| 【発明の名称】 |
抗歯周病剤および該抗歯周病剤を含有する飲食物又は口腔衛生剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】廣岡 沙織
【氏名】増田 秀樹
|
| 【要約】 |
【課題】安全性が高く、刺激臭の少ない、しかも、添加する食品、化粧品等のにおいや味に大きく影響を与えない抗歯周病剤を提供する。
【解決手段】ω−アルケニルイソチオシアナート、ω−アルキルチオアルキルイソチオシアナート、ω−フェニルアルキルイソチオシアナートといったイソチオシアナート化合物による抗歯周病剤により達成される。この抗歯周病剤はPorphyromonas gingivalis、Actinobacillus actinomycetemcomitans、Fusobacterium nucleatum、およびPrevotella nigrescens等の歯周病原因菌による口腔疾患を有効に抑制するので、歯周病の予防剤として使用することができる。上記イソチオシアナート化合物は天然のワサビの香味成分として含まれているので安全性が高い。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記式〔1〕で表されるω−アルケニルイソチオシアナート化合物、下記式〔2〕で表されるω−アルキルチオアルキルイソチオシアナート化合物、及び下記式〔3〕で表されるω−フェニルアルキルイソチオシアナート化合物からなる群より選ばれた1種又は2種以上のイソチオシアナート化合物からなる抗歯周病剤。 式〔1〕: CH2=CH−(CH2)m−NCS (式中、mは1〜10の整数を表す) 式〔2〕: R−S−(CH2)n−NCS (式中、nは1〜10の整数を表し、Rは炭素数が1〜4の直鎖又は 分岐のアルキル基を表す) 式〔3〕: Ph−(CH2)p−NCS (式中、Phはフェニル基を表し、pは1〜10の整数を表す)。 【請求項2】 アリルイソチオシアナート、3−ブテニルイソチオシアナート、4−ペンテニルイソチオシアナート、5−ヘキセニルイソチオシアナート、6−ヘプテニルイソチオシアナート、メチルチオメチルイソチオシアナート、エチルチオメチルイソチオシアナート、n−プロピルチオメチルイソチオシアナート、イソプロピルチオメチルイソチオシアナート、n−ブチルチオメチルイソチオシアナート、イソブチルチオメチルイソチオシアナート、sec-ブチルチオメチルイソチオシアナート、2−メチルチオエチルイソチオシアナート、2−エチルチオエチルイソチオシアナート、2−n−プロピルチオエチルイソチオシアナート、3−メチルチオプロピルイソチオシアナート、4−メチルチオブチルイソチオシアナート、5−メチルチオペンチルイソチオシアナート、6−メチルチオヘキシルイソチオシアナート、7−メチルチオヘプチルイソチオシアナート、8−メチルチオオクチルイソチオシアナート、9−メチルチオノニルイソチオシアナート、ベンジルイソチオシアナート及びフェネチルイソチオシアナートからなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物からなる抗歯周病剤。 【請求項3】 5−メチルチオペンチルイソチオシアナート、6−メチルチオヘキシルイソチオシアナート及びベンジルイソチオシアナートからなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物からなる抗歯周病剤。 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗歯周病剤を含有することを特徴とする飲食物又は口腔衛生剤。 【請求項5】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗歯周病剤を0.001〜1質量%の濃度で含有することを特徴とする飲食物又は口腔衛生剤。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、ω−アルケニルイソチオシアナート化合物、ω−アルキルチオアルキルイソチオシアナート化合物およびω−フェニルアルキルイソチオシアナート化合物からなる群より選ばれた1種又は2種以上のイソチオシアナート化合物からなる抗歯周病剤並びに該抗歯周病剤を含有する飲食物又は口腔衛生剤に関する。 【背景技術】 【0002】 歯周病は歯面に沈着したプラーク中に存在する細菌等の刺激が引き金となり歯肉と歯の支持組織に発生する慢性炎症疾患の総称である。主な原因菌は病巣から頻繁に検出されるPorphyromonas gingivalis、Actinobacillus actinomycetemcomitans、Fusobacterium nucleatum、およびPrevotella nigrescens等とされている。