| 【発明の名称】 |
コーティング製剤およびその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】佐久間 哲 【住所又は居所】富山県富山市三郷26番地 東亜薬品株式会社内
【氏名】長森 八郎 【住所又は居所】富山県富山市三郷26番地 東亜薬品株式会社内
【氏名】笠間 俊男 【住所又は居所】富山県富山市三郷26番地 東亜薬品株式会社内
|
| 【要約】 |
【課題】一定期間放置後も、結晶の色が製剤表面に浮き出ることがない脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物のコーティング製剤、およびその簡便な製造方法を提供すること、特に、エパルレスタットについてのコーティング製剤を提供すること。
【解決手段】脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物、例えば、エパルレスタットを有効成分として含むコーティング製剤であって、コーティング層として、フィルム基剤、酸化チタン、および可塑剤としてマンニトールまたはラクトースから選択される少なくとも1種以上を酸化チタンに対し50質量%〜150質量%含むコーティング層が設けられていることを特徴とする、結晶の色が製剤表面に浮き出ることがないコーティング製剤であり、特に酸化チタンがアナターゼ型酸化チタンであることを特徴とするコーティング製剤。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物を有効成分として含有するコーティング製剤であって、コーティング層として、フィルム基剤、顔料および可塑剤としてマンニトールまたはラクトースから選択される少なくとも1種以上を含むコーティング層が設けられていることを特徴とするコーティング製剤。 【請求項2】 顔料が酸化チタンである請求項1に記載のコーティング製剤。 【請求項3】 可塑剤としてマンニトールまたはラクトースから選択される少なくとも1種以上を酸化チタンに対し50質量%〜150質量%含む請求項2に記載のコーティング剤。 【請求項4】 脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物が、アルドース還元酵素阻害剤または脂溶性ビタミン類である請求項1ないし3のいずれかに記載のコーティング製剤。 【請求項5】 アルドース還元酵素阻害剤が、5−[(1Z,2E)−2−メチル−3−フェニル−2−プロペニリデン]−4−オキソ−2−チオキソ−3−チアゾリジン酢酸である請求項4に記載のコーティング剤。 【請求項6】 5−[(1Z,2E)−2−メチル−3−フェニル−2−プロペニリデン]−4−オキソ−2−チオキソ−3−チアゾリジン酢酸を有効成分として含むコーティング製剤であって、コーティング層として、フィルム基剤、酸化チタンおよび可塑剤としてマンニトールまたはラクトースから選択される少なくとも1種以上を酸化チタンに対し50質量%〜150質量%含むコーティング層が設けられていることを特徴とする、結晶の色が製剤表面に浮き出ることがないコーティング製剤。 【請求項7】 酸化チタンがアナターゼ型酸化チタンであることを特徴とする請求項6記載のコーティング製剤。 【請求項8】 脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物に対してコーティング層を設け安定化させる方法であって、コーティング層として、フィルム基剤、顔料および可塑剤としてマンニトールまたはラクトースから選択される少なくとも1種以上を含むコーティング層の被膜を形成することを特徴とする安定化方法。 【請求項9】 顔料が酸化チタンである請求項8に記載の安定化方法。 【請求項10】 可塑剤としてマンニトールまたはラクトースから選択される少なくとも1種以上を酸化チタンに対し50質量%〜150質量%含む請求項9に記載の安定化方法。 【請求項11】 脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物が、アルドース還元酵素阻害剤または脂溶性ビタミン類である請求項8ないし10のいずれかに記載の安定化方法。 【請求項12】 アルドース還元酵素阻害剤が、5−[(1Z,2E)−2−メチル−3−フェニル−2−プロペニリデン]−4−オキソ−2−チオキソ−3−チアゾリジン酢酸である請求項11に記載の安定化方法。 