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【発明の名称】 核酸医薬を標的特異的に細胞内送達するための製剤
【発明者】 【氏名】服部 喜之

【氏名】米谷 芳枝

【氏名】脇 厚生

【氏名】坂口 誠

【要約】 【課題】核酸医薬を標的特異的に細胞内送達するための製剤、特に核酸医薬を包含する安定なナノ粒子製剤を提供する。

【解決手段】核酸医薬を標的特異的に細胞内送達するための製剤であって、遺伝子またはその類似体等の核酸医薬が、[3β-N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート80(商品名;ツイン80)および葉酸−ポリエチレングリコール−ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン(folate-PEG-DSPE)からなる組成物に包含されており、脂質二重膜により内部に水が封入されたリポソームではなく、内部に水を含まないナノ粒子であることを特徴とする安定化製剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸医薬を標的特異的に細胞内送達するための製剤であって、核酸医薬が[3β-N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート80(ツイン80)および葉酸−ポリエチレングリコール−ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン(folate-PEG-DSPE)からなる組成物に包含されていることを特徴とする安定化製剤。
【請求項2】
製剤中DC-Chol構成比が80〜98モル%、ツイン80が1〜10モル%、folate-PEG-DSPEが0.1〜10モル%の範囲内であることを特徴とする、請求項1記載の安定化製剤。
【請求項3】
製剤中DC-Chol構成比が88〜96モル%、ツイン80が3〜7モル%、folate-PEG-DSPEが0.5〜5モル%の範囲内であることを特徴とする、請求項1または2記載の安定化製剤。
【請求項4】
製剤中DC-Chol構成比が93〜94モル%、ツイン80が4〜6モル%、folate-PEG-DSPEが1〜2モル%である、請求項1ないし3記載の安定化製剤。
【請求項5】
ポリエチレングリコール(PEG)が、平均分子量1,000〜5,000であることを特徴とする、請求項1ないし4記載の安定化製剤。
【請求項6】
PEGが、平均分子量2,000であることを特徴とする、請求項1ないし5記載の安定化製剤。
【請求項7】
製剤が、脂質二重膜により内部に水が封入されたリポソームではなく、内部に水を含まないナノ粒子であることを特徴とする、請求項1ないし6記載の安定化製剤。
【請求項8】
製剤が、粒子径50〜1000nmのナノ粒子であることを特徴とする、請求項7記載の安定化製剤。
【請求項9】
製剤が、粒子径60〜800nmのナノ粒子であることを特徴とする、請求項7または8記載の安定化製剤。
【請求項10】
核酸医薬を0.01〜10重量%含む、請求項1ないし9記載の安定化製剤。
【請求項11】
核酸医薬を0.1〜5重量%含む、請求項1ないし10記載の安定化製剤。
【請求項12】
核酸医薬が遺伝子またはその類似体である、請求項1ないし11記載の安定化製剤。
【請求項13】
核酸医薬が遺伝子である、請求項1ないし12記載の安定化製剤。
【請求項14】
核酸医薬が癌抑制遺伝子である、請求項1ないし13記載の安定化製剤。
【請求項15】
遺伝子の類似体がポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである、請求項1ないし12記載の安定化製剤。
【請求項16】
オリゴヌクレオチドがデコイ(おとり分子)、アンチセンス、リボザイム、アプタマーまたはsiRNAである、請求項1ないし15記載の安定化製剤。
【請求項17】
デコイが転写調節因子の結合部位への結合を阻害する作用を有する、請求項1ないし16記載の安定化製剤。
【請求項18】
デコイがNF-κB、STAT-1、STAT-2、STAT-3、STAT-4、STAT-5、STAT-6、GATA-3、AP-1、E2F、EtsまたはCREのデコイオリゴヌクレオチドである、請求項1ないし17記載の安定化製剤。
【請求項19】
デコイがNF-κBデコイオリゴヌクレオチドである、請求項1ないし18記載の安定化製剤。
【請求項20】
デコイが配列番号1で表されるNF-κBデコイオリゴヌクレオチドである、請求項1ないし19記載の安定化製剤。
【請求項21】
細胞が皮膚細胞である、請求項1ないし20記載の経皮送達用安定化製剤。
【請求項22】
細胞が滑膜細胞またはマクロファージである、請求項1ないし20記載の膝関節内投与用安定化製剤。
【請求項23】
細胞が癌細胞、マクロファージ、肝細胞または腎細胞である、請求項1ないし20記載の静脈注射用安定化製剤。
【請求項24】
細胞が癌細胞である、請求項1ないし20記載の癌内投与用安定化製剤。
【請求項25】
ガン細胞が、扁平上皮癌、前立腺癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、脳腫瘍、肝癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、大腸癌、膵臓癌、皮膚癌、咽頭癌、上咽頭癌から選ばれた一種である、請求項23または24記載の安定化製剤。
【請求項26】
NF-κBデコイオリゴヌクレオチドを皮膚細胞内送達するための経皮製剤であって、NF-κBデコイオリゴヌクレオチドがDC-Chol、ツイン80およびfolate-PEG-DSPEからなるナノ粒子に包含されていることを特徴とする安定化製剤。
【請求項27】
炎症性皮膚疾患を治療するための、請求項26記載の安定化製剤の使用。
【請求項28】
炎症性皮膚疾患がアトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、光過敏性皮膚炎、手と足の慢性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、貨幣状皮膚炎、全身性剥脱性皮膚炎、うっ血性皮膚炎、局所性擦過皮膚炎、薬物性皮膚炎または乾癬である、請求項27記載の安定化製剤の使用。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸医薬を標的特異的に細胞内送達するための製剤、特に核酸医薬を包含する安定なナノ粒子製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療は、遺伝子の異常修復や欠損を補うことにより遺伝病を治療する方法としてスタートした。
しかし最近では、遺伝病に限らず正常に機能するタンパク質の発現が不十分な場合や、むしろ積極的に目的とするタンパク質を発現させ疾患の早期治癒を目指すため、外部から正常な遺伝子を導入して必要な蛋白質を供給することにより、治療効果を目指すものまで多岐にわたっている。
従って遺伝子治療を行う場合は、遺伝子を効率よく標的細胞に導入する必要があり、これまで遺伝子導入法として多くの方法が研究されているが、大きく分けてウイルスベクターを使う方法とウイルスを使わない方法に大別される。
【0003】
ウイルスベクターはウイルスの感染力を利用しているため、導入効率が他の方法に比べて高いことが特徴であるが、元のウイルスが有する病原性に起因する安全性上の問題があった。
【0004】
一方ウイルスを使わない方法は、実験室レベルでは数多く報告されているが、ヒトへの治療に応用可能な方法は限られていた。
例えば、エレクトロポレーション法、マニピレータ法、PEG法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、陽イオン脂質等の合成試薬を担体として使う方法、遺伝子銃(パーティクル銃)や圧力により物理的に送達する方法などが検討されている。
これらの方法はウイルスを使わないため、病原性の懸念がない点では優れているが、遺伝子の導入効率が低く、また細胞傷害性/組織傷害性を示すことが多かった。
【0005】
低効率の原因としては、細胞内導入した遺伝子の多くがリソゾームで分解されてしまうことや、核内へ積極的に移行する機構がないため、細胞内に入った遺伝子の一部しか利用されないことなどが考えられている。
【0006】
一方、遺伝子医薬に限らず低分子医薬(化合物)においても、治療効果と安全性を一層高めるため、薬物を病変部位だけに選択的に運搬し、必要な局所でのみ効果を発現させることが望まれてきた(Drug Delivery System; DDS)。
これが実現すれば投与量を低減することが可能となり、通常の用法・用量だと副作用上問題のある薬物を安全に使用できることや、通常の投与方法だと薬物が患部に十分量届かず、満足できる効果が得られなかった薬物も使用することが可能となる。
【0007】
特に制癌剤/抗ガン剤の分野においては、静脈内投与などの全身投与した場合、目的とする臓器以外にも薬剤が分布することになり、対象外臓器において重篤な副作用を発現する頻度が高く、優れたDDSが求められていた。
【0008】
薬剤や遺伝子を、ガンなどの標的細胞・組織を認識し選択的に送達させたり、皮膚・関節など局所的に送り込み作用させるため、抗体を用いたり、特定の受容体を発現している細胞に受容体を介し、選択的に導入する法も提案されている。
【0009】
例えばトランスフェリン-DNA複合体を、トランスフェリン受容体を発現している癌細胞に導入する方法や、アシアロ糖蛋白-DNA複合体を、アシアロ糖蛋白受容体を特異的に発現している肝細胞に送り込むことが可能であることが報告されている。
【非特許文献1】Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1992 Aug 1;89(15):7031-5.
【非特許文献2】J. Biol. Chem., 1991 Aug 5;266(22):14338-42.
【0010】
葉酸受容体(folate receptor)も多くの細胞表面に発現しており、外因性分子の細胞内取り込み(endocytosis)に関与していることが開示されている。
【特許文献1】特許第3232347号公報
【特許文献2】特表2002-543110号公報
【0011】
ただし上記特許文献1に記載された発明は、具体的にはその実施例19に記載されているように、葉酸とアンチセンス等のオリゴヌクレオチドを直接結合させるものであり、安定性や標的細胞特異性において十分なものではなかった。またDDS効果についても、具体的な実験データとして提示されていなかった。
【0012】
また特許文献2に記載された発明も、架橋剤を用いるものの、N-(4-アジドフェニルチオ)フタルイミド等の鎖長が短い化学結合を開示するのみであった。
【0013】
これらに加え、直接結合ではなく、ターゲッティング部分−リンカー部分−/デリバリー・ビークル部分からなるベクターの発明も開示されている。
【特許文献3】特表2003-532368号公報
【0014】
しかし特許文献3に記載された発明は、具体的にはデリバリー・ビークルがウイルス成分であり、本発明の構成とは全く異なるものであった。
【0015】
さらに、(1)ジステアロイルフォスファチジルコリン(DSPC)/(2)コレステロール(Chol)/(3)folate-PEG-DSPE(葉酸−ポリエチレングリコール−ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン)を用い、抗ガン剤であるドキソルビシン(doxorubicin)を封入したリポソームを作製し、ヒトHela/W138ガン細胞への取り込みが報告されている。
【非特許文献3】Biochim. Biophys. Acta, 1995 Feb 15;1233(2):134-44.
