| 【発明の名称】 |
動脈瘤予防および/または治療剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】吉村 耕一
【氏名】青木 浩樹
【氏名】松崎 益徳
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| 【要約】 |
【課題】動脈瘤は破裂により死に至る臨床上重要な疾患であるが、侵襲的な外科的治療法のみが既存の唯一の治療法であったが、薬物的に瘤の発生または拡大を予防、あるいは瘤の退縮により破裂を阻止することができる動脈瘤予防用および/または治療用薬剤を提供する。
【解決手段】JNK阻害剤を有効成分とする動脈瘤予防および/または治療剤を提供する。詳しくは、JNKの活性化により、動脈壁の細胞外基質の分解促進と再生阻害が同時に生ずるという新知見に基づき、JNK阻害剤により、これらの諸因子を綜合的に是正し、延いては細胞外基質の崩壊を防止することにより、動脈瘤の発症、進展或いは破裂を予防し、進んで動脈瘤患者の生命予後の改善を図るものである。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 JNK阻害活性を有する物質を有効成分とする動脈瘤予防および/または治療剤。 【請求項2】 動脈瘤予防剤である場合、薬物的な瘤拡大抑制作用を有する物質を有効成分とすることを特徴とする請求項1の動脈瘤予防および/または治療剤。 【請求項3】 動脈瘤治療剤である場合、薬物的な瘤退縮作用を有する物質を有効成分とすることを特徴とする請求項1の動脈瘤予防および/または治療剤。 【請求項4】 動脈瘤が真性大動脈瘤と解離性大動脈瘤とを含む大動脈瘤である請求項1から3のうちいずれかに記載の動脈瘤予防および/または治療剤。 【請求項5】 動脈瘤が腹部大動脈瘤と胸部大動脈瘤を含む大動脈瘤である請求項1から4のいずれかに記載の動脈瘤予防および/または治療剤。 【請求項6】 前記物質が、JNK阻害活性を有する化合物またはその薬理学上許容される塩であり、それを有効成分とする請求項1から5のいずれかに記載の動脈瘤予防および/または治療剤。 【請求項7】 JNK阻害活性を有する化合物が、ピラゾロアントロン及びその誘導体から選ばれる請求項6に記載の動脈瘤予防および/または治療剤。 【請求項8】 前記物質が、JNK活性を阻害するペプチドまたは核酸である請求項1から5のいずれかに記載の動脈瘤予防および/または治療剤。 【請求項9】 前記物質を含有する医薬が、経口薬であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の動脈瘤予防および/または治療剤。 【請求項10】 前記物質を含有する医薬が、注射薬であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の動脈瘤予防および/または治療剤。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、注射投与あるいは経口投与等により、生体内で有効にJNK(c−Jun N−terminal kinase)の活性を阻害する物質を用いた、動脈瘤の予防および/または治療に関する。 【背景技術】 【0002】 虚血性心疾患や脳血管障害など血管病変を主体とする循環器疾患による死亡者数は増加の一途をたどっており、現在ではほぼ悪性腫瘍と並んで、わが国における病死原因の第1位となる勢いである。その中でも動脈瘤の罹患数は特に増加の傾向にある。動脈瘤は、大動脈や末梢動脈の動脈壁が脆弱化することにより形成される膨らみであり、壁全層が拡大する真性動脈瘤と血管壁が裂けて血管壁内に血液が流入することによって発生する解離性動脈瘤とが知られている。いずれも進行とともに瘤径が拡大し、放置すればいずれ破裂して死に至る疾患である。このように臨床上重要な疾患であるにもかかわらず、その生命予後の改善のためにでき得る現在唯一の治療方法は外科的治療(外科的切除あるいはステントグラフト留置等)である。しかしながら、手術自体患者への負担が大きく、手術の危険性が動脈瘤破裂の危険性を上回る場合もまれではないため、新たな動脈瘤低侵襲治療、特に薬物療法が望まれていた。 【0003】 動脈瘤は、動脈壁を構成している細胞外基質の分解亢進あるいは合成異常により動脈壁が脆弱化することによって発症し、進展、そして破裂に至ると考えられている。これまでに、細胞外基質の分解酵素の一群であるマトリックスメタロプロテアーゼ(以下、「MMP」という。)が動脈瘤の病態において重要であるとされ、動脈瘤の進展予防法としてMMP活性阻害物質も有効であろうと注目されていた。実際米国においてはMMP活性阻害薬を用いて治験が実施されたが、明らかな瘤の進展防止効果は確認されなかった(非特許文献1)。 【非特許文献1】J.Vascular Surgery 36:1−12項(2002) 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 動脈瘤は、放置すると次第に拡大し、やがて破裂して死に至る病気であり、破裂以前にはほとんど無症状である。したがって、「動脈瘤に対する有効な治療」とは、この破裂を防止し、生命予後を改善するに他ならない。