【請求項13】 5−[(1Z,2E)−2−メチル−3−フェニル−2−プロペニリデン]−4−オキソ−2−チオキソ−3−チアゾリジン酢酸を含む裸錠に、フィルム基剤、酸化チタンおよび可塑剤としてマンニトールまたはラクトースから選択される少なくとも1種以上を酸化チタンに対し50質量%〜150質量%含むコーティング剤を用いてコーティング層を設けることを特徴とする、結晶の色が製剤表面に浮き出ることがないコーティング製剤の製造方法。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物を有効成分として含有するコーティング製剤、およびその安定化方法、ならびにその製造方法に関し、特に、アルドース還元酵素阻害剤である5−[(1Z,2E)−2−メチル−3−フェニル−2−プロペニリデン]−4−オキソ−2−チオキソ−3−チアゾリジン酢酸(以下エパルレスタットという)を有効成分として含むコーティング製剤、およびその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 現在臨床的に使用されている薬物のなかには、光に対して不安定な薬物が多い。このような薬物を製剤化する場合には、一般的に、有効成分である薬物と種々の賦形剤等からなる裸錠(素錠)を打錠して、その裸錠を、白色顔料等を含むコーティング層で被覆(コーティング)し、光を遮蔽することが行われている。 【0003】 コーティング層は、フィルム基剤および顔料からなるものであり、フィルム基剤としては、例えば、水溶性コーティング、腸溶性コーティング、徐放性コーティング等で用いられている高分子物質が使用される。 【0004】 一方、コーティング層に含有される顔料としては、例えば酸化チタン等の白色顔料が挙げられるが、コーティング層の遮光能および隠蔽能を向上させるために、多量の酸化チタンが用いられている。しかしながら、多量の酸化チタンを錠剤にコーティングすると、錠剤の表面がひび割れしたり、コーティング層が剥がれ落ちたりする現象が発生する。そのため、コーティング層に柔軟性を持たせ、且つコーティング層の強度を高めるために、コーティング剤に可塑剤を含有させることが行われている。 【0005】 そのような可塑剤としては、一般的にはポリエチレングリコール(PEG)、グリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ヒマシ油、クエン酸トリエチル、トリアセチン等が使用されるが、そのなかでもPEGが好ましく使用されている。このPEGを可塑剤として使用した場合には、裸錠に含有される有効成分が脂溶性の薬物の場合には、脂溶性のコーティング剤を経由して経時的に製剤表面に滲み出ることにより表面に着色、黒ずみ等が発生することが、まま発生していた。 【0006】 このような脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物としては、例えば、アルドース還元酵素阻害剤または脂溶性ビタミン類等が挙げられる。 【0007】 したがって本発明者らは、一定期間放置後も、結晶の色が製剤表面に浮き出ることがない、脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物のコーティング製剤、安定化方法、およびその簡便な製造方法を提供することを検討した。すなわち本発明者らは、脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物としてアルドース還元酵素阻害剤であるエパルレスタット(一般名:INN)を代表的な化合物として選択し、その検討を行った。 【0008】 エパルレスタットは、アルドース還元酵素阻害活性を有し、慢性糖尿病の合併症、例えば循環器障害、腎障害、網膜症、糖尿性白内障、神経障害、感染症等でアルドース還元酵素に起因する合併症として知られている神経痛の如き神経障害、網膜症、糖尿性白内障、尿細管性腎臓病の如き腎障害の予防や治療に有用であることが知られている化合物であり(特許文献1)、すでに臨床的に、糖尿病性末梢神経障害に伴う自覚症状(しびれ感、疼痛)、振動覚異常、心拍変動異常の改善薬として臨床的に使用されている。 【0009】 このエパルレスタットは、結晶自体が黄色〜だいだい色の結晶であること、光に対して化学的に不安定であり、光により変色することが知られている。したがってエパルレスタットを医薬品、例えば錠剤とするには、光に対する安定性を改善する必要があった。 【0010】 そのため、エパルレスタットの結晶の色を完全に隠蔽し、光に対して安定であり、変色がない製剤、例えば錠剤を得る方法として、各種のコーティング方法、コーティング製剤の組成を改善する方法が最近報告されている。 