【0016】
非特許文献3に開示された発明は、脂質二重膜により水溶液成分を小胞内に取り込んだリポソーム(Liposome)に関するものであり、本発明にかかる一重膜からなるナノ粒子とは本質的に全く異なる。
【0017】
また、(1)卵フォスファチジルコリン/(2)コレステロール(Chol)/(3)folate-PEG-DSPEを用い、15塩基からなるアンチセンスを封入したリポソームを作成し、ヒト上皮癌細胞であるKBガン細胞に取り込ませたことも報告されている。
【非特許文献4】Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1995 Apr 11;92(8):3318-22.
【0018】
しかし非特許文献4に開示された発明は、非特許文献3と同様にリポソームに関するものであり、本発明にかかる一重膜からなるナノ粒子とは、構成も形態も全く異なる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明が解決しようとする課題は、核酸医薬を標的特異的に細胞内送達するための製剤、特に核酸医薬を包含する安定なナノ粒子製剤を提供することである。
さらに具体的には、治療効果と安全性を一層高めるため、薬物を病変部位だけに選択的に運搬し、必要な局所でのみ効果を発現させる、臨床効果の優れたDDS製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、下記特徴のいずれかを有する、核酸医薬の安定なナノ粒子製剤である。
【0021】
(1) 核酸医薬を標的特異的に細胞内送達するための製剤であって、核酸医薬が[3β-N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート80(商品名;ツイン80)および葉酸−ポリエチレングリコール−ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン(folate-PEG-DSPE)からなる組成物に包含されていることを特徴とする安定化製剤。
(2) 製剤中DC-Chol構成比が80〜98モル%、ツイン80が1〜10モル%、folate-PEG-DSPEが0.1〜10モル%の範囲内であることを特徴とする、(1)記載の安定化製剤。
(3) 製剤中DC-Chol構成比が88〜96モル%、ツイン80が3〜7モル%、folate-PEG-DSPEが0.5〜5モル%の範囲内であることを特徴とする、(1)または(2)記載の安定化製剤。
(4) 製剤中DC-Chol構成比が93〜94モル%、ツイン80が4〜6モル%、folate-PEG-DSPEが1〜2モル%である、(1)ないし(3)記載の安定化製剤。
(5) ポリエチレングリコール(PEG)が、平均分子量1,000〜5,000であることを特徴とする、(1)ないし(4)記載の安定化製剤。
(6) PEGが、平均分子量2,000であることを特徴とする、(1)ないし(5)記載の安定化製剤。
(7) 製剤が、脂質二重膜により内部に水が封入されたリポソームではなく、内部に水を含まないナノ粒子であることを特徴とする、(1)ないし(6)記載の安定化製剤。
(8) 製剤が、粒子径50〜1000nmのナノ粒子であることを特徴とする、(7)記載の安定化製剤。
(9) 製剤が、粒子径60〜800nmのナノ粒子であることを特徴とする、(7)または(8)記載の安定化製剤。
(10) 核酸医薬を0.01〜10重量%含む、(1)ないし(9)記載の安定化製剤。
(11) 核酸医薬を0.1〜5重量%含む、(1)ないし(10)記載の安定化製剤。
(12) 核酸医薬が遺伝子またはその類似体である、(1)ないし(11)記載の安定化製剤。
(13) 核酸医薬が遺伝子である、(1)ないし(12)記載の安定化製剤。
(14) 核酸医薬が癌抑制遺伝子である、(1)ないし(13)記載の安定化製剤。
(15) 遺伝子の類似体がポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである、(1)ないし(12)記載の安定化製剤。
(16) オリゴヌクレオチドがデコイ(おとり分子)、アンチセンス、リボザイム、アプタマーまたはsiRNAである、(1)ないし(15)記載の安定化製剤。
(17) デコイが転写調節因子の結合部位への結合を阻害する作用を有する、(1)ないし(16)記載の安定化製剤。
(18) デコイがNF-κB、STAT-1、STAT-2、STAT-3、STAT-4、STAT-5、STAT-6、GATA-3、AP-1、E2F、EtsまたはCREのデコイオリゴヌクレオチドである、(1)ないし(17)記載の安定化製剤。
(19) デコイがNF-κBデコイオリゴヌクレオチドである、(1)ないし(18)記載の安定化製剤。
(20) デコイが配列番号1で表されるNF-κBデコイオリゴヌクレオチドである、(1)ないし(19)記載の安定化製剤。
(21) 細胞が皮膚細胞である、(1)ないし(20)記載の経皮送達用安定化製剤。
(22) 細胞が滑膜細胞またはマクロファージである、(1)ないし(20)記載の膝関節内投与用安定化製剤。
(23) 細胞が癌細胞、マクロファージ、肝細胞または腎細胞である、(1)ないし(20)記載の静脈注射用安定化製剤。
(24) 細胞が癌細胞である、(1)ないし(20)記載の癌内投与用安定化製剤。
(25) ガン細胞が、扁平上皮癌、前立腺癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、脳腫瘍、肝癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、大腸癌、膵臓癌、皮膚癌、咽頭癌、上咽頭癌から選ばれた一種である、(23)または(24)記載の安定化製剤。
(26) NF-κBデコイオリゴヌクレオチドを皮膚細胞内送達するための経皮製剤であって、NF-κBデコイオリゴヌクレオチドがDC-Chol、ツイン80およびfolate-PEG-DSPEからなるナノ粒子に包含されていることを特徴とする安定化製剤。
(27) 炎症性皮膚疾患を治療するための、(26)記載の安定化製剤の使用。
(28) 炎症性皮膚疾患がアトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、光過敏性皮膚炎、手と足の慢性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、貨幣状皮膚炎、全身性剥脱性皮膚炎、うっ血性皮膚炎、局所性擦過皮膚炎、薬物性皮膚炎または乾癬である、(27)記載の安定化製剤の使用。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
ここで本発明における核酸医薬とは、天然型、天然修飾型、合成型ヌクレオチドであれば限定されず、DNA、RNAあるいはそれらのキメラ体であってもよいが、通常は遺伝子またはその類似体であり、遺伝子としてより具体的には例えば癌抑制遺伝子であり、遺伝子類似体としてより具体的にはポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである。また本発明で用いられるヌクレオチドには、リン酸ジエステル結合部の酸素原子をイオウ原子で置換したチオリン酸ジエステル結合をもつオリゴヌクレオチド(S-オリゴ)、またはリン酸ジエステル結合を電荷を持たないメチルホスフェート基で置換したオリゴヌクレオチド等の生体内でオリゴヌクレオチドが分解を受けにくくするために改変したオリゴヌクレオチド等も含まれる。
【0023】
オリゴヌクレオチドとしてさらに具体的には、例えばデコイ(おとり分子)、アンチセンス、リボザイム、アプタマーまたはsiRNAを挙げることができる。
【0024】
デコイとしてさらに具体的には、転写調節因子の結合部位への結合を阻害する作用を有するオリゴヌクレオチドを挙げることができ、転写調節因子としては例えば、NF-κB、STAT-1、STAT-2、STAT-3、STAT-4、STAT-5、STAT-6、GATA-3、AP-1、E2F、Ets、CRE等を挙げることができ、NF-κBがより好適応である。
【0025】
デコイとしてさらに具体的には、配列番号1で表されるNF-κBデコイオリゴヌクレオチド、配列番号2で表されるSTAT-1デコイオリゴヌクレオチド、配列番号3で表されるGATA-3デコイオリゴヌクレオチド、配列番号4で表されるSTAT-6デコイオリゴヌクレオチド、配列番号5で表されるAP-1デコイオリゴヌクレオチド、配列番号6で表されるEtsデコイオリゴヌクレオチド、配列番号7で表されるE2Fデコイオリゴヌクレオチドなどを挙げることができる。
【0026】
次に、本発明において利用する[3β-N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)は、下記構造式で表される化学名;(3β-[N-(N',N'-dimethylaminoethane)carbamoyl]cholesterol [CAS登録番号: 166023-21-8]であり、例えばアルドリッチ(Aldrich)社の試薬(製品番号:C2832)などとして入手することができる。
【0027】
【化1】


【0028】
次に、本発明において利用する葉酸−ポリエチレングリコール−ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン(folate-PEG-DSPE)は、例えばAmino-PEG-DSPEに葉酸をアミド結合させてもよいし、前記非特許文献3(Biochim. Biophys. Acta, 1995 Feb 15;1233(2):134-44.)記載の方法に従って、N-Succinyl DSPEとFolate-PEG-NH2を反応させてもよい。なお、Amino-PEG-DSPEは試薬として入手することができる(日本油脂株式会社製 Sunbright DSPE-020PA, DSPE-050PA、Avanti社製 DSPE-PEG(2000)Amine等)。
【0029】
日本油脂株式会社製 Sunbright DSPE-020PA
【化2】


【0030】
Avanti社製 DSPE-PEG(2000)Amine
【化3】


【0031】
ここで、ポリエチレングリコール(PEG)の平均分子量も限定されないが、通常は1,000〜5,000が好ましく、より好ましくは2,000または5,000であり、さらに好ましくは2,000である。
【0032】
続いてDC-Chol:ツイン80:folate-PEG-DSPEの構成比も限定されないが、通常は80〜98モル%:1〜10モル%:0.1〜10モル%の範囲内であり、好ましくは88〜96モル%:3〜7モル%:0.5〜5モル%の範囲内であり、より好ましくは93〜94モル%:4〜6モル%:1〜2モル%である。
【0033】
なおツイン80は試薬・工業原料などとして各社から市販されているが、本発明においてはより高純度な製品を用いることが好ましく、具体的には例えば日本油脂製品を挙げることができる。
【0034】
本発明にかかるナノ粒子の特徴は、内部に水を含まないナノ粒子であり、従来知られている脂質二重膜により内部に水が封入されたリポソームではないため、二重膜のひずみに基づく不安定が改善され、保存性に優れた安定なナノ粒子が得られる。
