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【発明の名称】 樹状細胞活性化剤
【発明者】 【氏名】松井 保公
【住所又は居所】大阪府茨木市豊川一丁目30番3号 小林製薬株式会社中央研究所内

【氏名】湯川 博
【住所又は居所】大阪府茨木市豊川一丁目30番3号 小林製薬株式会社中央研究所内

【氏名】為定 誠
【住所又は居所】大阪府茨木市豊川一丁目30番3号 小林製薬株式会社中央研究所内

【要約】 【課題】本発明の目的は、樹状細胞の活性化の安全で効率のよい方法を提供すること、および当該手段となりうる樹状細胞活性化剤を提供することである。

【解決手段】本発明により、メシマコブ抽出物を含む、樹状細胞活性化剤が提供される。また本発明により、当該樹状細胞活性化剤を含む医薬組成物、食品組成物、食品、飲料などが提供される。さらに、当該樹状細胞活性化剤により未成熟樹状細胞を処理することにより成熟樹状細胞を誘導する方法、当該方法により得られる成熟樹状細胞、および当該成熟樹状細胞を含む医薬組成物もまた提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メシマコブを含む樹状細胞活性化剤。
【請求項2】
メシマコブが子実体の抽出物である、請求項1に記載の樹状細胞活性化剤。
【請求項3】
前記抽出物が水抽出物であり、当該抽出が25〜105℃で行われる、請求項2に記載の樹状細胞活性化剤。
【請求項4】
前記抽出物が以下の工程:
1)メシマコブ子実体から25〜105℃で水抽出物を得る工程;および
2)当該水抽出物から、さらに50〜90%(v/v)のC1−3アルカノール水溶液を用いて4〜50℃で抽出物を得る工程
を含む製造方法により調製することができる、請求項2に記載の樹状細胞活性化剤。
【請求項5】
樹状細胞の活性化により樹状細胞の成熟化が促進される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹状細胞活性化剤。
【請求項6】
樹状細胞の活性化により樹状細胞のインターロイキン−12、インターフェロンγまたはインターロイキン−1の産生能が増強される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹状細胞活性化剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹状細胞活性化剤を含む医薬組成物。
【請求項8】
免疫賦活化に用いられる、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
癌または悪性腫瘍を治療または予防するための、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
感染症を治療または予防するための、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹状細胞活性化剤を含む食品組成物。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹状細胞活性化剤を用いて未成熟樹状細胞を処理することにより成熟樹状細胞を誘導する方法。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹状細胞活性化剤を用いて未成熟樹状細胞を処理することにより得られる成熟樹状細胞。
【請求項14】
請求項13に記載の成熟樹状細胞を含む医薬組成物。
【請求項15】
癌、悪性腫瘍または感染症を予防または治療するための、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項1〜6に記載の樹状細胞活性化剤を含む、免疫療法において使用するための補助活性化物質。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本出願は、メシマコブ抽出物を含む樹状細胞活性化剤、特に樹状細胞成熟化促進剤に関する。さらに本発明は、当該樹状細胞活性化剤を含む経口摂取用組成物、医薬組成物、食品組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
樹状細胞は樹枝状の突起を持つという形態的な特徴を有する免疫細胞の一種であり、様々な組織(例えば、皮膚や粘膜など)に分布し、免疫監視細胞としての役割を果たしている。特に、樹状細胞は、体内に進入した抗原をリンパ組織に運び、T細胞を刺激して免疫反応を惹起させる機能を有し、リンパ球とともに免疫反応の中心的役割を担う細胞である。
