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【発明の名称】 NMDA受容体媒介性神経障害の防止薬剤
【発明者】 【氏名】リプトン スチュアート エー

【要約】 【課題】非虚血性の疾患にかかっている哺乳類の受容体媒介の神経細胞の退化を遅くする薬剤を提供する。

【解決手段】哺乳類の非虚血性NMDA媒介による神経細胞の退化を、以下に示されている式で表される化合物(あるいは整理学的に許容される塩)を投与することによって遅らせる薬剤。なお、この化合物において、R1−R16は互いに独立に水素(H)あるいは1−5個の炭素を有する短鎖脂肪族基、R4とR10は(互いに独立に)ハロゲンあるいはアシル基である。さらに、NMDA媒介による神経毒性に対して、臨床的に許容され、上記神経毒性に選択的に作用する拮抗質をスクリーニングする方法が開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類における非虚血性NMDA受容体の媒介による神経細胞の退化を遅らせる薬剤であって、以下に示される式で表される化合物を含み、哺乳類に投与する薬剤であり、この化合物は、R2−R16は互いに独立に水素(H)あるいは1−5個の炭素を含む短鎖脂肪族基であり、R4とR10は(互いに独立に)ハロゲンあるいはアシル基、あるいはこれらの生理学的に許容される塩であり、上記退化を遅らせるのに有効な濃度で前記化合物を含むことを特徴とする薬剤。
【化1】


【請求項2】
哺乳類における非虚血性NMDA受容体の媒介による神経細胞の退化を遅らせる治療薬剤であって、この治療薬剤は以下に示される式で表される化合物を含み、この化合物は、R2−R16は互いに独立に水素(H)あるいは1−5個の炭素を含む短鎖脂肪族基であり、R4とR10は(互いに独立に)ハロゲンあるいはアシル基、あるいはこれらの生理学的に許容される塩であり、上記退化を遅らせるのに有効な濃度で前記化合物を含むことを特徴とする薬剤。
【化2】


【請求項3】
上記化合物がアマンタディン(amantadine)であることを特徴とする請求項第1項または2項に記載の薬剤。
【請求項4】
4がメチル基であることを特徴とする請求項第1項あるいは2項に記載の薬剤。
【請求項5】
10がメチル基であることを特徴とする請求項第1、2あるいは3項に記載の薬剤。
【請求項6】
4及びR10がメチル基であることを特徴とする請求項第1あるいは2項に記載の薬剤。
【請求項7】
上記化合物がメマンチン(memantine)であることを特徴とする請求項第8項に記載の薬剤。
【請求項8】
−NH2
【化3】


に置換され、X1とX2が互いに独立に水素(H)あるいは1−5個の炭素を有する短鎖脂肪族基であることを特徴とする請求項第1あるいは2項に記載の薬剤。
【請求項9】
1とX2がそれぞれ水素(H)とCH3であるか、あるいはX1とX2がそれぞれCH3と水素(H)であることを特徴とする請求項第8項に記載の薬剤。
【請求項10】
上記化合物がレマンタディン(rimantadine)であることを特徴とする請求項第9項に記載の薬剤。
【請求項11】
4がメチル基であることを特徴とする請求項第8項に記載の薬剤。
【請求項12】
10がメチル基であることを特徴とする請求項第8項に記載の薬剤。
【請求項13】
4とR10がメチル基であることを特徴とする請求項第8項に記載の薬剤。
【請求項14】
上記NMDA受容体の媒介による神経毒性が興奮性アミノ酸によって媒介されることを特徴とする請求項第1あるいは2項に記載の薬剤。
【請求項15】
上記NMDA受容体の媒介による神経毒性が、グルタミン酸塩(glutamate)、アスパルテート(aspartate)、ホモシスチック(homocysteic)酸、システイン(cysteine)硫酸、システイン酸、キノリネート(quinolinate)、あるいはN−アセチル・アスパチル・グルタメート(aspartyl gulutamate)であることを特徴とする請求項第1あるいは2項に記載の薬剤。
【請求項16】
上記哺乳類は、非虚血性のアルツハイマー病に患かっていることを特徴とする請求項第1あるいは2項に記載の薬剤。
【請求項17】
上記哺乳類は、ハンティング舞踏病あるいは 筋萎縮側索硬化症に患かっていることを特徴とする請求項第1あるいは2項に記載の薬剤。
【請求項18】
上記哺乳類は、神経性ラチリスム(neurolathyrism);
グアム(Guam)病、olivo−pontocerebellar小脳萎縮症、高血糖症(非ケトン性)、肝性脳障害、尿毒脳障害、4−ヒドロキシ酪酸性尿症(4−hydroxybuturic aciduria),MELAS症候群、レットt症候群、ホモシスチン症、高プロリン症(hyperprolinemia)、及び末梢神経症のいずれかに患かっていることを特徴とする請求項第1あるいは2項に記載の薬剤。
