| 【発明の名称】 |
炎症の治療薬 |
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【氏名】川名 秀忠
【氏名】張ヶ谷 健一
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| 【要約】 |
【課題】
【解決手段】 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 CD44、CD44-Toll-like-receptor(以下「TLR」と略す)シグナル伝達の経路に関わる分子群、前記TLRシグナル伝達を修飾する生理活性分子、及び人工分子の少なくともいずれかを含有する炎症の治療薬。 【請求項2】 zymosan又はLPSにより発症する炎症を治療する請求項1記載の炎症の治療薬。 【請求項3】 zymosan又はLPSによりNF-κBが活性化されることで発症する炎症を治療する請求項1記載の炎症の治療薬。 【請求項4】 前記TLRシグナル伝達におけるNF-κBの活性化を抑制する請求項1記載の炎症の治療薬。 【請求項5】 TLR2又はTLR4に対する刺激によるNF-κBの活性化を抑制する請求項1記載の炎症の治療薬。 【請求項6】 前記CD44のアイソフォームはstandard formまたはバリアントであることを特徴とする請求項1に記載の炎症の治療薬。 【請求項7】 TLRシグナル伝達における炎症性サイトカインの産生を抑制する請求項1に記載の炎症の治療薬。 【請求項8】 前記炎症性サイトカインはIL-6、TNF-αのいずれを含むことを特徴とする請求項7記載の炎症の治療薬。 【請求項9】 ヒト各種炎症細胞におけるCD44-TLR相互作用に関するNF−κB活性化制御系を用いて炎症を制御する合成ペプチド。 【請求項10】 ヒト各種炎症細胞におけるCD44-TLR相互作用に関するNF−κB活性化制御系を用いて炎症を制御す製剤を開発する人工製剤開発システムとしてのこのアッセイ系。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、炎症の治療薬に関する。 【背景技術】 【0002】 Toll-like receptor(以下、「TLR」という)は体内に進入する病原性微生物を感知する自然免疫の重要な構成要素である。TLRは、pathogen-associated microbial patterns (PAMPs)と呼ばれる病原性微生物によってのみ発現する高度に保存された構造配列を認識するものであり、現在までに10〜11種類ほど知られている。なおPAMPsには、様々な細菌壁の構成成分に見られるlipopolysaccharides(LPS)、peptidoglycans、lipopeptidesや、細菌壁以外の成分であるflagellin、bacterial DNA、viral double-stranded RNAが知られている。 【0003】 またTLRの一つであるTLR2は、他のTLRと2量体を形成することが知られており、複合体を形成することでより多様なPAMPsを特異的に認識していると考えられている。例えば、TLR2はTLR6と2量体を形成してpeptidoglycanやdiacylated mycoplasmal lipopeptideを認識する、また、TLR1と2量体を形成してtriacylated lipopetides を認識することが報告されている(例えば下記非特許文献1参照)。 【0004】 一方TLRは、上述のPAMPsを認識すると、細胞内シグナル(以下「TLRシグナル」という。)伝達を生じさせ、炎症性サイトカイン、NF-κBを活性化することが知られている。このTLRシグナルに関与する物質としてはMyD88 、Mal、IRAK1、TRAD6 が知られている。なお最近の報告として、TLRのリガンドの一つであるzymosanは、TLR2を介してマクロファージを活性化すること、NF-κBを活性化させてTNF-αを産生すること、などが報告されており、また最近、TLRに認識されるれ癌度であることが報告されている(例えば下記非特許文献2参照)。 【0005】 このようにTLRは、病原微生物の構成成分に特異的に反応し炎症反応を生じさせる。このような病原微生物に対する生体の初期反応を自然免疫とよび、この中心となる機構がTLRを介する炎症反応である。なおこれらTLRは、炎症性サイトカインであるIL-1受容体と構造の相同性が高い細胞内ドメイン、共通の細胞内シグナル経路、を持つことから、TLR/IL-1受容体ファミリーとして分類されている。 【0006】 一方、CD44は膜貫通型糖タンパク質であり、細胞同士の接着や細胞外基質との接着を調節する構成要素である。CD44の遺伝子は20のエキソンからなっており、このうち9〜12のエキソンが選択的にスプライシングされ、複数のmRNA転写産物が同定されている(図11参照)。標準的で最も広範に存在するCD44(以下これを「CD44s」という)はエキソン1−5、16-18、20によりコードされるタンパク質であり、エキソン1−5及び16は細胞外ドメイン、エキソン18は膜貫通ドメイン、エキソン20は細胞質ドメインであると考えられている。