【0003】
様々な生体内組織に分布する樹状細胞のうち、末梢組織に存在する樹状細胞はT細胞活性化能が低いことから、未成熟樹状細胞と呼ばれる。これに対して、リンパ器官に存在する樹状細胞は強力なT細胞活性化能を有することから成熟樹状細胞と呼ばれる。このような機能の差は、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)分子に加えて、細胞接着分子および共刺激分子(例えば、CD40、CD54、CD58、CD80およびCD86など)の発現量の増加ならびにサイトカインやケモカインなどの生産能の変化に起因する。また、成熟に伴って、樹状細胞は、細胞骨格の再構成により固着性の強い構造から運動性の高い構造となり、リンパ節への移動を開始する。所属リンパ器官のT領域において、樹状細胞はケモカインの産生などによりT細胞の活性化を促進する(非特許文献1:細胞工学、第19巻、第9号、2000年、第1311−1317頁)。
【0004】
生体内において、樹状細胞の成熟は、感染細菌やウイルス由来のLPS(リポ多糖)、DNA、二重鎖RNA、あるいは炎症応答の誘導によって組織細胞から産生されるTNFα(腫瘍壊死因子α)およびIL−1(インターロイキン−1)、さらに活性化血小板、好塩基球、肥満細胞などに発現されるCD40リガンド(CD40L)により誘導されることが知られている(非特許文献2:Banchereau J.ら、Nature、第392巻、1998年、第245−252頁)。
【0005】
また、インビトロ系の実験において、樹状細胞活性化作用を有する物質を探索する試みも行われている。例えば、カワラタケ菌糸体抽出物に由来するクレスチン(以下、「PSK」とも称す)およびA群溶血性連鎖球菌の弱毒性自然変異株(Su株)をペニシリンで処理した製剤であるOK−432が樹状細胞の成熟を促進する効果を有すること、および椎茸由来のβ−グルカンを活性成分として含み抗癌剤として市販されているレンチナンが樹状細胞に対して何らの効果も有さないことが報告されている(非特許文献3:Biotherapy、第15巻、第3号、2001年、第385−388頁;非特許文献4:Cancer Immunology and Immunotherapy、第52巻、2003年、第207−214頁)。また、ある種のグラム陽性菌の細胞壁骨格により樹状細胞の成熟化が促進されることが報告されている(特許文献1:国際特許公報01/048154パンフレット)。さらに、化学合成により得られる特定の低分子化合物が樹状細胞活性化作用を有することについても報告されている(特許文献2:特開2004−210768号公報)。
【0006】
メシマコブは桑などの広葉樹の古木の幹に寄生するタバコウロコタケ科キコブタケ属のコブ状のキノコである。中国では古くから「桑黄」と呼ばれる煎じ薬の漢方薬として利用されている。近年の研究によりメシマコブに含まれる成分の種々の生理活性についての報告がなされている(例えば、非特許文献7:日本農芸化学会大会講演要旨集、VOL2004、2004年、第197頁;非特許文献8:日本農芸化学会大会講演要旨集、VOL2004、2004年、第281頁;非特許文献9:Biochem Biophys Res Commun、第309巻、第2号、2003年、第399頁−407頁など)。しかし、メシマコブの樹状細胞に対しての効果については、これまでに何らの報告もされていなかった。
【0007】
また、樹状細胞の有する強力な抗原提示能を臨床に応用することを目的として、樹状細胞を用いた抗癌療法および抗感染症療法についての研究が進められている(非特許文献5:日経サイエンス、2003年2月号、第84−91頁;非特許文献6:現代医療、2003年8月号、第86−92頁)。このような療法においては、何らかの手段により樹状細胞を活性化することが必要であり、特に、安全で効率のよい樹状細胞活性化剤が求められている。
【0008】
【特許文献1】国際特許公報01/048154パンフレット
【特許文献2】特開2004−210768号公報
【非特許文献1】細胞工学、第19巻、第9号、2000年、第1311−1317頁
【非特許文献2】Banchereau Jら、Nature、第392巻、1998年、第245−252頁
【非特許文献3】Biotherapy、第15巻、第3号、2001年、第385−388頁
【非特許文献4】Cancer Immunology and Immunotherapy、第52巻、2003年、第207−214頁
【非特許文献5】日経サイエンス、2003年2月号、第84−91頁