【0011】 例えば、(1)エパルレスタットを含む裸錠に、少なくとも一層の酸化チタンを含むか、または実質的に酸化チタンを含まない内膜層と、酸化チタンを含む外膜層とが設けられたコ−テイング製剤、およびその製造方法により、光に対して化学的に安定であり、変色がなく、かつ製剤表面に付着物のないエパルレスタットのコ−テイング製剤(特許文献2)、(2)酸化チタンおよび酸化チタンに対し10質量%未満の可塑剤を含むコ−テイング層が設けられていることを特徴とするエパルレスタットを有効成分として含むコ−テイング製剤およびその製造方法により、一定期間放置後も、結晶の色が製剤表面に浮き出ることがない製剤(特許文献3)、さらには、(3)エパルレスタットを含む裸錠に対してルチル型酸化チタンを含むコ−テイング層が設けられているコ−テイング製剤であって、ルチル型酸化チタンの含有量として、裸錠中のエパルレスタットに対して4.5〜8.5質量%であり、かつフィルム基剤に対して50〜100質量%である、光安定性に優れ、黒ずみのない製剤(特許文献4)等が報告されている。 【0012】 【特許文献1】特開昭57−40478号公報 【特許文献2】特許第3496832号公報 【特許文献3】特許第3558077号公報 【特許文献4】特開2004−217652号公報 【0013】 しかしながら、上記のコーティング製剤にあっては、例えば上記(1)では、エパルレスタットを含む裸錠に少なくとも内膜層と外膜層の2種類のコーティングする必要がある煩雑な方法で得ているものであり、また、上記(2)の製剤にあっては、コーティング層に可塑剤を実質使用しないか、または使用可能な可塑剤としてポリエチレングリコールに特定された製剤であり、さらには、上記(3)の製剤ではコーティング層で使用される酸化チタンがルチル型酸化チタンに限定されたものであり、エパルレスタットを含有するコーティング製剤として、さらなる改良が求められているのが現状である。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0014】 したがって本発明者らは、一定期間放置後も、結晶の色が製剤表面に浮き出ることがない、脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物のコーティング製剤、安定化方法、およびその簡便な製造方法を提供することを課題とする。 そのなかでも、特に、エパルレスタットのコーティング製剤、およびその簡便な製造方法を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0015】 かかる課題を解決するために、本発明者らは、脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物を有効成分として含有する裸錠に、従来法よりも工程数が少なく、簡便、且つコストのかからないコーティングを施すことによって、光に対して安定で、変色がなく、かつ結晶の色を完全に被覆することを図った。 【0016】 そのために、具体的には、コーティング材料に白色顔料として酸化チタンを用い、また、従来の錠剤では、脂溶性の薬物が脂溶性のコーティング剤を経由して経時的に製剤表面に滲み出ることにより表面に着色、黒ずみ等が発生するものと考え、水溶性の糖類、例えば、マンニトール、ラクトース等をコーティング剤の一成分として用いることにより、脂溶性の薬物が製剤表面に滲み出ない錠剤の製造を鋭意検討した。 【0017】 その結果、本発明者らは、コーティング剤として、フィルム基剤と共に白色顔料として酸化チタンを用い、またコーティング剤中に含有させる可塑剤として水溶性の可塑剤を用い、そのうえで当該可塑剤の配合量を特定の範囲に限定することにより、加湿下での放置によっても脂溶性の薬物を含有する製剤に外観上の変化が生じないことを確認し、本発明を完成させるに至った。 【0018】 可塑剤は、通常薬剤の被膜に柔軟性を持たせ皮膜強度を高めるためにコーティング原料として用いる他、酸化チタンによるコーティング機械の内壁の黒ずみによる製品表面の黒ずみ防止に利用されているが、親水性可塑剤であるマンニトール、ラクトース等の添加によって有効成分の結晶の色が製剤表面に浮き出ることを防止できるということは、これまで知られていない。 【0019】 したがって本発明は、特にコーティング剤の可塑剤として、水溶性の糖類、例えば、マンニトール、ラクトース等を用いる点に一つの特徴を有するものである。 【0020】 しかして本発明は、その一つの態様として、具体的には、以下のコーティング製剤を提供する。 1.脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物を有効成分として含有するコーティング製剤であって、コーティング層として、フィルム基剤、顔料および可塑剤としてマンニトールまたはラクトースから選択される少なくとも1種以上を含むコーティング層が設けられていることを特徴とするコーティング製剤; 2.顔料が酸化チタンである上記1に記載のコーティング製剤; 3.可塑剤としてマンニトールまたはラクトースから選択される少なくとも1種以上を酸化チタンに対し50質量%〜150質量%含む上記2に記載のコーティング剤; 4.脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物が、アルドース還元酵素阻害剤または脂溶性ビタミン類である上記1ないし3のいずれかに記載のコーティング製剤; 5.アルドース還元酵素阻害剤が、5−[(1Z,2E)−2−メチル−3−フェニル−2−プロペニリデン]−4−オキソ−2−チオキソ−3−チアゾリジン酢酸である上記4に記載のコーティング剤; 6.5−[(1Z,2E)−2−メチル−3−フェニル−2−プロペニリデン]−4−オキソ−2−チオキソ−3−チアゾリジン酢酸を有効成分として含むコーティング製剤であって、コーティング層として、フィルム基剤、酸化チタンおよび可塑剤としてマンニトールまたはラクトースから選択される少なくとも1種以上を酸化チタンに対し50質量%〜150質量%含むコーティング層が設けられていることを特徴とする、結晶の色が製剤表面に浮き出ることがないコーティング製剤; 7.酸化チタンがアナターゼ型酸化チタンであることを特徴とする上記6に記載のコーティング製剤; である。 【0021】 さらに本発明は、別の態様として、具体的には、脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物に対する以下の安定化方法を提供する。 8.脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物に対してコーティング層を設け安定化させる方法であって、コーティング層として、フィルム基剤、顔料および可塑剤としてマンニトールまたはラクトースから選択される少なくとも1種以上を含むコーティング層の被膜を形成することを特徴とする安定化方法; 9.顔料が酸化チタンである上記8に記載の安定化方法; 10.可塑剤としてマンニトールまたはラクトースから選択される少なくとも1種以上を酸化チタンに対し50質量%〜150質量%含む上記9に記載の安定化方法; 11.脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物が、アルドース還元酵素阻害剤または脂溶性ビタミン類である上記8ないし10のいずれかに記載の安定化方法; 12.アルドース還元酵素阻害剤が、5−[(1Z,2E)−2−メチル−3−フェニル−2−プロペニリデン]−4−オキソ−2−チオキソ−3−チアゾリジン酢酸である上記11に記載の安定化方法; である。 【0022】 もっとも具体的な本発明は、脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物としてエパルレスタットのコーティング製剤の製造方法であり、以下のものである。 13.5−[(1Z,2E)−2−メチル−3−フェニル−2−プロペニリデン]−4−オキソ−2−チオキソ−3−チアゾリジン酢酸を含む裸錠に、フィルム基剤、酸化チタンおよび可塑剤としてマンニトールまたはラクトースから選択される少なくとも1種以上を酸化チタンに対し50質量%〜150質量%含むコーティング剤を用いてコーティング層を設けることを特徴とする、結晶の色が製剤表面に浮き出ることがないコーティング製剤の製造方法。 【発明の効果】 【0023】 本発明により、コーティング製剤の被膜が硬化し、ひび割れたり、剥がれ落ちたりすることなく、製剤表面の黒ずみもなく、かつ脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物の結晶の色が加湿下の放置によっても製剤表面に浮き出ることがなく、かつ製剤表面に付着物のないコーティング製剤が提供される。 また、本発明の製造方法は、従来の製造法に比べ、工程数が少なく、簡便、且つ低コストの製造方法であることから、その医療上の貢献度は多大なものである。 【発明を実施するための最良の形態】 【0024】 本発明の目的は、上記したように、長期間の保存によっても有効成分として含有される薬物の結晶の色が製剤表面に浮き出ることがない、脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物のコーティング製剤を提供することにある。 