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【発明の名称】 腫瘍診断剤
【発明者】 【氏名】大倉 一郎

【氏名】蒲池 利章

【氏名】小倉 俊一郎

【氏名】石塚 昌宏

【氏名】田中 徹

【要約】 【課題】全ての腫瘍について、早期発見、治療効果のモニタリング、予後の診断を可能とする腫瘍診断剤を提供すること。

【解決手段】一般式(1)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
21NCH2COCH2CH2COR3 (1)
[式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリール基又はアラルキル基を示し;R3はヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又はアミノ基を示す。]
で表されるδ−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩を含有する腫瘍診断剤であって、投与後、体内又は体外から採取した試料中のポルフィリン類を測定することにより診断するものである腫瘍診断剤。
【請求項2】
腫瘍の組織が、脳、鼻道、鼻腔、気管、気管支、口腔、咽頭、食道、胃、乳房、結腸直腸、肺、卵巣、中枢神経系、肝臓、膀胱、尿道、尿管、膵臓、頚管、腹腔、肛門管又は子宮頚である請求項1記載の腫瘍診断剤。
【請求項3】
ポルフィリン類が、プロトポルフィリンIX、ウロポルフィリンI、ウロポルフィリンIII、コプロポルフィリンI、コプロポルフィリンIII、ヘプタカルボキシルポルフィリンI、ヘプタカルボキシルポルフィリンIII、ヘキサカルボキシルポルフィリンI、ヘキサカルボキシルポルフィリンIII、ペンタカルボキシルポルフィリンI、ペンタカルボキシルポルフィリンIII、イソコプロポルフィリン、ハルデロポルフィリン、イソハルデロポルフィリン、メソポルフィリンIX、デューテロポルフィリンIX又はペンプトポルフィリンである請求項1又は2記載の腫瘍診断剤。
【請求項4】
δ−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩を、1回に体重1kgあたり0.001mg〜10g投与するものである請求項1〜3のいずれか1項記載の腫瘍診断剤。
【請求項5】
経口投与、腹腔投与、静脈投与、筋肉内投与、患部局所投与、経皮投与又は経直腸投与するものである請求項1〜4のいずれか1項記載の腫瘍診断剤。
【請求項6】
体内又は体外から採取した試料が、血液、体液、組織、尿、糞便、唾液、汗、髄液、精液又は涙である請求項1〜5のいずれか1項記載の腫瘍診断剤。
【請求項7】
試料を、δ−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩を投与後0.1〜10時間後に、体内又は体外から採取するものである請求項1〜6のいずれか1項記載の腫瘍診断剤。
【請求項8】
ウロポルフィリンI及びウロポルフィリンIIIを測定し、ウロポルフィリンI/ウロポルフィリンIIIの濃度比により腫瘍を検出するものである請求項1〜7のいずれか1項記載の腫瘍診断剤。
【請求項9】
ポルフィリン類をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)、TLC(薄相クロマトグラフィー)、蛍光検出又はイムノアッセイを用いて測定するものである請求項1〜8のいずれか1項記載の腫瘍診断剤。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、δ−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩を含有する新規な腫瘍の診断剤に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍を治療する上で最も大切なことは早期発見である。腫瘍は、従来、血中の腫瘍マーカーと総称される物質を測定することによって検出されていた。腫瘍マーカーとは、「癌細胞をつくる物質又は癌細胞と反応して体内の正常細胞がつくる物質のうちで、それらを血液や組織、排泄物(尿・便)などで検査することが、癌の診断又は治療の目印として役立つもの」と定義されている。
【0003】
しかしながら、腫瘍マーカーのほとんどは、癌以外の疾患によっても少量は産生されるため、慢性炎症などでは擬陽性になることがある。例えば、癌胎児性抗原(Carcinoembryonic Antigen:CEA)は、胃、大腸、膵臓、肺など多くの臓器の細胞で産生されるため、約20%もの擬陽性があると言われている。また、適当な腫瘍マーカーが発見されていない腫瘍もあり、全ての腫瘍をカバーできる腫瘍マーカーは存在していないのが現状である。
【0004】
一方、δ−アミノレブリン酸(ALA)又はその誘導体を投与すると、誘導されるプロトポルフィリンIXが腫瘍に集積して術中診断や治療に効果を発揮することが知られている(特許文献1及び2)。
【特許文献1】特開平11−12197号公報
【特許文献2】特表平11−501914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記方法では、δ−アミノレブリン酸の同位体を調製する必要があり(特許文献1)、採取した体液(体液中に含有される細胞)をALAエステル体と混合し、混合物を光に曝す必要がある(特許文献2)。
また、癌患者の血液中のポルフィリン分析は試みられているが、ポルフィリン濃度が低く、癌の診断には至っていない。
従って、本発明の目的は、ALA投与後の血液や尿などに代表される体内又は体外から採取した試料中のポルフィリン類を分析することにより、全ての腫瘍について、早期発見、治療効果のモニタリング、予後の診断を可能とする腫瘍診断剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、かかる現状に鑑み、全ての腫瘍をカバーできる新規な腫瘍診断剤について鋭意検討したところ、δ−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩を投与した後、体内又は体外から採取した試料中のポルフィリン類を測定すれば、感度良く腫瘍を検出できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、一般式(1)
21NCH2COCH2CH2COR3 (1)
[式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリール基又はアラルキル基を示し;R3はヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又はアミノ基を示す。]
