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【発明の名称】 脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物
【発明者】 【氏名】阿部 敦子

【氏名】瀬川 丈史

【要約】 【課題】耐熱性、耐酸性、耐塩性に優れた平均粒径100nm以下の均一な乳化液を形成することができる脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物、これを素材とする飲食品およびこれを内包するゼラチンカプセルを提供する。

【解決手段】下記の重量割合でA、B、C及びD成分を含有し、かつ、A、B及びC成分を合計量で5〜90重量%含有する組成物に、均質機により49MPa以上の剪断力を与えることにより得られる脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の重量割合でA、B、C及びD成分を含有し、かつ、A、B及びC成分を合計量で5〜90重量%含有する組成物に、均質機により49MPa以上の剪断力を与えることにより得られる脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物。
A:脂溶性ビタミン類:0.0001〜40重量%、
B:デカグリセリンのオレイン酸モノエステル:4〜32重量%、
C:ペンタグリセリンのオレイン酸モノエステル:1〜18重量%、
D:グリセリン:10〜95重量%
【請求項2】
下記の重量割合でA、B、C、D及びE成分を含有し、かつ、A、B、C及びE成分を合計量で5〜90重量%含有する組成物に、均質機により49MPa以上の剪断力を与えることにより得られる脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物。
A:脂溶性ビタミン類:0.0001〜40重量%、
B:デカグリセリンのオレイン酸モノエステル:4〜32重量%、
C:ペンタグリセリンのオレイン酸モノエステル:1〜18重量%
D:グリセリン:10〜95重量%
E:食用油脂類:0.1〜15重量%
【請求項3】
請求項1又は2に記載の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物からなる飲食品用の素材。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物を内包してなるゼラチンカプセル。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物、これを素材とする飲食品およびこれを内包するゼラチンカプセルに関する。さらに、詳しくは、耐熱性、耐酸性、耐塩性に優れた平均粒径100nm以下の均一な乳化液を形成することができる脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物、これを素材とする飲食品及びこれを内包するゼラチンカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
脂溶性ビタミン類としては、ビタミンA、D、E、Kなどが知られている。脂溶性ビタミン類は従来から様々な生理活性を有することが指摘されてきた。
例えば、ビタミンAは欠乏すると夜盲症の他に、皮膚や粘膜上皮の角化、性腺の退行と変性、感染症に対する抵抗力の低下等の症状を起こす。ビタミンDは欠乏すると小児のくる病、成人の骨軟化症、歯のカリエスを引き起こす。また、骨折の場合の治療にも使用される。ビタミンE(トコフェロール)は、不足すると不妊症、生活習慣病の進行、運動能力の低下を引き起こす。また、更にビタミンKは不足すると血液の凝固がしにくくなることが知られている。
しかし、これらの脂溶性ビタミン類は、水溶性ビタミン類と異なり、水に溶けにくいなどの性質のために、経口摂取した場合に吸収効率が悪いものであった。
【0003】
最近、ビタミンE等の脂溶性ビタミン類の吸収性は、乳化液とし、その粒径を小さくすると向上することが報告された。(例えば特許文献1、非特許文献1を参照。)
しかし、脂溶性ビタミン類の乳化液は、例えば、特許文献1〜4に開示されているが、熱、酸やアルカリに対して不安定であるため、一般的にドリンク剤等の乳化液の製剤化には困難性が伴う。また乳化液を摂取した際に、特に胃腸の消化液中で凝集を生じて分散液の粒径が大きくなり、吸収性が悪くなることがある。
