| 【発明の名称】 |
アポトーシス抑制剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】田沼 靖一
【氏名】朽津 和幸
【氏名】東 克己
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| 【要約】 |
【課題】アポトーシス誘導性疾患の改善や、アポトーシスを伴う疾患やがん治療において生じる正常細胞のアポトーシスの抑制などに対して有用なアポトーシス抑制剤、並びにそれを用いたアポトーシスの抑制方法及び医薬組成物を提供すること。
【解決手段】アポトーシス抑制活性を有する、特定のアミノ酸配列の全部又は一部を有するペプチドを有効成分として含有する組成物は、アポトーシス抑制剤として有用であり、その他、アポトーシス誘導性疾患の改善や、アポトーシスを伴う疾患やがん治療において生じる正常細胞のアポトーシスの抑制などに対して有用である。また、前記ペプチドを有効成分として含有する組成物を用いることにより、正常細胞のアポトーシスを抑制することができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 以下の(a)又は(b)のアポトーシス活性を有するペプチドを有効成分として含有するアポトーシス抑制剤。 (a)BLDを有するペプチド (b)前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチド 【請求項2】 前記BLDを有するペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるHsILP1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるAtILP1、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるAtILP2、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCeILP1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるMmILP1、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-1、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-2、及び配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるXlILP1、及び配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるSpILP1からなるグループから選ばれるペプチドであることを特徴とする請求項1に記載の抑制剤。 【請求項3】 前記BLDを有するペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるHsILP1であることを特徴とする請求項1に記載の抑制剤。 【請求項4】 以下の(a)又は(b)のアポトーシス活性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はその塩基配列に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドを有効成分として含有する抑制剤。 (a)BLDを有するペプチド (b)前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチド 【請求項5】 前記BLDを有するペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるHsILP1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるAtILP1、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるAtILP2、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCeILP1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるMmILP1、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-1、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-2、及び配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるXlILP1、及び配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるSpILP1からなるグループから選ばれるペプチドであることを特徴とする請求項4に記載の抑制剤。 【請求項6】 前記ペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドであることを特徴とする請求項4に記載の抑制剤。 【請求項7】 前記ポリヌクレオチドを組み込んだ組換えベクターを有効成分として含有することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の抑制剤。 【請求項8】 前記組換えベクターを導入した細胞又はウイルスを有効成分として含有することを特徴とする請求項7に記載の抑制剤。 【請求項9】 以下の(a)又は(b)のアポトーシス活性を有するペプチドを有効成分として含有するアポトーシス誘導性疾患に対する医薬組成物。 (a)BLDを有するペプチド (b)前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチド 【請求項10】 前記BLDを有するペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるHsILP1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるAtILP1、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるAtILP2、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCeILP1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるMmILP1、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-1、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-2、及び配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるXlILP1、及び配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるSpILP1からなるグループから選ばれるペプチドであることを特徴とする請求項9に記載の組成物。 【請求項11】 前記BLDを有するペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるHsILP1であることを特徴とする請求項9に記載の組成物。 