| 【発明の名称】 |
発癌予防剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】秋久 俊博
【氏名】徳田 春邦
【氏名】浮谷 基彦
【氏名】長谷川 大輔
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| 【要約】 |
【課題】安全で有効な発癌予防剤を提供する。
【解決手段】本発明の発癌予防剤は、ドルスマンニンA、キサントアンゲロールI、キサントアンゲロールJからなる群から選ばれた少なくとも1種のカルコン類化合物、キサントトキシン、イソピンピネリン、オスセノールからなる群から選ばれた少なくとも1種のクマリン類化合物、イソババチン、マンデレアフラバノンB、8−ゲラニルナリンゲニンからなる群から選ばれた少なくとも1種のフラバノン類化合物、及び、ジアセチレン類化合物である(11S,16R)−ジヒドロキシオクタデカ−9Z,17−ジエン−12,14−ジイン−1−イルアセタートのうちの少なくとも1種の化合物を含有する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ドルスマンニンA、キサントアンゲロールI(IUPAC名:2′,3′−[2−メチル−2−(4−メチル−3−ペンテニル)ピラノ]−4,4′−ジハイドロキシカルコン)、キサントアンゲロールJ(IUPAC名:2′,4,4′−トリヒドロキシ−3′−(3−ハイドロキシ−3,7−ジメチル−2−オクタエニル)カルコン)からなる群から選ばれた少なくとも1種のカルコン類化合物、キサントトキシン、イソピンピネリン、オスセノールからなる群から選ばれた少なくとも1種のクマリン類化合物、イソババチン、マンデレアフラバノンB、8−ゲラニルナリンゲニンからなる群から選ばれた少なくとも1種のフラバノン類化合物、及び、ジアセチレン類化合物である(11S,16R)−ジヒドロキシオクタデカ−9Z,17−ジエン−12,14−ジイン−1−イルアセタートのうちの少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする発癌予防剤。 【請求項2】 前記化合物は、アシタバを処理して得られることを特徴とする請求項1に記載の発癌予防剤。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は発癌予防剤に関し、特にカルコン類化合物、クマリン類化合物、フラバノン類化合物及びジアセチレン類化合物の少なくとも1種を含有する発癌予防剤に関する。 【背景技術】 【0002】 従来から、セリ科多年生植物であるアシタバからの抽出物が発癌予防作用を有することは知られている(特許文献1参照)。また、発癌予防剤として有効なカルコン類化合物が存在することは公知である(非特許文献1参照)。 【特許文献1】特開2003−155248号公報 【非特許文献1】okuyamaら,Planta Med.,57巻,242頁,1991年 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 しかしながら、特許文献1は、具体的に発癌予防に関して十分な効果を有する特定の成分を開示するものではない。一方、発癌予防の大きなニーズに鑑みて、安全で有効な発癌予防剤が得られないものかとの期待は大きい。 本発明は、安全で有効な発癌予防剤を提供することを課題としている。 【課題を解決するための手段】 【0004】 本発明は、上記の課題を解決するものとして、アシタバ成分を有効成分とする新しい発癌予防剤を提供する。すなわち本発明は、アシタバ成分に発癌予防作用を見出した点に重要な意味を有するものであり、本発明の請求項1による発癌予防剤は、ドルスマンニンA(以下、本発明において「化合物1」と称することも有る)、キサントアンゲロールI(以下、本発明において「化合物2」と称することも有る)、キサントアンゲロールJ(以下、本発明において「化合物3」と称することも有る)からなる群から選ばれた少なくとも1種のカルコン類化合物、キサントトキシン(以下、本発明において「化合物4」と称することも有る)、イソピンピネリン(以下、本発明において「化合物5」と称することも有る)、オスセノール(以下、本発明において「化合物6」と称することも有る)