さらに、乳化液は、これを摂取するためにゼラチンカプセルに充填した際には、カプセル皮膜が水に溶解し内容物が漏出したり、カプセルの製造工程において加温により水分がカプセルから蒸発していわゆる変形を生じるなどの問題があり、カプセル用に使用することは適さない。
【0004】
【特許文献1】特開2004−175664号公報
【特許文献2】特開昭61−234920号公報
【特許文献3】特開平10−84887号公報
【特許文献4】特開平11−332463号公報
【非特許文献1】食品と開発 第38巻(No9)、13−15頁、2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐熱性、耐酸性、耐塩性に優れた平均粒径100nm以下の均一な乳化液を形成することができる脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物を提供することを目的とする。さらに、例えば飲食料の素材に使用すると生産効率が高く安定な製品を製造でき、摂食時には効率よく脂溶性ビタミンを吸収させることのできる飲食品用の素材を提供する。そして、胃内でも安定な脂溶性ビタミンの乳化液を形成でき、効率よく脂溶性ビタミンを吸収させることのできる脂溶性ビタミン内包ゼラチンカプセルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の問題点に鑑み鋭意検討した結果、脂溶性ビタミン類、特定の種類の界面活性剤、及びグリセリンを特定量含有する組成物に均質機で高剪断力を与えると、耐熱性、耐酸性、耐塩性に優れた平均粒径100nm以下の均一な乳化液を形成する脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明は、下記の重量割合でA、B、CおよびD成分を含有し、かつ、A、B及びC成分を合計量で5〜90重量%含有する組成物に、均質機により49MPa(500kg/cm)以上の剪断力を与えることにより得られる脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物である。
A:脂溶性ビタミン類:0.0001〜40重量%、
B:デカグリセリンのオレイン酸モノエステル:4〜32重量%、
C:ペンタグリセリンのオレイン酸モノエステル:1〜18重量%、および、
D:グリセリン:10〜95重量%
【0008】
本発明の第2の発明は、下記の重量割合でA、B、C、DおよびE成分を含有し、かつ、A、B、C及びE成分を合計量で5〜90重量%含有する組成物に、均質機により49MPa(500kg/cm)以上の剪断力を与えることにより得られる脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物である。
A:脂溶性ビタミン類:0.0001〜40重量%、
B:デカグリセリンのオレイン酸モノエステル:4〜32重量%、
C:ペンタグリセリンのオレイン酸モノエステル:1〜18重量%
D:グリセリン:10〜95重量%
E:食用油脂類:0.1〜15重量%
【0009】
本発明の第3の発明は、第1の発明又は第2の発明の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物からなる飲食品用の素材である。
【0010】
本発明の第4の発明は、第1の発明又は第2の発明の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物を内包してなるゼラチンカプセルである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の発明によれば、耐熱性、耐酸性、耐塩性に優れた平均粒径100nm以下の均一な乳化液を形成することができる脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物が提供される。本発明の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物は、保存安定性がよく、多量の水を含まない点で菌等の汚染に対して抵抗力が高く、それ自体の容量が小さいことから、流通においてコストメリットがある。そして、水を加えると容易に安定な乳化液を形成することから、飲食用素材として最適である。さらに、容易にゼラチンカプセルに内包できる。
【0012】
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において高粘度の脂溶性ビタミンを用いた場合でも、より均一な乳化液を形成できる脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物が提供される。
