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【発明の名称】 皮膚疾患治療用外用剤
【発明者】 【氏名】濱本 英利

【氏名】遠藤 充

【氏名】松村 周永子

【氏名】塩田 加奈子

【氏名】石橋 賢樹

【要約】 【課題】患部を目立たなくしたり、皮膚細胞の過剰増殖により生じたカスなどを積極的に除去するために患部を被覆できる外用剤であって、患部の蒸れや薬剤の過剰吸収による副作用が抑制されているものを提供する。

【解決手段】皮膚疾患治療用外用剤は、エマルション型接着剤成分、水、および皮膚疾患治療用薬剤を含むことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルション型接着剤成分、水、および皮膚疾患治療用薬剤を含むことを特徴とする皮膚疾患治療用外用剤。
【請求項2】
上記水の含有量が20質量%以上である請求項1に記載の乾癬治療用外用剤。
【請求項3】
上記エマルション型接着剤成分が、ポリ酢酸ビニル系,ポリアクリル酸エステル系,ポリウレタン系およびゴムラテックス系からなる群より選択される1または2以上の混合物である請求項1または2に記載の皮膚疾患治療用外用剤。
【請求項4】
上記エマルション型接着剤成分がポリ酢酸ビニルである請求項1または2に記載の皮膚疾患治療用外用剤。
【請求項5】
上記皮膚疾患治療用薬剤が、ステロイド剤,コールタール剤,ビタミンD3誘導体,ビタミンA誘導体,サリチル酸および免疫抑制剤からなる群より選択される1または2以上の混合物である請求項1〜4のいずれかに記載の皮膚疾患治療用外用剤。
【請求項6】
上記皮膚疾患治療用薬剤がステロイド剤である請求項1〜4のいずれかに記載の皮膚疾患治療用外用剤。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、乾癬等の皮膚疾患を治療するための外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乾癬や皮膚炎等の皮膚疾患は、悪性腫瘍自体でもない限り、致死的な疾患ではない。しかし、痒みを伴うなど不快なものが多いばかりでなく、安眠できなくなったり、はがれ落ちる皮膚を周囲にばらまいてしまうことがある。そして何よりも、見た目が悪いという問題がある。そのために、日常的な一般活動を止めたり変更せざるを得なくなったり、皮膚疾患を隠すための服装をしなければならなかったり、時には自殺さえ考えるなど、皮膚疾患患者の生活の質は、肉体的にも精神的にも損なわれている。
【0003】
それにも関わらず、多くの皮膚疾患の原因は未だ不明な点が多い。遺伝子疾患や自己免疫疾患といわれているものもあるが、やはり特効薬的な治療方法は見出されていないのが現状である。しかも、症状の改善と悪化が交互に繰り返されつつ、治療が長期間にわたる場合が多い。その一方で副作用のおそれがある薬剤を投与され続けているというのが実情であり、患者は治療に対する不安と苛立ちを常に持っている。
【0004】
これら皮膚疾患には、ステロイド剤等を含む軟膏やクリーム剤の適用が一般的である。しかし、単に外用剤を塗布するのみでは衣服などに付着してしまい、薬剤効果が十分に発揮されないという問題があった。そこで、外用剤の単純塗布では十分な効果がみられない場合には、外用剤を塗布した患部の上を、患部よりもやや大きめのプラスチックフィルムで覆う密封閉鎖療法(Occlusive Dressing Therapy、略してODTといわれることもある)が行なわれていた。
【0005】
しかし、密封閉鎖療法には、薬剤の副作用を増大させるという問題がある。皮膚の角質層は、普通の状態で約10%の水分を有しているが、その主成分であるケラチンには水を吸収する性質があるため、皮膚をプラスチックフィルムなどで覆って湿度を100%にすると、水分量は10〜30%も増加する。そして、塗布された製剤中の薬剤は、その濃度差に従って角質層に拡散するので、角質水分量の増加により経皮吸収性が増大する。その上、角質層中における薬剤の移動が容易になるため、真皮への移行量も増大する。その結果、密封閉鎖療法において特にステロイド剤を用いた場合には、皮膚萎縮や毛細血管の拡張などの副作用が深刻になった。
【0006】
また、密封閉鎖療法は潰瘍などの湿潤性病変に用いることができないばかりでなく、全身的な影響を生じ易い乳幼児や、皮膚からの薬剤吸収量が多い老人では、特に副作用が問題となる。
【0007】