【非特許文献6】現代医療、2003年8月号、第86−92頁
【非特許文献7】日本農芸化学会大会講演要旨集、VOL2004、2004年、第197頁
【非特許文献8】日本農芸化学会大会講演要旨集、VOL2004、2004年、第281頁
【非特許文献9】Biochem Biophys Res Commun、第309巻、第2号、2003年、第399頁−407頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題解決のために鋭意研究を進めたところ、メシマコブに樹状細胞活性化作用を有することを発見して本発明を完成させた。
本発明の目的は、メシマコブを含む樹状細胞活性化剤、免疫賦活剤、経口摂取用組成物、医薬組成物、食品組成物、食品および飲料を提供することである。
【0010】
すなわち本発明の一つの側面によれば、メシマコブを含む樹状細胞活性化剤が提供される。ここで、「樹状細胞の活性化」という用語は、樹状細胞が有する何らかの機能が強化され、または樹状細胞において発現するタンパク質などの分子の量が増幅されることを意味し、当該用語の意図するところには、例えば、樹状細胞の成熟化促進、抗原取り込み能増強、抗原提示能増強、Tリンパ球刺激能増強などが含まれる。当該活性化に伴って樹状細胞に観察される現象としては、接着分子/共刺激分子(例えば、CD40、CD54、CD58、CD80、CD86など)の発現量の増加、サイトカイン(例えば、インターロイキン−12、インターフェロンγおよびインターロイキン−1など)の生産能の増強、MHC分子の発現量の増加などが挙げられる。
【0011】
本発明の別の側面によれば、上記の樹状細胞活性化剤を含む医薬組成物が提供される。当該医薬組成物は、特に限定はされないが、例えば、免疫賦活化、癌もしくは悪性腫瘍の治療もしくは予防、または感染症の治療または予防のために用いられうる。ここで、癌および悪性腫瘍としては、特に限定はされないが、例えば、大腸癌および胃癌などの消化器癌、骨髄腫、肝臓癌、白血病、メラノーマ、前立腺癌、乳癌、子宮癌、肺癌、口腔癌、脳腫瘍などが挙げられる。また、特に限定はされないが、感染症にはウイルス感染症などが含まれ、例えば、B型肝炎およびC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎、HIV、インフルエンザなどが挙げられる。
【0012】
本発明に用いられるメシマコブ(Phellinus Linteus Aoshima)は、子実体、菌糸体またはそれらの混合物であってよい。メシマコブは粉体として使用することもできるが、好ましくは抽出物として使用され、特に好ましくは、子実体の抽出物が使用される。メシマコブは培養により生産されたものであっても天然より採取されたものであってもよい。本発明においては、例えば、メシマコブ菌を固体培地で培養して得られる菌糸体を用いることができる。
【0013】
本発明において用いられるメシマコブは、粉体などに加工して使用してもよい。また本発明においては、当該技術分野において公知の方法により得られるメシマコブの抽出物を用いてもよい。メシマコブの抽出物の調製に用いられる溶媒としては、例えば、水、エタノール、メタノール、ブタノール、イソプロパノールなど、好ましくは水を使用することができる。抽出は溶媒の加熱下(例えば、85〜105℃程度)で行うこともできるが、より低温(例えば、25〜50℃、好ましくは30〜45℃)で超音波を照射することにより行うこともできる。
【0014】
本発明においてメシマコブ抽出物を用いる場合、当該抽出物は、抽出物から得られる分画物であってもよい。分画方法は本発明の属する技術分野において通常用いられる方法であってよく、分画方法の例には、任意の溶媒を用いての抽出による分画、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー、イオン交換カラムを用いた分画、およびシリカゲルカラムクロマトグラフィーなどが含まれる。分画方法は1種類の方法であってもよく、または複数の手段の組み合わせであってもよい。上記の分画方法で用いる溶媒としては、特に限定はされないが、例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、酢酸、アセトン、およびそれらの混合物を用いることができる。
【0015】
本発明の用いる抽出物および分画物は、必要に応じて濃縮および/または凍結乾燥などを行うことにより得られる濃縮液、粘稠物質または固体を可溶性画分として使用することができる。
【0016】