【請求項12】 以下の(a)又は(b)のアポトーシス活性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はその塩基配列に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドを有効成分として含有するアポトーシス誘導性疾患に対する医薬組成物。 (a)BLDを有するペプチド (b)前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチド 【請求項13】 前記BLDを有するペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるHsILP1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるAtILP1、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるAtILP2、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCeILP1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるMmILP1、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-1、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-2、及び配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるXlILP1、及び配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるSpILP1からなるグループから選ばれるペプチドであることを特徴とする請求項12に記載の組成物。 【請求項14】 前記ペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドであることを特徴とする請求項12に記載の組成物。 【請求項15】 前記アポトーシス誘導性疾患が、脳虚血、アルツハイマー病、パーキンソン病、ポリグルタミン病、プリオン病、筋萎縮性側索硬化症、及び後天性免疫不全症候群脳症からなるグループから選ばれるいずれかの疾患であることを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載の組成物。 【請求項16】 正常細胞のアポトーシスを伴う疾患に対して、前記正常細胞のアポトーシスを抑制するための医薬組成物であって、 以下の(a)又は(b)のアポトーシス活性を有するペプチドを有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物。 (a)BLDを有するペプチド (b)前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチド 【請求項17】 前記BLDを有するペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるHsILP1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるAtILP1、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるAtILP2、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCeILP1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるMmILP1、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-1、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-2、及び配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるXlILP1、及び配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるSpILP1からなるグループから選ばれるペプチドであることを特徴とする請求項16に記載の組成物。 【請求項18】 前記BLDを有するペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるHsILP1であることを特徴とする請求項16に記載の組成物。 【請求項19】 正常細胞のアポトーシスを伴う疾患に対して、前記正常細胞のアポトーシスを抑制するための医薬組成物であって、 以下の(a)又は(b)のアポトーシス活性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はその塩基配列に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドを有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物。 (a)BLDを有するペプチド (b)前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチド 【請求項20】 前記BLDを有するペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるHsILP1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるAtILP1、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるAtILP2、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCeILP1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるMmILP1、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-1、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-2、及び配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるXlILP1、及び配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるSpILP1からなるグループから選ばれるペプチドであることを特徴とする請求項19に記載の組成物。 【請求項21】 前記ペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドであることを特徴とする請求項19に記載の組成物。 【請求項22】 前記正常細胞のアポトーシスを伴う疾患が、後天性免疫不全症候群であることを特徴とする請求項16〜21のいずれかに記載の組成物。 【請求項23】 がん治療において生じる正常細胞のアポトーシスを抑制するための医薬組成物であって、 以下の(a)又は(b)のアポトーシス活性を有するペプチドを有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物。 (a)BLDを有するペプチド (b)前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチド 【請求項24】 前記BLDを有するペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるHsILP1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるAtILP1、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるAtILP2、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCeILP1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるMmILP1、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-1、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-2、及び配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるXlILP1、及び配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるSpILP1からなるグループから選ばれるペプチドであることを特徴とする請求項23に記載の組成物。 【請求項25】 前記BLDを有するペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるHsILP1であることを特徴とする請求項23に記載の組成物。 【請求項26】 がん治療において生じる正常細胞のアポトーシスを抑制するための医薬組成物であって、 以下の(a)又は(b)のアポトーシス活性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はその塩基配列に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドを有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物。 (a)BLDを有するペプチド (b)前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチド 【請求項27】 前記BLDを有するペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるHsILP1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるAtILP1、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるAtILP2、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCeILP1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるMmILP1、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-1、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-2、及び配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるXlILP1、及び配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるSpILP1からなるグループから選ばれるペプチドであることを特徴とする請求項26に記載の組成物。 【請求項28】 前記ペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドであることを特徴とする請求項26に記載の組成物。 【請求項29】 前記がん治療が、抗がん剤を用いた治療であることを特徴とする請求項23〜28のいずれかに記載の組成物。 【請求項30】 前記抗がん剤が、エトポシドであることを特徴とする請求項29に記載の医薬組成物。 【請求項31】 以下の(a)又は(b)のアポトーシス活性を有するペプチドを有効成分として含有する組成物を用いることを特徴とするアポトーシスの抑制方法。 (a)BLDを有するペプチド (b)前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチド 【請求項32】 前記BLDを有するペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるHsILP1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるAtILP1、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるAtILP2、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCeILP1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるMmILP1、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-1、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-2、及び配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるXlILP1、及び配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるSpILP1からなるグループから選ばれるペプチドであることを特徴とする請求項31に記載の方法。 【請求項33】 前記BLDを有するペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるHsILP1であることを特徴とする請求項31に記載の方法。 【請求項34】 以下の(a)又は(b)のアポトーシス活性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はその塩基配列に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドを有効成分として含有する組成物を用いることを特徴とするアポトーシスの抑制方法。 (a)BLDを有するペプチド (b)前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチド 【請求項35】 前記BLDを有するペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるHsILP1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるAtILP1、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるAtILP2、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCeILP1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるMmILP1、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-1、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-2、及び配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるXlILP1、及び配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるSpILP1からなるグループから選ばれるペプチドであることを特徴とする請求項34に記載の方法。 【請求項36】 前記ペプチドが、配列番号1に示される塩基配列からなるペプチドであることを特徴とする請求項34に記載の方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、アポトーシス抑制剤、医薬組成物、及びアポトーシスの抑制方法に関する。 【背景技術】 【0002】 アポトーシスは、疾患の原因となったり、その症状を進行させたりと、様々な疾患と深い関わりを有する基本的な生命現象である。例えば、アルツハイマー症、パーキンソン病、痴呆症、ハンチントン病、脳虚血等の神経変性疾患は、神経細胞のアポトーシスにより引き起こされるアポトーシス誘導性疾患であり、また、エイズなどの疾患において生じる正常細胞(例えば、リンパ球など)の減少もアポトーシスにより生じることが知られている。しかし、逆に、疾患の治療の際にも、アポトーシスが誘導され、それが副作用となることもある。例えば、放射線や紫外線、又は抗がん剤を用いたがん治療においては、がん細胞のみならず、正常細胞にもアポトーシスが誘導されることが知られている。従って、このような細胞のアポトーシスを抑制することができれば、上述のような疾患の治療効果を高めることができると考えられており、この見地から、アポトーシスの抑制剤の開発が求められている。 【0003】 従来、アポトーシスを抑制するタンパク質としては、Bcl-xL、bcl-2、Bcl-w、IAPなどが見出されており(例えば、非特許文献1〜3参照)、これらのタンパク質やポリヌクレオチドを用いたアポトーシスの抑制方法や、アポトーシス誘導性疾患の治療方法の開発が行われている一方で、その他のアポトーシスを抑制するタンパク質を、新規に同定する試みがなされている。 【非特許文献1】Cell 74, 597-608, 1993 【非特許文献2】Oncogene 13, 665-675, 1996 【非特許文献3】Genes Dev. 13, 239-252, 1999 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明の目的は、アポトーシス誘導性疾患の改善や、アポトーシスを伴う疾患やがん治療において生じる正常細胞のアポトーシスの抑制などに対して有用なアポトーシス抑制剤、並びにそれを用いたアポトーシスの抑制方法及び医薬組成物を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0005】 IAP(Inhibitor of Apoptosis Protein)タンパク質は、アポトーシス抑制活性を有する。IAPタンパク質は、このアポトーシス抑制活性に深く関与する1〜3つのBIR(baculovirus IAP repeat)ドメインを有する。本発明者らは、プロファイルHMM(hidden Markov model)ソフトウエア(HMMER;http://hmmer.wustl.edu/からダウンロード)、及びPfamデータベース(http://www.sanger.ac.uk/Pfamからダウンロード)を用いて、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のゲノムから、BIRドメインを指標にIAPホモログを単離することを試みている過程で、BIRドメインに類似したドメイン(BIR-like domain(CCHC型ジンクフィンガーモチーフを有する):BLD)を有する2つのIAP様タンパク質AtILP1(Arabidopsis thaliana IAP-like protein 1;配列番号2)及びAtILP2(Arabidopsis thaliana ILP2;配列番号3)をコードする新規の遺伝子(AtILP1遺伝子;配列番号11、AtILP2;配列番号12)を単離した。 【0006】 次に、本発明者らは、得られたAtILP1遺伝子及びAtILP2遺伝子の配列を指標にヒト、線虫、マウス、イネ、及びアフリカツメガエルのホモログをtBLASTnサーチにより検索した結果、BLDを有するヒト由来のILP1(HsILP1:Homo sapiens ILP1;配列番号1)をコードする遺伝子(配列番号10)、BLDを有する線虫由来のILP1(CeILP1:Caenorhabditis elegans ILP1;配列番号4)をコードする遺伝子(配列番号13)、BLDを有するマウス由来のILP1(MmILP1:Mus musculus ILP1;配列番号5)をコードする遺伝子(配列番号14)、BLDを有するイネ由来のILP1-1(OsILP1-1:Oryza sativa ILP1-1;配列番号6)をコードする遺伝子(配列番号15)及びOsILP1-2(配列番号7)をコードする遺伝子(配列番号16)、BLDを有するアフリカツメガエル由来のILP1(XlILP1:Xenopus laevis ILP1;配列番号8)をコードする遺伝子(配列番号17)、並びに、BLDを有する分裂酵母由来のILP(SpILP1:Schizosaccharomyces pombe ILP1;配列番号9)をコードする遺伝子(配列番号18)を見出した。 【0007】 さらに、本発明者らは、このようにして得られたILP1が、IAPと同様にアポトーシスを抑制するかどうかを調べるために、HsILP1を遺伝子導入した細胞を作製し、トポイソメラーゼの抑制剤であるエトポシドで処理してアポトーシスが誘導されるかどうかを調べた。その結果、HsILP1の発現により、エトポシドによって誘導されるアポトーシスを抑制することができることを見出した。このことから、ILP1又はそれをコードするヌクレオチドを有効成分とする組成物は、アポトーシス抑制剤として有用であり、さらに、神経変性疾患などのアポトーシス誘導性疾患を改善するための医薬組成物、又はアポトーシスを伴う疾患やがん治療において生じる正常細胞のアポトーシスを抑制するための医薬組成物として有用であると考えられた。このようにして、本発明者らは本発明を完成するに至った。 【0008】 すなわち、本発明に係るアポトーシス抑制剤は、BLDを有するペプチド、又は前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドのいずれかのアポトーシス活性を有するペプチドを有効成分として含んでなる。 