昇すると、セボフルランの分解抑制に必要な水の量が増大することを示唆している。
【実施例5】
【0046】
活性化されたタイプIIIの褐色ガラス製ボトル内におけるセボフルランの分解
分解したセボフルランの貯蔵に使用したタイプIIIの褐色ガラス製ボトルを試験した。ボトルの内面にかなりの量の腐食があるボトルを選んだ。合計10本のタイプIII褐色ガラス製ボトルを選択した。これらの各ボトルに含まれている分解したセボフルランを排液し、分解していない新鮮なセボフルランでこれらのボトルを数回すすぎ洗いした。約20ppmの水を含有する約100mLの分解していないセボフルランを各ボトルに入れた。開始時(時間ゼロ時)と50℃で18時間加熱した後に、すべてのサンプルをガスクロマトグラフィーで分析した。ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(HFIP)とジメチレングリコールエーテル(P2)について測定した。その結果が以下の表4及び表5に示されている。
【0047】
【表5】


【0048】
【表6】


【0049】
表4及び表5の結果は、これらのボトルのガラス表面が分解したセボフルランにより「活性化」されていたことを示している。このように、「活性化」されたガラス表面は新鮮なセボフルランの分解に対する開始剤として作用した。
【実施例6】
【0050】
活性化されたタイプIII褐色ガラス製ボトル内でのセボフルランの分解に関する追加試験
実施例5の各ボトル内でのセボフルランの分解の程度をガスクロマトグラフィーで定量化した。10本のボトルを、対照Sevoグループ(ボトル2、3、5、7、8を含む)と試験Sevoグループ(ボトル1、4、6、9、10を含む)の2つのグループに分けた。
【0051】
10本のボトルすべてを、約20ppmの水を含有する分解していないセボフルランで再度数回すすぎ洗いした。5本の対照Sevoグループのボトルに対しては、約20ppmの水を含有する100mLのセボフルランを各ボトルに入れた。一方、5本の試験グループボトルに対しては、約400ppmの水(添加)を含有する100mLのセボフルランを各ボトルに入れた。
【0052】
開始時(時間ゼロ時)と50℃で18時間加熱した後にすべてのサンプルをガスクロマトグラフィーで分析した。ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(HFIP)、ジメチレングリコールビスヘキサフルオロイソプロピルエーテル(P2)、及び総分解産物を測定した。その結果が以下の表6に示されている。
【0053】
【表7】


【0054】
表6の結果は、時間ゼロ時では、表4のゼロ時の結果と比べると、セボフルランの有意な分解が観察されなかったことを示している。表6の結果は、試験Sevoグループ(400ppmの水)ではセボフルランの分解度がかなり低減されたことを示している。分解産物P2(ジメチレングリコールビスヘキサフルオロイソプロピルエーテル)、及びS1(メチレングリコールフルオロメチルヘキサフルオロイソプロピルエーテル)の量は、対照グループ1(20ppmの水)の場合よりもずっと少なかった。しかし、試験SevoグループのHFIP濃度はかなり高く、ガラス表面が尚も幾分活性状態にあったことを示唆している。
【0055】
図4は、表5及び表6のデータから得られる分解産物ジメチレングリコールビスヘキサフルオロイソプロピルエーテル(P2)量をグラフで比較したものである。また、図5は、実施例5及び6で現れる分解産物メチレングリコールフルオロメチルヘキサフルオロイソプロピルエーテル(S1)量をグラフで比較したものである。図4及び図5は共に、400ppmの水を付加によりセボフルランの分解が抑制されることを示している。
【実施例7】
【0056】
活性化されたタイプIII褐色ガラス製ボトル内でのセボフルランの分解に関する追加試験
実施例6の試験Sevoグループの5本のボトルからセボフルランをデカントした。各ボトルを新鮮なセボフルランで充分にすすぎ洗いした。次いで、各ボトルに約125mLの水飽和セボフルランを入れた。その後、その5本のボトルを回転機に約2時間掛け、活性化されたガラス表面に水を被覆できるようにした。次いで、各ボトルから水飽和セボフルランを排液し、400(添加)ppmの水を含有する100mLのセボフルランで置換した。50℃で18時間、36時間、及び178時間加熱した後、すべてのサンプルをガスクロマトグラフィーで分析した。ビスヘキサフルオロイソプロピルエーテル(P2)と総分解産物について測定した。その結果が以下の表7に示されている。
【0057】
【表8】


【0058】
表7の結果は、活性化されたガラス表面を加熱する前に水飽和セボフルランで処理することにより、セボフルランの分解が大いに抑制されたことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】同量の酸化アルミニウム(50mg)の存在下において、水の量を増やすとセボフルランの分解度が減少することを実証するクロマトグラムを示している。図1に示されているセボフルランの同定された分解産物は、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(HFIP)、メチレングリコールビスヘキサフルオロイソプロピルエーテル(P1)、ジメチレングリコールビスヘキサフルオロイソプロピルエーテル(P2)、及びメチレングリコールフルオロメチルヘキサフルオロイソプロピルエーテル(S1)である。
【図2】オートクレーブ中において119℃で3時間加熱した後のセボフルランの分解度を表すクロマトグラムを示している。
【図3】水がオートクレーブ中において119℃で3時間加熱した後のセボフルランの分解を抑制する効果を表すクロマトグラムを示している。
【図4】実施例5及び6から得られる活性化されたタイプIIIの褐色ガラス製ボトルにおけるセボフルラン分解産物P2を比較した棒グラフである。このグラフは、400ppmの水を加えることにより、セボフルランの分解が抑制されることを示している。
【図5】実施例5及び6から得られる活性化されたタイプIIIの褐色ガラス製ボトルにおけるセボフルラン分解産物S1を比較した棒グラフである。このグラフは、400ppmの水を加えることにより、セボフルランの分解が抑制されることを示している。
【出願人】 【識別番号】391008788
【氏名又は名称】アボット・ラボラトリーズ
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
【出願日】 平成17年12月27日(2005.12.27)
【代理人】 【識別番号】100062007
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 義雄

【公開番号】 特開2006−137769(P2006−137769A)
【公開日】 平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願番号】 特願2005−374622(P2005−374622)