で表されるδ−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩を含有する腫瘍診断剤であって、投与後、体内又は体外から採取した試料中のポルフィリン類を測定することにより診断するものである腫瘍診断剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の腫瘍診断剤によれば、特定の腫瘍に制限されることなく、簡便に、腫瘍の早期発見、治療効果のモニタリング、予後の診断ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
従来、δ−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩を投与した後、体内又は対外から試料を採取し、試料中のポルフィリン類を測定する試みはなされていなかった。本発明の腫瘍診断剤は、δ−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩を投与した後、体内又は体外から採取した試料中のポルフィリン類を測定し、腫瘍を検出するための診断剤である。
【0009】
本発明の腫瘍診断剤の有効成分は、δ−アミノレブリン酸、その誘導体(前記一般式(1))又はそれらの塩である。
一般式(1)中、R1及びR2で示されるアルキル基としては、炭素数1〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、特に炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられる。アシル基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルカノイル基、アルケニルカルボニル基又はアロイル基が好ましく、特に炭素数1〜6のアルカノイル基が好ましい。当該アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、総炭素数2〜13のアルコキシカルボニル基が好ましく、特に炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基が好ましい。当該アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜16のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、炭素数6〜16のアリール基と上記炭素数1〜6のアルキル基とからなる基が好ましく、例えば、ベンジル基等が挙げられる。
【0010】
3で示されるアルコキシ基としては、炭素数1〜24の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜16のアルコキシ基、特に炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましい。当該アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられる。アシルオキシ基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルカノイルオキシ基が好ましく、特に炭素数1〜6のアルカノイルオキシ基が好ましい。当該アシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基等が挙げられる。アルコキシカルボニルオキシ基としては、総炭素数2〜13のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましく、特に総炭素数2〜7のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましい。当該アルコキシカルボニルオキシ基としては、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基としては、炭素数6〜16のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。アラルキルオキシ基としては、前記アラルキル基を有するものが好ましく、例えば、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0011】
一般式(1)中、R1及びR2としては水素原子が好ましい。R3としてはヒドロキシ基、アルコキシ基又はアラルキルオキシ基が好ましく、より好ましくはヒドロキシ基又は炭素数1〜12のアルコキシ基、特にメトキシ基又はヘキシルオキシ基が好ましい。
【0012】
δ−アミノレブリン酸誘導体としては、δ−アミノレブリン酸メチルエステル、δ−アミノレブリン酸エチルエステル、δ−アミノレブリン酸プロピルエステル、δ−アミノレブリン酸ブチルエステル、δ−アミノレブリン酸ペンチルエステル、δ−アミノレブリン酸ヘキシルエステル等が挙げられ、特にδ−アミノレブリン酸メチルエステル又はδ−アミノレブリン酸ヘキシルエステルが好ましい。
【0013】
δ−アミノレブリン酸又はその誘導体の塩としては、特に制限されないが、薬学的に許容される無機酸又は有機酸の酸付加塩が好ましい。無機酸の付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等、有機酸の付加塩としては、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、アスコルビン酸塩等が挙げられ、特にδ−アミノレブリン酸塩酸塩又はδ−アミノレブリン酸リン酸塩が好ましい。
これらの塩は、化学合成、微生物や酵素を用いる方法のいずれの方法によっても製造できる。例えば、特開平4−9360号公報、特表平11−501914号公報、特願2004−99670号明細書、特願2004−99671号明細書、特願2004−99672号明細書記載の方法が挙げられる。
【0014】
本発明の腫瘍診断剤は、δ−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩に薬学的に許容される担体を配合して、常法により調製することができる。剤形としては、顆粒剤、細粒剤、錠剤等の経口投与用剤;液剤、用時溶解型粉末剤等の注射用剤;軟膏、液剤、クリーム剤、ゲル剤等の経皮用剤;坐剤等が挙げられる。
【0015】
本発明の腫瘍診断剤の適用対象となる腫瘍は、悪性又は非悪性腫瘍である。悪性腫瘍は、浸潤性に増殖し、転移するなど悪性を示す。悪性腫瘍の中でも多くを占めるのが上皮細胞に由来する癌であり、その他に肉腫、リンパ腫又は白血病を含む。非悪性腫瘍は、悪性腫瘍以外の疾患、例えば良性疾患などを示し、必ずしも治療が容易ということを意味しない。
腫瘍の組織としては特に限定されないが、脳、鼻道、鼻腔、気管、気管支、口腔、咽頭、食道、胃、乳房、結腸直腸、肺、卵巣、中枢神経系、肝臓、膀胱、尿道、尿管、膵臓、頚管、腹腔、肛門管、子宮頚等が挙げられる。
【0016】
本発明の腫瘍診断剤の投与方法としては、経口投与、静脈投与、筋肉内投与、患部局所投与、腹腔投与、経皮投与、経直腸投与等が挙げられ、腹腔投与、経口投与、患部局所投与又は静脈投与が好ましい。
【0017】
