| 【発明の名称】 |
免疫抑制剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】中田 博
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| 【要約】 |
【課題】新規な免疫抑制剤を提供すること。
【解決手段】コアポリペプチドに対し、シアル酸を含む糖鎖を側鎖として有するシアロ型人工ムチンは、NK細胞の細胞障害活性やB細胞の抗体産生能を抑制する。そこで、免疫抑制の機能を有するシアロ型人工ムチンを含有する新規な免疫抑制剤を開発した。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シアロ型人工ムチンまたはその薬理学的に許容される塩を含有する免疫抑制剤。 【請求項2】 NK細胞の細胞障害活性を抑制することを特徴とする請求項1記載の免疫抑制剤。 【請求項3】 B細胞の抗体産生能を抑制することを特徴とする請求項1に記載の免疫抑制剤。 【請求項4】 前記シアロ型人工ムチンが、Neu5Aca2-6Galb1-3GalNAca-を側鎖に有するポリペプチドであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の免疫抑制剤。 【請求項5】 前記ポリペプチドが、グルタミン酸のみからなることを特徴とする請求項4記載の免疫抑制剤。 【請求項6】 シアロ型人工ムチンまたはその薬理学的に許容される塩を含有するNK細胞の細胞障害活性の抑制剤。 【請求項7】 シアロ型人工ムチンまたはその薬理学的に許容される塩を含有するB細胞の抗体産生能の抑制剤。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、免疫抑制剤に関し、特にNK細胞の細胞障害活性の抑制剤及びB細胞の抗体産生能の抑制剤に関する。 【背景技術】 【0002】 臓器移植は、腎臓、肝臓、心臓等の臓器が、疾病、外傷等の原因で機能不全に陥り、回復の可能性が著しく低い状態になった場合に、最も有効な治療法である。臓器移植の際には、ドナーとレシピエントとの組織適合性からくる拒絶反応をいかに免疫抑制剤で抑え込むかが重要である。この免疫抑制剤の進歩にしたがって、移植の生着率、生存率が上昇し、移植手術の適用範囲も広がってきた。 【0003】 現在、免疫抑制剤としては、シクロスポリンA(以下「CYA」という。)、タクロリムス(以下「FK506」という。)等が広く用いられている。CYAは、カルシニューリン阻害型免疫抑制剤であり、リンパ球の細胞内レセプターと結合し、T細胞のIL-2等の産生を抑制し、ヘルパーT細胞活性化を抑制することによって、免疫反応を抑制する。FK506もまたカルシニューリン阻害型免疫抑制剤であり、活性化T細胞におけるインターロイキンの合成を阻害する。これらは極めて強力な免疫抑制活性を持ち、臓器移植の生着率の向上に貢献した薬剤であるが、特にFK506は、CYAよりも免疫抑制効果が強く、急性拒絶反応の発現が少ないといわれている。これらの免疫抑制剤による副作用は、従来の薬剤より少ないものの、これらにも重篤な中枢神経毒性、腎毒性等の副作用はある。 【0004】 一方、上皮性癌患者の血液中には、正常では検出できない天然ムチンが検出される。天然ムチンとは、O-グリカンに富む糖タンパク質であり、現在、少なくとも9種の上皮性ムチンの存在することが知られている(非特許文献1参照)。上皮性癌患者においては、天然ムチンがB細胞のシグレック2(CD22)に結合して、B細胞における抗体産生能を低下させることによる免疫抑制能を有することが知られていた(非特許文献2参照)。 【非特許文献1】Glycobiology vol.10 No5 pp.439-449(2000) 【非特許文献2】京都産業大学先端科学技術研究所所報 第3報(2004年7月発行) 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 そこで、本発明は、天然ムチンに関する上記知見を利用し、新規な免疫抑制剤を提供することを課題としてなされた。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者らは、天然ムチンがNK細胞のシグレック7に結合し、NK細胞の細胞障害活性を抑制するという免疫抑制活性を有すること、シアロ型人工ムチンがB細胞のシグレック2及びNK細胞のシグレック7に結合し、それぞれB細胞の抗体産生能及びNK細胞の細胞障害活性を抑制できることを発見した。