なおこのタンパク質の型は造血細胞でも主要な型であり、CD44Hとしても知られている。 【0007】 また、CD44の他の例としてCD44Eがあり、エキソン1-5、13-18,20の12個のエキソンによってコードされるタンパク質であり、消化管上皮などに発現していることが知られている(例えば下記非特許文献3、4参照)。なおCD44のゲノムDNAを配列番号1に、CD44Eのアミノ酸配列を配列番号2に、CD44EのmRNAの塩基配列を配列番号3に、CD44sのアミノ酸配列を配列番号4に、CD44sのmRNAの塩基配列を配列番5にそれぞれ示す。なお配列番号1に記載の塩基配列のうち、191-370の塩基配列がエクソン1、731-896の塩基配列がエクソン2、1257-1390の塩基配列がエクソン3、1751-1819の塩基配列がエクソン4、2180-2410の塩基配列がエクソン5、2771-2899の塩基配列がエクソン6及び7、3260-3385の塩基配列がエクソン8、3746-3859の塩基配列がエクソン9、4220-4336の塩基配列がエクソン10、4697-4825の塩基配列がエクソン11、5186-5317の塩基配列がエクソン12、5678-5779の塩基配列がエクソン13、6140-6229の塩基配列がエクソン14、6590-6793の塩基配列がエクソン15、7154-7216の塩基配列がエクソン16、7577-7648の塩基配列がエクソン17、8009-8087の塩基配列がエクソン18、8448-9346の塩基配列がエクソン19及び20である。 なお、CD44はヒアルロン酸の重要な受容体であり、リンパ球と同時に内皮細胞、上皮細胞、平滑筋細胞などの実質細胞にも恒常的に発現していることが知られている。 【0008】 また炎症反応において、CD44は血液細胞と体細胞の両方において発現が増加していることが確認されており、炎症疾患において重要な役割を担っているとの報告が複数されている。例えば炎症性腸疾患、コラーゲン誘導性あるいはプロテオグリカン誘導性関節炎、皮膚炎、実験的自己免疫性脳脊髄炎、IL-2誘導性血液漏出症候群などのマウスモデルに抗CD44抗体を注入することにより炎症を抑制したとする報告がある(例えば下記非特許文献5、6、7参照)。しかし一方、抗CD44抗体IRAWB14の注入はプロテオグリカン誘導性関節炎を悪化させるとする報告もある(下記非特許文献8参照)。つまり、CD44と炎症疾患に関する報告には相反する報告が見られる。 【非特許文献1】Akira, S. (2003). “Toll-like receptor singnaling.” J Bil Chem,278(40),38105-38108 【非特許文献2】Underhill,D.M.,A. Ozinsky, et al. (1999).”The Toll-like receptor 2 is recruited to macrophagephagosomes and discriminates between pathgens.”Nature 401(6755):811-815 【非特許文献3】Lesley,J.and R. Hyman(1998).”CD44 structure and function.” Front Biosci 3:D616-630 【非特許文献4】Fujita, Y., M.Kitagawa, et al.(2002). “CD44 signaling through focaladhesion kinase and its anti-apoptotic effect.” FEBS Lett 528(1-3):101-108 【非特許文献5】Protein,U,.T.Schweighoffer, et al.(1999).”CD44-deficient mice develop normally withchanges in subpopulations and recirculation of lymphocyte subsets.” J Immunol163(9): 4917-4923 【非特許文献6】Rafi-Janajreh,A. Q., D.Chen, et al.(1999). “Evidence for the involvement of CD44 inendothelial cell injury and induction of vascular leak syndrome by IL-2” JImmunol 163(3):1619-27 【非特許文献7】Chen,D., R. J. McKallip, et al.(2001). “CD44-deficient mice exhibit enhancedhepatitis agter concanavalin A injection: evidence for involvement of CD44 inactivation-induced cell death.” J Immunol 166(10):5889-97 【非特許文献8】Pure, E. and C.A.Cuff (2001). “A crucial role for CD44 ininflammation.” Trends Mol Med 7(5):213-21 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 しかしながら、上記いずれも限られた局面のみを捉えた報告に過ぎず、CD44が炎症において果たす機能を解明できていない。