そのような脂溶性薬物としては、種々のものが挙げられるが、例えば、アルドース還元酵素阻害剤または脂溶性ビタミン類等をあげることができる。脂溶性ビタミン類としては、例えば、レチノール、3−デヒドロレチノール等のビタミンA類、コトフェロール、トコトリエノール等のビタミンE類等を例示することができる。 【0025】 そのなかでも本発明の方法により、安定なコーティング剤が提供される薬物は、アルドース還元酵素阻害剤としてのエパルレスタットである。 【0026】 一方、本発明が提供するコーティング剤は、通常このような脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物は、種々の賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等と共に裸錠(素錠)に打錠され、その裸錠を、特異的なコーティング層で被覆されたものである。 そのような裸錠の調製は、常法に従って、造粒し、打錠することによって製造することができる。裸錠の製造にあたっては、例えば、D−マンニトール、ラクトース、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等の賦形剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の結合剤、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、繊維素グリコール酸カルシウム等の崩壊剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、安定剤、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸等の溶解補助剤等、その1つまたはそれ以上を適宜選択し、含有させることができる。 【0027】 一方、本発明にあっては、上記の裸錠をコーティングするコーティング剤としては、基本的には、フィルム基剤、顔料、および可塑剤としてマンニトールまたはラクトースから選択される少なくとも1種以上を含有するものである。 【0028】 使用するフィルム基剤としては、例えば、水溶性コーティング、腸溶性コーティング、徐放性コーティング等で用いられる高分子物質が挙げられ、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース系、例えば、オイドラギットL30−D55、L−100、S−100、レーム等(ファルマ社製品)等のアクリル酸系、カルボキシメチルエチルセルロース、ポリビニルアセチル、ポリビニルアルコール、ジエチルアミノアセテート、ワックス類等の1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。 【0029】 HPMCとしては、市販されている種々の規格のもの、例えばTC−5S、TC−5R、TC−5RG、TC−5E、TC−5RW、TC−5MW、TC−5EW等が用いられる。好ましくは、TC−5E、TC−5EW、TC−5MW、TC−5R等の低粘度のHPMCであり、より好ましくは、TC−5R(HPMC2910)である。 【0030】 コーティング層に含有される顔料としては種々の顔料をあげることができるが、好ましくは酸化チタンである。酸化チタンは、いわゆる白色顔料であるが、他の白色顔料に比べて化学的および物理的に安定であるため、遮光力、隠蔽力、着色力が大きく、耐久性も優れている。酸化チタンには結晶形の異なる、ルチル型とアナターゼ型の2種類がある。本発明では、ルチル型およびアナターゼ型のいずれも用いられるが、アナターゼ型が粒子形、入手の容易性、低コストであることからより好ましく使用される。 【0031】 錠剤のコーティングに用いる酸化チタンの一般的な使用量は、ルチル型とアナターゼ型酸化チタンのいずれの場合も、併用する可塑剤であるマンニトールまたはラクトースの配合量により異なり、特に限定されるものではない。基本的には、製剤中の薬物の光に対する安定性を確保できる量以上であれば良く、特に制限はない。例えば、フィルム基剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のTC−5R、TC−5E、TC−5MWに対しては10〜70%、好ましくは20〜60%である。 【0032】 本発明のコーティング製剤のコーティング層には、裸錠中の有効成分に対し1.0〜10質量%の酸化チタンを含有せしめることが好ましい。より好ましくは2〜9質量%、さらに好ましくは4〜9質量%である。 