本発明の腫瘍診断剤の投与量としては、投与方法、投与経路、症状、体重、腫瘍の種類によっても異なるが、経口投与の場合、1回に体重1kg当たり0.001mg〜10gであり、0.1〜1000mgが好ましく、特に1〜100mgが好ましい。
【0018】
本発明の腫瘍診断剤の投与後、体内又は体外から採取する試料としては、例えば、血液、体液、組織、尿、糞便、唾液、汗、髄液、精液、涙等が挙げられるが、特に限定されるものではない。試料としては、採取の簡便さから、血液、尿又は糞便が好ましい。投与後、体内又は体外から試料を採取までの時間は、投与方法や腫瘍組織によって異なるが、ポルフィリン類の存在量が最大となる約0.1〜10時間が好ましく、特に約0.5〜5時間が好ましい。尚、採取した試料は、以下の測定前に常法により処理しておくことが望ましい。
【0019】
測定されるポルフィリン類としては特に制限されないが、例えば、プロトポルフィリンIX、ウロポルフィリンI、ウロポルフィリンIII、ヘプタカルボキシルポルフィリンI、ヘプタカルボキシルポルフィリンIII、ヘキサカルボキシルポルフィリンI、ヘキサカルボキシルポルフィリンIII、ペンタカルボキシルポルフィリンI、ペンタカルボキシルポルフィリンIII、コプロポルフィリンI、コプロポルフィリンIII、イソコプロポルフィリン、ハルデロポルフィリン、イソハルデロポルフィリン、メソポルフィリンIX、デューテロポルフィリンIX、ペンプトポルフィリン等が挙げられ、プロトポルフィリンIX、ウロポルフィリンI、ウロポルフィリンIII、コプロポルフィリンI又はコプロポルフィリンIIIが好ましい。
【0020】
上記ポルフィリン類は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、TLC(薄相クロマトグラフィー)、蛍光検出器等の検出法、イムノアッセイ等の生物学的検出法により測定することができる。検出法は、ポルフィリン類の定量が可能であれば特に制限されず、目的や簡便さにより適宜選択することができる。これらのうちで、HPLCやTLCは、各ポルフィリンを個別に定量することが可能で、詳細な診断に適している。HPLCでは、カラムや通流条件によっては、複数種のポルフィリンのピークが重なることがあるが、腫瘍の有無のみを判別することは可能である。蛍光検出器は、波長を選べば定量できるポルフィリンもあるが、蛍光を発する波長は各ポルフィリンで近接しており、個々のポルフィリンの正確な定量には適当でない。蛍光検出器は、後記実施例に示すように、ポルフィリン類としての定量に適している。イムノアッセイは、特定のポルフィリンの測定のみならず、ポルフィリン類としての量を測定することも可能である。
【0021】
後記実施例に示すように、担癌細胞を投与したマウス(担癌マウス)では、正常マウスに比べて試料中のポルフィリン濃度が高く、本発明の腫瘍診断剤によれば、腫瘍組織と正常組織とが明確に判別できることが明らかとなった。また、特定のポリフィリン、例えば、ウロポルフィリンI及びウロポルフィリンIIIに関して、担癌マウスと正常マウスとでは存在比(ウロポルフィリンI/ウロポルフィリンIII)に顕著な差があり、このことから、本発明の腫瘍診断剤によれば、特定のポルフィリンの存在比を指標として腫瘍を検出できることが判明した。
【0022】
本発明の腫瘍診断剤を用いた診断法の原理は、δ−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩を投与した際の代謝物であるプロトポルフィリンIXに代表されるポルフィリン類が腫瘍に集積することに基いている。この現象が現れる理由については様々な研究機関で研究が進んでおり、腫瘍においてはプロトポルフィリンIXをヘムに代謝するフェロキラターゼの活性が低いのではないかと言われているが、今のところはっきりしたことは解っていない。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに何ら限定されない。
【0024】
実施例1
マウス(C3H/He系、5週齢、雌)にマウス担癌細胞(MH134細胞:腹水肝癌細胞)1×106cellsを腹腔内投与し、0〜14日間飼育した。担癌細胞を腹腔投与した10日後に、δ−アミノレブリン酸塩酸塩、δ−アミノレブリン酸メチルエステル塩酸塩、δ−アミノレブリン酸へキシルエステル塩酸塩、δ−アミノレブリン酸リン酸塩 0.12M、50μLをそれぞれ担癌細胞を腹腔投与したマウスに経口投与した。経口投与したマウスから0、0.25、0.5、2、3、4、6時間後に10〜20μLを採血した。採血した血液を2000×g、5分間遠心分離し、上清(血漿)5μLに酢酸エチル/酢酸(2/1、v/v)300μLを加え混和し、更に0.6MのNaOH溶液300μLを加え混和し、NaOH層を採取した。残った有機層に0.5Mの塩酸水溶液を300μL加え、塩酸水溶液層を採取した。NaOH層、塩酸水溶液層の蛍光強度(塩酸層:励起波長400nm、蛍光波長600nm、NaOH層:励起波長400nm、蛍光波長619nm)を測定し、標準液から各濃度を算出した。また、対照として、正常マウスにもδ−アミノレブリン酸塩酸塩、δ−アミノレブリン酸メチルエステル塩酸塩、δ−アミノレブリン酸へキシルエステル塩酸塩、δ−アミノレブリン酸リン酸塩をそれぞれ経口投与(0.12M、50μL)し、同様の処理を施した。その結果を図1−1〜1−8に示す。
【0025】
図1−1〜1−8から明らかなように、δ−アミノレブリン酸塩酸塩、δ−アミノレブリン酸メチルエステル塩酸塩、δ−アミノレブリン酸へキシルエステル塩酸塩、δ−アミノレブリン酸リン酸塩を投与した2時間後に、担癌細胞を腹腔投与したマウスにおいて、プロトポルフィリンIX及びウロポルフィリンの濃度が最大となった。一方、正常マウスでは、当該2時間後においては、ウロポルフィリンはほとんど検出されなかった。従って、本発明の腫瘍診断剤は、腫瘍組織と正常組織とを明確に判別できる診断剤であることが分かった。
【0026】
実施例2
マウス(C3H/He系、5週齢、雌)にマウス担癌細胞(MH134細胞)1×106cellsを腹腔内投与し、0〜14日間飼育した。δ−アミノレブリン酸塩酸塩 0.12M、50μLを担癌細胞を腹腔投与した10日後のマウスに経口投与し、2時間後に10〜20μLを採血した。採血後、2000×g、5分間遠心分離し、上清(血漿)5μLに酢酸エチル:酢酸(2:1、v/v)50μLを加え混和し、さらに0.6MのNaOH溶液50μLを加え混和し、NaOH層を採取した。試料をHPLCで測定し(分析条件は、蛍光検出器:励起波長406nm、蛍光波長619nmを用い、溶離液は12.5%アセトニトリル、1M酢酸アンモニウム、0.27mM EDTA、pH5.15(酢酸調製)溶液を用い、カラムはODS−AGtypeCAPCELLPAK、4.6mmφ×250mm、粒子径5μm(資生堂社製)を用い、流速は1.0mL/min、温度25℃で行った)、標準液のピーク面積から各濃度を算出した。その結果を表1に示す。
【0027】
【表1】


