| 【発明の名称】 |
2型糖尿病治療剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】福田 元
【氏名】友田 ▲あき▼夫
【氏名】吉武 紀子
【氏名】高橋 友乃
【氏名】田中 彰彦
【氏名】小田原 雅人
【氏名】金澤 真雄
【氏名】能登谷 洋子
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| 【要約】 |
【課題】血管新生を抑制する2型糖尿病治療剤を提供する。
【解決手段】 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 式1 【化1】
(ここで式1中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4の低級アルキル基、炭素原子数1〜4のアシル基及び炭素原子数1〜4のアシルオキシ基からなる群から任意に選択される)で表される2-アミノフェノキサジン-3-オン誘導体又は薬理学的に許容される塩若しくはエステルを有効成分として含有する2型糖尿病治療剤。 【請求項2】 R1、R2が水素原子である、請求項1に記載の2型糖尿病治療剤。 【請求項3】 R1がメチル基であり、かつR2が水素原子である、請求項1に記載の2型糖尿病治療剤。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、2型糖尿病治療剤に関する。 【背景技術】 【0002】 糖尿病は、1型糖尿病と2型糖尿病に大きく分類される。1型糖尿病とは、膵臓のランゲルハンス島にありインスリンを分泌する細胞であるβ細胞が減少し、インスリンがほとんど分泌されなくなることで発症する糖尿病をいう。一方、2型糖尿病は成人に多い糖尿病で、インスリン作用の相対的な不足のために細胞内でブドウ糖を十分に処理できない結果発症する糖尿病である。1型糖尿病及び2型糖尿病の治療において問題となる点は、糖尿病による血管合併症の進展である。日本における糖尿病患者の9割以上は、2型糖尿病である。2型糖尿病は、若年発症の多い1型糖尿病と比較して、高血圧、高脂血症を併発していることが多く、また高血糖状態の持続により細小血管症又は大血管障害を生じる危険度が高い。2型糖尿病者の死因は心筋梗塞、脳卒中などの血管障害が多いが、我国では、糖尿病性腎症による腎不全が増加の傾向にある。 【0003】 1型糖尿病の治療にはインスリンの投与が有効であるのに対して、2型糖尿病は、その病態の主体がインスリン抵抗性のため必ずしもインスリン投与が有効でない。そのため、経口血糖降下薬として、スルホニル尿素薬、速効型インスリン分泌促進薬、α−グルコシダーゼ阻害薬、ビグアナイド薬、インスリン抵抗性改善薬の5タイプの薬剤が投与されることが多い。しかしながら、いずれの薬剤も、糖尿病による血管新生を抑制し、合併症としての大血管障害の進行、および動脈硬化への移行を夫々阻止するには程遠い。 【0004】 一般に、血管新生を伴う動脈硬化病変の進展時には血管構造の再構築が生じ、血管中膜では、筋層を形成している血管平滑筋細胞が本来の形質である収縮型から、分裂、迷走を活発に行う分泌型へと形質変換(phenotypic modulation)を来たし、平滑筋細胞の増殖、内膜への浸潤、ひいては中膜肥厚をもたらす。また、内膜では血管内皮細胞の壊死又は脱落、増殖、遊走や細胞外基質(extracellular matrix protein)増多が生じる。分泌型への形質変換の際に増加することが報告されている蛋白に、ミオシン重鎖のアイソフォームであるSMemb(embryonic form of myosin heavy chain)が知られている。本来は、胎児期の血管新生時に平滑筋細胞にて観察され成人には通常見られない蛋白である。しかし、動脈硬化病変の進展時には病変の局所においてその発現量が増加していることが報告されている。この物質が血管平滑筋細胞のみなならず血管内皮細胞においても発現し、高血糖環境で増加する。 【0005】 糖尿病では、血液中にグルコースが高濃度となり、血管内皮細胞が活性化されて血管新生を生じ、引き続き動脈硬化へと進展していく。血管新生を阻害することは、糖尿病の重大な合併症である血管障害と動脈硬化への進行を阻止することを意味する。 【0006】 血管新生(angiogenesis)とは、元々存在する血管から新しい血管を形成することをいう。血管新生そのものは病気ではない。事実、規則的な血管新生は通常の生理的な現象である。例えば、黄体形成時の排卵への反応でも生じるもので、成人の外傷が完全に治癒するために必要なものである。しかし、2型糖尿病においては持続的な高グルコース血症のために血管新生が進行し、糖尿病の重大な合併症である血管障害や動脈硬化症の進展へと移行する。なお、血管新生が問題となる疾患としては癌又はリウマチなどであるが、下記に示す疾患も問題となることがある。 【0007】 血管(血管線維種、アテローム硬化型プラーク、動静脈奇形、血管癒着)、皮膚(肉芽、血管種、ケロイド、早老、乾癬、発熱性肉芽種、強皮症、いぼ)、骨・関節(出血性関節、非結合骨折、リウマチ様関節炎、変形性関節症)、生殖器系(卵胞嚢胞、卵巣肥大症候群、多嚢胞卵巣)、眼(加齢性黄班変性症、糖尿病性網膜症、新生血管緑内障、角膜移植の新生血管、トラコーマ)、肺(肺気腫(MMP群、慢性気管支炎)、その他(肥満症)。 【0008】 ところで、フェノキサジン誘導体である、2-アミノフェノキサジン-3-オン誘導体は、癌細胞に対して強い抗腫瘍活性を示すことが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。また、2-アミノフェノキサジン-3-オンは、グラム陽性菌であるチモテ菌(Mycobacteriumphlei)、ヒト型結核菌BCG(Mycobacterium tuberculosis BCG)、ヒト型結核菌H-2(Mycobacteriumtuberculosis H-2)、真菌であるペニシリウム・クリソゲヌム(Penicillium chrysogenum)、モニリア・フォルモサ(Moniliaformosa)、酵母であるシゾサッカロミセス・アクトスポラス(Schizosaccharomycesactosporas)に対して効果のあることが知られている(下記、非特許文献1参照)。 【0009】 【特許文献1】特開平02−193984号公報(第4頁左下欄、第2−7行) 【特許文献2】特許第3290172号明細書(第5頁左欄、第32−40行) 【非特許文献1】Kentaro Anzai ら、TheNewAntibiotics, Questiomycins A and B、The JournalofAntibiotics、Ser. A. Vo. XIII, No. 2、第125−132頁、1960年5月。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 本発明は、2型糖尿病治療剤を提供することを目的とする。特に、血管新生の抑制を介して、高血糖によっておこる血管障害の進行を阻止する2型糖尿治療剤を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明は、式1 【化2】