【0033】 さらに、本発明のコーティング製剤のコーティング層には、フィルム基剤に対して20〜100質量%の酸化チタンを含有させることが好ましい。より好ましくは25〜95質量%である。さらに好ましくは30〜60質量%である。 【0034】 本発明にあっては、コーティング層の遮光能および隠蔽能を向上させるために、比較的多量の酸化チタンを用いている。したがって、錠剤表面のひび割れ、コーティング剤の剥がれ落ちを防ぐため、皮膜に柔軟性を持たせてコーティング膜の強度を高めるべく、コーティング剤に可塑剤を加えることが必要である。 【0035】 一般に、色つき錠剤のマスキングとしてのコーティング剤には可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG)の添加が必要である旨が記載されており、可塑剤としてPEGを添加したコーティング溶液を用いてコーティングした錠剤表面は滑らかに仕上がり、PEGを添加しないものではコーティングフィルムの表面が荒れる現象が見られることが報告されている。しかしながら本発明のコーティング剤にあっては、特にPEGを使用しなくても、製剤表面が滑らかなものが効率よく得られることが判明した。 【0036】 本発明にあっては、コーティング剤に用いられる可塑剤としては、水溶性の可塑剤であり、特に、マンニトールまたはラクトース(乳糖)を挙げることができるが、好ましくは、マンニトールを使用するのがよい。裸錠製造において賦形剤としてマンニトールを使用した場合には、同一成分であるマンニトールを使用する方が経済的である。 なお、本発明においては、必要ならば、通常、可塑剤として使用されるポリエチレングリコール(例えば、マクロゴール200,400,1000,1500,4000,6000)、グリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ヒマシ油、クエン酸トリエチル、トリアセチン等から選ばれる1種または2種以上をさらに添加することもできる。 【0037】 本発明のコーティング製剤のコーティング層には、必要ならば前記以外の通常製剤調製に使用される、タルク、着色料等の他の成分を含有していても構わない。 【0038】 本発明で使用する酸化チタンを含むコーティング剤の調製は、具体的には、酸化チタンに対し、前記配合量の可塑剤を含む溶剤に、酸化チタンを分散させることによって行うことができる。 【0039】 酸化チタンを分散させる溶剤としては、例えば、水、有機溶媒、それらの混合液、またはフィルム基剤を含有した水、有機溶媒、それらの混合液が用いられる。好ましくはフィルム基剤を含有した水である。フィルム基剤としては、前記したものが単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。 【0040】 酸化チタンは、常法に従って、溶剤に分散させることができる。例えば、プロペラ式撹拌機、らいかい機、ホモジナイザー、循環式超音波ホモジナイザー等の超音波分散装置等で分散される。その分散方法は特に限定されるものではなく、酸化チタンの分散性の違いによって選択することができる。好ましくは、超音波分散装置である。 【0041】 本発明のコーティング製剤におけるコーティング層の厚みとしては、特に限定されるものではなく、コーティング被膜により被覆された裸錠(素錠)に含有される薬物を光から遮光、隠蔽するに十分な厚みであればよい。具体的には、3〜60μmが好ましく、特に、厚みが10〜30μmであるのが好ましい。 【0042】 裸錠に対するコーティング方法としては、それ自体公知の方法、例えばパンコーティング法、流動コーティング法、転動コーティング法等を用いることができる。 【実施例】 【0043】 以下に、実施例、比較例および実験例を挙げて本発明を説明するが、これらは本発明を限定するものではない。 なお、以下の実施例においては、脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物としてエパルレスタットをその代表的薬物として記載するが、他の薬物であっても、その基本は何ら異なるものではなく、本発明の技術的範囲に包含されることはいうまでもない。 【0044】 また、以下に記載する有効成分として使用されるエパルレスタットには、2種類の結晶多形、すなわち、A型およびB型が存在することが報告されているが、本発明が提供するコーティング製剤には、A型、B型、またはそれらの混合物(混合物におけるそれぞれの比率は限定されない)のいずれも使用することができる。 