| 【発明の名称】 |
軟骨整復術治療促進剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】森 陸司 【住所又は居所】東京都中央区京橋2丁目1番9号 中外製薬株式会社内
【氏名】東 佐由美 【住所又は居所】東京都中央区京橋2丁目1番9号 中外製薬株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】外科的軟骨整復術における骨新生と軟骨修復を促進するための、血液由来の未分化細胞の分化促進剤の提供。
【解決手段】天然型または遺伝子工学的手法で作成された副甲状腺ホルモン(PTH)、またはPTHの部分ペプチドの構成アミノ酸を一部他のアミノ酸に置き換えたペプチドなどのPTH誘導体を有効成分として含有する血液由来の未分化細胞促進剤。注射による関節腔内あるいは病変部への局所注入や皮下投与などの全身投与が好ましい。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 副甲状腺ホルモン(PTH)またはPTH誘導体を有効成分として含有する、血液由来の未分化細胞の分化促進剤。 【請求項2】 副甲状腺ホルモン(PTH)が、ヒト1−84PTHである、請求項1記載の分化促進剤。 【請求項3】 副甲状腺ホルモン(PTH)誘導体が、ヒト1−34PTH、ヒト1−38PTH、ヒト1−37PTHまたはヒト1−34PTH−NH2である請求項1記載の分化促進剤。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、軟骨整復術における治療促進剤に関する。さらに詳しくは外科的に軟骨下骨と関節軟骨に欠損部を作成する軟骨整復術における治癒すなわち骨新生と軟骨修復を促進する薬剤に関する。 【背景技術】 【0002】 関節軟骨は、荷重や衝撃に対するクッションの役割を有するとともに、関節での易可動性を保証するものとして重要であるが、同じ軟骨でも骨格成長に重要な役割を果たす成長板軟骨などとは厳密に区別される。すなわち、骨端部などに存在する成長板軟骨細胞では、増殖、分化した後石灰化して骨に置き換わることでその生理的意義を完遂するのに対し、関節軟骨では、石灰化は目的機能に反するものであり、通常石灰化は起こさない。これが関節軟骨が永久軟骨あるいは静止軟骨と言われる所以である。 【0003】 関節軟骨の障害は種々の原因で起こり得る。すなわち、関節の酷使、関節外傷、骨折、感染、慢性関節炎、内分泌異常、代謝異常等である。また、原因を特定し得ない経年変性や老化と密接に関係すると思われる場合も多い。変形性関節症と総称されるこの関節軟骨を中心とした関節構成体の退行性変性を基盤とする関節病態は、高齢化社会を迎え患者数も急速に伸びており、重大な社会問題となっている。病態の進展とともに、軟骨マトリックスの破壊が進行し、軟骨層は薄くなり、荷重部では軟骨下骨の硬化が起こり、これがさらに軟骨にかかるストレスを増大させ、さらに軟骨の変性破壊が進行していく。やがては局所的に軟骨層が全く消失し、軟骨下骨が露出し、摩擦運動により摩耗し象牙質化したりする。 【0004】 関節軟骨のうけた障害は、一般にきわめて修復が困難であり、整形外科領域における大きな問題となっている。軟骨が血管により栄養の補給をうけない組織であることが、この修復の難しさと関係していると思われる。H.K.W.Kimら(J.Bone and Joint Surgery,73A,1301−1305(1991))のウサギを用いた実験がこの間の事情を端的に物語っている。すなわち、ウサギの関節軟骨表層に浅い掻爬傷をつけた場合は、12週間経過後もほとんど修復が認められないのに対して、軟骨下骨にまで達する深い掻爬傷の場合は、4週間でほとんど修復することを観察している。この一見逆説的に見える現象は、深い傷の場合、骨髄からの出血により血液由来の種々の細胞が供給され骨欠損部の骨新生とともに血管のない軟骨組織の修復に関与するためであると解釈できる。通常極めて困難な軟骨修復への一つのアプローチとして現在行われている軟骨整復術(chondroplasty)は、このような考え方に基づくものであるといえる。 【0005】 現在、軟骨整復術としては関節鏡視下に軟骨層が障害をうけている患部にドリルで穴をあける穿孔術や、軟骨下骨に達する掻爬術、壊死組織の切除術などが行われている(陳永振、関節外科、8、113−121(1989))。