また、破裂の危険性は瘤径が大きくなるほど高まってくる。このため瘤破裂の可能性がほとんどない小径動脈瘤に対しては、それ以上拡大しないような「拡大予防」効果をもつ薬剤が、治療効果をもつと考えられる。このような「拡大予防」効果をもつ薬剤は、動物実験レベルでは幾つか文献報告がみられる。しかしながら、径が大きく瘤破裂の可能性がある動脈瘤に対しては、「拡大予防効果」のみの薬剤では、破裂の可能性を軽減したことにならず治療効果をもつとは言えない。実際、発見時にはすでに破裂の危険性がある大きさに達していることが大半である。これらの径が大きい動脈瘤に対しては、瘤を退縮させ破裂の危険性を回避できてこそはじめて治療薬といえる。しかしながら、これまで瘤を薬物的に退縮することは非現実的とされ、薬物的な瘤退縮の報告は実験的にも皆無である。 【0005】 そこで、本発明は、動脈瘤の予防ならびに治療に有効な薬剤を用いた、動脈瘤の予防および/または治療を目的とする。より詳細には、本発明は、発生した動脈瘤に対する治療全般に関わり、薬物的に瘤の発生または拡大を予防、あるいは瘤の退縮により破裂を阻止することができる動脈瘤予防用および/または治療用薬剤の提供を目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者らは、c−Junアミノ末端キナーゼ(JNK)阻害活性を有する物質が動脈瘤予防および/または治療剤として有効であることを見出し、本発明を完成した。 【0007】 本発明は、JNK阻害活性を有する物質の、薬物的な瘤拡大抑制作用を用いる動脈瘤予防剤を要旨とする。 【0008】 本発明は、JNK阻害活性を有する物質の、薬物的な瘤退縮の作用を用いる動脈瘤治療剤を要旨とする。 【0009】 動脈瘤が真性大動脈瘤と解離性大動脈瘤を含む大動脈瘤であり、その場合、本発明は、JNK阻害活性を有する物質を用いる動脈瘤予防および/または治療剤を要旨とする。 【0010】 動脈瘤が腹部大動脈瘤と胸部大動脈瘤を含む大動脈瘤であり、その場合、本発明は、JNK阻害活性を有する物質を用いる動脈瘤予防および/または治療剤を要旨とする。 【0011】 JNK阻害活性を有する物質が、JNK阻害活性を有する化合物またはその薬理学上許容される塩であり、それを有効成分とする動脈瘤予防および/または治療剤を要旨とする。 【0012】 JNK阻害活性を有する化合物が、ピラゾロアントロン及びその誘導体から選ばれており、その場合、本発明は、ピラゾロアントロン及びその誘導体またはその薬理学上許容される塩を有効成分とする動脈瘤予防および/または治療剤を要旨とする。 【0013】 JNK阻害活性を有する物質が、JNK活性を阻害するペプチドまたは核酸であり、その場合、本発明は、JNK活性を阻害するペプチドまたは核酸を用いる動脈瘤予防および/または治療剤を要旨とする。 【0014】 本発明は、JNK阻害活性を有する物質を有効成分とする医薬が、経口薬であることを特徴とする動脈瘤予防および/または治療剤を要旨とする。 【0015】 本発明は、JNK阻害活性を有する物質を有効成分とする医薬が、注射薬であることを特徴とする動脈瘤予防および/または治療剤を要旨とする。 【発明の効果】 【0016】 本発明は、JNK阻害活性を有する物質を用いる動脈瘤予防および/または治療剤を提供することができる。JNKの活性化により細胞外基質の分解促進と再生阻害が同時に生ずるという病態機序に基づき、JNK阻害剤により、これらの諸因子を総合的に是正し、延いては細胞外基質の崩壊を防止することにより、動脈瘤の発症や拡大を予防し、或いは瘤を退縮せしめることができる。すなわち、JNK阻害剤により動脈瘤の破裂が根本的に防止でき、進んで動脈瘤患者の生命予後の改善を図ることができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0017】 本発明者らは、上記の技術的背景に鑑み、さらに有効な動脈瘤の予防を含めた治療用薬剤の開発を目指して培養実験系を用いた基礎的研究を重ねた結果、細胞外基質の代謝バランスを分解の方向に統合的に制御し、その多面的な作用の結果、動脈壁の脆弱化をもたらす鍵因子としてJNKを見出した。 【0018】 JNKは、c−Junのアミノ末端をリン酸化する酵素で、MAPキナーゼの一種であり、インターロイキン1(IL−1)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)等のサイトカインや紫外線照射、熱ショック、高浸透圧等の物理化学的なストレス刺激で活性化される酵素の一種である。JNKはまた、c−Junを構成遺伝子とする転写因子AP−1をリン酸化し、炎症に関与する遺伝子Cox−2等の発現をも誘導することが知られており、またアポトーシスに関与するとも考えられていたため、JNK阻害剤はこれらの研究に用いられていた(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:(24)13681−13686(2001)、特表2003−511071号公報)。しかしながら、JNK阻害剤の動脈瘤に対する効果については不明であった。 