からなる群から選ばれた少なくとも1種のクマリン類化合物、イソババチン(以下、本発明において「化合物7」と称することも有る)、マンデレアフラバノンB(以下、本発明において「化合物8」と称することも有る)、8−ゲラニルナリンゲニン(以下、本発明において「化合物9」と称することも有る)、からなる群から選ばれた少なくとも1種のフラバノン類化合物、及び、ジアセチレン類化合物である(11S,16R)−ジヒドロキシオクタデカ−9Z,17−ジエン−12,14−ジイン−1−イルアセタート(以下、本発明において「化合物10」と称することも有る)のうちの少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする。 【0005】 上述のような化合物であれば、発癌予防効果に優れ、かつ、安全性も高い。 なお、上述した本発明の化合物には、医学的に使用され薬理学的に許容される各化合物の塩も含むものであるもの。このような塩として、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩等の金属塩;アンモニウム塩のような無機塩、t−オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N−メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N−ベンジル−フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニア塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機アミン塩;及び、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、アスパラギン塩のようなアミノ酸塩等を挙げることができる。 【0006】 また、上述した請求項1に記載の本発明の化合物が溶剤和物(例えば水和物)を形成する場合は、これらもすべて本発明に含まれる。例えば、本発明の化合物が、大気中に放置されたり、または再結晶することにより、水分を吸収し、吸着水が付着したり、水和物を形成する場合がある。本発明にはこのような溶剤和物も含まれる。 さらに、請求項1に記載の本発明の化合物は、それぞれいくつかの不斉炭素原子を有しており、このため、種々の光学異性体が存在する。本発明においては、特に記述しない限り、ラセミ化合物を含むこれらの異性体及びこれらの異性体の混合物をもすべて含むものである。 本発明の請求項2による発癌予防剤は、請求項1において、前記化合物は、アシタバを処理して得られることを特徴とする。 【発明の効果】 【0007】 本発明によれば、安全かつ発癌予防効果に優れた発癌予防剤が提供される。 【発明を実施するための最良の形態】 【0008】 次に、実施例により本発明を具体的に説明する。すなわち、アシタバ浸出液からの前記化合物1〜10の単離、当該化合物1〜10の構造解析及び同定、ならびに本発明に係る発癌予防剤の効果確認試験について説明する。 [アシタバ浸出液からの化合物1〜10の単離について] まず、アシタバ浸出液(茎部切断面からの浸出液、300g)を減圧乾燥し、乾燥物(22.3g)を得た。これをn−ヘキサン/メタノール/水(95:95:10)にて分層し、n−ヘキサン画分(0.504g)を得た。メタノール/水画分を更に酢酸エチル/水(1:1)で分層し、酢酸エチル画分(15.3g)を得た。更に上記残部である水画分についてn−ブタノール/水(1:1)で分層し、n−ブタノール画分(0.184g)、水画分(5.79g)を得た。 【0009】 上記のようにして得られた酢酸エチル画分はシリカゲル(500g)カラムクロマトグラフィーにより分画を行なった。溶出液として、n−ヘキサン/酢酸エチル[95:5(1.5L)、8:2(2.0L)、1:1(4.0L)、0:1(5.0L)]、酢酸エチル/メタノール[4:1(2.0L)、1:1(3.5L)、0:1(0.5L)]を順に用いて分画し、12画分(Fr.A〜L:Fr.A(181.2mg)、Fr.B(819.3mg)、Fr.C(944.0mg)、Fr.D(7817.2mg)、Fr.E(3576.6mg)、Fr.F(529.0mg)、Fr.G(170.9mg)、Fr.H(179.0mg)、Fr.I(54.5mg)、Fr.J(79.8mg)、Fr.K(76.3mg)、Fr.L(33.1mg))に分画した。 