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【発明の名称】 歯科用接着性組成物
【発明者】 【氏名】クリストフ,タラッケル

【氏名】アンドレアス アンドゥリュー ヘウマン

【要約】 【課題】歯科用接着性組成物を提供する。

【解決手段】本発明は、最適化された粘度および/または流動学的動態を有する歯科用組成物に関する。本発明は、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つのカルボン酸官能性ポリマー、
(b)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和基で置換された、酸度が前記カルボン酸官能性ポリマー(a)より高い少なくとも1つの酸誘導体、および
(c)0.1〜10重量%の水
を含んでなり、
前記カルボン酸官能性ポリマー(a)および前記酸誘導体(b)が少なくとも有効量で存在し、剪断速度0.5〜1s−1でプレート/プレート配置で測定すると、歯科用組成物がずり減粘、および/または1.0〜20Pa・sの粘度を示す、歯科用組成物。
【請求項2】
前記組成物がいかなる微粒子粘度調節剤も含まない、請求項1に記載の歯科用組成物。
【請求項3】
少なくともAおよびBの2つのパートを含んでなり、
パートAが、
(a)少なくとも1つのカルボン酸官能性ポリマー、および
(aa)0〜10重量%の水
を含んでなり、
パートBが、
(b)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和基で置換された、酸度が前記カルボン酸官能性ポリマー(a)より高い少なくとも1つの酸誘導体、および
(bb)0.5重量%未満の水
を含んでなり、
前記カルボン酸官能性ポリマー(a)および前記酸誘導体(b)が少なくとも有効量で存在し、剪断速度0.5〜1s−1でプレート/プレート配置で測定すると、パートAとパートBの混合物が、別個のパートAおよびBのそれぞれより高いずり減粘、および/または粘度を示す、歯科用組成物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用接着性組成物に関する。より具体的には、カルボン酸官能性ポリマーを含んでなる、セルフエッチング歯科用材料に関する。該組成物は歯科用修復材料を歯構造物に付着するために使用できる。
【背景技術】
【0002】
歯科用構造物の修復は、硬組織への歯科用材料の接着固定を伴うことが多い。歯科における接着剤の別の用途は、歯科矯正装置を歯に結合することである。当該技術分野の樹脂複合材などの多くの歯科用材料は、それらの化学的性質のために象牙質およびエナメルなどの硬組織に接着しないので、前処理が必要である。これには無機または有機酸によるエナメル表面のエッチングと、それに続くプライミング、および引き続く結合剤の塗布が含まれる。多くの場合、このようなステップの合間に、1つ以上の水洗および乾燥ステップが使用される。その結果、歯科修復および歯科矯正装置の適用は、典型的に多段階手順を伴う。
【0003】
従来の修復および/または歯科矯正手順を簡素化するために、例えばエッチング、プライミングおよび/または結合の2つ以上のステップを成し遂げる組成物を提供することが望ましい。当該技術分野で知られている接着性組成物の多くが、これらのステップの2つ以上を組み合わせている。
【0004】
歯科用構造物と修復材料または歯科矯正装置との間の持続的な接着結合のためのさらに重要な必要条件は、歯科用構造物上の均質な接着剤フィルムの形成である。接着剤による歯構造物のぬれ不良、または低すぎる接着剤粘度は、不均質な接着剤フィルムまたは接着剤の貯留(pooling)に帰結するかもしれない。したがって現状技術から知られている多くの接着性組成物が、この流動学的特性不良および/または低粘度の問題を克服しようとしている。
【0005】
多くの現行の歯科用接着剤が、ヒュームドシリカまたはポリマー増粘剤などの異なる粘度調節剤または流動学添加剤を含有する。
【0006】
(特許文献1)(クラレ(Kuraray))は、有機カルボン酸、金属塩化物、および水を含んでなる、歯科用組成物について記載している。その歯科用組成物は、ポリビニルピロリドンおよびカルボキシメチルセルロースの高分子量増粘剤よりなる群から選択されるチキソトロープ剤(thixotropic agent)、および高い分散性のシリカをさらに含んでなることができる。
【0007】
(特許文献2)(GC)は、特にリン酸基を含有する1〜5重量%の重合性モノマー、1個の分子に複数のカルボキシル基を含有する10〜40重量%の重合性モノマー、特に15〜50重量%の水、平均粒度0.01〜0.05μmを有する粘度調節剤を含有する重合性組成物からなる、一液型歯科用組成物について記載している。適切な粘度調節剤は、ヒュームドシリカ、酸化アルミニウムおよび二酸化チタンまたはガラス粉末などの超微細無機充填材である。
【0008】
(特許文献3)(3M)は、充填材、重合性樹脂、および重合性樹脂中に分散したポリマー取り扱い調節剤を含んでなる、独特の取り扱い特性を有する歯科用樹脂セメント材料について記載している。
【0009】
2つ以上の構成要素の混合後に、流動学的動態の変化を示すことができるいくつかの材料がある。
【0010】
(特許文献4)(徳山曹達(TokuyamaSoda))は、高い耐水性を有する接着剤コーティング材料について記載している。材料は、(1)2個のカルボキシル基または1個のカルボン酸無水物基を含むポリマー、および(2)有機チタン酸塩を含んでなる。カルボキシル基またはカルボン酸無水物基は、隣接するポリマーの炭素原子に結合する。2個のカルボキシル基または1個のカルボン酸無水物基は、有機チタン酸塩化合物と高強度の架橋を形成するので、特に高い耐水性がこの材料に与えられる。当業者に知られているように、これらの化合物の組み合わせはゲル化および材料粘度増大をもたらすことができる。
【0011】
(特許文献5)(クラレ(Kuraray))は、(a)少なくとも10モル%のカルボキシル含有ビニルモノマーを有するポリマー溶液、および(b)ジルコニウムキレート化合物の溶液を含んでなる、二液型歯科用ライニング組成物について記載している。
【0012】
(特許文献6)(松風(Shofu))は、特に(a)酸性団を有する5重量%のラジカル重合性モノマーを含有する重合性不飽和モノマー、および(b)酸反応性充填材を含んでなる歯科用接着性組成物について記載している。これらの化合物間の酸−塩基反応は、粘度の漸進的増大をもたらす。
【0013】
(特許文献7)(3M)は、接着性組成物を使用して修復材料を基材に付着する方法について記載している。その接着性組成物は、エチレン性不飽和リン酸化化合物、カルボン酸官能性ポリマー、およびキュアリング剤を含んでなる。これはアマルガムを象牙質またはエナメルなどの硬組織に接着するのに使用される。従来のアジュバント(adjuvant)と同様に、その組成物はまた、粘度調節剤を含有できる。開示される組成物は水を含有しない。
【0014】
(特許文献8)(3M)は、別個の酸エッチングステップの必要性なしに高い接着強さを与える複数パートの歯科用接着剤プライマー組成物を開示する。その組成物は、酸性重合性化合物および重合性希釈液を含んでなるパートAを提供し、パートAのpHは約2を超える。酸性材料を含んでなるパートBもさらに提供され、パートBのpHは約2未満である。その組成物は、パートA中またはパートB中または双方のパート中に0.5〜90重量%の水を含有する。
【0015】
【特許文献1】米国特許第4,952,613号明細書
【特許文献2】欧州特許第1 287 805 A1号明細書
【特許文献3】米国特許第6,506,816 B1号明細書
【特許文献4】米国特許第4,533,701号明細書
【特許文献5】米国特許第4,648,844号明細書
【特許文献6】米国特許第6,583,197 B1号明細書
【特許文献7】米国特許第5,256,447号明細書
【特許文献8】米国特許第5,922,786号明細書
【特許文献9】米国特許第3,655,605号明細書
【特許文献10】米国特許第4,016,124号明細書
【特許文献11】米国特許第4,089,830号明細書
【特許文献12】米国特許第4,143,018号明細書
【特許文献13】米国特許第4,342,677号明細書
【特許文献14】米国特許第4,360,605号明細書
【特許文献15】米国特許第4,376,835号明細書
【特許文献16】欧州特許第0 323 120 B1号明細書
【特許文献17】国際公開第01/44338 A1号パンフレット
【特許文献18】米国特許第4,298,738号明細書
【特許文献19】米国特許第4,324,744号明細書
【特許文献20】米国特許第4,385,109号明細書
【特許文献21】米国特許第4,710,523号明細書
【特許文献22】米国特許第4,737,593号明細書
【特許文献23】米国特許第6,251,963号明細書
【特許文献24】欧州特許出願第0 173 567 A2号明細書
【特許文献25】米国特許第6,187,833号明細書
【特許文献26】米国特許第6,025,406号明細書
【特許文献27】米国特許第6,043,295号明細書
【特許文献28】米国特許第5,998,495号明細書
【特許文献29】米国特許第6,084,004号明細書
【特許文献30】米国特許出願第10/050218号号明細書
【特許文献31】米国特許第4,695,251号明細書
【特許文献32】米国特許第4,503,169号明細書
【特許文献33】米国特許第6,444,725号明細書
【特許文献34】国際公開第01/30305 A1号パンフレット
【特許文献35】国際公開第01/30306 A1号パンフレット
【特許文献36】国際公開第01/30307 A1号パンフレット