そこで、下記の構成を用いることで本発明の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。 【0007】 [1] シアロ型人工ムチンまたはその薬理学的に許容される塩を含有する免疫抑制剤。 [2] NK細胞の細胞障害活性を抑制することを特徴とする[1]記載の免疫抑制剤。 [3] B細胞の抗体産生能を抑制することを特徴とする[1]記載の免疫抑制剤。 [4] 前記シアロ型人工ムチンが、Neu5Aca2-6Galb1-3GalNAca-を側鎖に有するポリペプチドであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項記載の免疫抑制剤。 [5] 前記ポリペプチドが、グルタミン酸のみからなることを特徴とする [4]に記載の免疫抑制剤。 [6] シアロ型人工ムチンまたはその薬理学的に許容される塩を含有するNK細胞の細胞障害活性の抑制剤。 [7] シアロ型人工ムチンまたはその薬理学的に許容される塩を含有するB細胞の抗体産生能の抑制剤。 【0008】 なお、本明細書で、天然ムチンとは、MUC遺伝子によりコードされたコアポリペプチドに対しO-グリコシド結合を介してシアル酸を含む多数の糖が結合したタンパク質を意味する。また、シアロ型人工ムチンとは、コアポリペプチドに対し、シアル酸を含む糖鎖を側鎖として有する人工的に合成したムチン(「化学と生物」41巻3号145〜147頁、特開2003−73397)をいう。 【発明の効果】 【0009】 本発明によれば、新規な免疫抑制剤を提供することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0010】 実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。 【0011】 なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的に実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。 【0012】 (1)B細胞における抗体産生能の抑制剤 天然ムチンは、シアル酸を含む糖鎖構造を通じてB細胞のシグレック2(CD22)に結合し、B細胞による抗体産生能を抑制することが知られている。また、シアロ型人工ムチンもB細胞のシグレック2に結合する。この結合はシアル酸を介していることが明らかになっており、従って、シアロ型人工ムチンもB細胞の抗体産生能を抑制することができると考えられる。 【0013】 このように、天然ムチンやシアロ型人工ムチンを含有する組成物は、B細胞による抗体産生能の抑制剤となる。従って、天然ムチンやシアロ型人工ムチンを含有する組成物は、免疫抑制剤として利用できる。 【0014】 (2)NK細胞の細胞障害活性の抑制剤 後述するように、本発明者らは、天然ムチンはNK細胞のシグレック7に結合し、NK細胞の細胞障害活性を抑制することを明らかにした。また、シアロ型人工ムチンも、NK細胞のシグレック7に結合する。これらの結合及びシグナル伝達のメカニズムは、上記シグレック2の場合と同様であり、シアロ型人工ムチンも、NK細胞の細胞障害活性を抑制することができると考えられる。 【0015】 このように、天然ムチンまたはシアロ型人工ムチンを含有する組成物は、NK細胞の細胞障害活性の抑制剤となる。従って、天然ムチンまたはシアロ型人工ムチンを含有する組成物は、免疫抑制剤として、上述のように、B細胞だけではなく、NK細胞をも介した免疫抑制能を有する。 【0016】 (3)天然ムチンの構造と取得 本発明にかかる天然ムチンは、図1に示すように、MUC遺伝子によりコードされたコアポリペプチドに対しO-グリコシド結合を介してシアル酸を含む多数の糖が結合したタンパク質である。 【0017】 天然ムチンは、消化器や気管等の上皮細胞によって産生される生体防御機能を有する粘液物質の主成分であり、その分子量は200kDa以上、糖含有量は50%以上である。胃では粘膜上でゲル層を形成している。本発明において、例えばウシ顎下腺ムチン(BSM)、ヒツジ顎下腺ムチン(OSM)等の天然ムチンを抽出して利用してもよい。また、MUC1〜MUC9のムチン遺伝子を培養細胞に導入し、分泌された天然ムチンを精製してもよい。このとき用いる遺伝子は、ヒト、ウシ、ヒツジ由来の遺伝子が好ましい。培養細胞は、同様な修飾を得るため、哺乳類の細胞が好ましい。また、天然に存在するムチンを模して、ポリペプチドを合成し、人工的に糖で修飾した分子を利用してもよい。 