これを明らかにすることでCD44は炎症疾患の新しい治療法のターゲットとなる可能性がある。 【0010】 そこで本発明は、上記を鑑み、CD44と炎症との関係につき鋭意検討し、炎症の治療薬、炎症の評価方法等を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0011】 上記目的を達成するため、まずCD44非発現マウスを用いた炎症モデルを作製し、比較検討を行った結果、CD44がzymosanで誘導される炎症を抑制していること、TLRを介したNF-κBの活性化を減弱すること、このような効果がTLRシグナルのMyD88、Mal、IRAK1、TRAF6より上流で生じていることを突き止めた。即ち、CD44の炎症反応における役割を明確にした。 【0012】 そこで、上記の検知に基づき、本発明は以下の具体的な手段を採用する。 まず、第一の手段として、CD44、CD44-Toll-like-receptor(以下「TLR」と略す)シグナル伝達の経路に関わる分子群、前記TLRシグナル伝達を修飾する生理活性分子、及び人工分子の少なくともいずれかを含有する炎症の治療薬とする。 なおこの手段において、この治療薬がzymosan又はLPSにより発症する炎症を治療する用途のものであること、zymosan又はLPSによりNF-κBが活性化されることで発症する炎症を治療する用途のものであること、TLRシグナル伝達におけるNF-κBの活性化を抑制する用途のものであること、TLR2又はTLR4に対する刺激によるNF-κBの活性化を抑制する用途のものであること、前記CD44のアイソフォームはstandard formまたはバリアントであること、TLRシグナル伝達における炎症性サイトカインの産生を抑制する用途のものであること、炎症性サイトカインはIL-6、TNF-αのいずれを含むこと、も発明を実施するうえ若しくは発明をより明確に特定するために有用である。 また、第二の手段として、ヒト各種炎症細胞におけるCD44-TLR相互作用に関するNF−κB活性化制御系を用いて炎症を制御する合成ペプチドとする。また、第三の手段として、ヒト各種炎症細胞におけるCD44-TLR相互作用に関するNF−κB活性化制御系を用いて炎症を制御す製剤を開発する人工製剤開発システムとしてのアッセイ系とする。 【発明の効果】 【0013】 以上、CD44を用いることで炎症の治療薬、炎症の評価方法等を提供することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0014】 以下、本発明の実施の形態について説明するに先立ち、本発明としての効果を裏付けるための実験につき説明する。 【0015】 (野生型マウスとCD44非発現マウス) CD44の炎症に対する調節機構を解明するために、まずCD44が発現していないマウス(遺伝子操作によりCD44が体全体に発現していないマウスをいい、以下単に「CD44非発現マウス」という。)とCD44が発現しているマウス(CD44非発現マウスとは反対にCD44が発現した対照マウスであり、遺伝子操作を加えていない野生型マウスをいう。以下単に「野生型マウス」という。)を千葉大学大学院医学研究院動物実験施設で自家繁殖した。すべての実験は8から16週齢のマウスを使用して実施した。CD44非発現マウスに関しては、「Protin, U., T. Schweighoffer, et al. (1999). "CD44-deficient mice develop normally with changes in subpopulations and recirculation of lymphocyte subsets." J Immunol 163(9): 4917-23」に記載に基づいて行った。 【0016】 まずCD44非発現マウスは、相同組み換えによりCD44遺伝子を非活性化すべく、CD44遺伝子のエキソン1をターゲットとしてベクターpGNAのlacZ/neo cassetteを組み込んだターゲットコンストラクトを作製し、electroporationによりES細胞に遺伝子導入し、相同組み換えの生じたES細胞をサザンブロット解析により選別した。この変異ES細胞をC57BL6マウスのblastocystsに注入しキメラマウスを作製し、C57BL6マウスに戻し交配し、サザンブロット解析によりCD44の遺伝子型を決定した。なおこのCD44遺伝子のホモ接合性変異マウスはノーザンブロット解析でCD44mRNAを発現していないことを確認している。このCD44非発現マウスはDr. Frank Hilberg(Boehringer Ingelheim, Research and Development, Vienna, Austria)より実験用に供与されたものである。