更に、密封閉鎖療法では、毛のう炎やセツなどの細菌性感染症や、汗の貯留を原因とする汗疹を生じることがある。また、特に夏には患部が蒸れ、悪臭を発することさえある。
【0008】
この様に種々の問題がある密封閉鎖療法ではあるが、1960年代には皮膚疾患の治療方法として流行し、それ以後も改良方法が検討されている。
【0009】
例えば特許文献1には、糖質コルチコイド(ステロイド剤の一種),溶媒および水不溶性被膜形成剤を含む爪乾癬治療用マニキュア液が開示されている。しかし、当該製剤はあくまで爪乾癬を対象とするマニキュア液であって、速乾性が志向されている。従って、各実施例で用いられている溶媒には、96%エタノールが含まれているものがあるが、エチルアセテートとブチルアセテートとの混合溶媒である。つまり、当該マニキュア液は有機高分子の有機溶媒溶液であるので、乾いた後にできた被膜は非常に密なものとなり、水の放散能を有さない。その結果、皮膚疾患患部に適用すると、ステロイド剤の副作用や蒸れなど密封閉鎖療法と同様の問題が生じる。
【0010】
特許文献2には、皮膚疾患患部にシアノアクリラートエステル組成物を適用し、in situで重合させることによって被膜を形成する方法が記載されている。しかし、当該組成物はいわゆる瞬間接着剤類似のものであって、水の放散性はないことから、やはり密封閉鎖療法と同様の問題が生じる。実際、特許文献2の[発明の属する技術分野]項には、当該組成物により形成される被膜は閉塞層として機能することが明示されている。
【0011】
また、特許文献3には、アニオンポリマー等とカチオンポリマーを含む物質であって、水の存在下でフィルムまたはゲルを形成するものが記載されている。ここで、当該文献には「フィルムまたはゲル」を形成すると記載されているが、各ポリマーは水の存在下でアニオンとカチオンの静電的作用により互いに架橋される(ゲル化する)ので、形成されるのはフィルム状のものであっても、学術的な定義ではゲルである。この様な場合、極性基周辺に結合した水分子までが蒸発することはあり得ず、常に水分が内包された状態になる。その結果、むしろ患部に水分を与えてしまうことになり、当然に患部の水分は放散されないので、当該製剤を皮膚疾患患部に投与すれば、密封閉鎖療法と同じ問題が起こる。
【特許文献1】特開平11-130679号公報(請求項1,段落[0015],実施例)
【特許文献2】特開平13-521914号公報(請求項1,段落[0002])
【特許文献3】特開平13-513549号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した様に、皮膚疾患に対してはステロイド剤を含有する外用剤が主に用いられており、密封閉鎖療法も併用される場合があった。しかし、薬剤の過剰な皮膚吸収による副作用や、蒸れ等による悪影響があり、必ずしも皮膚疾患にとり有効なものとはいえなかった。
【0013】
そこで、本発明が解決すべき課題は、患部を目立たなくしたり、皮膚細胞の過剰増殖により生じたカスなどを積極的に除去するために患部を被覆できる外用剤であって、患部を密封閉鎖するものではないことから、蒸れや薬剤の過剰吸収による副作用が抑制されているものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、特に患部で被膜を形成するための成分につき鋭意研究を進めた。その結果、いわゆるエマルション型接着剤成分を水に懸濁したもので患部を被覆すれば、水分の蒸散に伴って患部の水分を放散できると共に、乾固後においても患部の湿度を適度に保つことによって、患部の蒸れや薬剤の過剰な吸収も抑制できることを見出して、本発明を完成した。
【0015】
即ち、本発明の皮膚疾患治療用外用剤は、エマルション型接着剤成分、水、および皮膚疾患治療用薬剤を含むことを特徴とする。
【0016】
上記水の含有量は20質量%以上が好ましい。20質量%未満であるとエマルション型接着剤成分の均一分散が困難になる場合があるのみでなく、当初の水分含量が十分でないと、形成される被膜の水分透過性が十分に発揮できないおそれがあるからである。
【0017】
上記エマルション型接着剤成分としては、ポリ酢酸ビニル系,ポリアクリル酸エステル系,ポリウレタン系およびゴムラテックス系からなる群より選択される1または2以上の混合物が好適であり、ポリ酢酸ビニルが最適である。これらは、外用剤成分として人体等への悪影響が少ないばかりでなく、固化後において患部の湿度を適度に維持することができるからである。
【0018】