(ここで式1中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4の低級アルキル基、炭素原子数1〜4のアシル基及び炭素原子数1〜4のアシルオキシ基からなる群から任意に選択される)で表される2-アミノフェノキサジン-3-オン誘導体又は薬理学的に許容される塩若しくはエステルを有効成分として含有する2型糖尿病治療剤を提供する。 【0012】 好ましくは、R1、R2が水素原子である、2-アミノフェノキサジン-3-オンである。 【0013】 好ましくは、R1がメチル基でありかつR2が水素原子である、2-アミノ-4,4α-ジヒドロ-4α,7-ジメチル-3H-フェノキサジン-3-オンである。 【発明の効果】 【0014】 2-アミノフェノキサジン-3-オン誘導体、並びにそれらの薬理学的に許容される塩及びエステル(以下、本発明の化合物という)は、2型糖尿病治療作用を有する。すなわち、本発明の化合物は、血管内皮細胞の増殖と進展を抑制することにより糖尿病の重大な合併症である血管障害の進行を阻止するので、2型糖尿病治療剤として有効である。 【発明を実施するための最良の形態】 【0015】 本発明の2型糖尿病治療剤は、式1で表される2-アミノフェノキサジン-3-オン誘導体又はそれらの薬理学的に許容される塩若しくはエステルを有効成分として含む。 【0016】 【化3】
【0017】 式1中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4の低級アルキル基、炭素原子数1〜4のアシル基及び炭素原子数1〜4のアシルオキシ基からなる群から任意に選択され、好ましくは水素原子、炭素原子数1〜3の低級アルキル基、炭素原子数1〜3のアシル基及び炭素原子数1〜3のアシルオキシ基からなる群から任意に選択される。好ましくは、R1がメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシ基、エトキシ基、メトキシメチル基、エトキシメチル基から選択され、R2がメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシ基、エトキシ基、メトキシメチル基、エトキシメチル基から選択される。好ましくは、R1、R2が水素原子である。好ましくは、R1がメチル基かつR2が水素原子であり、あるいはR1がエチル基かつR2が水素原子である。 【0018】 本発明の2型糖尿病治療剤で使用しうる塩は、例えば無機塩として、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;銅塩、亜鉛塩などの金属塩類;有機塩として、ジエタノールアミン塩、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール塩、トリエタノールアミン塩などのアルカノールアミン塩;モルホリン塩、ピペラジン塩、ピペリジン塩などのヘテロ環アミン塩;アンモニウム塩、アルギニン塩、リジン塩、ヒスチジン塩などの塩基性アミノ酸塩を挙げることができる。ここで、塩基性アミノ酸は、D−体、L−体或いはこれらの混合物であってもよい。 【0019】 本発明の2型糖尿病治療剤で使用しうるエステルとしては例えば、蟻酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステルを挙げることができる。 【0020】 式1で表される化合物は、好ましくは特許第3290172号公報、特開平02-193984号公報に記載の方法に従い製造されるが、これらに限定されない。 【0021】 詳細には、2-アミノフェノキサジン-3-オン誘導体の合成法としては、2-アミノ-5-メチルフェノールをヒトのヘモグロビンの存在下で、37℃で3日にわたり反応させる方法(AkioTomodaら、Phenoxazinone synthesis by human hemoglobin、Biochimica et Biophysica Acta、第1117巻、第306-314頁、1992年)、2-アミノ-5-メチルフェノールをウシのヘモグロビンの存在下で、37℃で5日にわたり反応させる方法(Akio Tomodaら、An Improved Method for the Rapid Preparation of 2-Amino-4,4α-dihydro-4α,7-dimethyl-3H-phenoxazine-3-one,a Novel Antitumor Agent、Bioorganic & chemistryLetters、 第11巻、第1057-1058頁、2001年)、フェリシアン化カリウムを触媒とする化学合成法(特許第3290172号公報)に従い製造されるが、これらに限定されない。 【0022】 下記実施例1では、30μM 以上の濃度の2-アミノフェノキサジン-3-オンを添加した群で、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(human umbilical vein endothelial cells、HUVECs、倉敷紡績株式会社、東京)の細胞増殖度が低下した。しかしながら、10μM濃度の2-アミノフェノキサジン-3-オン添加ではHUVECsの増殖度の低下は全くみられておらず、2-アミノフェノキサジン-3-オンを添加しない場合とほぼ同じレベルであった。従って、実施例2以降では10μM濃度の2-アミノフェノキサジン-3-オンの存在下で、この化合物のHUVECsに対する作用を検討した。 【0023】 下記実施例2では、2-アミノフェノキサジン-3-オンによって、胎児型ミオシン重鎖アイソフォームであるSMemb(embryonic form of myosin heavy chain)のmRNA、高血糖の際に血管内皮細胞から分泌亢進されるET-1(endothelin-1)及びPAI-1(plasminogenactivator inhibitor-1)のmRNAの発現が、HUVECsにおいて夫々抑制された。