本発明の第3の発明によれば、例えば飲料に使用すると生産効率が高く安定な製品を製造でき、摂食時には効率よく脂溶性ビタミン類を吸収させることのできる飲食品用の素材が提供される。
【0013】
本発明の第3の発明によれば、胃内でも安定な脂溶性ビタミン類の乳化液を形成でき、効率よく脂溶性ビタミンを吸収させることのできる脂溶性ビタミン類内包ゼラチンカプセルが提供される。経口摂取後の生体内においてゼラチンカプセルが溶解した際に胃酸による乳化破壊や凝集が起こることなく、脂溶性ビタミン類は小腸で効率良く吸収される。耐塩性を有するので、ゼラチンカプセル摂取前後に飲食した食物が高塩濃度であっても胃内で乳化破壊が起こらない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物は、下記のA成分:脂溶性ビタミン類、B成分:デカグリセリンのオレイン酸モノエステル、C成分:ペンタグリセリンのオレイン酸モノエステル、及びD成分:グリセリン、または、A、B、C、D成分およびE成分:食用油脂類を含有する組成物に剪断力を与えることにより得られる。
ここで、本発明で用いるA成分である脂溶性ビタミン類は、例えば、ビタミンA、D、E、Kおよびカロチン、リコピンなどのビタミンA前駆体、エルゴステロール等のビタミンD前駆体、トコフェロール、トコトリエノール等のクロマン誘導体等が挙げられる。これらの脂溶性ビタミン類は、純度は特に限定されず、単一成分で用いてもよいし、あるいは混合物として使用してもよい。
【0015】
本発明で用いるビタミンAとしては、レチノール、デヒドロレチノールおよび通常ビタミンA油として知られている魚の肝油、もしくはビタミンAの脂肪酸エステルが挙げられる。あらかじめE成分である食用油にビタミンAの脂肪酸エステル(例えば酢酸エステル、パルミチン酸エステル)を配合しているビタミンA含有油を使用することもできる。
ビタミンDとしては、コレカルシフェロール、カルフェロールなどが挙げられる。ビタミンDとして、あらかじめE成分である食用油脂に前記のビタミンDを配合してなるビタミンD含有油を使用してもよい。
ビタミンEとしては、α−、β−、γ−、δ−トコフェロール、dl−α−トコフェロール、α−、β−、γ−、δ−トコトリエノール、dl−α−トコトリエノールが挙げられる。天然由来のものであっても、合成品であってもよい。ビタミンEとしては、あらかじめE成分である食用油脂にビタミンEを配合してなるビタミンE含有油を使用することもできる。
他の脂溶性ビタミン類も、天然由来のもの、および合成品などを用いることができる。さらに脂溶性ビタミン類をE成分の食用油脂等の油性成分に溶解、希釈したものを用いてもよい。またさらに、これらの脂溶性ビタミン類は単独で用いてもよいし、あるいは混合物としてもよい。
【0016】
本発明において、組成物中における脂溶性ビタミン類の含有量は0.0001〜40重量%、好ましくは0.001〜30重量%、さらに好ましくは0.1〜25重量%である。脂溶性ビタミン類の含有量が40重量%を超えると、脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物の保存時の安定性が悪くなる。
また、脂溶性ビタミン類の含有量は、本発明の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物を使用する用途の目的に対応して調整することができる。例えば、これをゼラチンカプセルに内包する場合は摂取量を考慮すると、以下のようになる。ビタミンAの場合は、含有量は0.0001〜10重量%が好ましく、0.001〜5重量%がより好ましい。ビタミンEの場合は、含有量は0.001〜20重量%が好ましく、0.01〜10重量%がより好ましい。ビタミンDの場合は0.0001〜10重量%が好ましく、0.0001〜1重量%がより好ましい。ビタミンKの場合は0.0001〜40重量%が好ましく、0.001〜20重量%がより好ましい。
これらの脂溶性ビタミンの中で、ビタミンAおよびEの吸入効率のよい飲食品、カプセル化剤が求められていることから本発明の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物の使用に適している。
【0017】