【0010】 Fr.Dについて、更にシリカゲル(500g)カラムクロマトグラフィーにより分画を行なった。溶出液として、n−ヘキサン/酢酸エチル[0:1(0.5L)、9:1(1.5L)、85:15(5.0L)、8:2(1.0L)、75:25(0.5L)、7:3(3.0L)、6:4(0.5L)、1:1(1.0L)、4:6(0.5L)、3:7(0.5L)、2:8(0.5L)、1:9(0.5L)、0:1(0.5L)]、酢酸エチル/メタノール[7:3(1.5L)、1:1(0.5L)、3:7(0.5L)、0:1(0.5L)]を順に用いて分画し、13画分(Fr.D1〜D13:Fr.D1(14.9mg)、Fr.D2(3.6mg)、Fr.D3(24.2mg)、Fr.D4(23.1mg)、Fr.D5(138.4mg)、Fr.D6(1251.0mg)Fr.D7(1533.1mg)、Fr.D8(754.6mg)、Fr.D9(679.4mg)、Fr.D10(1663.0mg)、Fr.D11(90.2mg)、Fr.D12(119.7mg)、Fr.D13(230.9mg))を得た。 【0011】 Fr.D5はオクタデシルシリカ(ODS)カラムによる分取HPLC(カラム:Hypersil(登録商標) ODS(粒子径5μm、長さ25cm×内径10mm;溶離液:メタノール/水/酢酸=75:25:1;流速3.0mL/分)を行ない、化合物8(4.4mg;保持時間15.2分)を単離した。 Fr.D9はODS(10g)カラムクロマトグラフィーにより分画を行なった。溶出液として、メタノール/水[投入順に7:3(1.3L)、1:0(0.4L)]を用いて分画し、4分画(Fr.D9a〜D9d:Fr.D9a(183.6mg)、Fr.D9b(393.4mg)、Fr.D9c(24.7mg)、Fr.D9d(34.1mg))を得た。 【0012】 このFr.D9bはODSカラムによる分取HPLC(カラム:Pegasil ODS((株)センシュー科学製、粒子径5μm、長さ25cm×内径10mm);溶離液:メタノール/水/酢酸=80:20:1;流速2.0mL/分)を行ない、化合物2(3.4mg;保持時間18.4分)、及び化合物3(1.8mg;保持時間20.0分)、化合物9(3.6mg;保持時間31.0分)を単離した。 【0013】 Fr.EはODS(120g)カラムクロマトグラフィーにより分画を行なった。溶出液として、メタノール/水[投入順に7:3(3.0L)、8:2(0.9L)、1:0(0.4L)]を用いて分画し、9分画(Fr.E1〜E9:Fr.E1(110.8mg)、Fr.E2(1008.1mg)、Fr.E3(320.9mg)、Fr.E4(125.5mg)、Fr.E5(90.3mg)、Fr.E6(62.4mg)、Fr.E7(52.2mg)、Fr.E8(1417.5mg)、Fr.E9(44.7mg))を得た。 【0014】 このFr.E1はODSカラムによる分取HPLC(カラム:ERC−ODS−2532(横浜理化株式会社製、粒子径5μm、長さ25cm×内径10mm);溶離液:メタノール/水/酢酸=65:35:1;流速2.0mL/分)を行ない、化合物4(2.7mg;保持時間7.6分)、及び化合物6(2.1mg;保持時間14.8分)を単離した。 【0015】 また、Fr.E4はODSカラムによる分取HPLC(カラム:ERC−ODS−2532(横浜理化株式会社製、粒子径5μm、長さ25cm×内径10mm);溶離液:メタノール/水/酢酸=65:35:1;流速2.0mL/分)を行ない、化合物5(1.6mg;保持時間10.8分)、及び化合物10(22.0mg;保持時間51.6分)を単離した。 【0016】 Fr.FはODS(30g)カラムクロマトグラフィーにより分画を行なった。溶出液として、メタノール/水[投入順に6:4(0.4L)、7:3(0.3L)、8:2(0.8L)、9:1(0.3L)、1:0(0.4L)]、酢酸エチル(0.4L)を用いて分画し、10分画(Fr.F1〜F9:Fr.F1(80.1mg)、Fr.F2(54.1mg)、Fr.F3(71.9mg)、Fr.F4(31.5mg)、Fr.F5(45.2mg)、Fr.F6(17.9mg)、Fr.F7(47.4mg)、Fr.F8(32.3mg)、Fr.F9(2.4mg)、Fr.F10(10.2mg))を得た。 