【0018】 天然ムチンにおいては、糖はセリンまたはトレオニンに結合しているため、側鎖として糖鎖を有するアミノ酸の割合は、40%以下である。また、セリン及びトレオニンはポリヌクレオチド内で偏った分布をしているので、天然ムチン分子内での糖鎖の分布も偏りを生じている。 【0019】 (4)人工ムチンの構造と合成 本発明にかかるシアロ型人工ムチンは、図2に示すように、コアポリペプチドに対し、シアル酸を含む糖鎖を側鎖として有する人工的に合成したムチンである。 【0020】 コアポリペプチドの構成成分になるアミノ酸は、特に限定されないが、コアポリペプチドは単一アミノ酸あるいは、複数のアミノ酸から構成されてもよいが、合成しやすさから単一アミノ酸からなることが好ましい。アミノ酸の種類は、側鎖に糖を結合するため、セリン、トレオニン、グルタミン酸を有することが好ましい。例えば、コアポリペプチドは、ポリセリンやポリトレオニンやポリグルタミン酸のように単一アミノ酸からなっていてもよいが、抗原性が低いという理由で、ポリグルタミン酸が特に好ましい。また、セリンとトレオニンとグルタミン酸からなるグループから選択された複数のアミノ酸のみを含んでもよく、さらに他のアミノ酸を含んでもよい。 【0021】 これらのコアポリペプチドは化学合成によって合成した化学合成ペプチドを用いてもよいが、天然ムチンのコアペプチドを精製し、プロテアーゼで断片化したペプチドを用いてもよく、MUC1〜MUC9のムチン遺伝子を大腸菌などに導入し、産生されたポリペプチドを精製してもよい。 【0022】 コアポリペプチド中のセリン、又はトレオニンに糖鎖を結合させるには、例えば、天然ムチンと同様、O-グリコシド結合を介して糖を結合させればよい。グルタミン酸に糖鎖を結合させる場合、例えば、グルタミン酸のγ−カルボキシル基側鎖にp−アミノフェニルを介して糖をアミド結合させればよい。 【0023】 側鎖である糖鎖は、コアポリペプチドのアミノ酸残基に、GalNAc(またはGlcNAc)-Gal-Neu5Acを結合させた構造を有する。シアル酸は、N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)が好ましいが、これに限定されない。 【0024】 シアロ型人工ムチンとして利用する場合、20〜500kDaの分子量であることが好ましく、30〜400kDaの分子量であれば、より好ましい。分子量がこの範囲であれば、これらのシアロ型人工ムチンに対する生体内の抗原性が低くなるためである。 【0025】 以上に述べたような構造を有するシアロ型人工ムチンは、例えば、「化学と生物」41巻3号144〜146頁(2003年)に記載されているような公知の製法(<1> βガラクトシターゼを用いたGalβ1-4GlcNAcβ-OC6H4NO2-pの酵素合成 <2> <1>に記載の化合物のニトロ基をパラジウム/活性炭末を用いてアミノ基に還元し、ポリ-L−グルタミン酸と縮合反応させる <3> α2,6-(O)-シアル酸転移酵素を用いたN-アセチルノイラミン酸のGal末端への付加反応)で合成することができる。 【0026】 こうして得られたシアロ型人工ムチンにおいて、側鎖として糖鎖を有するアミノ酸の割合は、ポリペプチド中、最大60%にも及ぶ。 【0027】 (5)免疫抑制剤の剤形及び投与方法 人工ムチンまたはその薬理学的に許容される塩は、常法通り、薬理上許容される担体と配合し、乳剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤などの製剤にして経口投与してもよいし、注射剤などの製剤にして皮下、筋肉内、腹腔内や静脈内へ注射する、あるいは、坐薬(座剤)などの製剤にして直腸内投与する、あるいは、噴霧剤などの製剤にして口腔または気道粘膜へ噴霧する、あるいは、軟膏やテープ剤などの製剤にして患部(例えば、皮膚や粘膜など)に塗布又は貼付するような態様で非経口投与してもよい。 【実施例】 【0028】 以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。 【0029】 <実施例1>ウシ下腺ムチン(BSM)、大腸がん(LS180)由来の天然ムチンの調製 BSM(SIGMA)100mgを精製水100mlに溶解してBSM水溶液(1mg/ml)を調製した。 【0030】 LS180由来の天然ムチンは、LS180の培養上清をゲルろ過(セファロース6B)で分離し、各フラクションをドットブロット後、ムチンの糖鎖抗原に対する抗体MLS128/132(発明者らにより、大腸癌由来細胞株LS180を免疫原として作製されたモノクローナル抗体10μg/ml)により検出し、目的のフラクションを回収した。