【0019】 本発明者らは、JNKが活性化すると、複数のMMP酵素群、リポカリン2、誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)やIL−1等の発現が亢進され、その結果、主な細胞外基質分解系であるMMP−9活性が著しく亢進すること、MMP抑制因子(TIMP−3)が減少すること、さらにそれのみならず、JNKの活性化は同時に、プロコラーゲンや細胞外基質合成に必須の酵素群(リジン水酸化酵素、リジン酸化酵素あるいはプロリン水酸化酵素)の発現を抑制し、細胞外基質の合成系を統合的に抑制することを培養実験系の検討からつきとめた。 【0020】 すなわちJNKは動脈壁において細胞外基質代謝のバランスを分解の方向に統合的に制御する主要な因子であると考えられる。 【0021】 一般に血管壁の構造の破壊にはMMPを始めとする多くの蛋白分解酵素が関与しているとされ、動脈瘤の場合、特にMMP−9が重要でることがPyoらの実験(J.clin.Invest.105:1641−1649(2000))により示されている。また、臨床サンプルを用いたThompsonらの実験結果(J.clin.Invest.96:318−326(1995))やMcMillanらの解析結果(Circulation 96:2228−2232(1997))から、ヒトの動脈瘤組識にも多くのMMP−9が認められることが明らかとなっている。一方、細胞外基質の分解系のみならず、合成系の異常が動脈瘤の病態に関与していることも考えられる。O’Donnellらによると高脂血症マウスにリジン酸化酵素阻害剤を投与して合成系を抑制すると大動脈瘤が発症した(Circulation 108:(supplement IV),IV−252(2003))。また本発明者らが、動脈瘤モデルマウスにリジン酸化酵素を遺伝子導入して合成系を回復すると大動脈瘤の拡大が抑制された。 【0022】 本発明者らはこれらの新知見を基にして、JNK阻害が生体においても培養実験系と同様に細胞外基質代謝バランスの異常を是正するか否か、さらにはJNK阻害剤の投与が動脈瘤の予防または治療のための薬物療法として有用か否かを複数の動脈瘤動物モデルにおいて検討し、本発明を完成するに至った。 【0023】 本発明は、JNKの活性を阻害することにより、前記のとおりリポカリン2、iNOS、IL‐1或いはMMP‐9など動脈壁を構成する細胞外基質の崩壊を助長する因子の働きを統合的に阻害し、且つプロコラーゲンおよび細胞外基質合成に必須な酵素群(リジン水酸化酵素、プロリン水酸化酵素及びリジン酸化酵素)の発現の是正により動脈壁の細胞外基質合成能を回復させるものである。 【0024】 したがって本発明においては、JNKの活性を阻害することが、直接的に動脈壁の細胞外基質代謝バランスを改善し、動脈瘤の予防および/または治療に有効であり、注射投与あるいは経口投与等により、生体内で有効にJNKの活性を阻害する物質を用いるかぎり、薬物的なJNK阻害手段は特に制限されない。 【0025】 本発明でいうJNKは、JNK1、JNK2およびJNK3を含み、これらJNK1、JNK2およびJNK3の3種類の遺伝子には、それぞれコードされたいくつかのアイソフォームが存在することが知られている。本発明におけるJNK阻害とは、これらアイソフォームに特異的な阻害と非特異的な阻害の両方を含むものである。 【0026】 本発明でいう動脈瘤には、通常、動脈瘤といわれる病態を全て含むものである。 動脈瘤はその発生部位、その原因、またはその形状により様々に分類され、例えば、発生部位による分類としては、胸部大動脈瘤や腹部大動脈瘤を含む大動脈瘤、脳動脈瘤や腎動脈瘤などの内臓動脈瘤または末梢動脈に発生する瘤等が挙げられる。壁構造によっては、真性動脈瘤、解離性動脈瘤、仮性動脈瘤等に分類される。原因による分類としては、動脈硬化性動脈瘤、炎症性動脈瘤、先天性動脈瘤、外傷性動脈瘤または細菌性動脈瘤、真菌性動脈瘤、梅毒性動脈瘤に代表される感染性動脈瘤等が挙げられる。形状による分類としては、嚢状動脈瘤と紡錘状動脈瘤等が挙げられるが、本発明は特に限定されない。 【0027】 動脈瘤の予防とは、動脈瘤の瘤破裂の可能性がほとんどない小径動脈瘤に対して、それ以上の拡大を阻止する「拡大予防」のほかに、血管壁の脆弱化を防ぎ動脈瘤の発生を防ぐこともその予防に含まれる。さらには、発生予防または拡大予防によって達成される破裂の予防も含まれる。したがって、広義の動脈瘤治療には予防も含まれる。 本発明でいう動脈瘤治療とは、狭義の動脈瘤治療であり、すでに破裂の可能性を有する動脈瘤を退縮あるいは消失させることにより破裂の危険性を回避する動脈瘤の根本的治療を意味する。 【0028】 本発明において、JNK阻害活性を有する物質としては、既知のJNK阻害活性を有する化合物またはその薬理学上許容される塩、既知のJNK活性を阻害するペプチドまたは核酸が例示される。 【0029】 上記のJNK阻害活性を有する化合物は次の一般式(1)ないし(13)で示される化合物からなる群から選択される少なくとも一の化合物が例示される。 【0030】 一般式(1) 【化1】