【0009】 また、本発明に係るアポトーシス抑制剤は、BLDを有するペプチド、又は前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドのいずれかのアポトーシス活性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はその塩基配列に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドを有効成分として含んでなることとしてもよい。 【0010】 本発明に係るアポトーシス誘導性疾患に対する医薬組成物は、BLDを有するペプチド、又は前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドのいずれかのアポトーシス活性を有するペプチドを有効成分として含んでなる。 【0011】 また、本発明に係るアポトーシス誘導性疾患に対する医薬組成物は、BLDを有するペプチド、又は前記前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はその塩基配列に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドを有効成分として含んでなることとしてもよい。 【0012】 前記アポトーシス誘導性疾患としては、例えば、脳虚血、アルツハイマー病、パーキンソン病、ポリグルタミン病、プリオン病、筋萎縮性側索硬化症、後天性免疫不全症候群脳症などである。 【0013】 本発明に係る医薬組成物は、正常細胞のアポトーシスを伴う疾患に対して、前記正常細胞のアポトーシスを抑制するための医薬組成物、又は、がん治療において生じる正常細胞のアポトーシスを抑制するための医薬組成物である。これらの医薬組成物は、BLDを有するペプチド、又は前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドのいずれかのアポトーシス活性を有するペプチドを有効成分として含んでなる。また、BLDを有するペプチド、又は前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドのいずれかのアポトーシス活性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はその塩基配列に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドを有効成分として含んでなることとしてもよい。 【0014】 なお、前記正常細胞のアポトーシスを伴う疾患は、例えば、後天性免疫不全症候群などである。また、前記がん治療は、例えば、抗がん剤を用いた治療、放射線による治療、紫外線による治療などである。さらに、前記抗がん剤としては、例えば、エトポシドなどを用いることができる。 【0015】 本発明に係るアポトーシスの抑制方法は、BLDを有するペプチド、又は前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドのいずれかのアポトーシス活性を有するペプチドを有効成分として含有する組成物を用いて、例えば、細胞に接触させることを含んでなる。 【0016】 また、本発明に係るアポトーシスの抑制方法は、BLDを有するペプチド、又は前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドのいずれかのアポトーシス活性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はその塩基配列に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドを有効成分として含有する組成物を用いて、例えば、細胞に導入することを含んでなることとしてもよい。 【0017】 また、本発明に係るアポトーシス誘導性疾患の改善(予防、治療を含む)方法は、BLDを有するペプチド、又は前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドのいずれかのアポトーシス活性を有するペプチドを有効成分として含有する組成物を、ヒト又はヒト以外の脊椎動物(例えば、マウス、ラットなど)に投与することを含んでなる。 【0018】 また、本発明に係るアポトーシス誘導性疾患の改善(予防、治療を含む)方法は、BLDを有するペプチド、又は前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドのいずれかのアポトーシス活性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はその塩基配列に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドを有効成分として含有する組成物を、ヒト又はヒト以外の脊椎動物(例えば、マウス、ラットなど)に投与することを含んでなることとしてもよい。前記アポトーシス誘導性疾患は、例えば、脳虚血、アルツハイマー病、パーキンソン病、ポリグルタミン病、プリオン病、筋萎縮性側索硬化症、及び後天性免疫不全症候群脳症からなるグループから選ばれるいずれかの疾患を挙げることができる。 【0019】 本発明に係るアポトーシス抑制方法は、正常細胞のアポトーシスを伴う疾患に対して、前記正常細胞のアポトーシスを抑制する方法、又は、がん治療において生じる正常細胞のアポトーシスを抑制する方法であって、組成物をヒト又はヒト以外の脊椎動物(例えば、マウス、ラットなど)に投与することを含んでなる。前記組成物としては、BLDを有するペプチド、又は前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドのいずれかのアポトーシス活性を有するペプチドを有効成分として含んでなることとしてもよいし、また、BLDを有するペプチド、又は前記ペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドのいずれかのアポトーシス活性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はその塩基配列に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドを有効成分として含んでなることとしてもよい。 【0020】 なお、前記正常細胞のアポトーシスを伴う疾患は、例えば、後天性免疫不全症候群などである。また、前記がん治療は、例えば、抗がん剤を用いた治療、放射線による治療、紫外線による治療などである。さらに、前記抗がん剤としては、例えば、エトポシドなどを用いることができる。 【0021】 なお、前記BLDを有するペプチドとしては、例えば、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるHsILP1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるAtILP1、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるAtILP2、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCeILP1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるMmILP1、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-1、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるOsILP1-2、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるXlILP1、配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるSpILP1などを用いることができる。 