本発明の1つの態様において、メシマコブ子実体抽出物は水抽出物であり、当該抽出は例えば25〜105℃、好ましくは25〜50℃、より好ましくは30〜45℃にて行うことができる。当該抽出は、超音波照射下で行ってもよく、抽出時間は特に限定はされないが、例えば0.1〜2時間、より好ましくは0.5〜1時間である。
【0017】
本発明の別の態様において、メシマコブ子実体抽出物は、以下の工程:
1)メシマコブ子実体から水抽出物を得る工程;および
2)当該水抽出物から、さらにC1−3アルカノール水溶液を用いて抽出物を得る工程
を含む製造方法により調製することができる。ここで、C1−3アルカノールには、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールが含まれ、好ましいC1−3アルカノールはエタノールである。C1−3アルカノール水溶液におけるC1−3アルカノールの濃度は、例えば50〜90%(v/v)、より好ましくは70〜85%(v/v)である。
【0018】
工程1)の水抽出は、例えば25〜105℃、25〜50℃、より好ましくは30〜45℃で行うことができる。また工程2)におけるC1−3アルカノールによる抽出は、例えば4〜50℃、好ましくは15〜25℃で行うことができる。
【0019】
本明細書で用いられる用語「樹状細胞活性化剤」とは、一般的には、樹状細胞に作用することにより、樹状細胞が有する機能を強化する、または樹状細胞上または細胞内に発現する物質の量を増幅する作用を有する薬剤を意味し、樹状細胞活性化剤により、例えば、樹状細胞の成熟化促進作用、サイトカイン(例えば、インターロイキン−12、インターフェロンγまたはインターロイキン−1など)の産生能が高められるなどの効果を得ることができる。
【0020】
本発明の樹状細胞活性化剤は、医薬組成物の有効成分として使用することができる。当該医薬組成物は、種々の剤形、例えば、経口投与のためには、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、乳剤、懸濁液、溶液剤、酒精剤、シロップ剤、エキス剤、エリキシル剤とすることができ、非経口剤としては、例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤などの注射剤とすることができるが、これらには限定されない。これらの製剤は、製剤工程において通常用いられる公知の方法により製造することができる。
【0021】
当該医薬組成物は、一般に用いられる各種成分を含みうるものであり、例えば、1種もしくはそれ以上の薬学的に許容され得る賦形剤、崩壊剤、希釈剤、滑沢剤、着香剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、懸濁化剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、補助剤、防腐剤、緩衝剤、結合剤、安定剤、コーティング剤等を含みうる。また本発明の医薬組成物は、持続性または徐放性剤形であってもよい。
【0022】
本発明の医薬組成物の投与量は、投与経路、患者の体型、年齢、体調、疾患の度合い、発症後の経過時間等により、適宜選択することができ、本発明の医薬組成物は、治療有効量および/または予防有効量の樹状細胞活性化剤を含むことができる。メシマコブは元来漢方薬として使用されてきたものであり、比較的安全な物質であるので、必要に応じて高濃度で投与することも可能である。本発明においてメシマコブは、一般に100〜5000mg/日/成人、好ましくは300〜1000mg/日/成人の用量で使用されうる。当該医薬組成物の投与は、単回投与または複数回投与であってもよく、例えば他の樹状細胞活性化剤、免疫賦活剤、抗癌剤、抗腫瘍剤、好感染症剤などの他の薬剤と組み合わせて使用することもできる。
【0023】
本発明のさらに別の側面によれば、上記の樹状細胞活性化剤により、未成熟樹状細胞を処理することにより成熟樹状細胞を誘導する方法が提供される。ここで、未成熟樹状細胞は、特に限定はされないが、例えば単球細胞をサイトカイン(例えば、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(以下、「GM−CFS」とも称す)およびインターロイキン−4(以下、「IL−4」とも称す))を含む培地で培養することにより調製することができる。ここで、単球細胞は特に限定はされないが、例えば血中単球細胞を使用することができ、好ましくはヒト血中単球細胞である。
【0024】