【特許文献37】米国特許第6,254,828号明細書
【特許文献38】米国特許第6,084,004号明細書
【特許文献39】国際公開第01/51540 A1号パンフレット
【特許文献40】国際公開第02/66535 A1号パンフレット
【特許文献41】国際公開第98/47046 A1号パンフレット
【特許文献42】国際公開第98/47047 A1号パンフレット
【特許文献43】欧州特許第0 895 943 B1号明細書
【特許文献44】国際公開第02/38468 A1号パンフレット
【特許文献45】国際公開第01/58869 A1号パンフレット
【特許文献46】国際公開第01/10388号パンフレット
【非特許文献1】J.−P.ファシエ(Fouassier)著「光重合開始、光重合、および光硬化(Photoinitiation,Photopolymerization,and Photocuring)」Hanser Publishers、Munich、Vienna、NewYork、1995
【非特許文献2】J.−P.ファシエ(Fouassier)著、J.F.ラベック(Rabek)(編)「ポリマー科学および技術における放射線キュアリング、第二巻(Radiation Curing in Polymer Science and Technology,Vol.II)」Elsevier Applied Science、London、NewYork、1993
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述の流動調節剤または増粘剤を有する歯科用接着剤には、いくつかの欠点がある。ヒュームドシリカなどの微粒子粘度調節剤(particulate viscosity modifiers)または流動添加剤が使用される場合、組成物を静置すると、粒子の重力分離が起きるかもしれない。さらにそれらは追加ステップで液体中に分散されなくてはならず、製造工程をより高価にする。例えばポリビニルピロリドンおよびカルボキシメチルセルロースなどの上述のその他の粘度調節剤は、調合物のその他の構成要素と共重合しないことが多く、接着剤の性能が損なわれるかもしれない。さらにほとんどの既知のセルフエッチング接着剤のように、2つ以上の組成物の混合によって接着剤が調製される場合、粘稠すぎる組成物の使用は、計量供給および混合の問題、そして気泡の取り込みをもたらし得る。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、(a)少なくとも1つのカルボン酸官能性ポリマー、(b)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和基で置換された、酸度がカルボン酸官能性ポリマー(a)より高い少なくとも1つの酸誘導体、(c)0.1〜10重量%の水を含んでなる歯科用組成物を提供する。カルボン酸官能性ポリマー(a)および酸誘導体(b)は少なくとも有効量で存在し、プレート/プレート配置および剪断速度0.5〜1/s−1で測定すると、歯科用組成物はずり減粘(shear thinning)および/または1.0〜20Pa・sの粘度を示す。粘度測定の方法については下に記載する。
【0018】
このような組成物は、歯科用修復材料、および/または歯科矯正装置と、象牙質、エナメル、骨またはその他の硬組織などの歯系基材表面との間に改善された接着を提供するのに使用できる。さらに組成物は、微粒子粘度調節剤を回避しながら、望ましい流動学的特性および/または粘度を有するセルフエッチング接着を促進できる。
【0019】
エチレン性不飽和であっても良いカルボン酸官能性ポリマー、エチレン性不飽和であっても良い酸度がカルボン酸官能性ポリマーより高い酸誘導体(b)、および0.1〜10重量%の水を有する組成物が提供でき、それは当該技術分野で知られている組成物と比べて、増大した粘度および/またはずり減粘動態を示すことが分かっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
好ましい実施態様では、本発明は、(a)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和基で置換された、1〜30重量%の少なくとも1つのカルボン酸官能性ポリマー、(b)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和基で置換された、酸度がカルボン酸官能性ポリマー(a)より高い、10〜80重量%の少なくとも1つの酸誘導体、(c)0.1〜10重量%の水、(d)1〜80重量%の少なくとも1つの不飽和モノマーおよび/またはプレポリマー、(e)0.1〜10重量%の重合開始剤および安定剤を含んでなり、カルボン酸官能性ポリマー(a)および酸誘導体(b)が少なくとも有効量で存在し、プレート/プレート配置および剪断速度0.5〜1s−1で測定すると、歯科用組成物がずり減粘および/または1.0〜20Pa・sの粘度を示す、歯科用組成物に関する。
【0021】
既述の歯科用組成物は、0.1〜10重量%の水を含んでなる。より高い含水量では、粘度が低くなりすぎ、所望の粘度および/またはずり減粘動態を容易に得ることができないかもしれない。好ましくは本発明の歯科用組成物は、0.1〜6重量%の水を含んでなる。
【0022】
好ましくは、本発明の歯科用組成物はずり減粘動態を示す。したがって剪断速度0.5〜1s−1での歯科用組成物の粘度は1.0〜20Pa×sであり、剪断速度1000s−1での粘度は1.0Pa×s未満である。代案としては、または追加的には、剪断速度1000s−1での歯科用組成物の粘度は、剪断速度0.5s−1での粘度の30%未満である。本発明の本実施態様のようなずり減粘動態を有する組成物は、より良い取り扱い特性を示し、歯科用構造物の均一のぬれを可能にするので、有利である。
【0023】
本発明のさらに別の態様では、好ましい実施態様の組成物は、ヒュームドシリカ、酸化アルミニウム、および二酸化チタンまたはガラス粉末などのいかなる微粒子粘度調節剤も含まない。
【0024】
好ましい実施態様では、歯科用組成物は、式(I)、
B(X)(Y) (I)
(式中、Bは有機主鎖を表し、それぞれのXは独立にカルボキシル基であり、それぞれのYは独立に重合性基であり、mは2以上の平均値を有する数であり、nは0以上の平均値を有する数である。)に従った、カルボン酸官能性ポリマー(a)を含んでなる。
【0025】
好ましくは主鎖Bは、炭素−炭素結合のオリゴマーまたはポリマー主鎖であり、任意に、酸素、窒素または硫黄ヘテロ元素などの重合反応を不当に妨げない置換基を含有する。適切なY基としては、置換および非置換のアクリレート、メタクリレート、アルケン、およびアクリルアミドが挙げられるが、これに限定されるものではない。式(I)に従った化合物の重量平均分子量は、少なくとも約250、好ましくは約500〜500,000、そしてより好ましくは約1,000〜100,000である。
【0026】
好ましくはカルボン酸官能性ポリマー(a)は、不飽和モノ−、ジ−またはトリカルボン酸のホモポリマーおよび共重合体および/または任意に少なくとも1つのエチレン性不飽和基で置換されたそれらの無水物よりなる群から選択される。これとしては例えば、ポリ(メタ)アクリル酸のホモポリマー、(メタ)アクリル酸とイタコン酸、(メタ)アクリル酸とマレイン酸、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸またはマレイン酸、エチレンと無水マレイン酸またはマレイン酸、およびスチレンと無水マレイン酸またはマレイン酸の共重合体が挙げられ、それぞれのポリマーは、重合性エチレン性不飽和基で置換された少なくとも1つの酸性基を有する。
【0027】
構成要素に従った重合性エチレン性不飽和基で任意に置換されたカルボン酸官能性ポリマー(a)の例としては、一般にガラスイオノマーセメントを調製するのに使用される、不飽和モノ−、ジ−、またはトリカルボン酸のホモポリマーおよび共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。代表的なポリアルケン酸については、例えば(特許文献9)、(特許文献10)、(特許文献11)、(特許文献12)、(特許文献13)、(特許文献14)、および(特許文献15)に記載される。特に好ましいポリアルケン酸はまた、ポリアクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とイタコン酸、アクリル酸とマレイン酸、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸またはマレイン酸、エチレンと無水マレイン酸またはマレイン酸、およびスチレンと無水マレイン酸またはマレイン酸の共重合体を含む。重合性エチレン性不飽和基で置換された特に好ましいカルボン酸官能性ポリマーは、例えば(特許文献16)で記載されるように、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、およびイタコン酸の(メタ)アクリレート官能性付与共重合体である。この文献は明示的に言及され、その開示、特に上述の箇所で開示されるアクリル酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、およびイタコン酸の(メタ)アクリレート官能性付与共重合体の調製に関する開示は、本発明の開示の一部と見なされる。所望するならばこのようなポリマーの混合物が使用できる。
【0028】
カルボン酸官能性ポリマー(a)は、好ましくは2〜15重量部、好ましくは2〜10重量部、より好ましくは3〜8重量部の量で存在する。
【0029】