【0035】
本発明ナノ粒子の粒子径は、通常50〜1000nmであるが、包含する遺伝子またはその類似体の種類、標的細胞/臓器あるいは投与経路等により、粒子径60〜800nmの範囲内で最適化し調製することもできる。
【0036】
包含する核酸医薬の配合量も限定されないが、通常は0.01〜10重量%であり、好ましくは0.1〜5重量%の範囲内である。
【0037】
本発明においては、上記構成要件に加え、必要に応じてpH調整剤、等張化剤、界面活性剤、抗酸化剤、香料、色素、防腐防黴剤、油性基剤、保湿剤、吸収促進剤等を加えることもできる。
【0038】
本発明にかかるナノ粒子は各種疾患の治療・改善・予防剤として利用することができ、葉酸受容体を発現している細胞であれば限定されないが、具体的には、例えば以下の細胞を対象とする投与製剤を挙げることができる。
1) 皮膚細胞を対象とする経皮送達製剤
2) 滑膜細胞またはマクロファージを対象とする膝関節内投与製剤
3) 癌細胞、マクロファージ、肝細胞または腎細胞を対象とする静脈注射製剤
4) 癌細胞を対象とする癌内投与製剤
【0039】
ここで皮膚細胞を対象とする経皮送達製剤の適応症も限定されないが、具体的には、例えば炎症性皮膚疾患を挙げることができ、さらに具体的にはアトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、光過敏性皮膚炎、手と足の慢性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、貨幣状皮膚炎、全身性剥脱性皮膚炎、うっ血性皮膚炎、局所性擦過皮膚炎、薬物性皮膚炎または乾癬を挙げることができる。
【0040】
滑膜細胞またはマクロファージを対象とする膝関節内投与製剤を対象とする経皮送達製剤の適応症も限定されないが、具体的には、例えば慢性関節リウマチ(RA)、変形性関節炎(OA)等を挙げることができる。
【0041】
さらに上記ガン細胞も限定されないが、具体的には例えば扁平上皮癌、前立腺癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、脳腫瘍、肝癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、大腸癌、膵臓癌、皮膚癌、咽頭癌、上咽頭癌等を挙げることができる。
【0042】
本発明の効果を具体的に示すため、以下に製造例および実施例を掲げるが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0043】
製造例1 folate-PEG2000-DSPEおよびfolate-PEG5000-DSPEの合成
folate-PEG2000-DSPEは、Bioconjug. Chem.,10(1999),289-298.記載の方法に従って合成した。葉酸(和光純薬製)をジメチルスルホキシド(DMSO, 1ml)に溶解した。ここにAmino-PEG2000-DSPE(日本油脂製、100mg, 0.035mmol)とピリジン(0.5ml)を加え、続いてジシクロヘキシルカルボジイミド(32.5mg)を加えた。室温にて4時間反応させた。シリカゲル60F254 薄層クロマトグラフィー(75:36:6 クロロホルム/メタノール/水)上にて、新しいスポット(Rf=0.57)の生成を認めた。一方Amino-PEG2000-DSPE(Rf=0.76)の消失を、ニンヒドリン呈色反応により確認した。減圧蒸留してピリジンを除いた後、水(12.5ml)を加えた。溶液を遠心分離し、微量の不溶物を除いた。上清をSpectra/Por CEチューブ(Spectrum社製)中に入れ、50mM-生理食塩水(2000ml、2回)、水(2000ml、3回)中に透析させた。透析液を凍結乾燥し、ESI-TOFMS質量分析計により分析した。
また同様にして、Amino-PEG5000-DSPEからfolate-PEG5000-DSPEを合成した。
【0044】
製造例2 プラスミドDNAの調製
pAAV-CMV-LUCプラスミド(J.Virol.Methods,1997,Jan;63(1-2):129-36.等参照)を、maxiprepカラム(Qiagen社製)を用いアルカリ溶解法により精製した。FITC標識プラスミドは、ITフルオレセイン・ラベルキット(Mirus社製)により調製した。
【0045】
製造例3 ナノ粒子(NP)の調製
下表に示した処方にて、水(10ml)中で、脂質(DC-Chol、ツイン80、PEG2000-DSPE、folate-PEG2000-DSPEおよび/またはfolate-PEG5000-DSPE)から、修正エタノール注入法により各NPを製造した。
【0046】
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製剤 Mol %
----------------------------------------------------------
DC- ツイン PEG2000- f-PEG2000- f-PEG5000-
Chol 80(T) DSPE (P) DSPE (F) DSPE (FL)
----------------------------------------------------------
NP-T 95 5 ― ― ―
NP-0.3PT 94.7 5 0.3 ― ―
NP-1PT 94 5 1 ― ―
NP-0.3FT 94.7 5 ― 0.3 ―
NP-1FT 94 5 ― 1 ―
NP-1FLT 94 5 ― ― 1
----------------------------------------------------------
【0047】
ナノ粒子は、脂質(例えばNP-1FTの場合、DC-Chol/ツイン80/folate-PEG2000-DSP = 94/5/1 モル比 = 10:1.3:0.65 重量[mg]比)を適当量のエタノールに溶解し、修正エタノール注入法により調製した。DiI標識ナノ粒子は、DiIを全脂質に対し0.04モル%になるよう加えて製造した。まずエタノールに溶解した脂質溶液を、減圧濃縮機を用いてエタノールを適当量(約1ml)まで除き、最終的に半固体状溶液を得た。ここに適当量(10ml)の水を加え、再度減圧濃縮機を用いエタノールを除いた。均一な粒子サイズを得るため混合物を超音波バス(本多電子製 W220R型)にて5分間処理した後、滅菌フィルター(孔径:450nm)にて一回、ろ過滅菌した。
【0048】
このようにして非ウイルスベクターとして可能性のある、6種の異なる陽イオン性ナノ粒子組成物を調製した。ナノ粒子の成分と組成を上記表中に示した。すべての組成物は、陽イオン性脂質として1mg/mlのDC-Cholを含有する。NP-Tは5mol% ツイン80を含む。NP-0.3PTおよびNP-1PTは5mol% ツイン80と、それぞれ0.3または1mol% PEG2000-DSPEを含む。葉酸受容体(レセプター)ターゲティング・ベクターであるNP-0.3FTおよびNP-1FT組成物では、NP-0.3PTおよびNP-1PTにおけるPEG2000-DSPEに代えて、それぞれ0.3または1mol% folate-PEG2000-DSPEを用いた。NP-1FLTは、NP-1FTにおけるfolate-PEG2000-DSPEに代えて、1mol% folate-PEG5000-DSPEを用いた。
【0049】
実施例1 ナノ粒子およびNanoplexの、粒子径と表面電位
ナノ粒子およびNanoplexの粒子径分布は動的光散乱法により、表面電位は電気泳動光散乱法(大塚電子製 ELS-800)により、25℃にて適当量の水中に分散希釈後、それぞれ測定した。ナノ粒子の安定性は、60日後の粒子径変化により評価した。電荷比(+/-) 1/1, 3/1, 5/1のプラスミドDNAを包含するNanoplexおよびナノ粒子を、粒子径と表面電位測定に用いた。Nanoplexの安定性は、10%および50%血清中に希釈した際の粒子径変化により評価した。
【0050】
陽イオン性ナノ粒子のDNAに対する電荷比は3に固定し、Nanoplexの物理学的性質について検討した。ナノ粒子をDNAと混合し、粒子径と表面電位を測定した。結果を下表に示す。
【0051】
---------------------------------------------------------------
製剤 ナノ粒子 Nanoplex Nanoplex
+10% +50%
血清 血清
---------------------------------------------------------------
粒子径 表面電位 粒子径 表面電位 粒子径 粒子径
(nm) (mV) (nm) (mV) (nm) (nm)
0日 60日 0日 0日 1日 0日
---------------------------------------------------------------
NP-T 146.4 165.8 49.0 221.2 285.4 40.7 ― ―
NP-0.3PT 114.7 114.7 52.9 200.6 235.8 32.8 ― ―
NP-1PT 139.3 127.6 53.5 191.6 214.5 40.0 ― ―
NP-0.3FT 122.0 122.0 51.3 215.6 230.3 37.2 482.9 937.9
NP-1FT 207.4 188.3 46.8 309.1 342.9 33.3 473.0 513.0
NP-1FLT 104.3 126.3 42.3 240.5 248.2 29.6 253.4 303.5
----------------------------------------------------------------
【0052】
1. ナノ粒子の安定性
各ナノ粒子の平均粒子径および表面電位は、それぞれ約100-200nmと約+50mVであった。各ナノ粒子の安定性は、粒子径の経時変化により評価したが、60日後における粒子径変化はいずれのナノ粒子においても認められなかった。静電的反発(electrostatic repulsion)および/または粒子表面のPEGの存在により、すべての組成物は粒子径を維持したものと考えられる。これらの知見から、本発明にかかるナノ粒子の水中での安定性が示された。
【0053】
2. Nanoplexの特性
各Nanoplexの粒子径は、200nmから300nmへわずかに増加した。表面電位は、+30mVから+40mVへわずかに減少した。24時間放置後、水中でのNanoplexの粒子径は、200nmから350nmへわずかに増加し、72時間後においても変化しなかった。
【0054】
3. 血清存在下でのNanoplexの安定性