CD44非発現マウスは野生型マウスと交配して自家繁殖させ、実験用のCD44非発現マウス、野生型マウスとした。なおこれらのマウスの遺伝子型はPCR法を用いて決定した。なおPCE法ではCD44変異遺伝子を解析するためにupstream, 5’-gtt tca cca gca cgc cat-3’, downstream, 5’-att cag gct gcg caa ctg t-3’を、野生型CD44遺伝子を解析するためにupstream, 5’-ggc gac tag atc cct ccg tt-3’, downstream, 5’-acc cag agg cat acc agc tg-3’のプライマーを作製し、使用した。 【0017】 (CD44後発現キメラマウスとCD44後非発現キメラマウス) CD44非発現マウスに野生型マウスの骨髄細胞を移植したマウス(以下単に「CD44後発現キメラマウス」という)、また、野生型マウスにCD44非発現マウスの骨髄細胞を移植したマウス(以下単に「CD44後非発現キメラマウス」という。)を実験用に作製した。 骨髄細胞はCD44非発現マウスと野生型マウスの大腿骨と脛骨から取り出した。骨髄移植を行うマウスは1000ラッドの放射線照射を行い、取り出した骨髄細胞5x106個を静脈内に注入した。なお作製したキメラマウスは6−8週後に実験に使用した。 【0018】 (関節炎の惹起−zymosan惹起性関節炎) 酵母細胞壁から生成したzymosanは滅菌消毒し生理的食塩水に15mg/lの濃度で懸濁し、使用直前に均一になるように撹拌した。次に、マウスのひざの毛をカミソリで除去し、70%エタノールで表面を消毒した。エーテル麻酔下に28ゲージの注射針付き注射器で10マイクロリットルのzymosan生食液をマウスひざ関節腔内に注入した。 【0019】 (関節病理組織標本の作製) マウスのひざ関節を切り離し10%中性ホルマリンで固定した。さらに、5%EDTA-2Na溶液で脱灰処理を行い、パラフィンに包埋した。作製された試料は4マイクロメーターに薄切し、ヘマトキシリンとエオジンで染色した。この標本は炎症細胞の程度、滑膜細胞の過形成の程度、骨の破壊やパヌス形成の程度を4段階で評価した。0は正常範囲、1は軽度、2は中等度、3は高度、である。 【0020】 (zymosanで誘導される関節炎の病理組織学的解析) 図1に上記各マウスにおける膝関節の縦断面のHE染色像を示す。なお図1(A)はCD44発現マウスの、図1(B)は野生型マウスの、図1(C)はCD44後発現キメラマウスの、図1(D)はCD後非発現キメラマウスの、膝関節の縦断面のHE染色像である。 図1(A)、(C)ではマウスの膝関節くうにごく軽度の炎症細胞浸潤(open arrow head、図中の白抜き三角(△)で示す部分)と滑膜上皮細胞の増生(closed arrow head、図中の塗つぶした三角(▲)で示す部分)が確認できた。 一方、図1(B)、(D)では、図1(A)、(C)とは異なり、高度の炎症細胞浸潤(open arrowhead)、滑膜上皮細胞の増生(closed arrow head)、関節くう内に面する骨表面のパヌス形成を伴う破壊(closed arrow、図中の矢印(←)で示される部分)が確認できた。 【0021】 以上の図1(A)、(B)の結果よりCD44の非発現が炎症反応を促進すると考えられた。一方図1(C)、(D)の結果より、骨髄細胞のCD44の非発現が炎症反応の促進に重要であると考えられた。これらのことより、骨髄細胞におけるCD44は炎症の調節に重要な役割を持つことが考えられた。 【0022】 (Zymosanで誘導される関節炎の病理組織学的変化に関する定量的、統計的解析) 一方、図1の結果の定量的な評価のため、野生型マウスとCD44非発現マウスの炎症の程度の調査結果を図1(E)に、CD44後発現マウスとCD44後非発現マウスの炎症の程度の調査結果を図1(F)にそれぞれ示す。なお図1(E)、(F)の横軸には細胞浸潤、滑膜上皮の増生、骨の破壊とパヌス形成の項目を、縦軸にはそれぞれの程度を示しており、またその程度として、殆ど変化が見られなかった場合を0、軽度の変化が見られた場合を1、中等度の変化が見られた場合を2、高度の変化が見られた場合を3として評価した。また、それぞれ7匹若しくは8匹のマウスに対して調査を行っており、図1(E)の○一つはCD44発現マウス一匹(「CD44+/+」とも表記)を意味し、●一つはCD44非発現マウス一匹(「CD44-/-」とも表記)を意味し、また図1(F)中の○一つはCD44後発現キメラマウス一匹(「CD44+/+ Bone marrow chimera」とも表記)を意味し、●一つはCD44後非発現キメラマウス一匹(「CD44-/- bone marrow chimera」とも表記)を意味する。 【0023】 図1(E)の結果によると、CD44非発現マウスの方が野生型マウスに比べ、マン・ホイットニ検定では危険率5%以下で有意に細胞浸潤の増加、滑膜上皮の増生が確認できた。なお、骨の破壊とパヌス形成においても、CD44非発現マウスのほうが野生型マウスに比べ、より高度な程度が確認できた。