【請求項19】
上記哺乳類は、長期にわたり非虚血性の神経退化症に患かっていることを特徴とする請求項第1あるいは2項に記載の薬剤。
【請求項20】
上記哺乳類は、中央神経組織損傷に患っていることを特徴とする請求項第1あるいは2項に記載の薬剤。
【請求項21】
上記哺乳類は、一酸化炭素、鉛、domoic酸中毒に患かっていることを特徴とする請求項第1あるいは2項に記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はアマンタジン(抗ウィルス剤)およびその化合物(特にメマンチンとリマンチジン)を用いた薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アマンダジンおよび/または関連の化合物は、従来よりウィルス治療法に用いられてきた。当初、これらの化合物は、特にインフルエンザウィルスの治療に提案された。たとえば、Mullis et al.による特許文献1は、抗ウィルス剤としてのアダマンチルアミンを開示している。また、Griffinの特許文献2では、アマンタジン誘導体は単純庖疹(ヘルペス)ウィルスに有効であることを開示している。smithの特許文献3(カラム13、24〜31行)には、ある種のアマンタジン関連化合物は動物ウィルス、特に豚インフルエンザに効果的であることが開示される。
【0003】
アマンタジンとその化合物は、パーキンソン症候群に有効であることも観察されている(非特許文献1)。また、Braunwald et al.(非特許文献2)は、アマンタジンが従来よりパーキンソン病の治療に用いられ、蓄積されたドーパミンを神経シナプス前部末端から解放する作用によって治療効果をあげている旨を報告している。Merk lndex(非特許文献3p.55,#373; p.1188,#8116,and APP-2,#A7)は、A型インフルエンザ、パーキンソン症候群の治療、薬物誘発による錐体外部の反応などに多様な化合物が使用されていることを示している。そのような化合物のひとつは、鎮痙剤としてや、排尿(尿意)、四肢筋の動きの抑制剤として研究されている。
【0004】
このような化合物の使用例として、Schermは('193、6:56-60)、「ある種の化合物は(パーキンソン症候群の他にも)、点頭、視床緊張状態、緊張過度などを含む運動過剰症の治療や、失動症の大脳器官の活性」に用いられ得ることを示している。
【0005】
Bormann et al.の特許文献4は、ある種のアマンタジン誘導体は、中心神経系へのドーパミン作用に起因する作用モードによって、パーキンソン症候群の治療のみならず(2:38-3:17)、大脳血液欠乏症に関連する神経障害の緩和に有効であることを開示する。このような神経障害は、N−メチル−D−アスパルテート(NMDA)のサブタイプの刺激性アミノ酸受容体の介在によるものである。Bormann et al.は、ある種のアダマンチン誘導体は「NMDA受容体のチャンネル拮抗性および抗痙れん特性を示す」と述べている(2:61-63)。さらに、アダマンチン誘導体は、「特に、卒中、心臓外科手術、心臓停止、蜘蛛膜下出血、一過性心臓乏血性発作、周産期仮死症、無酸素症、低血糖症、無呼吸症(一時的な呼吸停止)、アルツハイマー病などによる、大脳の血液欠乏症の予防と治療に適する」とも述べている(3:10-16)。
【0006】
Turski et al.(非特許文献4)は、MPTP(1-mlethyl-4-phenyl-1,2,3,6,-tetrahydropyridine)として知られるトキシン(毒物)の摂取によって引き起こされる、ドーパミン作用性の毒性における刺激性アミノ酸の役割を調べる実験について報告している。刺激性アミノ酸アンタゴニスト(拮抗質)は、MPP+(MPTPの活性代謝産物)とともに投与されると、ある種のNMDAアンタゴニスト(拮抗質)は、MPP+に対する一時的な予防を果たす。
【0007】
Meldrum(非特許文献5)は、内因性または外因性の刺激性アミノ酸受容体アゴニストが、疾病時の神経退行の一因となる可能性について論じている。まず、刺激性アミノ酸(特にグルタミン酸塩)の活性に含まれるいくつかの受容体を論じた後で、著者は刺激毒性のメカニズムが、植物と毒性に関連する2つの慢性症候群の病因になり得るとともに、ハンティングトン病、オリーブ橋小脳萎縮症、アルツハイマー型老人性痴呆症、パーキンソン症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの慢性神経退行の病因になり得ると示唆している(p.386)。
【0008】
Rothman et al.(非特許文献6)もまた、グルタミン酸塩の神経毒性が多様な神経疾患における神経退行の要因である可能性について論じている。
【0009】