【0028】
表1から明らかなように、δ−アミノレブリン酸塩酸塩投与前の正常マウス、担癌細胞を腹腔投与したマウス、及びδ−アミノレブリン酸塩酸塩投与後の正常マウスでは、ウロポルフィリンIとウロポルフィリンIIIは検出されなかったが、δ−アミノレブリン酸塩酸塩投与後の担癌細胞を腹腔投与したマウスにおいては、ウロポルフィリンIとウロポルフィリンIIIが検出され、ウロポルフィリンIとウロポルフィリンIIIの比が、0.53とウロポルフィリンIIIが多く検出された。この結果より、ウロポルフィリンIとウロポルフィリンIIIの量やその比により、腫瘍組織と正常組織とを明確に分けることが可能な診断剤であることが判明した。
【0029】
実施例3
マウス(C3H/He系、5週齢、雌)にマウス担癌細胞(MH134細胞)1×106cellsを腹腔内投与し、0〜14日間飼育した。δ−アミノレブリン酸塩酸塩 0.12M、50μLを担癌細胞を腹腔投与した10日後のマウスに経口投与し、2時間後に尿と投与前の尿を採取した。採取した尿は、HPLCで測定し(分析条件は、蛍光検出器:励起波長406nm、蛍光波長619nmを用い、溶離液は12.5%アセトニトリル、1M酢酸アンモニウム、0.27mM EDTA、pH5.15(酢酸調製)溶液を用い、カラムはODS−AGtypeCAPCELLPAK、4.6mmφ×250mm、粒子径5μm(資生堂社製)を用い、流速は1.0mL/min、温度25℃で行った)、標準液から各濃度を算出した。また、対象として正常マウスにもδ−アミノレブリン酸塩酸塩を0.12M、50μL投与し、同様の処理を施した。その結果を表2に示す。
【0030】
【表2】