これら嫌気性グラム陰性細菌はプラーク中での増殖にともない悪臭の発生やプロテアーゼ等の酵素の分泌がおきる。この酵素が歯肉組織を分解し、歯周ポケットと呼ばれる歯根と歯肉の間に隙間を形成する。歯周ポケットは、歯ブラシ等が入りにくく、食物が詰まったりプラークが溜まりやすい部位であるため、ここで歯周病原因菌はさらに増殖する。その結果、出血や歯肉減退、化膿、さらには歯の動揺や移動が引き起こる。歯周病の罹患率は高齢化の進行とともに増加していることに加え、他の病気との関連も明らかになりつつあり、これを治療、予防することは全身の健康に貢献すると期待されている。一般に、歯周病の改善には、その原因とされる細菌の増殖を抑制することが有効とされている。 【0003】 歯周病の予防や改善に有効とされているのは合成抗菌剤であり、なかでも塩酸クロルヘキシジンなどの医薬品が多用されている。合成抗菌剤は微生物全般に対する活性が高いため、効果的に歯周病菌の増殖を抑制することができるが、口腔内の常在菌層のバランスを崩してしまう危険性がある。とりわけ繰り返し使用したり、長期間服用する場合は十分注意する必要があり、合成抗菌剤に代わる天然由来で安全性の高い抗歯周病剤が求められている。 【0004】 そこで、上記問題を解決するために、香気化合物を用いた抗歯周病剤がいくつか提案されている。例えば、d−ボルネオールはその歯周病原因菌に対する抗菌効果は合成抗菌剤の塩酸クロルヘキシジンのそれより弱いが、香気化合物単品としては強い(特許文献1)。さらに、他の香気化合物についても、歯周病原因菌に対する効果が報告されている(特許文献2−6)。これらはアルコール基、アルデヒド基、ケトン基、エーテル基、エステル基など種々の官能基を有している揮発性化合物であり、特有の香気を有している。そのため、使用濃度によっては不快臭となる場合もあり、これらの化合物だけで満足できるものではない。 【0005】 イソチオシアナート基を有する化合物はう蝕や歯周病の発生に起因する歯垢の形成を抑制すること(特許文献7−8)が報告されている。このイソチオシアナート化合物はワサビの香味に特徴的な成分であり広く食品用香料として利用されているため安全であることに加え、S.mutans等の虫歯原因菌に高い抗菌活性を有している。しかし、歯周病原因菌など虫歯原因菌以外の他の口腔細菌に対する効果は知られていない。 【0006】 【特許文献1】特開平6−247864号公報 【特許文献2】特開平9−110683号公報 【特許文献3】特開2000−44471号公報 【特許文献4】特開2001−163744号公報 【特許文献5】特開2002−265978号公報 【特許文献6】特開2003−300850号公報 【特許文献7】特開平11−139948号公報 【特許文献8】特開平11−139949号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明の課題は、従来技術における上記のような問題点を解決し、抗菌剤の安全性への懸念がなく、その一方で、高い歯周病原因菌に対する抗菌効果を有し、歯周病の予防や治療をすることができる抗歯周病剤および抗歯周病剤を適用した飲食物や口腔衛生剤を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らは、ω−アルケニルイソチオシアナート化合物、ω−アルキルチオアルキルイソチオシアナートおよびω−フェニルアルキルイソチオシアナート化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上のイソチオシアナート化合物を歯周病原因菌に暴露したときに、抗歯周病剤として使用可能な抗菌活性効果を持つことを見出し、長い食経験の裏付けも考え合わせ、安全で効果的に歯周病を予防もしくは治療する抗歯周病剤として応用できることを見出し本発明を完成するに至った。 【0009】 すなわち、本発明は、下記式〔1〕で表されるω−アルケニルイソチオシアナート化合物、下記式〔2〕で表されるω−アルキルチオアルキルイソチオシアナート化合物、及び下記式〔3〕で表されるω−フェニルアルキルイソチオシアナート化合物からなる群より選ばれた1種又は2種以上のイソチオシアナート化合物からなる抗歯周病剤である。 式〔1〕: CH2=CH−(CH2)m−NCS (式中、mは1〜10の整数を表す) 式〔2〕: R−S−(CH2)n−NCS (式中、nは1〜10の整数を表し、Rは炭素数が1〜4の直鎖又 は分岐のアルキル基を表す) 式〔3〕: Ph−(CH2)p−NCS (式中、Phはフェニル基を表し、pは1〜10の整数を表す)。 