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【発明の名称】 貼付剤型強心薬
【発明者】 【氏名】駒村 和雄

【氏名】北風 政史

【要約】 【課題】静脈注射または経口投与によらずに慢性心不全の治療が可能な強心薬を提供すること。

【解決手段】ツロブテロールを有効成分として含有する貼付剤である強心薬。慢性心不全治療用として有用である。ヒト及びヒト以外の哺乳類の治療に用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツロブテロールを有効成分として含有する貼付剤である強心薬。
【請求項2】
慢性心不全治療用である請求項1に記載の強心薬。
【請求項3】
ヒト及びヒト以外の哺乳類の治療に用いられる請求項1または2に記載の強心薬。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付剤型強心薬に関する。特に、慢性心不全用貼付剤型強心薬に関する。
【背景技術】
【0002】
強心薬は、心筋内遊離カルシウム濃度を上昇させ、心筋の収縮力を増加させる薬物であり、ジギタリスを代表とする強心配糖体などが一般に利用されている。強心薬は、強心配糖体(ジギタリス)、ホスホジエステラーゼ阻害薬、アドレナリンβ受容体作用薬および血管拡張薬に分類される。
【0003】
強心薬の作用機序は、大きく2つに分類される。1つは、心筋細胞膜におけるNa+/K+ATPaseに結合して心筋細胞内のNa+を増加させ、それによりNa+濃度勾配を利用する Na+/Ca2+exchanger によるCa2+の細胞外流出を阻害し、結果的に細胞内のCa2+濃度が上昇して心筋収縮力が増加する。2つめは、心筋細胞内cAMP濃度を上昇させる。細胞内のcAMP濃度の上昇はプロテインキナーゼの活性化、Caチャンネルの活性化をきたし、同じく細胞内のCaイオン濃度は上昇する。この機序は、さらに2種類ある。1つはβ受容体刺激を介したアデニル酸シクラーゼの活性化によるcAMP生成の増加であり、この機序に基づく薬剤としてカテコールアミンやβ受容体刺激薬などがある。もう一つは、ホスホジエステラーゼ活性の阻害によるcAMP分解の抑制であって、この機序に基づく薬剤としてカフェイン、メチルキサンチン類などがある。
【特許文献1】特開平4-99720 号公報
【特許文献2】特開平7-285854号公報
【特許文献3】特開平11-228395号公報
【特許文献4】WO97/14411
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記強心薬の内、慢性心不全の治療に用いられる強心薬であるβ受容体刺激薬は、静脈注射投与される。しかし、繰り返す静脈注射投与および長期の持続的静脈内投与は苦痛と感染症や出血の危険性が伴うだけでなく、投与対象の血管自身に炎症を引き起こし、いずれ投与部位として使用できなくする。内服薬(経口薬)もあるが、他の内服薬と併用する場合、併用数が多くなるという問題がある。また、内服薬(経口薬)の場合、有効成分の血中濃度の変化が大きい、という問題もある。さらに、意識がない患者もしくは人工呼吸器装着状態にある患者では、胃チューブからの内服薬の投与もしくは長期の持続的静脈内投与しか薬剤投与方法がない。前者はチューブを誤って気管内に挿入すると誤嚥性肺炎や窒息の危険があり、後者は穿刺部位からの感染・出血や血管炎発生の危険が生ずる。
【0005】
そこで本発明の目的は、静脈注射または経口投与によらずに慢性心不全の治療が可能な強心薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、ツロブテロールを有効成分として含有する貼付剤である強心薬である。この強心薬は、慢性心不全の治療用として特に有効である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、静脈注射投与によらずに慢性心不全の治療が可能な強心薬を提供できる。本発明の貼付剤型強心薬は、さらに以下の効果がある。
1)点滴針を使用しないので、投与にともなう出血や感染リスクを軽減する。
2)静脈注射有資格者でなくても医師の監督のもとに使用可能。
3)経口ルートを使用しないので、経口薬の数・種類を増加させない。
4)点滴を除去し、活動範囲を広げ、退院できる可能性を高める。
5)有害作用時の減量や除去が簡単に施行可能である。
6) 意識がない患者もしくは人工呼吸器装着状態にある患者でも誤嚥性肺炎・窒息、穿刺部位の感染・出血・血管炎発生の危険なく投与可能である。
7) ツロブテロールを有効成分として含有する貼付剤(ホクナリンテープ)は気管支喘息薬として既に人での安全性が確認済み。
8)犬で強心効果が確認されたので、ペット等のヒト以外の動物(哺乳類)の治療にも有効である。ヒト以外の動物(哺乳類)では、経口投与や静脈内投与が困難である場合があるが、本発明の貼付剤型強心薬は、貼付剤であるため、投与を容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、ツロブテロールを有効成分として含有する貼付剤である強心薬である。ツロブテロールは、気管支拡張作用を有することから、気管支喘息、気管支炎、肺気腫などの治療薬としてすでに実用されている。
【0009】
ツロブテロールを有効成分として含有する貼付剤(経皮吸収型製剤)も、気管支喘息、気管支炎、肺気腫などの治療薬としてすでに実用されている。
【0010】