[但し、上記式中、R1とR2は、それぞれ同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ニトロ基、三フッ化メチル基、スルホニル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキル基、シクロアルキルアルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシ基、アミノアルコキシ基、モノまたはジアルキルアミノアルコキシ基、または次の(a)、(b)、(c)、または(d)の式で示されるグループのいずれかである。 【0031】 【化2】
(上記Rはアルキル基、R3とR4は末端が連結したアルキリデンまたはヘテロ原子を含むアルキリデン、或いは、それぞれ同一または異なり、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリールオキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアミノ基、またはアルコキシ(モノまたはジーアルキルアミノ)基を表し、R5は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、モノまたはジーアルキルアミノ基、アリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、またはシクロアルキルアルキルアミノ基を表す。)] 【0032】 一般式(2) 【化3】
[但し、上記式中、R1は非置換または置換化アリール基またはヘテロアリール基であり、R2およびR3はそれぞれ同一または異なり、水素原子または、低級アルキル基であり、R4は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、低級アルキル基および低級アルコキシ基であり、R5およびR6はそれぞれ同一または異なり、水素原子または、アルキル基、非置換または置換化アリール基である。] 【0033】 一般式(3) 【化4】
[但し、上記式中、R1、R2は水素原子、低級アルキル基および低級アルコキシ基、Xは、O、S、またはNHであり、Gは、非置換または置換化ピリミジニル基である。] 【0034】 一般式(4) 【化5】
[但し、上記式中、Ar1及びAr2は、互いに独立して、非置換または置換化アリール基またはヘテロアリール基であり、R1は水素原子または低級アルキル基であり、nは、0から5の整数であり、X1はOまたはSであり、Yは、少なくとも一のヘテロ原子を含む非置換若しくは置換化4−8員ヘテロ環、非置換または置換化アリール基またはヘテロアリール基である。] 【0035】 一般式(5) 【化6】
[但し、上記式中、R1、R2は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、低級アルキル基および低級アルコキシ基である。] 【0036】 一般式(6) 【化7】
[但し、上記式中、X−Y−Zは以下の式のいずれかから選択される; 【0037】 【化8】
R1、R2、およびR3は、互いに独立して、水素原子、低級アルキル基、シクロアルキル基、非置換または置換化アリール基、アリールアルキル基であり、Gは非置換または置換化アリール基、ヘテロアリール基であり、Q−NHは下記の式である; 【0038】 【化9】
(上記式中、AはNであり、UはO、S、またはNHである)] 【0039】 式(7) 【化10】
【0040】 一般式(8) 【化11】
[但し、上記式中、R1、R2およびR3は独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、非置換または置換化アリール基またはヘテロアリール基であり、XはNまたはCHである。] 【0041】 一般式(9) 【化12】
[但し、上記式中、R1は、非置換または置換化アリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールオキシ基、または置換されたヘテロアリールオキシで置換された低級アルキルであり、R2およびR3は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、非置換または置換化アリール基またはヘテロアリール基であり、Xは、NまたはCHであり、zで示した点線の結合は随意である。] 【0042】 一般式(10) 【化13】
[但し、上記式中、R1、R2、R4およびR5は独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、非置換または置換化アリール基またはヘテロアリール基であり、L−X−YはNH−CO−Rであり、Rは、非置換または置換化アリールアルキル基またはヘテロアリールアルキル基である。] 【0043】 一般式(11) 【化14】
[但し、上記式中、R1、R2、R4およびR5は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、非置換または置換化アリール基またはヘテロアリール基であり、R3は、Xと一緒になって、完全に飽和した5〜7員環を形成しており、前記環中の各飽和炭素は、=Oまたは=Sで任意に、且つそれぞれ別個にさらに置換されている。Yは、CHあるいはNであり、nは1である。] 【0044】 一般式(12) 【化15】