これらSMemb、ET-1及びPAI-1のmRNAは、血管内皮細胞の増殖が進展するときの指標となる。従って、2-アミノフェノキサジン-3-オンによって、これらの因子のmRNAの発現が抑制されることは、血管内皮細胞の機能が抑制され、血管内皮細胞の増殖によって引き起こされる血管新生が抑えられることを意味する。さらに、この血管新生を抑制することは、糖尿病の重大な合併症である血管障害と動脈硬化への進行を阻止することを意味する。 【0024】 下記実施例3では、2-アミノ4,4α-ジヒドロ-4α,7-ジメチル-3H-フェノキサジン-3-オンは、胎児型ミオシン重鎖アイソフォームSMembのmRNAの発現を、HUVECsにおいて抑制した。 【0025】 下記実施例4では、2-アミノフェノキサジン-3-オンは、高グルコースによっておこるHUVECsの遊走促進を強く抑制した。血管内皮細胞の遊走は、血管新生に際して特徴的な現象である。従って、本結果から2-アミノフェノキサジン-3-オンは、高血糖によって惹起される血管内皮細胞の遊走を抑制し、血管新生を阻止する作用を有すると判断される。 【0026】 下記実施例5では、高濃度のグルコース添加により、HUVECs細胞内にSMembタンパク質が高濃度に合成されること、及び合成物Iすなわち2-アミノフェノキサジン-3-オンの添加により、SMembタンパク質の合成量が抑制されることが示された。このことは、実施例2において2-アミノフェノキサジン-3-オン添加により、HUVESs細胞内のSMembのmRNA合成量が抑制されたことと良く一致しており、2-アミノフェノキサジン-3-オンが高血糖によって惹起される血管内皮細胞の機能の亢進を抑制し、血管過剰再生を抑える作用を有していることを示す。 【0027】 このように、本発明者らは、HUVECsを用いて、SMemb、ET-1及びPAI-1に対応するmRNAの発現量が高血糖環境で増加し、一方、2-アミノフェノキサジン-3-オンの添加によって正常値に近い値あるいはそれ以下になることを確認した。また、SMembタンパク質の合成量も2-アミノフェノキサジン-3-オンの添加により抑制されることが明らかとなった。該結果より、2-アミノフェノキサジン-3-オンは、糖尿病状態における血管内皮障害とそれに続く血管過剰再生に対して効果があるといえる。また、2-アミノフェノキサジン-3-オンは、動脈硬化病変の進展を阻止できる可能性が示唆された。 【0028】 さらに、2-アミノフェノキサジン-3-オンは血管過剰再生に対して抑制効果が認められることから、2型糖尿病治療薬だけでなく、癌血管新生抑制剤、膠原病性血管炎に伴う血管新生の抑制剤としても使用することが可能である。 【0029】 本発明の2型糖尿病治療剤で使用しうる塩は、例えば無機塩として、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;銅塩、亜鉛塩などの金属塩類;有機塩として、ジエタノールアミン塩、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール塩、トリエタノールアミン塩などのアルカノールアミン塩;モルホリン塩、ピペラジン塩、ピペリジン塩などのヘテロ環アミン塩;アンモニウム塩、アルギニン塩、リジン塩、ヒスチジン塩などの塩基性アミノ酸塩を挙げることができる。ここで、塩基性アミノ酸は、D-体、L-体或いはこれらの混合物であってもよい。 【0030】 本発明の2型糖尿病治療剤で使用しうるエステルとしては例えば、蟻酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステルを挙げることができる。 【0031】 本発明の2型糖尿病治療剤は、医薬的に許容される担体又は添加物を共に含むものであってもよい。このような担体及び添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などの他、リポゾームなどの人工細胞構造物などが挙げられる。使用される添加物は、本発明の剤形に応じて上記の中から適宜又は組み合わせて選択される。 【0032】 本発明の2型糖尿病治療剤は、一般的な医薬製剤の形態として用いられうる。該製剤には、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤などの希釈剤、或いは賦形剤を配合することができる。本発明の剤は、各種の形態が治療目的に応じて選択でき、その代表的なものとして、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、液剤、懸濁剤などの注射剤が挙げられる。 【0033】 錠剤の形態に成形する担体としては、医薬的に許容される各種の担体又は添加物を含むことができる。このような担体及び添加物の例として、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、塩化ナトリウム、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸などの賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドンなどの結合剤;乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖などの崩壊剤;白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油などの崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤、グリセリン、デンプンなどの保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸などの吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコールなどの滑沢剤を使用できる。さらに錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠或いは二重錠、多層錠とすることができる。 【0034】 丸剤の形態に成形するに際しては、担体としてこの分野で従来公知のものを広く使用できる。その例としては、ブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルクなどの賦形剤;アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノールなどの結合剤;ラミナラン、カンテンなどの崩壊剤を使用できる。 