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【発明の名称】 肥満予防・改善剤
【発明者】 【氏名】下豊留 玲
【住所又は居所】栃木県芳賀郡市貝町赤羽2606 花王株式会社研究所内

【氏名】鈴木 淳子
【住所又は居所】栃木県芳賀郡市貝町赤羽2606 花王株式会社研究所内

【氏名】杉野 菜奈美
【住所又は居所】栃木県芳賀郡市貝町赤羽2606 花王株式会社研究所内

【氏名】中村 純二
【住所又は居所】栃木県芳賀郡市貝町赤羽2606 花王株式会社研究所内

【要約】 【課題】肥満予防・改善剤、高脂血症の予防・改善等、種々の生活習慣病の発症を予防・改善する効果を発揮し得る、安全性が高いと共に適用範囲が広く、且つ食感を損なうことが少ない食品、医薬品等の素材を提供する。

【解決手段】アセチル化澱粉又はオクテニルコハク酸化澱粉を有効成分とする肥満予防・改善剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセチル化澱粉又はオクテニルコハク酸化澱粉を有効成分とする肥満予防・改善剤。
【請求項2】
アセチル化澱粉又はオクテニルコハク酸化澱粉を有効成分とする内臓脂肪蓄積抑制剤。
【請求項3】
アセチル化澱粉又はオクテニルコハク酸化澱粉を有効成分とする血糖値上昇抑制剤。
【請求項4】
アセチル化澱粉又はオクテニルコハク酸化澱粉を有効成分とする糖尿病予防・改善剤。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、肥満や糖尿病等の生活習慣病の予防・改善作用を有し、食品又は医薬品として有用な素材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本人の食生活の欧米化に伴うエネルギー過剰摂取(脂肪や蔗糖摂取量の増加)に加えて、運動不足が重なり、肥満や糖尿病をはじめとした生活習慣病は増加の一途を辿っている。このような社会的背景から、肥満や糖尿病の予防改善対策は極めて重要である。
【0003】
肥満や糖尿病を予防・改善するために、一般に栄養士によって提唱されている方法として、低カロリー食又は低脂肪食の摂取が挙げられる。近年、小麦ふすま等の水不溶性食物繊維、難消化性デキストリン等の水溶性食物繊維、高アミロース澱粉等の消化抵抗性澱粉が、それぞれ脂質排泄促進作用(例えば、非特許文献1参照)、糖吸収抑制作用(例えば、非特許文献2参照)、血中中性脂肪の低下作用(例えば、非特許文献3参照)を有することや、耐糖能改善作用を有すること(例えば、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6参照)が報告されており、肥満の予防・改善や、糖尿病の予防・改善に有効であると考えられている。
【0004】
また、食後の急激な血中脂質の上昇は、脂肪の蓄積を促すと考えられることから、肥満の予防・改善にあたっては、食後の高脂血症(血中トリグリセリドの上昇)を抑制しようというアプローチもまた極めて重要であり、近年、安全で有効な脂質吸収阻害剤として、キタンサンガム及びアルギン酸プロピレングリコールエステル(例えば、特許文献1参照)、キトサン(例えば、特許文献2参照)が報告されている。
【0005】
しかしながら、上記低カロリー食又は低脂肪食は、体重の低下に多少の一時的効果を有しうるが、それを構成している食品の風味が単調であるために長期間経つとその人によって拒絶されるようになり、これを長期間維持することが困難である。また、上記従来の水不溶性食物繊維、水溶性食物繊維、消化抵抗性澱粉等の食品素材が上記の生理作用を発現するには、高用量かつ長期間摂取し続けなければならない。また仮に、当該生理作用が発現した場合でも、肥満の抑制については確認されていない。更にそれらを用いて飲食品を製造した場合、飲食品本来の持つ外観、味、歯触り、滑らかさ等の食感を損う場合が多いため、食品中に十分な量で含有させることが困難であり、適用分野が限定されたり、更にそのような飲食品を長期間摂取し続けるのが困難という問題があった。
【0006】
アセチル化澱粉は、耐老化性や透明性に優れることから、冷凍麺の食感改良と安定化、冷凍卵焼きの離水防止などに利用されている(例えば、非特許文献7参照)、また、オクテニルコハク酸化澱粉は、乳化能を付与された澱粉であり、乳化と乳化安定化の2つの機能を持ち(例えば、非特許文献7参照)、シャンプーやパウダーのような化粧品添加剤等として使用されている。
しかしながら、アセチル化澱粉又はオクテニルコハク酸化澱粉に、肥満や糖尿病の生活習慣病の発症を予防・改善する効果があることはこれまでに知られていない。
【0007】
【非特許文献1】Am J Clin Nutr 1978 31(10 Suppl):521-529