前記のビタミンAの市販品としては、例えばビタミンA油(兼松食品(株) 製;商品名:ビタミンA油、ロシュ・ビタミン・ジャパン(株) 製;商品名:ビタミンAパルミテート、武田薬品工業(株) 製;商品名:ビタミンAD油、理研ビタミン(株) 製;商品名:ビタミンAD油)等が挙げられる。
ビタミンDの市販品としては、例えばビタミンD油(兼松食品(株) 製;商品名:ビタミンD油、武田薬品工業(株) 製;商品名:ビタミンAD油、理研ビタミン(株) 製;商品名:ビタミンAD油)、ビタミンD3(ロシュ・ビタミン・ジャパン(株) 製;商品名:コレカルシフェロール)等が挙げられる。
ビタミンEの市販品としては、例えばビタミンE油(日清製油(株) 製;商品名:トコフェロール55、トコフェロール85、エーザイ(株) 製;商品名:イーミックスD、同−80、同−60、同−40、同−A40、同−A16、トコリット−92、日清製油(株) 製 商品名:トコフェロール80、同60、同40、同40S、藤沢薬品工業(株) 製;商品名:FE−70、同−60、同−40、理研ビタミン(株) 製;商品名:Eオイル700、同600、エーディーエムファーイースト(株) 製;商品名:ビタミンE5−87等)が挙げられる。
【0018】
本発明で用いるB成分は、デカグリセリンのオレイン酸モノエステルである。
B成分の含有量は、4〜32重量%であり、より好ましくは、7〜25重量%である。B成分の含有量が4重量%より少ないと本発明の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物の保存安定性が悪くなる。また、水を加えた場合に脂溶性ビタミン類の細かな粒子が形成され難くなり、かつ乳化液の経時安定性が悪くなる。B成分の含有量が32重量%より多いと脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物の粘性が高くなり、調製が難しくなるだけでなく、含有できる脂溶性ビタミン類の量が少なくなる。
デカグリセリンのオレイン酸モノエステルの純度は高い方が好ましいが、製造上の都合もあり、モノエステル以外に、若干量のジエステルやトリエステルを含んでいてもよい。
デカグリセリンのオレイン酸モノエステルの市販品としては、デカグリセリンオレイン酸モノエステル(太陽化学(株) 製;商品名:サンソフトQ―17S、理研ビタミン(株)製;商品名:ポエムJ−0381、坂本薬品工業(株) 製;商品名:SYグリスターMO−750、三菱化学フーズ(株) 製;商品名:リョートーポリグリエステルO−15D)等が挙げられる。
【0019】
本発明で用いるC成分は、ペンタグリセリンオレイン酸モノエステルである。
C成分の含有量は、1〜18重量%であり、好ましくは、3〜15重量%である。C成分の含有量が1重量%より少ないと本発明の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物の保存安定性が悪くなる。また、水を加えた場合に脂溶性ビタミン類の細かな粒子が形成され難くなり、かつ乳化液の経時安定性が悪くなる。18重量%より多いと脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物の粘性が高くなり、調製が難しくなるだけでなく、含有できる脂溶性ビタミン類の量が少なくなる。
ペンタグリセリンのオレイン酸モノエステルの純度は高い方が好ましいが、製造上の都合もあり、モノエステル以外に、若干量のジエステルやトリエステルを含んでいてもよい。
【0020】
本発明の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物において、A成分の脂溶性ビタミン類1重量部に対して、B成分のデカグリセリンのオレイン酸モノエステルとC成分のペンタグリセリンオレイン酸モノエステルとの合計量を、0.15〜48000重量部の範囲とすることが好ましい。0.15重量部より小さいとき、脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物の保存安定性が悪くなったり、安定な乳化液を形成できなくおそれがある。さらに48000重量部を超えると、脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物の粘性が高くなり、例えばカプセルの調製が難しくなるおそれがある。またさらにB成分1重量部に対してC成分を0.01〜5重量部の範囲とすることが好ましい。なお、本発明において、B成分およびC成分を含有することが必須である。B成分またはC成分単独ではプレ乳化物の安定性が悪くなる。
【0021】