【0035】 カプセル剤は、常法に従い、通常有効成分化合物を上記で例示した各種の担体と混合して硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセルなどに充填して調製される。 【0036】 坐剤の形態に成形するに際しては、担体として従来公知のものを広く使用できる。その例としては、ポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、半合成グリセライドなどを挙げることができる。 【0037】 注射剤として調製される場合、液剤、乳剤及び懸濁剤は予め殺菌処理され、かつ血液と等張であるのが好ましい。これらの形態に成形するに際しては、希釈剤としてこの分野において慣用されているものをすべて使用できる。例えば、水、エタノール、マクロゴール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類などを使用できる。なお、この場合等張性の溶液を調製するに充分な量の食塩、ブドウ糖またはグリセリンを医薬製剤中に含有せしめてもよく、また通常の溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤などを添加してもよい。 【0038】 本発明の2型糖尿病治療剤は、経口的投与することができる。この場合は、それに適用される錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤などの固形製剤、あるいは液剤、シロップ剤などの液体製剤等とすればよい。特に顆粒剤及び散剤は、カプセル剤として単位量投与形態とすることができ、液体製剤の場合は使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。 【0039】 これら2型糖尿病治療剤のうち経口用固形剤は、通常それらの組成物中に製剤上一般に使用される結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤などの添加剤を含有する。また、経口用液体製剤は、通常それらの組成物中に製剤上一般に使用される安定剤、緩衝剤、矯味剤、保存剤、芳香剤、着色剤などの添加剤を含有する。 【0040】 本発明の2型糖尿病治療剤の使用方法は、特に制限はなく、各種製剤形態、患者又は使用者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度などに応じた方法で使用される。例えば錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤の場合には、経口投与される。また注射剤の場合には単独で又はブドウ糖、アミノ酸などの通常の補液と混合して静脈内投与され、更に必要に応じて単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与される。坐剤の場合には直腸内投与される。 【0041】 本発明の2型糖尿病治療剤の使用量は、用法、対象となる使用者又は患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度などにより適宜選択されるが、通常有効成分である本発明の剤の量が成人1日当たり0.1〜2,000mg程度、好ましくは0.5〜1,800 mg程度、特に好ましくは1.0〜1500 mg程度とするのがよく、1日1〜4回に分けて、例えば空腹時に投与することができる。 【0042】 以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。 【0043】 [実施例] [製造例1] 2-アミノフェノキサジン-3-オンの合成 100 mLの50 mM濃度のオルトアミノフェノール(東京化成工業株式会社製)溶液(0.1規定水酸化ナトリウム水溶液でpH 7.0に中和したもの)を1Lのウシヘモグロビン溶液に添加し十分に攪拌した後、37℃、6日間放置した。6日後に、該反応液に対して5Lの100%メタノールを添加し、ヘモグロビンとタンパク質とを変性させた。変性したヘモグロビンとタンパク質は遠心分離器(SCR-20BS型、株式会社日立製作所)で遠心分離し(10,000 x g、5分)、上澄みを得た。この上澄みを回収したのち、ロータリーエバポレーター(NE型、東京理化器械株式会社製)を用いて、水とメタノールを蒸発させ濃縮した。残った粉末に対して、300mlの100%メタノールを加え、溶解させた。この溶解液を、50%エタノールで予め膨潤させて平衡化したセファデックスLH-20樹脂(アマルシャム・ファルマシア・ジャパン株式会社製)を充填したカラム(内径7cmx高さ30cm)に付し分離精製を行った。溶出は、50%エタノール(容量/容量)で行い、一定時間毎に分画した。第3番目に出てくる分画(赤褐色)部分を回収した。この分画を再びエバポレータで濃縮し、粉末を得た。該粉末に対して、50mlの100%メタノールを加え完全に溶解させた。この溶解液を、50%エタノールで予め膨潤させて平衡化したセファデックスLH20樹脂を充填したカラム(内径4cmx高さ50cm)に付し分離精製を行った。溶出は、50%エタノール(容量/容量)で行い、一定時間毎に分画した。赤褐色の分画を回収し、この分画を再びエバポレータで濃縮し、赤褐色の粉末約3.5g(合成物I)を得た。この粉末のUV、IR、1H-NMR(270 MHz)、13C-NMR(50.3 MHz)の各データ値を、標品の2-アミノフェノキサジン-3-オンのそれらと比較することにより、該粉末は2-アミノフェノキサジン-3-オンであると同定された。 【0044】 [製造例2] 2-アミノ-4,4α-ジヒドロ-4α,7-ジメチル-3H-フェノキサジン-3-オンの合成 246mgの2-アミノ-5-メチルフェノール(粉末、東京化成株式会社製)を、20mLの蒸留水に加えた。引き続き90mLの塩酸水溶液(0.1規定)を添加し、2-アミノ-5-メチルフェノールを完全に溶解した。90mLの水酸化ナトリウム水溶液(0.1規定)を、該溶液に少しずつ滴下し、pH7.0まで中和した。直ちに該溶液を良く攪拌混合しながら、0.165重量%のフェリシアン化カリウム水溶液(330mgのフェリシアン化カリウム(粉末、和光純薬株式会社製)を200mLの水に溶解)200mLを、前記溶液に少しずつ滴下した。フェリシアン化カリウムを滴下した水溶液を充分攪拌した後、25℃にて30分間放置し、反応をおこなった。引き続き、該水溶液中の溶媒を、減圧下、真空エバポレータで処理することにより除去した。