【非特許文献2】日本内分泌学会雑誌 1992 68(6):623-35
【非特許文献3】Am J Clin Nutr 1989 49(2):337-44
【非特許文献4】Acta Paediatr Hung 1985 26(1):75-7
【非特許文献5】J Endocrinol 1995 144(3):533-8
【非特許文献6】Am J Clin Nutr 1989 49(2):337-44
【非特許文献7】高橋禮治著、「でん粉製品の知識」 幸書房 P112、132
【特許文献1】特開平5−186356号公報
【特許文献2】特開平3−290170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、肥満予防・改善剤、高脂血症の予防・改善等、種々の生活習慣病の発症を予防・改善する効果を発揮し、安全性が高いと共に適用範囲が広く、且つ食感を損なうことが少ない食品、医薬品等の素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、従来の難消化性澱粉やセルロース、難消化性デキストリンに代表される食物繊維とは異なる物性を有し、且つ肥満や糖尿病の進行の抑制・改善作用を有する素材を探索した結果、アセチル化澱粉又はオクテニルコハク酸化澱粉が、僅かな摂取量で肥満抑制作用を始めとする種々の生理作用を有し、肥満や糖尿病等の生活習慣病の予防・改善効果を発揮する食品、医薬品素材として有用であることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、アセチル化澱粉又はオクテニルコハク酸化澱粉を有効成分とする肥満予防・改善剤、内臓脂肪蓄積抑制剤、血糖値上昇抑制剤、糖尿病予防・改善剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の肥満予防・改善剤等は、肥満の予防・改善、高脂血症の予防・改善、心不全等の心臓病の予防、血栓症の予防、結腸癌や直腸癌の予防等、種々の生活習慣病の発症を予防・改善する効果を発揮得るので、食品、医薬品等として有用である。特に、有効成分であるアセチル化澱粉又はオクテニルコハク酸化澱粉は、澱粉を原料とすることから人体に対する安全性に優れ、また糊化しやすいので、飲食品への適用範囲が広く、特定保健用食品等に配合した場合、それらが本来持つ食感を損なうことが少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のアセチル化澱粉は、澱粉又は加工澱粉を通常の方法によりアセチル化することにより得ることができる。具体的には無水酢酸、または酢酸ビニルを澱粉に反応させることにより得ることができる。
また、Z-700(タピオカ由来、アセチル化、日澱化学社)、MT-01B(タピオカ由来、アセチル化、日本食品化工)、ADIX-H(ワキシーコーン由来、アセチル化、日本食品化工)、マプス#449(ワキシーコーン由来、アセチル化、日本食品化工)等の市販品を用いることもできる。
【0013】
オクテニルコハク酸化澱粉は、澱粉又は加工澱粉を通常の方法によりオクテニルコハク酸化することにより得ることができる。具体的にはオクテニルコハク酸無水物を澱粉に反応させることにより得ることができる。
また、アミコール乳華(タピオカ由来、オクテニルコハク酸化、日澱化学社)等の市販品を用いることもできる。
【0014】
原料澱粉としては、例えばワキシーコーン澱粉、コーン澱粉、小麦澱粉、米澱粉、糯米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘露澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉等が挙げられるが、アミロペクチン含量が70重量%以上、好ましくは75〜100%、更に好ましくは90〜100%であるものが、糊液の透明性が高く、飲食品に応用した場合にその外観を損わず、適用範囲が広くなることより好ましい。中でも、原料澱粉としては、ワキシーコーン澱粉、タピオカ澱粉が好ましい。
【0015】
本発明における「アセチル化澱粉又はオクテニルコハク酸化澱粉」には、他の加工処理を組み合わせることにより得られるアセチル化澱粉又はオクテニルコハク酸化澱粉も含まれる。組み合わせることのできる加工処理としては酢酸、リン酸等のエステル化処理やヒドロキシプロピル化等のカルボキシメチルエーテル化等によるエーテル化処理、トリメタリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、オキシ塩化リン、アジピン酸、エピクロルヒドリン等、常用の架橋剤を用いた架橋化処理、酸化処理、酸処理、漂白処理、湿熱処理、熱処理、酵素処理等が挙げられ、その内1種又は2種以上の加工を組み合わせても良い。中でも、エステル化処理が好ましく、リン酸化処理、特にリン酸架橋処理が好ましい。リン酸化処理の程度としては、結合リン含量が0.0001〜2%の範囲が挙げられるが、好ましくは0.0001〜0.5%、更に好ましくは0.0001〜0.2%であるものが食感等の面から好ましい。