本発明で用いるD成分のグリセリンとしては、食品用途に使用できるものであれば特に制限はない。グリセリンの含有量は、10〜95重量%が好ましい。グリセリンの含有量が10重量%より少ないと脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物の保存安定性が悪くなり、95重量%より多いと脂溶性ビタミン類の含有量が少なくなるので好ましくない。
【0022】
本発明で用いるE成分の食用油脂類としては特に制限はなく、一般に食用油脂である動物、植物、微生物を原料とする油脂または合成油等を使用できる。例えば、豚脂、牛脂、鶏油、鯨油、マグロ油、イワシ油、サバ油、サンマ油、カツオ油、ニシン油、肝油、大豆油、綿実油、サフラワー油、米油、コーン油、ナタネ油、パーム油、シソ油、エゴマ油、カカオ脂、落花生油、ヤシ油等、および中鎖脂肪酸トリグリセリド等の合成トリグリセリド等が挙げられ、これらを単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。食用油脂類を使用すると、脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物の粘度を下げることができるのでプレ乳化物の調整が容易となり、また、これを素材に使用する飲食品の製造、カプセルへの内包が容易となる。食用油脂類は脂溶性ビタミンを溶解させた後に使用すると、より効果を発揮し易い。
食用油脂類の含有量は、0.1〜15重量%が好ましい。食用油脂類の含有量が0.1重量%より少ないと含有させる効果が十分に得られず、15重量%より多いと、脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物の保存安定性が悪くなる。
本発明において、組成物がA、B、C及びD成分を含有するとき、A成分、B成分及びC成分を合計量で5〜90重量%含有することが好ましく、35〜90重量%含有することがより好ましい。合計量が5重量%未満では、プレ乳化物中の脂溶性ビタミン類の割合が少なくなり、90重量%を超えると組成物の粘性が高く、プレ乳化物が製造し難くなる。さらに、本発明において、組成物がA、B、C、D及びE成分を含有するとき、A、B、C及びE成分を合計量で5〜90重量%含有することが好ましく、35〜90重量%含有することがより好ましい。合計量が5重量%未満では、プレ乳化物中の脂溶性ビタミン類の割合が少なくなり、90重量%を超えると組成物の粘性が高く、プレ乳化物が製造し難くなる。
【0023】
本発明において組成物には、A、B、C、D、E成分以外に、還元澱粉糖化物(還元水あめ)、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、還元分岐オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、還元乳糖、環状オリゴ糖、直鎖オリゴ糖、シクロデキストリン、ステビアまたはラクチトール等の多価アルコール類を含有させることができる。これらの多価アルコール類を含有させると脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物の保存安定性を向上させることができる。多価アルコール類の含有量は、グリセリンの含有量と合計量で組成物中95重量%以下の範囲とすることが好ましい。さらに、これらの多価アルコール類の含有量は、グリセリンに対して0.00001〜5重量%、より好ましくは0.3〜1重量%である。
【0024】
本発明において、組成物には水を含有させてもよい。水の含有量は10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。水を含有させると、プレ乳化物の粘度を下げることができるが、ゼラチンカプセルに内包すると、ゼラチンカプセルを溶解させることになる。水としては、飲食品に配合できる水であれば特に制限はなく、例えば、イオン交換水、蒸留水等の精製水、水道水、天然水、アルカリイオン水等が挙げられる。また、食品添加物を加えた水であってもよい。食品添加物としては、ビタミン類、界面活性剤、安定剤、調味料、酸および塩などが挙げられる。
【0025】
本発明の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物は上記の組成物に、均質機により49MPa以上の剪断力を与えることにより得られる。
【0026】