[但し、上記式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、非置換または置換化アリール基、シクロアルカン基またはヘテロアリール基であり、Xは1から3個の炭素を有する結合またはアルキル架橋であるか、HETCyと一緒になって、完全に飽和した5〜7員環を形成しており、Yは−NHであり、HETCyは、少なくとも1個のN原子を含有している4〜6員のヘテロアリール基である] 【0045】 一般式(13) 【化16】
[但し、上記式中、R7はアルキレンチオアルキル基またはアルキレンアルキルエーテル基、R8、R9はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基またはアルコキシアルキル基である。] 【0046】 上記に例示される一般式で示される化合物の内、特に有効なJNK阻害剤となる具体的化合物の例を、それぞれ対応する番号を付して、次の式(1)〜(13)で示す。 【0047】 【化17】
【0048】 【化18】
【0049】 【化19】
【0050】 【化20】
【0051】 【化21】
【0052】 【化22】
【0053】 【化23】
【0054】 これらの化合物のうち、一般式(1)で示される化合物は特に効果が優れており、特に予防又は治療用として注射薬等が望ましい。前記式(2)で示されるアニリノピリミジン誘導体は注射薬としても使用可能であるが、特に経口薬として有効に使用できるため、治療用は勿論、動脈瘤予防薬として優れた有用性が期待できる。前記式(3)及び式(4)で示される化合物は、特に経口薬として有効である。 【0055】 式(1)で表されるピラゾロアントロン骨格を有するアントラピラゾール−6−オンは、製品名SP600125として市販されており、ATPに対する競合的な阻害作用により、IL‐1で刺激された細胞で、AP‐1の転写活性の抑制、ヒト末梢血単核細胞で、Cox‐2、IL‐2、IFN‐α、TNF‐αの炎症性遺伝子の発現を阻害する目的や、関節炎モデル動物で、MMPの発現と骨の破壊を抑制するため或いはLPSで誘導されるTNF‐αの発現を抑制し、アポトーシス抑制のために使用されている。 【0056】 本発明で使用される化合物は、その薬理学上許容される塩であってもよく、塩基性化合物の場合は例えばカルボン酸、スルホン酸等の有機酸、硫酸、塩酸、鉱酸等との塩が、酸性化合物の場合は例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、有機塩基等との塩が挙げられる。カルボン酸、スルホン酸等の有機酸としては、例えば酢酸、アジピン酸、安息香酸、クエン酸、フマール酸、アスパラギン酸、乳酸、リンゴ酸、パルミチン酸、サリチル酸、酒石酸、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、トルエンスルホン酸が、鉱酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属、有機塩基等としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。 【0057】 本発明で使用される化合物は光学活性体、あるいはラセミ体、ジアステレオマー、あるいはジアステレオマーの混合物、個々のエナンチオマーからエナンチオマーの混合物までを全て包含するものである。また、置換基の結合位置等は特に限定しない限り、結合可能な位置異性体すべてを含む。更に、水和物等の溶媒和物、溶媒和物の互変異性体等のように様々な多形も本発明で使用される化合物に含まれる。 【0058】 本発明における上記一般式で表される一連の化合物群は、それぞれ引用する公開公報、国際公表公報において開示された製造法によって製造されるが、それらの方法に限定されるものではない。 【0059】 本発明においてJNK阻害活性を有する物質として上記一般式で表される一連の化合物が用いられる場合は、単独または溶解剤、増量剤、賦形剤あるいは担体と混合して注射剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、貼付剤、軟膏剤、スプレー剤、溶液剤、徐放剤等の製剤とし、賦形剤または担体等の添加剤としては薬剤学的に許容されるものが選ばれ、その種類および組成は投与経路や投与方法によって決まる。例えば注射剤の場合、一般に食塩、グルコ−ス、マンニト−ル等の糖類が望ましい。経口剤の場合、でんぷん、乳糖、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム等が望ましい。 【0060】 投与経路は、経口的若しくは注射剤あるいは外用剤等により非経口的に全身性に投与される他、軟膏剤、溶液剤、貼付剤やスプレー剤等により病変部あるいは病変部近傍局所に直接投与する、カテーテル等により病変部あるいは病変部近傍に遠隔的に投与する、ステントやグラフトあるいは一体化させたステントグラフトに薬剤を結合させ、病変部あるいは病変部近傍に留置することにより徐放性に投与する方法等が選ばれる。動脈瘤予防剤としては、特に経口投与が好ましい。動脈瘤治療剤としては、その破裂の危険度によって、経口剤のみならず注射剤あるいは薬剤結合ステントグラフト等も望ましい。 