【0016】
アセチル化澱粉におけるアセチル化の程度としては、アセチル価(澱粉中の無水グルコース1残基当たりのアセチル基の数)が0.001〜1であるのが好ましく、より好ましくは0.005〜0.5であり、更に0.01〜0.1であるのが好ましい。
【0017】
オクテニルコハク酸化澱粉におけるオクテニルコハク酸化の程度としては、オクテニルコハク酸価(澱粉中の無水グルコース1残基当たりのオクテニルコハク酸基の数)が0.001〜1であるのが好ましく、より好ましくは0.005〜0.5であり、更に0.01〜0.1であるのが好ましい。
【0018】
上記アセチル化澱粉又はオクテニルコハク酸化澱粉は、澱粉から簡単な工程で、高純度で比較的安価に製造できる。また安全性が高く、従来の食物繊維や難消化性澱粉と比較して、各種飲食品、医薬品、ペットフード等に用いたときの違和感がない。また、耐冷凍性に優れているので、解凍による変質が起こりにくいという利点を有し得る。
【0019】
そして、アセチル化澱粉又はオクテニルコハク酸化澱粉は、後記実施例に示すように、第1に体重及び内臓脂肪量が有意に減少するという肥満抑制作用を有することから、肥満に起因する高脂血症の予防、心不全等の心臓病の予防、血栓症の予防、高血圧の予防等の効果を発揮し得る。第2に食後高血糖、すなわち食後の急激な血糖値の上昇を抑制する作用を有すると共に、定常時の血糖値の上昇を抑制する作用を有し、糖尿病やそれに起因する種々の合併症、例えば白内障や歯周病、糖尿病腎症、網膜症、神経障害を予防する等の効果を発揮し得る。
従って、本発明のアセチル化澱粉又はオクテニルコハク酸化澱粉は、肥満予防・改善剤、血糖値上昇抑制剤、糖尿病予防・改善剤(以下、肥満予防・改善剤等という)として、ヒト若しくは動物用の食品又は医薬品の素材となり得る。
【0020】
本発明の肥満予防・改善剤等は、アセチル化澱粉又はオクテニルコハク酸化澱粉の一種以上を単体でヒト及び動物に投与できる他、各種飲食品、医薬品、ペットフード等に配合して摂取することができる。食品としては、体脂肪蓄積抑制や血糖値上昇抑制等の生理機能をコンセプトとする美容食品、病者用食品、特定保健用食品に応用できる。医薬品として使用する場合は、例えば、錠剤、顆粒剤等の経口用固形製剤や、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤とすることができる。
尚、経口用固形製剤を調製する場合には、本発明のアセチル化澱粉又はオクテニルコハク酸化澱粉に賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。また、経口用液体製剤を調製する場合は、矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯味剤等を加えて常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。
【0021】
上記各製剤中に配合されるべきアセチル化澱粉又はオクテニルコハク酸化澱粉の配合量は、通常5〜100重量%、好ましくは20〜100重量%、更に好ましくは30〜100重量%とするのが好ましい。
【0022】
本発明の肥満予防・改善剤等の投与量(有効摂取量)は、一日当り0.01g/kg体重以上とするのが好ましく、特に0.1g/kg体重以上、更に0.4g/kg体重以上とするのが好ましい。
【実施例】
【0023】
試験例1 アセチル化又はオクテニルコハク酸化澱粉の肥満抑制作用・血糖値上昇抑制作用
タピオカ澱粉、ワキシーコーン澱粉は、ナショナルスターチアンドケミカル社から入手した。アセチル化・オクテニルコハク酸化された澱粉として、一般に市販されているアミコール乳華(タピオカ由来、オクテニルコハク酸化、日澱化学社)、Z-700(タピオカ由来、アセチル化、日澱化学社)、ADIX-H(ワキシーコーン由来、アセチル化、日本食品化工)、マプス#449(ワキシーコーン由来、アセチル化、日本食品化工)を用いた。
上記の澱粉を50重量%となるように蒸留水に懸濁し、120℃にて15分間、オートクレーブ(湿熱処理)した後、凍結乾燥し、糊化した試験澱粉を調製した。
【0024】
マウス(C57BL/6J雄、6週令)を1群10匹とし、各種糊化澱粉を用いて、表1に示す配合で調製した食餌を用いて飼育した。15週間飼育後、マウスを採血後、屠殺し、血糖値及び内臓脂肪重量を測定した。15週間飼育後のマウスの体重、及び15週間飼育後の内臓脂肪重量、血糖値を表2に示す。
【0025】
【表1】