【0022】 上述の本発明に係るアポトーシス抑制剤、医薬組成物、又はアポトーシスの抑制方法は、上述の各種ポリヌクレオチドを組み込んだ組換えベクターを有効成分として含んでなることとしてもよいし、上述の各種ポリヌクレオチドを組み込んだ組換えベクターを導入した細胞又はウイルスを有効成分として含んでなることとしてもよい。 【0023】 なお、上記「BLD」とは、下式(I)で示されるアミノ酸配列(配列番号21)、又はその配列の保存されたアミノ酸残基のうち、数個のアミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列を有するドメインを意味する。なお、式(I)中の数字は個数を意味する。この「BLD」と「BIRドメイン」との違いは、図1に示すように、「BLD」は、ジンクフィンガードメインに1〜18個のアミノ酸残基からなる配列(X1-18)を有するのに対し、「BIRドメイン」はその領域にアミノ酸を有しない(酵母は例外)。また、図1中の矢印で示すように、CCHC型ジンクフィンガーモチーフを形成すると考えられるHis残基の位置が「BLD」と「BIRドメイン」とで異なる。 R(I/L/V)XT(F/Y)(K/R)(S/A)X1-2WX1-7(I/L/V)(S/T/G)X(I/L/V)XCAX2GW(I/L/V)X4(D/N)X(I/L/V)XCX2CX3(I/L/V)X5X1-18X6(L/M)X3HX3CXW (I) 【0024】 また、上記「アポトーシス」とは、現象論的に、細胞の縮小、クロマチンの凝縮、DNAの断片化などによって特徴付けられる細胞死のことで、ネクローシス(壊死)に対応する概念を意味する。 【発明の効果】 【0025】 本発明によれば、アポトーシス誘導性疾患に対して有用なアポトーシス抑制剤、並びにそれを用いたアポトーシスの抑制方法及びアポトーシス誘導性疾患に対する医薬組成物を提供することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0026】 以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いている場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。 【0027】 なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的に実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。 【0028】 ==アポトーシス抑制剤== 上述のように、IAPタンパク質はアポトーシス抑制活性を有することが知られている。このIAPタンパク質において保存されているBIRドメイン(CCHC型ジンクフィンガーモチーフを有する)により構成されるZnフィンガーは、カスパーゼに結合してカスパーゼの活性を抑制することが報告されており(J. Biol. Chem. 273, 7787-90, 1998)、この抑制を通じてアポトーシスが抑制されることが示唆される。一方、実施例に後述するように、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるHsILP1は、アポトーシス抑制作用を有することが明らかになった。HsILP1の有するBLDはBIRドメインと非常に相同性が高く(図1)、コアとなるシステイン残基など、構造上重要と思われるアミノ酸も保存されており、それらの違いは、ギャップの存在にすぎない。従って、BLDもBIRドメインと同様に、カスパーゼとの相互作用を通じたアポトーシス抑制活性を担っていると考えられ、BLDを有するILPタンパク質は、その由来に関わらず、全てアポトーシス抑制活性を有すると考えられる。なお、BLDを有するILPタンパク質としては、HsILP1以外に、AtILP1、AtILP2、CeILP1、MmILP1、OsILP1-1、OsILP1-2、XlILP1、SpILP1などを具体的に例示することができる。 【0029】 また、BLDを有するILPタンパク質に、例えば、タグや細胞膜透過性ペプチドが結合したペプチドもアポトーシス抑制活性を有し、アポトーシス抑制剤として有用であると考えられる。なお、タグとしては、例えば、Hisタグ、GSTタグ、FLAGタグなどを用いることができ、細胞膜透過性ペプチドとしては、例えば、疎水性のシグナルペプチド、HIV-1 TATペプチド、マガイニン2などを用いることができる。 【0030】 以上のことから、BLDを有するILPタンパク質やペプチド、このペプチドをコードするポリヌクレオチド、このポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、この組換えベクターを含有する細胞、細菌またはウイルスなどは、アポトーシス抑制活性を有するILPタンパク質やペプチドを供給することができ、アポトーシスを抑制することが可能となる。従って、BLDを有するILPタンパク質やペプチド、このペプチドをコードするポリヌクレオチド、このポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、この組換えベクターを含有する細胞またはウイルスなどを有効成分として含有する組成物は、アポトーシス抑制剤として有用である。 【0031】 例えば、ヒトホモログを例に取ると、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるHsILP1タンパク質、このアミノ酸配列からなるペプチドをコードする配列番号10に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドや、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるAtILP1タンパク質、このアミノ酸配列からなるペプチドをコードする配列番号11に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドなどを挙げることができる。 【0032】 ==医薬組成物== BLDを有するILPタンパク質やペプチド、このペプチドをコードするポリヌクレオチド、このポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、この組換えベクターを含有する細胞またはウイルスは、アポトーシスを抑制することができることから、これらをアポトーシス誘導性疾患に対する医薬組成物として用いることにより、アポトーシス誘導性疾患の予防、進行抑制、又は治療を行うことができ、また、アポトーシスを伴う疾患若しくはがん治療において生じる正常細胞のアポトーシスを抑制するための医薬組成物として用いることにより、アポトーシスを伴う疾患による正常細胞の減少を抑制したり、がん治療における正常細胞のアポトーシスを抑制したりすることが可能である。なお、ここでのがん治療としては、例えば、放射線による治療、紫外線による治療、抗がん剤による治療などが含まれる。