100mLの99.9%メタノールを残査物に添加し、目的とする褐色物質を抽出し、引き続き該メタノール縣濁溶液を遠心分離器にて遠心(3000回転、10分間)することにより、上清のメタノール溶液を回収した。続いて該濃縮液を下記処理をしたセファデックスLH-20が充填されたカラムカラムクロマトグラフィーに付した。セファデックスLH−20の担体を、あらかじめ50%エタノール水溶液で十分に膨潤、平衡化し、内径5cm、高さ30cmのオープンカラムに充填した。前記濃縮液を、セファデックスLH-20が充填されたカラムカラムクロマトグラフィーに付した後、50%エタノール水溶液で溶出し、分画した。黄褐色を有するフラクションを回収し、該フラクションの溶媒を減圧下留去した。引き続き、前記得られたフラクションをメタノール溶液に溶解し、さらにセファデックスLH−20が充填されたカラムカラムクロマトグラフィーに付し(内径2.5cm、高さ30cmのオープンカラム、その他の条件は前記と同じである。)、黄褐色を有するフラクションを回収し、該フラクションの溶媒を減圧下留去した。フラクション中の得られた化合物の純度は薄層クロマトグラフィーにより確認した(逆層、Rf値 0.5、展開溶媒 クロロホルム:アセトン=4.5:1.5(容量:容量))。その結果、茶褐色の粉末100mg(合成物II)を得た。この粉末のUV、IR、1H-NMR(270MHz)、13C-NMR(50.3 MHz)の各データ値を、標品の2-アミノ-4,4α-ジヒドロ-4α,7-ジメチル-3H-フェノキサジン-3-オンのそれらと比較することにより、該粉末は2-アミノ-4,4α-ジヒドロ-4α,7-ジメチル-3H-フェノキサジン-3-オンであると同定された。 【実施例1】 【0045】 2-アミノフェノキサジン-3-オンがHUVECsの増殖に与える影響の測定 HUVECsを、2%胎児ウシ血清(FBS、インビトロジェンジャパン株式会社)と10 μg/l ヒト組換え型上皮成長因子を含むHUVECs増殖用低血清培養液EGM-2(倉敷紡績株式会社、東京)に浮遊させた。この浮遊させたHUVECsを、5枚の96穴マイクロプレート(旭テクノロジー株式会社製)の各穴に5000個/1穴の割合で添加した。ただし、5枚の96穴マイクロプレートは、各々0時間、4時間、8時間、12時間、16時間培養した試料の分析用に用い、1枚の96穴マイクロプレートでは、以下に述べる3つの実験群を設定した。 これらの96穴マイクロプレートに含まれるHUVECs を、5% 炭酸ガス存在下、37℃にて24時間培養した。この時点でマイクロプレートの各穴に分けられた細胞について、最終濃度5mMグルコース(正常グルコース群)、最終濃度15mMグルコース(高濃度グルコース群)、最終濃度15mMグルコース+種々の濃度の2-アミノフェノキサジン-3-オンを各々添加した3つの実験群に分けた。これら各実験群を調整した後、各々の細胞をさらに16時間、37℃にて培養を行った。なお、2-アミノフェノキサジン-3-オンを添加した群には、HUVECsを含む培養液に対して最終濃度が15mM濃度になるようにグルコースと、最終濃度が10μM(□)、30μM(■)、100μM(△)及び300μM(▲)になるように2-アミノフェノキサジン-3-オンとを夫々添加した。 これらの実験群のHUVECs を含む96穴マイクロプレートを4時間ごとに取り出し、細胞増殖度の測定に用いた。また、2-アミノフェノキサジン-3-オンは、製造例1で製造した2-アミノフェノキサジン-3-オンを10mM濃度になるようにジメチルスルフォキサイドに溶解し、EGM-2培養液で希釈したものを使用した。 細胞増殖は、WST-8(株式会社同仁化学研究所、熊本)を用いるマイクロカルチャーテトラゾリウム法により検定した。すなわち、cell counting Kit-8(株式会社同仁化学研究所)を、HUVECsを含む96穴マイクロプレートの各穴に10μlずつ添加し、3.5時間反応させた。次に、マイクロプレートリーダー(Spectra Max190型、モレキュラーデバイシーズ社製、米国)を用いて、生成されたホルマザンの量を吸光度450nmにて測定し、細胞増殖の程度を検定した。 【0046】 その結果を図1に示す。縦軸は、HUVECsの細胞計数の変化(%)を示し、横軸は時間(hour)を示す。各ポイントは、平均値(n=5)である。 最終濃度5mMグルコース(○)、最終濃度15mMグルコース(●)、最終濃度15mMグルコース及び10μM 2-アミノフェノキサジン-3-オン(□)の細胞増殖度の変化はほぼ同じであり、そのレベルは時間経過してもほとんど変化しない。一方、最終濃度15mMグルコース及び30μM 2-アミノフェノキサジン-3-オン(■)、最終濃度15mMグルコース及び100μM 2-アミノフェノキサジン-3-オン(△)、最終濃度15mMグルコース及び300μM 2-アミノフェノキサジン-3-オン(▲)を添加した試料については、経時的に細胞増殖度が抑制された。 10μM 濃度の2-アミノフェノキサジン-3-オンの添加では、HUVECsの増殖度はほとんど影響されないことが示されたことから、以降の実施例では10μM濃度の2-アミノフェノキサジン-3-オンを添加して検討を行った。 【実施例2】 【0047】 2-アミノフェノキサジン-3-オンが、HUVECsの細胞内におけるSMemb、ET-1、PAI-1の mRNAの変動に与える影響の測定 各mRNAの変動の測定は(1)細胞から全RNAを分離し、SMemb、ET-1、PAI-1のmRNAに対するcDNAを作成する段階と、(2)作成したcDNAをリアルタイムPCR(polymerase chain reaction、RT-PCR)法により一定時間増幅し、生成されたcDNA量を定量する段階とに分けられる。これらの方法によりHUVECs内のmRNAの量が定量的に推定できる。 HUVECsを、2% FBSと10 μg/l ヒト組換え型上皮成長因子を含むHUVECs増殖用低血清培養液EGM-2に浮遊させた。このHUVECsを3つの細胞培養用フラスコ(25cm2、イワキ株式会社、東京)に、各々1 x 106個の割合で添加し、5% 炭酸ガス存在下、37℃にて24時間以上培養した。培養細胞がフラスコ内で80% 密度に到達した時点で、最終濃度5mMグルコース(正常グルコース群)、最終濃度15mMグルコース(高濃度グルコース群)、最終濃度15mMグルコース+10μM 2-アミノフェノキサジン-3-オン(高濃度グルコース+合成物I群)を各々のフラスコに加えて、3つの実験群とした。各実験群の細胞をさらに8時間、37℃にて培養を行った。これらの実験群のHUVECsのmRNAの変動について以下の分析を行った。 