未成熟樹状細胞の成熟樹状細胞への変化は、当該技術分野において当業者に知られた方法により確認することができるが、例えば、樹状細胞に共通の共刺激因子(例えば、CD40、CD80、CD86)の発現量の増加や、成熟樹状細胞に特異的なタンパク質(例えば、CD83など)の発現量の増加を観測することにより判断されうる。これらのタンパク質の発現量は、例えばフローメトリー法などにより観測することができる。
【0025】
樹状細胞を活性化させる際に使用する本発明の樹状細胞活性化剤は、例えば、1日に10〜1000μg/mL、好ましくは100〜500μg/mLの量で培養液中に添加することができる。また、例えば1〜5日、好ましくは2〜3日の期間培養することにより樹状細胞の活性化を誘導することができる。
【0026】
本発明の方法は、得られる成熟樹状細胞に特定の抗原を提示させるために、樹状細胞と抗原性物質を混合する工程をさらに含んでいてもよい。ここで、抗原性物質は特には限定されないが、腫瘍由来ペプチドまたはウイルス由来ペプチドなどを使用することができ、例えば、CEA由来ペプチド、MAGE由来ペプチドなどを使用することができる。樹状細胞と抗原性物質との混合は、樹状細胞の活性化の前後、または樹状細胞の活性化と同時であってもよいが、好ましくは樹状細胞の活性化と同時に行われる。
【0027】
本発明のさらに別の側面によれば、樹状細胞活性化剤により未成熟樹状細胞を処理することにより得られる成熟樹状細胞、および当該成熟樹状細胞を含む医薬組成物が提供される。ここで、当該医薬組成物は、特に限定はされないが、癌、悪性腫瘍または感染症を予防または治療するために使用することができ、例えば、大腸癌および胃癌などの消化器癌、骨髄腫、肝臓癌、白血病、メラノーマ、前立腺癌、乳癌、子宮癌、肺癌、口腔癌、脳腫瘍などの癌もしくは悪性腫瘍;またはB型またはC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎、HIV、インフルエンザなどの感染症に適用することができる。
【0028】
本発明のさらなる側面によれば、上記の樹状細胞活性化剤を含む、免疫療法において使用する補助活性化物質が提供される。ここで、補助活性化物質とは、免疫療法の際に樹状細胞の活性化を誘導するために樹状細胞とともに生体内に投与する物質であり、医薬組成物の1成分として含まれていてもよい。ここで、免疫療法が対象とする疾患は特に限定はされないが、例えば、大腸癌および胃癌などの消化器癌、骨髄腫、肝臓癌、白血病、メラノーマ、前立腺癌、乳癌、子宮癌、肺癌、口腔癌、脳腫瘍などの癌もしくは悪性腫瘍;またはB型またはC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎、HIV、インフルエンザなどの感染症に適用することができる。
【0029】
本発明のさらに別の側面によれば、上記の樹状細胞活性化剤を含む食品組成物が提供される。本発明の食品組成物は、機能性飲料などの液体飲料を含む。当該食品組成物は、機能性食品として使用できるほか、医薬部外品、飲食物などの成分、食品添加物などとして使用することができる。また本明細書における食品組成物は、そのまま機能性食品として使用できるほか、飲食物、医薬品、医薬部外品、飲食物等の成分、食品添加物などとして使用することができる。当該使用により、樹状細胞活性化効果および免疫賦活化効果を有する飲食物、食品組成物または経口摂取用組成物の日常的および継続的な摂取が可能となり、効果的な樹状細胞活性化効果および免疫賦活化効果による体質改善、癌、悪性腫瘍および感染症などの疾患の治療および発症の予防が可能となる。本発明の樹状細胞活性化剤または免疫賦活化剤を含む食品組成物、食品または飲料の例としては、樹状細胞活性化効果もしくは免疫賦活化効果を有する機能性食品、健康食品、一般食品(ジュース、菓子、加工食品等)、栄養補助食品(栄養ドリンク等)などが含まれる。本明細書における食品または飲料は、限定はされないが、鉄およびカルシウムなどの無機成分、種々のビタミン類、オリゴ糖およびキトサンなどの食物繊維、大豆抽出物などのタンパク質、レシチンなどの脂質、ショ糖および乳糖などの糖類、椎茸などの植物抽出物などを含むことができる。
【発明の効果】
【0030】
以下の実施例で示すように、本発明の樹状細胞活性化剤は、未成熟樹状細胞の成熟化を促進する作用および当該作用に起因する免疫賦活化作用を有する。したがって本発明により、免疫賦活化による癌、悪性腫瘍および感染症などを治療および/または予防するための有効な手段が提供される。
【0031】