【0061】 製剤中における本化合物の含量は製剤により種々異なるが通常0.001〜100重量%、好ましくは0.01〜98重量%である。例えば注射剤の場合には、通常0.001〜30重量%、好ましくは0.01〜10重量%の有効成分を含むようにすることがよい。経口剤の場合には、添加剤とともに錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤、ドライシロップ剤等の形態で用いられる。カプセル剤、錠剤、顆粒、散剤は一般に0.1〜100重量%、好ましくは1〜98重量%の有効成分を含む。投与量は、患者の年令、体重、症状等により決定されるが、治療量は一般に、非経口投与で0.001〜10mg/kg/日、経口投与で0.01〜100mg/kg/日である。溶液で用いる場合は、1〜1000nMの濃度で用いる。 【0062】 本発明において、JNK阻害剤を有効成分とする動脈瘤の予防剤又はその治療剤を注射薬とする場合には、人体に無害な溶液として用いればよいが、好ましい一態様は、ポリエチレングリコール(分子量300〜500程度)30%、プロピレングリコール20%、15%クレモフォルイーエル、5%エタノール、30%生理食塩水のエマルジョン化溶液として用いることができる。 【0063】 また、本発明は、JNK阻害剤として、JNK活性を阻害するペプチドまたは核酸等を用いることができる。 治療剤としては、以下が挙げられる:例えば、(i)JNKインヒビターペプチドならびにその誘導体、フラグメント、アナログおよびホモログの任意の1つ以上;(ii)JNKインヒビターペプチドならびにその誘導体、フラグメント、アナログおよびホモログをコードする核酸;(iii)JNKに対して指向される抗体のすべてまたは抗原認識部位を含むフラグメントまたはこれらをコードする核酸、(iv)JNKをコードする配列に対するアンチセンス核酸または干渉RNAおよびこれらをコードする核酸、ならびに(v)モジュレーター(すなわち、インヒビター、アゴニストおよびアンタゴニスト)。 【0064】 上記JNK活性を阻害するペプチドまたは核酸の具体例として、例えば、 c−Jun N−terminal Kinase Peptide Inhibitor 1,L−stereoisomer(L−JNKI 1, ALEXIS社,Nat.Med.9:1180−1186(2003))、c−Jun N−terminal Kinase Peptide Inhibitor 1,D−stereoisomer(D−JNKI 1,ALEXIS社,Nat.Med.9:1180−1186(2003))JNKアンチセンスオリゴヌクレオチド(J.Biol.Chem.272:33422−33429(1997))、JNK干渉RNA(J.Biol.Chem.279:40112−40121(2004))、ドミナントネガティブJNK(J.Biol.Chem.274:32580−32587(1999))及びJNKinteracting protein−1(JIP−1,Science.277:693−696(1997))等を挙げることができる。 【0065】 本発明のJNKインヒビター、ペプチド、融合ペプチドおよび核酸は、薬学的組成物中で処方され得る。これらの組成物は、上記の物質のひとつに加えて、薬学的に受容可能な賦型剤、キャリア、緩衝剤、安定化剤または当業者に周知の他の材料を含み得る。そのような材料は、非毒性であるべきであり、そして活性成分の効力に干渉すべきではない。キャリアまたは他の材料の正確な性質は、投与経路に依存し得る(例えば、経口、静脈内、皮膚または皮下、経鼻、筋肉内、腹腔内またはパッチ経路等)。 【0066】 経口投与のための薬学的組成物は、錠剤、カプセル、散剤または液体形態であり得る。錠剤は、固形キャリア(例えば、ゼラチンまたはアジュバント)を含み得る。液状薬学的組成物は、概して、液体キャリア(例えば、水、動物油、植物油または合成油)を含む。生理食塩水溶液、デキストロースまたは他の糖溶液もしくはグリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコール)もまた含まれ得る。 【0067】 静脈内、皮膚または皮下の注射、あるいは罹患部位への注射のために、活性成分は、非経口的に受容可能な水溶液またはエマルジョン液の形態であり、これは、発熱物質を含まず、そして適切なpH、等張性および安定性を有する。関連分野の当業者は、例えば、等張性ビヒクル(例えば、生理食塩注射液、リンゲル注射液、乳酸リンゲル注射液)を用いて適切な溶液を調製し得る。保存剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤および/または他の添加物もまた、必要に応じて含まれ得る。 【0068】 本発明においてはJNK阻害剤を有効成分とする薬剤を用いることにより動脈瘤の予防および/または治療が可能になるのであり、該薬剤はJNK阻害作用を有する化合物を、製薬的に許容可能な担体、希釈剤、あるいは賦形剤と組み合わせてなる組成物、あるいはより多くの他の作用剤をさらに含む組成物の形態であってよく、その使用の態様は特に問題とはならず、該薬剤は注射や内服など体内に取り込む手段は特に制限されない。 