【0045】 実施例1: 常法により、5−[(1Z,2E)−2−メチル−3−フェニル−2−プロペニリデン]−4−オキソ−2−チオキソ−3−チアゾリジン酢酸(エパルレスタット)2500g、賦形剤としてD−マンニトール2368g)、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース HPC−L、275g、および崩壊剤としてカルメロース NS−300、330gを撹拌造粒機(ハイスピードミキサー FS−GS25:深江パウデック社製)に投入し、混合後、精製水800gを添加し、造粒した。18メッシュの篩過をし、50℃で17時間乾燥する。乾燥した顆粒に滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム27gを加え、混合(ボーレコンテナーミキサー LM−20)した後、ロータリー打錠機(P−22:畑鉄工所)を用いて、1錠(110mg)当たり有効成分として50mgのエパルレスタットを含有する錠剤(裸錠)を5万錠製造した。 【0046】 別に、精製水800gにHPMC(TC−5R:信越化学工業株製)50g、D−マンニトール25gを溶解し、その混合液に循環式超音波ホモジナイザーを用いて酸化チタン(アナターゼ型:フロイント産業株製)25gを分散させ、140号篩を通過させてコーティング液を製造した。このコーティング液で、前記で製造した錠剤660gを取り、ハイコーターHCT−30N(フロント産業株製)を使用し、1錠当たり10mgコーティングし、コーティング錠を作製した。 【0047】 実施例2: 精製水800gにHPMC(TC−5R:信越化学工業株製)50g、ラクトース25gを溶解し、その混合液に循環式超音波ホモジナイザーを用いて酸化チタン(アナターゼ型:フロイント産業株製)25gを分散させ、140号篩を通過させてコーティング液を製造した。このコーティング液で、前記実施例1記載の製造法により得た錠剤(裸錠)660gに、ハイコーターHCT−30N(フロント産業株製)を使用し、1錠当たり10mgコーティングし、コーティング錠を作製した。 【0048】 比較例1: 精製水800gにHPMC(TC−5R、信越化学工業株製)50gを溶解し、その混合液に循環式超音波ホモジナイザーを用いて酸化チタン(アナターゼ型:フロイント産業株製)25gを分散させ、140号篩(目開き106μm)を通過させてコーティング液を製造した。このコーティング液を用いて前記実施例1の製法で製造した錠剤(裸錠)660mgを取り、ハイコーターHCT−30N(フロント産業社製)を使用し、1錠当たり10mgコーティングし、コーティング錠を作製した。 【0049】 比較例2: 精製水にHPMC(TC−5R:信越化学工業株製)、ポリエチレングリコール(PEG−6000)を溶解し、その混合液に循環式超音波ホモジナイザーを用いて酸化チタン(アナターゼ型:フロイント産業社製)を分散させ(このときのHPMC、PEG−6000、酸化チタンの配合量は質量比で、5.22:1.30:3.48)、140号篩(目開き106μm)を通過させて6%コーティング液を製造した。以下、比較例1と同様にして処理し、コーティング錠を作製した。 【0050】 比較例3: 精製水にHPMC(TC−5R、信越化学工業社製)、プロピレングリコールを溶解し、その混合液に循環式超音波ホモジナイザーを用いて酸化チタン(アナターゼ型、フロイント産業社製)を分散させ(このときのHPMC、プロピレングリコール、酸化チタンの配合量は質量比で、5.22:1.30:3.48)、140号篩(目開き106μm)を通過させて6%コーティング液を製造した。以下、比較例1と同様にして処理し、コーティング錠を作製した。 【0051】 比較例4: (a)精製水にHPMC(TC−5R:信越化学工業社製)を溶解し、6%コーティング液を製造した。このコーティング液を用いて前記実施例1の製法で製造した錠剤(裸錠)660mgを取り、ハイコーターHCT−30N(フロント産業社製)を使用し、1錠当たり3mgコーティングし、コーティング錠を作製した。 (b)次いで、精製水にHPMC(TC−5R、信越化学工業社製)、ポリエチレングリコール(PEG−6000)を溶解し、その混合液に循環式超音波ホモジナイザーを用いて酸化チタン(アナターゼ型:フロイント産業社製)を分散させ(このときのHPMC、PEG−6000、酸化チタンの配合量は質量比で、3.78:0.95:2.27)、140号篩(目開き106μm)を通過させて6%コーティング液を製造した。1錠当たり7mgコーティングし、合計1錠当たり10mgコーティングした。以下、比較例1と同様にして処理し、コーティング錠を作製した。 