【0031】
表2から明らかなように、δ−アミノレブリン酸塩酸塩投与前では、正常マウス、担癌細胞を腹腔投与したマウスにおいて、ウロポルフィリンIとウロポルフィリンIIIは、検出されなかったが、δ−アミノレブリン酸塩酸塩投与後の正常マウス、担癌細胞を腹腔投与したマウスにおいては、ウロポルフィリンIとウロポルフィリンIIIが検出され、正常マウスより担癌細胞を腹腔投与したマウスのほうがウロポルフィリンIとウロポルフィリンIIIのいずれも約13倍量多く検出された。また、ウロポルフィリンIとウロポルフィリンIIIの比が、正常マウスでは0.94であったのに対し、担癌細胞を腹腔投与したマウスでは0.54と比が異なっていた。この結果より、ウロポルフィリンIとウロポルフィリンIIIの量やその比により、腫瘍組織と正常組織とを明確に分けることが可能な診断剤であることが判明した。
【0032】
実施例4
マウス(C3H/He系、5週齢、雌)にマウス担癌細胞(MH134細胞)1×106cellsを腹腔内投与し、0〜14日間飼育した。δ−アミノレブリン酸塩酸塩 0.12M、50μLを担癌細胞を腹腔投与した10日後のマウスに経口投与し、2時間後に糞便を採取した。採取した糞便湿重量10mgに、酢酸エチル-酢酸混合液(4/1、v/v)100μLを添加し、ホモジナイズした後、ろ紙にて濾過を行い、ろ液の10μLを、HPLCで測定し(分析条件は、蛍光検出器:励起波長406nm、蛍光波長619nmを用い、溶離液はA液:80%アセトニトリル/7%酢酸/50mM酢酸アンモニウム混合液、B液:10%アセトニトリル/4%酢酸/50mM酢酸アンモニウム混合液を用いA/B(20/80)−A/B(90/10)30分Linearグラジェントの後、A液で20分間ホールドした。カラムはODS−AGtypeCAPCELLPAK、4.6mmφ×250mm、粒子径5μm(資生堂社製)を用い、流速は1.0mL/min、温度25℃で行った)、標準液のピーク面積から各濃度を算出した。また、対象として正常マウスにもδ−アミノレブリン酸塩酸塩を0.12M、50μL投与し、同様の処理を施した。結果を表3に示す。
【0033】
【表3】