具体的には例えば、以下の工程1〜3からなる製造方法より本発明の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物を製造することができる。
工程1;B成分およびC成分およびD成分および必要に応じて、多価アルコール、水を所定量を秤り取り、加熱溶解する。この場合は、60〜80℃で加熱溶解することが好ましい。
工程2;A成分、必要に応じてE成分を、前記工程1で加熱溶解したものに加える。
工程3;均質化機械を用いて均質化を行なう。
この場合の均質化機械による均質化圧力は、49MPa(500kg/cm)以上の剪断力を与える。さらに前記工程2の後に、ホモミキサー等により工程3のための前処理を行ってもよい。
【0027】
前記の工程3で行う均質化処理を行うための均質化機械としては、例えば、マイクロフルイダイザー(みづほ工業(株)製、商品名)、アルティマイザー((株)スギノマシン製、商品名)などの均質化処理機を使用できる。均質化処理の圧力は49MPa以上、より好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは150MPa以上の剪断力を与える方法が挙げられる。圧力をかけると、より粒子径の微細な乳化物が得られる。
また前記の前処理を行うためのホモミキサー等として、例えば、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)製、商品名)、クレアミックス(エム・テクニック(株)製、商品名)等が挙げられる。攪拌羽の周速は750m/分以上、より好ましくは1000m/分以上、さらに好ましくは1500m/分以上の剪断力を与える周速である。
【0028】
なお、均質化処理は上記以外にも、ナノマイザー、超音波乳化機等の均質化処理機やアジホモミキサー、ウルトラミキサーなどの各種のホモミキサーを用いることができる。
脂溶性ビタミン類含有組成物をより小粒径化して安定化させるために、この均質化処理を2回以上行うことが好ましい。
本発明において、製造される脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物の粘度を1000cP以下/20℃とすると、ハンドリングがし易く、飲食品素材、ゼラチンカプセルの内包物として使用する際の生産効率を高めることができる。
【0029】
このようにして得られた本発明の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物に、重量比で10倍量程度の水を加えると、容易に脂溶性ビタミン類含有乳化液を形成することができる。形成される脂溶性ビタミン類含有乳化液は、粒子が均一であり、平均粒子径は、100nm以下となる。
【0030】
したがって、本発明の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物は脂溶性ビタミン類を提供しうる飲食品の素材として好適である。
本発明の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物を含有する食品としては、例えばパン、ビスケット、ゼリー等のパン・菓子類;ヨーグルト、ハム等の乳肉加工食品;味噌、ソース、ドレッシング等の調味料;豆腐、麺類の加工食品;カプセル状、タブレット状、顆粒状等にした健康食品等を挙げることができる。
本発明の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物を素材として製造される飲料としては、例えば、スポーツ飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、アルコール飲料、栄養ドリンク等を挙げることができる。
【実施例】
【0031】
以下に具体例を用いてさらに本発明を詳細に説明する。
次に用いた測定方法、評価方法を示す。
1.平均粒子径の測定方法
乳化液試料の平均粒子径は、プレ乳化物を精製水にて100〜300倍に希釈した水溶液を調製し、サブミクロン粒度分布測定装置〔型式:N4SD ベックマン・コールター(株)製〕により分散粒子を測定した。
【0032】
2.耐熱性試験
精製水に試料のプレ乳化物が1重量%となるように添加し乳化液を形成させ、液の外観状態を目視で評価した。さらに、この乳化液の耐熱性を確認するために、乳化液を湯煎にかけ液温が85℃に到達した時点より30分間加熱処理した後、室温で放冷して外観を目視で観察した。また、加熱前後の平均粒子径を前記の方法で測定して耐熱性を評価した。
【0033】
3.耐酸・耐熱試験