Childer,Ellwoodら(Clin.Orthop.,144,114−120(1979))は、膝外軟骨障害患者に対し穿孔術を行い、80%以上の患者で良好な結果を得ている。Spragueら(Clin.Orthop.,144,74−83(1979))は、退行性関節炎の膝に、壊死組織切除、掻爬術を施し、73%の患者に関節の硬さ、疼痛の軽減を見ている。外科的治療の目的で骨に欠損を作成する手術は、例えば良性骨腫瘍ならびに骨嚢腫、移植骨の採取時(腸骨など)、関節拘縮、開放骨折、複雑骨折、骨萎縮、無腐性骨壊死、骨炎等で行われており、軟骨整復術は手術部位を関節部に限定した術式ととらえることもできる。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 このように一般には修復の困難な軟骨の障害に、外科的軟骨整復術がある程度効果があるが、この術式における治癒を促進するような薬剤は未だ知られていない。またこの軟骨整復術には、賛否両論があり、短期的にはある程度の効果はあっても、長期的にはメリットはないという説もある。この術式における骨新生と軟骨の修復を促進し得る薬剤があれば、この術式そのものの評価をも高め、関節軟骨障害の治癒に貢献するものと思われる。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者らは、外科的軟骨整復術における骨新生と軟骨修復を促す薬剤を求めて研究を続けてきた結果、副甲状腺ホルモン(PTH)がこのような有用な作用を有することを発見し、本発明を完成するに至った。PTHは副甲状腺より分泌される骨代謝にかかわる最も重要なホルモンであるが、その薬理作用は多岐にわたる。その作用は一言でいえば、骨代謝回転促進作用で、古くより知られた骨吸収促進作用に加えて、近年骨形成作用も注目され、骨粗鬆症治療薬としての可能性が検討されている。 【0008】 PTHの軟骨に対する作用はまだ不明の点が多い。これまでに、PTHがinvitroの実験系で軟骨細胞の増殖や分化機能に影響を与えることが報告されている(Kawashima et al,Endocrinol.Jpn,27,349−356(1983);Burch et al,Calcif.Tissue Int.,35,526−532(1983);Suzukiet al,FEBS Lett.,70,155−158(1976);Takigawa et al,Pro.Natl.Acad.Sci.USA,77,1481−1485(1980);Kato et al,Endocrinology,122,1991−1997(1988)など)。しかし、軟骨細胞の増殖に関する作用については、胎仔期軟骨細胞には促進的であっても、出生後は作用がないという報告が多く、さらにPTHの軟骨細胞分化機能促進の作用は、成長板軟骨細胞で明かでも、関節軟骨細胞では認められないというものがほとんどである。PTHが関節軟骨に対して、実際にその修復や増生を促すことを報告したという例はまだない。 【0009】 本発明者らはPTHが出血を伴う外科的軟骨整復術における血液由来の種々の未分化細胞の分化を促進し、骨欠損部を修復するとともに、軟骨組織の再生を助けるのではないかという仮説に基づき、動物実験を行った。すなわち、ウサギ大腿骨遠位端軟骨表面よりドリルであけた穴の修復を観察したところ、PTH投与群では対照群に比べ、軟骨下骨の増生が速く、正常に近い軟骨層の再生もはるかに速いことが認められた。 【0010】 本発明における副甲状腺ホルモン(PTH)とは、天然型のPTH、遺伝子工学的手法で作成されたPTH、化学的に合成されたPTHを包含し、好ましくは84アミノ酸残基より成るヒトPTH(ヒト1−84PTH)を示す。またPTH誘導体とは、前記のPTHの部分ペプチドや、PTHそのものあるいはその部分ペプチドの構成アミノ酸を一部他のアミノ酸に置き換えたペプチドなどで同様の活性を有するペプチドを意味し、PTHの部分ペプチドとしては、たとえばヒト1−34PTH、ウシ1−34PTHなどがあげられる。1−34PTHとはPTHのN末端から34番めのアミノ酸までの34個のアミノ酸からなるPTHの部分ペプチドを示す。本発明で軟骨整復術における治療促進剤として用いられる副甲状腺ホルモン(PTH)またはPTH誘導体の好ましい例としては、ヒト1−84PTH、ヒト1−34PTH、ヒト1−38PTH、ヒト1−37PTH、ヒト1−34PTH−NH2などがあげられ、さらに好ましくはヒト1−84PTH,ヒト1−34PTHであり、最も好ましいものとしてヒト1−84PTHがあげられる。 