血清中には数多くの陰イオン性物質が存在し、それらは複合体中のDNAと競合ないし置換を起こす。そのような置換は、複合体を不安定化する主なメカニズムの一つであると考えられている。そこで我々は、10%または50%血清存在下でのNanoplex(NP-0.3FT, NP-1FT, NP-1FLT)の安定性について検討した。10%血清存在下、NP-1FLTの粒子径に有意な変化は認められなかったのに対し、Nanoplex NP-0.3FT, NP-1FTの粒子径は、500nmまで増加した。50%血清存在下では、NP-1FT, NP-1FLTの粒子径は10%血清存在下の結果と比べわずかな増加だったのに対し、Nanoplex NP-0.3FTは900nmまで増加した。従って、陰イオン性競合物質の存在下における物理学的性質を維持する上で、NP-1FT, NP-1FLTの安定性はほぼ同等であると考えられた。
【0055】
4. Nanoplexにおける電荷比の最適化
遺伝子導入実験の検討は、NP-1FTを中心に行った。ナノ粒子のDNAに対する電荷比(+/-)を最適化するため、10%血清添加培地にて、種々の電荷比(+/-)を有するpAAV-CMV-LUCプラスミド包含NP-1FT nanoplexを用いて遺伝子導入し、LNCaP細胞における、ルシフェラーゼ活性を測定した。電荷比(+/-) 3/1の時において、最も高い遺伝子導入効率が観察された。ルシフェラーゼ活性(cps/μgタンパク)は、最適比において約1×103に達した(下表および図1参照)。
【0056】
以下に、電荷比と発現ルシフェラーゼ活性(平均±標準偏差)の関係を示す。
----------------------------
P:N比 ルシフェラーゼ活性
(cps/μgタンパク)
----------------------------
1:1 193.73±10.78
2:1 265.43±11.99
3:1 932.81±26.35
4:1 618.48±88.73
5:1 333.65±91.99
----------------------------
P; f-PEG2000-DSPE、N; DNA
【0057】
水中での電荷比(+/-) 3/1におけるNP-1FT Nanoplexの粒子径は、1/1あるいは5/1の場合と比べ差は認められなかった。10%血清存在下、電荷比(+/-) 1/1におけるNP-1FT Nanoplex(表面電位;-37.85mV)の粒子径は、600nmまで増加したが、陽性荷電した電荷比(+/-) 3/1あるいは5/1のそれは約470nmまでわずかに増加したに過ぎなかった。従って以後の検討は、ナノ粒子とDNAの電荷比(+/-) 3/1にて行った。
【0058】
実施例2 細胞培養
KB細胞は東北大学医用細胞資源センターから提供を受けた。LNCaP細胞は慶應義塾大学病院泌尿器科から入手した。KBおよびLNCaP細胞は、10%非動化ウシ胎児血清およびカナマイシン(100μg/ml)を添加した葉酸不含培地RPMI-1640において、37℃、5%CO2にて培養した。
【0059】
実施例3 KB細胞によるNanoplexの取り込み
培養KB細胞は、KB細胞を35mm培養皿に実験24時間前に移した。DiI標識ナノ粒子(20μl)を、それぞれのDNA(4μg)と混合し、次いで10%血清添加した葉酸不含培地RPMI(1ml)中に希釈した。混合物をKB細胞に加えた。ナノ粒子とKB細胞の選択的取込を確認するため、KB細胞を、1mM葉酸の存在または非存在下に培養した。1, 2, および3時間培養後、非結合Nanoplexを除くためKB細胞をPBS(1ml, pH7.4)で2回洗い、0.25%トリプシンにより細胞を剥離した。細胞を1,500×gで遠心分離し、ペレットを細胞溶解緩衝液[0.5% Triton X-100(商品名)含有PBS]で細胞溶解した。任意単位(Arbitary Unit)でのDiI蛍光強度を、蛍光光度計(日立製、f-4010)を用い、励起/発光波長550, 570nmにて測定した。タンパク濃度はBCAタンパク・アッセイ法により測定した。結果は、タンパク濃度(mg/ml)当たりの蛍光(a.u.)で示した。
【0060】
葉酸修飾ナノ粒子のKB細胞による取り込みを、非葉酸修飾ナノ粒子の場合と比較した。取り込み効率の検討にあたり、我々はNP-T, NP-1FTおよびNP-1PTを用いた。脂質性蛍光色素であるDiIを用いて標識したNanoplexはDiI標識ナノ粒子から合成し、10%血清存在下、これと共にKB細胞を培養した。結合しなかったNanoplexを念入りに除き、結合したNanoplexをDiIの蛍光を指標として測定した。NP-1PT Nanoplexの取り込みはNP-T Nanoplexのそれと比べて低く、おそらくPEG-DSPE添加の影響だと思われる(図2参照)。しかしながら3時間放置後のNP-1PT Nanoplexのそれと比べ、NP-1FT Nanoplexでは1.5倍高い細胞内取り込みが認められた。1mM葉酸存在培地においては、NP-1FT Nanoplexとの細胞内取り込みは減少したが、NP-1PT Nanoplexのそれは変化しなかった(図3参照)。3時間放置後の時点で、NP-1FT Nanoplexは、遺伝子導入に用いた量の約8%が取り込まれていた。
【0061】
以下に、タンパク濃度あたりの蛍光の経時変化を示す。[蛍光(a.u.)/タンパク濃度(mg/ml)、平均±標準偏差](図2参照)
------------------------------------------------------
時間(分) NP-T NP-1PT NP-1FT
------------------------------------------------------
0 0.000±0 0.000±0.000 0.000±0.000
60 6.422±0.241 5.290±0.813 6.630±0.663
120 12.140±0.755 8.175±0.268 9.596±0.160
180 16.900±0.530 10.320±1.41 13.100±0.62
------------------------------------------------------
【0062】
続いて、1mM葉酸存在下、非存在下における、NP-1FT NanoplexとNP-1PT NanoplexのKB細胞による取り込み結果を、タンパク濃度あたりの蛍光で示す。[蛍光(a.u.)/タンパク濃度(mg/ml)、平均±標準偏差](図3参照)
--------------------------------------
サンプル タンパク濃度あたりの蛍光
--------------------------------------
NP-1PT 10.32±1.41
NP-1PT+葉酸 9.74±1.58
NP-1FT 13.10±0.62
NP-1FT+葉酸 10.02±0.01
--------------------------------------
【0063】
実施例4 共焦点レーザー顕微鏡観察
KB細胞を35mm培養皿に播種した。10μlのナノ粒子と2μgのDNAを混合し、完全培地(1ml)中に希釈した。KB細胞をこの混合物と共に、1mM葉酸存在または非存在下にて24時間培養した。培地を除いた後、細胞をPBSで洗い、PBS緩衝化4%ホルムアルデヒド溶液により室温1時間で固定した後、PBSで3回洗った。次いで退色防止のためAqua Poly/Mount (Poly-science社製)で被覆した細胞上にカバーガラスを載せた。蛍光観察は、Radiance 2100型共焦点レーザー顕微鏡(BioRad社製)を用いて行った。DiIの蛍光は、励起波長543nmのヘリウム-ネオン・レーザーと、ロングパスバリアフィルター560DCLPを用いて観察した。
FITC-ODNの蛍光は、励起波長488nmのアルゴンレーザーと、HQ515/30フィルターを用いて観察した。
【0064】
共焦点レーザー顕微鏡により可視化された、Nanoplexの細胞内局在
KB細胞を、24時間、DiI標識NP-1FTと培養後、4%パラホルムアルデヒドで固定し、共焦点レーザー顕微鏡検査で可視化した。NP-1FT上のDiIの赤色蛍光分布を、細胞全体に対し観察したところ、蛍光の大半は細胞表面に集中していた(図4A,B参照)。
これに対し1mM葉酸存在培地では、細胞表面の蛍光は減弱していた(図4C,D参照)。
図4E,Fに示したように、DiI標識NP-1FTおよびFITC標識プラスミドDNAからなるNanoplexをLNCaP細胞と24時間培養した。FITCの蛍光は細胞表面に強く検出され、細胞質中では少なかった(図4E,F参照)。DiIおよびFITC蛍光が、共に細胞表面に局在することが検出されたことは、プラスミドDNAが、NP-1FTの何カ所かに依然として結合していることを示唆している。これらの知見は図4E,Fに示したように、KB細胞においても認められた。
【0065】
実施例5 ルシフェラーゼ・アッセイ
カチオン性脂質/DNA電荷比(+/-) 1/1, 2/1, 3/1, 4/1, 5/1のNanoplexは、各比率のナノ粒子にDNA(pAAV-CMV-LUCプラスミド, 2μg)を加え、緩やかに振盪後、室温にて10-15分間静置して調製した。トランスフェクションのため、それぞれのナノ粒子を血清含有培地(1ml)中に希釈し、24時間培養した。ルシフェラーゼの発現は、ルシフェラーゼ・アッセイ・システムにより測定した。まず、遺伝子導入した培養細胞を冷PBSで3回洗浄後、細胞溶解液(Pica gene)を加え細胞溶解させた。その後1回凍結(-70℃)融解(37℃)させ、15,000×g、5分間遠心分離した。上清は測定に使用するまで-70℃で保存した。上清(20μl)を分取し、ルシフェラーゼ・アッセイ・システム(pica gene、100μl)と混合した後、化学発光分光計(パーキン・エルマー・ライフ・サイエンス社製、Wallac ARVO SX1420 multi label counter)を用い、秒あたりのプロトン粒子数(counts per second; cps)を測定した。ウシ血清アルブミンを標準として用い、BCA試薬により上清のタンパク濃度を決定し、cps/μgタンパクを算出した。
【0066】
KBおよびLNCaP細胞におけるルシフェラーゼの発現
我々は、10%血清存在下におけるナノ粒子6種類の遺伝子導入効率について、ルシフェラーゼ活性により評価した。KBおよびLNCaP細胞に対し、ルシフェラーゼをコードするプラスミド(pAAV-CMV-luc)をナノ粒子を用いて遺伝子導入し、24時間培養した。その結果、NP-1FTはKB細胞において最も高いルシフェラーゼ活性を示したが、他のナノ粒子は低い活性しか示さなかった(図5A参照)。NP-0.3FTおよびNP-1FTは、LNCaP細胞において高いルシフェラーゼ活性を示した(図5B参照)。市販されている遺伝子トランスフェクション試薬であるTfx20はNP-1FTに対し、KB細胞において5倍高いルシフェラーゼ活性(1×103cps/μgタンパク;1.9×103RLU/μgタンパクと同等)を、LNCaP細胞では50倍高いルシフェラーゼ活性(5×104cps/μgタンパク;1×105RLU/μgタンパクと同等)を示した。NP-1FLTはルシフェラーゼ活性を減少させた。NP-0.3FTに関しては、両培養細胞系において異なったトランスフェクション活性を示した。
【0067】
以下に、KB細胞におけるルシフェラーゼ活性を示す。[ルシフェラーゼ活性(cps/μgタンパク)、平均±標準偏差](図5A参照)
----------------------------
サンプル ルシフェラーゼ活性
----------------------------