4℃で16時間透析をした(外液;蒸留水)後、等量の1.2M HClO4を加えて、氷冷しながら30分撹拌した。5M KOHで中和して、再び4℃で16時間透析をした(外液;蒸留水)後、凍結乾燥した。凍結乾燥物を溶かした溶液14.3mlに8Mグアニジン塩酸塩溶液を14.3ml、CsClを7.8g(最終濃度 4Mグアニジン塩酸塩、20%CsCl)を加えて密度勾配遠心分離し、各フラクションをドットブロット後、抗体(MLS128/132)を用いてムチンを検出し、目的のフラクションを透析して塩を除いた(外液;蒸留水)。 【0031】 <実施例2>シグレック7と天然ムチンとの結合 シグレック7cDNAはU937細胞から total RNA をISOGEN (日本ジーン)を用いて抽出し、RNA PCR kit (タカラバイオ)を用いてRT-PCRで増幅して作製した。PCRには、以下のプライマーを用い、55℃ 30min, 99℃ 5min, 5℃ 5minを1回行った後、94℃ 1min, 60℃ 1min, 72℃ 1minを30サイクル行った。 senseプライマー:5'- CGGGATCCAACAGACGTTCCCTCGCG (配列番号1) antisenseプライマー:5'- GCTCTAGACTTGGGGATCTTGATCTC(配列番号2) 【0032】 増幅したシグレック7cDNAを制限酵素BamHI / XbaI で切断し、pEF6 / myc-His(+)A,B,C(Invitrogen社製)のBamHI / XbaI サイトに組み込み、シグレック7発現ベクターを作製した。これを単球由来細胞株U937にトランスフェクトし(Siglec7-U937)、EZ-LiNK Sulfo-NHS-Biotin(PIERCE社製)でビオチン化したBSMまたはLS180ムチンを、トランスフェクトした細胞と4℃、1時間反応させた後、PE標識ストレプトアビジンと4℃、1時間反応させ、FACSを用いて解析した。コントロール(Mock-U937)として、シグレック7cDNAを挿入していない空ベクター(vehicle vector)を用いた。その結果、図3に示すように、いずれの天然ムチンの場合も、Mock-U937よりSiglec7-U937のほうが、蛍光染色された細胞が多く、天然ムチンがシグレック7と結合することが明らかになった。 【0033】 また、シグレック7をトランスフェクトしたU937細胞を0.5%BSA-PBSに懸濁し、ビオチン化したBSM及び抗シグレック7抗体(25ng/μl 0.5%BSA-PBS溶液(マウス由来モノクローナル抗体;R&Dシステム))を添加して、4℃、1時間インキュベートした。その後、細胞をPBSで洗浄し、0.5%BSA-PBSに懸濁し、 ALEXA Flour 594標識ストレプトアビジン及びALEXA Flour 488標識抗マウスIgG抗体を添加して、4℃、1時間インキュベートした。再び細胞を洗浄し、細胞を蛍光顕微鏡で観察した。その結果、図4に示すように、シグレック7が細胞表面に発現していること、トランスフェクタントの細胞表面にBSMが結合していることが明らかになった。 【0034】 さらに、シグレック7をトランスフェクトしたU937細胞を可溶化し(50mM Tris-HCl(pH8.0),0.1M NaCl,2M PMSF,1μg/ml ペプスタチンA,100μg/ml トリプシンインヒビター, 5mM EDTA, 1%NP-40)、得られた可溶化物を抗Myc抗体-アガロースに通して、50mMのジエチルアミン(pH11.5)でシグレック7分子を溶出した。溶出液をBSM−セファロース(50mM 0.1M NaHCO3-0.5M NaCl中で、5g(湿重量)のCNBr-activated sepharose 4B(ファルマシア)に200mgのBSM(乾燥重量)を加え、4℃、16hr反応させた)にかけ、1M NaClを含む上記溶液で溶出した。溶出画分(Eluate)、洗浄画分(Wash)、素通り画分(PT)に分け、それぞれの画分をエタノール沈殿して濃縮し、SDS-PAGEにかけ、ウエスタン・ブロッティングを行った。検出は、抗シグレック7抗体を用い、2次抗体;HRP-ProteinG(ZYMED LABORATORY社)によってシグナルを発色させた。その結果、図5に示すように、ほとんどのシグレット7分子がBSM-セファロースの溶出画分に検出されたことから、この分析方法でもシグレット7がBSMと結合することが確認された。 