【0048】 (1)全RNAの分離とcDNAの作成 全RNAを、TRIzol(商標)試薬(インビトロジェン株式会社)を用いてHUVECsより抽出した。この抽出液にクロロホルムを添加した後、試料を遠心分離し、水層と有機溶媒層とに分け、水層を別の1.5ml遠心管に回収した。この水層部分にイソプロピルアルコールを1ml添加し全RNAを沈殿させて回収した。さらに、このRNAをDEPC(diethylpyrocarbonate)処理水に懸濁させて、260 nmでの吸光度で定量を行った。RNA試料の純度は、260 nmと280 nmにおける吸光度の比で検定した。 4 μgのRNAをSuperscriptII (商標)システム(インビトロジェン株式会社)によるcDNA合成に使用した。すなわち、RNAをオリゴ(dT)プライマーに添加し70℃にて10分間処理した。逆転写反応は、SuperscriptII逆転写酵素を添加し、42℃で 55 分間反応を行うことで、完了させた。合成されたcDNA産物は、−20℃にて保存した。このcDNA産物を以下に記載のリアルタイムPCR法にて増幅した。 【0049】 (2)リアルタイムPCR SMemb、ET-1及びPAI-1に特異的なプライマーを用いて、リアルタイムPCRを行った。リアルタイムPCRは、SYBR(商標)Green 1を含むDyNAmo(商標)SYBR(商標) Green qPCR kit(エムジェイジャパン株式会社、東京)を用いて、Opticon2(商標)プログラム(エムジェイジャパン株式会社、東京)で施行した。反応は、96穴マイクロプレート中で行った。反応溶液には、10μlの2×DyNAmo(商標)試薬液、0.5 μl のforward とreverseの(10 μmol/l)プライマーを含む液、8μl の蒸留水および1 μl のcDNA テンプレートを含む液が含まれている。SMemb、ET-1、PAI-1およびβ-アクチンに対するプライマーは、Primer 3 software (WhiteheadInstitute、ケンブリッジ、マサチューセッツ州、米国)を使用してデザインした。SMembのmRNAに対する特異的なforwardプライマーとreverse プライマーの塩基配列は、各々5'-AGAGGAGGCAATACAGTGG-3' と5'-TGGAGAGCCTTAAGACACAG-3' であった。また、ET-1のmRNAに対するforward プライマーとreverseプライマーの塩基配列は、各々5'-TCCTCTGCTGGTTCCTGACT-3'と 5'-CAGAAACTCCACCCCTGTGT-3'であった。また、PAI-1の mRNAに対するforward プライマーとreverseプライマーの塩基配列は、各々5'-CCCACTTCTTCAGGCTGTTC-3'と5'-CCGTTGAAGTAGAGGGCATT-3'であった。リアルタイムPCRによる標的産物の増幅は、95℃で10分間の1サイクル、そして95℃で10秒、59℃で30秒および72℃で30秒の39サイクルの条件でおこなった。PCR産物が特異的に増幅されたか否かを確認するために、PCRを終了する際に、融解温度(melting temperature;Tm)の検定を行った。本実験に用いたプライマーのPCR産物のTm値は、SMemb、ET-1、PAI-1に関しては各々80℃、81℃、82℃であった。 【0050】 (3)mRNA濃度の定量 mRNA濃度は、標準用cDNAテンプレートを希釈して作成した標準曲線を用いて、サンプルのサイクル数(Ct値、Cycle Threshold)から計算しmRNA濃度を定量した。なお、mRNA濃度は、β-アクチンを内部標準として用い、β-アクチンのmRNAに対する相対濃度として示した。β-アクチンのforward およびreverseプライマーの塩基配列はそれぞれ5'-CCTCTATGCCAACACAGTGC-3'および5'-CATCGTACTCCTGCTTGCTG-3' であった。 【0051】 結果を図2−1〜図2−3に示す。図2−1は、HUVECs内におけるSMembのmRNAの変動を示す。図2−2は、HUVECs内におけるET-1のmRNAの変動を示す。図2−3は、HUVECs内におけるPAI-1のmRNAの変動を示す。 図2−1において、高濃度グルコース+合成物I(2-アミノフェノキサジン-3-オン)群におけるSMembのmRNA量は、高濃度グルコース群のそれの24%であり、正常グルコース群と比べてもそのmRNA量は有意に低い。 図2−2において、高濃度グルコース+合成物I群におけるET-1のmRNA量は、高濃度グルコース群のそれの約69%であり有意に低い。 図2−3において、高濃度グルコース+合成物I群におけるPAI-1のmRNA量は、高濃度グルコース群のそれの約57%であり有意に低い。 【0052】 以上の結果より、2-アミノフェノキサジン-3-オンは、HUVECsのSMemb、ET-1、PAI-1に対応するmRNA合成量を抑制することから、血管内皮細胞の機能を抑制し、血管新生を抑えると判断される。 【実施例3】 【0053】 2-アミノ4,4α-ジヒドロ-4α,7-ジメチル-3H-フェノキサジン-3-オンが、HUVECsの細胞内におけるSMembの mRNAの変動に与える影響の測定 実施例2の2-アミノフェノキサジン-3-オン(合成物I)の代わりに製造例2で製造した2-アミノ4,4α-ジヒドロ-4α,7-ジメチル-3H-フェノキサジン-3-オン(合成物II)を使用して、HUVECsの細胞内におけるSMembの mRNAの変動を測定した。実施例2と同じように、培養細胞が細胞増殖用フラスコ(25cm2)内で80 % 密度になった時点で、最終濃度5mMグルコース(正常グルコース群)、最終濃度15mMグルコース(高濃度グルコース群)、最終濃度15mMグルコース+10μM 2-アミノ4,4α-ジヒドロ-4α,7-ジメチル-3H-フェノキサジン-3-オン(高濃度グルコース+合成物II群)の3群を調製し、培養をさらに8時間行った。これらの実験群より細胞を採取し、SMembのmRNA量の分析をおこなった。 【0054】 結果を図3に示す。高濃度グルコース+合成物II群におけるSMembのmRNA量は、高濃度グルコース群のそれの約44%であり有意に低い。以上の結果より、合成物IIすなわち2-アミノ4,4α-ジヒドロ-4α,7-ジメチル-3H-フェノキサジン-3-オンは、血管新生を抑制すると判断される。 【実施例4】 【0055】 2-アミノフェノキサジン-3-オンのHUVECsの細胞遊走能に及ぼす作用の検定 HUVECsの細胞移動度は高濃度のグルコース添加により促進され、血管新生の引き金となることが知られている。