また、抗がん剤としては、例えば、エトポシドなどを用いることができる。 【0033】 なお、アポトーシス抑制活性を有するILPタンパク質若しくはペプチド、又はそれをコードするポリヌクレオチドは、細胞やウイルスに運ばせるだけでなく、それらを封入したリポソームに運ばせてもよい。この場合、Trans IT In Vivo Gene Delivery System(TaKaRaの商品名)などを用いることにより、目的の臓器や組織に、これらのペプチドやポリヌクレオチドを導入することができる。また、上記ペプチドやポリヌクレオチドなどを内包した高分子ミセルも、薬物キャリアとして優れた特性を有し、医薬組成物になりうる。 【0034】 また、アポトーシス抑制活性を有するILPタンパク質若しくはペプチドを発現することができるプラスミドと、高分子キャリアとの複合体も、標的組織にプラスミドを運び、そこで薬物を遊離することが可能であることから、アポトーシス誘導性疾患に対する医薬組成物になりうる。高分子キャリアは、前記ポリヌクレオチドを細胞内に導入することが可能な物質であり、例えば、ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポロタミン、キトサン、合成ペプチド、又はデンドリマーなどであるが、これらに限定されない。 【0035】 また、使用する部位又は目的に応じて、薬理学的に許容された適切な賦形剤又は基剤を医薬組成物にさらに含有することとしてもよい。 【0036】 ==アポトーシス抑制剤又は医薬組成物の作製方法== 本発明に係るアポトーシス抑制剤又は医薬組成物は、アポトーシス抑制活性を有するBLDを有するILPタンパク質やペプチド又はそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含有するものであればどのようなものでもよい。 【0037】 アポトーシス抑制活性を有するILPタンパク質またはペプチドは、有機化学的に合成してもよいが、ペプチドの場合、ILPタンパク質を酵素等により分解してもよい。また、適切なエンハンサー/プロモーターをもつ発現ベクターに、アポトーシス抑制活性を有するILPタンパク質またはペプチドをコードするポリヌクレオチドを挿入し、この組換えベクターを大腸菌、サルモネラ菌等の菌や、イースト、動物細胞などに導入し、発現させてもよい。また、この組換えベクターをin vitroで転写させて得られたmRNAを、ウサギ網状赤血球抽出液、大腸菌S30抽出液、麦芽抽出液、小麦胚抽出液などを用いたインビトロ翻訳システムにより翻訳させてもよい。 【0038】 ここで、発現ベクターを作製する際、Hisタグ、GSTタグなどのタグをコードするポリヌクレオチドと、アポトーシス抑制活性を有するILPタンパク質またはペプチドをコードするポリヌクレオチドとを融合した融合ポリヌクレオチドをベクターに挿入し、融合タンパク質として発現させるのがより好ましい。タグを利用して、目的のタンパク質またはペプチドを容易に精製することが可能になるからである。なお、タグは、最終段階で除去し、HPLC(high-performance(-speed) liquid chromatography)などでアポトーシス抑制活性を有するILPタンパク質またはペプチドだけを精製することもできる。 【0039】 このように作製した本発明のアポトーシス抑制活性を有するILPタンパク質またはペプチドを有効成分として含有する組成物は、アポトーシス誘導性疾患の治療、予防、進行抑制などに用いることができ、また、アポトーシスを伴う疾患による正常細胞の減少の抑制や、がん治療における正常細胞のアポトーシスの抑制などに用いることができる。 【0040】 ここで、医薬組成物として、アポトーシス抑制活性を有するILPタンパク質またはペプチドの代わりに、アポトーシス抑制活性を有するILPタンパク質またはペプチドを発現することのできる組換えベクターを用いてもよい。例えば、導入対象の患部に前記ベクターを導入すると、アポトーシス抑制活性を有するILPタンパク質またはペプチドを発現させることが可能となる。 【0041】 また、医薬組成物として、上述の組換えベクターを含有する細胞、細菌またはウイルスを用いてもよい。例えば、ILPタンパク質やペプチドにシグナルペプチドが付加されるように組み換えベクターを構築することにより、生体内標的部位で、組換え細胞内で発現したアポトーシス抑制活性を有するILPタンパク質またはペプチドを細胞外に放出させることができる。本発明に係る組換え細胞は、例えば、動物細胞に、アポトーシス抑制活性を有するILPタンパク質またはペプチドを発現できる組換えベクターをエレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リポフェクション法、アデノウイルス、レトロウイルス等のウイルスベクターなどを用いたウイルス感染法、又はカルシウムを用いたトランスフェクション法等によって導入することにより作製できる。細菌やウイルスの場合、毒性や副作用の生じないようにするために、あらかじめ無害化しておくことが好ましい。例えば、感染はするが、複製しないように改変されたレトロウイルスやアデノウイルスにアポトーシス抑制活性を有するILPタンパク質またはペプチドを発現することができる組換えベクターを組み込んでもよい。 【0042】 ==医薬組成物の投与== 上述のように作製された、アポトーシス抑制活性を有するILPタンパク質またはペプチド、このペプチドと細胞内導入ペプチドとの融合タンパク質、このペプチド又はこの融合タンパク質を発現することができる組換えベクター、この組換えベクターを含有する細胞やウイルスなどを有効成分として含み、上述のように、投与のための他の成分を含んだ医薬組成物を、ヒトまたはヒト以外の脊椎動物に対し、導入対象の患部の近傍に、直接投与するか、医薬組成物によっては非経口、経口、皮内、皮下、静脈内、筋肉内、又は腹腔内に投与するのが好ましい。 【0043】 以上のように、生体内にアポトーシス抑制活性を有するILPタンパク質またはペプチドを導入すると、疾患の原因となるアポトーシスや、疾患により生じたアポトーシスや、疾患の治療において生じるアポトーシスなどを効果的に抑制することができる。 【実施例】 【0044】 以下、本発明の実施例について詳細に述べる。 【0045】 [実施例1] BIRドメインを有するIAPタンパク質は、アポトーシス抑制活性を有することが知られている。そこで、BIRドメインと相同性をもつBLDを有するHsILP1もアポトーシス抑制活性を有するかどうかを調べるため、HsILP1遺伝子を導入したHEK293細胞を、トポイソメラーゼの抑制剤であるエトポシドで処理し、アポトーシスが誘導されるかどうかを調べた。 【0046】 まず、HsILP1に対応するcDNAを、ATCC(American type culture collection)によるIMAGE consortiumから入手したIMAGE3353218のcDNAクローンを用いて単離した。このcDNAクローンは、HsILP1の開始コドンを含む5’末端において5つのヌクレオチドが欠損していた。そのため、HsILP1の全長cDNAを得るために、欠損したヌクレオチドを含むフォーワードプライマーMODILPatgBam(5’-cgcggatccatggcggcgccctgtgag-3’;配列番号19)とリバースプライマーXhoEnd(5’-gccgctcgagagcatgagcacagagatt-3’;配列番号20)とを用い、上記cDNAクローンを鋳型として、PCR(polymerase chain reaction)反応を行った。