【0017】 このFr.F3はODSカラムによる分取HPLC(カラム:Pegasil ODS((株)センシュー科学製、粒子径5μm、長さ25cm×内径10mm);溶離液:メタノール/水/酢酸=65:35:1;流速2.0mL/分)を行ない、化合物7(8.9mg;保持時間19.6分)を単離した。 またFr.F4はODSカラムによる分取HPLC(カラム:Pegasil ODS((株)センシュー科学製、粒子径5μm、長さ25cm×内径10mm);溶離液:メタノール/水/酢酸=80:20:1;流速2.0mL/分)を行ない、化合物1(2.4mg;保持時間31.2分)を単離した。 【0018】 なお、アシタバの浸出液を調製する際の溶剤としては、水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等)、脂肪酸エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ハロゲン化炭化水素類(クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン等)、脂肪族炭化水素類(n−ヘキサン、シクロヘキサン等)等の溶媒の一種又は二種以上の混合溶媒が使用できる。 【0019】 また、抽出方法は、上記方法に限定されず、水溶性又は高極性溶媒から徐々に低極性溶媒に抽出する過程を経ることなく、アシタバ浸出液をヘキサン等の低極性溶媒で直接抽出してもよい。 また、溶剤に浸すアシタバの部位は、特に限定されず、茎、葉及び根等のいずれの部位でもよい。 【0020】 [化合物1〜10の構造解析及び同定について] 上記の化合物10種(化合物1〜10)について、構造解析及び同定を行なったので、その結果を説明する。 化合物1〜10の構造解析はMS、IR、UV、1H−NMR、13C−NMR、2次元NMRである相関分光法(1H−1HCOSY)、異種核多量子コヒーレンス法(HMQC)、異種核遠隔多量子相関法(HMBC)、及び、核オーバーハウザー交換分光法(NOESY)を用いて行なった。この構造解析による化合物1〜10の構造を図1に示す。 【0021】 化合物2、3はこれまで文献記載の無い新規化合物であった。新規化合物2、3の1H−NMR及び13C−NMRデータをHMBCデータとともに表1、2に示した。また、図2に、新規化合物2、3のNOESYスペクトル法にて得られた核オーバーハウザー効果(NOE)相関関係を立体構造式とともに両方の矢印で示した。 【0022】 他の既知化合物の構造は、対応する化合物との種々のスペクトルデータの文献値(化合物1:Ngadjuiら、Phytochemistry、48巻、349頁、1998年;化合物4:Masudaら、Phytochemistry、47巻、13頁、1998年;化合物5:Furuyaら、Chem. Pharm. Bull.、15巻、1362頁、1967年;化合物6:Murrayら、Tetrahedron、27巻、1247頁、1971年;化合物7:Komatsuら、Chem. Pharm. Bull.、26巻、3863頁、1978年;化合物8:Raoら、Phytochemistry、46巻、1271頁、1997年;化合物9:Shiratakiら、Chem. Pharm. Bull.、33巻、444頁、1985年;化合物10:Liuら、Phytochemistry、49巻、211頁、1998年)との比較により確認した。但し、これらの化合物の発癌予防効果については知られていない。 【0023】 新規化合物2、3の諸性質及びスペクトルデータを次に示す。 (1)キサントアンゲロールI(2′,3′−[2−メチル−2−(4−メチル−3−ペンテニル)ピラノ]−4,4−ジハイドロキシカルコン)(化合物2): 黄色結晶.融点:106〜109℃.比旋光度[α]25D:8.00(濃度c=0.1%、溶媒:メタノール).UV(溶媒:メタノール)λmax(単位:nm):206、350.IR νmax(単位:cm-1):3267、2971、2930(Ar−O)、1639(C=O)、1588、1512(芳香環由来)、1441、1334、1287、1233、1167、1072、832、811. EI−Ms m/z(%):392(70)[M+]1269(85)、149(100) 高分解能EI−MS(m/z値):392.1988(理論値C25H28O4[M+]、392.1987) 化合物2の13C−NMR、1H−NMR及びHMBCのデータは表1に示した。 化合物2の13C−NMR(125MHz)、1H−NMR(500MHz)、及びHMBCスペクトルデータ(溶媒:メタノール−d4) 【0024】 【表1】