【0034】
表3から明らかなように、δ−アミノレブリン酸塩酸塩投与前では、正常マウス、担癌細胞を腹腔投与したマウスにおいて、ウロポルフィリンとコプロポルフィリンは検出されず、δ−アミノレブリン酸塩酸塩投与後の正常マウスでも、ウロポルフィリンとコプロポルフィリンは検出されなかったが、担癌細胞を腹腔投与したマウスにおいては、ウロポルフィリン 1.75pmolとコプロポルフィリン 0.21pmolが検出され、腫瘍組織と正常組織とを明確に分けることが可能な診断剤であることが判明した。
【0035】
実施例5
ヌードマウス(BALB/cA-nu 5週齢、雄)にヒト肝癌細胞(HepG2細胞)1×106cellsを皮下投与したものと、ヌードマウス(BALB/cA-nu 5週齢、雌)にヒト子宮頸癌細胞(HeLa細胞)1×106cellsを皮下投与したものを0〜10日間飼育した。それぞれにδ-アミノレブリン酸リン酸塩を0.12M、50μLを、ヒト肝癌細胞、ヒト子宮頸癌細胞を投与した10日後のマウスに経口投与し、4時間後の尿を採取した。
採取した尿は、HPLCで測定し(分析条件は蛍光検出器:励起波長406nm、蛍光波長619nmを用い、溶離液は、
A:80%アセトニトリル/7%酢酸/50mM酢酸アンモニウム、
B:10%アセトニトリル/4%酢酸/50mM酢酸アンモニウム
を用いて、A/B(20/80)−A/B(90/10)13分Linearグラジェント、A液10分間で行い、カラムはODS-AGtypeCAPCELLPAK4.6mm ×250mm、粒子径5μm(資生堂社製)を用い、流速は1.0mL/min、温度25℃で行った)、標準液から各濃度を算出した。さらに、尿中のクレアチニン(CRE)量を測定して、CREあたりのポルフィリン量を求めることで、尿濃度を補正した。また、対照として、正常ヌードマウスにもδ-アミノレブリン酸リン酸塩を0.12M、50μL投与し、同様の処理を施した。その結果を表4に示す。
【0036】
【表4】


【0037】
表4から明らかなように、δ-アミノレブリン酸リン酸塩投与後、ヒト肝癌細胞を投与したマウス尿中には正常マウスの約15倍ものウロポルフィリンが、コプロポルフィリンは約1.5倍含まれていることがわかった。さらに、ヒト子宮頸癌細胞を投与したマウス尿中には正常マウスの約90倍ものウロポルフィリンが、コプロポルフィリンは約2.7倍含まれていることがわかった。
以上のことから、本発明の腫瘍診断剤はヒト腫瘍細胞を用いた場合においても、正常と異常を明確に分けることができる診断剤であることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】蛍光検出法による、担癌マウス、正常マウスにおけるプロトポルフィリンIX及びウロポルフィリン濃度の変化を示す図である。
【出願人】 【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
【出願日】 平成17年8月11日(2005.8.11)
【代理人】 【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所

【識別番号】100068700
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 三幸

【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄

【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫

【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹

【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人

【識別番号】100089048
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 康隆

【識別番号】100101317
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 ひろみ

【公開番号】 特開2006−124372(P2006−124372A)
【公開日】 平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願番号】 特願2005−232996(P2005−232996)