増幅したcDNAをXhoI及びBamHIで切断し、得られた断片をC末端にMyc-Hisタグを含むpcDNA3.1(Invitrogen)に組み込み、プラスミドpcDNA3.1-HsILP1を作製した。 【0047】 次に、10% FCSを含むDMEM培地が入った35mmディッシュにHEK293細胞(6×105個)を播種して24時間培養し、PolyFect(QIAGEN)を用いてプラスミドpcDNA3.1-HsILP1 2μgをHEK293細胞に導入し、24時間培養した。なお、コントロールとしてプラスミドpcDNA3.1/Myc-Hisを導入したHEK293細胞を準備した。培養後、最終濃度で30μMのエトポシドを加え、さらに24時間培養した。それぞれの細胞を回収し、氷冷したPBSで洗浄して上清を取り除いた。その後、DNA extraction kit(Stratagene)を用いて回収した細胞から全DNAを抽出し、エチジウムブロマイドを含む2%のアガロースゲルを用いて電気泳動を行い、UV照射により観察した。その結果を図2に示す。 【0048】 なお、図2において電気泳動した各サンプルを以下に示す。 (サンプル1)無処理でHEK293細胞から抽出した全DNA (サンプル2)プラスミドpcDNA3.1/Myc-Hisを導入したHEK293細胞をエトポシドで処理し、抽出した全DNA (サンプル3)プラスミドpcDNA3.1-HsILP1を導入したHEK293細胞をエトポシドで処理し、抽出した全DNA 【0049】 また、上記回収した細胞を溶解し、SDS-PAGEを行った。その後、ニトロセルロース膜(Schleicher & Shuell Bioscience Inc)にタンパク質を転写し、一次抗体として抗mycモノクローナル抗体(Invitrogen:2000 倍希釈)を、二次抗体としてAPが結合した抗マウスIgG抗体(Promega corporation:2000 倍希釈)を、基質としてアルカリホスファターゼを用いて染色し、Western Blue Stabilized Substanceにより検出した。その結果を図3に示す。 【0050】 なお、図3において泳動した各サンプルを以下に示す。 (サンプル1)HEK293細胞 (サンプル2)プラスミドpcDNA3.1/Myc-Hisを導入したHEK293細胞 (サンプル3)プラスミドpcDNA3.1-HsILP1を導入したHEK293細胞 (サンプル4)プラスミドpcDNA3.1-HsILP1を導入したHEK293細胞をエトポシドで処理したもの 【0051】 図2に示すように、エトポシドで処理したpcDNA3.1-HsILP1導入細胞においては、アポトーシスの指標であるDNAの断片化が生じるのに対して、エトポシドで処理したpcDNA3.1-HsILP1導入細胞ではDNAの断片化の抑制が確認できた。また、図3に示すように、pcDNA3.1-HsILP1導入細胞をエトポシドで処理することにより、HsILP1(55kDa)のリン酸化が生じることがわかった。以上のことから、HsILP1がアポトーシス抑制活性を有することが示唆された。 【0052】 [実施例2] 次に、HsILP1を遺伝子導入することにより、エトポシドによるHeLaS3細胞のアポトーシスが抑制されているかどうか、実際に観察した。 【0053】 35mmディッシュに入れたカバーガラス(18mm×24mm)上で、FuGENE(Roche)を用いてHeLaS3細胞(3×105個)に1μgのEGFPと、1μgのpcDNA-HsILP1又はpcDNA3.1/Myc-Hisを導入し、24時間培養した。なお、培地としては、10% FCSを含むDMEM培地を用いた。培養後、最終濃度で100μMのエトポシドを加えてさらに24時間培養し、顕微鏡又は蛍光顕微鏡を用いて観察した。この結果を図4に示す。 【0054】 さらに、細胞においてアポトーシスが抑制されているかどうかを確認するため、エトポシドを加えて培養した細胞にHoechst33258を20分間反応させて染色した。その後、ディッシュに入れたカバーガラスを取り出し、その表面をPBSで洗浄してbinding buffer(10 mM HEPES (pH7.5)、140 mM NaCl、及び2.5 mM CaCl2)で処理し、AnnexinV-Cy3(Sigma-Aldrich)を含むbinding bufferで15分間インキュベーションし、AxioScop(Carl-Zeiss)を用いて観察した。この結果を図4に示す。 【0055】 また、エトポシドを加えて12又は24時間で培養する他は、上記と同様の方法で処理し、蛍光顕微鏡及びAxioScopを用いてGFP陽性細胞とアネキシンV陽性細胞との数をそれぞれ計測し、GFP陽性細胞に対するアネキシンV陽性細胞の割合(%)を求めた。この結果を図5に示す。 【0056】 図4及び図5に示すように、エトポシドで処理したpcDNA3.1-HsILP1導入細胞は、エトポシドで処理したpcDNA3.1/Myc-His導入細胞に比べ、より多くの細胞の生存が確認できた。また、遺伝子導入したHsILP1の発現により、エトポシドにより誘導されるDNAラダーや、リン脂質(phosphatidylserine)の提示が抑制されることが明らかになった。このことから、HsILP1がアポトーシス抑制活性を有することが明らかになった。 【図面の簡単な説明】 【0057】 【図1】本発明のILPタンパク質におけるBLDと、IAPタンパク質におけるBIRドメインとを比較した図である。 【図2】本発明の一実施例において、HsILP1が、アポトーシスの指標であるDNAの断片化を抑制する結果を示す図である。 【図3】本発明の一実施例において、pcDNA3.1-HsILP1導入細胞をエトポシドで処理することにより、HsILP1(55kDa)がリン酸化することを示す図である。 【図4】本発明の一実施例において、HelaS3の細胞内でHsILP1を発現させることにより、エトポシドによって誘導されるアポトーシスを抑制する結果を示す図である。 【図5】本発明の一実施例において、HsILP1が、エトポシドによって誘導されるアポトーシスを抑制する結果を示す図である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000125370 【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
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| 【出願日】 |
平成16年8月24日(2004.8.24) |
| 【代理人】 |
【識別番号】110000176 【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
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| 【公開番号】 |
特開2006−62981(P2006−62981A) |
| 【公開日】 |
平成18年3月9日(2006.3.9) |
| 【出願番号】 |
特願2004−244305(P2004−244305) |
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