酸誘導体(b)の酸官能性基は、4.75未満のpKa値を有するB、C、N、S、Pのオキシ酸またはチオ−オキシ酸から選択されても良い。所望するならば、例えばその場(in situ)で所望の酸を生じさせるために、酸それ自体の代わりに、酸無水物などの酸の前駆物質、またはエステルを使用できる。適切な重合性エチレン性不飽和基としては、置換および非置換のアクリレート、メタクリレート、アルケンおよびアクリルアミドが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0030】
酸度がカルボン酸官能性ポリマー(a)より高く、任意に構成要素に従った1つ以上の重合性エチレン性不飽和基で置換された酸誘導体(b)の例としては、リン酸2−メタクリロイルオキシエチル、リン酸2−メタクリロイルオキシプロピル、リン酸3−メタクリロイルオキシプロピル、リン酸2−メタクリロイルオキシブチル、リン酸3−メタクリロイルオキシブチル、リン酸4−メタクリロイルオキシブチル、リン酸5−メタクリロイルオキシ−3−オキサ−ペンチル、リン酸ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)、リン酸ビス(2−メタクリロイルオキシプロピル)、リン酸ビス(3−メタクリロイルオキシプロピル)、リン酸ビス(2−メタクリロイルオキシブチル)、リン酸ビス(3−メタクリロイルオキシブチル)、リン酸ビス(4−メタクリロイルオキシブチル)、リン酸ビス(5−メタクリロイルオキシ−3−オキサ−ペンチル)、グリセロール−1,3−ジメタクリレート−2−リン酸、グリセロール−1,2−ジメタクリレート−3−リン酸、リン酸ビス(グリセロール−1,3−ジメタクリレート)、リン酸ビス(グリセロール−1,2−ジメタクリレート)、リン酸(グリセロール−1,2−ジメタクリレート)(グリセロール−1,3−ジメタクリレート)、リン酸(トリメチロールプロパンジメタクリレート)、リン酸ビス(トリメチロールプロパンジメタクリレート)、リン酸(トリメチロールエタンジメタクリレート)、リン酸ビス(トリメチロールエタンジメタクリレート)、ペンタエリトリトールトリメタクリレートリン酸、リン酸、マレイン酸、マレイン酸モノ(メタクリロイルオキシエチル)などのマレイン酸モノエステル、硫酸、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルメタクリレート、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0031】
酸誘導体(b)は、全組成物の10〜80重量部の量で存在できる。(b)は好ましくは20〜80、より好ましくは20〜60重量部の量で存在できる。
【0032】
全組成物中の(a)および(b)の量は、10〜90重量部、好ましくは15〜80重量部、より好ましくは20〜70重量部であることができる。
【0033】
本発明の歯科用組成物は、1〜80重量%の少なくとも1つの不飽和モノマーおよび/またはプレポリマーを任意に含んでなる。
【0034】
これらの不飽和モノマーの例は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAグリシジルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAイソプロピルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAグリシジルジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、7,7,9−トリメチル−4,13−ジオキシ−3,14−ジオキサ−5,12−ジアザヘキサデカン−1,16−ジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバル酸エステルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとメチルシクロヘキサンジイソシアネートとの反応生成物、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとメチルシクロヘキサンジイソシアネートとの反応生成物、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)との反応生成物、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物、および3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソ−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールモノ(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせである。
【0035】
プレポリマーの例については、特に(特許文献17)に記載されている。この文献もまた明示的に言及され、その開示、特に上述の箇所で開示される不飽和ウレタンプレポリマー調製に関する開示は本発明の開示の一部と見なされ、参照によってここに編入する。プレポリマーは、好ましくはヒドロキシ、酸性またはイオン性基を含有しない。
【0036】
別の特に好ましい不飽和プレポリマーは、ウレタン官能性付与ポリマーである。これは例えば(A)15〜85重量%の1つ以上のα、ω−末端ポリ(メタ)アクリレートジオール、(B)0〜30重量%の1つ以上のラジカル硬化性ポリヒドロキシ−官能性化合物、(C)14〜60重量%の1つ以上のポリイソシアネート、(D)イソシアネート基に対して反応性で1つ以上のラジカル硬化性基を含有する1〜40重量%のモノ官能性化合物の反応によって、得ることができる。
【0037】
プレポリマーは(ポリスチレン標準と照合する)GPC測定により、400〜200,000g/mol、好ましくは500〜100,000g/mol、そしてより好ましくは600〜20,000g/molの範囲の平均分子量(Mw)を有することができる。このようなプレポリマーの例は、テゴ(Tego)(登録商標)ジオールBD−1000、2,4,4−トリメチルヘキシル−1,6−ジイソシアネート、および2−ヒドロキシエチルメタクリレートのステップ成長重合生成物である。これはドイツ国のテゴ・ケミー(Tego Chemie Service GmbH(Germany))から市販される。
【0038】
不飽和モノマーおよび/またはプレポリマーは1〜80重量部、好ましくは10〜50重量部、より好ましくは20〜45重量部の量で存在できる。
【0039】
さらにモノマー、プレポリマー、および/またはポリマーを含有するウレタンまたはアミド基を本発明の歯科用組成物に添加することで、歯科用構造物の混和性またはぬれのような特性の改善がある、好ましい組成物をもたらすことができることが分かっている。
【0040】
本発明に従った重合開始剤としては、光重合開始剤のようなキュアリング剤、または当業者に知られているラジカル重合(free radical polymerization)のための光重合開始剤システムが挙げられる。
【0041】
ラジカル光重合性組成物を重合するための適切な光重合開始剤としては、酸化ホスフィンの類が挙げられる。好ましい酸化ホスフィンラジカル重合開始剤は、(特許文献18)、(特許文献19)、(特許文献20)、(特許文献21)、および(特許文献22)、(特許文献23)、および(特許文献24)に記載されるものなどのアシルおよびビスアシルホスフィンオキシドである。
【0042】
380nm〜450nmを超える範囲の波長で照射するとラジカル重合が開始できる市販の酸化ホスフィン光重合開始剤としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル酸化ホスフィン(イルガキュア(IRGACURE)819、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2,4,4−トリメチルペンチル)酸化ホスフィン(CGI403、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチル酸化ホスフィンと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの重量で25:75の混合物(イルガキュア(IRGACURE)1700、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル酸化ホスフィンと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの重量で1:1の混合物(ダロキュア(DAROCUR)4265、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ,(Ciba Specialty Chemicals))、およびホスフィン酸エチル2,4,6−トリメチルベンジルフェニル(ルシリン(LUCIRIN)LR8893X、BASF)が挙げられる。
【0043】
別の典型的な例は、ラジカル重合のための光重合開始剤または光重合開始剤システムの組み合わせであり、増感剤と還元剤との組み合わせを含む。
【0044】
増感剤としては、390nm〜830nmの波長を有する可視光の作用によって重合性モノマーを重合できるものが好ましい。それらの例としては、カンファーキノン(camphorquinone)、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2−メトキシエチル)ケタール、4,4,’−ジメチルベンジルジメチルケタール、アントラキノン、フェナントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンザントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキシド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4,’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、そして(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド、およびアジ化物含有化合物が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは混合物中で使用されても良い。