ツロブテロールを有効成分として含有する貼付剤は、例えば、特開平4-99720号公報(特許文献1)、特開平7-285854号公報(特許文献2)、特開平11-228395号公報(特許文献3)、およびWO97/14411(特許文献4)に種々開示されている。
【0011】
特開平4-99720 号公報には、ツロブテロールを感圧性接着剤中に含有させてなる基材層が担持体上に形成され、かつ該感圧性接着剤がポリイソブチレンを主体として構成されている経皮投与用医薬製剤が開示されている。感圧性接着剤としてポリイソブチレンを用いることで、ツロブテロールの持続放出性と安定性を確保できる。特に、感圧性接着剤が500〜4000の粘度平均分子量を有する第一ポリイソブチレンと、10000〜200000の粘度平均分子量を有する第二ポリイソブチレンと、900000〜2100000の粘度平均分子量を有する第三ポリイソブチレンの群から選ばれる二種類以上のポリイソブチレンの混合物であることが記載されている。10〜80重量%の第三ポリイソブチレン、0〜80重量%の第一ポリイソブチレン、0〜90重量%の第二ポリイソブチレンからなる感圧性接着剤が好ましい。さらに、感圧性接着剤に熱可塑性樹脂を含有させることができる。
【0012】
特開平7-285854号公報には、粘着剤に対する飽和溶解度以上のツロブテロール を含有する膏体層が支持体の一方面に積層され、該膏体層中における溶解型ツロブテロール に対する結晶型ツロブテロール の含量比が0.1 〜10である経皮吸収型製剤が開示されている。この経皮吸収型製剤は、患者に与える貼付中の違和感および皮膚刺激性を低減させ、皮膚接着性の低下による端末の剥がれ、脱落を防止し、急激な薬物の血中濃度の上昇による重篤な副作用の発現を防止する。また、過剰に余分な薬物を膏体層に含有させる必要がなく、経済性に優れる。持続的にかつ効率的にツロブテロール が皮膚面へ放出され、生体内へ長時間にわたって経皮吸収され、薬効の持続化が達成できるので、有効血中濃度の維持、すなわち薬効の持続性に優れる。投与回数(単位時間当たりの貼付回数)を減少できるので、皮膚刺激性が低減される。
【0013】
特開平11-228395号公報には、ツロブテロール および粘着剤を含有する膏体層が支持体に積層されてなる経皮吸収型製剤であって、該膏体層中に溶解状態にてツロブテロール が5重量%以上含有されている経皮吸収型製剤が開示されている。この経皮吸収型製剤は、薬効成分であるツロブテロール を完全に溶解した状態で膏体層中に保持することで、経時的な薬剤結晶析出に伴う薬剤放出性や粘着物性の経時変化がなく、薬剤の経皮吸収性、特に投与初期における経皮吸収速度に優れると共に、有効血中濃度を長時間維持することによる効力の持続性にも優れ、また皮膚接着性等の粘着物性の経時変化が軽減されたものである。
【0014】
WO97/14411には、平均粒径2〜20μmの微細結晶状のツロブテロール を含有する合成ゴムを主成分とする粘着剤層と支持体とを積層してなる経皮吸収型ツロブテロール 製剤、特に微細結晶状のツロブテロール が、ツロブテロール と合成ゴムを主成分とする粘着剤とを良溶媒中に溶解後、再結晶させて得られるものである経皮吸収型ツロブテロール 製剤が開示されている。この経皮吸収型ツロブテロール 製剤はツロブテロール の薬効持続性に優れている。
【0015】
本発明の貼付剤型強心薬は、上記特開平4-99720 号公報、特開平7-285854号公報、特開平11-228395号公報、およびWO97/14411に記載の経皮吸収型ツロブテロール 製剤の何れであることもできる。
【0016】
本発明の貼付剤型強心薬は、皮膚に貼付することによって投与される。投与量は、被投与者の状況を勘案し、被投与者がヒトの場合、医師の判断の下で適宜決定されるが、通常は例えば、0.5〜10mg/枚の貼付剤を1日1回貼付することによって行われる。また、本発明の貼付剤型強心薬は、被投与者がヒト以外の哺乳類であることもでき、その場合の投与量は、被投与者である哺乳類(ヒト以外)の種類に応じて、獣医師の判断の下で適宜決定される。
【0017】
本発明の貼付剤型強心薬は、経皮吸収型の心不全治療薬として有用である。
【実施例】
【0018】
以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実験方法
ビーグル犬を麻酔開胸下に左前下行枝近位部を絹糸にて結紮して心筋梗塞モデルを作製した。犬は閉胸・抜管し回復させ、2週間後に慢性心不全となった状態でツロブテロールの投与を行った。5匹の犬を再度麻酔開胸下にて、腹部剃毛部にツロブテロールとしてホクナリンテープ(2mg/枚)を1mg/kgの用量にて貼付した。貼付直前及び貼付2時間後に以下の生理学的指標を動脈カテーテル法、サーモダイリューションカテーテル法、心エコー法を用いて計測比較した。結果を表1に示す。
【0019】
生理学的指標
心拍数(HR)、平均血圧値(mAP)、心拍出量(CO)、肺毛細血管楔入圧(PCWP)、左室拡張末期圧(LVEDP)、左室圧一次微分最大値(maxdP/dt)、左室圧一次微分最小値(mindP/dt)、末梢血管抵抗値(SVR)、左室拡張末期径(LVDd)、左室心筋短縮率(LVFS)、左室駆出率(LVEF)。
【0020】
統計解析にはStatView統計学パッケージ(SAS Institute)を用いてpaired t検定を施行した。データは平均±標準偏差で表示し、p<0.05を統計学的有意と判定した。有意差無しはNSと表示した。
【0021】
【表1】