クエン酸にてpH=3に調整した緩衝水に試料のプレ乳化物を1重量%となるように添加し乳化液を形成させ、この乳化液を湯煎にかけ液温が85℃に達温した時点より30分間加熱処理を行った。この乳化液を室温にて放冷し、加熱前後の平均粒子径により耐酸・耐熱性を評価した。
【0034】
4.耐塩・耐熱性試験
食塩を5%含有する精製水に試料のプレ乳化物を1重量%となるように添加し乳化液を形成させ、この乳化液を湯煎にかけ、液温が85℃に達温した時点より30分間加熱処理を行った。この乳化液を室温にて放冷し、加熱前後の平均粒子径により耐塩・耐熱性を評価した。
【0035】
実施例1
B成分のデカグリセリンオレイン酸モノエステル(坂本薬品工業(株)製;商品名:SYグリスターMO−750)40g(組成物中10重量%)、C成分のペンタグリセリンオレイン酸モノエステル(太陽化学(株)製;商品名:サンソフトA−171E)20g(5重量%)、さらにD成分のグリセリン(日本油脂(株)製;商品名:食添グリセリン−S)300g(75重量%)を量り取り、75〜80℃で加熱溶解した。次に、その液を60〜65℃に冷却後、A成分のビタミンE油(エーザイ(株)製;商品名:ビタミンEミックスD)40g(10重量%)を加えてスリーワンモーターで20分間攪拌混合を行った。その後、前記混合液をマイクロフルイダイザー(みづほ工業(株)製;型式:M−110E/H)を用いて147MPa(1500kg/cm)の圧力で均質化する工程を行った。この乳化物をさらに前記の高圧均質化機に同条件で再度通過させることにより、脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物を製造した。この脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物に重量比で200倍程度の水を加えたところ、平均粒子径78nmの均一な乳化液が得られた。次に、プレ乳化物を5℃で1週間保存し、プレ乳化物の保存安定性を確認した。安定性は良好であり、1週間保存後のプレ乳化物に水を加えても同様の乳化液が得られた。
プレ乳化物の組成および得た乳化液の平均粒子径、さらに保存安定性試験、耐熱性試験、耐酸・耐熱性試験および耐塩・耐熱性試験を行った結果を合わせて表1に示す。
【0036】
実施例2
B成分のデカグリセリンオレイン酸モノエステル(坂本薬品工業(株)製;商品名:SYグリスターMO−750)40g(組成物中10重量%)、C成分のペンタグリセリンオレイン酸モノエステル(太陽化学(株)製;商品名:サンソフトA−171E)20g(5重量%)、さらにD成分のグリセリン(日本油脂(株)製;商品名:食添グリセリン−S)300g(75重量%)を秤り取り、75〜80℃で加熱溶解した。次に、A成分のビタミンD結晶(ロッシュ・ビタミン・ジャパン(株)製;商品名:コレカルシフェロール)0.4g(0.1重量%)をE成分のパナセート810(日本油脂(株)製;商品名:パナセート810)4g(1重量%)に量り取り、85℃で加熱溶解した。上記にて調製したB、C、D成分を60〜65℃に冷却後、前記にて調整したA、E成分を加えて20分間攪拌混合を行った。その後、前記混合液をマイクロフルイダイザー(みづほ工業(株)製;型式:M−110E/H)を用いて147MPa(1500kg/cm)の圧力で均質化する工程を行った。この乳化液をさらに前記の高圧均質化機に同条件で再度通過させることにより脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物を製造した。この脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物に重量比で200倍程度の水を加えたところ、平均粒子径47nmの均一な乳化液が得られた。
他は、実施例1と同様に実験を行った。結果を表1に示す。
【0037】
実施例3〜10および比較例1〜6
実施例1、2において、配合組成を表1、2に示すようにした以外は、実施例1、2と同様にしプレ乳化物を得た。実施例1と同様に実験を行った。結果を表1、2に示す。
【0038】
【表1】


【0039】
【表2】


【0040】
なお、表1および2における、注の意味は以下のとおりである。
注1:プレ乳化物の状態については、目視で観察し、次の判断基準で評価した。
○:良好、△:クリーミングあり、×:二層分離する
注2:安定性試験については、液の粒径を前記の方法で調べ、次の判断基準で評価した。○:±10nm以下、△:±20nm以下、×:±20nmより大