本試験では、高濃度のグルコースによって誘導されるHUVECsの細胞移動度の促進が、2-アミノフェノキサジン-3-オンによって抑制されるかどうかを測定した。 HUVECsの細胞移動試験は、山川らの方法(S.Yamakawa, Y.Furuyama, N.Oku: Development of a simple cell invation assay system. Biiol. Pharm. Bull. 23, 1264-1266, 2000年)に従って行った。遊走能測定試験にはFluoroBlok 24-Multiwell Insert System (ベクトン・ディキンソン社、米国)を用いた。このシステムはBD Falcon Matrigel(商標)matrix をコーティングした蛍光をブロックするポリエチレンテレフタレートメンブレイン(8μmポアサイズ)と24 Multiwellインサート・プレートを組み合わせたものである。HUVECsは、カルセインAMで予め蛍光標識しておいた。遊走するHUVECsはメンブレインのポア(膜孔)から下方向へと移動するが、遊走が少ないHUVECsはメンブレイン上に残留する。ポアより遊走した細胞は蛍光プレートリーダーで経時的に計測される。 最終濃度5mMグルコース(正常グルコース群)、最終濃度15mMグルコース(高濃度グルコース群)、最終濃度15mMグルコース及び10μM の2-アミノフェノキサジン-3-オン(高濃度グルコース+合成物I群)の3つの実験群について、以下の方法でHUVECsの細胞遊走能を検定した。 1× 106 個のHUVECs はEGM-2培養液に懸濁し、細胞培養用フラスコ(25cm2)内で5%炭酸ガス存在下37℃にて培養した。培養細胞がフラスコ内で80% 密度に到達した時点でトリプシン処理をおこないHUVECsを浮遊させた。この浮遊細胞部分を回収し、HUVECsの細胞数が5 × 104 個になるように、2%FBSを含むEBM培養液(endothelial basal medium、シグマ・アルドリッチ・ジャパン、東京)に懸濁し、懸濁液300μlを用意した。さらに最終濃度4μg/mlの5-カルボキシフルオレセイン・ジアセトキシ-メチルエステル(同仁化学株式会社)を添加したのち、この細胞浮遊液から30μlを採取し、前述のメンブレインで構成されるインサート部分に滴下した。また、同時に最終濃度5 mMグルコース、最終濃度15 mMグルコースあるいは最終濃度15 mMグルコース及び10μM の2-アミノフェノキサジン-3-オンを各々添加した。 次に、10% FBSを化学誘引剤として含む700 μlのEBM 液が予め添加されている24穴プレートに、上記インサート部分をセットした。 インサート部分をセットした時点を0時間とし、蛍光顕微鏡(Fluoroskan Ascent FL、大日本製薬、東京)により励起485 nm、測定538 nmにて蛍光測定した。以降、炭酸ガスインキュベータ内で37℃にてインキュベートを継続し、1時間毎に8時間後まで蛍光測定した。 【0056】 結果を図4に示す。正常グルコース群(●)および高濃度グルコース群(○)において、遊走が促進された。一方、高濃度グルコース+合成物I群(□)において、遊走が阻害された。このことにより、合成物Iすなわち2-アミノフェノキサジン-3-オンは、血管内皮細胞の機能を抑制し、その結果血管新生を阻害するといえる。 【0057】 従って、2-アミノフェノキサジン-3-オンは、高血糖によって引き起こされる血管障害に対する阻害薬、すなわち糖尿病阻害薬として使用できる。 【実施例5】 【0058】 HUVECsの細胞内におけるSMembタンパク質のウエスタンブロット電気泳動の結果 1 × 106 個のHUVECsを3つの細胞培養用フラスコ(25 cm2)に播種し、細胞培養装置内で37℃にて培養した。細胞が各フラスコ内で80 %密度になったところで、最終濃度5mMグルコース(正常グルコース群)、最終濃度15mMグルコース(高濃度グルコース群)、最終濃度15mMグルコース+10μM 2-アミノフェノキサジン-3-オン(高濃度グルコース+合成物I群)になるように各々を添加して、3つの実験群を作成した。これら3つの実験群を調製した後、各々の細胞をさらに8時間、37℃にて培養を行った。培養終了後に、細胞からSMembタンパク質の抽出を行い、その量的変動をウエスタンブロッティング法により分析した。 タンパク質の抽出は以下の通り行った。タンパク質抽出に用いた抽出用溶液は、10mlのRIPAバッファー(塩化ナトリウム0.877g、デオキシコール酸1g、 1Mトリス塩酸(pH7.5) 1ml、トライトンX-100 1ml、脱イオン水73ml)にプロテアーゼ阻害剤コンプリート(商標)タブレット(ロシュ・ダイアグノスティック社、東京)1錠を溶解させたものである。細胞培養終了後に培養液を吸引除去し、フラスコに接着しているHUVECs を4℃リン酸緩衝液で2回洗浄し、前述の抽出用溶液0.5mlを添加して、細胞を溶解させた。この細胞溶解液を1.5mlの遠心管に移し、15,000 x g で15分間遠心し、不溶物質を除去した。上澄みの総タンパク質濃度を定量したのち、50 μgタンパク質を含む上澄み試料に対して、四分の一容量のLDSサンプルバッファー(インビトロジェン社製、東京)を添加し、100 ℃、5分間加熱した。この試料をシュアロックミニセル電気泳動装置(インビトロジェン社)内に予め設置しておいたSDS−ポリアクリルアミドゲルにのせる。電気泳動用ランニングバッファーとしては500 mlのTBEランニングバッファー(5倍希釈したTBEバッファー 100 ml、脱イオン水900 ml)を用いた。電圧125V条件下で1時間、電気泳動を行った。電気泳動終了後に、ゲルをPVDFメンブレイン(インビトロジェン社)に重ね、さらにブロッティングパット(インビトロジェン社)ではさみ、エクセルIIブロットモジュール転写装置に設置して、200mlのトランスファー緩衝液(25倍希釈したトリス・グリシントランスファー緩衝液 40ml、メタノール200ml、脱イオン水760ml)を加え、30Vの定電圧を1時間かけ、ゲル上で分離されたタンパク質のPVDFメンブレインへの転写を行った。 PVDFメンブレインに転写されたタンパク質は、リン酸緩衝液および0.5% Tween20を含む5%スキンミルク-T溶液を加えてブロッキングを行った。翌日、リン酸-T溶液(リン酸緩衝液 500ml、Tween20 0.5ml)で3回洗浄した。この転写部分に対して10mlの5%スキンミルク-T溶液に5μlのモノクローナル抗ヒトSMembマウスIgG抗体(原液を2000倍希釈したもの、ヤマサ社、東京)を添加した一次抗体を加えて、室温にて2時間反応させた。 