【0069】 以下に、前記式(1)で表されるピラゾロアントロン骨格を有するアントラピラゾール−6−オン化合物(SP600125(トクリス社製:ピラゾールアントロン))についての実施例を示す。 【実施例1】 【0070】 塩化カルシウム処置マウス動脈瘤モデルによるJNK阻害実験 [方法]Longoらの方法(J.clin.Invest.110:625−632(2002))に準じてマウスにおいて塩化カルシウム処置による腹部大動脈瘤モデルを作製した。即ち、7週齢のC57BL/6雄マウスを開腹し、腎動脈下腹部大動脈を、0.5M塩化カルシウムを浸透させた綿花で15分間処理した後に閉腹した。この処置により10週目までに徐々に拡大する瘤が作成される。シャム手術群は、生理食塩水で処置した。塩化カルシウム処置後のマウスには、JNK阻害薬SP600125(トクリス社製:ピラゾールアントロン)(SP群)または溶解液のみ(対照群)を連日皮下注射した。SP600125は、Bennettらの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:13681−13686(2001))に準じて、溶解液(30%ポリエチレングリコール‐400、20%ポリプロピレングリコール、15%クレモフォルイーエル、5%エタノール、30%生理食塩水)で最終濃度4.2mg/mlに用事調整し、60mg/kg/日の投与量を一日二回連日皮下注射した。術後10週間飼育した後に犠牲死させ、腎動脈下腹部大動脈の最大径を計測するとともに大動脈を摘出し組織学的に解析した。 【0071】 [結果]術後10週目の大動脈径は、シャム手術群(8匹);0.68±0.12mm,対照群(9匹);1.10±0.24mm,SP群(8匹);0.74±0.16mmであった。塩化カルシウムで処理された対照群の大動脈径はシャム手術群に比べ有意に増加しており動脈瘤が形成されていた。JNK阻害薬であるSP600125を連日投与したSP群では、投与しなかった対照群と比べて有意に大動脈径が小さくシャム手術群と同等であり、動脈瘤形成が著しく抑制された(フィッシャー検定によりp<0.01)。また、塩化カルシウムで処理された対照群の大動脈壁では、中膜の菲薄化、弾性線維の破壊といったヒトの腹部動脈瘤に特徴的な所見が組織学的に観察された。一方、SP群では、壁構造がシャム手術群と同等によく保たれており組織学的にも動脈瘤形成が阻止されていた。 【実施例2】 【0072】 アポEノックアウトマウス動脈瘤モデルによるJNK阻害実験 [方法]Daughertyらの方法(J.clin.Invest.105:1605−1612(2000))に準じてアポEノックアウトマウスにアンジオテンシンIIを持続投与することにより腹部大動脈モデルを作製した。即ち、24週齢のアポEノックアウト雄マウスにミニ浸透圧ポンプ(Alzet社)を植え込み、アンジオテンシンII(1μg/min/kg)を持続注入した。このモデルマウスは高脂血症、高血圧とさらに大動脈の著明な動脈硬化を伴っており、4週間のアンジオテンシンII注入により主に腎動脈上大動脈に瘤形成がみられ、一部のマウスは動脈瘤破裂を来して死亡することから、臨床でみられるヒトの動脈瘤に極めて良く似た病状を示すモデルである。アンジオテンシンII持続注入開始と同時に、JNK阻害薬SP600125(SP群8匹)またはJNK阻害薬なし(対照群16匹)の連日皮下注射を開始した。SP600125の投与方法は上記実施例1と同様とした。4週間目に、超音波診断装置を用いて腹部大動脈の最大径を計測した。 【0073】 [結果]アンジオテンシンII注入4週目の大動脈径は、対照群;1.55±0.19mm、SP群;1.29±0.18mmであった。JNK阻害薬SP600125を連日投与したSP群では、投与しなかった対照群と比べて大動脈径が小さく、動脈瘤形成が有意に抑制された(t検定によりp<0.05)。また、アンジオテンシンII注入開始後5週目までに一部のマウスは腹部大動脈瘤破裂や解離性大動脈瘤を発症して死亡し、累積生存率は対照群;62.5%に対しSP群;87.5%でありSP群の方が高い生存率を示した。 【実施例3】 【0074】 塩化カルシウム処置マウス動脈瘤モデルにおけるJNK阻害薬による動脈瘤治療・退縮実験 [方法]Longoらの方法(J.clin.Invest.110:625−632(2002))に準じて塩化カルシウム処置によるマウス腹部大動脈瘤モデルを作製した。即ち、7週齢のC57BL/6雄マウスを開腹し、腎動脈下腹部大動脈を0.5M塩化カルシウムを浸透させた綿花で15分間処理した後に閉腹した。カルシウム処置後6週目まで飼育した後、ランダムに3群に分けた。6週群は、カルシウム処置後6週目に犠牲死させ、腹部大動脈の最大径を計測した。他の2群では、カルシウム処置後6週目からJNK阻害薬SP600125(SP群)または溶解液のみ(対照群)を連日皮下注射した。SP600125および溶解液の投与方法は上記実施例1と同様とした。SP群と対照群はカルシウム処置後12週目(注射開始後6週目)に犠牲死させ、腹部大動脈の最大径を計測した。 【0075】 [結果]6週群(9匹)の腹部大動脈最大径は、1.29±0.16mmで正常径の2倍程度に拡大した瘤の形成が確認された。