Bormann(非特許文献7)は、メマンチンが、NMDA受容体チャンネルをブロックすることを報告している。
【0010】
Kornhuber et al.(非特許文献8)は、メマンチンが死後のヒトの脳のホモジェネートにNMDAアンタゴニスト(MK-801)が結合するのを抑制することを報告している。
【0011】
Hahn et al.(非特許文献9)は、NMDAに似たグルタミン酸塩類似毒物は、卒中、発作、退行症(ハンティングトン病やアルツハイマー病)、グアム島で発見された筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン病/痴呆の複合症などの深刻な神経障害の後にみられる神経細胞の破壊の原因になり得ることが広く受けられていると報告している。彼らは、NMDA活性チャンネルへのCa++の進入が、この種の神経死の原因であろうとの所見を述べ、臨床学的に種々の神経疾患の治療に有効と思われる方法を示唆している。
【0012】
Choi(非特許文献10Neuron,1:623-634)は、刺激性アミノ酸による神経毒性が、ハンティングトン病などの緩進行性の退化症に影響を与えることを報告している。
【0013】
【特許文献1】米国特許第3,391,142号明細書
【特許文献2】米国特許第4,351,847号明細書
【特許文献3】米国特許第3,328,251号明細書
【特許文献4】米国特許第5,061,703号明細書
【非特許文献1】Tominack and Hayden ,pp.460-461,Scherm U.S.4,122,193,at 6:54-60
【非特許文献2】Braunwald et al. Prlnciples of lnternal Medicine,llth ed.,P.2017.New York,McGraw Hill,1987
【非特許文献3】Merk lndex p.55,#373; p.1188,#8116,and APP-2,#A7
【非特許文献4】Turski et al. Nature,349:414,1991
【非特許文献5】Meldrum Trends Pharm.Sci.September,1990,vol.11,pp.379-387
【非特許文献6】Rothman et al. Trends Neurosci.10:299-302,1987
【非特許文献7】Bormann Eur.J.Pharm.,1989,166:591-592
【非特許文献8】Kornhuber et al. Eur.J.Pharm.,1989,166:589-590
【非特許文献9】Hahn et al. Proc.Nat'l Acad.Sci.,1988,85:6556-6560
【非特許文献10】Choi Neuron,1:623-634
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した従来技術では、非虚血性の疾患にかかっている哺乳類の受容体媒介の神経細胞の退化を遅くすることは難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記ボーマンの特許文献4に開示の方法と対比して、一般に本発明は、非虚血性の疾患にかかっている哺乳類の受容体媒介の神経細胞の退化を遅くする薬剤に関する。本発明の薬剤では、図1に示される式で表される化合物(あるいはその生理学的に許容される塩)を哺乳類に投与する。この化合物において、R2−R16は互いに独立に水素(H)あるいは1−5個の炭素を含む短鎖脂肪族基であり、R4とR10は(互いに独立に)ハロゲン(特に、フッ素、塩素、あるいは臭素)あるいはアシル基である。化合物は、神経細胞の退化を遅らせるのに有効な濃度を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の薬剤によれば、非虚血性の疾患にかかっている哺乳類の受容体媒介の神経細胞の退化が遅くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
好ましい実施例において、化合物は好ましくはアマンタディンである。R4はメチル基であり、R10はメチル基である。R4とR10は共にメチル基である。R4とR10は共にメチル基であり、化合物はメマンチンであることが好ましい。
【0018】
図1の−NH2は以下の通りであっても良い。
【化1】


なお、X1とX2は、互いに独立に水素(H)あるいは1−5個の炭素を有する短鎖脂肪族基(すなわち、メチル基あるいは1−4(−CH2)基、及びターミナルメチル基)である。R4はメチル基であり、R10はメチル基である。R4とR10はメチル基である。X1とX2がそれぞれ水素(H)とCH3であるか、あるいはX1とX2がそれぞれCH3と水素(H)である。化合物がレマンタディンであることが好ましい。
【0019】