このPVDFメンブレインをリン酸-T溶液で3回洗浄し、10mlの5%スキンミルク-T溶液に1 μlの抗マウス・ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ・ヤギ抗体(原液を10000倍希釈したもの、ライフサイエンス社、東京)を添加した二次抗体を加えて、室温にて2時間反応させた。 転写されたタンパク質(ブロット)を可視化するため、PVDFメンブレインをリン酸-T溶液で3回洗浄したのちECLplus(アマルシャム・バイオサイエンス社、東京)をPVDFメンブレインに滴下し、化学発光させてフイルムに感光させた。ブロットはイメージスキャナー(GT8700、1200dpi、エプソン株式会社、諏訪)で取り込み、内部標準としてα−チュブーリン(シグマ株式会社、米国)を用いて比較定量した。 なお、電気泳動で分析するHUVECsから抽出された試料中の全タンパク質量は、Bio-Rad Protein Assay (ライフサイエンス社、東京)を5倍希釈した液200μlに対して、試料2μlを添加した後、マイクロプレートリーダーで吸光度を測定することにより行った。定量にはウシ血清アルブミンで得られたタンパク質定量用標準曲線を用いた。 【0059】 SMembタンパク質のウエスタンブロット電気泳動の結果 図5は、左のレーンから5mM濃度グルコース、15 mM濃度グルコース、15 mM濃度グルコース+合成物I(2-アミノフェノキサジン-3-オン)を添加したHUVECs内のSMembタンパク質の量を、ウエスタンブロット電気泳動法により分析した結果を示す。15 mM濃度のグルコースを添加した高濃度グルコース群におけるHUVECs内のSMembタンパク質の合成量は、5 mM濃度のグルコースを添加した正常グルコース群と比べて高い。また、高濃度グルコース+合成物I群では、高濃度グルコース群と比べ、SMembタンパク質の発現量はかなり低くなっている。この結果は、実施例2に記載のSMembのmRNAの量的変動に関する結果と良く一致している。従って、本結果は、高濃度のグルコース添加により、HUVECs細胞内にSMembタンパク質が誘導されること、及び合成物Iすなわち2-アミノフェノキサジン-3-オンによって、高濃度グルコースで誘導されるSMembタンパク質の量的増加が抑制されることを示す。 【実施例6】 【0060】 2-アミノフェノキサジン-3-オン1g及び乳糖9gをよく混和し、1g中に2-アミノフェノキサジン-3-オン100mgを含有する散剤(10倍散)を製造した。 【実施例7】 【0061】 2-アミノフェノキサジン-3-オン5g及び乳糖5gをよく混和し、1g中に2-アミノフェノキサジン-3-オン500mgを含有する散剤(2倍散)を製造した。 【実施例8】 【0062】 2-アミノフェノキサジン-3-オン1g、乳糖0.5g、6%HPC乳糖0.4g、バレイショデンプン0.06g及びステアリン酸タルク0.04gをよく混和して打錠し、1錠中に2-アミノフェノキサジン-3-オン100mgを含有する錠剤を製造した。 【実施例9】 【0063】 2-アミノフェノキサジン-3-オン1g、乳糖0.9g、バレイショデンプン0.06gおよびステアリン酸カルシウム0.04gをよく混和して硬カプセルに充填し、1カプセル中に2-アミノフェノキサジン-3-オン100mgを含有するカプセル剤を製造した。 【産業上の利用可能性】 【0064】 2-アミノフェノキサジン-3-オン誘導体並びにそれらの薬理学的に許容される塩及びエステルは、2型糖尿病治療剤として有効である。従って、本発明の剤は、産業上の利用可能性を有する。 【図面の簡単な説明】 【0065】 【図1】HUVECsにおける細胞増殖度の変化(n=5)を示す図である。 【図2−1】HUVECsにおけるSMembのmRNA濃度の変動(n=4)を示す図である。 【図2−2】HUVECsにおけるET-1のmRNA濃度の変動(n=4)を示す図である。 【図2−3】HUVECsにおけるPAI-1のmRNA濃度の変動(n=4)を示す図である。 【図3】HUVECsにおけるSMembのmRNA濃度の変動(n=4)を示す図である。 【図4】HUVECsの遊走に対する抑制作用(n=4)を示す図である。 【図5】ウエスタンブロット法によるSMembタンパク質の解析 【符号の説明】 【0066】 [図1] ○:最終濃度5mMグルコース ●:最終濃度15mMグルコース □:最終濃度15mMグルコース及び10μM 濃度の2-アミノフェノキサジン-3-オン ■:最終濃度15mMグルコース及び30μM濃度の 2-アミノフェノキサジン-3-オン △:最終濃度15mMグルコース及び100μM 濃度の2-アミノフェノキサジン-3-オン ▲:最終濃度15mMグルコース及び300μM 濃度の2-アミノフェノキサジン-3-オン [図2] ** 有意差あり、P<0.05 [図3] ** 有意差あり、P<0.05 [図4] ○:最終濃度5mMグルコース ●:最終濃度15mMグルコース □:最終濃度15mMグルコース及び10μM 濃度の2-アミノフェノキサジン-3-オン
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| 【出願人】 |
【識別番号】504358551 【氏名又は名称】福田 元 【識別番号】597032985 【氏名又は名称】友田 ▲あき▼夫 【識別番号】504358573 【氏名又は名称】吉武 紀子 【識別番号】504358540 【氏名又は名称】小田原 雅人 【識別番号】504358665 【氏名又は名称】金澤 真雄 【識別番号】504358469 【氏名又は名称】能登谷 洋子
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| 【出願日】 |
平成16年9月22日(2004.9.22) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100085545 【弁理士】 【氏名又は名称】松井 光夫
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| 【公開番号】 |
特開2006−89399(P2006−89399A) |
| 【公開日】 |
平成18年4月6日(2006.4.6) |
| 【出願番号】 |
特願2004−275102(P2004−275102) |
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