従って、この結果から、定量的、統計的にCD44の非発現が炎症反応を促進することが確認できた。 また図1(F)の結果によると、CD44後非発現キメラマウスの方がCD44後発現キメラマウスに比べ、マン・ホイットニ検定では危険率5%以下で有意に細胞浸潤の増加が確認できた。なお、滑膜上皮の増生、骨の破壊とパヌス形成においても、CD44後非発現マウスの方がCD44後発現マウスに比べ、より高度な変化が確認できた。従って、この結果から、定量的、統計的に骨髄細胞におけるCD44の非発現が炎症反応を促進することが確認できた。 以上、図1より、CD44の非発現がzymosanによる炎症を促進することができ、しかもそれは主として骨髄細胞における現象(後発現、後非発現での効果の検討)であることが確認できた。 【0024】 (CD44に依存するToll-like receptorシグナルの解析) 一方で、zymosanによる炎症を抑える作用のうち、どの段階でCD44が機能しているのかについて検討を行った。以下に説明する。 【0025】 (細胞培養) マウス胎児線維芽細胞は妊娠12から14日目のCD44非発現あるいはCD44発現マウスの胎児から分離した。胎児細胞は37℃の0.25%トリプシンと12.5マイクログラムのDNaseIを含むリン酸緩衝食塩水中で洗浄しながら採取した。採取した線維芽細胞は10%胎児血清入りダルベコ変法イーグルの培養液(DMEM)で培養した。CD44の遺伝子の状態はpolymerase chain reaction (PCR)法により確認した。なおプライマーは、upstream, 5’-ggc gac tag atc cct ccg tt-3’(配列番号10)、downstream, 5’-acc cag agg cat acc agc tg-3’(配列番号11)のものを用いた。 骨髄由来マクロファージは25ng/mlのM-CSFを含む10%胎児ウシ血清入りRPMI培養液中で4日間培養して実験に使用した。骨髄はマウスの大腿骨から採取し25ng/mlのM-CSFを加えたRPMI培養液中に懸濁した。2日間培養した後に、非付着細胞は培養液交換時に取り除く。4日目に再び培養液を交換し、5日目に実験に使用した。 そしてCD44発現および野生型マクロファージあるいはCD44発現および野生型胎児線維芽細胞を用いて、zymosan、LPS刺激時のDNA配列依存性NF-κB活性化を解析した。 【0026】 (Electrophoreic mobility shift assay(EMSA)) DNA-タンパク結合反応は15マイクロリットルの13mM Hepes-NaOH (pH 7.9) 溶液( 8% glycerol, 50 mM NaCl, 0.4 mM MgCl2, 0.5 mM dithiothreitol, 66.6 mg/ml poly (dI-dC), 33.3 mg/ml salmon sperm DNAを含む)と全細胞成分抽出液(タンパク量として20マイクログラム)を氷上で15分間反応し、さらに32Pで標識した合成二重鎖オリゴDNAプローブ(0.1-0.2ng/ml,5-20nCi)と室温で30分間反応させた。最終的なプローブの濃度は0.25-0.5fmol/mlであった。このように作製した反応液の半分を0.5xTris-borate-EDTA 緩衝液中でポリアクリルアミドゲル(5%)で電気泳動し、DNA−タンパク結合複合体を分離した。この複合体を、ポリアクリルアミドゲルを乾燥しX線フィルムに露光することにより検出した。同位体標識したimmunoglobulin light chain enhancer B の配列に由来するプローブの塩基配列を以下に示す。 IgκB upstream, 5’-gat cca gag ggg act ttc cga gag-3’(配列番号12); and IgκB downstream, 5’-gat cct ctc gga aag tcc cct ctg-3’(配列番号13)。 【0027】 (zymosan、LPS刺激時のCD44非発現マクロファージのNF-κBの活性化) 図2(A)はCD44が発現したマクロファージ(以下単に「CD44発現マクロファージ」という)とCD44が発現していないマイクロファージ(以下単に「CD44非発現マクロファージ」という。)を用いてzymosanあるいはLPSで刺激した結果を示す。なお図中、「cont」はコントロールを、「zym」はzymosanによる刺激を、「LPS」はLPSによる刺激を、「TNF-α」はコントロールとしてのTNF-αによる刺激を、それぞれ示している。また図中、「+/+」はCD44発現マクロファージを、「-/-」はCD44非発現マクロファージをそれぞれ示している。 【0028】 図2(A)の結果によると、コントロール及びTNF−αにおいてはCD44発現マクロファージとCD44非発現マクロファージとの間にTNF−α活性に違いがなかったものの、zymosanとLPSにおいては、CD44発現マクロファージよりもCD44欠失マクロファージの方がより強く活性化していることが確認された。 