【0045】
還元剤としては、第三級アミンなどが概して使用される。第三級アミンの適切な例としては、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、および4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルが挙げられる。別の還元剤の例としては、スルフィン酸ナトリウム誘導体が挙げられ、有機金属化合物もまた使用できる。これらの化合物は、単独でまたは混合物中で使用されても良い。所望するならば、増感剤および還元剤とホスフィンオキシド重合開始剤を含む重合開始剤システムの組み合わせが使用できる。
【0046】
適切な重合開始剤システムのさらに別の例は、例えば(非特許文献1)および(非特許文献2)などの文献にある。
【0047】
さらに参照によってここに編入する(特許文献25)、(特許文献26)、(特許文献27)、(特許文献28)、(特許文献29)、および(特許文献30)に記載されるような増感剤、電子供与体、およびオニウム塩からなる三元光重合開始システムが使用できる。
【0048】
重合開始剤は、全組成物重量を基準にして、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜10重量部、より好ましくは0.3〜5重量部の量で存在できる。
【0049】
本発明に従った安定剤の例は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エトキシフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(ジメチルアミノ)メチルフェノールまたは2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(UV−9)、2−(2’−ヒドロキシ−4’,6’−ジ−tert−ペンチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−n−オクトオキシベンゾフェノン、および2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールである。このようなアジュバントは、樹脂と重合するように反応性官能基を任意に含んでなっても良い。
【0050】
好ましくは安定剤は0〜5重量部、より好ましくは0.001〜2重量部、最も好ましくは0.01〜1重量部の量で存在する。
【0051】
本発明の歯科用組成物は、例えば界面活性剤、溶剤、フッ化物剥離剤、非反応性無機充填材、および光退色着色剤のような一般に使用される助剤をさらに含有しても良い。
【0052】
本発明の歯科用組成物は、任意に、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、およびそれらの組み合わせをはじめとする界面活性剤を含有する。本発明の組成物および方法で有用な界面活性剤としては、非重合性および重合性界面活性剤が挙げられる。
【0053】
非イオン界面活性剤は、通常、有機脂肪族またはアルキル芳香族疎水性化合物と親水性であるエチレンオキシドなどのアルキレンオキシドとの縮合生成物である。カルボキシ、ヒドロキシ、アミド、またはアミノ基を有し、遊離水素(free hydrogen)が存在するほとんどあらゆる疎水性化合物が、エチレンオキシドと共に縮合して非イオン界面活性剤を形成できる。
【0054】
特に適切な非反応性、非イオン界面活性剤としては、約3〜約100モル、好ましくは約5〜約50モル、最も好ましくは約5〜約40モルのエチレンオキシドと縮合した、約8〜約20個の炭素元素を含有する直鎖または分枝鎖形状の脂肪アルコールなどの高級脂肪族アルコールの縮合生成物よりなる群から選択されるものが挙げられるが、これに限定されるものではない。このような非イオン性、エトキシ化、脂肪アルコール界面活性剤の例は、ダウ(Dow)からのテルギトール(Tergitol)15−Sシリーズ、およびユニケマ(Uniqema)からのブリッジ(Brij)界面活性剤である。ブリッジ(Brij)35界面活性剤は、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテルである。
【0055】
その他の適切な非反応性非イオン界面活性剤としては、約3〜約100モル、好ましくは約5〜約50モル、最も好ましくは約5〜約40モルのエチレンオキシドと、約6〜12個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖形状の1モルのアルキルフェノールとのポリエチレンオキシド縮合物よりなる群から選択されるものが挙げられるが、これに限定されるものではない。このような非反応性、非イオン界面活性剤の例は、ダウ(Dow)からのテルギトール(Tergitol)NPおよびトリトン(Triton)Xシリーズ、およびロディア(Rhodia)からのイゲパル(Igepal)COおよびCAシリーズである。テルギトール(Tergitol)NPおよびイゲパル(Igepal)CO界面活性剤は、ノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールを含む。トリトン(Triton)Xおよびイゲパル(Igepal)CA界面活性剤は、オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールを含む。
【0056】
使用可能な非反応性、非イオン界面活性剤の別のグループとしては、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドまたはブチレンオキシドのブロック共重合体よりなる群から選択されるものが挙げられるが、これに限定されるものではない。このような非イオンブロック共重合体界面活性剤の例は、BASFからの界面活性剤プルロニック(Pluronic)およびテトロニック(Tetronic)シリーズ、およびユニケマ(Uniqema)からの界面活性剤シンペロニック(Synperonic)シリーズである。
【0057】
さらに別の有用な、非反応性、非イオン界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、およびステアリン酸ポリオキシエチレンよりなる群より選択されるものが挙げられるが、これに限定されるものではない。このような脂肪酸エステル非イオン界面活性剤の例は、ユニケマ(Uniqema)からのスパン(Span)、ツイーン(Tween)、およびマージ(Myrj)界面活性剤である。スパン(Span)界面活性剤は、C12〜C18ソルビタンモノエステルを含む。ツイーン(Tween)界面活性剤は、ポリ(エチレンオキシド)C12〜C18ソルビタンモノエステルを含む。マージ(Myrj)界面活性剤は、ステアリン酸ポリ(酸化エチレン)を含む。
【0058】
有用な重合性、非イオン性界面活性剤は、典型的に(例えばウレタン結合を通じて)ポリエチレングリコール鎖の炭化水素基(例えばヘキシル、シクロヘキシル、ペンチル、またはオクチル)に付着する、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレートなどの重合性基を有する。メタクリレートまたはアクリレート部分(以下(メタ)アクリレートと記載)が炭化水素基部分と共に非極性疎水性末端を形成するのに対し、ポリエチレングリコール鎖は極性親水性末端を形成する。(メタ)アクリレート基の数、およびポリエチレングリコールまたは鎖の長さまたは数を変化させることで、多種多様な特性を有する界面活性剤を製造しても良い。必要に応じて(メタ)アクリレート基に加えて、脂肪酸などのその他の非極性基を組み込んで、さらにより疎水性の末端を提供しても良い。所望するならば、ポリエチレングリコール鎖をいくつかの短い鎖にさらに分断しても良い。
【0059】
有用な重合性、非イオン界面活性剤としては、例えば日本油脂(Nippon Oiland Fat)からのブレマー(Blemmer)シリーズ、および第一工業製薬(Dai−Ichi Kogyo Seiyaku)からのノイゲン(Noigen)シリーズの下に入手できる重合性非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0060】
有用なアニオン界面活性剤としては、例えばラウリン酸ナトリウム、ステアリンナトリウム、およびオレイン酸ナトリウムなどの脂肪族金属カルボン酸塩と、ナトリウムジオクチルスルホコハク酸などの硫酸化脂肪族金属カルボン酸塩と、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、およびオレイル硫酸ナトリウムなどの高級アルコール硫酸塩の金属塩と、エチレンオキシド付加物をラウリルアルコールで硫酸化して得られるエーテル硫酸ラウリルナトリウムなどの高級アルキルエーテル硫酸塩の金属塩と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸の金属塩と、硫酸とα−オレフィンとを反応させて合成されるα−オレフィンスルホン酸金属塩と、N−メチルタウリンとオレイン酸塩化物とを反応させて得られるイゲポン(Igepon)Tと、エアロゾルOTに代表されるスルホコハク酸ジエステルと、エチレンオキシドと高級アルコールの付加物のリン酸エステル塩と、ジチオリン酸エステル塩とが挙げられる。