NP-T 29.64±22.82
NP-0.3PT 17.55±10.14
NP-0.3FT 33.12±20.18
NP-1PT 11.50± 7.61
NP-1FT 184.82±11.99
NP-1FLT 21.00± 5.61
----------------------------
【0068】
続いて、LNCaP細胞におけるルシフェラーゼ活性を示す。[ルシフェラーゼ活性(cps/μgタンパク)、平均±標準偏差](図5B参照)
----------------------------
サンプル ルシフェラーゼ活性
----------------------------
NP-T 259.82± 37.92
NP-0.3PT 73.69± 26.18
NP-0.3FT 410.37±113.78
NP-1PT 71.47± 17.07
NP-1FT 1046.49±123.14
NP-1FLT 31.40± 12.64
----------------------------
【0069】
実施例6 RNAの単離およびRT-PCR
NusleoSpin RNA II (Macherey-Nagel社製)を用い、LNCaPおよびKB細胞からそれぞれ
total RNAを単離した。RNA収率および純度は、260および280nmにおける分光分析法とRNA電気泳動法によりそれぞれ確認した。cDNAは、total RNA(5μg)を65℃で5分間変性(denaturation)した後、50pmolランダム・プライマー、0.5mM dNTPおよび5U AMV逆転写酵素XL(宝酒造製)を加えて合成した。反応は41℃にて1時間、容量20μlで行った。RT-PCR法による遺伝子増幅は、合成したcDNA(1μl)、特異的プライマー(10pmol)、1.5mM MgCl2含有PCR反応緩衝液と0.25U Ex Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造製)、および0.2mM dNTPからなる25μl反応液中にて行った。PCR増幅の温度条件は、変性94℃,0.5分間、プライマー・アニーリング55℃,0.5分間、伸長反応72℃,1分間の30回繰り返しからなる。
【0070】
ハウスキーピング遺伝子のβ-アクチン、葉酸レセプター(Folate Receptor; FR)-α、-β、-γと、前立腺特異膜抗原(Prostate Specific Membrane Antigen; PSMA)について、全て同じサイクル数でPCRを行った。これらのPCR産物は、トリス−ホウ酸−EDTA (TBE)緩衝液中、8%アクリルアミド電気泳動を行い、エチジウム・ブロマイド染色して解析した。(図6参照)
【0071】
葉酸受容体およびPSMA mRNAの発現
最後に葉酸修飾ナノ粒子の細胞内取り込みメカニズムについて検討するため、KBおよびLNCaP細胞における葉酸受容体の発現について、RT-PCR法で評価した。KB細胞においては、葉酸受容体α mRNAが強く、受容体β mRNAが弱く発現していたが、LNCaP細胞では発現しなかった。葉酸受容体γ mRNAは、いずれの細胞においても発現していなかった。このことから、KB細胞では葉酸受容体αおよび受容体βが葉酸修飾ナノ粒子の細胞内取り込みに関与していることが示唆された。次に我々は葉酸修飾蛋白の一つと考えられるPSMAがLNCaP細胞において発現しているかどうかを検討した。LNCaP細胞においてはPSMA mRNAが強く発現していたが、KB細胞では発現していなかった(図6参照) 。このことから、LNCaP細胞においてはPSMAが葉酸修飾ナノ粒子の細胞内取り込みに関与している可能性が示唆された。
【0072】
実施例7 葉酸修飾ナノ粒子における、葉酸濃度の検討
葉酸濃度による葉酸修飾ナノ粒子の遺伝子送達能力を検討するため、下表に示した処方により、前記実施例と同様にして葉酸修飾ナノ粒子を調製した。
-----------------------------------
製剤 Mol %
-------------------------
DC- ツイン f-PEG2000-
Chol 80 DSPE (F)
-----------------------------------
NP 95 5 ―
NP-1F 94 5 1
NP-2F 93 5 2
NP-3F 92 5 3
-----------------------------------
【0073】
(1) ナノ粒子の粒子径と表面電位
--------------------------------------
製剤 粒子径(nm) 表面電位(mV)
--------------------------------------
NP 117.2± 2.0 53.1±2.5
NP-1F 146.1±12.4 43.9±1.7
NP-2F 165.3±22.1 38.6±1.5
NP-3F 118.4± 4.3 54.8±6.3
--------------------------------------
【0074】
各ナノ粒子の平均粒子径および表面電位は、それぞれ約110〜170nmと約+40〜+50mVであった。
【0075】
(2) 血清存在下、非存在下における、Nanoplex(ナノ粒子とプラスミドDNAの複合体)の粒子径と表面電位
--------------------------------------------------
製剤 粒子径 表面電位 50%血清添加時
(nm) (mV) 粒子径(nm)
--------------------------------------------------
NP 354.9± 8.8 39.0±1.0 499.6± 38.8
NP-1F 515.2±32.3 34.2±1.6 623.2±114.9
NP-2F 233.7± 6.5 30.8±1.9 431.3± 16.0
NP-3F 396.0± 7.8 35.1±0.9 662.4± 7.2
--------------------------------------------------
【0076】
ナノ粒子と比較して、各Nanoplexの粒子径は約200〜500nmに増加し、その表面電位はわずかに減少した。
ついで50%血清存在下におけるNanoplex NP-1F、NP-2F、NP-3Fの粒子径は、非存在下と比較してそれぞれわずかに増加したが、最大で約660nmであった。
【0077】
(3) 2mol% 葉酸修飾PEG2000-DSPE遺伝子ベクターの、扁平上皮癌細胞へのin vitroおよびin vivo遺伝子発現効果
【0078】
3-1) in vitro
実施例3、5と同様にして、pAAV-CMV-LUCプラスミドを包含する葉酸修飾ナノ粒子のKB細胞への取り込みを、in vitroで比較検討した。ナノ粒子としてNP, NP-1F, NP-2FおよびNP-3Fと、比較対照としてTfx20を用い、取り込み効率はルシフェラーゼ活性により評価した。
以下に、KB細胞におけるルシフェラーゼ活性を示す。[ルシフェラーゼ活性(cps/μgタンパク)、平均±標準偏差](図7参照)
【0079】
------------------------------
ナノ粒子 ルシフェラーゼ活性
------------------------------
NP-T 10.85± 3.12
NP-1FT 49.49± 37.63
NP-2FT 478.38± 63.74
NP-3FT 1.19± 0.16
Tfx20 1234.66±397.66
------------------------------
これまでの結果を総合するとf-PEG-DSPEの最適濃度は1〜2mol%であり、2mol%がより高い効果を示した。
【0080】
3-2) in vivo
後記実施例8(12)と同様にしてKB細胞をマウスに異種移植し、pAAV-CMV-LUCプラスミドを包含する葉酸修飾ナノ粒子またはpAAV-CMV-LUCプラスミドを包含するTfx20を扁平上皮癌内に投与し、細胞内取り込みをin vivoで比較検討した。
【0081】
以下に、扁平上皮癌細胞におけるルシフェラーゼ活性を示す。[ルシフェラーゼ活性(cps/g tumor)](図8参照)
----------------------------
ナノ粒子 ルシフェラーゼ活性
----------------------------
NP-2FT 367250
Tfx20 3250
----------------------------
【0082】
2mol% 葉酸修飾PEG2000-DSPEを添加した葉酸修飾遺伝子ベクターは、in vitroおよびin vivoで、葉酸受容体を介して扁平上皮癌細胞に取り込まれ、高い遺伝子発現を誘導した。また特にin vivoにおいて、本発明にかかる遺伝子ベクターは市販遺伝子トランスフェクション試薬であるTfx20と比較して、極めて高い遺伝子導入効果を示した。この結果は、本発明の臨床での高い有用性を示すものである。
【0083】
実施例8 前立腺癌細胞への癌抑制遺伝子導入
(1) プラスミドDNAおよびオリゴヌクレオチドの調製
サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターにより制御されるルシフェラーゼ・レポーター遺伝子をコードするpCMV-lucは、米国マウントサイナイ大学の田中博士から提供を受けた。CMVプロモーターにより制御されるHSV-tkをコードするpCMV-tkプラスミドは、常法に従って構築した。
pSV40-Cx43の構築にあたっては、まず癌抑制遺伝子であるコネキシン43(Cx43)遺伝子を単離するために、NusleoSpin RNA II (Macherey-Nagel社製)を用いて、total RNAをKB細胞から単離した。
5μgのtotal RNAを65℃で5分間変性した後、ランダム・プライマー(50pmol)、0.5mM dNTP, 5U AMV逆転写酵素XL(宝酒造製)を用いて第一鎖cDNAを調製した。
KB細胞から調製したcDNAを鋳型として、Cx43の塩基対1-1149をコードするcDNAをCx43フォワード プライマー(5’-ATCAATGGaccATGGGTGACTGGAGCGCCT): Cx43リバース・プライマー(5’-CATCTAGACTAGATCTCCAGGTCATCAG)を用いてPCR法により増幅した。
フォワードプライマーは、Nco I制限酵素サイト(下線部)と共に、3塩基対からなる最適なコザック配列を含む。(配列中に小文字で示した。)
リバースプライマーは、Cx43の塩基対1129-1149とXba I制限酵素サイト(下線部)をコードする。
Cx43 cDNAを増幅した後、このcDNAをNco IおよびXba Iを用いて切断し、ついでsimianウイルス(SV40)プロモーターの下流にあるNco I / Xba I 部位で制限酵素切断したpGL3-コントロール(Promega社製)に挿入した。
これらのプラスミドは、マキシプレップ(maxiprep)カラムを用い、アルカリ法により精製した。
FITC標識ランダムオリゴヌクレオチド(FITC-ODN)は、常法に従って構築した。
【0084】
(2) ナノ粒子およびNanoplexの調製