上記皮膚疾患治療用薬剤としては、ステロイド剤,コールタール剤,ビタミンD3誘導体,ビタミンA誘導体,サリチル酸および免疫抑制剤からなる群より選択される1または2以上の混合物が好ましく、この中でもステロイド剤が特に好ましい。これらは、皮膚疾患の治療用薬剤として実績があるからである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の皮膚疾患治療用外用剤は、その含有水分の蒸散に伴って積極的に患部の水分を放散でき、固化後においても患部の水分を適度に保つことができる。その結果、薬剤の過剰な皮膚吸収や患部の蒸れなど、従来の密封閉鎖療法の欠点を効果的に低減することができる。また、固化後は患部に密着して被覆できるので、患部を保護することができ、且つ目立たなくできる。そして、特に乾癬など過剰な皮膚増殖がみられる疾患では、皮膚のカスを吸着し、固化した製剤と共に除去できる。従って、本発明の皮膚疾患治療用外用剤は、従来にない皮膚疾患の治療手段を提供できるものとして、産業上極めて優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の皮膚疾患治療用外用剤が対象とする皮膚疾患は、感染症など薬剤の免疫抑制作用や患部の被覆により悪化するおそれのあるもの以外であれば特に制限されないが、例えば、乾癬,湿疹,皮膚炎,結節性痒疹,掌蹠膿疱症,扁平紅色苔癬,アミロイド苔癬,環状肉芽腫,光沢苔癬,慢性円板状エリテマトーデス,フォックス・フォアダイス病,肥厚性瘢痕,ケロイド,尋常性白斑,シャンバーグ病,リンパ腫を挙げることができる。
【0021】
本発明の皮膚疾患治療用外用剤は、少なくともエマルション型接着剤成分、水、および皮膚疾患治療用薬剤を必須構成成分とし、水を含んだままの状態で患部に塗布する点に要旨を有する。製剤からの水分の蒸散に伴って患部からの水分も放散される上に、固化後でも患部を保護しつつ湿度を適度に保持できるため、患部の蒸れや薬剤の過剰な皮膚吸収を抑制できるからである。
【0022】
なお、従来のプラスター剤といわれる製剤は、一般的には脂溶性高分子の有機溶媒溶液を乾燥することにより製造されるが、脂溶性高分子を水に懸濁したものを乾燥して製造される場合がある(エマルション法)。しかし、本発明者らが見出した知見によれば、プラスター剤の水分透過性は十分ではない。これは、エマルション法により製造されたプラスター剤であっても、実質的に水を含まなくなるまで乾燥を進めることから、得られた脂溶性高分子基剤は、患部由来の水分に対する親和性を完全に失ってしまうことによると考えられる。
【0023】
本発明で用いるエマルション型接着剤成分は、その微粒子を分散媒である水に分散でき且つその状態を維持できる接着剤成分であって、患者であるヒトや動物に対して刺激性が低いものであれば特にその種類は制限されない。但し、好適なものとしては、ポリ酢酸ビニル,酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合物,酢酸ビニル−バーサチック酸共重合物等の酢酸ビニル−ビニルエステル共重合物,酢酸ビニル−エチレン共重合物,酢酸ビニル−アクリル酸共重合物,酢酸ビニル−アクリル酸アミド共重合物等のポリ酢酸ビニル系;ポリアクリル酸エステル,アクリル酸エステル−アクリル酸共重合物,アクリル酸エステル−スチレン共重合物等のポリアクリル酸エステル系;ウレタン系;天然ゴム,ポリイソプレン,ポリブタジエン,スチレン−ブタジエン等のゴムラテックス系などを例示することができ、これらから1を選択するか、これら2以上の混合物を使用することができる。ここで、「〜系の〜と他のモノマーとの共重合物」は、〜を主なモノマー(50%以上)とする共重合物をいう。例えば、ポリ酢酸ビニル系の酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合物の場合、モノマーとしての酢酸ビニルがアクリル酸エステルよりも多い。また、共重合物とするのは、主に耐水性やエマルションの安定性を高めるためである。
【0024】
エマルション型接着剤成分の配合量としては、10質量%以上,75質量%以下が好ましい。10質量%未満であると固化し難い一方で、75質量%を超えると水に分散し難くなるからである。
【0025】
本発明のエマルション型接着剤成分は、水を必須構成成分とする。接着剤成分により患部を被覆する場合、接着剤成分の有機溶媒溶液を使用し、患部で有機溶媒の蒸散と共に被膜を形成させることも考えられる。しかし、有機溶媒は安全性が低く刺激性が高いので、外用剤成分として適さない。一方、水は安全であり刺激性も低く、外用剤成分としての利便性も高い。また、接着剤成分を水に分散させたエマルションを患部に投与した場合、製剤中の水の蒸散につれて患部の水分もある程度除去することができる上に、固化後も引き続き患部の水分を放散することができるため、患部における蒸れや薬剤の過剰な皮膚透過を抑制することができる。