【0061】
有用なカチオン界面活性剤としては、エチレンオキシドとステアリルアミンなどの高級アルキルアミンとの付加物、低級アミンから調製されるアミン、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムなどのアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウムなどのアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩に代表されるより高いアルキルアミンから調製される四級アンモニウム塩、サパミン(Sapamine)型四級アンモニウム塩、およびゼラン(Zelan)APおよびベラン(Velan)PFなどのピリジニウム塩に代表される低級アミンから調製される四級アンモニウム塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0062】
重合性カチオン界面活性剤の例としては、例えば塩化トリメチルアンモニウムメタクリロイルオキシエチルなどのメタクリロイルオキシアルキルアンモニウム塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0063】
両性界面活性剤の例としては、ナトリウムラウリルアミノプロピオネートおよびナトリウムステアリルアミノプロピオネートなどの高級アルキルアミノプロピオン酸の金属塩と、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタインおよびラウリルジヒドロキシエチルベタインなどのベタインとが挙げられる。
【0064】
界面活性剤は0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部、より好ましくは0.3〜5重量部の量で存在しても良い。
【0065】
本発明の好ましい実施態様は、溶剤を含む。溶剤の例としては、2〜10個のC元素を有する直鎖、分枝鎖または環式、飽和または不飽和アルコールと、ケトンと、エステルと、または2つ以上の前記タイプの溶剤の混合物とが挙げられるが、これに限定されるものではない。特に好ましいアルコール溶剤としては、メタノール、エタノール、イソ−プロパノール、およびn−プロパノールが挙げられる。その他の適切な有機溶剤としては、THF、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノール、トルエン、アルカンおよび酢酸アルキルエステル、そして特に酢酸エチルエステルが挙げられる。概して、上述の溶剤は単独で、または溶剤混合物が所望の結果が得られないほど接着特性、粘度および/または流動学的特性を損なわない限り、2つ以上の混合物として使用することが可能である。溶剤は0〜20重量部、好ましくは1〜15重量部、より好ましくは3〜10重量部の量で存在できる。
【0066】
歯科用組成物は、フッ化物剥離剤をさらに含んでなっても良い。有用なフッ化物剥離剤の例としては、フッ化ナトリウムなどの天然または合成フッ化物ミネラルと、フルオロアルミノケイ酸ガラスなどのフッ化物ガラスと、フッ化亜鉛カリウムおよびヘキサフルオロチタン酸カリウムなどの単純および複合無機フッ化物塩と、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロホウ酸などの単純および複合有機フッ化物塩と、またはそれらの組み合わせとが挙げられる。任意にこれらのフッ化物源は、表面処理剤で処理できる。任意にフッ化物剥離剤は、0〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部、より好ましくは0.3〜5重量部の量で存在できる。
【0067】
さらに非反応性、無機充填材が存在しても良い。非反応性無機充填材の例としては、石英、窒化物(例えば窒化ケイ素)、例えばCe、Sb、Sn、Zr、Sr、BaまたはAlから誘導されるガラス、コロイドシリカ、長石、ホウケイ酸ガラス、カオリン、滑石、チタニア、および亜鉛ガラス、ジルコニア−シリカ充填材などの天然または合成材料と、(特許文献31)に記載されるものなどの低モース硬度充填材と、サブミクロンシリカ粒子(例えばデグサ(Degussa)によって販売される「アエロシル(Aerosil)」シリーズ「OX50」、「130」、「150」、および「200」シリカなどの発熱性シリカ、およびカボット(Cabot Corp.)によって販売される「Cab−O−SilM5」シリカ)が挙げられる。好ましい充填材粒子は、石英、サブミクロンシリカ、および(特許文献32)に記載されるタイプの非ガラス質のミクロ粒子である。これらの充填材の混合物、ならびに有機および無機材料からできた組み合わせ充填材もまた考察された。
【0068】
任意に、充填材と重合性樹脂の間の結合を高めるために、シランカップリング剤などの表面処理で、充填材粒子の表面を処理しても良い。カップリング剤は、アクリレートおよび/またはメタクリレートなどの反応性キュアリング基で官能性付与しても良い。
【0069】
非反応性無機充填材は0〜70重量部、好ましくは5〜60重量部、より好ましくは10〜50重量部の量で存在できる。
【0070】
場合によっては、フッ化物剥離剤および充填材のフッ化物源は同一であることができる。
【0071】
任意に、例えばローズベンガル、メチレンバイオレット、メチレンブルー、フルオレセイン、エオシンイエロー、エオシンY、エチルエオシン、エオシンブルーイッシュ、エオシンB、エリトロシンB、エリトロシンイエローイッシュブレンド、トルイジンブルー、4’,5’−ジブロモフルオレセイン、およびそれらの配合物などの光退色着色剤が存在しても良い。光退色着色剤のさらなる例は、参照によって本明細書に編入する(特許文献33)にある。本発明の組成物の色は、増感化合物によってさらに与えられても良い。光退色着色剤の量は、0〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部、より好ましくは0.1〜2重量部であることができる。
【0072】
上述の任意の構成要素は、組成物中に単独で、またはその他の任意の構成要素との組み合わせで存在するかもしれない。
【0073】
別の好ましい実施態様では、本発明の組成物は、少なくともAおよびBの2つのパートのキットとして提供され、
パートAは、
(a)少なくとも1つのカルボン酸官能性ポリマー、および
(aa)0〜10重量%の水
を含んでなり、
別のパートBは、
(b)少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和基で置換された、酸度がカルボン酸官能性ポリマー(a)よりも高い少なくとも1つの酸誘導体、および
(bb)0.5重量%未満の水
を含んでなり、
カルボン酸官能性ポリマー(a)および酸誘導体(b)が少なくとも有効量で存在し、剪断速度0.5〜1s−1でプレート/プレート配置で測定すると、2つのパートの混合物が、別個のパートのそれぞれより高いずり減粘、および/または粘度を示す。
【0074】
好ましくはキットは、5:1〜1:5のA:B比、そして好ましくは1:4のA:B比で提供される、2つのパート、パートAおよびパートBで提供される。
【0075】
2つ以上の低粘度組成物を混合して、理想的にずり減粘を示す、より粘稠な組成物を得ることが有利である。この場合、それぞれの計量供給、混合、および塗布の容易さが、より堅牢で使いやすいシステムをもたらす。
【0076】
本発明の歯科用組成物は、特に歯科用充填材料を固着するための歯科用接着剤として、自己粘着性歯科用小窩および亀裂密封材として、自己粘着性歯科用脱感作剤として、および自己粘着性歯科用修復材料として使用できる。
【0077】
歯科用組成物は、例えば(特許文献34)、(特許文献35)、(特許文献36)などの先行技術で記載されるメタクリレート様材料をベースとする歯科用充填材を付着するために使用されても良い。
【0078】
意外にも本発明の歯科用組成物は、カチオン重合性樹脂ベースの歯科用充填材料を歯または骨に固定するのに使用できることが分かっている。特にエポキシ樹脂およびケイ素含有およびポリシロキサンエポキシドのようなカチオン重合性樹脂では、接着剤システムが必要であった。
【0079】
カチオン重合性樹脂ベースの適切な歯科用充填材料については、例えば(特許文献37)、(特許文献38)、(特許文献39)、(特許文献40)、(特許文献41)、(特許文献42)に記載される。上述の文献は明示的に言及され、それらの開示を参照によってここに編入する。
【0080】
本発明の歯科用組成物は、少なくとも現状技術の自己粘着性歯科用材料に比較できる接着強さを提供できる。さらにそれらは最適化された流動学的動態(例えばずり減粘)および/または粘度増大を示し、より良い取り扱いを提供し、歯科用充填材料を粘着固定するために塗布すると、貯留またはディウェッティング(dewetting)効果なしにより均質な接着剤フィルムを提供できる。さらにこれらの効果は、微粒子粘度調節剤(例えばヒュームドシリカ)を添加する必要なしに提供される。したがって一方では、これらの微粒子粘度調節剤を分散させるような費用のかかる製造ステップを回避でき、静置時の組成物の重力分離が除外できる。本発明の歯科用組成物が、少なくとも2つのパートのキットとして提供される場合、より低い粘度の2つ以上のパートを混合して所望の流動学的動態および/または粘度の組成物を得ることができるので、計量供給、混合、および塗布に関して明らかな利点を提供する。
【0081】
本発明の組成物は、通常、歯科用組織をエッチングしてプライム(prime)するのに十分な量で歯の表面に塗布される。この点において、以下のステップ、