種々の実施例において、哺乳類は人間であり、免疫欠損ウィルスに患かっているか、エイズ関連症候群あるいは後天性免疫不全症候群の症状を持っているか、興奮性アミノ酸、あるいはNMDA受容体によるイオンチャンネルを活性化させるキノリネート(quinolinate)等の構造の類似する化合物によって(直接あるいは間接的に)神経毒性が媒介されていたりする。なお、神経毒性は、グルタミン酸塩、アスパルテート、ホモシスチック酸、システイン硫酸、システイン酸、キノリネート、あるいはN−アセチル・アスパチル・グルタミン酸塩である。
【0020】
なお、「非虚血性の長期にわたる進行性NMDA受容体媒介による神経細胞の退化」とは、NMDA受容体の刺激あるいは同時刺激(costimulation)の結果として長期に及ぶ進行性の神経細胞の損傷を意味する。特に、ハンティング舞踏病、アルツハイマー病、筋萎縮側索硬化症(ALSN運動神経症としても知られている)、後天性免疫不全症(AIDS)などである。本発明に基づいて扱われる病気は、神経性ラチリスム(neurolathyrism、これはchick豆にあるβ−N−oxalyamino−L−アラニンに起因するものであると、グアム(Guam)病 (これは、そてつの種子の粉にあるβ−N−メチル−アミノ−L−アラニンに起因する)と、olivo−pontocerebellar小脳萎縮症などである。さらに、ある種のミトコンドリア異常あるいは先天性の生化学異常の治療も、本発明に含まれる。高血糖症(非ケトン性)、肝性脳障害、尿毒脳障害、4−ヒドロキシ酪酸性尿症(4−hydroxybutric aciduria),MELAS症候群(ミロコンドリア性ミオパシー、脳脊髄障害、乳酸アシドーシス、及び発作症状(episodes)、レット症候群、ホモシスチン症、高プロリン症(hyperprolinemia)、及び末梢神経症などである。さらに、本発明は以下の病気の治療も含んでいる。すなわち、末梢神経症、特に中央神経組織に起因する末梢神経症で特別痛い種類である。非常に痛い損傷(脊髄、脳あるいは目の損傷など)、一酸化炭素中毒、鉛中毒、domoic酸中毒(汚染された筋肉内にあるグルタミンに似た作動薬による)などである。
【0021】
本発明の有効な化合物は、三環式10炭素リングである。その一般式が図1に示されているように、少なくとも一個の−NH2基を持っている。−NH2基は、リング炭素に直接付いていても(アマンタディンの場合のように、図2aを参照)、炭素リングに付いている炭素に付いていても良い(リマンタディン、図2b)。R2−R17(図1の一般式の)は、水素原子、メチル基、あるいは、1−5個の飽和炭素(すなわち,1−4(−CH2)基、及びターミナルメチル基)を有する短鎖脂肪族基、あるいは、これらのコンビネーションでもよい。これらの化合物の神経保護力価を、リングの水素を置換することにより高めることができる。一例において、位置R4とR10にあるメチル基を置換することによって、化合物の能力と力価を高めて、グルタメートに起因する神経の損傷を阻止する。研究所の試験管の中で、2−12μMの濃度のメマンチンは神経を保護する(以下を参照);アマンタディンはこれらの位置で置換されない分子であり、約200μMの濃度で有効である。図1の一般式にある化合物の水溶度は、化合物を整理学的に許容可能な塩に、例えば、HC1と反応させることによって、製剤することによって高めることができる。
【0022】
本発明の好ましい化合物(すなわち、アマンタディン、リメマンディン、及び類似の誘導体は水溶性であり、血液脳障壁を通過可能であり、非常に急速にそして非常に有効な治療を促進する。好ましい化合物は、人に対して安全に投与できるという利点を有する(すなわち、ウィルスの感染の治療、あるいは、振せん麻痺による神経細胞の退化ではないパーキンソン病の治療などである)。例えば、アマンタディンは、少なくともアメリカ合衆国では、人の治療に認められている。本発明の方法によって治療される疾患は、本願で上述したものである。
【0023】
本発明の他の態様は、NMDAチャンネル拮抗質の安全性と有効性を確認するために予備スクリーニングする方法である。すなわち、迅速に作用し、化合物の投与停止後迅速に作用を停止することを特徴とし、さらに、活動を阻止するためにNMDA−興奮性の化合物を必要とするNMDA受容体チャンネルコンプレックス拮抗質を選択する。候補NMDAチャンネル拮抗質の予備スクリーニングは、(a)NMDA−受容体関連のイオンチャンネルの遮断を誘起する為に候補物質が要する時間を査定することと、(b)化合物の投与が停止されたときに、イオンチャンネルの遮断が終了するのに要する時間を査定することと、(c)NMDA興奮性物質が無いときに、NMDA媒介された電流をブロックする化合物の機能を査定することと、(b)MK−801に特有な時間より短かく、(a)あるいは(b)の時間を要する物質と、(c)において実質的にマイナスの結果をもたらし、臨床的に耐性のある選択的NMDA拮抗質である候補物質を選択することと、化合物がNMDA神経毒性に対して有効であることの確認を行うことである。これらの化合物はテストされ、NMDA媒介による神経毒性に抵抗力があることが確認される。