【0026】
本発明に係る外用剤への水の配合量は、20質量%以上,85質量%以下が好適である。20質量%未満であるとエマルション型接着剤成分の均一分散が困難になる場合があるのみでなく、当初の水分含量が十分でないと、形成される被膜の水分透過性が十分に発揮できないおそれがあるからである。一方、85質量%を超えると固化までの時間がかかる過ぎる場合がある。
【0027】
本発明外用剤に添加する皮膚疾患治療用薬剤は、治療対象である皮膚疾患の治療に適するものを適宜選択すればよい。その種類としては、例えばステロイド剤,コールタール剤,ビタミンD3誘導体,ビタミンA誘導体,サリチル酸,免疫抑制剤を挙げることができ、これらから1または2以上を選択して使用することができる。なお、本発明外用剤によれば、薬剤の過剰な皮膚透過を抑制して副作用を低減できるので、効果は優れるものの副作用が心配されるステロイド剤を好適に用いることが可能になる。
【0028】
本発明の外用剤へは、固化時間、即ち被膜形成時間を調整するために、必要に応じて水分蒸散促進剤を配合してもよい。斯かる水分蒸散促進剤としては、エタノールやイソプロパノールを例示することができるが、当然、安全性や刺激性を考慮して添加量を制限する必要がある。
【0029】
また、必要に応じて、接着剤成分の分散安定性を向上させるために、界面活性剤を配合してもよい。斯かる界面活性剤としては、例えばポリビニルアルコール,ポリソルベート類,ショ糖脂肪酸エステル,ポリグリセリン脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0030】
更に、必要に応じて可塑剤を配合してもよい。可塑剤によって、被膜形成後における製剤の物理的性能を調整することができる。斯かる可塑剤としては、例えばミリスチン酸イソプロピル,セバシン酸ジイソプロピル等のエステル類;マクロゴール;脂肪酸;脂肪酸のグリセリンエステル;アルコール類などを例示できる。
【0031】
その他、本発明の目的を逸脱しない限り、賦形剤,着色剤,香料,潤沢剤,結合剤,乳化剤,増粘剤,湿潤剤,安定剤,保存剤,溶解補助剤,緩衝剤,pH調整剤などを配合してもよい。
【0032】
本発明に係る皮膚疾患治療用外用剤の剤形は、本発明の主旨から比較的可塑性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、エアロゾル剤,軟膏剤,クリーム剤,ローション剤等を挙げることができる。なお、軟膏剤等の剤形であっても、接着剤成分の固化後においては、衣服等への付着を低減することが可能になる。
【0033】
本発明に係る皮膚疾患治療用外用剤の製造方法は、上記剤形に応じた一般的製法をそのまま適用できる。例えば、接着剤成分エマルションに、水や皮膚疾患治療用薬剤および他の成分を加え、均一になるまでよく攪拌すればよい。
【0034】
本発明の皮膚疾患治療用外用剤は、患者の症状や年齢、皮膚疾患治療用薬剤の適切な投与量などを考慮した上で、患部に適量を塗布する。この際、製剤中に本願発明で規定されている量の水分が含まれる状態であれば、ある程度事前に乾燥させた上で塗布してもよい。
【0035】
本発明外用剤は、従来のマニキュア剤ほどの速乾性はないものの、水分の蒸散につれ接着剤成分が固化するので、衣服への付着等による薬剤の目減りを低減できる。また、通常の貼付剤に比べ、屈曲部や指などにおいても、皮膚の凹凸に沿った投与が可能になる。更に、固化後においても患部からの水分を放散することができることから、患部の蒸れや薬剤の過剰な皮膚透過を抑制できるので、本発明外用剤は、皮膚疾患の治療手段として極めて優れるものである。
【0036】
以下に、実施例を示すことによって本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例における配合量の値は、全て質量%を示す。
【実施例】
【0037】
製造例1,2 被膜形成型クリーム製剤の製造
先ず、吉草酸ベタメタゾンと防腐剤を、セバシン酸ジエチルとマクロゴールに溶解し、更に50%ポリ酢酸ビニルエマルションと精製水を加え、その他の成分と共に均一になるまでよく攪拌混合し、表1の配合に従った被膜形成型クリーム製剤を製造した。
【0038】
【表1】