a)組成物を好ましくはブラシまたはスポンジを使用して、歯の表面(エナメルおよび/または象牙質)に塗布するステップと、
b)任意に、組成物を好ましくは気流を使用して分散し、薄層フィルムを形成するステップと、
c)光または酸化還元により開始される組成物のキュアリングステップと、
d)任意に、組成物に隣接して歯科用充填組成物を塗布するステップ
が続く。
任意に、上述の1つ以上のステップを反復できる。
【0082】
組成物は、概して、例えばチューブ、またはフラスコなどのあらゆるタイプのパッケージで提供できる。しかし少量の液体の塗布のために、先行技術が塗布を容易にするいくつかの代案を開示する。例えば歯科用塗布のためには、(特許文献43)、(特許文献44)、(特許文献45)に記載されるものなどの複数チャンバーパッケージング装置が好ましい。
【0083】
歯科用組成物が少なくとも2つのパートで提供される場合、構成要素をパートに分割することで組成物の望ましくない反応が防止されるはずである。OH基を含んでなる構成要素は好ましくは1つのパートに、酸度がカルボン酸官能性ポリマーより高い酸誘導体(b)は別のパートに保存されるべきである。
【0084】
本発明の組成物は、通常、例えば撹拌または振盪によって構成要素を混合して調製される。
【0085】
下に記載するようにして測定された本発明の歯科用組成物のエナメル接着性は、通常2〜40MPaの範囲、好ましくは5〜35MPaの範囲、より好ましくは10〜30MPaの範囲である。
【0086】
下に記載するようにして測定された本発明の歯科用組成物の象牙質接着性は、通常2〜40MPaの範囲、好ましくは5〜35MPaの範囲、より好ましくは10〜30MPaの範囲である。
【0087】
下に記載するようにして測定された、剪断速度0.5s−1での本発明の歯科用組成物の粘度は、通常1〜20Pa・sの範囲、好ましくは1〜15Pa・sの範囲である。組成物が少なくとも2つのパートのキットとして提供される場合、パートの混合物の粘度は、好ましくはパート単独での粘度以上である。本発明の歯科用組成物の粘度−対−剪断速度動態は好ましくはずり減粘を示し、すなわち剪断速度が増大するに連れて粘度が低下する。
【実施例】
【0088】
以下の実施例によって、本発明についてさらに詳しく記載する。実施例は例証のみを目的とし、これらの実施例で記載するそれらの特定の材料および量、ならびにその他の条件および詳細は、本発明を不要に制限するものではない。特に断りのない限り、あらゆる部および百分率は重量を基準とし、あらゆる水は脱イオン水であり、あらゆる分子重量は重量平均分子重量である。
【0089】
略語
PM2:2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と五酸化リンとの反応生成物の混合物、日本化薬(Nippon Kayaku)からカヤマー(Kayamer)PM2として市販
PGDMA:グリセロールジ(メタクリレート)(GDMA)と五酸化リンとの反応生成物の混合物
DBSA:ドデシルベンゼンスルホン酸
SEMA:2−スルホエチルメタクリレート
MEMA:マレイン酸モノ(メタクリロイルオキシエチル)
AA:氷酢酸
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
TMHDI:2,4,4−トリメチルヘキシル−1,6−ジイソシアネート
PUMA:テゴ(Tego)(登録商標)ジオールBD−1000、TMHDI、およびHEMA((特許文献17)の調整実施例2を参照されたい)のステップ成長重合生成物
BisEMA:エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(分子あたり平均4つのエチレンオキシド単位)
BPDMA:ビスフェノールAジプロピルメタクリレート
VBP:(特許文献16)の実施例11の沈殿乾燥ポリマー
CPQ:カンファキノン
EDMAB:エチル4−ジメチルアミノベンゾエ−ト
DPIPF6:ヘキサフルオロリン酸ジフェニルヨードニウム
Brij35:ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル
MEHQ:ヒドロキノンモノメチルエーテル
BHT:ブチル化ヒドロキシトルエン
【0090】
試験方法
エナメルまたは象牙質への接着剪断結合強度の試験方法
以下の順に従って、特定の試験サンプルについてエナメルまたは象牙質への接着剪断結合強度を評価した。
【0091】
歯の調製。軟組織がないウシの切歯を円形アクリルディスクに包埋した。包埋歯を使用前まで冷蔵庫中で水中に保存した。接着試験のための調製において、宝石細工ホイールに取り付けた120グリットの紙やすりを使用して、包埋した歯を研磨してフラットなエナメルまたは象牙質表面を暴露した。320グリットの紙やすりを使用して、手動で歯表面のさらなる研磨およびポリッシュを行った。研磨加工中、歯を連続的に水洗した。ポリッシュされた歯を脱イオン水中に保存して、ポリッシュから2時間以内に試験に使用した。使用前に、歯を室温(23℃)と36℃の間に36℃のオーブン内で加温した。
【0092】
歯の処置。歯科用アプリケータブラシで、調製されたエナメルまたは象牙質表面の表面全体に接着試験サンプルを塗布して、中程度の指先の圧力で20秒間すり込んだ。次に動く液体が見られなくなるまで、圧搾空気のストリームを吹き付けた。ドイツ国ゼーフェルトの3M ESPE AG(3M ESPEAG、(Seefeld、Germany))からの歯科用キュアリングライト(エリパー(Elipar)TMトリライト(Trilight)、光強度:約800mW/cm)での10秒間の光キュアリング後、アプリケータブラシを再度接着剤で濡らし、すり込まずに第2の接着剤層を塗布した。この層を穏やかな気流で2秒間だけ薄く広げた。次にエリパー(Elipar)TMトリライト(Trilight)歯科用キュアリングライトで、接着剤コーティングを再度10秒間光硬化した。ほぼ4.7mm径の孔が開いた2.5mm厚のテフロン(登録商標)型を型中の孔が粘着性に調製された歯の表面部分を暴露するように、包埋した歯にクランプ固定した。複合材材料、すなわち(特許文献46)、ページ12で記載されるようなエポキシベースの充填材料、またはミネソタ州セントポールの3M ESPEデンタルプロダクツ(3M ESPE Dental Products(St.Paul、MN))からのA3色調のフィルテック(FILTEK)TMZ250汎用修復剤を、孔が完全に充填されるが充填過剰にならないようにして孔の中に充填し、エポキシベースの充填材料の場合は40秒間、FILTEKZ 250材料の場合は20秒間光硬化して、歯に粘着性に付着する「ボタン」を形成した。
【0093】
接着結合強度試験。ポリッシュされた歯の表面を引っ張り方向に平行に向けて、アセンブリー(上述の)をドイツ国ウルムのツウィック(Zwick GmbH、(Ulm、Germany))からのツウィック(Zwick)汎用試験器(Zwick Z010)のジョー内に固定されたホルダー内に取り付けて、硬化した試験実施例の接着強度を評価した。歯科矯正ワイヤ(0.71mm径)のループをポリッシュされた歯表面に隣接した複合材ボタンの周囲に配置させた。歯科矯正ワイヤの末端をツウィック(Zwick)装置の引っ張りジョー内に固定して、クロスヘッド速度2mm/分で引っ張ることにより、接着結合を剪断応力中に置いた。結合破損時の力をニュートン(N)で記録して、既知のボタンの表面積を使用してこの数を単位面積あたりの力(MPa)に変換した。エナメルへの接着性、または象牙質への接着性のそれぞれの報告値は、5回の反復試験の平均を表す。
【0094】
流動学的測定
粘度−対−剪断速度曲線。ニュージャージー州のボリーン・インストゥルメンツ(Bohlin Instruments、NJ)からのボリーン(Bohlin)CVO 120レオメータを使用して、23℃における制御剪断速度下のプレート/プレート配置で粘度を測定した。プレート径は40mmであり、プレートの間隔は200μmであった。剪断速度を0.5から1000s−1に増大させ、逆速度で1000から0.5s−1に低下させた。この剪断速度増大は、ラン毎に全部で20の対数的に間隔を開けた剪断速度ステップで、遅延時間10秒および積分時間10秒で10秒間毎に生じさせた(ランは剪断方向の増大および減少の双方として定義される)。
【0095】
実施例1〜43
パートAおよびパートBからなる歯科用組成物で、2つの溶液AおよびBを調製した。溶液Aは、HEMA(30部)、水(30部)、VBP(30.1部)、DPIPF6(4.9部)、ブリッジ(Brij)35(4.9部)、BHT(0.1部)からなる。酸(b)(表1に記載の量)、BisEMA(表1に記載の量)、CPQ(1.25部)、EDMAB(2部)、およびBHT(0.125部)からなる溶液B1〜43を調製した。
【0096】
双方のパートを1.000gの溶液B1〜43:0.250gの溶液Aの比率で、共に混合した。組成物の取り扱い特性および粘度試験として、得られた混合物をゲル形成について視覚的にチェックした。歯科用組成物の2つのパートAおよびBの混合によるゲル形成は、粘度増大および取り扱い特性改善を示唆する。表1では、「−」は可視的ゲル形成がないことを示し、「+」は可視的ゲル形成を示し、「++」は、強力なゲル形成を示す。望ましい粘度および流動学的特性を有する調合物は、「+」で示されるものである。
【0097】
比較例44〜47
比較例として、同一比率の溶液B44〜47と溶液Aで、溶液Aについては同一成分を含有する4つの混合物を調製した。溶液B44〜47は、酸としての氷酢酸(b)(表1に記載の量)、BisEMA(表1に記載の量)、CPQ(1.25部)、EDMAB(2部)、およびBHT(0.125部)からなる。
【0098】
【表1】