【0024】
本発明の他の特徴及び効果は、次の詳細な説明より明らかにされる。
【0025】
本発明は、アマンタジン誘導メマンチン(1−アミノ−3,5−ジメチルアダマンチン)が神経障害を緩和するという発見、および、このような症状の緩和が、前記薬剤(アマンタジン誘導メマンチン)を摂取したヒトの患者の体内で容易に得られるメマンチンを用いて、刺激性アミノ酸塩(グルタミン酸塩化合物など)によるNMDA受容体作用チャンネル活性をブロックすることで達成されるという発見に基づく (Wesemann et al.,J.Neural Transmission(Supp.) 16:143,1980)。ひとつ以上のグルタミン酸からなる化合物のレベル上昇は、前述の多様な神経退行症と関連するものなので、マンタジン誘導体の投与は上記症状の治療に有効となる。グルタミン酸塩自体の刺激以外にも、その他の刺激性アミノ酸や類似の化合物によるNMDA受容体の刺激によって、神経損傷が引き起こされ得る。
【0026】
類似化合物の例として、アスパルテート、ホモシステイン酸、硫酸システイン、システイン酸、キノリン酸塩などがある。神経損傷はまた、N−アセチルグルタミン酸などの刺激性ペプチドにも起因する。
【0027】
本発明では、構造的にメマンチンと関連するその他の化合物も用いることができる。「構造的に関連する」とは、アミノ基を有する三環式10炭素環から成る化合物を指す。その例として、アマンタジン(塩酸−1−アダマンタンアミノ)
、リマンタジン(α−メチル−1−アダマンタンメチルアミン塩酸塩)などがある。
【0028】
本発明の化合物(すなわち、図1に示す構造式の化合物、及び効力増大可能な代用物質を含む化合物)の神経障害緩和の効力は、後述する評価基準でテストされる。効果的な化合物ほど、神経細胞の死滅を低減し、NMDA受容体媒介性の障害から神経を効果的に保護する。NMDA受容体媒介性の障害とは、グルタミン酸塩、その他の刺激性アミノ酸、または構造的に類似の化合物によるNMDA受容体の刺激に起因する障害、あるいはN−アセチルアスパルチルグルタミン酸塩などの刺激性ペプチドによる刺激に起因する障害である。
【0029】
神経細胞の機能と死滅における分析評価
アマンタジン誘導体の神経毒防止能力をテストするために、神経細胞の死滅を以下の手順で評価測定する。生理食塩水に顆粒の蛍光染料ブルー (Mackromolecular chemin社、ドイツ)を溶かした2%の懸濁液を、通常の麻酔下で生後6日のロングエバンスラット(Long-Evans rat)の上丘(中脳蓋前寄りの突起)部に注入する。2〜6日後、ラットを断頭し、網膜を迅速に摘出する。摘出した網膜を、酵素パパインの薄い処理液で解離し、Lipton et al.(J.Physiol.385:361,1987)にしたがって、0.7%(w/v)のメチルセルロース、0.3%(w/v)のグルコース、2mMのグルタミン、1μg/mlのゲンタマイシン、および5%(v/v)のラットの血清を添加したイーグルスの最小必須培地(MEM、カタログ#1090、Gibco,Grand Island,NY)で培養する。細胞を、35mm組織培養皿の中でポリ−L−リシンでコーティングした75mm2のカバーガラス上で培養する。候補としたアマンタジン誘導体を、NMDA受容体作用のチャンネル複合体を活性化する化合物の存在下で、または非存在下で、NMDA受容体の神経毒性を強化する高カルシウム低マグネシウム培地(10mM CaCl2,50μM MgCl2)申に(例えば、1nMから1mMの範囲の濃度で連鎖的に)添加する(Hahn et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:6556,1988:Levy et al.,Neurology 40:852,1990: Levy et al.,Neurosci.Lett.110:291,1990参照)。これらのイオン条件下で、または外成のNMDAを200μMを添加した上で、神経細胞の生残率を、NMDA受容体媒介による神経細胞の損傷を最小にする標準培地中(1.8mM CaCl2 ,0.8mM MgCl2)での生残率と比較する。上記Hahn et al.のプレパラートートでは、5%CO2/95%空気雰囲気下で恒温培養を37℃で16〜24時間続ける。レチナールガングリオンセルのフルオレセインアセテートの取り込み結合能力を、それら細胞の生存度の指標とする(詳細は、Hahn et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:6556,1998に記載)。染料の取り込みおよび結合は、パッチ電極で測定される正規の電気生理学特性と相関する。