対照群(9匹)とSP群(9匹)の大動脈最大径は、それぞれ1.18±0.19mm、0.85±0.18mmであり、SP群では、対照群と比べて有意に大動脈径が小さかった(t検定によりp<0.01)。(図1参照) このことから、JNK阻害薬であるSP600125の治療効果が、瘤が形成された後からの投与において証明された。さらに、SP群の径は、6週群よりも有意に小さかった(t検定によりp<0.01)。このことから、カルシウム処置動脈瘤モデルにおけるJNK阻害薬SP600125の瘤退縮効果が証明された。 【実施例4】 【0076】 アポEノックアウトマウス動脈瘤モデルにおけるJNK阻害薬による動脈瘤治療・退縮実験 [方法]Daughertyらの方法(J.clin.Invest.105:1605−1612(2000))に準じてアポEノックアウトマウスにアンジオテンシンIIを持続投与することにより腹部大動脈モデルを作製した。即ち、24週齢のアポEノックアウト雄マウスにミニ浸透圧ポンプ(Alzet社)を植え込み、アンジオテンシンII(1μg/min/kg)を4週間持続注入した。このモデルマウスは高脂血症、高血圧とさらに大動脈の著明な動脈硬化を伴っており、アンジオテンシンII注入により腹部大動脈に瘤形成がみられ、一部のマウスは動脈瘤破裂を来して死亡することから、臨床でみられるヒトの動脈瘤に極めて良く似た病状を示すモデルである。4週間のアンジオテンシンII注入終了後に超音波診断装置を用いて腹部大動脈瘤の内腔径を計測し、この計測値から均等に2群に分けた。群分け後直ちに、JNK阻害薬SP600125(SP群)または溶解液のみ(対照群)の連日皮下注射を開始した。SP600125および溶解液の投与方法は上記実施例1と同様とした。注射開始後8週間目に、超音波診断装置を用いて腹部大動脈瘤の瘤径を再計測した。 【0077】 [結果]アンジオテンシンII注入終了後、注射開始前に計測した大動脈瘤径は、対照群(5匹);1.14±0.17mm、SP群;1.18±0.16mmであり、2群間に同等の瘤が存在していた。JNK阻害薬SP600125を連日投与したSP群では、8週間の注射後の瘤径が0.98±0.16mmとなり、注射開始前に比べて有意に縮小していた(t検定によりp<0.05)。注射前後での縮小率は、SP群で17±10%であったが、対照群では0±13%であり、2群間に有意差が確認された(t検定によりp<0.05)。(図2参照) 以上の結果から、ヒトの動脈瘤により近いアポEノックアウトマウス動脈瘤モデルにおいてもJNK阻害薬SP600125の瘤治療・退縮効果が証明された。 【実施例5】 【0078】 培養細胞におけるJNK阻害ペプチドの効果 [方法]JNK阻害ペプチドの効果を検証するため、動脈瘤の病態において重要と考えられているMMP‐9を指標として、培養細胞系実験を行った。細胞は、ヒト動脈瘤で主にMMP‐9を発現するマクロファージ細胞(THP‐1)を用いた。即ち、培養THP‐1細胞にあらかじめ異なる濃度(0、1、2、5μM)のJNK阻害ペプチドD‐JNKI1(ALEXIS社)を投与した。コントロールペプチドとしてD‐TAT(ALEXIS社)を用いた。ペプチド投与後24時間目に炎症性サイトカインであるTNF‐α 50ng/mlで刺激し、さらに48時間後に培養液を回収して、培養液中に分泌されたMMP‐9量をゼラチンザイモグラフィー法で定量解析した。 【0079】 [結果]培養THP‐1細胞は、TNF‐α刺激によって顕著なMMP‐9分泌を示した。D‐JNKI1は、TNF‐αによるMMP‐9分泌を濃度依存性に抑制した。同濃度のコントロールペプチドD‐TATでは、MMP‐9の抑制効果は認められなかった。(図3参照) 【産業上の利用可能性】 【0080】 本発明は、動脈瘤拡大抑制のための予防用薬剤、あるいは動脈瘤退縮のための治療用薬剤として内服用、外用又は注射の全身的投薬あるいはステントグラフト等を利用した局所投与に用いる薬剤となる。 【図面の簡単な説明】 【0081】 【図1】塩化カルシウム処置マウス動脈瘤モデルにおけるJNK阻害薬による動脈瘤治療・退縮実験の結果を示すグラフである。 【図2】アポEノックアウトマウス動脈瘤モデルにおけるJNK阻害薬による動脈瘤治療・退縮実験の結果を示すグラフである。 【図3】培養細胞におけるJNK阻害ペプチドの効果の結果を示すグラフである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】304020177 【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
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| 【出願日】 |
平成17年2月14日(2005.2.14) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2006−89455(P2006−89455A) |
| 【公開日】 |
平成18年4月6日(2006.4.6) |
| 【出願番号】 |
特願2005−35769(P2005−35769) |
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