【0010】 また、アリルイソチオシアナート、3−ブテニルイソチオシアナート、4−ペンテニルイソチオシアナート、5−ヘキセニルイソチオシアナート、6−ヘプテニルイソチオシアナート、メチルチオメチルイソチオシアナート、エチルチオメチルイソチオシアナート、n−プロピルチオメチルイソチオシアナート、イソプロピルチオメチルイソチオシアナート、n−ブチルチオメチルイソチオシアナート、イソブチルチオメチルイソチオシアナート、sec-ブチルチオメチルイソチオシアナート、2−メチルチオエチルイソチオシアナート、2−エチルチオエチルイソチオシアナート、2−n−プロピルチオエチルイソチオシアナート、3−メチルチオプロピルイソチオシアナート、4−メチルチオブチルイソチオシアナート、5−メチルチオペンチルイソチオシアナート、6−メチルチオヘキシルイソチオシアナート、7−メチルチオヘプチルイソチオシアナート、8−メチルチオオクチルイソチオシアナート、9−メチルチオノニルイソチオシアナート、ベンジルイソチオシアナート及びフェネチルイソチオシアナートからなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物からなる抗歯周病剤であり、また、5−メチルチオペンチルイソチオシアナート、6−メチルチオヘキシルイソチオシアナート及びベンジルイソチオシアナートからなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物からなるる抗歯周病剤である。 【0011】 さらに、本発明は、上記抗歯周病剤を含有することを特徴とする飲食物又は口腔衛生剤であり、さらに抗歯周病剤を0.001〜1質量%含有することを特徴とする飲食物又は口腔衛生剤である。 【発明の効果】 【0012】 本発明の抗歯周病剤は、歯周病原因菌の増殖を抑制し、歯周病原因菌の増殖に伴う歯肉の炎症や悪臭の発生を予防、改善することから抗歯周病剤として有効である。 本発明の抗歯周病剤の成分は、古くから食に供されているわさびの香味成分に含まれている天然物のイソチオシアナート化合物であるので安全性が高い。 イソチオシアナート化合物は独特の刺激臭を有するが、本発明の抗歯周病剤の有効濃度が低濃度であるため、最終製品に対してそれらの香味を大きく損なうことはない。従って、菓子類、ジュースのような飲食物あるいは歯磨き、口中洗浄剤のような口腔衛生剤に配合して使用することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 以下、本発明について詳細に説明する。 本発明は、下記に詳述するイソチオシアナート化合物からなる抗歯周病剤である。 【0014】 (1)イソチオシアナート化合物 本発明に使用するイソチオシアナート化合物は、ω−アルケニルイソチオシアナート化合物、ω−アルキルチオアルキルイソチオシアナート化合物、及びω−フェニルアルキルイソチオシアナート化合物からなる群より選ばれた1種又は2種以上のイソチオシアナート化合物である。 【0015】 1)ω−アルケニルイソチオシアナート化合物は、下記式〔1〕で表される。 式〔1〕: CH2=CH−(CH2)m−NCS 上記式中、mは1〜10の整数を表すが、2〜8が好ましく、2〜4の整数が特に好ましい。 式〔1〕の構造を有する化合物の具体例としては、アリルイソチオシアナート、3−ブテニルイソチオシアナート、4−ペンテニルイソチオシアナート、5−ヘキセニルイソチオシアナート、6−ヘプテニルイソチオシアナートなどが挙げられる。これらの中でも、刺激臭が比較的弱く、残香性が比較的低いといった点から5−ヘキセニルイソチオシアナートが好ましい。 【0016】 式〔1〕において、mが5以下である化合物は、ワサビやホースラディッシュなどの香気成分の中に含まれていることが知られているが、それらの量は極めて微量であるので工業的に得るには合成によるのが適切である。 当該化合物の合成方法は、例えば特開平2−221255号公報に開示されているが、その概略は、不活性溶媒中、CH2=CH−(CH2)m−X 〔式中、mは前述したものと同一の意味を有し、Xは臭素、塩素、ヨウ素のようなハロゲン原子を表す〕の構造を有するω−アルケニルハライドをチオシアン酸塩と反応させ、得られたω−アルケニルチオシアナートを極性非プロトン性溶媒中で異性化することにより得られる。 【0017】 2)ω−アルキルチオアルキルイソチオシアナート化合物は、下記式〔2〕で表される 式〔2〕: R−S−(CH2)n−NCS 上記式中、nは1〜10の整数を表すが、3〜8が好ましく、4〜7の整数が特に好ましい。また、Rは炭素数が1〜4の直鎖又は分岐アルキル基を表すが、好ましい例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec-ブチルなどが挙げられ、香味にくせがなく、残香性が比較的低いといった点からメチル基が好ましい。 