【0022】
以上の結果から以下のことが言える。
1)犬心筋梗塞モデルは投与前に心不全状態を示した(CO, maxdP/dt, mindP/dt, LVFS, LVEF低値、PCWP, LVEDP, SVR高値)。
2)本心筋梗塞後心不全モデルにツロブテロールを経皮投与することにより心収縮能指標(CO, maxdP/dt, LVFS, LVEF)が改善したのみならず、心拡張指標(mindP/dt, PCWP, LVEDP)も改善した。これらはツロブテロールの心不全治療薬としての効果を示すものと考えられた。
3)本効果はツロブテロールの有する強心作用(CO, maxdP/dt, mindP/dt, LVFS, LVEFの改善に示される)と血管拡張作用(PCWP, LVEDPの改善に示される)に起因すると推察された。統計学的有意差は検出されなかったが、MAP(p=0.06), SVR(p=0.05)の低下傾向は血管拡張作用を示すと考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、貼付剤型強心薬を提供できる。

【出願人】 【識別番号】803000056
【氏名又は名称】財団法人ヒューマンサイエンス振興財団
【出願日】 平成16年10月13日(2004.10.13)
【代理人】 【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス

【公開番号】 特開2006−111547(P2006−111547A)
【公開日】 平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願番号】 特願2004−298853(P2004−298853)