【0039】
比較製造例1 従来のプラスター剤の製造
表2に示す配合で、溶媒法を用いてプラスター剤を製造した。即ち、溶媒としてのトルエンに、ブチルヒドロキシトルエン,スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体,脂環族飽和炭化水素樹脂,ポリブテン,流動パラフィン,セバシン酸ジエチル,マクロゴールを加えて均一混合した。当該混合物をプラスチックフィルムに均一な厚み(50μm)で塗工し、80℃で20分間乾燥した。次いで、膏体面にポリエステル布を合わせてラミネートし、所望の大きさに切断してプラスター剤を製造した。
【0040】
【表2】


【0041】
比較製造例2 従来のマニキュア剤の製造
特開平11-130679号公報の実施例1を参照し、表2に示す配合でマニキュア剤を製造した。
【0042】
【表3】


【0043】
試験例1 水分透過度試験
上記製造例1の被膜形成型クリーム製剤を、乾燥後の被膜厚さが50μmになるよう調整してプラスチックフィルムに塗工し、32℃で30分間乾燥した。形成された被膜をプラスチックフィルムより剥がし取ったものをサンプル1、前記乾燥後室温で7日間放置し形成された被膜を剥がし取ったものをサンプル2とした。また、上記比較製造例1のブラスター剤をサンプル3、ポリ塩化ビニリデンフィルム(旭化成社製,商品名:サランラップ)をサンプル4として、以下の試験を行なった。
【0044】
直径3cmの口を有する筒状の瓶に精製水を10g入れた後、各サンプルで瓶口を密封して、32℃で静置した。1時間後,3時間後,6時間後,12時間後,24時間後に重量測定を行ない、水の減量を測定した。試験は、各サンプルごとに3例ずつ行なって平均を計算した。結果を図1に示す。
【0045】
当該結果の通り、従来の密封閉鎖療法で用いられるポリ塩化ビニリデンフィルムとプラスター剤では、水の透過がほとんどみられなかった。一方、本発明外用剤による被膜であるサンプル1と2では、明らかな水分透過性がみられた。しかし、サンプル1に比べてサンプル2の方が、水分透過性は低かった。この原因は、サンプル2は被膜形成後7日間放置されたものであるため、被膜中の粘着成分が熟成され、水分が透過するための細孔の一部が塞がれてしまったことにあると考えられる。従って、本発明外用剤は直接患部に塗布するか、或いは、別途形成した被膜を患部に被覆する場合であっても、被膜形成後できるだけ早く患部に適用することが重要である。
【0046】
試験例2 水分透過度試験
上記比較製造例2のマニキュア剤を、乾燥後の被膜厚さが50μmになるよう調整してプラスチックフィルムに塗工し、乾燥して被膜を形成させた。この被膜をプラスチックフィルムから剥がしてサンプルとし、上記試験例1と同様の方法で水分透過性試験を行なった。上記製造例1による被膜についても同様に実験を行なった。得られた結果を表4に示す。
【0047】
【表4】