【0018】 式〔2〕の構造を有する化合物の例としては、メチルチオメチルイソチオシアナート、エチルチオメチルイソチオシアナート、n−プロピルチオメチルイソチオシアナート、イソプロピルチオメチルイソチオシアナート、n−ブチルチオメチルイソチオシアナート、イソブチルチオメチルイソチオシアナート、sec-ブチルチオメチルイソチオシアナート、2−メチルチオエチルイソチオシアナート、2−エチルチオエチルイソチオシアナート、2−n−プロピルチオエチルイソチオシアナート、3−メチルチオプロピルイソチオシアナート、4−メチルチオブチルイソチオシアナート、5−メチルチオペンチルイソチオシアナート、6−メチルチオヘキシルイソチオシアナート、7−メチルチオヘプチルイソチオシアナート、8−メチルチオオクチルイソチオシアナート、9−メチルチオノニルイソチオシアナートなどが挙げられる。 これらの中でも、香味にくせがなく、残香性が比較的低いといった点から6−メチルチオヘキシルイソチオシアナート、5−メチルチオペンチルイソチオシアナートが好ましい。 【0019】 式〔2〕において、nが8以下である化合物はワサビやホースラディッシュなどの香気成分の中に含まれていることが知られているが、それらの量は極めて微量であるので工業的に得るには合成によるのが適切である。 当該化合物の合成方法は、例えば特開平7−215931号公報に開示されているが、その概略は、不活性溶媒中、CH2=CH−(CH2)n-2−NCS 〔式中、nは3〜10の整数を表す。〕の構造を有するω−アルケニルイソチオシアナートを、R−SH 〔式中、Rは前述したものと同一の意味を有する〕を有するアルキルメルカプタンと反応させることにより得られる。 【0020】 3)ω−フェニルアルキルイソチオシアナート化合物は、下記式〔3〕で表される。 式〔3〕: Ph−(CH2)p−NCS (Phはフェニル基である) 上記式中、pは1〜10の整数を表すが、好ましくは1〜8、特に1〜2の整数が好ましい。 式〔3〕の構造を有する化合物の例としては、ベンジルイソチオシアナート、フェネチルイソチオシアナートなどが挙げられるが、刺激臭が比較的弱く、残香性が比較的低いといった点からベンジルイソチオシアナートが好ましい。 式〔3〕において、pが2以下である化合物はワサビやホースラディッシュなどの香気成分の中に含まれていることが知られているが、それらの量は極めて微量であるので工業的に得るには合成によるのが適切である。 【0021】 当該化合物の合成方法は、例えば特開平2−221255号公報に開示されているが、その概略は、不活性溶媒中、Ph−(CH2)p−X (式中、pは前述したものと同一の意味を有し、Xは臭素、塩素、ヨウ素のようなハロゲン原子を示す)を有するω−フェニルアルキルハライドをチオシアン酸塩と反応させ、得られたω−フェニルアルキルチオシアナートを極性非プロトン溶媒中で異性化することにより得られる。 【0022】 本発明の抗歯周病剤は、飲食物又は口腔衛生剤に添加して適用することができる。 添加する口腔衛生剤の剤型は液剤、固形剤、半固形剤のいずれであっても良く、歯磨き剤、トローチ剤、液状又は粉末状うがい薬、塗布液、チューインガムなどに適用可能である。 また、本発明の抗歯周病剤組成物を配合する飲食物としてはジュースなどの清涼飲料、キャンディ、チューインガムなどの菓子類が適当である。 本発明の抗歯周病剤は、上記最終製品に対し、好ましくは0.001〜1質量%の濃度で、特に好ましくは0.002〜0.06質量%程度の濃度になるように添加して使用される。添加量が下限質量未満では歯周病抑制効果が発揮されず、一方、添加量が上限質量を超えると、わさび様刺激臭が強く感じられるため、抗歯周病剤として飲食物や口腔衛生剤等に配合するには適さないこともある。 【実施例】 【0023】 次に、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。 <A>抗歯周病剤の合成例 本発明の抗歯周病剤を、下記参考例1〜4のとおり調製した。 〔参考例1〕5−ヘキセニルイソチオシアナートの合成: 臭化5−ヘキセニル35gを1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン40gに溶解し、チオシアン酸カリウム24gと炭酸カルシウム5.5gを加え、混合液を75℃で1時間加熱攪拌した。 次いで、内温155℃まで加温上昇させて6時間、加熱攪拌した。不溶物を除去後、塩化メチレンで抽出し、粗油を得た。粗油を減圧蒸留し、5−ヘキセニルイソチオシアナート9.4gを得た。収率31%、沸点74℃/3.5mmHgであった。 【0024】 〔参考例2〕5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの合成: 4−ペンテニルイソチオシアナート38gおよびメチルメルカプタンのメタノール溶液(30%)144gの混合物にアゾビスイソブチロニトリル0.9gを加え、室温で9時間攪拌した。