【0011】 軟骨整復術とは関節鏡視下に軟骨層が障害をうけている患部にドリルで穴をあける穿孔術や、軟骨下骨に達する掻爬術、壊死組織の切除術など、軟骨の修復を目的とした外科的な軟骨や軟骨下骨への処置を意味する。 【0012】 本発明の薬剤の剤形としてはペプチドの通常の製剤方法により製造される注射剤の他に、例えばマイクロカプセルへの封入あるいはゲル状のシートに含ませるなど局所化および遅効性を期待した剤形も可能である。液剤の場合には、適当な蛋白質を添加したり、あるいは適当な付着防止剤を添加することが好ましい。 【0013】 本発明の薬剤の投与方法は、全身投与でも局所投与でも行い得るが、好ましい例として、注射により関節腔内あるいは病変部への局所注入や皮下投与などの全身投与などがあげられる。 【0014】 本発明のPTHの投与量は、適応疾患、症状などにより異なるが、局所投与では組織レベルで10−15から10−7Mが、全身投与では10から1000μg/headが好ましい。また、投与時期としては軟骨整復術の術前、術後の何れでもよいが、術後投与する方がより好ましい。 【発明の効果】 【0015】 本発明のPTHまたはPTH誘導体を有効成分として含有する薬剤は、外科的軟骨整復術における治癒の促進に有用である。 【実施例】 【0016】 以下に本発明の実施例を示す。実施例で使用したPTHは、特表平4−505259号公報およびJ.Biol.Chem.,265,15854(1990)に記載された方法の改良法を用いて製造されたヒト1−84PTHである。 〔実施例1〕 【0017】 軟骨整復術の動物モデルによる実験として以下のような実験を行った。日本白色種ウサギ(JW/CSK)の左後肢内側から切開し、大腿骨遠位端を露出し、遠位端内側に滅菌したドリルを用いて直径3mm、深さ2mmにわたり、軟骨および硬骨の切除を行う。切開部を縫合し、術後1日めより、1日おきに週3回、関節腔内へPTH100μg/ml溶液0.5mlを投与する。術後21日めおよび対照群は42日めに大腿骨遠位端を摘出し、直ちに10%ホルマリン液を用いて固定する。脱灰後、ヘマトキシリン−エオジン染色(HE染色)、アルシャンブルー染色(軟骨が青く染まる)、そしてサフラニン−O染色を行い、組織標本を作成した。結果を図に示す。 【0018】 図1、図2、図3のHE染色で濃く染まっている部分は、骨(軟骨下骨)の部分であり、図4、図5、図6のアルシャンブルー染色で濃く染まっている部分は軟骨部分である。 【0019】 図より明らかなように、ウサギ大腿骨遠位端軟骨表面よりドリルであけた穴の修復は、PTH投与群では対照群の同時期(術後21日め)のものはもとより、対照群の術後42日経過したものに比べても、軟骨下骨の増生が速く、正常に近い軟骨層の再生もはるかに速いことが認められた。 【図面の簡単な説明】 【0020】 【図1】PTH投与群の術後21日めのHE染色組織標本の顕微鏡写真である。 【図2】対照群の術後21日めのHE染色組織標本の顕微鏡写真である。 【図3】対照群の術後42日めのHE染色組織標本の顕微鏡写真である。 【図4】PTH投与群の術後21日めのアルシャンブルー染色組織標本の顕微鏡写真である。 【図5】対照群の術後21日めのアルシャンブルー染色組織標本の顕微鏡写真である。 【図6】対照群の術後42日めのアルシャンブルー染色組織標本の顕微鏡写真である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003311 【氏名又は名称】中外製薬株式会社 【住所又は居所】東京都北区浮間5丁目5番1号
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| 【出願日】 |
平成17年12月26日(2005.12.26) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2006−137768(P2006−137768A) |
| 【公開日】 |
平成18年6月1日(2006.6.1) |
| 【出願番号】 |
特願2005−372049(P2005−372049) |
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