【0029】 また、図2(A)においてマイクロファージで行った実験を胎児繊維芽細胞に対して同様に実験を行った。図2(B)Bにその結果を示す。なお図中の各表記及びその意味については図2(A)の場合とほぼ同様である。図2(B)の結果も図2(A)と同様であって、コントロール及びTNF-αにおいてはCD44発現胎児繊維芽細胞とCD44非発現胎児繊維芽細胞との間でTNF-α活性に違いがなかったものの、zymosanとLPSにおいては、CD44が発現した胎児繊維芽細胞よりもCD44が発現していない胎児繊維芽細胞の方がより強く活性化していることが確認された。 【0030】 また一方、図2(A)にて行ったマクロファージに対するNF-κBの活性の時間変化についても実験を行った。図2(C)にその結果を示す。なお本実験はLPSで刺激した場合におけるNF-κBの活性を調べたものであり、図2(C)中の、左側はCD44発現マクロファージを、右側はCD44非発現マクロファージを示し、またそれぞれ0分、10分、20分、120分における活性を示している。 【0031】 図2(C)の結果によると、CD44欠失マクロファージにおいて時間依存性によりより強い活性が認められた。 【0032】 (ルシフェラーゼアッセイ) CD44シグナル解析のため、CD44発現および非発現胎児線維芽細胞を12穴の培養皿に培養し(各0.3x105個の細胞)、各0.5 mgのNF-κB reporter plasmid (p55Igk-luc)を遺伝子導入した。なおこのプラスミドはk light chain immunoglobulin enhancerに由来するNF-κB結合領域を3回繰り返し配列として持っているものである。なおコントロールプラスミドとしては、10ngのRenilla luciferase internal control plasmid (pRL-CMV; Promega)を導入した。CD44EとCD44sのcDNAはpCIneo mammalian expression vector (Promega, Madison, WI, USA)に組み込んで遺伝子導入した。なおすべての遺伝子導入はLipofectamine (Invitrogen社製)を使用して実施した。 【0033】 次に、これらの胎児線維芽細胞を10ng/ml Zymosan, 10ng/ml LPS (Salmonella enteriditis purified by phenol extraction; Sigma)と1ng/ml TNF-α(Sigma)で刺激した。そして24時間後にfireflyとRenilla ルシフェラーゼ活性をDual Luciferase assay kit (Promega社製) とTD20/20dual luminometer(Turner Designs社製)を使用して測定した。この結果は平均値の相対値と標準偏差によりグラフにした。実験は各実験につき3つの同様の実験を行い、これを2回行った。 【0034】 図3(A)にその結果を示す。図3(A)の左側の図はCD44発現胎児繊維芽細胞に対する活性を、図3(A)の右側の図はCD44非発現胎児繊維芽細胞に対する活性をそれぞれ示し、更に図3(A)の右側の図中、左の「(-)」はコントロールを、右の「LPS」はLPSによる活性を、それらの間の「zymosan」はzymosanによる活性をそれぞれ示し、縦軸はそれぞれの活性の程度を示す。なお活性の程度は、(-)における活性度を1と規格化した値である。この結果、CD44非発現マクロファージにおいてNF-κBのzymosan、LPSによる活性の程度が向上していることがわかる。 【0035】 また、図3(A)と同様に、胎児繊維芽細胞を用いて、CD44の発現がNF-κBの活性化に与える影響をルシフェラーゼアッセイを用いて測定した。この結果を図3(B)に示す。図3(B)では、CD44を過剰発現することによりzymosanによるNF-κBの活性化を抑制することが確認できた。一方、TNF-αによる活性化は影響を受けなかった。なお図3(B)において活性の程度は、CD44発現胎児繊維芽細胞の(-)における活性を1として規格化している。 【0036】 (サイトカイン産生量の測定) 骨髄由来マクロファージはzymosan, LPS, flagellin (Invivogen), CpG-ODN (ODN2006, Invivogen), R848, poly(I:C) (Amersham), IL-1 (R&D system)あるいは培養液のみを用いて24時間培養し、培養上清中のサイトカイン量をELISA法により測定した。 まず、CD44非発現マクロファージとCD44発現マクロファージのそれぞれに対し、zymosanで刺激した際におけるIL-6、TNF-αの産生について実験を行った。図4(A)はIL-6の産生を、図4(B)はTNF-αの産生についての結果を示す図である。 【0037】 図4(A)において、コントロールではCD44発現マクロファージ、CD44欠失マクロファージともにIL-6の産生は検出できなかったものの、zymosanで刺激した場合、CD44非発現マクロファージにおいてIL-6の産生が顕著に発生していることが確認できた。