【0099】
実施例1〜43に見られるように、酸度がカルボン酸官能性ポリマーよりも高い酸誘導体のパートBへの添加は、混合物の粘度増大とゲル形成をもたらす。好ましくは酸誘導体は、少なくとも20部の量で存在する。酸度がカルボン酸官能性ポリマーよりも高い酸誘導体のパートB中の含量が80部を超えると、混合物の粘度が、歯科用組成物の最適な取り扱いには高くなりすぎる。比較例44〜47で使用された酢酸では、このようなゲル形成は見られなかった。
【0100】
実施例48/比較例49
溶液A、溶液B3、および溶液B45、および1部の溶液Aとそれぞれ4部の溶液B3およびB45との混合物について、剪断速度に対する粘度を上述のようにして測定した。結果を表2に示す。溶液A、B3、およびB45は、ニュートン動態を示したが、AとB3の混合物はずり減粘を示した。低剪断速度では、溶液AとB3の混合物は、それぞれの溶液よりも高い粘度を示した。
【0101】
この実施例は、本発明に従ったより低い粘度の2つの溶液の混合時に、ずり減粘を示すより高い粘度の組成物が得られることを実証する。溶液の計量供給および混合が容易になり、混合物の貯留が回避され、滑らかで均質なフィルムが得られるので、これは歯科用分野で使用するために非常に有益である。逆に溶液AとB45の混合物の比較例番号49では、このようなずり減粘は見られなかった。
【0102】
【表2】