【0035】 <実施例3>NK細胞の細胞障害活性判定試験 Growing medium(10%FCS含有RPMI1640)で培養したヒトNK細胞株YT細胞を回収し、RPMI1640-0.25%BSAにて1回洗浄後、1.0mlRPMI1640-0.25%BSA、0.2mUノイラミニダーゼ(Neuase, Arthrobacter ureafaciens由来)を添加し、37℃、60分間インキュベートすることにより内在性のシアル酸を除去した。Growing mediumにて3回洗浄してNeuase処理YT細胞を得、これをエフェクター細胞とした(細胞数5×103個)。 【0036】 細胞障害活性の標的細胞としては、ユーロピウム−ジエチレントリアミン5酢酸(Eu-DTPA)を取り込ませたヒト骨髄性白血病細胞株K562を用いた。まず、10%FCS及び0.25% BSAを含有したRPMI 1640で培養したK562細胞を回収し、HEPESバッファーで2回洗浄し、2×106個の細胞を1.0ml Labeling buffer(910μl HEPES buffer,50μl Dextran sulphate stock solution,40μl Eu stock solution)に懸濁し、4℃、20分間インキュベートした。8.0ml Repairing buffer(0.294g CaCl2・2H2O,1.8g Glucose/1000ml HEPES buffer)を添加して遠心分離(15000rpm、4℃、5分間)後、上清を除去した。沈殿した細胞をRepairing bufferで2回洗浄し、Growing mediumにて2回洗浄してEu標識K562細胞を得た(細胞数5×103個)。 【0037】 Growing mediumに懸濁した標的細胞K562 (5×103個)をBSM(ウシ顎下腺ムチン;50μg)及びIL-2を加え、エフェクター細胞であるYT細胞(5×103個)を添加し、Growing mediumで計200μl(IL-2最終濃度 200U/ml)に調整した。37℃4時間インキュベート後、遠心分離(500×g、5分)して上清を20μlとり、100μl Enhanced solution(PerkinElmer社製)を添加して、エフェクター細胞によって細胞障害を起こしたK562細胞から培養液中に放出されたEu3+を、時間ランタニド-DTPAを加えてキレートを形成させる時間分解蛍光法(プレートリーダーにて波長615nmにおける蛍光強度を測定する方法)にて測定した。測定値を、コントロール(BSMを添加していない標的細胞)を100とした時の相対値でグラフ化した。 【0038】 その結果、図6に示すように、BSMを添加していない標的細胞に比べ、BSMを添加すると、約40%細胞障害活性が抑制された。 【0039】 <実施例4> ==シグレック2(CD22)の遺伝子組み換え体作製== 抗IgM F(ab’)2 で18時間刺激したDaudi細胞からmRNAを抽出し、これを鋳型としてRT-PCRを行った。PCRには以下のCD22特異的プライマーを用い、サンプルを94℃で20秒変性処理後、94℃, 20秒−65℃, 5分を20サイクル処理した。 CD22 forward : 5'- AACAGGCTTGCACCCAGA (配列番号3) CD22 reverse : 5'- TCTGCTCGAGCCCATCCAGTGT(配列番号4) 【0040】 このようにして得られたヒトCD22 cDNAを制限酵素Sma Iで消化したpUC 18ベクター(Invitrogen)に挿入し、大腸菌TOP 10F’株に導入した。形質転換体からプラスミドDNAを精製し、これを鋳型としてSite directed mutagenesisおよびPCR法によりヒト変異型CD22(R120A;CD22のN末端から120番目のアルギニンをアラニンに置換したもの)を作製した。これらの各ヒトCD22 cDNAが挿入されたpUC 18ベクターから制限酵素Sma Iで各ヒトCD22 cDNAを切り出し、動物細胞発現ベクターp3×FLAG CMV14(SIGMA)に挿入し、野生型及び変異型シグレック2(CD22)発現ベクターを作製した。 【0041】 これらのシグレック2(CD22)発現ベクターを、Fugene 6 Transfection reagents を用いてCHO-K1細胞(培養液;2%FCSを含むOPTI-MEM)にトランスフェクトし、G418濃度750μg/mlで形質転換細胞(stable transformant)を選択した。