また図4(B)においても、コントロールではCD44発現マクロファージ、CD44非発現マクロファージにともにコントロールではTNF-αの産生がいずれも25pg/ml、50pg/mlと少量で、またCD44発現マクロファージに対してzymosanで刺激した場合にも140pg/ml程度であったが、CD44非発現マクロファージに対してzymosanで刺激した場合は400pg/mlと非常に多く産生されていた。つまり、CD44非発現マクロファージではzymosanで刺激した場合、IL-6、TNF-αの産生が亢進することがわかった。 【0038】 また、図3(A)、(B)で行った実験と同様に、他のTLR刺激、LPS、PolyIC、CpGDNA(以下「ODN」)、Flagellin、R848それぞれによる刺激に対しても同様に実験を行った。図5(A)にIL-6の産生について、図5(B)にTNF-α産生についての結果を示す。 【0039】 図5(A)、(B)に示すとおり、CD44非発現マクロファージではLPS、PolyIC、ODN、Flagellin、R848刺激のいずれの場合においても、IL-6、TNF-αの産生が亢進することがわかった。 【0040】 更に、図4(A)、(B)で行った実験と同様に、他のTLR刺激、IL-1bによる刺激に対しても同様な実験を行った。図6(A)にIL-6の産生について、図6(B)にTNF-α産生についての結果を示す。 【0041】 図6(A)、(B)に示すとおり、CD44非発現マクロファージではIL-1 b刺激の場合、IL-6、TNF-αの産生が亢進することがわかった。 【0042】 またここで、CD44非発現マウスと野生型マウスに対するLPSショックについて実験を行った。本実験においては50mg/mlの濃度のLPS生食液を各マウスの腹腔内に5mg/kg注入することで行った。この結果を図7に示す。 【0043】 図7において横軸は生存日数を、縦軸は生存率を示す。結果は図7に示すように、野生型マウスはLPS注入後もすべて生存していたにもかかわらず、CD44非発現マウスはLPSに対してhypersensitiveであり、LPS注入3日後には生存率が30%となってしまった。この点においても、CD44がTLRシグナルの抑制因子であることが確認された。 【0044】 またここで、LPSに対するtoleranceについても解析を行った。ここでは、CD44非発現マウス、野生型マウスのそれぞれに対し、1度のみLPSを注入した場合と24時間間隔で2度LPSを注入した場合におけるサイトカインの産生量を比較することによって行った。図8(A)はIL-6産生量を、図8(B)はTNF-α産生量を示す。図8(A)、(B)にて示すとおり、1度のみLPSを注入した場合はCD44非発現マウス、野生型マウスいずれも高いサイトカイン産生量を示しているが、2度LPSを注入した場合はいずれの場合もサイトカイン産生量を低く抑えることができていた。ただしCD44の発現、非発現によりサイトカイン産生量の差異は確認できなかった。 【0045】 なお、CD44非発現マクロファージとCD44発現マクロファージを用いてLPSで刺激した際のヒアルロン酸のサイトカイン産生に及ぼす影響を解析した。図9(A)、(C)はIL-6産生量を、図9(B)、(D)はTNF-α産生量を示す。この結果、いずれも3kDa、22kDa、230kDa 、940kDaのヒアルロン酸に関して解析したが、CD44の発現との関連性は認められなかった。 【0046】 (CD44発現又はCD44非発現マイクロファージに対する、FITC-zymosanの取り込み実験又はFITC-LPSの細胞表面への表面結合の状態の解析) FITC-zymosan (Molecular Probes Europe, Leiden, The Netherlands)の取り込み実験においてマクロファージは10mg/mlのFITC-zymosanとDMEM溶液中で37℃で30分間培養した。その後PBSで2回洗浄し、細胞外に付着したzymosanを取り除くためにPBSに溶解した100units/ml lyticaseを室温で10分間反応させた。そして1mM EDTA入りのPBSに再懸濁し、FACS scanとCELLQuestプログラムを使用してflow cytometryで解析した。図10(A)はzaymosanの細胞内への取り込みを解析した結果を示す。なおこの結果は1万個の細胞の平均蛍光発光で示されている。 【0047】 また、FITC-LPSの細胞表面への結合を解析するために、マクロファージを2.5 ng/ml FITC-LPS入りのDMEM溶液中に37℃で30分間培養した。PBSで2回洗浄し、細胞表面への結合状態を先ほどと同様にFACS scan とCELLQuestプログラムを使用してflow cytometryで解析した。図10(B)はLPSの細胞表面への結合状態を解析した結果を示す。この結果は1万個の細胞の平均蛍光発光で示している。 【0048】 図10(A)、(B)の結果、CD44発現の有無による差異は見られなかった。 【0049】 (CD44のTLRシグナルにおける位置づけ) HEK293細胞を用いたルシフェラーゼアッセイにより解析を行った。