さらに本発明により、未成熟樹状細胞を処理することにより成熟樹状細胞を誘導する方法が提供される。本発明の方法により活性化された樹状細胞は、高いIL−12生産能を有するので、IL−12産生を介してのTh1細胞の活性化を強く促進し、疾患に対して高い治療効果または予防効果を発揮すると考えられる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
[実施例1]メシマコブ抽出物の調製
メシマコブ抽出物は以下の手順により調製した。メシマコブ子実体を微粉化することにより調製した100μm以下の粒径のメシマコブ子実体粉末25gを500mL用量の蒸留水に懸濁させ、35℃で30分間、超音波破砕処理を行った。この処理液を高速遠心して沈殿を除去し、得られた濾液を凍結乾燥して、メシマコブ抽出物を得た。得られたメシマコブ抽出物はもとの子実体粉末の5〜20%であった。
【0034】
[実施例2]メシマコブ抽出物のヒト樹状細胞活性化効果の測定
(2−1)ヒト末梢血からの未熟樹状細胞の誘導
健常人末梢血をヘパリン採血し、RosetteSep Humon monocyte Enrichment cocktail キット(Stemcell社)を用い、キット付属のプロトコル通りに単球を調製し、RPMI1640培地(sigma、10%FBS含有)に5x10cells/mLになるように細胞懸濁液を調製した。調製した細胞懸濁液を24穴プレートに500μLずつ分注し、さらにGM−CSF(ペプロテック)、IL−4(ペプロテック)各40ng/mLになるように添加した。これを37℃、5%CO条件で3日間培養した。3日後に培養上清300μLを、細胞を吸わないように注意深く吸い取り、新しいRPMI1640培地(sigma、10%FBS含有)300μLを加えた。さらにGM−CSF(ペプロテック)、IL−4(ペプロテック)各40ng/mLになるように添加し、さらに3日間培養(合計6日間)し、未熟樹状細胞を誘導した。未熟樹状細胞の誘導は、細胞表面の単球マーカーであるCD14タンパクが発現低下、共刺激因子であるCD40、CD80、CD86タンパクが発現していることを、それぞれのタンパク特異的な抗体である、抗CD14抗体FITC標識、抗CD40抗体FITC標識、抗CD80抗体PE標識、抗CD86抗体PC5標識(ペプロテック)を用いて、フローサイトメーター(ベックマンコールターEpics XL)で測定し確認した。
【0035】
(2−2)成熟樹状細胞の誘導
上記のように調製した未熟樹状細胞に、メシマコブ抽出物及びPSKを最終濃度が200μg/mLになるように添加し、37℃、5%CO条件で2日間培養した。また、コントロールとして何も添加せずに37℃、5%CO条件で2日間培養した。2日後、各条件で培養した細胞の細胞表面の共刺激因子CD40、CD80、CD86タンパク及び成熟樹状細胞特異的マーカーであるCD83タンパクの発現量を抗CD40抗体FITC標識、抗CD80抗体PE標識、抗CD86抗体PC5標識(ペプロテック)及び抗CD83抗体FITC標識(ペプロテック)を用いて、フローサイトメーター(ベックマンコールターEpics XL)で測定した。結果を図1に示す。
【0036】
測定の結果、メシマコブ抽出物およびPSKのいずれを添加した場合も、コントロールと比較してすべてのマーカーについて発現量の増加が認められ、メシマコブ抽出物およびPSKの添加により樹状細胞が活性化され、成熟化が促進されたことが確認された。また、すべてのマーカーに関して、メシマコブ抽出物を添加した系の発現量はPSKの系の発現量を上回り、特に、成熟樹状細胞特異的マーカーであるCD83のメシマコブ抽出物を添加した系における発現量は、PSKを添加した系と比して2倍以上であることが確認された。このことから、本発明の樹状細胞活性化剤は、従来知られていた樹状細胞活性化剤と比べて、高い活性化効果を有することが示唆された。
【0037】
[実施例3]メシマコブ抽出物により活性化されたヒト樹状細胞のIL−12産生能の測定
実施例2と同じ方法で、ヒト末梢血から未熟樹状細胞を誘導した。調製した未熟樹状細胞に、メシマコブ抽出物及びPSKを最終濃度が200μg/mLになるように添加し、37℃、5%CO条件で24時間培養した。また、コントロールとして何も添加せずに37℃、5%CO条件で24時間培養した。24時間後、各培養上清を回収し、培養上清中のIL−12量をELISAキット(バイオソース)で、キットのプロトコルに従って測定した。結果を図2に示す。
【0038】
PSKを添加した系においては、コントロールに比べてほとんどIL−12産生の増加は認められなかった。一方、メシマコブ抽出物の系ではIL−12産生の大幅の増加が確認された。このことから、メシマコブ抽出物により活性化された樹状細胞は、高いIL−12生産能を有することが確認された。