次に、クローニングした細胞に対し、96穴プレートに1ウェルあたり細胞1個撒き、細胞数が増えてきたウェルの培養上清に対し、ドットブロットによりシグレック2(CD22)の発現を確認した。検出のための抗体は、HRP結合anti-FLAG M2 Ab(1:20000;5%BSA/PBSで希釈)を用い、ECL(アマシャムファルマシア製)でシグレック2の発現を検出した。 【0042】 こうして、シグレック2を安定に発現する形質転換細胞の培養上清を集め、anti-FLAG M2 Abを用いたアフィニティクロマトグラフィによって、シグレック2を精製した。 【0043】 ==シグレック2と人工ムチンとの結合アッセイ== 以下の(1)〜(3)の人工ムチン(10μg/ml in 50mM NaHCO3 pH4.5)を96穴プレート(Universal bind plate; Coster社)に各ウェル40μl加えて1時間室温で静置した。 (1)ポリ(Galβ1-4GlcNAcβ-pAP/Gln-CO-Glu) (2)ポリ(Neu5Acα2-3Galβ1-4GlcNAcβ-pAP/Gln-CO-Glu) (3)ポリ(Neu5Acα2-6Galβ1-4GlcNAcβ-pAP/Gln-CO-Glu) 【0044】 液を除去して紫外線を1.1min照射して人工ムチンをプレートに固定した。2.5%BSA含有PBSバッファーでウェルを3回洗浄した後、同バッファーを加えて2時間室温で静置した。PBS/0.05% Tween-20で2回洗浄した後、野生型及び変異型シグレック2を50μl(〜10μg/ml;5%BSA/PBSで希釈して各濃度サンプルを調製)加えて1時間室温で静置してPBS/0.05% Tween-20で4回洗浄し、同バッファーで希釈したHRP結合anti-Flag抗体(5%BSA/PBSで1:2000に希釈したもの)を加えて1時間室温で静置した。PBS/0.05% Tween-20で4回洗浄して、ELISA POD基質TMBキット(nacarai tesque)を用いて発色後、吸光度(450nm)を測定した。 【0045】 結果を表1、表2及び図7に示す。 【表1】
【表2】
【0046】 これらの結果より、(3)のシアロ型人工ムチンのみ、野生型のシグレック2に結合することが明らかになった。 【図面の簡単な説明】 【0047】 【図1】本発明の一実施の形態にかかる天然ムチンの構造の概略図である。 【図2】本発明の一実施の形態にかかるシアロ型人工ムチンの構造の概略図である。 【図3】本発明の一実施例に従って、シグレック7をトランスフェクトしたU937細胞とビオチン化天然ムチンとの結合を、PE標識ストレプトアビジンで検出し、FACSで解析した解析結果のグラフである。 【図4】本発明の一実施例に従って、シグレック7をトランスフェクトしたU937細胞とビオチン化天然ムチンとの結合を、抗シグレック7抗体及びALEXA Flour 488標識抗マウスIgG抗体で検出し、蛍光顕微鏡で観察した写真である。 【図5】本発明の一実施例に従って、天然ムチンを結合させたアフィニティクロマトグラフィを用い、精製したシグレック7がどの分画に検出されるかを抗シグレック7抗体で検出した結果を示す図である。 【図6】本発明の一実施例に従って、天然ムチンによるNK細胞の細胞障害抑制活性を検出した実験結果を表すグラフである。 【図7】本発明の一実施例に従って行ったシグレック2と人工ムチンとの結合アッセイの結果を表すグラフである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】504322611 【氏名又は名称】学校法人 京都産業大学 【識別番号】000002071 【氏名又は名称】チッソ株式会社
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| 【出願日】 |
平成16年8月24日(2004.8.24) |
| 【代理人】 |
【識別番号】110000176 【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
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| 【公開番号】 |
特開2006−62982(P2006−62982A) |
| 【公開日】 |
平成18年3月9日(2006.3.9) |
| 【出願番号】 |
特願2004−244403(P2004−244403) |
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