葉酸-ポリエチレングリコール-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(f-PEG-DSPE)は、Bioconjug.Chem.,10(1999),289-298.記載の方法に従って調製した。(PEGの平均分子量: 2kDa)
すべてのナノ粒子組成物は、陽イオン性脂質であるDC-Chol(Sigma社製)1mg/mlおよびツイン80(日本油脂製)5mol%により構成されている。
NP-1F, NP-2F およびNP-3Fは、葉酸修飾ターゲティング・ベクターとして、それぞれ1, 2 および3 mol%のf-PEG-DSPEを含む。
前記J.Control Release, 2004;97:173-183.記載の方法に従い、10mlの水中にて修正エタノール注入法により、脂質[例えば、NP-2F:DC-Chol:Tween 80:f-PEG-DSPE = 93:5:2 (モル比) = 10:1.3:1.3 (重量比)]からナノ粒子を製造した。
1,1’-ジオクタデシル-3, 3, 3’, 3’-テトラメチルインドカルボシアニン過塩素酸塩(DiI)でラベルしたナノ粒子は、0.04mol%のDiI(Lambda Probes & Diagnostics社製)を総脂質中に加え製造した。
電荷比(+/-)3/1のNanoplex、および陽イオン性脂質/DNA電荷比(+/-)2/1のTfx20 (Promega社製)lipoplexは、特に注記しない限り、各ナノ粒子またはTfx20に、DNA(2μg)を加えて、室温で10分間ゆっくり振盪しながら調製した。
【0085】
(3) 細胞培養
LNCaP細胞は、慶應義塾大学病院泌尿器科から提供を受けた。
PC-3およびKB細胞は、東北大学医用細胞資源センターから入手した。
ヒト子宮頸癌培養細胞であるHela 229は、富山医科薬科大学ウイルス学教室から提供を受けた。
ヒト肝芽腫培養細胞であるHepG2は、理研細胞バンクから入手した。
本検討において使用したすべての細胞は、37℃、5%CO2で、10%非動化ウシ胎児血清およびカナマイシン(100μg/ml)を添加した葉酸不含培地RPMI-1640(Life Technologies社製)中にて培養した。
【0086】
(4) ルシフェラーゼ・アッセイ
トランスフェクションのため、各Nanoplexを10%血清添加培地1ml中に希釈し、24時間インキュベートした。
ルシフェラーゼの発現は、J.Control Release, 2004;97:173-183.記載の方法に従い、ルシフェラーゼ・アッセイ・システム(Pica gene)を用いて測定した。
【0087】
培養細胞におけるルシフェラーゼの発現
葉酸修飾ナノ粒子の組成を最適化するため、10%血清存在下に4種類の異なる0, 1, 2および3 mol%葉酸修飾ナノ粒子のトランスフェクション効率をルシフェラーゼ活性により検討した。
LNCaPおよびPC-3細胞は、pCMV-lucを用いて遺伝子導入後24時間培養した。
両細胞において他のナノ粒子と比べ、2mol%葉酸修飾ナノ粒子であるNP-2Fが最も高いルシフェラーゼ活性を示した。(図9A、B参照)
またナノ粒子中の最適葉酸濃度は、KB細胞においても同様であった。
従って以下の実験においてはNP-2Fを用い、これをNP-Fと示した。
NP-Fと市販遺伝子導入試薬であるTfx20(Promega社製)の遺伝子導入効率を検討するため、5種類の培養細胞系においてルシフェラーゼ活性を測定した。
なおTfx20は、合成陽イオン性脂質であるヨウ化[N,N,N´,N´-テトラメチル-N,N´-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2,3-ジ(オレオイルオキシ)-1,4-ブタンジアンモニウム]と、L-ジオレオイル・フォスファチジルエタノールアミン(DOPE)の混合物である。
【0088】
Tfx20との比較において、NP-FはPC-3細胞では5倍高い遺伝子導入効率を示したが、LNCaP細胞においては約20倍低かった。(図10A参照)
しかしながらNP-Fは、LNCaP, PC-3およびHela細胞において、HepG2およびKB細胞よりも高い遺伝子導入効率を示した。
【0089】
(5) RNAの単離およびRT-PCR
LNCaP, PC-3, KB, Hela およびHepG2細胞から、NusleoSpin RNA II(Macherey-Nagel社製)を用い、total RNAをそれぞれ単離した。
RNAの収率および純度は、分光光度測定法(260nm, 280nm)とRNA電気泳動法により、それぞれ確認した。
ヒト前立腺癌組織からのtotal RNAは、Ambion社から入手した。
5μgのtotal RNAを65℃で5分間変性し、ランダム・プライマー(50pmol), 0.5mM dNTP, 5U AMV逆転写酵素XL(宝酒造製)を用いて第一鎖cDNAを調製した。
20μl容量にて、41℃で1時間反応させた。
RT-PCRの反応溶液25μl中には、調製したcDNA 1μl、特異的プライマー(10pmol)およびEx Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造製, 0.25U)、および1.5mM MgCl2、0.2mM dNTPを含むPCR反応緩衝液が含まれる。
PCR増幅の温度条件は、変性94℃, 0.5分間、プライマー・アニーリング58℃, 0.5分間、伸長反応72℃,1分間の25回繰り返しからなる。
ハウスキーピング遺伝子のβ-アクチン、葉酸レセプター(Folate Receptor; FR)-α、-β、-γと、葉酸トランスポーター(reduced folate carrier;RFC)について、全て同じサイクル数でPCRを行った。
各葉酸レセプター、RFCおよびβ-アクチンのPCR産物は、トリス−ホウ酸−EDTA(TBE)緩衝液中、1.5%アガロースゲル電気泳動で分析した。
各産物をエチジウム・ブロマイド染色して解析した。
【0090】
葉酸受容体mRNAの発現
葉酸修飾ナノ粒子の細胞内取り込み機構について検討するため、培養細胞における葉酸受容体およびRFCの発現を、RT-PCR法により調べた。
葉酸受容体には、パターンおよび組織分布が異なるα、βおよびγの3種類のアイソフォームがある。
葉酸受容体-α mRNAは、KBおよびHela細胞には強く発現しているが、LNCaP, PC-3やHepG2細胞には認められない。(図10B参照)
葉酸受容体-βおよび-γ mRNAは、いずれの培養細胞系にも発現していない。
葉酸トランスポーターを介するキャリアーであるRFCは、すべての培養細胞系において弱い発現が認められた。(図10B参照)
これらより、HelaおよびKB細胞における葉酸修飾ナノ粒子の細胞内取り込みは、葉酸受容体-αを介して行われ、トランスフェクション活性が惹起されることを示唆している。
HepG2細胞においては、葉酸受容体mRNAは発現していないので、Tfx20と比較し約100倍低いトランスフェクション効果であった。
LNCaPおよびPC-3細胞において葉酸受容体mRNAは発現していなかったが、NP-Fは比較的高いトランスフェクション効果を示した。このことは、LNCaPおよびPC-3細胞における取り込みは、葉酸受容体とは異なるメカニズムを介することを示唆している。
【0091】
(6) 共焦点レーザー顕微鏡検査
LNCaPおよびPC-3細胞を35mm培養皿に播種した。
10μlのDiI標識NP-2Fを、2μgのFITC-ODNおよびCMVプロモーター存在下に緑色蛍光タンパク(GFP)をコードするpEGFPプラスミド(Clontech社製)と混合し、10%血清添加培地(1ml)中に希釈した。
これらの細胞を混合物と共に、24時間培養した。
J.Control Release, 2004;97:173-183.の記載に従い、検査はRadiance 2100型共焦点レーザー顕微鏡(BioRad社製)を用いて行った。
DiIの蛍光は、励起波長543nmのヘリウム-ネオン・レーザーと、ロングパスバリアフィルター560DCLPを用いて、観察した。
FITC-ODNとGFPの蛍光は、励起波長488nmのアルゴンレーザーと、HQ515/30フィルターを用いて観察した。
【0092】
(7) FITC標識葉酸-ウシ血清アルブミン結合体の取り込み
FITC標識葉酸-ウシ血清アルブミン結合体(FITC-f-BSA)は、J.Cell Sci., 1993;106:423-430.記載の方法に従って調製した。
簡単には、葉酸を無水ジメチルスルホキシドに溶解し、5倍過剰量の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドと、室温で1時間活性化させた。
ついで活性化された葉酸を、リン酸緩衝液(pH7.4)中で、FITC標識ウシ血清アルブミン(Sigma社製)と反応させた。
PD-10 脱塩カラム(Amersham Bioscience社製)を用い、過剰の葉酸をタンパク結合体から取り除いた。
PC-3細胞は、実験24時間前に、あらかじめ35mm細胞培養皿に播種した。
FITC-f-BSAを10%血清含有・葉酸不含RPMI培地(1ml)中に30μMとなるよう希釈し、ついで1mM葉酸存在下または非存在下、細胞に加えて培養した。
3時間培養後、結合しなかったFITC-f-BSAを取り除くため、1mlのPBS(pH7.4)でそれぞれのディッシュを2回洗った。
前述の共焦点レーザー走査顕微鏡法により、FITC-f-BSAを可視化した。
【0093】
FITC-f-BSAの取り込み
PC-3細胞への取り込みに関し、葉酸部位による選択性を検討するため、共焦点顕微鏡によりFITC-f-BSAを可視化した。
図11A,Bに示したように、FITC-f-BSAの細胞内取り込みが観察された。
1mM葉酸存在下での比較実験においては、細胞結合FITC-f-BSAの有意な細胞内取り込みの減少が認められた。(図11C,D参照)
これらの結果は、葉酸部位がFITC-f-BSAの細胞内取り込みを促進していることを示している。
【0094】
(8) 免疫組織化学検査
正常および癌化前立腺組織の、非染色ホルマリン固定パラフィン包埋組織スライド(Chemicon Select Tissue array: TMA3202, Chemicon International社製)を脱パラフィンし、1%ツイン20含有-トリス緩衝化生理食塩水(TBST, pH7.4)中でリンスした。
切片をブロッキングのため1%スキムミルク添加TBST中に放置し、ついでTBST中で洗浄し、さらに室温で、1%スキムミルク添加 TBST中に1/500希釈したマウス抗ヒト葉酸受容体-α(FR-αモノクロナールIgG抗体(Mov18/ZEL, Alexis Biochemicals社製)と反応させた。
ついで組織切片を、室温にて1時間、FITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体(KPL社製)に反応させた。
TBSTで洗浄後、抗原抗体複合体を、細胞培養の項で記載した共焦点レーザー走査顕微鏡法により可視化した。
【0095】
免疫組織化学検査
ヒト悪性腫瘍の組織生検標本における葉酸受容体発現を評価するため、葉酸受容体-αのパラフィン固定切片を免疫組織化学染色した。