【0030】
生存率テストを行うために、細胞培養基を15〜45秒間、0.0005%のフルオレセインジアセテートを含む生理食塩水と交換し、その後細胞を食塩水で洗浄する。フルオレセイン染料を含有しない(すなわち生残しない)レチナールガンクリオン細胞ニューロンの確認は、位相差顕微鏡、UV(紫外線)蛍光顕微鏡のいずれでも見ることができる。後者の場合、顆粒球ブルーのマーカー染料が継続して存在する中で、死滅したレチナールガングリオン細胞は、分解して細胞の残骸のみを残す。これとは対象的に、生存するレチナールガングリオン細胞は、紫外線光線中で青色を示すだけでなく、フルオレセインに適したフィルターを通すとイエローグリーンに蛍光発光する。2つの交換可能の蛍光フィルターセットを用いると、培養基中の生存ガングリオンセルを迅速に検出することができる。ガングリオンセルは、単独ニューロンとして見つけられるか、他の細胞の小さなクラスター(房状集合)の中に生存するニューロンとして見つけられる。
【0031】
アマンタジン誘導体は、既存の方法で無傷のまま隔離されたセルであるならば、中心神経系から採用した任意の種類の神経セルを用いて、その有用性をテストすることができる。上述のレチナールの培養以外にも、海馬ニューロン及び皮質ニューロンを用いて実験を行ったが、NMDA受容体を有するニューロンであればどのようなニューロンを用いても良い(たとえば、脳のその他の部分など)。採取するニューロンは胎児、または出生直後のものが望ましく、ヒト、げっ歯動物(ネズミ)、その他のほ乳類のものでもよい。生後まもなくのほ乳類のレチナール培養は、その一例である。この培養例では、蛍光標識ではっきりと認識できる中心ニューロンのレチナールガングリオンセルを含み、特徴づけが良好になされる。培養基中のレチナールガングリオンセルのほとんどの部分が、機能的なシナプス活動を示し、無傷の中心神経系に見られる神経伝達物質受容体のほとんどをそのまま有する。
【0032】
以下に、本発明の方法に有効なアマンタジンの例と、神経障害を緩和するその効力について述べるが、ここに記載される例は本発明を説明するためのものであって、これに限定されるものではない。
【0033】
メマンチンによるNMDA受容体媒介性の神経毒性の防止
上述した評価基準で、アマンタジン誘導体であるメマンチンの、グルタミン酸塩処理を施したレチナールガングリオンセルの生残率向上効果をテストした。8つの例で、レチナールガングリオンセルを通常の培地(1.8mM CaCl2,0.8mM MgCl2を含むMEM)か、高カルシウム低マグネシウム培地(10mM CaCl2,50μm MgCl2)のいずれかで培養した。後者の培地は、内因性のグルタミン酸塩受容体アゴニストによってNMDA受容体媒介性の神経毒性を増大させることが知られている(Hlahn et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:6556,1988: Levy etal.,Neurology 40:852,1990: Levy et al.,Neurosci.Lett.110:291,1990)。
【0034】
メマンチンHClを、二度蒸留した蒸留水で希釈し、ろ過して、最終濃度が1〜25μMになるように増殖培地に添加した。レチナールセルを、加湿した5%CO2/95%空気の雰囲気中で37℃で16〜20時間、恒温培養した。
【0035】
図3に示すように、内因性のグルタミン酸塩類似のアゴニストは、細胞外のカルシウム濃度をあげていくと(図3のグラフのカラム1と2を比較)、レチナールセルに神経毒性を生じさせる。このアゴニストがグルタミン酸塩と関連するものであることを証明するために、酵素、すなわちグルタミン酸塩/ピルビン酸塩トランスアミナーゼ(GPT;0.25mg/ml; Boehringer-Mannhelm,lndianapolis,IN)を添加した。この酵素は特にピルビン酸塩存在下で、内因性グルタミン酸塩をα−ケトン−グルタミン酸塩へとアミノ基転移を行うことによって、グルタミン酸塩を減成する。このような条件を与えると、レチナールガングリオンセルの生存が向上した。すなわち、高カルシウム低マグネシウム培地にGPTとピルビン酸塩(2mM)を加えると、生存ニューロン数が、対照基準である標準培地での生存ニューロン数率とほぼ等しくなった。この事実は、内因性のトキシンがグルタミン酸塩そのものであることを示している。HPLC分析がGPTによるグルタミン酸塩の分解を証明した。
【0036】