【0025】 なお、括弧内の数値は結合定数J値(ヘルツ)である。 (2)キサントアンゲロールJ(2′,4,4′−トリヒドロキシ−3′−(3−ハイドロキシ−3,7−ジメチル−2−オクタエニル)カルコン)(化合物3): 黄色結晶.融点:120〜123℃.比旋光度[α]25D:6.0(濃度=0.1%、溶媒:メタノール).UV(溶媒:メタノール)λmax(単位:nm):206、368.IR νmax(単位:cm-1):3369、2969、2928(Ar−O)、1605(C=O)、1562、1512(芳香環由来)、1491、1442、1370、1218、1292、1236、1168、1107、832、799. EI−Msm/z(%):410(11)、3929(42)、269(50)、203(36)、149(100)、120(34). 高分解能EI−MS(m/z値):410.2096(理論値C25H30O5[M+]、410.2093). 化合物3の13C−NMR、1H−NMR及びHMBCはデータを表2に示した。 化合物3の13C−NMR(12、5MHz)、1H−NMR(500MHz)、及びHMBCスペクトルデータ(溶媒:アセトン−d6) 【0026】 【表2】
【0027】 なお、括弧内の数値は結合定数J値(ヘルツ)である。 以下には新規化合物2、3の構造決定について述べる。 化合物2は、高分解能EI−MS([M+]m/z:392.1987)より分子式C25H28O4を持つことが示された。IRスペクトルは水酸基、カルボニル基、芳香環の存在を示した。1H−NMRスペクトル(δ(ppm)、CD3OD)は6.80(2H、d)、7.47(2H、d)よりパラ位に置換基を持つベンゼンプロトンのシグナルを示し、また、6.40(1H、d)、7.44(1H、d)に互いにオルト位に位置する2個のベンゼンプロトンに帰属されるシグナルを示した。このことから4、2′、3′、4′位に置換基を持つカルコン骨格をもつ化合物であることが示唆された。さらに1.44(s)、1.60(s)、1、67(2H、m)、2.12(2H、dd)、5.03(1H、t)よりジメチルアリル基の存在が示唆された。以上のデータに加え1H−NMR及び13C−NMRデータのドルスマニンA(Ngadiuiら、Phytochemistry、48巻、349頁、1998年)との比較により2′、3′位にピラン環が有る事が明らかになった。この構造の正しいことは1H−1HCOSY、HMQC、HMBC、及び、NOESYスペクトルの解析により確認した。 【0028】 化合物3は高分解能EI−MS([M+]m/z:410.2096)より分子式C25H30O5を持つことが示された。IRスペクトルは水酸基、カルボニル基、芳香環の存在を示した。1H−NMRスペクトル(δ(ppm)、アセトン−d6)は6.87(2H、d)、7.67(2H、d)よりパラ位に置換基を持つベンゼンプロトンのシグナルを示し、また、6.45(1H、d)、7.91(1H、d)に互いにオルト位に位置する2個のベンゼンプロトンに帰属されるシグナルを示した。このことから4、2′、3′、4′位に置換基を持つカルコン骨格をもつ化合物であることが示唆された。さらに1.19(s)、1.50(2H、m)、1.57(s)、1.61(s)、1.65(2H、m)、2.08(2H、m)、2.71(2H、m)、5.10(1H、tt)より水酸基を持つゲラニル基の存在が示唆される。以上のデータに加え1H−NMR及び13C−NMRデータのキサントアンゲロール(Babaら、Phytochemistry、29巻、3907頁、1990年)との比較により3′位にゲラニル基が置換されていることが明らかになった。この構造の正しいことは1H−1HCOSY、HMQC、HMBC、及び、NOESYスペクトルの解析により確認した。 