酢酸エチルを加え、水洗後、蒸留し5−メチルチオペンチルイソチオシアナート33gが得られた。収率63%、沸点101〜103℃/1mmHgであった。 【0025】 〔参考例3〕6−メチルチオヘキシルイソチオシアナートの合成: 5−ヘキセニルイソチオシアナート28gおよびメチルメルカプタンのメタノール溶液(30%)50gの混合物にt−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)0.4gを加え、室温で2時間攪拌した。酢酸エチルを加え、水洗後、蒸留し6−メチルチオヘキシルイソチオシアナート32gが得られた。収率82%、沸点119℃/0.5mmHgであった。 【0026】 〔参考例4〕ベンジルイソチオシアナートの合成: 臭化ベンジル17gを1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン40gに溶解し、チオシアン酸カリウム10gと炭酸カルシウム3.5gを加え、混合液を75℃で1時間加熱攪拌した。次いで、内温155℃まで加温上昇させて6時間加熱攪拌した。不溶物を除去後、塩化メチレンで抽出し、粗油を得た。粗油を減圧蒸留し、ベンジルイソチオシアナート9.6gを得た。収率65%、沸点110℃/10mmHg。 【0027】 〔試験例1〕 次に、参考例1〜4のイソチオシアナート化合物及びアリルイソチオシアナート(シグマ・アルドリッチジャパン(株))、フェネチルイソチオシアナート(シグマ・アルドリッチジャパン(株))、3-ブテニルイソチオシアナート(小川香料(株))、3-メチルチオプロピルイソチオシナート(小川香料(株))、4-メチルチオブチルイソチオシアナート(小川香料(株))7-メチルチオヘプチルイソチオシアナート(小川香料(株))、6-ヘプテニルイソチオシアナート(小川香料(株))を用いて、本発明の抗歯周病剤が、歯周病原因菌に対して強い増殖抑制作用を持つことを、最小発育阻止濃度(MIC)を測定することで確認した。 【0028】 予め凍結保存してある歯周病原因菌を変法GAM液体培地5mlに植菌し、Porphyromonas gingivalis ATCC33277は37℃で44時間、Fusobacterium nucleatum JCM6328、Prevotella nigrescens JCM6322およびActinobacillus actinomycetemcomitans JCM2434は37℃で22時間、前培養した。次いで、これらをそれぞれ新しい変法GAM液体培地に植え、最終生菌数が1.0×108CFU/mlとなるように調整した。 調整菌液とDMSOに溶解させたサンプルを用いて、Micro Dilution法による抗菌活性の測定を行った。 96穴マイクロプレートの始発レーン(左端とする)に菌液234μlおよびイソチオシアナート化合物26μlを加えよく混合する、他のレーンには菌液130μlのみを分注した。始発レーンから130μlとり、以降のレーン(右隣り)に段階的に混合しながら移すことで2倍希釈系列を作成した。Porphyromonas gingivalis ATCC33277は37℃で44時間、Fusobacterium nucleatum JCM6328、Prevotella nigrescens JCM6322およびActinobacillus actinomycetemcomitans JCM2434は37℃で22時間、培養した。培養および各操作は全て嫌気グローブボックス内で行った。 試料を添加しないコントロールとしてイソチオシアナート化合物の溶媒(DMSO)、陽性指標として塩酸クロルヘキシジンを用いた。 培養終了後、菌の生育の有無によりMICを判定した。 【0029】 各イソチオシアナート化合物の歯周病原因菌に対するMICを図1、図2、図3および図4に示す。図1、図2、図3および図4の結果より、各イソチオシアナート化合物の歯周病原因菌に対する抗菌性は、一般に、d−ボルネオールのそれと比較して同等あるいは高いことがわかった。 【0030】 <B>抗歯周病剤の適用 〔実施例1〕 下記の処方により5−ヘキセニルイソチオシアナートを配合した歯磨き1を得た。 品名 質量部 リン酸水素カルシウム 20 無水ケイ酸 8 ソルビット液 43 グリセリン 19 増粘剤 0.6 香料 0.8 水 8.595 5−ヘキセニルイソチオシアナート 0.005 計 100 【0031】 〔実施例2〕 実施例1の処方中の5−ヘキセニルイソチオシアナートの代わりに5−メチルチオペンチルイソチオシアナートを配合して歯磨き2を得た。 【0032】 〔実施例3〕 実施例1の処方中の5−ヘキセニルイソチオシアナートの代わりに6−メチルチオヘキシルイソチオシアナートを配合して歯磨き3を得た。 