アマンタジン誘導体メマンチンは、その用量に依存して、内因に性グルタミン酸塩によるレチナールガングリオン細胞の死滅を防止した(図3)。メマンチン量が6μMのときに(図3、カラム4)、対照基準(カラム1)と比較して統計的な有意性に到達した。メマンチン投与を含む図3の実験すべてを3度繰り返し、基準培地(メマンチンなしの標準培地)に標準化した。図中の値は、平均値+平均値の標準誤差(SEM)を示す。有意性をテストするために、分散の分析評価を行った。この分析のあと、平均値のマルチ比較を行うシェッフェ(Scheffe)テストを行った(上記”Hahn et al.,1988”参照)。
【0037】
これらのデータから、メマンチンが、NMDA受容体の過度の刺激が媒介となって起きる神経セルの死滅を防止することがわかる。メマンチンの神経保護効果のメカニズムに関する理論に縛られないならば、メマンチンがNMDA受容体関連のイオンチャンネルでグルタミン酸塩によって誘導される細胞内Ca2+の増加をブロックする可能性も考えられる。MK−801(ジゾシルピン;NMDA特定アンタゴニスト(拮抗薬)と類似して、メマンチンの作用モードは、NMDA受容体作用チャンネルをブロックすることによるCa2+流入の不競合阻害であるといえる。そうであれば、メマンチンによる阻害は、それに先立つアゴニストによる受容体の活性化にのみ付随するといえる。このことは、治療レベルにおいて重要な因果関係を有する。本発明の化合物によって、グルタミン酸塩またはその他の刺激性化合物のレベル上昇に起因する神経傷害を効果的に防止する一方で、正常なNMDA受容体活性化(例えば、長期にわたる薬効の増加、学習及び記憶形態に関係する活性化)には影響を与えずにすむ(Karschin et al.,J.Neuroscl. 8:2895,1988; Lcvy and Lipton,Neurology 40:852,1990 )。メマンチン類似体は、米国およびソビエト連邦で、A型インフルエンザ治療の治療用量で臨床試験されてきた。これらの研究で、中心神経系にはごく限られた、可逆性の副作用しかないことがわかっている(Tominack et al.,Infect.Dis.Clin.N.Am.1: (2):459, 1987; Clover et al.,Am.J.Dis.Child.140 :706,1986;Hall et al.,Pediatrics 80(2):275,1987; Zlydnikov et al,Reviews of Infect.Dis.3 (3):408,1981; Dolin et al.New Eng.J.Med. 302:580,1982)。数週間にわたってアマンタジンで治療を受けたパーキンソン症候群の大人の患者に、視覚障害が起きた例が一例だけあったが、薬剤投与の停止後、視覚は完全に回復している(Perlman et al.,JAMA 237:1200,1977)。
【0038】
本発明の範囲内で、その他のNMDAチャンネル複合体遮断薬を選択する場合は、上記メマンチンのテストデータが暗示する点を理解することが重要である。
【0039】
第1に、不競合性のNMDA阻害剤、すなわち阻害作用がそれに先立つ受容体アゴニストによる受容体活性化にのみ付随して起きる阻害剤を選択するのが有効である。第2に、迅速に作用し、投与停止後はすみやかに逆行可能なNMDA阻害剤を選択するのが有効である。このような選択によって、正常のCNS機能が最大限となり、副作用を低減できる。
【0040】
以下で述べる例からわかるように、NMDA受容体媒介による反応を阻害/非阻害するメマンチンの動態はかなり速い。
【0041】
図4は、ラットのレチナールガングリオンセル上のメマンチン(MEM)による、NMDA誘導全細胞流のオープンチャンネルブロックを立証するものである。図4Aは、全細胞記録で、保持電位−50mVと+50mVにおいて200μMのNMDA誘導流に対する12μMのメマンチンのブロック効果を示す。図4Bは、−60mVでのみ投与された場合、12μMのメマンチンで200μMのNMDA誘導流に対する効果が欠如することを示す(図4B左側)。アゴニストとともに投与した場合、12μMのメマンチンは、50μMのカイナート(Kainate:KA)または5μMのクイスクアラート(Quisqualate:QUIS)によって誘導される細胞流にはまったく影響を与えないが、−60mVで200μMのNMDAに対しては90%まで阻害した(n=17)(図4B右側)。図4A、4Bに示す実験では、薬剤の投与には迅速な投薬システムと、迅速な洗浄方法を採用した。
【0042】
上記の実験を以下のようにして行った。
【0043】
細胞培養
レチナールガングリオンセルのラベリング(標識)、解離、培養に、周知の方法を用いた(詳細は、Leifer et al.,1984,Science 224:303-306参照)。簡単に説明すると、生後4〜6日のロングエバンスラットの上丘部に顆粒ブルーを逆輸送で注入して逆行的に標識した。2〜6日後、ラットを断頭して網膜を摘出し、網膜を酵素パパインの薄い処理液で解離した。レチナールセルを、35mm組織培養皿の中でポリ−L−リシンでコーティングしたカバーガラス上で培養した。増殖培地は、イーグルスの最小必須培地に0.7%(w/v)のメチルセルロース、0.3%(w/v)のグルコース、2mMのグルタミン、1μg/mlのゲンタマイシン、および5%(v/v)のラットの血清を添加した培地を用いた。