【0026】
【表2】


【0027】
表2の結果から、アセチル化またはオクテニルコハク酸化された澱粉(タピオカ由来)を5%配合した飼料を摂取したマウスでは、対応する原料澱粉を配合した飼料を摂取したマウスに比較して、体重及び内臓脂肪重量が有意に低く、肥満抑制効果が認められることがわかる。
また、タピオカ、或いはワキシーコーン澱粉を5%配合した高脂肪飼料を摂取したマウスでは、低脂肪飼料を摂取したマウスに比較して、定常時の血糖値が高かった。しかしアセチル化またはオクテニルコハク酸化されたタピオカ或いはワキシーコーン澱粉を5%配合した高脂肪飼料を摂取したマウスでは、対応する原料澱粉(タピオカ、ワキシーコーン由来)を配合した飼料を摂取したマウスに比較して、定常時血糖値が低く、血糖値上昇抑制効果が認められることがわかる。
【0028】
試験例2 アセチル化またはオクテニルコハク酸化澱粉の食後血糖値上昇抑制作用
タピオカ澱粉、ワキシーコーン澱粉は、ナショナルスターチアンドケミカル社から入手した。アセチル化された澱粉として、Z-700(タピオカ由来、日澱化学社)、MT-01B(タピオカ由来、日本食品化工)、ADIX-H(ワキシーコーン由来、日本食品化工)、マプス#306(ワキシーコーン由来、日本食品化工)マプス#449(ワキシーコーン由来、日本食品化工)、オクテニルコハク酸化された澱粉としてアミコール乳華(タピオカ由来、日澱化学)を用いた。
上記の澱粉1gに15mLの蒸留水に懸濁し、120℃にて15分間、オートクレーブ(湿熱処理)した後、室温まで放置冷却した。
前処理後の澱粉溶液に、α−アミラーゼ溶液、ペプシン溶液、パンクレアチン溶液、アミログルコシダーゼ溶液を順に添加し、最終的に遊離したグルコース濃度を測定した(グルコーステストワコー、和光純薬)。
上記の澱粉を5質量%となるように蒸留水に懸濁し、120℃にて15分間、オートクレーブ(湿熱処理)した後、室温まで放置冷却した。
マウス(C57BL/6J雄、6週令、1群6匹)に、上記澱粉処理液を2mg澱粉/g体重となるように経口投与し、0、30、60、120分後、尾静脈より採血し、簡易血糖値測定システム(アキュチェックコンフォート、ロシュ・ダイアグノスティックス(株))にて血糖値を測定した。食後の血糖値上昇を、原料澱粉の経口投与後2時間の血糖値曲線下面積を100とした吸収率で表した。
各試験澱粉のグルコース遊離量、食後の血糖値上昇を表3に示した。
【0029】
【表3】


【0030】
表3の結果から、アセチル化またはオクテニルコハク酸化された澱粉(タピオカ、ワキシーコーン由来)のグルコース遊離量は原料澱粉に対して有意に低かった。またアセチル化された澱粉(タピオカ、ワキシーコーン由来)を経口投与したマウスでは、対応する原料澱粉に比較して、血糖値の上昇が有意に低く食後血糖値上昇抑制作用が認められた。
【出願人】 【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋茅場町1丁目14番10号
【出願日】 平成16年9月9日(2004.9.9)
【代理人】 【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所

【識別番号】100068700
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 三幸

【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄

【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫

【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹

【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人

【識別番号】100101317
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 ひろみ

【公開番号】 特開2006−76918(P2006−76918A)
【公開日】 平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願番号】 特願2004−262492(P2004−262492)