【0029】 なお、化合物1〜10は、上記のような化学構造式で示されるものであれば、アシタバから抽出した天然化合物に限られず、天然化合物を修飾し、或いは、化学合成することにより得るものであってもよい。 上述した本発明の化合物1〜10は、単独であるいは混合して用いることができる。 また、化合物1〜10は、適当な医薬用の担体又は希釈剤と組み合わせて医薬とすることができ、通常の如何なる方法によっても製剤化でき、経口又は非経口投与するための固体、半固体又は液体の剤形に処方することができる。処方にあたっては、他の医薬活性成分との配合剤としてもよい。 【0030】 例えば、日本薬局方に記載されている各種製剤、即ち、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、乾燥エキス剤、トローチ剤等の内用固形製剤、流エキス剤、エリキシル剤、酒精剤、シロップ剤、リモナーデ剤等の内容液剤、チンキ剤、リニメント剤、ローション剤等の外用液剤、硬膏剤、軟膏剤、パップ剤等の外用剤などに製剤化できる。また、投与可能であるならば、吸入剤、エアゾール剤、注射剤、点眼剤、座剤等にも用途に応じて製剤化してもよい。 【0031】 経口投与においては、成人に対し体重1kg当り0.5〜500mg/日の範囲で投与するのが好ましい。 また、本発明に係る化合物1〜10は発癌予防の薬剤として使用するだけでなく、種々の飲食品に添加し、発癌予防に有効な機能性飲食品を製造するのにも有用なものである。このような機能性飲食品の形態の例としては、顆粒、錠菓、ゼリー、飴、飲料などが挙げられる。また、本発明に係る化合物1〜10は、人間の食べる食品としてだけでなく、ペット、家畜、競技用動物などの人間以外の動物の飼料に添加して利用され得る。 【0032】 [発癌予防効果の確認試験について] 次に、本発明の効果を確認するために行なった試験について説明する。 (Epstein−Barrウイルス(EBV)活性化抑制試験) EBV活性化抑制試験は、抗発癌プロモーター探索の一次スクリーニング法として知られた試験であり、迅速、かつ定量性に優れ、加えて、微量活性成分の検出が可能な点で優れた試験である。 【0033】 まず、試験の手順について図1のスキームを参照しながら説明する。なお、本手順は、徳田らの方法(Cancer Letters、40巻、309頁、1988年)準拠している。 (1)1×106/mLのRaji(ラジ)細胞に、発癌プロモーターとして、20ng/mLの濃度の12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート(TPA)を32pmo1加え、さらにTPAの活性発現のために相乗効果として働くn−酪酸を加えた。 (2)そこに、水、エタノール、又はジメチルスルホキシドに溶解した所定量の被験物質を添加して、37℃で48時間培養した。 (3)培養終了後、上咽頭癌患者の血清(TPAにより活性化された細胞由来の抗体を含む)を用いた間接蛍光抗体法によりEBV早期抗原の発現を検出した。 【0034】 上記の手順にしたがって試験を行なった後、TPAのみを加えた群(コントロール)のEBV早期抗原の発現率を100%として、被験物質添加物のEBV早期抗原の発現率を求め、次式(1)により被験物質のEBV早期抗原の発現阻害率(%)を算出した。 EBV早期抗原の発現阻害率 =100−被験物質添加群のEBV早期抗原の発現率(%)…式(1) 【0035】 検定は、前述のようにしてアシタバ浸出液から得られた化合物1〜10を被験物質とし、各被験物質を種々の濃度(被験物質/TPAのモル比)に調製して行った。この検定の結果を表3に示す。また、参照化合物としてクルクミンを被験物質に用いた。 10種のカルコン類、クマリン類、フラバノン類、及びジアセチレン類化合物のEBV発現阻害率(%) 【0036】 【表3】