【0044】
パッチクランプ電気生理学
ラットのレチナールガングリオンセルの全細胞および単チャンネルの記録を周知の方法で行った(詳細は、Hamill et al.,1981; Lipton and Tauck,1987参照)。27〜29℃で、処理溶液(NaCl:137.6mM、KCI:5.8mM、CaCl2:2.5mM、HEPES:5mM、グルコース22.2mM、フェノールレッド0.001%(v/v)、グリシン1μM、pH7.2、マグネシウム含有せず)を入れたチャンバー内に、ニューロンを継続的に注入した。パッチピペットに細胞内溶液を満たした。細胞内溶液は、CsCl:12mM、テトラエチルアンモニウム塩化物20mM、HEPES:10mM、 EGTA:2.25mM、CaCl2:1mM、MgCl2:2mMを含み、場合に応じて、記録が長引いた場合に衰退を最小にするために3mMのMg-ATPを加えたものである。アゴニストとアンタゴニストをそれぞれ、1μMのテトロドトキシン(TTX)を含んだ処理溶液内に調合し、ニューロンから20〜50μMの位置に配置した空気ピペットのアレイに適用した。溶液の取り替えは、マイクロマニピュレータドライブを用いてアレイを動かし、ピペット先端をセルに対して一定に揺することによって、50〜100msecの範囲内ですばやく行った。NMDA誘導流を、処理溶液と1μMのTTXを含んだ制御ピペットを用いて洗い流した。
【0045】
治療法
神経損傷を防ぐには、NMDA受容体に対するグルタミン酸塩の影響を十分に遮断できる量のアマンタジン及びその誘導体を、任意の経路で投与する。アマンタジン誘導体は、製薬担体(生理食塩水)を使用して調合薬剤中に含有させても良い。治療用のアマンタジン誘導体の混合物の正確な処方は投与経路によって異なる。この化合物は、経口または静脈注射で投与するのが好ましいが、蜘膜下注射または硝子体注射で投与してもよい。良好化合物であるアマタンジン、メマンチン、リマンタジンの投与量は、それぞれ1日あたり100-500μg、5-80mg、50-300mgを数回に分けて投与するのが好ましい。本発明の検査分析で効果的な神経保護剤として判断されるその他の化合物は、1日当たり100μg〜500mgを数回に分けて、経口、静脈注射、蜘膜下注射、硝子内注射のいずれかで投与される。治療を神経傷害涯を防止するのに必要なだけ繰り返す。本発明の化合物は、前述した多くの疾患と関連して発生する緩進行性の神経退行の防止に用いられる。
【0046】
本発明の方法は、特にAIDSによる知的障害、AIDSウィルス(HIV−1、HIV−2、その他の形態のウィルス)による神経性の症状の治療にも特に有用である。また、神経系に損傷を与えるその他のウィルス感染症に起因する神経障害の緩和にも用いられる。本発明は、急性及び慢性の神経退行性の症状の治療も特徴とする。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上述べた薬剤は、NMDA受容体を保有するすべてのほ乳類の神経障害の緩和に有用である。ヒトの神経損傷の治療は、その有効な適用例であるが、もちろん獣医学上の目的でも本発明の薬剤を有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の薬剤に有用な化合物の一般構造式である。
【図2a】アマンタジンを示す図である。
【図2b】リマンタジンを示す図である。
【図2c】メマンチンを示す図である。
【図3】メマンチンがグルタミン酸塩媒介によるレチナールガングリオンセル(神経節細胞)の神経毒性を防止する効果を示すグラフである。
【図4a】パッチクランプ実験結果を示す図である。
【図4b】パッチクランプ実験結果を示す図である。
【出願人】 【識別番号】505242884
【氏名又は名称】ザ チルドレンズメディカルセンター コーポレーション
【出願日】 平成17年12月7日(2005.12.7)
【代理人】 【識別番号】100075258
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二

【識別番号】100096976
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 純

【公開番号】 特開2006−77034(P2006−77034A)
【公開日】 平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願番号】 特願2005−354152(P2005−354152)