腫瘍サンプルにおいて、評価した組織生検標本の3/4で、葉酸受容体-αタンパクが明らかに発現していた。(図11E,F参照)
前立腺の上皮組織周辺に、葉酸受容体-α陽性染色が存在した。
また前立腺癌組織からのRNA中に、葉酸受容体-α mRNAがRT-PCRにより検出された。
対照的に、正常組織切片を葉酸受容体-α抗体と反応させても、染色は観察されなかった。
【0096】
(9) フローサイトメトリー分析
LNCaP培養細胞は、実験24時間前に、あらかじめ35mm細胞培養皿に播種した。
FITC-ODN(2μg)包含Nanoplexを加えた10%血清添加葉酸不含RPMI培地(1ml)を、単層LNCaP細胞に加えた。
3ないし24時間培養した後、非結合Nanoplexを取り除くため、培養皿をPBS(pH7.4, 1ml)で2回洗浄し、細胞を0.25%トリプシンで剥離した。
細胞中のFITC-ODN量は、ファックスキャリバー・フローサイトメーター(Becton Dickinson社製)を用いる蛍光発光強度測定により求めた。
【0097】
共焦点顕微鏡およびフローサイトメトリーにより可視化されたNanoplexの、トランスフェクション効率および局在
NP-Fの、LNCaPおよびPC-3細胞への遺伝子導入能力を明確にするため、pEGFP-C1プラスミドを包含するNP-FのLNCaPおよびPC-3細胞への遺伝子導入効率について、それぞれ検討した。
共焦点顕微鏡検査では、ルシフェラーゼの発現に対応して、LNCaP細胞(図12A)およびPC-3細胞(図12B)の両方において、2-3%の細胞に強いGFPタンパク発現が、他の大多数の細胞では弱い発現が認められた。
ついでLNCaP細胞へのトランスフェクション後、蛍光色素DiI標識NP-F、およびFITC-ODNの局在について検討した。
NP-F上の赤色DiIシグナルの分布パターンは、トランスフェクション3時間後に細胞表面に弱く認められ(図12C)、24時間後には強く認められた(図12D)。
対照的にFITCシグナルは、3時間後に細胞質全体にわたり強く認められ(図12C)、24時間後は拡散して認められた(図12D)。
DiIおよびFITCのシグナルの大半は、細胞質中に共局在して検出されることはなかった。
フローサイトメトリーの結果も、LNCaP細胞におけるFITC強度がトランスフェクション3時間後の方が24時間後よりも強く(図12E)、NanoplexからDNAが放出され細胞質中に拡散したことを示唆している。
PC-3細胞においても、トランスフェクション3時間後に、強いFITC強度が観察された。
【0098】
(10) 陰イオン交換HPLCによるGCV代謝物の分析
Biochem.Biophys.Res.Commun., 2001;289:525-530.記載の方法に従い、35mm細胞培養皿に播種したpCMV-tk遺伝子導入細胞を用い、LNCaP 細胞および PC-3細胞中へのGCV一リン酸化物(GCV-MP)、二リン酸化物(GCV-DP)、三リン酸化物(GCV-TP)の蓄積をそれぞれ調べた。
GCVは100μg/ml濃度で細胞に加えた。
24時間培養した後、細胞をPBSで3回洗った。
トリプシン処理後、1,500×gで10分間遠心分離し、細胞を集めた。
細胞ペレットから60%メタノール(HPLC用品質)で抽出し、抽出物を95℃で2分間加熱した。
遠心分離後、上清画分を分取・減圧濃縮し、分析前速やかに水に溶解した。
細胞抽出物の水性画分をHPLC分析に用いた。
紫外検出器付616 LC HPLCシステム(Waters社製)を用い、GCVおよびそのリン酸化代謝物を分離した。
代謝物の分離は、Senshu Pak SAX-1253Pカラム(250×4.6mm、センシュー科学製)により行った。
溶出は以下の過程からなる。
100%緩衝液A (pH無調整0.02Mリン酸アンモニウム)による均一溶媒溶出, 0-5分間
25%緩衝液B (10%メタノール添加、0.7Mリン酸アンモニウム) への線形グラジェント, 5-20分間
100%緩衝液Bへの線形グラジェント, 20-30分間
流速2ml/minでの緩衝液Aへの再平衡化, 40-55分間
細胞内三リン酸化リボヌクレオチドの保持時間は、リボヌクレオチド標準品により算出し、254nmでの溶出ピーク時間を求めた。
それぞれの保持時間は、UTP, 29分; CTP, 30分; ATP, 32分; GTP, 34分であった。
GCVおよびそのリン酸化体の保持時間は、GCV-MP, 9分; GCV-DP, 21分; GCV-TP, 33分であった。
【0099】
pCMV-tkを遺伝子導入した細胞中のGCV代謝物の分析
GCV代謝物の生成について確認するため、pCMV-tkでトランスフェクト後、100μg/ml GCVと24時間インキュベートしたLNCaP細胞におけるGCVリン酸化について分析した。
三リン酸化体として最も多く生成したGCV-TPが、トランスフェクトされた細胞内で強く検出された(図13B)のに対し、非トランスフェクト細胞では、GCVのリン酸化は検出されなかった(図13A)。
図13Bに示したこれらの知見は、PC-3細胞においても認められた。
【0100】
(11) In VitroでのHSV-tk遺伝子導入細胞の細胞毒性試験
LNCaPおよびPC-3細胞を、96穴プレートに1穴あたり1×104細胞の密度で播種し、トランスフェクション12時間前に10%血清添加葉酸不含RPMI培地中に置換した。
細胞には、以下のNP-F Nanoplexそれぞれをトランスフェクトした。
コントロールDNAとして0.2μg pGL3エンハンサー、
0.1μg pGL3エンハンサー(Promega社製)を加えた0.1μg pCMV-tk、
0.1μg pSV40-Cx43を加えた0.1μg pGL3エンハンサー、
0.1μg pSV40-Cx43を加えた0.1μg pCMV-tkを用いた。
【0101】
12時間インキュベーションした後、培養培地を、いくつかのGCV 0.1〜1,000μg/ml濃度の培地と交換した。
GCV への暴露4日後、WST-8アッセイキット[同仁化学研究所(DOJINDO LABORATORIES)製]により生存細胞数を測定した。
【0102】
WST-8アッセイ法
1. マイクロプレート法
1) Standard BSA solutionを純水で順次1/2に希釈し、0〜5000μg/mlのBSA希釈溶液を調製する。
2) Buffer solution 180μlを各ウェルに加える。
3) 1)で調製した各濃度の検量線用BSA希釈溶液、またはサンプル20μlを各ウェルに加え混合する。検量線はn=3にすることが望ましい。
4) WST-8 solution 20μlを各ウェルに加えよく混合する。
5) プレートにアルミホイル等で遮光カバーし、37℃で1 時間インキュベートする。
6) プレートリーダーを使用して650nmの吸光度を測定する。
7) 各ウェルの吸光度からブランク(BSA: 0μg/ml)の吸光度を差し引く。
8) 横軸にBSAの濃度を取り、BSA希釈溶液の吸光度から検量線を作成する。
9) 検量線からサンプルのタンパク質濃度を算出する。
【0103】
2. セル法 [吸光光度計を用いる場合]
1) マイクロプレート法と同様にStandard BSA solutionを純水で順次1/2に希釈し、0〜5000μg/mlのBSA希釈溶液を調製する。
2) Buffer solution 2.25mlを試験管に入れる。
3) 1)で調製した各濃度の検量線用BSA希釈溶液、またはサンプル50μlを加え、混合する。
4) 更にWST-8 solution 250μlを加え、よく混合する。
5) 試験管をアルミホイル等で遮光し37℃で1 時間インキュベートする。
6) 反応溶液を分光光度計用のセル(1cm×1cm)に移し替え、650nmの吸光度を測定する。
7) 測定された吸光度からブランク(BSA: 0μg/ml)の吸光度を差し引く。
8) 横軸にBSAの濃度を取り、BSA希釈溶液の吸光度から検量線を作成する。
9) 検量線からサンプルのタンパク質濃度を算出する。
【0104】
pCMV-tkおよびpSV40-Cx43により、一過性にトランスフェクトされた細胞のGCVに対する感受性
LNCaPおよびPC-3細胞を、それぞれ一過性に各種プラスミド(pCMV-tk, pSV40-Cx43およびその組み合わせ)のNP-F Nanoplexでトランスフェクトした。
GCV感受性をIC50値で比較した。
LNCaP細胞において、pCMV-tkをNP-Fでトランスフェクトされた細胞はコントロールと比べ有意に高いGCV感受性(85.6倍増加)を示し、pSV40-Cx43をトランスフェクトされた細胞は12.9倍増加だった。(図14A)
pCMV-tkおよびpSV40-Cx43を共にトランスフェクトされた細胞は、GCVに対する感受性が増加した。(コントロールと比べ101.8倍増加)
これらの結果は、pCMV-tkおよびpSV40-Cx43をそれぞれNP-Fでトランスフェクトされた細胞に対するGCVによる細胞毒性作用を示し、さらにpCMV-tkとpSV40-Cx43の共トランスフェクトされた細胞はバイスタンダー効果(bystander effect)によりGCVの作用が増強したことが考えられる。
PC-3細胞において、pCMV-tkをNP-Fでトランスフェクトされた細胞はコントロールと比べ有意なGCV感受性を示したが(図14B)、pSV40-Cx43をトランスフェクトされた細胞は示さなかった。
pCMV-tkとpSV40-Cx43をNP-Fで共にトランスフェクトされた細胞では、GCVへの感受性は高まらなかった。この結果は、pSV40-Cx43はPC-3細胞においてバイスタンダー効果を示さなかったことを表している。
【0105】
(12) in vivoにおけるLNCaP癌細胞成長の評価
雄性BALB/c nu/nuマウス(8週齢、日本クレア社製)は、入手後から実験中にかけて、葉酸不含げっ歯類食(オリエンタル酵母製)で飼育した。
腫瘍の異種移植のため、60%再構成基底膜(Matrigel: Collaborative Research社製)を含むRPMI培地(50μl)中に懸濁した1×107個のLNCaP細胞を、マウス脇腹の皮下に植え付けた。
血清中のテストステロン濃度を維持するため、雄性マウスにオリーブ油に溶解したプロピオン酸テストステロン(0.5mg、和光純薬製)を一日おきに一度腹腔内投与した。
腫瘍容積は下式に従って算出した。(aおよびbは、それぞれ長径および短径を意味する。)
腫瘍容積 = 0.5×a×b2
移植癌の平均容積が60mm3に達した時点(day 0)で、マウスを以下の2群に分けた。
group I, コントロールDNAとしてpGL3-エンハンサー(10μg)
group II, 治療群としてpCMV-tk(5μg)とSV40-Cx43(5μg)の混合DNA
【0106】
各群には6個の癌を用いた。
0, 3, 5および7日目に、10μgプラスミドDNAとナノ粒子NP-F(50μl)を用いてNanoplexを調製し、直接腫瘍内投与した。
Nanoplex投与後24および36時間目に、GCV 25mg/kgを腹腔内投与した。
腫瘍容積は治療開始後0, 3, 5, 7, 9および11日目に測定した。
結果は平均±標準誤差で示した。