【0037】 なお、被験物質の濃度が1000倍モル濃度の欄の括弧内の数値は、ラジ細胞の生存率(%)を示す。この数値が高いほうが正常細胞に対する悪影響が小さい、すなわち安全性が高いといえる。表3に示されるように、アシタバ浸出液の成分は阻害率の高い化合物を有している。発癌予防効果があると知られている参照化合物のクルクミン(Cancer Letters、159巻、135頁、2000年)と比較すると、化合物2、3、6〜9は1000倍モル濃度ではクルクミンと同様に100%の値を示し、10倍モル濃度ではクルクミンよりも強い9〜12%の値を示した。このことから抗発癌プロモーター活性に優れていることが確認された。更に、これらは本検定において高いラジ細胞生存率を示したことから、高い安全性を持つ発癌予防剤として期待できる。 【0038】 さらに、化合物1〜10をNO障害に対する抑制試験を行い、活性を示したので説明する。 (NO障害に対する抑制試験) (±)−(E)−4−メチル−2−[(E)−ハイドロキシイミノ]−5−ニトロ−6−メトキシ−3−ヘキセナミド(NOR1)処理による細胞形態変化抑制試験は発癌イニシエターの一次スクリーニング法として知られた試験である。NOはガス状のフリーラジカルであり、その過剰産生が慢性化すると、胃がんや大腸がんの危険性が高まるといわれている。このことから、NOの過剰生産を抑制することが発癌予防に有効であるといえる。この試験は迅速、かつ微量活性成分の検出が可能な点で優れた試験である。 【0039】 試験方法について説明する。なお、本手順は、徳田らの方法(Cancer Letters 205巻、9頁、2004年)に準拠している。 (1)イーグルの最小必要培地より得た5×105/mLのヒト正常肝由来細胞を3日間培養する。 (2)そこに被験物質を加え、その1分後にNOドナーであるNOR1を加えCO2インキュベーターで培養する。 (3)細胞の形態変化を光学顕微鏡にて測定する(250以上の形態変化を示した細胞数を測定する。)。 【0040】 上記の手順に従って試験を行なった後、被験物質を加えない群をコントロールとし、次式によりNO障害に対する抑制率を算出した。 NO障害に対する抑制率 =NOR1のみで形態変化した細胞(%)/NOR1と被験物質を加えたときの形態変化した細胞(%)…式(2) 前述のようにアシタバ浸出液から得られた化合物1〜10を被験物質として行った検定の結果を表4に示す。なお、参照化合物として、発癌予防効果があることが知られているクルクミン(Cancer Letters、159巻、135頁、2000年)と、NOスカベンジャーである2−(4−カルボキシフェニル)−4,4,5,5−テトラメチルイミダゾリン−1−オキシル3−オキシドナトリウム塩(カルボキシ−PTIO)を被験物質に用いた結果も示した。 【0041】 【表4】
【0042】 表4に示すように、化合物2、3、6、8、9は参照化合物と同程度、又はそれ以上の活性を示した。このことから抗発癌イニシエーター活性を有することが確認された。これらの化合物は発癌予防剤として期待できる。 【図面の簡単な説明】 【0043】 【図1】本発明に係る化合物1〜10の化学構造式を示す図である。 【図2】本発明に係る化合物2、3のNOESYスペクトル法により得られた核オーバーハウザー効果(NOE)相関関係を説明する図である。 【図3】EBV活性化抑制試験の手順を説明する図である。 【図4】NO障害に対する抑制試験の手順を説明する図である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】899000057 【氏名又は名称】学校法人日本大学
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| 【出願日】 |
平成16年11月9日(2004.11.9) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100066980 【弁理士】 【氏名又は名称】森 哲也
【識別番号】100075579 【弁理士】 【氏名又は名称】内藤 嘉昭
【識別番号】100103850 【弁理士】 【氏名又は名称】崔 秀▲てつ▼
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| 【公開番号】 |
特開2006−131594(P2006−131594A) |
| 【公開日】 |
平成18年5月25日(2006.5.25) |
| 【出願番号】 |
特願2004−325369(P2004−325369) |
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