状態は、○:良好、△:クリーミングあり、×:二層分離する の状態を目視で観察した。
【0041】
なお、表1および2中に用いた略号は次のとおりである。
MO−750:デカグリセリンオレイン酸モノエステル(坂本薬品工業(株)製;商品名:SYグリスターMO−750)
MCA−750:デカグリセリンカプリル酸モノエステル(坂本薬品工業(株)製;商品名:SYグリスターMCA―750)
O−1570:ショ糖オレイン酸モノエステル(三菱化学フーズ(株)製;商品名:リョートーシュガーエステルO−1570)
A−171E:ペンタグリセリンオレイン酸モノエステル(太陽化学(株)製;商品名:サンソフトA−171E)
パナセート810:中鎖脂肪酸トリグリセリド(日本油脂(株)製;商品名:パナセート810)
グリセリン:グリセリン(日本油脂(株)製;商品名:食添グリセリン−S)
ラクチトール:ラクチトール(日研化成(株)製;商品名:ラクチトール日研)
還元澱粉糖化物:(東和化成工業(株)製;商品名:アマミール。)
【0042】
実施例1〜10の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物は、保存安定性が優れているだけでなく、水を加えて乳化液を形成すると平均粒径100nm以下の均一な乳化液となり、乳化液の耐熱性、耐酸・耐熱性および耐塩・耐熱性がともに優れていることがわかった。なお、いずれの場合も得られた乳化液を5℃にて2ヵ月間保存したが、相分離等は認められず乳化状態は安定であった。
【0043】
比較例1の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物は、製造後まもなく固化し、また、水を加えて乳化液を形成しても耐酸・耐熱性試験溶液および耐塩・耐熱性試験溶液の安定性で劣っていた。比較例2の溶性ビタミン類含有プレ乳化物は、1週間でオイルオフを生じるなど保存安定性が悪く、また、水を加えて得た乳化液は耐酸・耐熱性試験溶液および耐塩・耐熱性試験溶液の安定性で劣っていた。比較例3の溶性ビタミン類含有プレ乳化物は、乳化液形成時から乳化状態が不安定で、また、水を加えて得た乳化液は耐熱性試験溶液、耐酸・耐熱性試験溶液および耐塩・耐熱性試験溶液の安定性で劣っていた。比較例4の溶性ビタミン類含有プレ乳化物は、1週間で二層分離を起こすなど保存安定性が悪く、また、水を加えて得た乳化液は耐酸・耐熱性試験溶液および耐塩・耐熱性試験溶液の安定性で劣っていた。比較例5の溶性ビタミン類含有プレ乳化物は乳化液形成直後からオイルオフを生じるなど乳化状態が不安定であり、また、水を加えて得た乳化液は耐熱性試験溶液、耐酸・耐熱性試験溶液および耐塩・耐熱性試験溶液の安定性で劣っていた。比較例6の溶性ビタミン類含有プレ乳化物は、1週間で二層分離を起こすなど保存安定性が悪く、また、水を加えて得た乳化液は耐熱性試験溶液、耐酸・耐熱性試験溶液および耐塩・耐熱性試験溶液の安定性で劣っていた。
【0044】
実施例10
実施例9の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物を素材とし、表3に示す組成で飲料を調製し、100mL容ビンに充填し密封した。この飲料を85℃で30分間加熱殺菌し飲料を得た。このようにして得られた飲料を40℃1ヶ月保存した後、目視による外観評価、官能評価による風味評価を行ったところ、リング等の状態不良は観察されず、風味も良好であった。
【0045】
【表3】


【0046】
実施例11
ゼラチンカプセル被膜形成用溶液を調製し、実施例9の脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物を280mg/capとなるように、ロータリー式ゼラチンカプセル製造装置によりこれに内包しゼラチンカプセルを製造した。目視による外観評価を行ったところ、「やせ」などの変形を生じず状態は良好であった。
次にこれを、37±2℃の温水に入れ、10分間放置したところ、ゼラチンカプセルが溶解し、平均粒子径が86nmの均一な乳化液が形成していた。
【出願人】 【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日本油脂株式会社
【出願日】 平成16年8月19日(2004.8.19)
【代理人】
【公開番号】 特開2006−56816(P2006−56816A)
【公開日】 平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願番号】 特願2004−239461(P2004−239461)