【0039】
[実施例4]メシマコブ抽出物分画物ESの調製
実施例1に記載の方法で調製したメシマコブ抽出物を80%エタノール水溶液(v/v)中に懸濁し、24時間室温で静置した。懸濁液を遠心分離し、上清を適度に濃縮後、凍結乾燥を行い、メシマコブ抽出物分画物ESを褐色粉末として得た。メシマコブ抽出物からの収率は代表例として約50%であった。得られたメシマコブ抽出物分画物ESは、糖含量が20〜40%で残りの大部分は糖・蛋白・脂質以外の低分子成分であった。
【0040】
[実施例5]メシマコブ抽出物分画物ESのマウス樹状細胞活性化効果の測定
マウスの骨髄細胞をRPMI1640培地(sigma、10%FBS含有)に1x10cells/mLになるように細胞懸濁液を調製した。調製した細胞懸濁液を24穴プレートに500μLずつ分注し、さらにGM−CSF(ペプロテック)を50ng/mL、IL−4(ペプロテック)を40ng/mLになるように添加した。これを37℃、5%CO条件で3日間培養した。3日後に培養上清300μLを、細胞を吸わないように注意深く吸い取り、新しいRPMI1640培地(sigma、10%FBS含有)300μLを加えた。GM−CSF(ペプロテック)を50ng/mL、IL−4(ペプロテック)を40ng/mLになるように添加し、さらに3日間培養(合計6日間)し、未熟樹状細胞を誘導した。調製した未熟樹状細胞に、PSK、メシマコブ抽出物及びメシマコブ抽出物分画物ESを最終濃度が各100μg/mLになるように添加し、37℃、5%CO条件で2日間培養した。コントロールは何も添加しない系を用いた。2日後、各条件で培養した細胞の細胞表面の樹状細胞活性化マーカーであるCD86タンパクの発現量を測定した。発現量は抗CD86抗体FITC標識(ベックマンコールター)を用いて細胞表面上のCD86タンパクをFITC蛍光標識し、フローサイトメーター(ベックマンコールターEpics XL)でレーザー強度500volt、蛍光検出力1.0gainと設定して、FITC蛍光を検出することで測定した。また、各薬剤の効果は各薬剤を添加したときの発現量から、何も添加しなかったコントロールの発現量を差し引いた、発現増加量で評価した。結果を図3に示す。
【0041】
測定の結果、いずれを添加した場合も、樹状細胞活性化マーカーであるCD86タンパクの発現量が増加した。また、メシマコブ抽出物を添加した系における発現増加量は従来より知られている樹状細胞活性化剤PSK添加の系の3倍以上、さらにメシマコブ抽出物分画物ESは13倍以上の発現量増加が認められた。このことから、本発明の樹状細胞活性化剤は、従来知られていた樹状細胞活性化剤と比べて、高い活性化効果を有することが示唆された。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】メシマコブ抽出物とPSKの樹状細胞活性化能を比較する試験結果の一例である。
【図2】メシマコブ抽出物およびPSKにより活性化された樹状細胞のインターロイキン−12の産生能を比較する試験結果の一例である。
【図3】メシマコブ抽出物、メシマコブ抽出物分画物とPSKの樹状細胞活性化能を比較する試験結果の一例である。
【出願人】 【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区道修町四丁目3番6号
【出願日】 平成17年9月29日(2005.9.29)
【代理人】 【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫

【識別番号】100076691
【弁理士】
【氏名又は名称】増井 忠弐

【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰

【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男

【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行

【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己

【公開番号】 特開2006−124383(P2006−124383A)
【公開日】 平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願番号】 特願2005−283977(P2005−283977)