【0052】 比較例5: 精製水にHPMC(TC−5R:信越化学工業社製)、クエン酸トリエチルを溶解し、その混合液に循環式超音波ホモジナイザーを用いて酸化チタン(アナターゼ型:フロイント産業社製)を分散させ(このときのHPMC、クエン酸トリエチル、酸化チタンの配合量は質量比で、5.50:1.5:3.0)、140号篩(目開き106μm)を通過させて6%コーティング液を製造した。以下、比較例1と同様にして処理し、コーティング錠を作製した。 【0053】 実験例1: 前記の実施例1〜2および比較例1〜5で製造したコーティング製剤および市販品を、80℃の恒温槽に保存し、その外観を比較(官能試験)した。 表中、○は滑らかな表面、×は滑らかでない表面を示す。 その結果を、表1に示した。 【0054】 【表1】
【0055】 比較例1は、コーティング剤中に可塑剤を添加しないものであり、比較例2は可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG−6000)を、比較例3は可塑剤としてプロピレングリコールを、比較例4はダブルコーティング製剤で、外層のコーティング剤に可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG−6000)を使用し、かつ、酸化チタンの配合量を少なくしたものであり、比較例5は可塑剤としてクエン酸トリエチルを使用した例である。表1に示した結果らも判明するように、本発明の実施例は、これら比較例に比べて安定性は優れたものであり、特に可塑剤としてマンニトールを使用した実施例1の製剤は、市販品1と何ら遜色のない安定性を示していた。 【0056】 実験例2: 前記の実施例1〜2および比較例4で製造したコーティング製剤、および市販品2との安定性を60℃/80%湿度(60℃/KCl飽和溶液)で評価(官能試験)した。 その結果を表2に示した。 【0057】 【表2】
【0058】 上記した結果からも判明するように、本発明の実施例の製剤は、比較例4および市販品2に比較してその安定性が優れたものであることが判明した。 【0059】 実験例3:色差について 実施例1〜2、比較例4で製造したコーティング製剤、および市販品との色差を、常法に従って、色差計(日本電色工業社製、型式Z300A)を用いて測定し、評価した。 その結果を表3に示した。 なお表中、Lは明度を示し、a:+は赤の方向;b:−は青の方向、+は黄色の方向;ΔE:0〜0.5(かすかに);0.5〜1.5(僅かに)を示す。 【0060】 【表3】
【0061】 上記実施例1〜2、比較例4で得られた製剤については、市販品1を基準とした色差(ΔE)より、製造時の色調が市販品1と差がないことを確認した。 なお、市販品1と市販品1は、同一メーカーのロットの違いである。 【0062】 以上の実施例ならびに試験例は、脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物としてエパルレスタットをその代表的薬物として記載したものであるが、他の薬物であっても、その裸錠(素錠)に本発明のコーティング層を被覆することによって、有効成分である薬物の安定化が図れ、長期間の保存によっても、有効成分として含有される薬物の結晶の色が製剤表面に浮き出ることがないものであった。 【産業上の利用可能性】 【0063】 以上記載したように、本発明により、コーティング製剤の被膜が硬化し、ひび割れたり剥がれ落ちたりすることなく、製剤表面の黒ずみもなく、かつ本化合物の結晶の色が加湿下の放置によっても製剤表面に浮き出ることがなく、かつ製剤表面に付着物のない、脂溶性で、且つ光に対して不安定な薬物、特にエパルレスタットを含有するコーティング製剤が提供される。 また本発明が提供するコーティング製剤の製造方法は、従来の製造方法に比較して工程数が少なく、簡便、且つ低コストの製造方法であることから、その医療上の貢献度は多大なものであるといえる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】594105224 【氏名又は名称】東亜薬品株式会社 【住所又は居所】富山県富山市三郷26番地
|
| 【出願日】 |
平成16年10月18日(2004.10.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100083301 【弁理士】 【氏名又は名称】草間 攻
|
| 【公開番号】 |
特開2006−111601(P2006−111601A) |
| 【公開日】 |
平成18年4月27日(2006.4.27) |
| 【出願番号】 |
特願2004−303308(P2004−303308) |
|