以上の動物実験は、施設内動物保護・使用委員会の倫理許可を受けて行った。
【0107】
pCMV-tkとpSV40-Cx43からなるNP-F NanoplexがLNCaP細胞を用いたin vitro実験で最も効果的であったので、このNanoplexの腫瘍内直接投与による、in vivo抗腫瘍効果について検討した。(図15参照)
移植癌の平均容積が70mm3に達した段階で、マウスを2群に分け、0, 3, 5および7日目に腫瘍内投与した。
Nanoplex投与後24および36時間目にGCV(25mg/kg)を腹腔内投与した。
pCMV-tkとpSV40-Cx43からなるNP-F Nanoplexで処置されたマウスでは、腫瘍成長抑制が認められたが、コントロールのマウスでは認められなかった。
コントロールとしてのNanoplex処置マウスと、pCMV-tkとpSV40-Cx43からなるNP-F Nanoplex処置マウスの平均生存期間は、それぞれ21.5日および33日であった。
【0108】
(13) 統計解析
データの統計的有意差は、スチューデントt検定により評価した。
P値0.05以下の場合を有意とした。
【0109】
実施例9 細胞毒性試験
方法
評価サンプルを以下の通り調製した。なお細胞毒性の比較対照としてリポフェクタミン2000(Invitrogen社製)を用いた。
(1) Normal (無投与)
(2) NP-2FT
(3) SSD (2.0μmol/l Single Strand Decoy [CCTTGAAGGGATTTCCCTCC]/ NP-2FT)
(4) D0.1 (0.1μmol/l Double Strand NF-κB Decoy / NP-2FT)
(5) D1.0 (1.0μmol/l Double Strand NF-κB Decoy / NP-2FT)
(6) リポフェクタミン2000 (Lipofectamine 2000)
【0110】
マウス・マクロファージ RAW264.7を24穴プレートに播種した(4.0×104 細胞/well)。24時間培養した後、NP-2FTに封入した各オリゴヌクレオチドを5時間で導入した。その後ウシ胎児血清(FBS)を加えた。オリゴヌクレオチド導入24時間後に、WST-1アッセイを行い、細胞毒性を評価した。
【0111】
マクロファージにオリゴヌクレオチド導入
↓5時間
FBS添加
↓19時間
WST-1アッセイ
【0112】
なおマウス・マクロファージ RAW264.7は、例えばATCC(P. O. Box 1549, Manassas, VA 20108, USA)や、IST Biotechnology Department (10 I-16132 Genova, Italia)を通し入手することができる。
【0113】
ATCC Number: TIB-71
http://www.atcc.org/SearchCatalogs/longview.cfm?view=ce,6290175,TIB-71&text=RAW%20%26%20264%2E7&max=20
【0114】
ECACC 91062702
http://www.biotech.ist.unige.it/cldb/cl4110.html
【0115】
WST-1アッセイ法
1) 細胞培養を行い、1評価サンプルを3穴にトランスフェクトする。
2) 細胞溶解の30-120分前、培地に10% WST-1細胞増殖測定試薬を加える。
3) WST-1の変換を直接あるいは分注して、ELISAリーダーで定量化する。
4) 試薬/培地を捨て、レポーターアッセイのために細胞を溶解する。
5) WST-1アッセイの吸光度に従い、レポーターアッセイの結果を標準化する。
6) WST-1の吸光度は細胞数の結果と同値である。
7) (1) Normal (無投与)群の吸光度を100%としたときの、各群の平均および標準偏差を計算した。
【0116】
結果を下表に示す。(単位;%、図16参照)
---------------------------------------
群 平均 標準偏差
---------------------------------------
(1) Normal (無投与) 100.00 0.00
(2) NP-2FT 103.00 5.99
(3) SSD 99.35 5.75
(4) D0.1 90.83 3.30
(5) D1.0 96.98 2.69
(6) リポフェクタミン 57.96 0.58
---------------------------------------
遺伝子導入用カチオン性脂質として多用されるリポフェクタミンは、細胞毒性を有することが知られているが、本発明にかかるナノ粒子製剤は細胞毒性を有しないことが、上記結果より明らかである。
【0117】
実施例10 NF-κB核移行阻害試験
方法
評価サンプルを以下の通り調製した。
(7) Normal (無投与)
(8) SSD (2.0μmol/l Single Strand Decoy [CCTTGAAGGGATTTCCCTCC]/ NP-2FT)
(9) D0.01 (0.01μmol/l Double Strand NF-κB Decoy / NP-2FT)
(10) D0.03 (0.03μmol/l Double Strand NF-κB Decoy / NP-2FT)
(11) D0.1 (0.1μmol/l Double Strand NF-κB Decoy / NP-2FT)
(12) D1.0 (1.0μmol/l Double Strand NF-κB Decoy / NP-2FT)
【0118】
マウス・マクロファージ RAW264.7を6穴プレートに播種した(6.0×105 細胞/well)。24時間培養した後、各サンプルを5時間で導入した。その後LPS(lipopolysaccharide, 100ng/ml)を加え、1時間刺激した。核抽出液を調製し、核内NF-κBタンパクをELISA法により測定した。SSD投与群のタンパク量を100%としたときの、各群の平均および標準偏差を計算した。
【0119】
マクロファージに各サンプル導入
↓5時間
LPS刺激
↓1時間
核抽出液調製、核内NF-κBタンパク量測定
【0120】
結果を下表に示す。(単位;%、図17参照)
---------------------------------------
群 平均 標準偏差
---------------------------------------
(7) Normal (無投与) 30.41 8.38
(8) SSD 100.00 0.00
(9) D0.01 100.87 5.79
(10) D0.03 53.20 2.42
(11) D0.1 39.89 6.60
(12) D1.0 5.49 1.30
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上記結果から、本発明にかかるナノ粒子製剤が有する優れたNF-κB核移行阻害作用が明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明により、核酸医薬を標的特異的に細胞内送達するための製剤、特に核酸医薬を包含する安定なナノ粒子製剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】Nanoplexにおける電荷比とルシフェラーゼ活性の関係を示したグラフである。
【図2】葉酸修飾ナノ粒子のKB細胞による経時的な取り込み量の変化を、タンパク濃度(mg/ml)当たりの蛍光で示したグラフである。
【図3】1mM葉酸存在培地において、タンパク濃度(mg/ml)当たりの蛍光を比較したグラフである。
【図4】DiI標識NP-1FT をKB細胞に投与後固定し、共焦点レーザー顕微鏡検査で可視化した写真である。
【図5A】10%血清存在下、KB細胞へのナノ粒子6種類の遺伝子導入効率について、ルシフェラーゼ活性で比較したグラフである。
【図5B】10%血清存在下、LNCaP細胞へのナノ粒子6種類の遺伝子導入効率について、ルシフェラーゼ活性で比較したグラフである。
【図6】葉酸受容体とPSMAの発現についてRT-PCR法で評価した際の電気泳動写真である。
【図7】葉酸修飾ナノ粒子のKB細胞への取り込み効率(in vitro)を、ルシフェラーゼ活性により比較したグラフである。
【図8】葉酸修飾ナノ粒子と市販遺伝子導入試薬のKB細胞への取り込み効率(in vivo)を、ルシフェラーゼ活性により比較したグラフである。
【図9AB】濃度が異なる葉酸修飾ナノ粒子の遺伝子導入効率を、LNCaPおよびPC-3細胞において、ルシフェラーゼ活性により比較したグラフである。(A; LNCaP細胞、B; PC-3細胞)
【図10AB】A; 葉酸修飾ナノ粒子と市販遺伝子導入試薬の遺伝子導入効率を、5種類の培養細胞系において、ルシフェラーゼ活性で比較したグラフである。B;培養細胞における葉酸受容体、葉酸トランスポーター(RFC)およびβ-アクチンの発現を、RT-PCR法により調べた結果である。
【図11ABCDEF】A、B; FITC-f-BSAの細胞内取り込みを共焦点顕微鏡で観察した結果である。C、D; 1mM葉酸存在下で、FITC-f-BSAの細胞内取り込みを共焦点顕微鏡で観察した結果である。E、F; ヒト悪性腫瘍における葉酸受容体発現を、免疫組織化学染色により観察した結果である。
【図12ABCDE】葉酸修飾ナノ粒子の、LNCaPおよびPC-3細胞への遺伝子導入効果について、共焦点顕微鏡により観察した結果である。(図12A;LNCaP細胞、図12B;PC-3細胞)LNCaP細胞への遺伝子導入後、蛍光色素DiI標識NP-F、およびFITC-ODNの局在について検討した結果である。(図12C;遺伝子導入3時間後、図12D;同24時間後)LNCaP細胞に遺伝子導入した後のFITC強度の経時変化を、フローサイトメトリーで観察した結果である。(図12E)
【図13AB】遺伝子導入しなかったLNCaP細胞における、GCVリン酸化について分析したHPLCチャートである。(図13A)pCMV-tk遺伝子導入したLNCaP細胞における、GCVリン酸化について分析したHPLCチャートである。(図13B)
【図14AB】LNCaP細胞において、各種プラスミドを遺伝子導入した際のGCV感受性を比較したグラフである。(図14A) PC-3細胞において、各種プラスミドを遺伝子導入した際のGCV感受性を比較したグラフである。(図14B)
【図15】LNCaP腫瘍内に、葉酸修飾ナノ粒子で癌抑制遺伝子を直接導入した際の、移植癌の平均容積の経時変化を示したグラフである。
【図16】葉酸修飾ナノ粒子とリポフェクタミンの、細胞毒性を比較したグラフである。
【図17】NF-κBデコイを包含する葉酸修飾ナノ粒子による、NF-κB核移行阻害作用を比較したグラフである。
【出願人】 【識別番号】500409323
【氏名又は名称】アンジェスMG株式会社
【出願日】 平成16年10月15日(2004.10.15)
【代理人】
【公開番号】 特開2006−111591(P2006−111591A)
【公開日】 平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願番号】 特願2004−302250(P2004−302250)