【0033】 〔実施例4〕 実施例1の処方中の5−ヘキセニルイソチオシアナートの代わりにベンジルイソチオシアナートを配合して歯磨き4を得た。 【0034】 〔比較例1〕 実施例1の処方中の5−ヘキセニルイソチオシアナートの代わりにd−ボルネオールを配合して歯磨き5を得た。 【0035】 〔試験例2〕 実施例1の処方中の5−ヘキセニルイソチオシアナートの代わりに水を配合して作成した歯磨きの香味をコントロールとして、歯磨き1〜5の香味風味評価を専門パネル10人で行った。 【0036】 結果 歯磨き1 コントロールと比較して5−ヘキセニルイソチオシアナートの風味は感じられるものの、香料の風味とうまくマッチして特に違和感無く歯磨きを行うことが出来た。 歯磨き2 コントロールと比較して5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの風味は感じられるものの、香料の風味とうまくマッチして特に違和感無く歯磨きを行うことが出来た。 歯磨き3 コントロールと比較して6−メチルチオヘキシルイソチオシアナートの風味は感じられるものの、香料の風味とうまくマッチして特に違和感無く歯磨きを行うことが出来た。 歯磨き4 コントロールと比較してベンジルイソチオシアナートの風味は感じられるものの、香料の風味とうまくマッチして特に違和感無く歯磨きを行うことが出来た。 歯磨き5 コントロールと比較してカビ臭が風味に影響しとても歯磨きを行うことが出来なかった。 【0037】 以上の結果より、本発明の抗歯周病剤を用いた時、イソシアナート化合物の風味は感じるものの、食品として違和感のない風味であると共に、製品への添加量も少量で十分効果があるため、製品の香味風味を大きく損なわないことが明らかとなった。 【0038】 〔実施例5〕 チューインガム 下記の処方により本発明の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートを配合したチューインガムを得た。 品名 質量部 ガムベース 22 砂糖 49.5 グルコース 10 水あめ 17.995 香料 0.5 5−メチルチオペンチルイソチオシアナート 0.005 計 100 【0039】 〔実施例6〕 口中洗浄剤 下記の処方により本発明のベンジルイソチオシアナートを配合した口中洗浄剤を得た。 品名 質量部 エタノール 10 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1 サッカリンナトリウム 0.2 安息香酸ナトリウム 0.1 グリセリン 6 香料 0.2 クエン酸ナトリウム 適量(pH調整済み) 水 残部 ベンジルイソチオシアナート 0.005 計 100 【産業上の利用可能性】 【0040】 本発明の抗歯周病剤は、Porphyromonas gingivalis、Actinobacillus actinomycetemcomitans、Fusobacterium nucleatum、およびPrevotella nigrescens等の歯周病原因菌による口腔疾患を抑制するため、歯周病の予防剤として有効である。本発明の抗歯周病剤は、わさび香味成分に含まれている天然物であるイソチオシアナート化合物であるため安全性が高く、添加量が低いにもかかわらず抗歯周病効果が大きく、最終製品に対してそれらの味が大きく影響することはない。従って、菓子類、ジュースのような飲食物あるいは歯磨き、口中洗浄剤のような口腔衛生剤に配合して使用するのに適している。 【図面の簡単な説明】 【0041】 【図1】試験例1で示した各イソチオシアナート化合物のPorphyromonas gingivalisに対するMICを表すグラフである。 【図2】試験例1で示した各イソチオシアナート化合物のActinobacillus actinomycetemcomitansに対するMICを表すグラフである。 【図3】試験例1で示した各イソチオシアナート化合物のFusobacterium nucleatumに対するMICを表すグラフである。 【図4】試験例1で示した各イソチオシアナート化合物のPrevotella nigrescensに対するMICを表すグラフである。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】591011410 【氏名又は名称】小川香料株式会社
|
| 【出願日】 |
平成16年11月5日(2004.11.5) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2006−131542(P2006−131542A) |
| 【公開日】 |
平成18年5月25日(2006.5.25) |
| 【出願番号】 |
特願2004−321746(P2004−321746) |
|