【0103】
実施例50
溶液Aおよび溶液B26、および1部の溶液Aと4部の溶液B26の混合物で、上述のように剪断速度に対する粘度を測定した。結果を表3に示す。溶液AおよびB26がニュートン動態を示したのに対し、AとB26の混合物は剪断速度が増大するにつれてずり減粘を示した。低い剪断速では、混合物は溶液AおよびB26に対して粘度の強力な増大を示した。剪断速度低下の方向では粘度の増大が観察され、少なくとも部分的に可逆的なずり減粘が示唆された。
【0104】
この実施例はまた、本発明に従った粘度がより低い2つの溶液の混合時に、ずり減粘を示すより高い粘度の組成物が得られることを実証する。
【0105】
【表3】


【0106】
実施例51〜58
上述のようして、ウシ歯のエナメルおよび象牙質へのメタクリレートベースの複合材修復材料(FILTEK Z250)の接着固定を溶液Aと溶液B3、B6、B13、B16、B26、B29、B36、およびB39との1:4混合物で実施した。結果を表4に示す。
【0107】
【表4】


【0108】
実施例59
1:4の比率で、溶液Aと、PGDMA(50部)、PM2(25部)、TEGDMA(16.725部)、PUMA(4.900部)CPQ(1.250部)、EDMAB(2.000部)、BHT(0.125部)からなる溶液Cとを混合した。
【0109】
この組成物では、混合物で強力な粘度増大が得られたが、溶液AとCの混合は特に容易であった。したがって本発明の好ましい実施態様は、少なくとも1つのウレタン官能性付与化合物をさらに含有する。
【0110】
上述のようにして剪断速度に対する粘度を測定した。結果を表5に示す。溶液AおよびCの双方がニュートン動態示したのに対し、AとCの混合物は強力なずり減粘を示した。剪断速度低下の方向では粘度の増大が観察され、少なくとも部分的な可逆的ずり減粘が示唆された。
【0111】
【表5】


【0112】
実施例60〜61
上述の方法に従って、実施例59からの組成物で、メタクリレートベースの複合材修復材料(実施例60、FILTEK Z250)および(特許文献46)、ページ12で記載されているエポキシベースの充填材料(実施例61)の接着固定を実施した。エナメルおよび象牙質への接着強さを表6に示す。この混合物では、全ての基材上で、滑らかで均質なフィルムが容易に得られた。
【0113】
【表6】


【0114】
実施例62
HEMA(30部)、水(30部)、平均分子量Mw=12000のアクリル酸とマレイン酸の1:1共重合体(30.1部)、DPIPF6(4.9部)、ブリッジ(Brij)35(4.9部)、BHT(0.1部)からなる溶液Dを1:4の比率で溶液Cと混合した。
【0115】
この組成物は、溶液DおよびCとの混合時に、非常にわずかなゲル形成を示したが、溶液DおよびCに関して混合物では非常に強力な粘度の増大が得られた。上述のようにして剪断速度に対する粘度を測定した。結果を表7に示す。溶液DおよびCがニュートン動態を示したのに対し、混合物は強力なずり減粘を示した。剪断速度低下の方向では粘度の増大が観察され、少なくとも部分的な可逆的ずり減粘が示唆された。
【0116】
【表7】


【0117】
実施例63
上述の方法に従って、実施例62からの組成物で、(特許文献46)p.12で記載されるような、エポキシベースの充填材料の接着固定を実施した。エナメルおよび象牙質への接着強さを表8に示す。溶液DとCの混合物では、全ての基材上で滑らかで均質なフィルムが容易に得られた。
【0118】
【表8】


【0119】
実施例64〜68
実施例64〜65として、および比較例66〜68として、PGDMA(100部)と溶液Eの混合物を調製した。溶液E1〜5は、BisEMA(表9に記載の量)、HEMA(量に従った表9)、VBP(20部)、水(表9に記載の量)、DPIPF6(0.5部)、CPQ(0.5部)、EDMAB(0.5部)からなる。
【0120】
1gの溶液E1〜5と1gのPGDMAの比率で、溶液E1〜5を混合した。組成物の取り扱い特性および粘度の試験として、得られる混合物をゲル形成について視覚的にチェックした。2つのパートの歯科用組成物E1〜5とPGDMAの混合によるゲル形成は、粘度増大および取り扱い特性改善を示唆する。表9では、「−」は可視的なゲルが形成しなかったことを示し、「+」は可視的なゲル形成を示す。
【0121】
比較例について表9に見られるように、10%を超える水を含有する歯科用組成物は所望の粘度を示さない。
【0122】
【表9】


【出願人】 【識別番号】504169278
【氏名又は名称】スリーエム イーエスピーイー アーゲー
【出願日】 平成17年9月22日(2005.9.22)
【代理人】 【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩

【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二

【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子

【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂

【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄

【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁

【公開番号】 特開2006−89484(P2006−89484A)
【公開日】 平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願番号】 特願2005−276545(P2005−276545)