NF-κB promoter とpCMV-MyD88, pCMV-Mal,又はpCMV-TRAF6と同時にpCIneo-CD44sあるいはコントロールとしてのpCIneoを遺伝子導入して実施した。これらの実験はルシフェラーゼアッセイと同様に胎児線維芽細胞で実施した。その結果を図10(C)に示す。 【0050】 図10(C)中のMock1と2はコントロールベクターのみの発現を、TNF-αはコントロールベクター導入したのちにTNF-αを培養液中に10ng/ml加えたことを意味する。MyD88、Mal、IRAK1、TRAF6はそれぞれMyD88、Mal、IRAK1、TRAF6を遺伝子導入により過剰発現していることを意味し、またvectorはCD44の発現がごくわずかであることを、CD44+はCD44が過剰に発現していることをそれぞれ示す。 【0051】 この結果によると、CD過剰発現によるNF-κBの抑制を検討したが、これらの分子による活性化をCD44は抑制することができなかった。以上の結果により、CD44はこれらMyD88、Mal、IRAK1、TRAF6よりも上流でTLRシグナルを抑制していると考えれる。 【0052】 従って、以上の検知に基づき、CD44を用いた炎症の治療薬が実現できる。なおCD44は主成分であることが望ましいが、効果が得られる限りにおいて主成分でなくても良い。また、上記実験により、CD44とTLRとの密接な関係から、CD44が炎症の治療薬の開発のため非常に有用であるため、炎症を制御する製剤を開発するシステムに用いることができる。 【産業上の利用可能性】 【0053】 以上のとおりCD44は、炎症反応の調節因子として利用でき、新規炎症治療薬、更には新規炎症治療薬開発のターゲットとして有用である。 【図面の簡単な説明】 【0054】 【図1】zymosanで誘導される関節炎に罹ったマウスにおける膝関節断面のHE染色像を示す図。図1(A)はCD44発現マウスの、図1(B)は野生型マウスの、図1(C)はCD44後発現キメラマウスの、図1(D)はCD後非発現キメラマウスの、膝関節の縦断面のHE染色像を示す図。図1(E)は野生型マウスとCD44非発現マウスの炎症の程度を示す図、図1(F)はCD44後発現マウスとCD44後非発現マウスの炎症の程度を示す図。 【図2】図2(A)はCD44発現マクロファージとCD44非発現マクロファージとを用いてzymosanあるいはLPSで刺激した結果を示す図。図1(B)は、図2(A)においてマイクロファージで行った実験を胎児繊維芽細胞に対して同様に行った実験結果を示す図。図2(C)は、図2(A)にて行ったマクロファージに対するNF-κBの活性の時間変化について行った実験の結果を示す図。 【図3】図3(A)は、LPSを用いてルシフェラーゼ活性を測定した図。図3(B)はzymosan、TNF-αを用いてるしフェラー是活性を測定した図。 【図4】図4(A)、CD44非発現マクロファージ、CD44発現マクロファージのそれぞれに対し、zymosanで刺激した際におけるIL-6の産生を示す図。図4(B)はTNF-αの産生を示す図。 【図5】図5(A)は他のTLR刺激であるLPS、PolyIC、ODN、Flagellin、R848それぞれによる刺激に対するIL-6の産生を示す図。図5(B)はTNF-α産生を示す図。 【図6】図6(A)は、他のTLR刺激であるIL-1bによる刺激に対するIL-6の産生を示す図。図6(B)はTNF-α産生を示す図。 【図7】CD44非発現マウスと野生型マウスに対するLPSショックについて行った実験結果を示す図。 【図8】LPSに対するtoleranceについて行った解析結果を示す図。図8(A)はIL-6産生量を、図8(B)はTNF-α産生量を示す。 【図9】LPSで刺激した際のヒアルロン酸のサイトカイン産生に及ぼす影響を解析した図。図9(A)、(C)はIL-6産生量を、図9(B)、(D)はTNF-α産生量を示す。 【図10】図10(A)はzaymosanの細胞内への取り込みを解析した結果を示す図。図10(B)はLPSの細胞表面への結合状態を解析した結果を示す図。 【図11】CD44分子の概要を示す図。
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| 【出願人】 |
【識別番号】304021831 【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
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| 【出願日】 |
平成16年9月17日(2004.9.17) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2006−83122(P2006−83122A) |
| 【公開日】 |
平成18年3月30日(2006.3.30) |
| 【出願番号】 |
特願2004−271191(P2004−271191) |
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