【0048】
上記結果の通り、製造例1による被膜は水分を透過させることができるが、マニキュア剤による被膜には水分透過性がみられない。これは、マニキュア剤の溶媒は揮発性の高い有機溶媒のみで水を含まないため、形成された被膜は非常に密なものとなることによると考えられる。従って、この様な従来技術による被膜で皮膚疾患患部を覆うと、蒸れが生じ、感染症のおそれが増大すると考えられる。また、アルコール等の溶媒自体も、皮膚刺激性を有することから好ましいものではない。
【0049】
試験例3
上記製造例1の被膜形成型クリーム製剤を被験者6人の前腕中央部に塗布し、被膜を形成させた。その部分の皮膚相対水分量を、経時的にコルネオメーター(Courage+Khazaka Electronic BmbH社製,CM825PC)を用いて測定した。測定は、塗布前と塗布後1,3,6時間の時点で行なった。また、比較のために、同じ被験者により、未処置の場合と、上記比較製造例1のプラスター剤またはポリ塩化ビニリデンフィルム(商品名:サランラップ)を貼付した場合においても、同様に測定を行なった。結果を図2に示す。
【0050】
当該結果によれば、従来のプラスター剤とポリ塩化ビニリデンフィルムで皮膚を覆った場合には、皮膚の水分量が経時的に上昇して蒸れた状態になったのに対し、本発明外用剤による被膜では、皮膚水分量はほとんど変化しなかった。従って、本発明外用剤による被膜は、十分な水分透過性を有することから、従来の密封閉鎖療法とは異なり、患部の蒸れや薬剤の過剰吸収の問題が解消されていることが実証された。
【0051】
試験例4
乾癬患者3人の患部に、上記製造例2の被膜形成型クリーム製剤を適量塗布し、乾燥させることによって被膜を形成した。塗布から6時間後に被膜を剥離し、次の項目について観察した。結果を表5に示す。
【0052】
(1) 患部外観
本発明外用剤により処置した後の患部の状態を、次の指標で評価した。
a:患部以外の皮膚とほとんど変わらず自然であった。
b:患部以外の皮膚との間に若干違和感があるが自然であった。
c:患部以外の皮膚との間の違和感が大きいものの、塗布前の患部に比べると自然な方である。
d:塗布前の患部に比べ、見た目はほとんど変わらない。
e:塗布前の患部よりも見た目が悪くなった。
【0053】
(2) 皮膚脱落量
本発明外用剤を塗布している間における皮膚の脱落量を、次の指標で評価した。
a:塗布面からの皮膚の脱落はなかった。
b:患塗布面からの皮膚の脱落が少しあった。
c:患塗布面からの皮膚の脱落がかなりあった。
d:塗布面からの皮膚の脱落は、塗布前の患部と変わりなかった。
e:塗布面からの皮膚の脱落は、塗布前の患部よりも多かった。
【0054】
(3) 患部クリアランス
本発明外用剤による被膜を剥離した際における皮膚のクリアランスについて、次の指標で評価した。
a:被膜の剥離の際、不要な皮膚片のほとんどが吸着除去された。
b:被膜の剥離の際、不要な皮膚片の約半分が吸着除去された。
c:被膜の剥離の際、不要な皮膚片は少し吸着除去された。
d:被膜の剥離の際、不要な皮膚片はほとんど吸着除去できなかった。
e:被膜の剥離した後における患部の不要な皮膚片は、塗布前よりも増えた。
【0055】
【表5】


【0056】
当該結果より、本発明外用剤を乾癬患部に適用することによって、患部の見た目を改善できること、塗布中においては皮膚の脱落が生じないこと、および形成された被膜を剥離することにより患部のクリアランスが可能になることが証明された。即ち、本発明の皮膚疾患治療用外用剤は、皮膚疾患患部のクリアランスが可能であり、患者の生活の質を向上できるなど、従来の皮膚疾患治療手段に比して著しく効果の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】サンプルの水分透過試験の結果を示したものであり、Y軸は各サンプルの水の透過量として初期からの水分減量を表し、X軸は経過時間を表す。
【図2】皮膚の相対水分量試験の結果を示したものであり、X軸は経過時間、Y軸は相対皮膚水分含量を表す。
【出願人】 【識別番号】302005628
【氏名又は名称】株式会社 メドレックス
【出願日】 平成16年11月5日(2004.11.5)
【代理人】 【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一

【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志

【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治

【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰

【公開番号】 特開2006−131544(P2006−131544A)
【公開日】 平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願番号】 特願2004−321974(P2004−321974)